● 時は数ヶ月前に遡る。 「止めろオオオオオオオ! なんとしても止めろオオオオオオオオオオオ!」 「止めた奴には金一封!」 「馬鹿野郎こんなもんいくら積まれてもできるかぁい!」 「じゃあ妹のパンツを」 「やあああってやるぜええええ!」 チベットに残存する勇猛果敢なリベリスタたちがそれぞれの手に網やら縄やら水着ブロマイドやらを持ち、一体の石像にすがりついていた。 世にも巨大なその石像は、破壊されたタルパロイド施設の残骸をあーしてこーして無理くり作ったと言うシロモノで、がれきを使って建造だなんてエコだねとか言っていたモンだが……。 「ぐぬぬ! まさか素材に籠もっていたエネルギーによって柄リューション化してしまうとはおもわなんだ!」 「だーから新しい素材使いましょうって言ったのに!」 「だってお前あのお金が浮いたらオネーチャンの店はしごできるって」 「ええい今はそれどころではないわい! 皆の力を結集するのじゃ!」 「「オーッ!」」 勇猛果敢なチベットリベリスタの皆さんが円陣を組み、不思議なポーズをとるやいなや、謎の光線がびゅばばーっと石像へと放たれた。 なんか知らんが激しい爆発がおき、石像は爆炎の中に包まれる。 「やったか!」 「いや……待て! うわあ!」 爆煙を突き破り、巨大な石像が空へと飛び立つ。 しかも。 「む、無傷だとう!?」 そう、石像はピンピンしていたのだ。 タルパロイド施設の特殊建材でできているがゆえに、並大抵の攻撃は通用しないのだ。 地面をぽかぽか殴るチベットリベリスタ。 「くっそう! くっそう! 一体なんであの石像は急に動き出してしまったんだ!」 「それは……」 チベリスタは顔を曇らせ、重々しい顔で言った。 ● 「『なんか携帯で呼ばれたから』だそうです」 「えー……」 所変わってアークブリーフィングルーム。 「アークリベリスタたちの活躍をたたえて建造された『超夢想幻想ドラゴンナイトの像』は一時期平和のシンボルとして皆に愛され、写真撮影やグッズ販売などでそこそこいい収益を得ていたそうですが」 「おいまで何商売してんだ」 「たくましいなあチベリスタ」 「数ヶ月前にエリューション化をし始めなんとかだましだまし抑えてきましたがついに限界を迎えて……今日本に飛んできているそうです」 「えー……」 いくら平和のシンボルとはいえエリューション。制作までの経緯やら制作者の意図やらをガン無視して動いている。 このままではただ無作為に破壊するだけの存在となりはててしまう。 それは日本の皆も困るしようやく観光で復興ワンチャンあるで言うてたチベリスタさんたちも困る。 ここはひとつ穏便に海上でバトってお帰り願うしかあるめえよ、というわけである。 『超夢想幻想ドラゴンナイトの像』はアークリベリスタの中でもひときわイっちゃってる奴が周囲の幻想を取り込みながら生み出した怪物を元にして生まれた像である。エリューションはよせばいいのにその怪物部分だけをトレースして、怪物的かつ荒唐無稽な強さを発揮している。 「基本的に防御力はむてき。攻撃力はさいきょう。戦闘力はむげん。と言われています。さすがにそれは現実的にありえないので、攻撃に対する無効化スキルを備えている破壊力の高いエリューション、ととらえるべきでしょう。そこで――超夢想幻想ドラゴンナイトと対等に戦うための兵器をご用意しました。こちらです!」 ヒモをぐいっと引くフォーチュナ。 すると後ろにあった紅白の幕が下り、キメッキメのポーズをとった『ニマ・チョクシーと愉快な仲間たち』が現われた。 全身ビビットピンクのドレスに身を包み、日傘を広げて高笑いするニマ・チョクシー。 「あーらぁ、アークのお兄様にお姉様。なーんて無様なんでしょー。タルパロイドの残骸に傷一つつけられないだなーんて!」 お前死んだんじゃなかったの? と思った人は『<アーク傭兵隊>TALPAROID-SEMIFINAL』をもう一度ご覧頂きたい。 まかり間違って人間の記憶を宿してしまったタルパロイドニマ・チョクシー。彼女はアークの手によって完全停止したが、後に八幡博士の調整をうけて正常稼働が可能になったのだ。 「じゃあその破綻した性格は素のものだったんだ」 「ぶっ殺しますわよ」 「で、兵器っていうのは……」 きょろきょろする一同に、ニマ・チョクシーは自ら進んでミラーボールを作成すると、輝きを浴びながら両腕を広げた。 「むろん、このわたくしたちですわ!」 ● 作戦概要をおさらいしよう。 君たちは東シナ海を自力で航行中のエリューション『超夢想幻想ドラゴンナイト』を海上で迎撃し、ギリギリまで弱らせるのが任務だ。 現地への輸送と弱ったエリューションの回収はチベットリベリスタたちに任せよう。ただの石像にした上で現地に戻してくれる手はずだ。 戦闘方法はいつも通り……と言いたいが、今回はタルパロイド計十二機の使用を許可されている。 これらは独自の意志を持たないが、使用者の武装や乗り物、強化パーツとして機能する。 もし使用者の脳内に特殊な領域が備わっていた場合は半自律行動も可能だ。 「ではアークのお兄様お姉様。参りますわよ!」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:八重紅友禅 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2015年02月03日(火)22:26 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●『まかりまりがった』理想像 ユーフォリア・エアリテーゼ(BNE002672)は超夢想幻想ドラゴンナイトを撮影したという写真をびらりと広げた。 かなりの距離から撮影しているにもかかわらず、全部カメラ目線かつキメ顔だった。 「はやや~、この顔、誰かに似てませんか~? あれ~?」 「誰だろうなあ、さっぱり分からないなあ……」 『はみ出るぞ!』結城 ”Dragon” 竜一(BNE000210)がカタカタ震えながら応えた。 モデルの半分は彼だし。 飛んできてる原因も彼だった。 何言ってんだお前と思った方は『<ハロウィン2014>ここぞとばかりにきわどい格好をしよう』をいま一度ご覧頂きたい。 「いや、誰かを責めるなんて簡単だ! 誰も悪くない! 言い悪いなんて、関係ないんだ……!」 「またテイルズきっての親善大使みたいなことを」 そう言って、『グラファイトの黒』山田・珍粘(BNE002078)は窓の外を見た。そう、ここは既に洋上。船の中である。 「しかし、アークリベリスタのなかでもひときわイッちゃってる方ってすごいですね。あんなのを作り出してしまったんですから」 「ねー、誰なんだろーねー」 『狂気的な妹』結城・ハマリエル・虎美(BNE002216)が世界で一番可愛い顔で言った。 「それにしても最高の技術だなぁタルパロイド。ひとつくれいないかなー」 「シナリオ展開と活躍のしかたによってはEXスキルにする計画が数ヶ月前まではあったとかなかったとか」 一人だけ妙に豪華な椅子に座って足を組むニマ・チョクシー。 「ふむ、よし。この機会に潰そう。観光資源として許される最低限のラインはどのあたりだろうか? 首の有無か?」 「まあまあ」 軽く殺気だった『ナイトオブファンタズマ』蓬莱 惟(BNE003468)に、『境界の戦女医』氷河・凛子(BNE003330)が落ち着いた様子でティーカップを差し出した。 同じ調子でミリーにはマンガ肉を、竜一にはパンツ(行きがけにファミマで買ったやつ)を渡している。 そのせいで今ミリーはおとなしい。 「飛んでる石像ぶっこわすのよね! 完全理解!」 それまでリスみたいにマンガ肉をむもももももって食ってた『フレアドライブ』ミリー・ゴールド(BNE003737)が一瞬だけ顔を上げて言った。 『立ち塞がる学徒』白崎・晃(BNE003937)はオールバックにした前髪をぐしぐしとやって、小さく息を吐いた。 「世界がヤバい時期にチベットからも厄介ごとがやってくるとはな。まあ、今回は変わった装備もあるし、ちょっと楽しみなのは事実だ」 と、そこで船内アナウンスがかかった。 『間もなく目標接触地点に到達します。リベリスタ、出撃準備!』 ●理想幻想と夢想幻想 「白崎晃、タルパロイド三号――出撃する!」 船上で背部ウィングを展開。カタパルトでもって海上へ射出された。 「なんでカタパルト?」 「ロボットアニメ好きそうでしたから」 「私はやりませんよ、そんな出撃」 一連の様子を見送ってから、凛子は船からぴょんと飛び降りた。 水上には赤いエアロバイクが止まっているが、タルパロイドの刻印が正面部分に刻まれている。 「それではお先に」 二本指を立てると、凛子のバイクは水上を走り、そのまま空へと飛び上がっていった。 「あら~、割となんでもアリなんですね~。もっと無茶を言えばよかったですよ~」 ユーフォリアは翼を展開。ホバリングしながら両手に手っ甲型のタルパロイドを装着した。 同じくタルパロイドを装着し始める一同。 「さあ行こう、みんな」 滝一は遠くの洋上を進む巨大な像を見上げた。 「俺は友として、お前を止める!」 洋上を進む超無双幻想ドラゴンナイト。 緩く腕を組んで顔の片方を手で隠すポーズを維持していたが、それまで閉じていた目をカッを開いた。 同時に大量の『りべりすたもどき』が出現する。 「お姉様、来ましたわ! モドキ、数30!」 「なんですって?」 ニマ・チョクシーの呼びかけに、山田さんじゃなくて珍粘ちゃんでもなくて、えーっとそうそう、なゆちんは緊迫した顔で振り向いた。 「今の、もう一度」 「数30ですわ」 「その前」 「キマシ?」 「もっと」 「お姉様!」 「もう一度」 「お姉様ァー!」 「何遊んでるんだお前ら!」 ドラゴンナイトが謎のポーズから謎のビームを放ってくる。晃はニマ・チョクシーの前に陣取り、タルパロイドで強化した鉄扇を翳した。 空中で晃へ命中。七色の光が拡散し、虚空に吸われて消えていく。 「コホン、では早速行きましょうか?」 なゆちんは背部ジェットパックを起動。丁度いい高さまで上がると、ドラゴンナイトめがけて突撃した。 行く手を阻もうとするモドキ。 「はやや~、小さくって可愛いですね~」 手っ甲から大量の杭を引き抜き、一斉に投擲するユーフォリア。行く手を阻んでいたモドキが次々と撃墜され、海の中へと落ちていく。 「一掃するのは難しくなさそうだな」 海の上を『待機』の姿勢で滑っていた惟は、虹色の剣を振りかざした。 「あれ、今日はあの時の騎士出さないの?」 「相手と相性が悪いからな。決してイロモノを相手にしたくないわけではない」 「そうなんだぁ」 疑い零パーセントで頷く虎美。 「モドキを一気に蹴散らすぞ」 「おっけい、いでよ『妹を愛しすぎて生きてるのが辛いお兄ちゃんズ』!」 虎美は大量のちっちゃいお兄ちゃん(竜一を数段階美化したやつ)を生み出すと、モドキめがけて次々に発射した。 虎美のためなら死ねると唱え一心不乱に突撃していくちっちゃいお兄ちゃん軍団……を、真顔で見つめる滝一。これに色んなものを持って行かれたんだなあという真顔で見つめる惟。 は、おいといて。 惟は斬撃による無明を発射。なゆちんの進路上にあるあらゆる敵を蹴散らした。 「援護どうも」 二本指を立て、ドラゴンナイトへ高速で突っ込むなゆちん。 丁度腹の部分を貫通し、背中から飛び出した。 反射的にお腹を押さえるドラゴンナイト。 「術式執刀します」 丁度後頭部あたりに回り込んでいた凛子がバイク中央のスイッチを押し込み、巨大な矢がバイク両側面から連続発射された。首筋あたりにざくざく刺さる針。これが小五郎のおっちゃんなら『ウッ』とかいって眠る場面だが、相手はチベットリベリスタの夢が具現化した存在。首の後ろを押さえて何かされたかなという顔をした。ちなみにダメージは結構入っている。やせ我慢である。 「攻撃はまともに入るみたいね。だったら、ここへの攻撃はどうかしら!」 ミリーは左腕をチューブ型の銃に変えると、ドラゴンナイトの股間へ狙いを定めた。 「ハカイトウシビーム、発射!」 「オオウッ!」 反射的に股間を押さえる竜一。 が、当のドラゴンナイトはというと。 なんか股間がビームを弾いていた。 悲しげに首をふる虎美。 「無駄だよミリー。お兄ちゃんの股間が鋼のように硬いなんて、そんなの常識だよ……」 「なんの常識だよ」 が、ドラゴンナイトはすごく痛みをこらえる顔をしていた。 「あっ効いてる! 普通に効いてる! やせ我慢してるやつだわ、あれ!」 「そりゃあなあ」 鉄扇を畳んで渋い顔をする晃。 その隣で、竜一が気合いを入れるポーズをとった。 「ハァッ!」 途端滝一の周りを金色の粒子が纏い、なんでか金色になった髪の毛が上方向に立ち、なんでか上半身の服が全てパージされ、シュオンシュオンと口で言いながらゆっくりと上昇していった。 「銅像エンドは許さない。そんな激しい怒りによって目覚めたスーパー竜一だ。ハアッ!」 両手をこう、ワニが口開いたような形にして腰から前へ突き出す竜一。すると変なビームがほとばしり、ドラゴンナイトへ直撃した。 「さあ、笑えよドラゴンナイト」 ●さらばドラゴンナイト 「あーらぁ、みなさん弱いですこと! わたくしの足下にも及びませんわぁ! アハハハハ!」 ニマ・チョクシーがモドキを次々にたたき落としながら一人で調子に乗っていた。 「さあいくらでもかかっていらっしゃいなぁ! 本当の戦いというものを教えてあげキャア!?」 ドラゴンナイトのまき散らしたなんかキラキラしたものがニマ・チョクシーの頭上で爆発し、彼女はきりもみ回転しながら海へと落ちていった。 「わたくしを倒したくらいで調子にのるんじゃありませんわよわたくしには第二第三のタルパロごぼぼぼぼぼ」 中盤から舐めプレイに走ってかませキャラに成り下がる癖はまだ抜けていないようだった。 ああはなるまい、という目で見下ろすなゆちん。 そんな彼女たちを見下ろし、ドラゴンナイトは急にカッコイイポーズを取り始めた。 頭上に出現する巨大ミラーボール。 ドラゴンナイトが踊り出すと同時に、周囲に散ったキラキラが次々に爆発し始める。 「ドラゴンナイトフィーバーだ、よけろ!」 「どうやって? きゃあ!」 爆発に巻き込まれ、めちゃくちゃにかきまわされるミリーたち。 竜一は爆発の直撃を受けたのか全身傷だらけのまま荒い呼吸をしていた。 あとまだ上半身だけが裸だった。 「ドラちゃん、お前は理想だ。だがな、人間は綺麗なだけじゃない。善悪あわせて人間なんだ!」 どこからともなく説教用BGMが流れてきた。 勢いに乗って顔アップになる竜一。 「過去のタルパロイドたちもそうあった。だが、だからこそ過去を緩そう! 現在(イマ)を手に取り、未来(アス)を語ろう! 清濁飲み込んでこその人間だ! 人の心を知る者ならば……タルパロイド、ニマ・チョクシー! 俺に力を貸せェェェェェェ!」 どこからともなく流れてくる処刑用BGM。 海から十字のポーズをしたニマ・チョクシーがざばぁっと引き上げられ、輝きはじめる。 「理想は象徴のままでいろ、ドラちゃん! 変し――」 「もぉぉらったああああああ!」 竜一とニマ・チョクシーが合体するのかなと思ったその寸前、虎美が絶妙なボディタックルで竜一の腰に抱きついた。 なんでかっつーと、このまま行くと竜一が暴走するだろうなと察した凛子が虎美をカタパルト発射したからである。 あうんと言ってはじき出される竜一。タルパロイドの外れたバニラ竜一になって水没。 一方の虎美は三倍以上のタルパロイドを強制的に支配下に置き、自らとも一体化して強力な『最強お兄ちゃん』を作成した。 「虎美ペロペロ! 虎美ペロペロ!」 奇っ怪な言葉を叫びながら七色のオーラを発するお兄ちゃん。 彼のよく割れたお腹からは虎美の世にも穏やかな顔がはみ出ていた。かなりえげつない合体をしてるんだなっていうのが一目で分かった。 「虎美ペロペロ!」 お兄ちゃんはそう叫ぶと、ドラゴンナイト……ではなくなんでか晃へと突っ込んできた。 「うお!? なんだ!?」 パンチを鉄扇で防御する晃。 連続して繰り出されるパンチをなんとかしのぐ彼だが、状況がわからない。いつまで続けていいものか。 とにかく放ってはおけないので、晃はお兄ちゃんの背後に回ってがしりと羽交い締めにした。 「どうなってるんだ、俺がなにかしたか」 「いや、おそらく暴走だろう」 惟が真顔で言った。 すっごい真顔だった。 「以前『超理想幻想ドラゴンナイト』を作成したときは、これのきわめて純度の高いブレイン・イン・ラヴァーが影響していたからこそ制御しきれていたが、今あるのは虎美の妄想、竜一の勢い、そしてニマ・チョクシーの破綻した人格だ。制御出来る要素がまるでない」 「たしかにー」 「ていっ!」 とか喋っていると、お兄ちゃんの股間にミリーの蹴りが炸裂した。 おおうと言って震え上がるお兄ちゃん。 そして虎美もろとも海へと落ちていった。 「なるほど、こういう事態になるんですね」 「こわいですね~」 妙に冷静な顔で見下ろす凛子とユーフォリア。 「実は分かってやってませんでしたか~」 「そんなわけないのです。治癒の吐息よ」 凛子は手際よく操作盤をタッチし、治癒空間を形成。ダメージを受けたミリーたちに伝播させていく。 「さて、では」 「ザックザックといっちゃいますよ~」 ユーフォリアは両手から大きなブレードを展開すると、ドラゴンナイトへ突撃した。 その横をジェット噴射で飛ぶなゆちん。 「同時に行きましょう。私は右から」 「はいは~い」 ドラゴンナイトのビームを回避しながら左右に分かれる二人。 同時に肩へブレードを突き刺し、それぞれ交差するように飛行した。 ばっくりと胸部がX字に切り裂かれ、ドラゴンナイトは叫び声をあげた。 「またつまらぬものを……」 ブレードをしまって呟くなゆちん。 空中で停止していたなゆちんたちを払いのけようと、ドラゴンナイトの腕がせまる……が、横からすっとんできた凛子がユーフォリアともどもかっさらっていった。 「それは?」 「一度言ってみたかったんです」 一方、惟とミリー、そして晃はドラゴンナイトの顔の位置まで飛行していた。 「相手の耐久力はギリギリだ。きめるぞ」 「よし、久々にあれやるか!」 身構える晃。 その横で、ミリーは腕を巨大な砲台に変えた。 「スーパーハカイトウシビーム!」 巨大なビームがドラゴンナイトの顔面に炸裂。 のけぞったところへ、晃が渾身の蹴りを叩き込んだ。 「自分でも忘れがちだが、当たると痛いぞ! ラストクルセイド!」 全身にばきばきとひびが入っていく。 惟の目がぎらりと光った。 「貴様は怨霊の残滓と雑多な思念に動かされているにすぎん。その妄念、因果すべてを割断する!」 惟の剣が十倍以上に巨大化し、ドラゴンナイトへと叩き込まれた。 『ぐ、ぐああああああああああ!』 断末魔をあげ、粉砕されるドラゴンナイト。 「あっ」 「あっ」 「あ~」 真顔で見上げる晃たちをよそに、超理想幻想ドラゴンナイトは腰から真っ二つにぶっ壊れ、海へと沈んでいったのだった。 ●それでもどっこい生きている 駆けつけたチベットリベリスタの皆さんがガキ泣きしたのは言うまでも無い。 が、そこはしぶといチベット民。似たような像を造ってもうワンチャンやってみんべと元気を出して帰って行った。 そのついでにプレゼントされた『ドラゴンナイトチョコ』とかいうくっそまずいお菓子を海へ放り投げつつ、惟はしばし思いにふけっていた。 「どうしたの? おなかいたいの?」 一方でチョコをリスみたいにもももももって食べていたミリーが声をかけてくる。 後ろでは、口からぴゅーっと海水を吹く結城兄妹を凛子がけなげに面倒みていた。 頷く惟。 「八幡博士はアークに軟禁。完成品のタルパシードも全て回収。力が残留していたチベット寺院の残骸も今は海の底だ。タルパロイドに関する事件はこれで全て片付いたとみていいのだろうか……と」 「まあそうなんじゃないか? 最後がなんだかギャグパートみたいだったが、俺は楽しかったぞ」 腕をぐるぐるやりながら笑う晃。 「そうですね~。確かにちょっとおもしろかったですよ~」 同じくふわふわ笑うユーフォリア。 なゆちんも同じようにふわふわ笑う……かと思いきや、なんだか腑に落ちない顔をしていた。 「そういえば八綿博士ってチベットの施設から脱退して勝手に研究を進めてたんですよね。チベットはチベットで高僧の組織が施設を提供していたわけですけど……博士ってどこからそんなお金貰ってたんです?」 「んっ?」 目を覚ました竜一が身体を起こす。虎美は『オニーチャァン』とか言いながらまだもだもだしていた。つまり寝ていた。 「それ、どういう……」 「『本当の黒幕』が存在する。ということでしょうか?」 立ち上がり、振り返る凛子。 世界は緊迫の限りを尽くし、週末の時が今にも近づいているかのようだった。 ここにもまた、週末は近づいている。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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