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フルメタルラグーン突入作戦 ~機械仕掛けの神を起動せよ~

●『グランドグリーンシナリオ』
 見果てる限りの灰色であった。
 空をグレーの雲が覆い尽くし、地面を石と灰と鉄が覆い尽くし、その両方を貫くように円形の塔が立っている。
 赤い軍服を着た男は、そのただなかで一枚の写真を撮りだした。
 底にはそろいの軍服を着た男が二人。一人は彼で、もう一人は金髪碧眼の男だった。
「チャールズ、お前は失敗したんだな……? すまない、俺も……失敗した」
 写真をポケットにしまい込み、小さな端末を開く。専用のキーを差し込み、起動。
 黒い画面に緑色の文字らしきものが並び、最後にこの世界の言葉でこう記された。
 
 ――合衆国竜軍より通達。
 ――全人類の97%の死滅が確認された。
 ――人類文明崩壊状況『グランドグリーンシナリオ』を発動。
 ――隊員は全ての任務を破棄し、『機械仕掛けの神』の起動をめざせ。
 ――もし幸運に恵まれたなら、次の世界で会おう。

 男の手から端末が落ちる。その上に、おびただしいほどの血がふりかかった。
「誰でもいい。世界を、頼む」
 こうして、男は力尽きた。

●かなたからの手紙
 二月十四日バレンタインデーまで数日、というある日。
 結城 ”Dragon” 竜一(BNE000210)はハンバーガーショップのカウンターに身を乗り出していた。
「ごり焼きバーガーのポテトセット。それと、キミを注文したいな!」
「I、『キミ』のメニューを確認できません。注文を繰り返してください」
「バイト終わるのいつ? 待ってるからさ」
「I、質問の意味を理解できません」
 まるで表情の変わらない顔で述べる街野・イド(BNE003880)。
 頭には『rumor rumor』のロゴがはいったサンバイザーがのっかっているが、それ以外はいつもの格好である。さては仕事を押しつけられたな。客なのに。
「ねえ、あれ放って置いて大丈夫なの? 永久に続きそうなんだけど」
 テーブル席でサンドイッチをつまみながら、水守 せおり(BNE004984)は彼らを横目に見た。
 スコーンを手の上でもてあそぶ不動峰 杏樹(BNE000062)。
「いいんじゃないか? 恐らくわざとやっているんだろうし」
「そういうもんかなあ。彼女いるんでしょ、あの人」
「結城竜一に関して深く考えたら負けだ」
「そっかぁ」
 サンドイッチくわえて店奥のテーブルを見るせおり。
「あっちは普通なのにねえ」
 あっち。というか店奥のテーブルには、楠神 風斗(BNE001434)とアンナ・クロストン(BNE001816)が向かい合って座っていた。
「いやあ、二月だな。節分も終わったし、イベント一つ終了って気分だな!」
「ああ……そうね」
 ポテトをもぐもぐやるアンナ。手には携帯電話。
 風斗は大きめに咳払いした。
「来週の土曜日……暇だなあ」
「……」
 携帯のカレンダーを起動すると、その日は二月の十四日だった。
「あんた、そういうの気にするんだ」
「いいだろ別に!」
「いいんだけど……」
 ちらりと横を見るアンナ。
 そこには仏頂面の禍原 福松(BNE003517)と酒呑 ”L” 雷慈慟(BNE002371)が座っていた。
 四人席にぎっしり四人すわっていた。
 引き締まった顔で振り向く雷慈慟。
「心配無用。自分のことを気にせず、会話に集中されたい」
「席を外すって選択肢はないのね」
「面と向かって誘えないから同席してほしかったんだろ、こいつは」
 スティックキャンディを口の中でころころさせつつ、虚空を見上げる福松。
 アンナは眼鏡をはずして眉間をもんだ。
「幼稚園児か!」
「いや、違う! そうじゃないんだ! 皆に集まって貰ったのは別の理由なんだよ」
「その通りだエンジェル! 感情的な女性はチャーミングだが、今は落ち着きたまえ!」
 風斗のシートの後ろから、金髪碧眼の男がぬっと現われた。
 その左右を固める黒人と白人の巨漢。
「エンジェルいうな! ていうか、あんたたしか……」
「合衆国第三竜軍あらためエンジェルガード隊・隊長、チャールズ・スィーニー! 同じくボブ、アンド、カニンガム!」
「「イエェス!」」
「知ってるけど」
「え、この人たち知り合いなの?」
 何事かと言う顔で寄ってくるせおり。
 遊びを終えた竜一とそれに律儀に付き合っていたイドも寄ってくる。
「説明してくれ」
「いいだろう!」
 白い歯を光らせて親指を立てるチャールズ。
 そのままくいっと後ろを振り向いた。
「ということだ、説明してくれ!」
「結局ワシがするんかい」
 チャールズたちに隠れた所で、松戸助六博士が寿司を食っていた。
「と言うわけで説明してくれ七栄」
「任務了解しました博士!」
 その寿司から丁寧にわさびを削りとっていた七栄が顔を上げる。
 そして立ち上がり、ハンバーガーショップの制服(つまりワイシャツ)のボタンを下から一個ずつ丁寧に外し始めた。
「あ、ちょ」
「待ってください今……」
 七栄はそう言って自分のお腹を晒すと、ブィンという音と共にお腹をディスプレイ化した。
 ディスプレイに映ったのは、今までアークが処理してきたいくつかの依頼資料である。
 それも……。
「機竜か」
「イエス」
 機竜零式。天雷、大鳳、大和、ミッドウェイ、マジェスティック、メルボルン、そして未確認のモンタナ。
「機械生命体アザーバイド、機竜。これらは幾度となく当チャンネルへの干渉を起こしました。対応する中でアークは、機竜が独自生命体でありながら、それを『船』として利用する人間型生命体がいること。彼らの一部が当チャンネルに流れ着き、フェイトを獲得したことを知りました」
 エンジェルガードのチャールズ、ボブ、カニンガム。そしてストーン教団のヴィッカース。
「彼らが当チャンネルにもたらした技術が、『コア』。アンナさん、あなたが持っているものです」
「……」
 視線が集まり、アンナはばつが悪そうにしながら正十二面体のアイテムを取り出した。
 自然に宙へ浮き上がり、淡く青色に光っている。
「この技術はアークのみならず様々な組織に散らばり、利用されたようです」
 ナコト-CCCのマスタープラトン、ラルカーナの『ディープマンの卵』、ストーン教団の怪人改造装置、などなど……。
「純粋な神秘兵器としての性能のほか、エリューションの発生や人体に対するエリューション浸食を可能とするこのアイテムがどのようにして生まれたのか。その謎について、チャールズさんが話してくれました」
「本音を言うと、我々もこのことに関しては詳しくない。仮に我々の故郷(チャンネル)を『フルメタルラグーン』と呼ぶが、今から約15年前。こちらでいう1999年に巨大神秘体の干渉を受けたことから機竜との戦いは始まっていたと記憶している」
「その年って……」
 呟く竜一に、杏樹はため息のように言った。
「ナイトメアダウン」

 様々な軍事的機密や情報統制によって彼の知り得ない部分も多いが、チャールズが語るにはこうだ。
 異チャンネル・フルメタルラグーンの民は三つの大陸からなる地球環境によくにた星で生活していた。こちらの地球と同じく大気があり、海水があり、太陽のような光がある。
 直訳することができないので便宜上酸素や太陽と呼ぶが……さておき。
 現世界西暦1999年、世界を三分割した大陸間戦争を行なっていた最中にそれはおきた。
 突如として世界の向こう側から現われた異物は、この世界の常識を一瞬にしてねじ曲げていったのだ。
 様々な兵器を取り込み、自らの意志のもとに変化させ、フルメタルフレーム人を次々に襲い始めたのだ。
 彼らは機竜と呼ばれ、新たに生まれた人類の敵に対し世界はついに結束……するかに思われたが。
「島国が反乱を起こしたのだ。いや、正確には誰も結束などするつもりはなかったのだ。機竜の技術を奪い、『人類で最も優れた人種』になろうとした。大国の殆どが、己の利益しか考えていなかったのだ」
 結果、機竜のもつ生命エネルギー結晶化技術と兵器吸収技術を様々な大国が鹵獲、研究し、他国を制圧するための兵器として転用し始めたのだった。
「機竜の制御は簡単だった。生命エネルギーにしても、係員を交代することでフルマラソンをする程度の疲労ですんだからな。それに関しては、『メタトロン』に搭乗したことがある者は知っていると思う」
 視線を向けられ、イドは小さく頷いた。
 あの兵器に一体化する感覚。もしくは兵器から一体化を受ける感覚。当時話したボブとの会話。
 それらはそうそう忘れられるものではない。
「ん、ちょっとまって。吸収するっていったわよね。零式から権天使、あと賢人号まではこっちでも理解できそうな兵器だったけど、『異相公爵』だけ技術が飛躍してない?」
「いい着眼点だ!」
 新たな戦争を起こした人類は、その圧倒的な破壊力でもってお互いの国土を破壊しすぎてしまった。
 その結果、世界に残ったのは野生化した機竜のみとなり、彼らは『新たな戦争』を求めてこちらのチャンネルへのゲートを開いたのである。
「つまり……我々エリューション能力者の兵器を理解しはじめたのか」
 腕組みして呟く雷慈慟に、せおりが苦い顔をした。
「うええ、それじゃあいつまで経っても戦争終わらないじゃない」
「その通りだ。だからフルメタルフレーム人は絶滅した」
「……絶滅」
 険しい表情をする風斗。
「正確には文明崩壊だ。残り数百人の人類が、野生の機竜があふれる世界で生き残ることはできない」
 硬く拳を握るチャールズ。
「私の本当の任務は、『異世界に渡って新たな兵器を獲得すること』だ。自国の技術で制御した機竜マジェスティックを使って。だが他国の機竜ミッドウェイとの交戦状態になり……そこへ君たちが現われた」
「……」
 半眼で虚空を見上げるアンナ。
「美女が空を飛ぶ! グルービー! 私たちは任務を三秒で放棄し、この世界に住むことに決めたのだ! ……というより、マジェスティックコアや我々がこの世界に定着したせいで帰れなくなったというのも、大きな理由なのだが」
 沈黙するチャールズ。
 場は沈黙に包まれ……はしなかった。
「それで? 今更そんな身の上話をしたことには、理由があるんだろうな」
 コーヒーを飲み干し、杏樹は閉じていた目を開けた。。
 苦しげに唸るチャールズ。カニンガムも弱った顔でそっぽをむいた。
 カップを置く杏樹。
「この世界における最強の神秘兵器……つまり、『私たち』を利用したい。だろう?」
「……そうだ」
 数歩後退し、チャールズたち三人は深く頭を下げた。
「世界を代表してお願いする。どうか……世界を救って欲しい」


「皆さんには博士の開発した『メタトロンMark58』を貸し出します。これは飛行エアロバイク型の乗り物で、フルメタルラグーンへ一時的に移動するための装置です。チャールズさんたちが気合いを入れてがんばることでなんとか20分間、フルメタルラグーンでの活動が可能になります」
 当然、行きと帰りのぶんだ。
 メタトロンには飛行補助機能のほか、搭乗者のスキルを読み取って疑似武装化する機能も存在している。これで高速で移動しながらの戦闘が可能になるだろう。
「皆さんはメタトロンを使用し、合衆国中央の塔最上階に存在する『機械仕掛けの神』という秘密兵器を起動してもらいます。これによって何が起こるかはわかりませんが、チャールズさんは誓って皆さんに害のあるものではなく、確実にこちらの世界に帰ってこられるものだと話しています。リーディングをかけたので間違いありません。あの人にも、知らないことがあるみたいですね」
 とはいえ、塔最上階へ行くのは簡単ではない。
「ゲートの先を無人機で調査したところ、大量の機竜が存在していることが分かりました。これまでアークが戦った機竜の全ての種類が存在しているとみていいでしょう。特に『異相公爵』は塔最深部を守護する役割を持っており、非常に厄介です。ですが……」
 ガッツポーズをとる七栄。
「風斗さんの呼びかけで集まった八人の猛者! 皆さんが力をあわせれば、きっと任務を達成できるはずです! どうか無事に帰ってきてくださいね!」


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:八重紅友禅  
■難易度:HARD ■ リクエストシナリオ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2015年02月18日(水)22:21
 八重紅友禅でございます。
 大変長らくお待たせいたしました。

●作戦の大雑把な概要
 異世界に突入→機竜の群れを防御しまくり倒しまくり回復しまくりながら突破→塔の最上階へ少人数で突入→出口を確保するために一部のメンバーが『ここは任せて先に行け』→最深部にある『機械仕掛けの神』を起動→ダッシュで帰る→バレインタインデーにいちゃつく(よそで)

 戦闘にあたって、メタトロンが破壊される心配はしなくても大丈夫です。プレイング文字数をぜひぜひ省いてください。
 自機が破壊された場合フェイト復活すれば、そのまま仲間の機体に乗っけて貰って戦闘することになります。ゲートを通るのに一機でもあれば充分なので、最悪一人でも残っていればなんとかなります。全滅したら……皆さんからバレンタインデーがなくなります。一応死にはしないはず。
 また、メタトロンに乗ってる以上は大体空中戦になります。ペナルティは敵味方全員につくので、その辺は心配いりません。皆さんのスペックからすれば空戦ペナなんてもはや誤差ですし。

●機竜の種類
 小型機竜:機銃を装備した戦闘機タイプ。
 中型機竜:特殊なビーム兵器やエネルギー装甲を装備。イメージとしては『強い機竜』。
 大型機竜:別名機竜空母。内部に大量に小型機竜を格納している。硬い、砲台デカい、そして遅い。
 尚、今の皆さんの戦力だと機竜空母をタイマンでたたき落とせます。自分で言っててありえねえなコレと思いました。
 特殊機竜:高熱兵器や電撃兵器などを装備した機体です。大体皆さん一人と互角程度の戦力があります。その分数は非常に少ないようです。
 異相公爵:高い戦闘力もさることながら、『強制幻覚』という兵器を搭載しており、塔最深部を守っています。これに関しては『一度体験しているキャラクター』は肉体ダメージを軽減できるようです。
 知っている限り風斗さん、アンナさん、イドさんです。メンタルつよそう(素直な感想)。

●その他色々
 機竜のストーリーを追うのもこれで最後ということもあって、なんやかんや関わってきます。
 大体察しがついているんじゃないかなと思うので、あえて詳しく書きません。

 それでは。
 グッドラック!
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
ノワールオルールスターサジタリー
不動峰 杏樹(BNE000062)
ハイジーニアスデュランダル
結城 ”Dragon” 竜一(BNE000210)
ハイジーニアスデュランダル
楠神 風斗(BNE001434)
ハイジーニアスホーリーメイガス
アンナ・クロストン(BNE001816)
サイバーアダムプロアデプト
酒呑 ”L” 雷慈慟(BNE002371)
ハイジーニアスクリミナルスタア
禍原 福松(BNE003517)
ギガントフレームスターサジタリー
街野・イド(BNE003880)
アウトサイドアークリベリオン
水守 せおり(BNE004984)

●杵築神社異界防衛拠点
『メタトロン起動準備よし。コジマゲートへアクセス。完了まで307秒。世界の運命をあなたに預けます、リベリスタ』
「任せておけ!」
 ホワイトカラーにレッドライン。『不滅の剣』楠神 風斗(BNE001434)おなじみのカラーリングに変化したメタトロンに跨がり、彼は剣を掲げた。
「俺たちが必ず世界を救ってみせる!」
 数秒経ってから、風斗はちらりと振り向いた。
「付き合って……もらえる?」
「あんたはもう。全く成長しないわね」
 頭をぐしぐしやる『ソリッドガール』アンナ・クロストン(BNE001816)。
 ポケットからリボン包装した小箱を出すと、風斗にチラ見せした。
「買ってきた。作り直してる暇無かった。片付いたらあらためてあげる。オーケー?」
「オ、オーケー」
「よし恥ずかしい台詞終了!」
「お、おう!」
 互いの手を握るかのように、ハンドルをぎゅっと握る風斗とアンナ。
 いっぽう。
「あいつらはオープン回線でなにをイチャついてるんだ」
「言ってやるな。それがあいつの(お)い(し)いところだ」
 グローブをはめなおす『アリアドネの銀弾』不動峰 杏樹(BNE000062)と『ラック・アンラック』禍原 福松(BNE003517)。
「しかし、オレたちが世界を救うとはな。改めて言われると重い言葉だ」
「そのうえ代償にしてるものが人の命だからな。どうもこのメタトロンはハラハラする」
「だがそれだけに」
「ああ、退くわけにはいかないな」
 福松は懐から包みを取り出し、大きな機械を操作している七栄に投げ渡した。
「これは?」
「千葉半立。何か菓子でも作って置いてくれ。あとの打ち上げで食おう」
「理解しました。これが死亡フラグですね」
「違う」
 とまあそんななかで、『リトルセイレーン』水守 せおり(BNE004984)は額に手を翳してきょろきょろしていた。
「ほわあ、メタトロンってイメージカラーまで反映してくれるんだね。私はいつもの青と白。なんかエンジェルとドラゴンがロンドしちゃいそうだね! ね、アンジュ!」
「なぜ私にふった。踏みつぶすぞノーマ」
「知ってんじゃん。そして機体カラー白と金じゃん」
「イメージカラーは大事だよな! ということで俺は赤! 通常の三倍の赤!」
 『はみ出るぞ!』結城 ”Dragon” 竜一(BNE000210)はフラメンコ調のBGMを奏ながら、ボディの表面をキュッと撫でた。仮面のようなサングラスをはめ、機体正面に成田山のステッカーを貼り付けた。
「なにそれメイジン?」
「違う違う、『さんをつけろよデコ助野郎』のほう」
「もう混ざってんじゃん」
 振り向いてみると、金色機体と銀色機体がどっしりと構えている。
 『生還者』酒呑 ”L” 雷慈慟(BNE002371)と『イマチュア』街野・イド(BNE003880)のものだ。
「We、私たちが対機竜兵器であることを望まれるなら、一体でも多くの機竜を倒すべきです。全力であたるべきと考えます」
「全力……そう、全力だ」
 腕組みしていた雷慈慟が薄く目を開く。
「楠神君の結城、決断、人生設計、そして甲斐性。それらを見極めなければならない。全力で」
「……」
 ゆっくりと振り向く雷慈慟。
「全力だ」
「了解しました」
『これよりチャンネル間航行に入ります。体ショック体勢。ハンドルを握り、重力反動に備えてください』
「I、私が兵器であるならば――」
 八機のメタトロンは炎のラインを刻みながら飛び立ち、次元の彼方へとかき消えた。

●フルメタルラグーン
 暗雲と瓦礫と塔。それがこの世界最初のイメージである。
「機竜は、いないのか?」
「む――」
 杏樹が下を見た瞬間、全員の脳内にホログラフックサインが現われた。
『真下より高熱源反応。回避――回避――』
「うお……!」
 急に戦場を大きく俯瞰したマップとグラフが脳内表示され、風斗たちは一斉にその場から回避行動をとった。
 天空に向かって発射される高威力なビーム。と同時に、巨大な機竜が瓦礫を引っぺがす勢いで浮上しはじめた。大量のハッチが開き、小型機流が群れを成して飛び出してくる。
 全機、一斉に塔の方向へ加速しはじめる。
 あらためて脳内を見てみると、詳細なHP・EPグラフとともに敵位置や熱源等のデータが記載されている。以前のメタトロン使用時に見たものがバーチャルボーイだとしたら今のはグーグルグラスである。格段に進化していた。
「マスターテレパスか! 助かった、イド!」
『関知したのは杏樹さんです。視界は福松さん。フラグは竜一さんのデータを編集しています』
「フラグ……?」
「それより陣形を整えろ。フォーメーションD、Dragonを先頭に」
「っしゃあ!」
 竜一は全身を金色のオーラに包むと、正面を遮ろうとする機竜の群れを次々に破壊しながら走り出した。
「ハッハー、レッツパーリターイム!」
 竜一のオーラに覆われた彼らは、さながら巨大な竜である。
 そのすぐ横に、大型の機竜がつけてきた。腹部から露出した砲台がすべてこちらを向き、次々にエネルギー砲弾を叩き込んでくる。
「危ない、アンナ!」
 アンナに命中しそうになった弾を、風斗が身を挺して庇いにかかる。
「酷いダメージだな」
『超弩級機竜「武蔵」と断定』
「大和と同等ってコトね。二年半ぶり、か」
 アンナは胸に収まったコアをメタトロンにはめ込んだ。赤いメタトロンのボディにブルーラインが走ると、周囲一帯に強制修復空間を展開した。
 味方機に着弾した弾を当たったそばから即座に『無かったこと』にしていく。
「さび付いてるけど、動けないほどじゃない」
『大型機竜、フソウ、ヤマシロ、イセ、ヒュウガを確認。囲まれています』
「迎撃を?」
「今は突破が優先だ」
 大量に集まってくる小型機竜を巨大エネルギーシールドによって次々と撃墜させながら、雷慈慟はせおりに目配せした。
「はねのけるだけでいい」
「私の出番ってわけね! いーっくよう!」
 機体を傾けるせおり。脳内グラフに『一時離脱』のサインを出すと、せおりの機体が巨大なエネルギー体に包まれた。
 イルカ。いや違う、上半身が女性、下半身を魚の巨大エネルギー体が星の軌跡を描きながら高速で大型機竜へ突進した。
 激しい体当たりをしかけ、機竜を強制的にはじき飛ばす。それを四機それぞれに仕掛けてから、せおりは隊列のなかに戻ってきた。
「押し出し終了。振り切るよ!」
「了解」
 高速で追いすがろうとする中型機竜へ、エネルギー体によって作り出したバルカン砲を乱射するイド。
 横を複数の中型機竜、更に小型機竜が追いすがる。
 杏樹はハンドルをぎゅっとひねった。
 途端杏樹の機体から巨大な翼が展開。はばたき一つで周囲の機竜が一斉に爆発し始める。
「これだけいれば、動く的だな」
「まだいるぞ」
 塔への最短ルートを遮るようにエネルギーシールドで武装した機竜が現われた。
『装甲機竜空母「5021号・天鳳」と断定』
「おいおい架空戦史かよ」
 福松はあえて拳銃を構え、機竜の頭に狙いを定めた。
「一度は言ってみたかったんだ」
 安全装置解除。引き金を引く。
 途端、福松から巨大な徹甲弾が発射され、機竜の頭から脇腹までにかけてを貫通。激しい爆発を起こして沈み始めた。
「ここは任せて先に行け!」
「いわずもがなァ!」
 チームから放たれるように、竜一を先頭にした風斗、アンナ、イドのチームは塔の頂上へと直接突撃をしかける。
 むろん玄関口から入ってやる義理なとない。壁を無理矢理破壊し、最深部へダイレクトアタックである。
 外壁を吹き飛ばしながら転がり込み、竜一はそれを見た。
『神型機竜「異相公爵」を発見。強制幻覚に注意』
「ンぐ……!」
 腕を翳す竜一。だが突入を警戒していた相手の方がワンテンポ速かった。
 竜一たちはたちまち強制幻覚の中へ落ちてしまったのだった。

●罪科炎上
 アンナは無数の異世界人に囲まれていた。いや、名前は知っている。全員のだ。
「ったく、私も引きずるタチよねえ……だからって」
 後ろから肩を掴もうとした『奴』を、アンナは裏拳一発で吹き飛ばした。
「何が壊れようが誰が死のうが、生きてる限りは生かすだけだ。誰かを、必ず」
 ふと、視界がぶれる――。

 風斗は無数の弱者に覆われていた。
 下半身を失って寝たきり生活になったらしい女性。自分が殺した何十人もの一般人。奇跡にすがる老婆。そのいくつもが鎖のように足にまとわりつくが、風斗は歯を食いしばって進んだ。
「あいつにもう、醜態をみせられない。俺は剣を鈍らせない。世界を救う。そのために……!」
 ふと、視界がぶれる――。

 イドは暖炉の前にいた。
 知らない男性が知らないことを話している。知らないラジオからの知ってる曲。知らない家の、知らないにおい。炎。
「I、私という兵器に罪があるとしても、裁くのはあなたではない」
 自らの顔に触れる。小さな手だ。小さな顔だ。
 かまわない。
「カウンタープログラム、起動」

 風斗とアンナが幻覚の中でお互いを見つけた。手を握りあい、頷き合う。
 イドはその後ろに立って、満足げに頷いた。表情は変わらないのに。
 苦しみの中にあろうとも、もう平気だ。
 ひとりでないのなら。
「まて、結城がいない」
「そういえば……」
「先輩! 大丈夫ですかせんぱ――」
「俺の名前を呼んだか?」
 彼らの頭上。上半身を裸にした竜一が金色のオーラに包まれたまま仁王立ち姿勢で浮いていた。
 なんともない顔で見上げるイド。
「『キミ』の注文はまだ承っていません」
「帰ったら、いや今にでも承っちゃえばいいさ。『キミ』ひとつあれば、『オレ』は無敵だ!」
 気合い一発で幻覚を破壊する竜一。
「罪は、俺を止めるに足らない!」
「先輩輝いてます!」
 この人メンタル無敵だなという顔で見上げる風斗。
 が、すぐに異相公爵が襲いかかってきた。
 狭い室内戦である。メタトロンはかえって使いづらい。
 緊急離脱し、風斗はアンナを庇って転がった。
「この!」
 アンナの回復光を受けながら剣で迎撃する風斗。
「オレは負けない。イドやクスカミたちで遊ぶために!」
「俺たち『で』!?」
「イド、先に行け。こいつはオレが押さえ込む!」
 食いつこうとする異相公爵にむりくりヘッドロックをかける竜一。
「任務了解」
 イドは両足からホイールを露出すると、凄まじい速度で走り出した。
 最深部らしきバルブ式扉めがけて砲撃。爆発によってひしゃげた扉を体当たりで破壊し、『最後の部屋』へと転がり込んだ。
 内部は部屋というより箱に近かった。
 大量の配線とモニター。そして、棺。
 棺の中には少女が眠っていた。
 なぜだか見覚えがある顔だ。記憶情報の何とも一致しないにもかかわらず。
 だが、この棺が『機械仕掛けの神』であることは分かる。
 なぜならボブから渡されていたフルメタルラグーンの文字情報でそう書いてあるからだ。
 ちらりと側面を見ると、かすれた文字がある。
「……See you next-Civilization……?」
 フルメタルラグーンの文字、ではない。
「イド、無事か!」
 そこへ、アンナと風斗が飛び込んできた。
 途端にアンナの持っていたコアが発光。
 棺もまた発光し、すべてのディスプレイが稼働した。
 そして巨大ディスプレイにみたてたそれに、フルメタルラグーン文字が表示され。
 すぐにそれは変化した。
『ようエンジェル! 一万年ぶり!』

●倫理統合プログラム
「えっ?」
『あっやべ』
 ディスプレイの表示はすぐに切り替わった。
『ワタシハ倫理統合プログラム、SYNC-2000。起動ヲ確認シマシタ、コードノ入力ヲ、マスター』
「……」
 アンナのコアが不思議な明滅をおこした。
『コードヲ認識シマシタ。実行シマス』
 すぐに、イドのマスターテレパス越しにチャールズのメッセージが入ってきた。
『今入力したのは、人類が一致団結して機竜をこの世から排除するという情報だ』
「なんだそれは。機竜を一気に消すプログラムじゃないのか?」
『人類は機竜を利用しすぎた。強力な兵器であり、それを利用することができてしまった。ゆえに欲を出し、これを使って世界を我が物にしたくなった。戦争は、より拡大した』
「……それは」
『兵器に兵器で戦ったとしても、残るのはより強い兵器だ。人類の勝利たりえない。人類は人類で勝ち残るべきなのだ。たとえ何百、何千年かかったとしても。子から子へ想いを託す。世界から兵器が消え、すべての機竜が息絶えた時、我々は再び大地に立つのだ。それが――グランドグリーンシナリオ』
 コメントに迷っていると、イドが声をかけてきた。
「活動限界時間が近づいています。脱出を」
「そ、そうだな!」
 駆け出す風斗たち。
 イドは少しだけ振り返り、壁にこう刻んだ。
 『次の世界ではもっと上手くやってください。天使より』

「やったか、クスカミ!」
「はい先輩! 急ぎましょう!」
「おう! ダッシュで帰ろう!」
 異相公爵を一人でボコボコにしていた竜一は、親指を立ててきびすを返した。
 突入の際に破損していた竜一とイドの機体はその場に残し、アンナと風斗の機体にそれぞれ乗って塔から飛び出――そうとした途端、入ってきた穴を覗きこむように大型機竜が顔を見せた。
 ぶつかるか。
 そう思った途端、巨大な人魚がそれを突き飛ばす。
 いや、せおりの機体だ。
「わお、帰ってきた! みんな、四人とも無事だよ!」
 竜一たちを拾い上げるかのように自分のうしろにつけ、塔から飛び出す。
 流星のごとく飛び出したせおりを見た雷慈慟たちは、お互いに頷きあった。
 再び編隊を組み直す。
「脱出する――むっ」
『上空より高エネルギー反応』
「武蔵か、まずい!」
 雷慈慟は一人で飛び出し、シールドを展開。
 協力なビームを一人で受け止めた。
 メタトロンが破壊され空中に投げ出されるが、焦りは一切無い。
「我々のチャンネルであろうとなかろうと、根底は変わらん」
 武器をキャノンモードに変え、全力砲撃。
 雷慈慟の放ったピンポイント砲撃が着弾。連続爆発を起こして武蔵が傾く。
「お前たちのミスはたったひとつだ。喧嘩を売る相手を間違えたな」
 杏樹があえて銃を向けて発砲。
 たった一発の弾丸が超高速で飛び、武蔵の最重要部を貫通し、そのまま天空へと消えた。
 大爆発を起こし、飛び散る破片。
 円形に開け、覗く青空。
 さんさんと照る陽光を浴びながら、がれきをかわしてジグザグに飛ぶ杏樹。
 落ちてきた雷慈慟をキャッチしつつ、更に周囲を囲もうとする機竜の群れを一気に蹴散らした。
「ぐずぐずするな。行くぞ」
「はい!」
 風斗と竜一の力を合わせた突撃。更にアンナとイドの支援回復と援護射撃を受けながら、最初に開いたゲートへと走る。
 通信機に七栄の声が入った。
『帰還時にのみゲートを一時的に開きます。タイミングを合わせて』
「了解だ。ちゃんと菓子は作ってるか?」
 自らを巨大なエネルギー弾丸に変え、先頭を走る福松。
『はい、美味しいパインサラダを作って待っています!』
「それ死亡フラグのやつだろ!」
『あのピーナッツを人に出したくなかったんですよ』
「落花生だ。というか皆で食うためにだな」
『あなたがわたしにくれたもの。誰にもわたしたくはありません』
「……そうかい」
 福松は帽子をおさえ、加速した。
 ゲートを潜る寸前、せおりやアンナは振り返った。
 崩壊をおこす塔。
 爆発に巻き込まれて沈んでいく機竜たち。
「世界の終わりかあ」
「コアはもっていくわね。でも絶対この世界のこと……忘れないわよ」

 かくして、アークリベリスタたちはフルメタルラグーンのという世界の危機を救った。
 彼らの活躍を知るものはあの世界に誰も居ないが。
 ずっと後、ずっとずっと後の世に、誰かが見るけることになるだろう。
 『天使より』というメッセージを。
 そして彼らがやってきた世界のことを、こう呼ぶのだ。

 ――エンジェリックラグーン。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
 お疲れ様でした
 これにて機竜世界終了となります
 ながらくご愛顧いただき、ありがとうございました