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<蛇のアポリア>共闘、新風紀委員会――大隊戦!

●新風紀委員会第三隊現場指揮官、士戸錠司軍曹
 暗雲が巨大な渦を作っていた。
 しきりに漏れ出す紫色の雷を見上げ、白いスーツの男は被っていた帽子を脱いだ。
「こいつがアザーバイドだって? 冗談だろ」
「冗談かどうか。その身で確かめてみるんだな、士戸錠司。組織を裏切ったお前には丁度いい末路だ」
 フィクサードが剣を構えたまま笑った。
 対して白スーツの男、もとい士戸錠司はハンドポケットの姿勢で構える。
「言うならもっとクールな冗談にしろよ、直刃のワンコちゃん」
「隊長、危険です! ここは離れて……ぐああ!?」
 特殊装甲服を着た一団が、雲から突き出た巨大な雷に蹴散らされた。
 続いて、雲から大量の人型物体が飛来してくる。
 顔も身体もはっきりとしないが、手足だけはきちんとある。正真正銘バケモノの群れである。
 フィクサードの男は両手を振り上げて見せた。
「見ろよ士戸ォ。こいつが俺様の新しい力! アザーバイド『暗黒兵団』! 意のままに動く無限の兵隊だ! こいつで世界を――ぐ、ぐあっ!?」
 男が召喚用アーティファクトを翳した途端、男がひときわ大柄な暗黒兵に飲み込まれた。
 文字通り。口のような穴から吸い込まれるように消えたのだ。
 すると兵隊は全身から鎧甲を生やし、雲を馬のような形に変えて跨がった。
 それに続くように、フィクサードの兵隊たちがアザーバイドの兵隊に次々と吸収されていく。
「意のままに、なんだって? 取り込まれてんじゃねえか……」
『隊長、大変です! 第一隊長、第二隊長、第四隊長、第五隊長が重傷! 指揮系統が破壊されています!』
 イヤホンマイクに入ってきた部下の声。
 錠司は舌打ちすると、バイクに跨がって敵とは逆方向に走り始めた。
「近隣住民の保護と避難を優先! 残りの隊員は連中が外広がらないように押さえろ。あとはアレだ、アークが来るまで粘っとけ!」
 片手で端末を操作する。
 連絡先は、アーク。

 逆凪と直刃の争いは激化の極みに至っていた。
 様々な勢力を吸収した直刃が狙う、凪聖四郎の世界征服。
 彼は逆凪とアークの双方を落とすことで世界への近道とした。
 日本の片隅でありながらも。
 世界を守る戦いがまた、始まろうとしている。


 アーク・ブリーフィングルーム。
 『運命オペレーター』天原和泉(nBNE000024)は一連の内容をリベリスタたちに説明していた。
「――以上のように、直刃派フィクサードは強力なアザーバイドを次々と召喚してアークへの攻撃を始めています。我々が担当するエリアでは、既にフリーの正義集団『新風紀委員会』が鎮圧に当たっていま……したが……」
 顔を曇らせる和泉。
「敵アザーバイドの強力さに新風紀委員会の隊長格が次々と撤退。指揮系統は死んだも同然です。彼らは今も市民居住区域への進行を阻止すべく抵抗を続けていますが、これ以上持つかどうか……」
 我々の任務はこのエリアに出撃し、アザーバイド『暗黒兵団』を破壊することである。
「暗黒兵団は兵隊を無限に補充できるためいくら倒しても破壊しきることはできませんが、兵団に設定されている『五体の隊長格』をすべて倒すことで補充を停止させることができます。このアザーバイドを倒すには、これしか方法はないでしょう」
 戦闘への参加方法は各リベリスタに任されている。資料を見て判断しよう。
「皆さん、後はよろしくお願いします。どうかご武運を」


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:八重紅友禅  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 6人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2015年02月13日(金)22:18
 八重紅友禅でございます。
 こちら逆凪全体シナリオとなってございます。

●戦闘への参加方法について
 この戦場に参加するにあたって二つのポジションから選択します。
・前線担当:新風紀委員会の前に出る形で戦います。個人戦闘力がダイレクトに影響します。隊長格との戦闘では最重要戦力になるでしょう。
・指揮担当:隊長不在の四隊を指揮します。指揮系スキルがダイレクトに影響する反面、個人戦闘力が殆ど発揮できずかなりプレイング勝負になります。敵陣営を切り開くための集団戦で最も重要になるでしょう。

 どちらの担当にどれだけ配分しても構いません。極端な話4:4、0:8、8:0でも出撃できます。ちなみに指揮担当にはNPCの士戸錠司が既についているので、最低1は確保されています。

 ■前線戦闘について
 周囲で新風紀委員会の隊員が戦っています。
 勇ましく戦えば戦うほど味方の士気が上がりやすくなります。ただし指揮系スキルや集団行動に関するプレイングが効果を発揮しづらくなります。
 序盤は体力を温存して兵隊に任せ、隊長格にまで届いた所で満を持して戦闘に入るのが理想型です。
 隊長格は戦闘相手に対応した形態へ変幻し、近いスペックを再現してくるでしょう。少なくともフェイトがある分こちらの方が若干有利です……が、相手も相手で強力なので集中して挑みましょう。
 隊長格を倒した後は通常戦闘に戻りますが、この部分のプレイングは無しでも充分に機能します。『序盤に温存しつつ勇ましく戦闘』と『隊長格に全力で戦闘』の2パート構成で書くのが安定します。

 ■指揮戦闘について
 後衛に下がって新風紀委員会を指揮します。
 直接戦闘になるとしたら兵隊が負けまくって後衛まで進行された場合のみで、基本は指揮に集中することになります。
 戦場の広さは数キロ単位なので、個々の支援が通じづらいですが、その分集団戦プレイングが生きてきます。
 全体的に戦いの様相がザックリするので、奇襲奇策は頭から外して置いてください。この手のバトルは奇策に頼らなきゃいけない事態そのものが負けみたいなとこあるので。
 指揮プレイが特に思いつかなければ『固まって突撃』『開いて防衛』『槍のように貫通』の三つを使い分ければそれなりに機能します。あとは地力頼りです。
 兵隊の戦力は『アークにいるそこそこのリベリスタ程度』です。全員軍刀とサブマシンガンを装備していますが、死んだら普通に死ぬので復活はしません。ジョブ構成は色々混合。大体なんでも平均的にいます。


●補足情報
 士戸錠司
 ランク3デュランダル。戦闘指揮レベル2。
 名も無きリベリスタの集いが再結集した組織、の現場指揮官。他にも現場指揮官は数人いるが、彼らは現在戦線離脱中。
 彼らの活動内容は主に『人類に対する神秘からの守護』。
 元は旧風紀委員会という組織に居たが、こっちについては色々ありすぎるので割愛する。
 NIGHT-FEVERS オペレーション・レッドジャイアント
 http://bne.chocolop.net/quest/replay/id/3912/p/2/
参加NPC
 


■メイン参加者 6人■
ジーニアスナイトクリーク
星川・天乃(BNE000016)
ハイジーニアスデュランダル
結城 ”Dragon” 竜一(BNE000210)
サイバーアダムプロアデプト
酒呑 ”L” 雷慈慟(BNE002371)
ハイジーニアスマグメイガス
ラヴィアン・リファール(BNE002787)
メタルイヴデュランダル
メリッサ・グランツェ(BNE004834)
ハイジーニアスデュランダル
レオンハルト・キルヒナー(BNE005129)


 後衛仮拠点と呼ばれた部屋の中はまるで冷蔵庫のように冷えていた。
 海上輸送コンテナを改造して作られたという装甲コンテナハウスは堅牢さ以外の全てを捨てているからだ。
 こういった場所に慣れていない者からすれば、巨大な段ボール箱か穴蔵である。
 そんな中に、『無軌道の戦姫(ゼログラヴィティ』星川・天乃(BNE000016)はのっそりと入ってきた。
「士戸錠司、久しぶり」
「よう『自死神』。お前まだ生きてたんだな」
「じしがみ?」
「お前のあだ名だよ。うちじゃそう呼ばれてる」
「縁起でも無い呼び名だな……」
 暗室に簡易証明だけのコンテナを見回しつつ、『はみ出るぞ!』結城 ”Dragon” 竜一(BNE000210)たちも中へ入ってきた。
「まあ、今日の健康診断でお前フェイト5だったしな、天乃」
「ホントなんで生きてんだそいつ」
「そんなことはどうでもいい。早く始めたらどうだ。私たちの打ち合わせは済んでいるんだぞ」
 壁に背を突け、『暴君』レオンハルト・キルヒナー(BNE005129)は冷たい眼差しのまま腕を組んでいる。
 手を振って遮る『スーパーマグメイガス』ラヴィアン・リファール(BNE002787)。
「おいおいそー言うなよ、俺たち久々なんだしさ。な、ジョージ!」
「お前もな、『ファイヤーボール』。あのアークが参戦するって聞いてうちの連中も士気が上がってんだ」
「任せておけよ。お前よりかっこうよく活躍してやるからさ!」
「おう、頼むぜ」
 錠司はテーブル代わりにした木箱にタブレットPCを置いた。
「指揮官を喪った第一第二、第四第五隊はそれぞれ半壊してる。けが人を退避させて舞台を再編成したが、ぶっちゃけ隊三つ分の戦力しかないと思って置いてくれや。そっちはどうする」
「自分とDragonの二人に隊を任されたい」
 それまでじっと黙っていた『生還者』酒呑 ”L” 雷慈慟(BNE002371)が僅かに顔を上げて言った。
「自分は指揮能力が高い。そして彼は……」
「有名人ってわけか。悪くないチョイスだ」
 政治活動全般に言えることだが、政治能力のある人間とは別に注目度の高い人間をトップに据えることで組織機能が高まることがある。今回の場合、『あのアーク』のイメージのほぼ中央にいる竜一はある意味指揮官に適していると言えた。
「俺の錠司隊は中央を固める。エル隊は右、ドラゴン隊は左を頼む」
 椅子に腰掛けた『蜜蜂卿』メリッサ・グランツェ(BNE004834)がタブレットの表示に目を落とした。
「それで、敵の数はいかほどです?」
「こっちの二倍」
「数の暴力は、分かりやすい驚異ですね」
「元々二割増し程度だったが、数の差が戦力差になってこうじわじわとな」
「恐れは伝播します。なればこそ身を引き締めて」
「クールな意見だ。四人は隊の先頭に立って戦ってくれ。危なくなったら仲間にフォローさせる。即席のチームだが、いつ再編成されてもいいようにほぼ全員平均的に育ててある。クセはないから安心してくれ」
「了解した」
 データを受け取って頷く雷慈慟。
「敵戦力の撃滅する。崩界をとめるその一矢として」


 群。
 太古より恐怖の象徴であり、力の象徴である。
 あらゆる生物がこの力を使い、他を圧倒してきた。
 虫も、魚も、獅子も、人も、そしてアザーバイド『暗黒兵団』もまた、群の力によって新風紀委員会を圧倒していた。
 彼らは牽制攻撃で敵の勢力範囲拡大を緩めるのが精一杯だったが……そこへ、一人の少女が舞い降りた。
 天空から降下し、踊るように回り、長いツインテールを靡かせ、芸術的なまでに光をまとって兵の先頭へと着地したのだ。
 舞い降りた、という表現がここまで適切な者も珍しい。
「あんた、危ないぞ! ここは……」
「いや待て、この子は確か」
 どよめく兵たちを背に、すっくと立ち上がる天乃。
「死を恐れるな、とは言わない。でも、命を惜しむな。身を、捨ててこそ浮かぶ瀬、もある」
「……」
 錠司からこっそり『こいつのフェイト5だぞ』と知らされていた兵たちは、目に見えて動揺した。
 アークと言えば死んでも死なない不死身の兵団である。それが、自分と同じほどの命の軽さで戦うなどと……。
「さあ、楽しい楽しい、闘争の宴が始まる。総員――」
 襲い来る大量の暗黒兵を前に、天乃は跳ねた。
「突撃」
 ――その一方。
「先頭が動いたか」
 同調したツバメの視界から天乃たちの攻勢を察した雷慈慟は、周囲を固める通信兵たちに呼びかけた。
「敵戦力を確実に撃破。取りこぼしは極力避け、敵首領発見時、総火力にて撃滅せよ」
「「了解!」」
「全軍、前進!」
 雷慈慟が腕を翳すやいなや、即席部隊『L隊』は一個の不定形生物のごとく暗黒兵団へと襲いかかった。
「火力を集結。範囲火力を終結し面で制圧せよ!」
「「了解!」」
「一斉砲火!」
 天乃が高速と敵陣を食い破って作った道を、まるで岸壁をダイナマイトで崩すかのような破壊方法で突き進んでいく。
 兵たちの中に、確実に希望が見え始めた。

 同時刻。
『酒ちゃんたちが動いた。こっちも先へ進めよう、メリったん』
「なんです、その呼び名は」
 竜一からの通信に応えつつ、メリッサは敵から放たれた無数の矢をアームガードのギミックではたき落としていた。
 そこへ槍を持った兵隊が一斉に突っ込んでくるので、跳躍。
 あえて敵陣の中へ滑り込むと、ぐるりと一回転して風車の如く敵兵を切り裂いた。
 凄まじい手際に思わず拍手しそうになる兵たちを振り向き、剣を掲げた。
「続きなさい! ここから先、敵の一兵たりとも進ませるのは許しません!」
「お、応!」
「俺たちもやるぞ!」
『わかってるって順番、順番だって。あっ、今はほら戦闘ちゅ……ん、はっ、積極的だなあもう』
「……」
 通信に紛れ込んでくる竜一の会話に目を細めつつ、メリッサは敵陣を切り開いていく。
 いっぽうそのころ。
「悪かった、悪かったからこの手錠外さない? 格納庫をまさぐりたかっただけなんだ、オレ」
「格納庫は胸の谷間にはありません」
「お尻にもありません」
 通信兵の女二人が馬上で拘束された竜一を白い目で見ていた。
 マスターテレパスとハイファミリアーによる全方位通信を行ないつつ、通信兵の少女が顔を覆った。
「『箱船の竜』の結城様がこんな人だとは思わなかったわ」
「中村悠一の声でお前たちは俺の翼だって言い始めた段階でおかしいと思ったんです」
「ちゃんと剣だって言い直さなかった?」
「もう何かの隠語にしか聞こえませんでしたよ」
 一斉にため息をつく通信兵三人娘。
 とはいえ、竜一の指揮能力は高かった。序盤はイージス隊員を前に出して防御を固め、ここぞという所で隊の中央から突破力の優れた兵を露出。メリッサを先頭にして槍のような貫通力で敵陣を突破していった。
 さすがは百戦錬磨。神秘戦闘を心得ている。
「みんな」
 そんな中、竜一が目を鋭くさせた。
「敵の大将を特定した。指示する方向へ一直線に突撃。撃破してくれ」
「「了解!」」

 エル隊とドラゴン隊がそれぞれ敵の大将を見つけた頃、一段遅れる形で錠司隊は進行していた。
 というのも、隊のダメージコントロールをはかりながら慎重に進めていたからである。
 その分先頭で戦っていたラヴィアンはじらされっぱなしである。
「なあおい、まだ大将みつからねーのかジョージー!」
 敵の繰り出した巨大なソードアタックを、左拳に纏わせた魔道シールドで反射させるラヴィアン。
 流れるような右拳からのフレアバースト。敵兵たちが一気に吹き飛んでいく。
『いや、見つかってはいる。だけど周辺のガードが外れねえんだよ。多分こっちのエースを誘い込んで押さえ込む気だ。手前の戦力潰してうまいこと誘い出したいんだが……』
「フン、小バエの退治に何時間かけるつもりだ」
 レオンハルトは剣を垂直に立てると、前後を返し、銃口部分を自らの顎につけた。
「What a Friend we have in Jesus, All our sins and griefs to bear――」
 この剣には既に銃機構は存在していない。だが銃口とトリガーだけはついていた。
 刃に口づけをし、トリガーに指をかける。
 トリガーを引く。瞳孔がぐわりと開いた。
「――amen!」
 空砲が鳴るや否や、レオンハルトは駆けていた。
 矢が大量に降り注ぎ、身体に何本も突き刺さる。
「我が肉は薬莢である」
 痛みを全て無視し、相手の身体を切り裂く。
 敵兵の槍が何本も刺さり、貫通した。
「我が骨は弾頭である」
 痛みを全て無視し、敵兵の腕を次々に引きちぎっていく。
 敵兵の剣が肩に食い込み、めりめりと浸食してくる。
「我が血は加薬である」
 痛みを全て無視し、敵兵の顔面を素手で破壊した。
 無数の敵兵が飛びかかってくる。
「我が魂は雷管である」
 剣を握りしめ。
「ゆえに」
 レオンハルトから大量のエネルギーが噴出し。
「我が身は銃弾である!」
 敵兵を一斉に薙ぎ払い、めちゃくちゃに破壊した。
 おそらく直刃フィクサードを素体にしたものなのだったのだろう。血と肉を大量に顔にはりつけたまま、レオンハルトは教会の司祭のような笑顔で振り返った。
「続け、死にたくなければ下がっていろ!」
 レオンハルトの前に、大将を守っていたであろうやや強力な暗黒兵が立ち塞がる。
『でかした司祭。そいつを集団で押さえ込め。敵大将はファイヤーボールに任せる』
「よしきたァ!」
 敵兵を殴り倒して走るラヴィアン。
「俺はいつだって最前線だぜ!」


「酒呑隊長、観測鳥が撃破されました! 移行のアナウンスは?」
「配置図を送れ。……よし」
 マスターテレパスで送られてきた敵味方の配置図を参照しながら、雷慈慟は状況を分析した。
 士気が高まった影響で隊全体の勢いが増している。序盤から敵をこまめに倒させたことでその勢いは更に加速。スタミナ問題は回復チームをこまめに交代させることで解消できているほか、敵の取り逃しを避けたことで回復チームへの被害が大幅に軽減されている。
 非常に順調に進んでいるが……しかし。
「心配だな」
「何がです? 楽勝じゃないですか!」
 笑う通信兵に、雷慈慟はきわめて深刻な顔で述べた。
「天乃斬り込み隊長だ」
「あ……」
 天乃も神秘業界では並々ならぬ実力者だ。並の敵兵なら致命傷を受けることもなく、回復チームのフォローで事足りるが……。
「大将相手に無傷ではいられまい。ここが最後の戦場とならなければいいが」
 一度目を瞑り雷慈慟は大きく見開いた。
「隙あらば勝機、逆に晒せば突かれる」
 手を翳し、叫ぶ。
「戦術攻勢!」
 兵が天乃の周囲を固めるように飛び出し、敵兵を次々に破壊していく。
 一般兵の相手をせずに済んだ天乃は……。
「やっと、見つけた」
 暗黒兵団の大将格。暗黒将と接触した。
「さあ、踊って……くれる?」
 気糸を大量に放出しながら、天乃は飛んだ。
 身体を変化させ、同じく飛び上がる暗黒将。
 全身から放った大量の糸が、天乃を、そして暗黒将を貫く。
 常人なら全身をバラされているところだが、天乃は高速回転。相手を強制的に巻き取ると、相手の首に気糸を巻き付けた。
 同時に天乃の首にも糸が巻き付く。
「死線の上、を舞い、踊ろう」
 首が飛んだ。
 暗黒将の首。
 と。
 天乃の――。
「そういう演出いらねえんだよおおおおお!」
 天乃の直上から錠司が降ってきた。
 例の高度が高ければ高いほどノリがいいという必殺技、である。
 暗黒将から伸びた糸を強引に断ち切り、着地した。
「エル隊、こいつとっとと下がらせろ!」
「……でも」
 中指を立てる錠司。
「デモもストライキもあるか! そういう『最終決戦を前にスタミナ切れで死にました』みたいなのいらねえんだよ! あとお前が死んだら士気がダダ下がりするんだよ!」
『本音は後者か』
「いいから運べ! こっちの先頭は司祭に引き継がせる!」
『了解した。全軍、大将の一人を撃破した。一気呵成に制圧せよ!』
 新風紀委員会と暗黒兵団が入り乱れる。
 その中に、レオンハルトが流れ着くかのように現われた。
「黙示の日は近い。総ての谷は身を起こし、総ての山は身を低くせよ!」
 敵軍の中から顔を出した暗黒将に狙いを定め、突撃するレオンハルト。
 自らを弾丸としたかのような鋭い突撃に対し暗黒将は、『青い二丁拳銃』を突きだした。
「――愚か者めが」
 零距離で全力射撃。レオンハルトはそのすべての弾丸を身体で受け、暗黒将の首を一息に切断した。
 通り過ぎると同時にもう一閃。胴体を引きちぎるかのように強制切断した。
「『祈り』とはこうでなくてはな!」
 一方。
 レオンハルトの離脱した錠司隊は、暗黒将との戦闘に入っていた。
「てめーが隊長だな。タイマンしようぜ!」
 殴りかかるラヴィアン。同じく殴りかかってくる暗黒将。
 二人の拳が激突し、凄まじい爆発がおきた。
 暗黒将を支援すべく群がってくる敵兵たち。だが、そうはさせまいとラヴィアンたちをぐるりと囲むように兵が展開した。
「俺たちに気にせず、思う存分やってください!」
「レッドジャイアント戦のビデオ見ました、ファンです!」
「っしゃあ!」
 ラヴィアンは腕をぐるぐる回して魔法を発動。
「これは本物の魔法だ! 滅びのブラックチェインストリーム!」
「――!」
 大量の鎖を解き放つラヴィアン。暗黒将もまた魔法の鎖を解き放ち、敵味方まとめて吹き飛ばされていく。
 ラヴィアンとて無傷というわけには行かない。
 が、劣勢では、まずない。
「これが俺の全力全開!」
 両拳をがしりと組み合わせる。
 その間も大量の鎖がラヴィアンに降りかかるが、その全てが味方からの支援回復弾幕に弾かれる。
 エネルギー完全充填。ラヴィアンはカッと目を見開いた。
「今だッ――シャイニングマレウスノヴァ!」
 途端、ラヴィアンを中心としたエリア全体がまばゆい光に包まれた。

 光のドームを横目に、竜一はほのぼのとしていた。
「うーん、派手だなあ。でも参考になる。……よし!」
 竜一は自分を拘束していた手錠の鎖を引きちぎると、ファイティングポーズで叫んだ。
「鋒矢の陣! くさびを打ち込み押し開け! メリッたんを中心に敵を押しとどめ、大将との一騎打ちだ!」
「「了解!」」
 ドラゴン隊はメリッサを先頭にして敵軍へ突撃。まるで流星のごとく暗黒を切り裂いて進んだ彼らは、ついに大将へと接触。爆発するかのように広がり、フィールド確保を始めた。
「結城隊長!」
 三人娘の一人が振り返った。隊長補佐官兼通信兵という肩書きを持ち、29歳独身のEカップだという。なお後半は自己申告である。
「死亡フラグになりそうなこと言っていいですか!?」
「今ならよし!」
「この戦いが終わったらアドレス交換しましょう!」
「三人一緒ならよし!」
「了解!」
「「了解しないで!?」」
「よーしノッてきた! 後は頼んだよメリッたん!」
 一方最前線。
「……ううん」
 メリッサはこめかみを軽くもんでいた。
 緊張がゆるんでいる。が、それは隊全体から恐怖が取り除かれていることを示していた。
 こういう指揮も悪くない。
 なぜなら、人々を守れるからだ。
「市民に指一本たりともふれさせはしない!」
 メリッサは腕が無数に見えるほどの超高速連突を繰り出した。
 対する暗黒将も息をつかさぬほどの高速連突を繰り出してくる。
 突いた剣を弾きつつ突き、その剣をまた弾きつつ突く。
 呼吸がとまり、時間までも鈍重に見えた。
 スピードは互角。
 練度も互角。
 だが体力の消耗度合いではこちらが劣っている。
「ッ――!」
 メリッサに特殊ワイヤー巻き付いた。
 動きを封じられる。相手の剣が胸へ高速で迫る。
 メリッサは……。
「消えな、さい!」
 ワイヤーを無理矢理引きちぎり、剣を繰り出した。
 自らを貫く敵の剣。敵を貫く自らの剣。
 メリッサの剣の先端が、宝石型アーティファクトを破砕した。
 そして暗黒将は消え……周囲から全ての暗黒兵団が消滅していく。
 よろめいた彼女を、周囲の兵たちが支えた。
「……やりましたね」
 メリッサは薄く笑い、剣を天へと掲げた。
 勝利の声が、鳴り響く。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
 お疲れ様でした
 見事暗黒兵団を撃破。
 味方への被害も少なく抑えられました。
 市民への被害はほぼありません。