● 『ホント突然なんだけど、大変なの。エリューション・ブナシメジが……! 温泉宿を貸し切ったから皆で行って処理してきて欲しいの! え? どうすればいいかって? 食べれば大丈夫よ。キノコ食べてね。キノコ。 名付けて湯煙紀行! GO、GO! お土産待ってます。それじゃっ!』 ――以上、『誰が為の力』新城・拓真(BNE000644)がフォーチュナ(26)から受け取った電話である。 「ホント突然ですよね」 ふるりと身体を震わせた『夢追いの刃』御陵 柚架(BNE004857)は現在とある温泉宿の前に立っている。 それなりに老舗なのだろうか。インターネットサイトではサービス充実し評価もそれなり。 「可愛い子たちと温泉かあ。ハーレムだね。うん。エンジェルちゃんが居ないのは悲しいけれど。 僕が戦わなくて済むならそれでいいと思う。要するにブナジメジを食べれば骨休めでいいってことだね」 説明能力皆無なフォーチュナの代わりに『永遠の旅人』イシュフェーン・ハーウィン(BNE004392)が上手い事纏めたが戦いたくない気持ちが精一杯溢れる一言だった。 ちなみに、ブナシメジは鍋に入っているのだそうだ。食べなかったら巨大ブナシメジ怪人になるから注意してねとフォーチュナは瞳を輝かせていた。食べましょう。 「鍋か!」 冬と言えば鍋だ。 「イイネ!」 徳の高そうな『てるてる坊主』焦燥院 ”Buddha” フツ(BNE001054)のOKサインが出た。 夕飯の時間までは自由行動。温泉に入る事も、卓球や設置されたゲーム機で遊ぶ事もそれなりにできるだろう。 温泉宿の近くにはある程度の店舗もある為に温泉まんじゅうを食べることだってできる。 「ふうん……温泉、かぁ……」 「暖かくて気持ちいんですよね。楽しみです」 うとうととする『夜行灯篭』リリス・フィーロ(BNE004323)を起しながら日本文化を楽しみにする『陽だまりの小さな花』アガーテ・イェルダール(BNE004397)。 フュリエの二人にとっても温泉と言えば楽しみなことなのだろう。 日本の情緒溢れる温泉宿に1泊するお仕事なんてそうそうない。酒も布団もあるとなればリリスの天国はここにあると言う様なものだ。 「イシュさん! 見てください! 温泉まんじゅう!」 「温泉まんじゅうか。ますます温泉っぽさがあるじゃないか」 「温泉まんじゅう?」 フリーダムな柚架の手招きに首を傾げるアガーテとイシュフェーンが向かう。 ほっこり温泉まんじゅうは観光地ならではの品なのだろう。とても美味しそうです。 「温泉といえば、勿論!」 覗きだよねと『覇界闘士<アンブレイカブル>』御厨・夏栖斗(BNE000004)が超カッコイイポーズで告げる。 しかし―― 「混浴だが」 覗く必要すらなかった。 『閃刃斬魔』蜂須賀 朔(BNE004313)の冷静な一言が青少年の心を酷く震わせた。 何をともあれ、オーダーは『ブナシメジ』を食べるだけ。 のんびりと一泊温泉旅行と洒落こもうじゃないか。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:椿しいな | ||||
■難易度:EASY | ■ リクエストシナリオ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2015年01月20日(火)22:03 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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● 閑静な佇まいの日本家屋。入口には『歓迎アーク御一行様』の看板が出ている。 「オンセンですよー! たまやーっ!」 ぴょんぴょんと跳ね上がりながら普段通りのテンションで仲間達を振り仰いだ『夢追いの刃』御陵 柚架(BNE004857)は満面の笑みを浮かべて手招きしている。 一泊二日。休暇であり、そして任務であるこの温泉旅行のメインターゲットは鍋を食べるだけ。 合法的なタダ温泉でタダ飲食。そんな休暇に喜ばない訳が無い。やったー! と柚架にも劣らずのテンションで温泉を喜んで見せた『てるてる坊主』焦燥院 フツ(BNE001054)は普段の徳の高さから幾分か離れている。 「温泉だー!」 万歳と両の手を上げた『覇界闘士<アンブレイカブル>』御厨・夏栖斗(BNE000004)に柚架もつい釣られる。 興味深そうに温泉宿を眺める『陽だまりの小さな花』アガーテ・イェルダール(BNE004397)の隣で眠たげに眼を擦る『夜行灯篭』リリス・フィーロ(BNE004323)は「温泉かぁ~」とボトムチャンネルの住民たちの様子を眺めている。 「普段入るお風呂と違ってぇ、温泉ってなんだかのんびりー……リリス、温泉大好きだよぉ~」 「温泉って、殺人事件がよく起きる場所だった気がします……」 緊張するアガーテの言葉に「へぇ~」と欠伸を噛み殺しながら返して居る。ボトム生活も長いアガーテにとってはサスペンスドラマでの知識だってお手のもの。 「混浴だー! うれしー!」 相変わらずの夏栖斗の声音に特に気も止めずに『閃刃斬魔』蜂須賀 朔(BNE004313)は宿の風呂案内を眺めている。 効能についてびっしりと書かれたソレに気紛れに目を通しながら朔はフュリエ姉妹を手招いた。 「温泉は素晴らしい。肌にも良く、何よりも心地よい。フュリエ諸君も知っておくといい。 あと、折角の温泉だ。水着を着用するつもりはないのでそのつもりでな」 「えっ」 見られて困る身体を持ち合わせていない蜂須賀女史(26)の大人の色気漂うボディに思わず後ずさる夏栖斗(19)。肩をぽん、と叩いた『誰が為の力』新城・拓真(BNE000644)は「そういうことだ」と夏栖斗を励まし(?)たのだった。 「幾つかの場所には足を運んだ事はあるが、温泉と言うのは何時だって楽しみなことには変わりないな……」 「温泉に来るのなんて久しぶりだなぁ。いいじゃないか、冬の温泉。うん、素敵だ」 頷く『永遠の旅人』イシュフェーン・ハーウィン(BNE004392)に「早速オンセンですよー!」と柚架が張り切って見せる。 本日のプランは温泉、混浴、卓球、そしてブナシメジ。 忘れてはいけないブナシメジは夕飯とのことだ。取り敢えずは風呂へと向かおうと一行は部屋に荷物を置いて温泉へと向かったのだった。 ● 脱衣所でぼんやりと水着を眺めているリリスは首を傾げる。 水着を着用すべきか否か。素晴らしい脱ぎっぷりの朔は身に付けないと言っていた。しかし、混浴温泉を所有するこの旅館で、共に皆で楽しもうと言ったのは誰だったか。全員で入るというからには男性陣も同じ湯に浸かるのだ。 そこに『見られて恥ずかしい身体』をしていない朔は気にも止めて居ない様子だが普通の少女・柚架は気にする。 「水着、着なくて良いならリリスもその方が楽かなぁ……」 「み、水着着てのんびりみんなとイッショに入りましょう! 水着だったりするのはヒトそれぞれだとはおもうんですけど。ケ、ケド、覗いたりヘンな目で見るヒトが男のヒトと一緒だとあったりするから水着がスイショーなんですよ、うん」 混乱する16歳女子。『ヘンな目で見るヒト』がアークのリベリスタに居るだなんてけしからんですね。 「水着はちゃんと持って来ましたわ。これをつければ、男性の方とも一緒に入ってよろしいのですよね。 ……でも、お風呂は身体を洗う所なのに、不思議ですわね。ヘンな目で見る方……?」 難しいのだと唇を尖らせるアガーテは柚架の言葉を聞きながらいそいそと水着を着用する。相変わらず「う~ん?」と悩ましげなリリスはふと道中に「皆で温泉へ入ろうじゃないか」と芝居掛かった口調で告げていたイシュフェーンを思い出す。 「イシュフェーンちゃんと一緒に温泉って誘われてるからぁ、その時は水着なんだよねぇ~?」 ちゃんと着るよぉと着用したスクール水着。豊満なお胸を収めたその様子はマニアなら堪らないのではないでしょうか。 「そうですねー。信じれるヒトたちなら良いと思いますけど、普段はツツシミって大事ですよ? ホントなら柚架だって何も付けないで全身ゆっくりするのがイチバンなんですけどねー」 うんうんと頷きながら水着を着用する柚架。さりげなく『信じられないヒト』が同行者に含まれてそうなのだが、きっと気のせいだろう。 「おっ、おまっ!」 「あ」 遅かったと水着姿の柚架が温泉へ通じる扉を開く。フュリエーズに水着着用のススメを行っていた柚架の記憶の外に存在した朔は堂々と温泉へと足を向けていたのだった。 「なんだ?」 「なんだじゃなくて! ふざけんなよ! 慎みを持てよ!」 明らかに水着のヒモさえ存在して無かった事で顔を逸らせる夏栖斗。丁度鉢合わせしてしまった二人の声に柚架とリリス、アガーテが目を見合わせる。 「見られて恥ずかしい身体ではないからな。まあ、簡単に人に見せる程安いと思われても困る。 目を逸らす事は出来るだろうしな。見たいなら相応の覚悟を持って挑んで貰おうじゃないか」 何故か浴室へとご一緒していた葬刀魔喰。水着姿の夏栖斗はちらりと見えた朔の姿(湯気で見えないから安心)に慌てて妖刀にも気付いていない。 「タオルは!?」 「必要ない」 「あ、ある! せめてタオル巻けよ! あ、タ、タオルつけたまま温泉浸かるなよ! どっちだよ!」 自分突っ込みを入れ続ける夏栖斗に「そう涙目になるな」と朔は面倒そうにしながらも脱衣所へと水着着用の為に戻って行ったのだった。 ● 時は戻って男子更衣室。水着を着用しながら夏栖斗が遠くを眺めている。 戦士たちのちょっとした休息の為の任務だ。しっかりと真っ当して癒されて行きたい。 「さあ、温泉だね。しかも混浴か。いやー、いいねー。役得だね」 余りお疲れではなさそうな――戦闘は全てエンジェルちゃん任せなイシュフェーンが小さく笑みを浮かべる。 道中で「アガーテ君、柚架君、よければリリス君も一緒にどうだい?」と(働かないけど)イケメンスマイル全開で微笑んでいた。偉いぞ! 女子更衣室から聞こえる可憐な乙女たちの会話に夢膨らませる夏栖斗が「覗きの作戦を立てようか」とブリーフィングルームで見る真剣な表情を五割増しにして男性陣を振り返る。 「混浴に関しては……思う事は、あまりないな。皆で入れるのは楽しめると言う意味で良い事だろう。 夏栖斗に一つ、言っておくが……覗きに関しては、興味が無い」 「えっ」 衝撃の言葉に夏栖斗がおろおろと周辺を見回した。「ふっくん」と呼んだ声に彼はぐっと親指を立てる。 「オレも以前は女湯を覗こうとしたものだが、あの時はオレも若かったな。最初から混浴にすればいいじゃあないか」 「ふっくん、それでもな、男にはやんなきゃいけないときって、あるんだぜ……? 元から混浴だと『覗け』ない。覗きたいから覗くんじゃない、そこに女湯があるから……わかるだろ?」 真剣な夏栖斗の「浪漫がそこには詰まってるんだ」と力説する言葉に靡く事のない男性陣。 フツの如何したものかなと肩を竦めた様子に助け船を出す様にイシュフェーンが小さく笑みを浮かべた。 「浪漫とか色々言うけれどね、犯罪だからね? そう、同意は大事だよ。 入り口で彼女達が、特に柚架君が『サイテーですねっ!』って顔をしていたじゃないか」 「ぐっ……」 アークのトップリベリスタは強い心を持たなければならないのだ。無垢な瞳に嫌悪感を全開にした柚架に「サイテーですねっ!」と言われたとしたら……! 「浪漫か……オレは浪漫より実利をとる男になっちまったんだ。 それが大人になったってことなんだ……そうなんだろ? そういう、ことなんだろう……?」 水着を着用しながらフツが悲しげな瞳をイシュフェーンと拓真に向ける。 元から枯れた老人の様だと言われ続けた拓真は「殊更若者らしく振る舞おうとも思わんが……」と微妙な誤魔化し。 「今、目の前にある花を大切にするのも大人の男と言うものだろう? だから、男性陣は混浴に付き合ってくれる女性陣を有り難がらなければいけないんだぜ? こういうイベントの参加の選択権は全部彼女達にあるんだからね」 正論を告げたイシュフェーンに夏栖斗は涙を堪え、脱衣所の扉を開け――全裸の女と出会ったのだった。 ● 「いつもの騒ぎにならないのなら、のんびり出来るな」 息を吐き、肩までしっかりと温泉へと浸かる拓真へと水着を着用した朔が「これでもそれなりに気持ちは良い物だな」と頷いた。 「うん~……やっぱり……温泉って気持ちよいよねぇ~……こう、身体が溶けていきそうだよねぇ~……」 ふにゃっとした顔で告げるリリスがずるずると温泉へと沈んでいく。 イシュフェーンが女性陣へと「カワイイよ。華やかだね」と微笑みかけている僅か30秒以内の出来事だ。 イシュフェーンの傍らに座りのんびりとしていたアガーテが慌てた様にリリスを引き上げる。外気の冷たさが温泉の心地よさを増長させていたのだろう。段々と沈んでいくリリスを片手で持ちあげて朔は「まったく」と小さく呟いた。 「あああっ、ね、寝たらダメですよー!?」 慌てて解放しなくてはと立ち上がる柚架。温泉の中でも寝れるリリスをぱちぱちと頬を叩いて無事に人心地付いた頃、夏栖斗は傍に座った柚架へとにこにこと笑みを浮かべていた。 「彼女サンに怒られますよー?」 「恐ろしい事に、怒られないんだ。でも、きっと僕の彼女凄い笑顔でひとっことも喋らなくなるんだろうな……。 ああ、こ、怖い。ご、ごめんなさい! 滋養効果とかそんなこと言って女の子侍らそうとしてすみません! おとなしく浸かっておきます!」 温泉へと沈みゆく夏栖斗へと視線を向けて、拓真は困った様に肩を竦めた。 「……夏栖斗に一体何をしたんだ。そこまで怯えることもなかろうに……」 風呂上がり。食事には未だ早い。ラケット片手にしゅっしゅと振り被る柚架が笑みを浮かべる。 「さて、オンセンと言えば代名詞は卓球です。いっつぴんぽん!」 「卓球前に自付を浸かって、頭をハッキリさせ……なくていいのぉ……?」 こてん、と首を傾げるリリスへとフツによるルール説明。丁寧な説明はこの後の一寸したミニゲームに繋がるのだろう。 「んー……取り敢えず、寝ぼけてない方がいい……よね?」 興味深そうなリリスの隣、スリッパを手にしたアガーテが「スリッパで打ってはいけないと教わりました」と肩を竦める。 「ルールはなんとなく伝わってるみたいですし、ショーブショーブ! 負けるつもりはないですよーっ!」 気合十分の柚架。サーブ&スマッシュ、そして持ち方も伝授してみせたフツへとリリスとアガーテが小さく頷く。 「よし、タッグ戦やろうぜ! 得意な人と苦手な人が大体コンビになるような感じで! 最下位のチームは罰ゲームだ! 全員分のスポーツドリンクおごりな!」 了解したと頷いた朔がラケットを眺める。それなりにこなせるだろうと二刀流のラケットの感触を確かめる彼女の隣で働きたくない雰囲気のイシュフェーンがくいっと日本酒を煽りながら手をひらひらと振っている。 「さて、卓球ね。僕は審判しようかな。ホラ、アルコール入ってるし、ちょっと激しい運動はキツイよね」 エンジェルちゃんも居ませんしね。 最低辺が罰ゲーム。その言葉に頷いてラケットを手にした夏栖斗が唇へと笑みを浮かべる。 「まあ、任せろ、僕は中学時代卓球ミクちゃんって呼ばれた男だ。卓球はやったことないけどね」 「ふむ、ないのか……」 随分な詐欺だった。拓真の言葉に夏栖斗がへらりと笑う。 審判のイシュフェーンが組み合わせを(適当に)発表する。アガーテと拓真、リリスとフツ、柚架と朔。そして夏栖斗。 「ちょっ、僕一人!?」 「あとで俺が交代要員として入ろう。勝負事だというのだから、俺もそれなりにやらせて貰うぞ」 ● 始まった卓球対決。ボトムの面白い遊びだと楽しむリリスは難しいと困った様に肩を竦めた。 「なんとか打てるようになってきた……かな?」 リリスとサポートするフツが「イイネ!」と彼女を励ます中、一つの『弱点』に気付いたのは夏栖斗だった。 露わになるリリスのふともも。着崩れる浴衣に彼が小さく息を飲む。豊満な白い二つの丘がこんにちはしているのだから、健全な青少年が目で追うのは仕方がない。 「うん、これはなかなか…良い光景だよね。絶景だね。ナイスだ。 あー、男子諸君はおはだけは控えめでよろしくお願いするよ。僕の心のファインダーが雲ってしまうじゃないか」 イシュフェーンの言葉にも頷ける。裾が捲くれ上がるのに恥ずかしげにラケットを振りまわす柚架は如何したものかと身を捩る。 「浴衣がズレて動き辛いっ、フツーの卓球ならこんなコトないのに……。 ああもう、少しくらいカクゴです! 負けたくなーいっ!!」 「くそ! あいつら、浴衣が崩れておいろけあはんうふんいやん作戦で僕の気を逸らせる作戦をとってきてるぞ! いいぞ、もっとやれ! 汗ばむふとももうなじさいこうです! いやっほーぅっ」 ゴツンと夏栖斗の額へとクリーンヒットしたラケット。構えた朔の瞳が俄かに好戦的な色を灯して居る。 額を抑えて蹲った夏栖斗に「だいじょうぶ~?」とリリスが小さく首を傾げた。 「何度も同じ事は言いたくないのだが……見たいなら覚悟を持て、と言った筈だが?」 流石は蜂須賀一族。戦場と同じ瞳をしている。ラケットさえも飛び道具と化していた彼女に夏栖斗はとんでもないと首を振り続けた。 「もしもし、俺だ。……あぁ、うむ、丁度卓球をしているところだ。楽しそうにやっているぞ、代わるか?」 一方で、影になる所で携帯電話を片手に話しこんでいた拓真が「夏栖斗」と手招く。 お前に電話だと手渡された拓真。この新城拓真、死線は畏れはせんがそれでも尚対抗できぬ相手は存在する――腹パンって痛いよね! 「はい、もしもし? って、いや、まって、ご、誤解だ! すけべぇ心で見てるんじゃなくって、いや、まっ」 「なるようになれ、ですわー!」 ぐるぐると目を回したアガーテのスマッシュが見事、夏栖斗の眉間へとクリーンヒット! ● 運動の後は食事タイムと着席した朔は目の前でぐつぐつと煮だったエリューションしめじを見下ろして溜め息を吐く。 「しめじは任せる」 「あれ~……? 食べないのぉ~?」 美味しそうと首を傾げるリリスへと朔は「まぁ、あれだ。私にも好き嫌い位ある」と他に用意された蟹鍋等へと視線を移す。 「リリス様、起きてらっしゃいますか……?」 ゆさゆさと揺さぶったアガーテにリリスは寝てないよぅと目を擦る。眠たさMAXのリリスへとアガーテがそっとお酌する。 「私はお酒が飲めないのですけれど、辛くなく、飲みやすいものだと仰ってましたわ」 年齢で区切られるのは不思議だと少女の姿をしたフュリエ二人は顔を見合わせる。年齢もそう変わらなく――アガーテの方が年上に見える可能性までもある二人だが、生まれた年を見ると親子ほどに離れているものだ。 「あ、ぽん酢ありますよー! ぶなしめじとかきのこ野菜を生かしたお鍋ってポン酢が似合いますよねー、なんでなんでしょ?」 ポン酢を注ぎ、しっかりとエリューションを器によそった柚架が頂きますと手を合わせる。日本酒をくいっと飲んだリリスや朔に羨ましいと視線を向けたのは所謂『大人の色気』を感じられるからだろうか。 いつか立派なオトナになれる日がきたならば――そんな思考の柚架に小さく笑ったアガーテがジュースを差し出す。 ダウンしていた夏栖斗が「香りまつたけ味しめじのしめじはホンシメジを指すんだよね?」とジュース片手に乾杯。 全員での食事はやはり騒がしく楽しい。他の料理もと手を伸ばす拓真は生きる為の活力を得れると一人その至福の時間を堪能していた。 「うまい酒があればそれだけでも事足りるな」 「おや? こんな所に丁度良いものがあるな?」 小さく笑んだ朔の手に握られた瓶にフツと拓真が顔を見合わせる。カンパーイとは嬉しそうに酒を手に取ったフツを羨ましそうに眺めた未成年組は大人にならねばと決心したのだった。 ブナシメジ(エリューション)を無事に処理し終わって、のんびりとした個々の時間に向かったのは温泉。 大きな月を眺めながらアガーテは物想いに耽る。彼女から離れた位置で月を眺めた朔は湯気の立ち昇る温泉で小さく息を吐いた。 「折角の温泉だし! 楽しみたいですねー」 「そ~だねぇ~……」 温泉にのんびり浸かる柚架の隣で沈んでいくリリスを彼女が懸命に起して居る。 人命救護に必死な女性陣とは別の場所で、一人湯に浸かった拓真は湯治だとのんびりと目を伏せって居た。 月を眺め、小さく息を吐く拓真へとフツが小さく手を振った。 「君達もかい? 外を見ながら晩酌付き合ってくれる人が居ると助かると思ってたんだ」 小さく笑ったイシュフェーンに男二人は頷きあう。 考える事は皆一緒。 そうして夜はゆっくりと更けて行く。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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