● 遂に、此の日が来たか。 真っ暗な穴の中、壁に背をついて思う。 元は剣林の本体のメンバーではあったものの、人を斬る事に嫌気がさしてからはメンバーを自ら脱退した。其処からは割と好き勝手に生きて来たつもりだ。 だが、恩がある。いや、師匠が尊敬していた剣林の首領が動けというのなら動かない訳にはいかない。己の奥深くに根付いた剣林の生き方を、今更変えるつもりも毛頭無いのだから。 今こそ、日々の鍛練を出し尽くす時だ。 其れでさぱっと死ぬのであれば本望だ。 ……死ねば友にも会えるであろうしな。 「さあ、待ってんよ……此の、戸部馨が。今日はもう、優しくはなれない―――」 ● 日本の神秘界のバランスはもう保たれていないのも同然。 先の賊軍からの影響か、それともWPの影響か。遂に、『武闘派』を標榜する剣林が大きな動きを見せた。日本最強を背負う輩達であればよく我慢した方であろう。 先日捕えたフィクサードが言うには、霊峰富士山の風穴、更に其の奥には封印されしDホールがあるのだという。剣林は其の力を手に入れたがっている訳だが、アークが其れで黙っている事は無い。 D・ホールの先に存在する世界は「蓬莱」と呼ばれている。其処の力を奪い――バロックナイツもそうだが、他者から力を奪えば強くなるのは直接的な手段だ。賊軍の様にその力を縦横無尽に使う事は無いだろうが、最強を語る彼等が何をするかは目に見えている。 勿論封印をどうにかするにあたって、百虎は相応の戦力を連れて来た。首領の剣林百虎を始めとし、『本隊』と呼ばれる最精鋭部隊が動いている。十分に気をつけて、事に当たって欲しい。 「杏理たちの班は、其の元本体メンバーの方たちをどうにか致します」 『未来日記』牧野 杏理(nBNE000211)は集まったリベリスタ達にそう言った。 「戸部馨、と其の兄と友人達。 馨の方は今までは遊びに戯れで人の服を斬るだけの脳のフィクサードでしたが、首領がゴーサインを出したら従わずにはいられなかったみたいですね」 此方の数は6、彼方の数も6。考えられる事は、力量は同じか其れ以上。 編成もバランス良く、同じ数であろうしリベリスタがやってくる事は彼方も同じくやってくるであろう。 「それでは皆様、宜しくお願い致します」 杏理は深々と頭を下げた。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:夕影 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 6人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2015年01月07日(水)23:01 |
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■メイン参加者 6人■ | |||||
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● 「首領がさ、やるっていうんだ。何時かこうなるってわかっていたわよ」 「残念だ。縁も此処まで……かと思うとな」 『アリアドネの銀弾』不動峰 杏樹(BNE000062)はこくんと頷いた。何処か、そう、何処かで別の出会い方をしていればきっと友人同士にだってなれていたかもしれないというのに。 「己の意志を以てその剣を振るう覚悟、出来た様ですね。結構な事です」 「どうかな。そうなのかもしれないわね。師匠も九朗もそうやって戦っていたのかな。馴染むのよ、やっとこの剣が」 『現の月』風宮 悠月(BNE001450)こそ、にこと笑うものの瞳の奥は真剣で。ならば彼女の心意気に、応えてやらねばと鼓舞する。 『斬光瞬閃』喜連川 秋火(BNE003597)こそ、彼女に脱がされた1人だ。此の緊張具合で脱ぐとか書くと一気に雰囲気壊れるんだが。 「今のキミの方がおそらく本当の姿なんだろうが……前のチャラけてる方が好きだったんだがな」 「はは、ありがとさん。私もそう思う、馬鹿げているわ。日本一? 興味無いわ」 「嘘だ」 「へ、私今笑ってた?」 こくんと頷いた秋火。でも、そう、馨はやっぱり根からの剣林なのだろう。 「ゾクゾクしちゃうんでしょ! 胸の奥、ちりちりって熱い炎が!」 『フレアドライブ』ミリー・ゴールド(BNE003737)が片腕をぶんぶん廻しながら言った。バトルマニアにこそ分かる感情だ、耐えられない、疼くんだ。 「そうだね、そろそろお喋りもここらへんで終るか」 「もうちょっとキャッキャしてても良いと思ったが、こっちも時間が惜しいワケだ」 『(自称)愛と自由の探求者』佐倉 吹雪(BNE003319)こそ苦笑いしながら、頬を掻いた。 其の後ろで『残念系没落貴族』綾小路 姫華(BNE004949)は日爪へと手を振った。 「お?」 「お久しぶりですわ」 「何時ぞやの。以前は水差す輩が居たが、今日はそうもいかないだろう」 ● さあ、始まりました注目の一戦! 「本来、ボクはこういう面倒臭い事をするような奴ではなかったんだがね。前にキミとやりあった時の結果があまりに不本意だったんでな」 「なら、満足していきなさいよ!!」 トップスピードを足に乗せて、前へ出るスピードは常人の瞳では追えないものへすり替わる。音より、光より速くと。 秋火の脳裏に浮かぶのは全裸近くまで晒された己の肌の事だ。馨の刀に少しの恐怖を覚えながら、いや、それがなんだと突っ込んでいく。 「今日斬るのは、服じゃない。お前の身体!!」 抑えに回った秋火、自付を行い。だが馨が動く、其の秋火の身体に刀を滑らせたのだ、一閃と。 右から左に流れた刀が秋火の服を綺麗に避けて、肉体だけばっさりと斬ったのだ。彼女の服が赤く染まり、マジックの様な芸当。 其の馨の刃の一閃を腕に受けた吹雪。だが血に目もくれずに、錬の間合いへとダイビング。 「ひっ、なんか来た!?」 「なんかとか、言うな、なんかとかア!!」 なんの。錬の瞳に吹雪のスピードが追えなかっただけの事。反応した錬が剣を振る前に吹雪のソニックエッジが彼の脇腹を抉った。 痺れて動けぬ錬、ジャガノする前に麻痺撃ちこんでくんじゃねえと言いたいばかりの早業である。 されど錬の瞳には、戦況が映っていた。一旦後ろに下がった悠月がルーンシールドを張った事を仲間に報告。一気に彼女へブレイクを叩きこまんと、ホーリーメイガスが彼女の前進を待った。 「よっしゃ燃やす! バトルマニアらしい闘い期待しちゃうわよ!」 富士の此の場は少し寒い。だからこそミリーの勢いは丁度良いくらいの温かさが籠っていた、むしろ熱い。 右腕に炎を巻きつかせ、錬へと向かい右ストレートを一発。錬の顔面を穿つと同時、炎が彼を蝕む―――蝕んだのだが、 「そんな簡単にやらせないですよ!」 後方の2人目のホーリーメイガスが仕掛けた、神の愛が錬の撃沈を止める。むしろBSも回復し、錬はジャガーノートを其の身に宿した。 「いきなり退場だなんてそんな悲しい事無いじゃないですか!」 「いいからさっさと寝ちゃいなさい!」 錬がああいえば、ミリーがこういう。或る意味愛称の良い二人である。 「ん?」 だがのんきにはしていられない。 杏樹が見上げた、少し嫌な予感がした。 「俺のスーパーミラクル宇宙一ハイパーウルトラスーパー超パーンチ!!」 薫だ。 誰も抑えなかった薫が単身杏樹の下へと走って来、物理防御を無視した攻撃が杏樹の腹部の中身をミックスさせていったのだ。 血やら胃液やら、出ちゃいけないものまで出そうになった杏樹だが、なんとか両足で持ちこたえた。其の儘銃口を目の前の薫の眉間につける。 「スーパーが、二回入っているな」 ガァンと銃声が鳴り響く。だが其の弾、薫の頭蓋骨を損傷させる事無く皮膚を抉ったのみで止まったのだ。 「どんな石頭だ」 「気合いだ、気合い!」 「この世界が生んだバグか?」 其の頃、姫華は1人日爪を相手にしていた。アークのリベリスタには撃破順があったものの、日爪がこうまで姫華に接近していては撃破順もくそも無いだろう。 「で? どれ程強くなったのか試したいと?」 「ええ。以前みたくはいきませんから!!」 「ほう、強い女は嫌いじゃないな」 「私こそ、全力に答えてくださる男性は嫌いじゃないですわ!」 姫華がヴォルケイノを放つには仲間が近すぎる。変更して、ゲインブラッドを放つ為に繰り出したカルディアが変型し日爪の肩を切刻む。 対して日爪は召喚した鎖を姫華の首に巻きつけ、其の動きを食い止めた。 息さえ出来ない圧迫感に口端から涎が垂れた姫華。其の雫が地面を濡らしながら、流れて日爪の足もとを濡らす。 「やはり女をやるのは趣味では無いな」 「……ぐっ、ぅ……」 姫華は悶える、だが、鎖を引き千切らんばかりの力で抵抗した。 「ほう、大したもんだ」 「舐めるん、じゃ、無い、ですわ!!」 ● 地面を手に、足を回転さえて蹴りを放つミリー。身軽さを強調せんとばかりに、足技を繰り出し錬が其れを剣で弾き返していく。 「こっち、はい、次こっち!!」 確かにフィクサード方は本気で来ているだろう、リベリスタも今は『まだ』本気で殺しに行っているだろう。 だが、『まだ』なのだ。此の場の誰も、リベリスタの誰もが彼等を殺そうとしていないのだ。 命は尊いものだから? 違う。誰もが殺しで解決するという事を望んでいなかった結果であっただろう――!! それをフィクサードが気づくのは、まだ少し先の話にはなるのだが。 「楽しい? ミリーたちとこうやって遊べるの」 「楽しい? そうかもしれない、僕達剣林はそうやって生きて来たから!!」 跳躍したミリーが腰を捻らせて錬の頬を蹴り飛ばした。一回転した錬はそのまま剣をミリーの太ももを切刻む。ぐら、と揺らいだ足のバランス。つい膝をついてしまったミリーの頭上から飛び越えて吹雪のソニックエッジが再び錬へと直撃した。 だがギリギリの所で吹雪の武器が、錬の武器に阻まれる。 「さっきみたいなの、二回目は無いし。後衛には行かせられないですから!」 「お? おじさん困るなあ」 止められたなら手数を出すまで。吹雪は裏拳の容量で得物を持っていない方の腕を廻した。それが錬の首元にあたれば、グギギギィと鳴る彼の首骨。 一瞬ゆらっと体勢を崩した錬ではあるが、ホーリーメイガスの恩恵が彼に下されれば、またまともに立ち上がる。 「そう、こなくっちゃですよ」 「お前の先の後衛ちゃんに用があるんだがなあ」 吹雪は笑った。 だが吹雪の体格に紛れて錬の眼には見えていなかった。いや、あえて吹雪が隠していたという方が正解であろう。 横に廻り込んで走る悠月の姿を錬が確認―――した時は既に遅かった。 「全員巻き込める――!!」 「まずい!! 下がってください皆様!!」 悠月の言葉の直後、錬の声が響いた。だが遅い。 足を止めずに、悠月の利き手は銃の形にさせた。それをバン!と撃ては、踏む一歩一歩に展開されていく魔法陣から鎖が巻き起こる。 一直線に伸びていく鎖がジャラジャラと音を立ててホリメを、薫を、日爪を飲み込んだ。たった2人、錬だけは巻き込まれず。馨は鎖が絡む前に断ち切って難を逃れた。 「お返しだな」 悠月は足を止め、後方に下がろうと跳躍した所だったが。悠月の後退するスピードよりも遥か先に、馨が産み出した幻影が悠月を囲んだ。 攻撃こそ弾く彼女のルーンシールドではあるが、幻術の中に完全に捕らわれたと言えよう。 秋火は其の幻影を切り崩して逃れる。 「そんなのにひっかかるボクじゃないんだ」 アル・シャンパーニュだ。秋火の繰り出す刃、光の飛沫を纏わせて馨へと向かうが間一髪で精神力で構成された刃が其れを止めた。 つばぜり合いの間合いだ。お互い気を抜けば押し返されてしまう程の接近した中。 「恥ずかしかったよ、人前であんな姿!」 「そう、あの表情が見たかっただけよ。でも今は違う!!」 弾いて飛ばす秋火。勢いが止まった所で再び馨が切りかかり、つば競り合い再び。 「今は、秋火ちゃんの命が欲しい……かな……」 「欲しいなら、奪ってみるんだな」 顔面を大きな手で掴まれた杏樹は其の侭後頭部を地面へと叩きつけられた。 視界に星がチラつき、一瞬だけ自分が誰か忘れたがすぐに思い出した。杏樹が仰向けに、その上に乗っかる形になった薫。マウントポジションで一方的な殴りが始まるかと思われたが、杏樹は右手を突きだしトリガーを引く。 「丁度、お前が傘になるな」 「ん?」 薫が上空を見上げれば炎の雨が降り注ぐ。少しだけ寒い其の場所も、熱く熱く、杏樹の弾丸によって燃え上がるのだ。 「余所見をするのも、どうかと思うよ」 「え?」 薫が今度は下を見れば、杏樹の左手にある銃が今度は火を噴いた。零距離からの射撃だ。胸に綺麗に穴をあけた薫が驚いて飛び退いた。 「ハハァ! シスター、なかなかの威力だ。根性あるんじゃねーか!」 「気合いと根性で全てどうにかなる訳でも無いがな」 どうやら後頭部の骨にヒビでも入ったか。頭痛のする頭を持ち上げなら、杏樹は再び銃口を向けた――所で、姫華が杏樹の身体にぶつかった。其のすれすれの位置を暴れ大蛇か――うねる日爪が通過していく。 「ごめんあそばせ、貴方事、私を狙ってきたもので」 「いや、いい。感謝する」 背中合わせに杏樹と姫華。各々の彼女の先には、日爪と薫だ。さて、どうしたものか。 頼みの種は―――混乱から抜け出した悠月が、再び詠唱を開始した。 ● 抑えに抑えがきいていては、敵の後衛はがら空きであった。 機転を利かせた悠月が廻り込み、ホーリーメイガスがブレイクを放つ前に鎖で縛ってしまえばこっちのものである。 秋火が対している馨の足下。 「捕まえます――」 「此の私を?」 馨がそんな攻撃に当たらないと言いかけた所で、地面を突き破って出て来た鎖が彼女を巻き上げた。 だがそれだけで悠月の攻撃は終わらない。更に後衛へと追撃の鎖が放たれた――それはホーリーメイガス二人を射抜いて絡め取っていく。 同じように同じだけダメージを受けて来たホリメだ。1人は其処で動かなくなったものの、もう一人は回復せんと足掻いたところで不運に苛まれて回復は不発。流血と猛毒に苛まれて、膝をついてから倒れた。 これで回復が消えた剣林勢だ。加えて数にも片寄りが出れば優位なのは完全にリベリスタであろう。 だが、負けじと薫が放つ右ストレートが杏樹の胴を抉って貫通していけばフェイトの恩恵が彼女を助けた。ふと、思う、馨はそこでイラついた。 「貴様等!! ホーリーメイガスを殺していないな!!?」 「ええ、戦闘不能で止めました」 聞かれたから答えたと平然と、悠月は淡々と答えた。 「ふざけるな!! 私達は本気なんやで、きさまらぁ! わいらを馬鹿にすっつもりかえ!!」 地が出ている馨。 「違う!」 其の叫びに、吹雪の声で周囲はシンと静まった。 「好き好んで人が死ぬのを見たいわけじゃねぇからな」 「だからそれが舐めているって!!」 「相手が死にたがってたとしてもこっちが勝ったなら負けたやつの言うことを聞いてやる必要もねぇだろ?」 「な、な!? なななな!!? まだ負けてねっぞ、わいらが勝つきまっとんじゃき!!」 「違うよ! 違うんだっぺ!」 更にミリーが割って入った。 「ミリーたち、殺人鬼とかと一緒にしないで欲しいわ!」 馨は思い知らされたような気がした。リベリスタと、フィクサードの違いという所を。だが、知ったからこそ剣が更に馴染むのだ。 「こういう事か、こういう事なのか、師匠。本当の強さって、なんだ、なんなんだ――!!」 秋火のアルシャンパーニュが、剣の柄が、馨の鳩尾を打撃。息が出来ないと苦しんだ馨だが、体勢を立て直して構えたが。 「そっちじゃない」 秋火は既に馨の首に後ろから刃を構えていた。 「『切り裂き魔』戸部馨、ここで死にたいなら好きにすればいい。キミの友人がそれを望んでいるかは知らんし、キミが望むことを止める権利は僕にはない」 「友人が、望む……?」 其処で馨は思い出した。 生きろ。お前は、生きろ。 其の言葉を。 「――くっ!!」 だが今は、負けて、たまるかと。 「はっ!?」 しかし空から降り注いだ杏樹の炎の雨。ぼろぼろになり、所々大きい痣を作っていた杏樹だが、片手でぐったりとした薫を抱えながら、もう片手の銃を空へ向けていた。 「撤退。する気はあるか?」 「毛頭、無い!!」 そうか、ならば最後まで戦うまでだ。誰一人死なない、殺させない、そんな理想の戦いで――!! 人はそれをただの喧嘩というのだろう。だが剣林とアークならばそれくらいできっと、絶対、楽しめるはずなのだ。 悠月は言う。 「九朗が、死を望むとでも?!」 「言うな、魔術師ぃぃいい!!」 吹雪のナイフが錬の膝を切刻んだ。片足が崩れた所で、剣は杖の様に錬を支えた。だが其処で飛び込むミリーの一撃。 「テンション上がってきた! 今晩オネショに気を付けてね」 燃えろ燃えろ燃えろもっともっと!! あまりの熱にミリーのツインテールを結ぶリボンが溶けて消えた。長い髪が重力に従った所で、ミリーの腕は最高潮に燃え広がる。 「覚悟ぉ!!」 「ひええ、それは無理かなあ!!?」 錬の頬をミリーが穿った、回転しながらバウンドして飛んでいった錬。壁に激突し、壁にヒビが入り、だが錬は生きている。 それに、此方にも決着がつきそうで。 「お正月休みがなくても、これならまあ許しますわ」 「ふ、愉快な女子だ」 スタートダッシュ。暴れ大蛇に身を乗せて日爪がうねる、だが。 「な!?」 其れに突っ込んだ姫華。蛇のような緑の閃光に、真っ赤に燃え広がる炎がぶつかった。武器と武器同士が鬩ぎ合い、だが、少しずつ押されている日爪。 「く、こ、このっ、私は貴方に勝つのですのおおおおお!!」 「な、にぃいい!!?」 そして勢いは姫華が上回る。緑のオーラが消え、真っ赤な爆発に押されて日爪も壁へと激突してから意識を飛ばした。 「あとは――」 悠月は言う。 「切り裂き魔――!!」 杏樹が言う。 「お前だけ、だあああああああ!!」 集中してからの魔弾が杏樹の銃から放たれた。其れを斬って止めた馨だが、二発目三発目四発目……と続くと、目は追いついても腕か続かない。肩と射抜かれた所で馨の動きは止まった。 其処で再び悠月の鎖が彼女を縛る。全身を、女性の身体のラインが分かる程まで縛り上げ。だが馨も精一杯抵抗した、の、だが。 「あの日の借りを、返す!!」 秋火が跳躍した。そして―― 「これで、チャラだ!!」 上から下に、切刻んだ馨の肉体と一緒に服が肌蹴て落ちた。 ● 「剣林としてのお前は今日死ぬ。肩書のないただのない戸部馨として、生きる気はないか?」 「……負けたわ。そうね、そうかもね」 それから仰向けで、大の字で倒れた馨。 悠月は言った。 「死ねば彼に逢える――とか、考えていましたか?」 「……考えているわ。私のせいで死んだ彼に、詫びる方法もね」 悠月は遠くを見た。空は此処は視えない。僅かな隙間から灯る月明りだけを探して。 「死者を――死者を想うのは生者の特権。だから、もう少し浸っていても良いのじゃありませんか?」 暫く思う様に笑った馨に、杏樹はふう、と溜息を吐きながら隣に座った。 「剣を磨くなら、剣の道に生きるなら、アークに来てみないか? 無理強いはしないし、生きるも死ぬも好きにすればいい」 ただ、馨の良くない性癖が発動したら遠慮無く殴るけれども、と付け加えて。 「アークね、もし貴方達が日本最強の異名を取ったなら、考えてあげる。連絡先は、教えておくわ」 強い所じゃないと嫌なの。だなんてアークを決して舐めてはいないが、からかった言葉で遠回しに考えさせてと言っていた。 投降はしない。そんな自分の命を惜しんだような行動は仲間に申し訳が立たない。だからこそ、此の剣林が終わって残党と呼ばれる様になったら、また其の時に考える。 「ねえ、悠月。貴方なら知っている?」 「何をです」 馨は起き上がり、悠月の耳だけに聞こえる様に言った。 「品物之比礼。かの裏野部一二三が、集め損なった、いえ、集めなかった最後の1つの神宝よ―――気をつけて。彼等は蛇や蜂より気難しいわ」 馨はそれで、にこにこ笑いながらバイバイと手を振り。 闇の奥へと消えて行った。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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