●死者の唄 艶美な声音が耳に蕩ける。 砂糖菓子の弾丸に付いた鈍色の赤い薔薇の毒。 長い髪から流れる香蘭の死角。 吐き出される死臭を纏った音符の最中で。 流れる水の如く其れは鼓膜に侵入し、聞く者を耽溺する。 髪の長いラプンツェルは死の歌を唄いながら敵を自由自在に操る。 地獄の使者、死者の行列。 人は何を求めたもう。 人は何を殺めたもう。 人は何を生きたもう。 伝説のセイレーンの能力をも兼ね備えたおとぎの国の化け物が。 極東の小さな砦の公園を襲う。 物語ではない。現実と現の狭間で。 辺りはすでに阿鼻叫喚の地獄絵図と化した。 ●狂気演舞 「三ツ池公園で暴れている化け物達を食い止めてきてほしいの」 『Bell Liberty』伊藤 蘭子(nBNE000271)がブリーフィングルームに集まったリベリスタたちを前にして険しい口調で言った。すぐに状況を説明していく。 バロックナイツ盟主『疾く暴く獣』ディーテリヒ・ハインツ・フォン・ティーレマンがついに動き出した。第二位『黒騎士』アルベール・ベルレアンと第六位『白騎士』セシリー・バウスフィールドとともに三ツ池公園に凶悪な牙を向けてきた。狙いは定かではないが、敵も数多のエリューションやアザーバイドを投入してきており、事大は深刻を極めた。 「現場には多数のリベリスタが奮闘しているがそれも時間の問題。このままではいずれ突破されてしまって三ツ池公園が敵の手に墜ちてしまう」 圧倒的に多い敵の数に味方のリベリスタ達も悪戦苦闘していた。すでに大半が傷ついて現況を独力で打開する力は残っていなかった。 今回は敵にアシュレイが居る以上、万華鏡による一方的なアドバンテージは得られない。さらに敵にアシュレイが居る以上、彼等は間違ってもアークを侮る事は無い。 非常に厳しい戦いが予想されることは間違いなかった。 「貴方達には大砂場で暴れている化け物たちを食い止めてきて。敵のラプンツェルを首領とする少数精鋭部隊だからくれぐれも無茶しないように健闘を祈るわ」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:凸一 | ||||
■難易度:HARD | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2015年02月27日(金)22:06 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●御伽の魔物 砂場に現れた御伽の悪魔。物語と現実の区別がつかなくなったのか。 魔物たちが灼熱の砂の嵐の中で踊り狂っている。 妖艶な声音で持って死者たちを操る蛇髪の女。 ラプンツェルンが目を閉じながら盛大なるコンタクトを振るう。 灼熱の地獄よりも刻苦な浮世の狭間で―― 奇怪な改造大男、炎の不死鳥、首無の戦士と無数の死者の群れとともに。 御伽という地獄の使者達が勇敢なる対抗者(リベリスタ)を待ち受ける。 「御伽噺は所詮物語であるべきだ。 現実に出た時点でそれはただの化け物だからな――」 髪を掻き上げながら鋭い眼光で『アウィスラパクス』天城・櫻霞(BNE000469)は敵を睨みつける。その袖をそっと引くように『梟姫』天城 櫻子(BNE000438)は、夫の様子を下から見上げる。いつのように櫻霞は冷静沈着な様子で見返してきた。 櫻子はその視線のどこかに暖かい優しさを感じて安堵する。このまま最愛の人に甘えたくなる衝動を抑えるようにして今向き合うべき敵へと視線を向けた。 「聖書と聖水意外に死体に有効と言えば、結局は火葬が一番だ」 敵が来るよりも早く櫻霞は腕を大きく掲げて炎の矢を死者たちに向けて放った。 一斉に敵がこちらに気がついて襲いかかってくる。 「公園の大穴争奪戦もとうとう大詰めになって来てるってとこか。 此処で負けるか、勝つかで今後の展開がかなり変わって来そうだが」 『蒼き炎』葛木 猛(BNE002455)は、拳を握りしめて願いを込める――己の力を出して全力で戦うのみ。 「さあ、喧嘩を始めようじゃねえか。ちぃとばっかり派手な喧嘩になるがな……!」 雄たけびを上げた猛が怒りの鉄拳を振るう。次々に跳躍してくる死者の腹に強烈な一撃を食らわせる。熾烈に増していく敵の攻撃を食い止めるように『デイアフタートゥモロー』新田・快(BNE000439)は体を張って前線に立つ。 「御伽話の怪物たちか。趣味がいいとは言えないな」 次々に現れる物語の魔物を見て呟いた。 まるであどけない子供たちの夢を壊すかのように敵は不敵な歌を口ずさんでいる。 「済まない、皆。来るのが遅くなった。今、解放してやるからな――」 快は強い気持ちを心に秘めていた。 かつては仲間だったリベリスタを楯に使う敵は絶対に許せない。 広い守備力と鉄壁の強靭な体を生かして前線に立つ仲間をカバーし続ける。 「どこから連れてきたかしりませんが、小説や伝記の登場人物が牙となって襲いかかってくるとはまさに悪夢ですわね……。まあ、最も高貴なわたくしの前には残念ですが無力、無意味、無価値、ですわ!」 高らかに不敵な笑いを浮かべて椎橋 瑠璃(BNE005050)は双鉄扇を掲げた。大きな背中に生えた翼を広げて跳躍すると一気に敵の方へと突き進んで死者を薙ぎ払う。 「いやはや、本当に冗談じゃないな、この状況は」 強大な戦力を持つ御伽の化け物たちに『Killer Rabbit』クリス・キャンベル(BNE004747)は思わず愚痴を零す。 動物的な勘で禍々しい敵の強大な妖気を感じ取る。 敵がまだこちらを気にも留めていない状況の今が絶好の機会だった。 両腕を伸ばして集中すると大きな閃光を放つ矢を一気に放つ。 死者の群れが気がついた時には、キャンベルの放った地獄の業火が辺りを包みこんでいた。 「木漏れ日浴びて育つ清らかな新緑――大魔法少女マジカル☆ふたば参上!」 華麗なる魔法少女に変身した『大魔法少女マジカル☆ふたば』羽柴 双葉(BNE003837)が続けざまに両手から業火を撒き散らす。圧倒的な炎に巻かれて敵は動けない。 敵の包囲網を掻い潜るかのように姉の『腐敗の王』羽柴 壱也(BNE002639)が突っ込んでいく。姿勢を低くして敵の砲撃網を掻きわけながら前線へと突撃していく。双葉と一瞬目が合って壱也は少しだけ頼もしそうにウィンクして見せた。 お姉ちゃんは大丈夫だ――きっとやってくれる。 「我願うは星辰の一欠片 煌めきよ戦鎚と成りて 敵を打ち、討ち、滅ぼせ!」 妹は自信に溢れた姉の背中を見送りながら更に指に力を込めて魔力を放つ。 ●混乱の最中 地獄の砂場はすでに乱戦模様に陥っていた。 攻撃しようとしても改造大男が前に出てきて容易に他の敵への攻撃を邪魔する。瑠璃は大男に向かって跳躍すると一気に正義の怒りの一撃を食らわせる。 改造大男は怒りを露わにして体当たりをくらわしてきた。瑠璃は突き飛ばされるが、すぐさまに起き上がって敵の巨体を睨みつける。 「おーっほっほっほ、デカブツさん。 高貴なわたくしが遊んで差し上げますから光栄に思いなさい!」 瑠璃は双鉄扇を振りかぶると巨体の腹に叩きこんだ。敵の体から緑色の液体が吹き飛んできて辺り一面を血の海へと変えていく。改造大男は脚を掴んで瑠璃を捻り潰そうとしたがすかさずそこへ壱也が鈍色の大刃を振りかぶって男を叩き斬る。 圧倒的な破壊力でもって壱也は改造男を粉砕した。 「砂場だし、砂遊びでもする?」 不敵な笑みを浮かべて壱也は豊満な体のラプンツェルを睨みつけた。 豊かな胸を揺らして迫る妖女に対峙するが、そこへ死者が邪魔をする。 さらに群れてきた死者の群れを払うかのように太刀で薙ぎ払って応戦した。 死者の雄たけびが更に激しさを増し始めた。 死者の群れに押されてキャンベルは血を吐きながら耐え続けた。呪縛弾をはなってこれ以上の敵の進撃を食い止めようと試みる。だが、あまりに敵の攻撃が苛烈だった。 あまりの多さについに突破を許して倒れ込む。さらに首の無い騎士が止めを刺そうと剣を振り上げてきたところで猛が止めに入った。 キャンベルと敵の間に分け入って体で攻撃を食い止めた。 その瞬間、猛の体から血が噴き出したが意に返さない。 猛烈な剣圧で続けて刺されて飛ばされる。 猛はゆっくりと起き上がった。こんな柔な攻撃では俺はたおされない。 むろん効いていないわけではなかった。こうしている間にも流血がひどくなっている。 お前らに切り裂きジャックを超える畏怖を放てるのか? モリアーティの様にその頭脳で方舟を追い詰められるのか? キースみてえに真正面から殴り合って俺達に純粋に勝てるだけの力があるのか? 猛は咆哮した。がっぷりと組み合いながら砂場の中へと格闘を続ける。 阿鼻叫喚に雄たけびを上げ続ける死者や魔物たちの攻撃にいつしか櫻霞は後退を余儀なくされていた。上空から襲いかかってくる不死鳥から最愛の人を庇う。 「大丈夫ですか――櫻霞様、お怪我はありませんか?」 大きな耳を垂らしながら献身的に櫻子は自身の魔力を分け与える。 痛手を負った櫻霞は激しい痛みを堪えながらすぐに立ちあがって気丈に振る舞う。 「私の世界を護る、これが私の成すべき事です……!」 櫻子はすぐさま夫の肩を抱いて静かに集中すると魔力を分け与えた。 「まずはその加護から食い千切るとしよう!」 櫻霞は不死鳥が舞い降りてくる瞬間を狙い澄まして撃った。厄介な鳥をまずは片づけなければ仲間にさらに危害が加わるのは必至だった。 不死鳥は苦しそうにうめき声を上げた。翼を撃たれて墜落してくる。 「紅き血の織り成す黒鎖の響き 其が奏でし葬送曲 我が血よ、黒き流れとなり疾く走れ……いけっ、戒めの鎖!」 最後の攻撃をしようと嘴を開いた不死鳥にめがけて双葉は両手を広げる。黒い血液の鎖の束がまるで飲み込むように不死鳥を雁字搦めに絞殺す。 ●以心伝心 首無の騎士は猛を砂場の中へと葬りさろうとしていた。 素手と剣ではやはり素手の方が不利か? 猛は首を横に振った。砂がのどの奥に入ってきて苦しかった。 次第に頭の中が真っ白になってくる。 色々と有名所を揃えて来た様だが、お前らじゃ足りねえよ。 お前らに切り裂きジャックを超える畏怖を放てるのか? モリアーティの様にその頭脳で方舟を追い詰められるのか? キースみてえに真正面から殴り合って俺達に純粋に勝てるだけの力があるのか? 猛は咆哮した。絶対に負けるわけにはいかないと力づくで押し返す。 「死線にゃ、この戦いは程遠い。だったら、俺達がこの戦いに負ける理由も一つもねえ!」 ついに猛は窒息寸前の所で首無の騎士を押し返した。 逝って来いや、大霊界! 生憎とこの世界にお前らの居場所はねぇんでな! 首無の騎士が猛によって宙に高く突き飛ばされた。 そのまま大きく弧を描いて砂場の下へと突き刺さる。 騎士は苦しみのうめき声をあげた。 鉄拳によって粉砕された鎧から激しい流血が海のように流れ出てきている。 「猛くん! 双葉も大丈夫?」 壱也が猛と傍らで奮闘する双葉に声を掛けて心配した。ラプンツェルが後ろから隙を狙って激しい攻撃を繰り出す。壱也は前と後ろを挟まれてどうにもできない。 瑠璃もこれ以上、仲間が狙い打たれないように間に入ってカバーに入った。激しい串刺し刺し攻撃には縦横無尽に扇を展開させてひたすら防衛に努める。 騎士は止む負えないと砂浜に身を隠して反撃の機会を探ろうと試みる。 「近づくな! 範囲攻撃が来る! コイツは俺に任せろ!」 不意に快が叫んだ。前線で戦っていた双葉や櫻霞が急いで道をあける。その間を潜り抜けて急いで先回りした快は首無が出てきた寸前を狙って突っ込んでいった。 「X――カリバァァァァッ!」 圧倒的な閃光の破壊力の一撃が騎士の胴体に突き刺さる。 「があああああああああああああああああああああ」 声にならない雄叫びが騎士から漏れた。瞬く間に血があふれて体が崩壊する。だが、その隙を更に狙っていたラプンツェルンが一瞬のすきを突いて髪でからめ取ってきた。 振り払っても纏わりついてくる髪に猛や快が困惑する。流石にどうしようもないところに瑠璃が割ってはいて何とか双鉄扇で薙ぎ払って二人を救い出す。 ラプンツェルの攻撃が勢いを増す中で快は叫んだ。 「攻撃は俺が通さない。行け、壱也さん! その剣で、勝利を切り開け!」 快は串刺しになりながらも体を張って庇った。その脇をすり抜けるように、壱也が跳躍すると一瞬タメを作って刃を砂に突き刺した。 砂泥が唄っていたラプンツェルの口の中に入って盛大にむせ返る。 「おねえちゃんっ!!」 「よおし、双葉! いくよ!!」 姉妹の声が一つに重なった。 圧倒的な魔力が妹の両手から放たれて敵を直撃する。 足場を取られて倒れそうになったラプンツェルに向かって姉が跳躍した。 刀の柄を握り締めて軽やかに頭上に飛躍する。 振りかぶったオレンジの太刀が一気に電光石火に闇を切り裂いた―― 御伽の物の妖が断末魔の雄叫びをあげる。 悪夢の物語が最期の章を迎えてついに閉じた。 ●地獄の業火の残り 艶美な声音が脳裏に掠れて聞こえる。 砂糖菓子の弾丸に付いた鈍色の赤い薔薇の毒が地獄に花を咲かす。 長い髪から流れる香蘭の死泡。 吐き出される死臭を纏った音符の最中で。 流れる水の如く其れは鼓膜に侵入し、聞く者を耽溺する。 髪の長いラプンツェルはまるで蜘蛛の糸のように死の歌を唄いながら咆哮した。 地獄の使者、死者の行列とともに。 人は何を求めたもう。 人は何を殺めたもう。 人は何を生きたもう。 伝説のセイレーンの能力をも兼ね備えたおとぎの国の化け物が。 極東の小さな砦の公園で死を迎える。 辺りはすでに物語から現実へと移り変わろうとしていた。 「みんな無事か? それにしても酷いな」 快が周りの惨劇を見て悔しそうに呟いた。悔やまれるのはやはり、死んでからも敵として扱われた大切な仲間のリベリスタ達だった。到着するのが遅くなったことを後悔する。それでも今生きている仲間がいれば大丈夫だと心を新たにした。傷ついて脚を引きずる猛の腕を担ぎながら他の敵の援軍が現れないうちに戦場の砂場を後にする。 「――どうして対組織戦は日本でも外でも、此処まで面倒なのかね。 だからといってぼやいていても仕方ない訳だが。 まだ始まったばかりだ、気遅れする訳にはいくまいよ」 傷ついた体を引き起こすように櫻霞がつぶやいた。周りには同じように深手を負った仲間たちがいたがどうにか皆無事だった。心配そうに櫻子が見つめてくる。 「……まだまだ終わりが見えませんね」 溜息を吐きながらそっと櫻子は夫の手に自分の指を絡ませた。 指先から伝わってくる体温が櫻子をほっとさせる。 けれどもこれで全てが終わりでなかった。これは終わりの始まりにすぎない。 「お姉ちゃん、どうしたの――?」 双葉は何かを考え込んでいる姉の姿に気がついて呼び掛けた。 戦いは終わった。だが、まだこれで終わりではないような気がする。 なぜだか不安がよぎった。何か策略がある、自分の知らない所で何かが動いている気がする。だが、それはいくら考えてもわからかなかった。 「双葉、大丈夫だよ。お姉ちゃんは何があっても――だって大切な人がいるから」 双葉は姉のその言葉を聞いて安心する。 「この公園を渡すわけにはいかないんだよね。 この世界も、仲間も、最愛の人も、 絶対に――」 焼け野原になった戦場を見て壱也はつぶやいた。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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