● 『ザ、ザザー………うらのべ、うらのべ? いちにのさーん! どんどんぱふぱふー!! さぁ、始まりました、裏野部ラジヲ! 本日は誕生日パーティで、空は血の雨、大地は紅く染まるでしょう! ――えっ、誰の誕生日かって? 忘れたなんて言わせない。思い出して、もう一度。 何処よりも危険で、何処よりも殺して、何処よりも過激な存在を』 ……特殊回線123、一年ほど前に途切れたはずのとある組織の悪ふざけ。 語るのは以前の明るい悪意と惨劇を撒き散らすDJとは異なり、奥底に深い感情を押し込めた女の声。 たまたまそれを聞き止めた者は、決して多くはなかっただろう。 それでも女の声は、執念の様に人を呼んだ。 「ふふ、香我美ちゃんもカワイソだったねえ」 中華風の赤いワンピースに身を包んだ女が、何でもない事の様に笑った。 「別に時期を合わせなくとも良かっただろう?」 女に腕を取られた黒い服の無愛想な男が目線を移す。 「うん。でも折角だからいいんじゃないかなって。一二三様も香我美ちゃんも嫌いじゃなかったし、あたし達もちょっとのんびりしちゃったもん」 軽い軽い言葉だが、女の周りの光景は酷い有様だった。 呻き声。助けを求める声。血で染まるカーペット。赤い噴水。 「でもまさか、アークが一二三様倒しちゃうまで強くなるなんて思わなかったなあ」 「そうだな」 「もっと早目に派手にやっておけば良かったかもねえ。あ、でもその間も楽しかったから全然いいんだけど」 掌を取って、指を絡めて。 「重ちゃんと死葉ちゃんはちゃんと隠れられたかな?」 「さあな」 「十年後か数十年後か、あの子達も頑張ってアークに復讐しにくるかもね」 じわじわと広がっていく赤。無感動に見詰める男と、頓着しないで笑う女。 ――裏野部が賊軍として日本に叛旗を翻した時、全ての人員が従った訳ではない。 裏野部一二三に選ばれなかった者。思想を違え自ら離れていった者。 この二人も、選ばれず選ばなかった存在の一つ。 一二三に選ばれるだけの忠誠はなく、一二三を選ぶだけの忠心もなく。 「でもあたし達はそろそろ良いかな。死のうか、ね、燈篭?」 赤い唇が、秘密を囁くように開いて咲いた。 「お前が望むなら、私は何時だって、揚羽」 薄い唇が、狂気だけは冷えた声の下に秘めて応えた。 「沢山の人を巻き込んで」 「沢山殺して」 「安らかに死ね」 「苦しんで死ね」 「沢山の人が不幸になれば、あたし達きっとその上でもっと幸せよ」 「お前が言うなら、そうなんだろう」 それでも彼らは、『裏野部』に属するだけの精神と歪みを持っていたから――。 ささやかな祭りに、一つ乗った。 ● 「はい皆さん、新年明けた所で正月休みは長い間はくれないようですね。今年も皆さんのお口の恋人断頭台ギロチンが愛と共に説明をお送りしますが。まずはこちらをどうぞ」 溜息と共に『スピーカー内臓』断頭台・ギロチン(nBNE000215)は、一枚の招待状を差し出した。 宛先は『ハッピーエンド』鴉魔・終(BNE002283)とアークにだ。 ――謹啓 麗かな初春の候 益々御清栄のこととお慶び申し上げます。 さて、めんどくさい言葉はこの辺にして、私達とりあえずたくさん殺そうと思います。 良かったらお友達でお誘い合わせの上で殺し合いしましょっか! 場所と時間はどうせ分かると思うんで良い頃合で来てくださいね! 来なくても出席者は沢山いるはずなので問題ないですけど、一二三様の誕生日パーティも兼ねてるので賑やかだと楽しいなって思います! まるでふざけた文面と、物騒な内容。ギロチンは招待状を畳んだ。 「……差出人は元裏野部フィクサード『揚羽』と『燈篭』。賊軍が行動を起こした際には姿が確認されていませんでしたが、どうやら海外辺りに身を潜めていた様子です」 何故今行動を起こしたのか、と問えばフォーチュナは首を振る。 「裏野部の『イベント放送』が唐突に流れたのが切っ掛けかと思います。……乗る残党がそこまで多いとは思えませんが、やる事は相変わらずの裏野部です。派手に壊して派手に殺す。こんなふざけた誘いですが、スルーを決め込むわけにも行きません」 どうやら裏で糸を引いたのは、賊軍の生き残りであり一二三の信奉者であるフィクサード『女王蜂』不死偽 香我美と目されるが、彼女も何処かで騒ぎを引き起こすのだろう。 再びの溜息。 「彼らは『心中式』だと笑っていました。無論、行動自体は裏野部のイベントに乗ったからかも知れませんが、その目的は『二人で死ぬ事』の様子です。理解できませんか? ぼくにはできません。死にたいなら二人で勝手に死ねと思いますが、彼らにその理屈は通用しないらしい。死ぬ為に命懸けで人を殺して人を傷付ける」 身勝手な目的と身勝手な行動。それに巻き込まれるのは無辜の人々だ。 「皆さんが付く頃にはどうにか大半は避難させられていると思いますが、全ては難しい。……一人残らず守ってくれとは言いません。なるべく被害を広げないようにしてください」 血の惨劇を、嘘にしてください。 そう告げたフォーチュナは、小さく頭を下げた。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:黒歌鳥 | ||||
■難易度:HARD | ■ ノーマルシナリオ EXタイプ | |||
■参加人数制限: 10人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2015年01月24日(土)22:44 |
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■メイン参加者 10人■ | |||||
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● 風はあるが、穏やかな天気の午後だった。 平日とはいえ、それなりの規模であるショッピングモールが賑わっていた事は想像に難くない。 その中で避難が間に合わなかったのは五百名程度、というのは不幸中の幸いだったと言うべきなのか……否。本来ならば出るはずのない被害だったのだ。 フォーチュナはその半分まではまだ想定内だと溜息を吐いた。 だとしても、そんな事を許容する程――アークのリベリスタは喪われる命に対して寛容ではない。 「まだ裏野部の名を聞くことになるとはな……」 「裏野部って……よくしらないんですけど確か物凄く怖い人達ですよね……?」 顔を顰めて苦々しげに吐き捨てた『不滅の剣』楠神 風斗(BNE001434)の言葉に『落伍者』蜂須賀 澪(BNE005088)が恐る恐る口を開いた。 裏野部。 もういないって聞いてたのに、と呟く澪の言葉通り、首領である裏野部一二三を喪い、事実上消滅した組織。実際に相対したことがあるかどうかはさて置き、その名を知らぬ者はここにはいない。 「大丈夫大丈夫澪たん、君にはそんな不安そうな顔は似合わないよ」 敢えていつもの調子で声を掛ける『はみ出るぞ!』結城 ”Dragon” 竜一(BNE000210)とて、裏野部に対し苦々しい思いを抱える一人である。 滅ぶ間際には七派の一派に過ぎない『裏野部』ではなく、日本へと矛先を向ける『賊軍』として立ち回り、多数の被害を齎したのも一部のリベリスタにとってはまだ風化するには早い出来事だ。まあそれはそれとして班分けは両手に花状態なので竜一としては悪くなかったりするのだが。 「組織滅んでもやる事は相変わらず派手っすね」 そんなもう一人の『花』――可愛らしいカエルの顔を模したフードを親指でくいっと上げながら、『無銘』布都 仕上(BNE005091)は最も近い入り口へと同じ班の仲間を先導するように駆けて行く。 時に過激派と称される彼らの行動はほぼ常に暴力と騒動を伴い、アークと衝突する機会はトップクラスであったと言っても過言ではない。 自らの楽しみの為に弱者を蹂躙するのに躊躇いはなく、暇潰しの様に命を弄ぶその様は……。 「……見てるだけでぶっ殺したくなるっすよ、ホントに」 闘争を控えた闘犬の唸り声にも似た響きを持った声が、少女の喉奥から零れ出す。 「死ぬ瞬間まで只管迷惑っつーのは、いっそ天晴れとすら思うぜ畜生共」 風斗や『てるてる坊主』焦燥院 ”Buddha” フツ(BNE001054)と共に仕上らと分かれた『ディフェンシブハーフ』エルヴィン・ガーネット(BNE002792)も忌々しげな調子で首を振った。 言動や格好だけ見れば、彼の方が粗野な印象を受けるが……彼の心を占めるのは、犠牲者を皆無にするのは不可能、という現実と、それを知って尚も叶う限りを助けるという覚悟だけだ。 「予想通り――フィクサード連中は一階の中央付近だな。やや東よりの方にいるぜ」 「一番近いのはどこだ?」 「西よりは三階。北が一階、南が二階……西か北か微妙な所だな」 千里眼でフィクサードの居場所を探り当てたフツと『百の獣』朱鷺島・雷音(BNE000003)が、エルヴィンの問いに事前に伝えられた位置と彼らの位置を照合する。 「分かった。俺らは三階からでも飛び降りていけるから多少は時間の節約になるだろう」 「オウ、って事で朱鷺島達は一階北の壷を頼むぜ!」 「了解した」 幻想纏いは全員ON、雷音が振り返れば、『誰が為の力』新城・拓真(BNE000644)、『星辰セレマ』エレオノーラ・カムィシンスキー(BNE002203)、『ハッピーエンド』鴉魔・終(BNE002283)も頷いた。 「姿を見ない、とは思っていたがまさかこうなるとはな」 「殺すのもなんだか、ご褒美をあげるみたいで嫌ね」 この班は全員、『揚羽』と『燈篭』と相対した記憶がある。目を細めた拓真の低い唸りに、エレオノーラが小さな溜息を伴い肩を竦めた。 特に雷音や拓真、終、そして竜一は覚えている。裏野部であった『砂蛇』が『蘇り』、一つの街を潰した出来事を。燈篭と揚羽がその一端を担い――止めに向かった自分達を退け、数多の命を喪う原因となった事を。止めに向かった彼らに咎はなかった。自らの命も危険に晒しながら戦った彼らを責めるのはお門違いというものだろう。だとしても……時に舞い上がり心を濁らす澱のように、底に自責を蟠らせたものも少なくはない。 飛行機をダーツに見立てた『ゲーム』以降は姿を晦まし、賊軍にも参戦しなかった様子だったが……かと言って行動を改め大人しくなった、という訳ではなかったらしい。 「今度こそ拾えるだけの命を拾って、ハッピーエンドにしてみせる」 呟いた終の言葉は覚悟だ。呼びかけても届かなかった、命が掌から零れて行くのを見るばかりの、血を抜かれるような感覚はもう十分だから。 平和なはずのショッピングモールの外見が――今だけは、人を飲み込む化け物の口に見えた。 ● 明るい天窓から差し込む光。緩やかな音楽と、ショッピングモールを宣伝する文句。 そこだけは日常のまま、通路に、店内に倒れ伏し呻き声をあげながら身を引っ掻き続ける人々が流す血がじわじわと広がる光景はいっそ悪夢のようだった。 「うちらは二階南側、っすね」 仕上がちらりと上を仰ぐ。悠長にエレベーターなどは使っていられない。駆け上るならエスカレーターか階段だが、最短にはやや遠い――ならば。 「ちょっと大人しくしてるっすよ」 「へ、ひゃあっ!?」 傍らの澪の腰辺りを持って片手で担ぎ上げ、大きなポスターの貼られた壁を駆け上がる。足の着く場所ならば、仕上にとってはどこも床と変わらない。 「仕上たん重くない?」 「お、重……」 「あ、澪たんが重いって言いたい訳じゃなくてここはジェントル的に」 「いいから黙って着いてきて欲しいっす」 「はい」 同様に駆け上がってきた竜一はともかく、澪にはこの真似はできない。最初の目標はあくまで壷の早期破壊であれば、仕上に躊躇う事など何もないし、状況を理解した澪とて同じである。 最奥に位置する店のやや横――まるで普通のオブジェのように置かれた小さな壷だが、同時に振り向いた十の目がそれがただの壷ではないと示していた。 「通しませんよ」 にこりと笑った男の顔は、知らない顔だ。それでも人ではないと、リベリスタにはすぐ分かる。フェイトを持たぬドッペルゲンガー、殺され乗っ取られた誰かの影。 「うへー、これがドッペルっすか」 これも、誰かの影。リベリスタかフィクサードか、それさえも定かではない殺された誰か。 彼らはまるで人間のように、壷の前に立ち塞がった。 人のようで、その動きには余りにも熱がなく、仕上は壷との距離を注意深く目で測りながら、敵を多く巻き込める位置を取る。 「自分の同じ顔とか出てきたら気持ち悪いってモノじゃないっすね、コレ」 「しかも自動でお喋り機能まで付いてると来た。ハイテクだろ?」 過去に自らと同じ姿をした影が前に立ち塞がり、同じように笑ってみせたのを思い出して竜一は軽く眉を上げた。たまには怖くない人と戦う依頼がいい――そんな澪のささやかな望みも打ち砕くような、人の模倣物。仕上のレインコートが翻り、荒れ狂うのは雷を纏った拳であり蹴り。 完全無欠の永続を纏うその動きは、喰らう当人でさえも一瞬注意を奪われるような滑らかな動きで手甲を叩き付け、打ち据える。 「一応出来る限り止めるっすけど、抜けてくかも知れないから注意っすよ!」 「は、はい、大丈夫です、耐えてみせます……!」 ぎゅっと腕に持つ魔道書を抱き締めて、澪が呼び出すのは火炎の雨。弾け飛ぶそれは一般人を打つ事はないが、それにさえ気を払えないように悶え苦しみ続ける人々に眉を寄せた。 壷にも当たって――いや、壷の前に立ち塞がったドッペルゲンガーがいる。 フィクサード二人の目標は、『なるべく多く道連れにする』事。リベリスタが壷を潰しに来たとして、少しでも一般人が死ぬ確率を上げる為に一人は庇いに回しているのか。 「何、抜かれる前に倒せばいいのさ」 自らの首に巻きついた鎖、ドッペルゲンガーの一人が放った絶対絞首の命令を引き千切り竜一は二振りの刃を振り上げた。暴君の名を冠した一撃は、自らの害となるものだけを巻き込むような位置取りで放たれて――ドッペルゲンガーに傷を刻む。 回復役がいたとして、壷がある内は致命を付けられれば癒せないのは敵も同じ。 「早くツラ拝まないといけない相手がいるんでね、あんまり長々相手はしてらんねえよ」 先程までのふざけていた表情と変わりないが――ただ、闘気だけは漲らせて、竜一は不敵に唇の端を吊り上げた。 ● 「その道、開かせて貰うっ!」 護りについたドッペルゲンガー達も、決して吹けば消し飛ぶような儚い存在ではない。風斗のエネルギーを込めた一撃で押されて尚も存在し続けているのがその証拠だ。 更にドッペルゲンガーにとっての利点は、どこの壷も数ではリベリスタよりも勝っていた点であろう。 数を多く割けばその分全てを破壊するのには時間が掛かり、少数であればやはり時間が掛かる。その微妙なラインを駆け抜けるべく、リベリスタが定めたのがこの配置だ。 火力や各々の利点からバランスよくなるように分けられた人員は質ではドッペルゲンガーよりも優れているのは明らかだったが、その侵攻を阻むのだけは、数が勝った。 だからこそ、風斗はフツに壷への攻撃を任せ自らはドッペルゲンガーの数を減らす事に専念していたのだ。 「……こんな馬鹿馬鹿しい心中に、一人としてつき合わせてたまるか!」 二人が望んで行うそれでさえ、風斗には簡単には理解しがたい行動であるのに、更に他人まで巻き込むと来た。ああ、彼らは確かに裏野部だ。風斗が嫌う理不尽な暴力だ。 三階へと向かう風斗が吹き抜けから見下ろした広場で見たのは、駆け上がる彼らの姿を認めにっこり笑い手を振った揚羽の姿。 壷の破壊に向かったのは悟っただろうに、止める事もなく無関心で見送る燈篭にも苛立ちが募る。自分達の所業で死に行く人々にすら、何の関心もないかのようだった。 そのままではドッペルゲンガーの攻撃に巻き込まれたであろう倒れ伏した女性へと視線を一度向け、たった今弾き飛ばしたその存在に向き直る。 苦しそうに喉元を引っ掻き血を流すそこを塞ぐように、エルヴィンの呼んだデウス・エクス・マキナ、神の手が優しく傷を撫でて行く。 「苦痛を長引かせるつもりなんかねぇよ――今は気休めでも、すぐに楽になるからな!」 高い確率で連続行動を可能とする判断力の高さ故、乱発するには効率の悪いその癒しさえも惜しみなく注ぎながらエルヴィンは血を流し続ける彼らへと呼びかけた。 「オレらはアンタらを絶対に傷付けない。だからもう少し頑張ってくれよ」 聖装に合わせるには剣呑な赤い槍を手にしながら、フツは指先に並べた符を投げ捨てる。中空で灰と化したそれは見えない呪い(まじない)言と化し、ありとあらゆる不運を意図的に相手に引き寄せるべく絡み付いた。 占事略决をも僭称するその一撃は、呼ぶ不運だけではなく威力も高い。 ぎちぎち、と壷が軋みを上げるのが聞こえる。もう少し。壊してしまえば、この周辺は壷の効果から抜けられる。 『盐坛子』――簡単な日本語にすれば塩の壷、となるか。 ふう、と一旦息を吐いたエルヴィンでさえ、その喉の奥がどこか乾いた……というよりかは、水分を奪われていくかのような感覚を覚えた。ざりざりとした塩で皮膚を、傷口を嬲られ続けるような痛苦を、リベリスタほどに耐性のない一般人は味わっているに違いない。 「負けるわけには、いかねぇよ」 喘息のような息を漏らしながら背中を丸め腕を引っ掻く少女を届きかねない射線からその身で庇うように立ちながら、エルヴィンは闘志を新たに目に燃やした。 殴る事ばかりが戦いではない。支え、仲間を活かす事も戦いであれば――彼は全身全霊を持って、癒しを呼び続ける。 ● 人員が一人多ければ、それだけ壷の破壊も早いのは簡単に想像できることである。 だからこそリベリスタは、フィクサードから一番近い場所へとこの班を配置したのだ。 「そろそろ二人がやりそうな事は想像が付くんだよね☆」 壷の前に誰かが立ち塞がるのは予想済み。動きを縫いとめるべく放たれた終の透徹な刃は、外の冷気よりも尚冷たくドッペルゲンガーの動きを妨げる。 望んだ訳ではないが、燈篭と揚羽との付き合いはそこそこに長いのだ。戦闘の最中でもフレンドリーに呼びかける終に燈篭が何を思っているのかは知らないが、少なくとも毎回『遊んで』くれる相手に招待状を送る程度には、揚羽は彼を気に入っているのであろう。 だが、その好意は終の望む方向性ではないから――止めねばならない。 「構われなきゃ勝手に死ぬような構ってちゃん達ならまだ可愛げもあったのにね」 無愛想な男と、ころころ姿を変える相棒を思い浮かべながらエレオノーラは終に続くように微細な氷の刃を纏って舞った。 死ぬのに沢山巻き込んで死にましょう。二人で死を選ぶ事自体はエレオノーラにとっては特に珍しくもない悲劇であり、理解できなくもない行動だが……そこに他者を介入させる精神は共感できない。どうせなら愛する者同士、邪魔されず二人で死ぬほうが良い。 とは言え、そう告げた所で彼らは易々と従いはしないのだろう。 そんな他人の言葉を聞き入れるならば、こんな事をまず行っていないはずなのだから。 「これで最後、だとしても――随分と派手に暴れてくれるものだ」 拓真が視線を向けた先、磨き抜かれた床に零れるのは血液の赤。何度見ても良い気持ちはしない、命が崩れた証の欠片。 彼らが動く時は、大半が裏野部が何らかの大きな動きをする時で……その被害も通常時より遥かに大きかった。食い止めた事も勿論ある。ただ、喪った数を救った数で相殺出来るとは、拓真は思わない。 それでも、一人でも多く無辜の人々を救うために振るわれるのが拓真の刃だ。 その為には、目の前で苦しむ老人に衝動のままに手を伸ばす事も叶わない。 彼らの苦しみを早く取り除くには、一刻も早い壷の破壊とドッペルゲンガーの撃破が必要だと知る拓真は、床に倒れ伏す人々から視線を上げて振り上げた刃を下ろした。 それを合図として、魔弾の雨霰がドッペルゲンガー諸共壷を穿つべく降り注ぐ。 「壷はもう少しだ、奥の強い一体以外のドッペルゲンガーも恐らくそう長くはない――!」 雷音が壷の微細なヒビを目視で認め、仲間へと声を掛けた。掌に乗る程度の、丸いころんとしたフォルムは雷音も無害な雑貨として見るならば可愛いと思えたのかも知れないが、吐き出すのがおぞましい死では愛でる気にもならない。 「來來氷雨!」 告げると同時に、自らも呼ぶのは氷の雨。拓真の弾痕を続けて抉るように降り注ぐ冷たい棘が、ぱきん、と軽い音で壷を割った。 ドッペルゲンガーの動きは変わらない。壷を守れ、妨害者を排せとの命令を受けているのかも知れないが、壊れたからと言って指示を仰ぐだけの知能はないらしい。 ただ変わらずリベリスタを排除しようと戦闘を続ける彼らに、終とエレオノーラの二重の氷の刃が叩き付けられれば――たった一体、残ったドッペルゲンガーには拓真からの全力を超えた一撃が贈られた。 それでドッペルゲンガーを排除して、壷を壊しても、一休みしている暇さえない。 「外には救急車も来ているはずだ、まだ気分が悪いようならば早く出た方がいい」 最後に回復を降り注がせながら、雷音はせめても逃げるように倒れていた人々へと声を掛ける。 「大丈夫、これは夢みたいなものだから」 混乱しているだろう人々が、少しでも今この時を誤魔化し外へと抜けられるように戯れの様な言葉を告げながら――雷音は駆け出す仲間の背を追った。 誰かが足を止めて、ほんの僅か、忌々しげに息を飲んだ。 「はーい、いらっしゃーい。鴉魔ちゃんに……エレオノーラちゃんと新城ちゃん、朱鷺島ちゃんも来てくれたんだね、ありがと、あたし達の式へようこそ!」 「……こちらこそ、お招きありがとー☆」 両手を広げて歓迎の意を示す揚羽の前に立ちはだかるのは、燈篭と革醒者のドッペルゲンガー五体――そして、それと同数はいるであろう、一般人の映し姿。 離魂鎌で作り出された事は明白で、斬られた者がどうなったかなど……想像に難くない。 リベリスタの視線に気付いたのか、揚羽の目が楽しげに細められる。 「あ、気付いた? ちょっと遅かったからお客さん増やしちゃった」 「時間指定もない招待状で遅刻したなんて難癖は褒められたものじゃないわよ?」 エレオノーラが視線を走らせるも、犠牲となったのは大体彼らの近くに倒れていた者のようだ。ある意味では、巻き込む心配が減ったともいえるのかも知れないが……悪びれないその態度には毒の一つも含ませたくなる。 それでもお喋りの時間はここまで。フィクサードとリベリスタ、戦闘態勢に移るのに躊躇いはない。 笑う揚羽と無言の燈篭にふっと息を漏らした終は、とりあえず言っておかねばならない事がある。 「血染めのヴァージンロードは趣味悪いよ!」 ――こんなのは、ハッピーな式には成り得ない。 ● 壷に辿り着くためにまず必要なのは、人員の排除だ。 「お久しぶりね、遊びましょ? ああ、たわしなんて持ってきてないから安心して頂戴」 リベリスタの攻撃を受ければ一撃で沈むであろう一般人のドッペルゲンガーは纏めて巻き込まれないように散らされていたから、終に続き燈篭へと一度肉薄したエレオノーラの前にも邪魔な影は立ちはだかった。 過去の飛行機の中での戯れを口にする彼がそう易々と攻撃を喰らわない事を、燈篭は知っている。 挑発とも言えないエレオノーラの囀りに、感情の動きの薄い男は首を振るだけ。 「揚羽に見せられたが、何であんなものを外すのか理解出来ん」 「そんなに百発百中の自信があるならあたしに当ててみたらどうかしら」 「今日はダーツで遊びに来た訳ではないからな」 平坦な声音で告げる燈篭は、二人で一緒に死ぬというロマンチシズムとは無縁に思えるが、実際に問題を起こしているのだから内面など知れたものではない、という事だろう。そんな情感を持つならば、少しでも逆撫で興味を自らに向けるようにエレオノーラの声は彼に向かって紡がれ続ける。 「有りもしない来世で結ばれたいならご自由に、って所だけど。……つまり今の貴方達はそういう間柄じゃなかったのね」 微かな嘲りを含めて囁いてみれば、答えたのは明るい声。 「ふふ、そうだね、ちょっと戸籍が怪しいから法律上の結婚は難しかったかなあ」 「……だから欲しかったなら作ると」 「やーだあ燈篭、必要ないって言ったじゃん」 恋人同士の無邪気な会話。そんな声音で繰り広げられる会話の向こう、姿が見えたのは竜一や澪、仕上のグループだ。 その接近にも気付いているだろう揚羽は、それでも笑っていた。 「それにね、エレオノーラちゃん。言う通り来世なんてないよ。だからあたし達、一緒に死ぬの」 うっとりとした目で、振り返る。 その茶色の瞳が、澪を捉えた。澪と目が合った。 「……っ!」 鳥肌が立つ。初めて会うはずなのに、この二人は酷く厄介だと澪の本能が……いや、『自分ではない何か』が告げている。まるで何処かで会ったことがあるかのように。 ただ、それは甘く見るなという忠告であり――澪の動きを恐怖で留める為のものではない。 血塗れの床を見詰め、体勢を立て直した澪を、更に後ろに見えた仲間を視界に捉えながら雷音は氷雨を降らせた。 「揚羽、君は燈篭が死んだ後の自分を想像したことがあるだろうか」 雷音が呼びかける。初めて会った時、彼らは幸せそうだった。それが愛でないとは言わない。けれど、愛する人が死んでしまう世界を思えば――雷音は想像だけでも地面がなくなるような不安を覚えるのだ。繋いだ片手が空になる。それはひどく、怖いこと。 けれど、そんな喪失を知った元少女に、とうに少女を抜けた揚羽は笑うのだ。 「そんな『後』は続かないもの。燈篭が死んだらあたしも死ぬよ。それだけじゃない? じゃあ朱鷺島ちゃんは死なないの? 大好きな人がいない世界に生きていくの? 何で?」 「愛する人を追って死ぬのが愛だとでも言うのか」 「ううん? でもあたしは燈篭がいない世界なんて何にも面白くないよ」 つまんない世界なら、生きてても仕方ないから死ぬんじゃない。そう笑う揚羽の言葉は身勝手だ。雷音のように、「喪われれば悲しむ人」が互いの他に存在しないからこその依存関係と言ってしまえばそれまでだが……ぎゅっと眉を寄せて、今度は燈篭に問う。 「燈篭、死してなお別れたくないのに、どうして死を選ぶ?」 どうして、もっと一緒にいたくないのか。死という永遠の別れさえも拒んでおきながら、共に死のうという思考回路が分からない。愛する人の傍らで過ごす時が、雷音にとっては何よりの幸いだと言うのに。 男の返答は簡潔だった。 「揚羽がそう望むから」 「……随分と自主性のない答えだな」 鎌を繰る男に、拓真が僅かに眉を寄せる。例え散っていたとして、彼の弾丸の届く範囲は広ければ――辛うじて残っていた一般人の影は消え失せた。呆気なく、ほんの一度の盾にされるためだけに殺された彼らの無念には余りにも釣り合わない言葉。 「それに」 拓真の心情を知ってか知らずか、離魂鎌の目標を定めているらしい燈篭は声を続ける。 「死ねば揚羽はもう誰のものにもならない」 「! っふ、ふふ、ふふふふふふ!」 感情の薄い唇から紡がれた言葉に、揚羽が耐えられないというように笑い出した。 きゃたきゃたと楽しげに笑うその声は、三階から広場へと飛び降りてきた風斗達の耳にも容易く届き――。 「ねえ、ねえ、海峰、大好き! 愛してる!」 「知ってる」 「……狂ってるな」 本名なのか愛称なのか、聞きなれぬ異国の言葉の響きを以って心の底から嬉しそうに愛を叫ぶ揚羽と、当然のように肩を竦める燈篭の仕草があまりにも普通で……血塗れの人間が転がる光景には余りにも似つかわしくなくて、風斗は眩暈がしそうになった。 「あーあー、お熱いのは結構っすけど、死にたいなら本当勝手に死ねば良いんじゃないっすかね」 駆け込んだ仕上が、燈篭を見上げる。雷を纏った拳を心臓に叩き込むように一度引き、放つ。 彼の周りに立つのもまた、ドッペルゲンガー。二人の『愛』に巻き込まれ弄ばれた命達。 もう話をマトモに聞くのも面倒だ、頭の内部構造が仕上とはだいぶ違うらしい。 「相変わらずって言うべきか――人に迷惑掛けなきゃ死ぬ事も出来ないのかよ!」 雷音と澪の指示で、ただでさえ優秀なリベリスタ達の能力は普段よりも大幅に引き上げられている。それでも全ての命を救う事は叶わないのだ。 エルヴィンは溜息を吐きそうになる心を押さえ、仲間を、人々を癒す為の術を唱え続ける。 それは受けたばかりの傷も塞ぎ、ほぼ最高の状態へと仲間を高めた。 「私達は別に迷惑を掛けているとは思わんがな」 「自覚のない悪意ってのは現世で厄介なモンの一つだぜ」 涼しい顔で受け流す燈篭に、フツも赤い槍で肩を叩く様にしながら壷への間合いを計る。 「わからないです。貴方達の言ってる事、全然わからないですっ!」 澪がぎゅっと掌を握り締め、叫んだ。愛してる。愛してる。そんな事を囁きながら、その愛が向けられるのは互いだけ。他者の愛は理解せず、省みる気もない身勝手な愛。……そんなものを『愛』と認められるような心を、澪は持っていない。 澪の叫びに、風斗はぎゅっと唇を引き結んだ。分からない。そうだ、分からないのだ。 恋人と死にたい。そんな願いは甘ったるくもまだ理解できなくもない範囲かも知れない。だが、その為に赤の他人を喜んで殺す精神は理解できない。 でも――他人を護る為に人を殺そうとする。その行為は? この場合、燈篭と揚羽が大量殺人犯だ。殺さねばならなかった、と正当化は出来るだろう。だが、今回は何もせずとも風斗自身や知人が危険な目に合う訳ではない。風斗が殺さねばならない必要性は薄いのだ。勿論、風斗が出ずともアークは出る、だから知人が傷付く可能性も高いのだが……誰かの為に人を殺す。それは、一般人からみたら差異はあるのか? と考えてしまう。 ただ、次の澪の言葉が風斗を現実へと戻らせた。 「私にわかるのは、絶対絶対! 貴方達を止めないといけないって事だけですっ!」 放置すれば、起きるのは更なる悲劇だ。理解が適わないとして、澪にはっきりしているのは、これ以上の悲劇はごめんだという事だけ。現実の悲劇なんて、大嫌いだから。 氷の雨、炎の雨、その合間を抜けるように風斗は走る。 「貴様等の望む結末など――迎えさせはしない!」 「死が別つことはねえよ」 並ぶように、竜一が駆けた。おどけた表情の奥に隠そうとも、彼だって決して、喪われたものを忘却はしない。 「別つのは、この俺だ! あの時の屈辱、忘れちゃいねえぞ!」 「ふふ、覚えててくれるんだね、ありがとう!」 視線は絡めど――その心はどこまでも平行線。 ● 床の血に、リベリスタの、フィクサードの血が増えていく。 ドッペルゲンガーは血を流さない。生きている者達だけが、命を散らしていく。 ――彼らは最初から『二人とも死ぬつもり』なのだ。ついでに大量を連れて行こうと思うだけで、アークに勝とうなどとも思っていない。その癖、死に物狂いですらない。 だから、言ってしまえば彼らを早急に排さねば喪われる命が増えるだけで、最初から勝負自体の結末は見えていたのかも知れなかった。 降り注ぐ全体攻撃とエルヴィンによる回復、燈篭のメルティーキスが致命の呪いを刻みリベリスタのフェイトを消耗させども、壷を庇うドッペルゲンガーが長く持つはずもなく……次いで壷が破壊される。 そうなればもう、回復手の乏しい二人が徐々に追い込まれていく事など火を見るより明らかだ。 傷付きながらも立ち続け黒鎖を溢れさせる揚羽に、燈篭と向き合った終が目を向けた。 「一緒に死ねても死後まで一緒かは分からないし、確実に一緒にいられる今をもう少し生きてみてもいいんじゃないかな?」 その言葉に、揚羽はきょとんとした様子で瞬く。 「……鴉魔ちゃん、あたし達に負けるつもりなの?」 「そんな事はないよ、絶対に止めてみせるから☆」 「じゃあ、あたし達が生きてることなんかないよ、ねえ? こんなにこわーい顔した人たちばっかりなんだもん」 頬に手を当てて笑いながら震えてみせる揚羽に、終は小さな苦笑を浮かべた。 フェイト復活だけではない。すぐさま命を絶てば、彼らはアンデッドとして蘇る。 だからこそ、二人となっても不利であっても彼らは厄介なのだ。 「心中したいなら変な指輪は取り出しておくべきよ。面倒臭いわね貴方達」 「えー、だって折角だから何かペアのもの持って死ぬのが良くない?」 腰を曲げて上目遣いで見詰めてくる揚羽の目は、声音と同じく喜色しか湛えていないからエレオノーラは溜息を吐いて燈篭へと目を戻した。一見感情豊かに思える揚羽だが、そこにあるのは結局理解の適わない喜びだけで、無表情ながら目に僅か感情を――例えば終が揚羽に声を掛ける度に微かな嫉妬を走らせる燈篭のほうがまだ遊びがいがある。 とは言え、長々こんな遊びに付き合ってやる義理はない。 「死出の旅ならば、貴様達だけで疾くと逝くが良い」 喪われた命を思いながら、拓真は既にだいぶ傷付いた燈篭の体を引き裂くべく両の腕を振り上げた。 一般人の安否だけを気にするならば、もっと他にやりようはあったのだ。それでも、拓真はその方法を取らなかった。誰かの為に振るわれる刃。誰かを救うための刃。彼の正義を貫くのであれば、そうするべきだったのに。 けれど、今はその幻想は、余りにも遠いから。 「これ以上を巻き込む事は――我が剣が断じて許さん!」 手の届く所へと指を食い込ませ、這い上がるしかないのだ。幻に届くまで、ユメが現と変わるまで。 他者を害する悪意の存在へと叩き込まれた拓真の刃が、その体を抉る。 隙間に潜り込むように入り込んだ仕上が、表情の薄い顔に眉を上げ、低く告げた。 「――死を弄んだ愚物よ。相応しい惨めさで死ね」 掌から放たれる衝撃が、燈篭の身を穿つ。頃合と見た風斗が、入れ替わるようにその前へと跳んだ。 目の前で振るわれる離魂鎌。苦痛と気配が、己の影を生み出したと悟らせるが、振り返ることなく血に赤く濡れた刃を振り翳した。彼らは理解できない。理解できないが――死なねば結ばれた実感を持てない哀れさばかりが、彼の命を繋ぎ止めるべく皮一枚の生を残す。 「……あれ?」 死体となって起き上がるはずの相方が起き上がらない事に首を傾げた揚羽だが、その理由を悟ったのか初めて苦笑を浮かべた。死ななければ、アンデッドとなる事はない。ただ倒れるのであれば、『死よ二人を別つなかれ』という誓いは成就しないのだ。 「……やだなあ、ひどーい」 「お前さん達がやった事に比べりゃ可愛いモンだと思うけどな」 子供の様に口を尖らせる揚羽に、フツも苦笑した。或いは、揚羽が動くよりも先にそれが行われていたならば、彼女自身が燈篭に手を下したのかも知れない。だが――タイミングよく滑り込んだ風斗の一撃は、揚羽が黒鎖を放った直後だったから、揚羽が行動を切り替える暇もなかった。 フツに叩き込まれた不運のお陰か、それとも。 「幸運の女神も、そろそろお前らを見限ったんだろうな!」 「あ、は、酷いな!」 辛うじて交わした竜一の刃に血を撒き散らしながら、まだ揚羽は笑って呪文を唱えようとする。ただそれはもう、ゲームの負けが決定した子供と同じでコントローラーは、半ば離されていた。 終が、ナイフを振り上げた。心臓に刺す為ではなく、揚羽を身動きの取れない標本とする為に。 十字の光が、間近にいた揚羽の体を貫いた。 「ねえ、ちゃんと二人とも、殺してね?」 崩れ落ちる寸前まで、そんな風に微笑むから、終は苦笑と共に、肯定とも否定とも付かず首を振る。 後は風斗の写し姿に攻撃が叩き込まれて――それで静かになった。 痛みに呻く人々の元に駆け出そうとしながら、エルヴィンは肩越しに振り返る。 「つくづく相容れねぇ生き物だったよ、お前らは」 生かしたがりに死にたがりの殺したがりは理解できない。 溜息と共に、走り出す。零れ落ちずに済んだ、命を掻き集める為に。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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