●エキシビジョンマッチ二回目@クリスマス 「たいへんだ。三尋木から接収した三等地で、おそれやまが赤い縄を張って不法占拠しているぞー」 アークのブリーフィングルーム。 『変則教理』朱鷺子・コールドマン(nBNE000275)が、サンタ衣装に身をつつみ、タンバリンを愉快に叩いて出迎えた。 その口調は、いわゆる緩急の乏しい、棒読みの語りである。 「まあ冗談です。恐山から『クリスマスなので、しばき合いしないか?』という申し出が入りましてね。千堂さんから」 国内のフィクサード組織の一角である、恐山の名前が出る。 かの組織は『謀略の恐山』と通称されるように、戦闘以外の政治経済、外交を得手としている。 千堂という人物は、主にアークと恐山間で良く交渉に来る人物である。 しばき合いをしたいとは、一体どういう話か。 「メンドクセー話なんで聞き流して下さい。恐山のトップの意向が『アークとのパイプを太く持ちたい』という方向なんですが、一部の下っ端が『アークのこの野郎! ぶっ泣かしてやる!』というヘイト持ちで、どうしようもねーから、一回しばき合いという格好で落ち着いたみたいっすな。慣れ合いっぽいので、好かない感じしますが、誰か相手してやってくれませんかね。クリスマスなので」 クリスマスが何の関係があるのか。 朱鷺子が端末を操作すると、空き地が映る。空き地の中央には土管が3つ。三角に積まれている。 その上にはセーターマフラー姿の糸目の女が鎮座する。足を組んで上を見たり左右をきょろきょろ見たり、飄然と座っていた。 「『黒虎の高弟』マリアベル・リー」 映像の中で、マリアベルというフィクサードがくしゃみを一つする。見れば粉雪が降ってきている。 「元々は、『倫敦の蜘蛛の巣』――ああ、バロックナイツの下位組織で、今は壊滅してますが、そのまた下位組織に所属していた人間です。体よく恐山に接収されて、今はご覧のとおり土管の上でくしゃみしてます」 大きなスクリーンの映像が切り替わり、データが映る。 狐のビーストハーフ。生業は覇界闘士。元々バロックナイツ系列にいたためか、アークのリベリスタと比べても遜色ない実力者である。 「まあ、纏めるとあれですね。武道館で毎週やってるみたいなものの延長線。恐山に対してエキシビジョンなタッグマッチって所です。2on2が希望とのこと」 武道館同様にすぐさま治療できる人員を配備し、命までは奪わないという取り決めがされているらしい。 「ん? 2on2? このマリアベルというやつの他は誰だ?」 「ジングルベェェェエエエエル! ジングルベェェェール! すっずがなるぅー! あ、忘れてました。てへぺろり」 画面が切り替わる。 サングラスのごときバイザーを着けた白い長髪の女が映る。 「相手のもう一人は、恐山の数少ない暴力担当主任。『殺伐の境界線』凍イ出 アイビス。強さはまあまあ」 いつもの緩急の無いさらりとした物言いだが、朱鷺子の目に一瞬だけ、鋭さが浮かんで消える。 「――そうですね。うん。多分、まあまあといった所ですかね」 何やら、不穏な一言で締めくくる。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:Celloskii | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 6人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2015年01月10日(土)22:30 |
||
|
||||
|
■メイン参加者 6人■ | |||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
●ミリー・ゴールド&晦 烏ペア1 茫々とした銀灰色の空の下、細かな雪がひらひらと散っている。 向こうの商店街からは、鈴の音が鳴っている。本日は、基督の生誕祭である。 「誰から来ますか?」 アイビスの声で始まる。 『足らずの』と晦 烏(BNE002858)と『フレアドライブ』ミリー・ゴールド(BNE003737)が軽く挙手をした。 直後に、烏の脳裏にイメージが湧き上がった。 「何てものを見せてくるのか」 烏への嫌がらせは、烏本人が美味そうに茸を食べている図だ。茸が大の苦手なのだ! 「っと! ――読まれたか」 直後に思考が読まれたと感じる。 マリアベルが弾丸を掻い潜り、烏へと疾走る。 そこへ、ミリーが進路を遮る様に、腰を落として構えを作った。 「純粋にバトル楽しめるなんてこういう機会ぐらいだもんね! 楽しく燃える闘いしましょ!」 ミリーにマリアベルの拳が飛来する。左手で跳ね上げる。炎の揺らぎを右手握りこみ、まっすぐに突き出す。 「おお、なんともお誂え向きな奴だねぃ。炎の拳士対決とは」 ミリーの拳は、しかし、マリアベルは雑技団の如く上体を反らせた事で空を切る。 敵は反らせた勢いで、下から上へと蹴りを出してくる。 「ゲヘナ!」 場に爆炎が下る。寒々とした冬の空き地は一気に熱を帯びる。 「驚いたねぇ。業炎の拳に見せかけたゲヘナか」 炎の使い手ならば、効かないという可能性も警戒していた。しかし、どうやら通っている。 そう考えた所で、ミリーの頭上をふらふらと神秘の閃光弾が通って行く。 「こうされると困るでしょう?」 後方から炸裂音がした。同時に視界が真っ白になる。 「私から先に落とす策――どうぞゲヘナの火。巻き込んで下さい」 中々と行動が早い。そしてやりたいことを読んできたのか。 域を焼く攻撃だ。使えば自分が受けてしまう程に踏み込まれた格好である。ならば接近戦を仕掛けるまでなのだが。 「(大丈夫、烏の腕は疑ってない)」 たちまち、ミリーは後方から銃声を聞く。弾丸を真っ直ぐにマリアベルに刺さる。 「ンンー、やるじゃないかよ」 「流石」 烏の膝立ちからの一射である。 「首筋の皮一枚程度は我慢して貰うとしてだ」 マリアベルとの射線上にミリーが間に入っているが、僅かな隙間さえあれば狙える。 読みでアイビスに勝つということは、戦況把握、一枚上手を行く戦いに近い。そして烏の位置は、恐山のフラッシュバンからは射程外にして、自らは手が届く、絶妙な位置である。尤も、麻痺への対策もしてある。 マリアベルは、口角の血を腕で拭い、釣り上げる。ミリーもその通り。 「さぁさもっと燃えていきましょ! ミディアム・レアは好きじゃないの!」 「よぉし、かかってくるがいい」 ミリーもマリアベルも炎使い。マリアベルとの勝負は、純然な地力と、意地の張り合いに近かった。 ●ミリー・ゴールド&晦 烏ペア2 双方とも体力の回復手段が無い。 短き時間をかつ、短く駆け抜けるかの如き戦闘である。 「どうも無理ですね。一気に押す所でしょうか――アニヒレートプラン!」 アイビスの未解明な術式が下り、マリアベルの周囲に緑色の01数字の羅列が断片のように浮かんでは消える。 「よぉおし、行くぞぉ炎使い。ヒャッヒャッヒャッ」 敵拳士の双腕に、炎が激しく昇る。その炎を用いた連撃はミリーへと向かう。 「っく! 」 受けた一撃が非常に重い。加えて相手は二度攻撃してくる。あっというまに運命を炎にくべかける。 「そうは問屋がおろさない、ってな」 お返しの様に放る烏の閃光弾が、マリアベルの付与を砕く。 「な、何故解除できるのです!?」 根気よく解析をしていれば1/10には解除できようものだ。 アイビスは、唇を強く噛んでいる。次には一息吐き出して。 「……これはギブアップですかね。詰みました」 アイビスが両手で軽くバンザイをした。 だが、まだだ。 「覇界闘士としては三流だけど燃えて殴るなら他に負けるつもりはないわ!」 ミリーにとって、そんな終わり方なんて真っ平ごめんだ。 同じ炎使いと見込んでの全身全霊のご挨拶すら済んでいない。 「おぅ、私だってまだまだ、師の足元くらいさあ」 それは相手(マリアベル)も同じらしい。 「これがミリー全力の炎! どっちが先に倒れるかしら」 「私が勝つにきまっているだろうよ」 業炎が逆巻き、炎の揺らぎの中で、拳が何度も交差する。 ミリーは、意地を拳に乗せ、真っ直ぐ、真っ向から、ぶち抜く。 「ちっきしょうううう!」 たちまち、大きな火龍が空き地全体を覆い尽くす。天に昇るかの如く双方を包み込む。 「このまま勝つ!」 マリアベルを大きく上に舞い上げる。 炎の龍が消えて、次に落ちてくる。敵は立ち上がろうとして、しかし崩れるように伏せたのであった。 「……か、勝った」 次にミリーも膝を着く。 かくして一戦目にして、勝利をもぎ取った。 直ぐに、名も無きリベリスタやフィクサードが治療の為に出て来る。 「甘蝿つーと、列子の不射之射に出てくる老師か」 「怪物ジジイさぁ――んあ!?」 驚愕の様な音を上げたマリアベルに、ミリーと烏は首をかしげる。 何事か解釈できない間に、名も無きリベリスタ――白髭で功夫着の老人が、烏とミリーの背に活を入れる様に癒していく。 「回復ありがとうね、おじいちゃん」 「なんのなんの」 ミリーは、何か老師っぽい雰囲気だな~と思いつつ、ニッコリとお礼を言う。 「ん?」 はて。 烏は、上海で遭遇した人物に似ているような。マリアベルが驚愕した様な表情で老人を見ているような。と考える。まあ、きっと気のせいだろう。 首を正してアイビスを見る。 「係長の件で恨みつらみがあるのは判る。おじさんも実に残念に思うがな。ヘイト持って喧嘩をやったなら酒を酌み交わして手打ちといこうや」 「さて、どうですかね。お酒おごって下さい」 ●『はみ出るぞ!』&氷河・凛子ペア1 「ハッハー!敵も味方も素敵なお姉さん! これこそ俺が実力を発揮できる場面! アレなイメージとかなんですかねえ! 素敵なおねーさんのピー映像とかですかね! うひょお!」 『はみ出るぞ!』結城 ”Dragon” 竜一(BNE000210)は重傷を負った身体であるのに、元気いっぱいだった。 「んー? 何言ってんだこいつぅ?」 「お腹が減っているか、悪いキノコでも食べたのでしょう」 恐山の二人がそう評する。 「ふむ?」 その理屈で言えば『常に悪いものを食べていることになる』と『境界の戦女医』氷河・凛子(BNE003330)は首を傾げかけたが、すぐに正す。 自分達の番である。整然と並び、破界器を構えた瞬間、開始される。 「全力で参ります。――結城さん。先ずは真っ直ぐ押しましょう」 開幕と同時に凛子の指示が飛び、竜一が真っ直ぐに駆け出した。 「一人で二人抑える! 極技神謀もちの凛子たん指示きけばワンチャン! わんわん!」 竜一が振り下ろさんとした剣、剣を握る両腕にへマリアベル蹴りが刺さる。 「重すぎだろぅ」 マリアベルがキツネ目を大きく見開く。 この拳士は、普段はこの防御方法で剣士を封じていたのであろう。しかし竜一は、力ずくでこれを押し込んだ。 「これは、リーディングは不要ですかね!」 アイビスの嫌がらせと付与が走り抜ける。 「うおおお!」 竜一が咆哮を上げる。ある女性の着替えのイメージである。12/25生まれの29歳の後ろ姿。縞縞パンツ。 「この鮮明さ! pngでください!」 「先輩ではだめだこれは。萎えさせるどころか元気にさせてしまった」 竜一の劣情が、タイラントアポカリプスに達した一方、凛子は醒めた様な目で恐山二人を交互に見る。 「(リーさんが極めて冷静になっている様子ですね)」 こういう手合いはここから一番面倒な事になるのが相場。 長き間を、後方より戦況を観察してきた凛子の経験によるものである。 「炮烙」 マリアベルは炎を握りこみ、竜一の胸に掌打が触れる。 途端、竜一の体内に灼熱が起こる。口から炎が漏れる。 竜一の脇をアイビスが抜けてくる。 「回復役から倒すというのは……常套手段ですからね」 アイビスが抜けてくる事を予想していた為、備えはしていた。 「(自分に付与している?)」 が、アニヒレートプランは、自身に用いてる様子だ。 凛子自身が回復役である事を事前に理解していなければ、このような手は打たない。 どうも不穏だ。 ●『はみ出るぞ!』&氷河・凛子ペア2 竜一は、マリアベルの猛撃を受けながらも、後退せず抑えこむ。 考えていた策は、ノックバックと混乱を用いて同時に敵二人を抑える事であった。 しかし、アイビスに抜かれ、1対1の様な状況となる。 「グロはいらないですよ。逆に冷静になるわ! そんなに俺にストイックに戦闘させたいのか!」 後ろから見られているのか、グロテスクなイメージが飛んで来くる。竜一は怒りのジャガーノートの構えをとる。 これを直ぐ様、マリアベルの弐式鉄山が砕く。 「天遣いの吐息により癒やしを」 竜一の傷を癒やす凛子。同時にアイビスに対して防戦が続く。 「私は戦場医だったもので内臓(なかみ)はよく見ておりますので……」 凛子に嫌がらせの効果はない。困り気味な笑みを作る。 この状況が続けば、敵に癒し手が居ない以上、音を上げるのは恐山の方ではあるのだが。 「頃合いです。少しずつ、一撃で倒せる所まで――」 たちまち、凛子の視界が真っ白になる。神秘の閃光弾である。 「癒し手、殺ったよぅ」 マリアベルが飛翔する武技の構えを作る。凛子を討つつもりだ。 危機の到来。 竜一が打開せんと動く。混乱させて射程外まで叩き出す。事は単純だ。 「うなれ! 俺のダブルセンスフラグ!」 マリアベルを打つ。しかし浅い。 もう一歩の踏み込む。刹那、フラグのように雪で滑る。 たちまち、竜一はふかふかのマリアベルの尻尾に顔を埋める。先方も滑る。押し倒すような格好だ。 「!???!」 混乱の付与が成就する。 凛子が直ぐに麻痺を振り切り、視界を取り戻す。 「視界を取り戻せなかった場合、混乱が無かった場合――色々な可能性がありますが」 呟いて、身を一歩後退させる。すぐに癒やしの一手。 先の神秘の閃光弾によって、凛子への削りが無かった分だけ、一撃で落とされる圏内からほぼ脱出したのである。 「では、結城さん」 「今度こそ何とかする」 そこへ竜一が刺し込んでくる。アイビスに接近してのタイラントアポカリプスだ。 「ふゃ!?」 センスフラグと、センスフラグ(必死)は伊達ではない。たちまちアイビスの長髪のヅラごとぶっ飛んだ。 「あれ? 朱鷺――」 「朱鷺子なんて人知りません」 竜一は口に出しそうになった言葉を遮られる。 まあいい。 「これがデュランダル(脳筋)だ!」 竜一の強力な圧力は、二度とアイビスの通過を許さない。 「私達の勝ちです」 凛子の癒やの光。これは時には残酷だ。 一撃の圏内まで丹念に削ってきた行動が、これにて無に帰した。 二勝目。 程なくして凛子が、湯気の立つ茶を用意した。 「簡単には割り切れないものだと思いますが」 無理に語る必要もなし。此度の経緯に至った理由を察している。 「今は話をしているのですからそれで良いのではないでしょうか」 「……」 竜一は腕を組んで考える。 「あの縞縞パンツの着替えシーンの鮮明さ。普段見慣れているとしか思えない」 アイビスという人物は一体、何朱鷺子なのか。pngで貰おう。 ●富永・喜平&設楽 悠里ペア1 身体が温まり、程なく再開されるは、いよいよ三組目である。 「すまんな、俺みたいなのが相手で」 『終極粉砕機構』富永・喜平(BNE000939)が首を左右にコキコキと鳴らして長大な砲――得物を構える。 開幕、雪を蹴るように出る。 狙いはアイビス。真っ直ぐに駆けて、奈落の気を至近距離にて発射する。 アイビスは魔楽器で防御する。 「アークにカレー持って行った時に、野菜ごろごろカレー食べていましたか」 「そうだったね。良いカレーだったよ」 喜平は、魔楽器(タンバリン)を注視するが、それ以上は何も言わなかった。直後にハイリーディングを受ける。 「ようぅ、甘口カレー」 『ガントレット』設楽 悠里(BNE001610)の対面、からかい半分の挨拶と共に繰り出された拳は、マリアベルのものだ。 「こうやって君と戦うのはもう何回目だろうね」 握り拳で作った鉄槌で正拳を捌くと、姿が消えて下から蹴りが来る。一歩後退して紙一重で見切る。 「僕の負い目はまだ消えた訳じゃないけど、こうやって解消するチャンスをくれたんだ。迷いなく、全力で応えたい」 「私は良いんだ。人死ににゃ慣れてるしなぁ。どちらかといえば――まあいい」 喜平と悠里の方針は、単純明快に一対一である。 喜平はアイビスを取る。 「恩人が死んでいるので、どうしても戦わずに居られなかった訳です」 アイビスから放り投げられた神秘の閃光弾を、喜平は銃で影を作り直撃を避ける。 「其の気持ち分からんでもない。下の方で身を削ってた奴にしてみれば簡単に納得は出来んわな」 返す刀の如くに、大振りの砲塔をぶつける。ぶつけた瞬間に噴射させた勢いで殴りつける。 「しかし状況なんて変わるものだし、此れで一つ遺恨が片付くならね」 「クールでもスマートでもない手段だとは思いますが」 「だが最善かな」 喜平が、しっとりと笑みを浮かべる。 「マリアベル。無式炮烙で来なよ。奥義を使わずに倒されるほど、安いつもりはないよ」 魔氷と業炎の飛び交う中で、悠里は冷気を帯びない、浸透させるような掌打を打つ。 「――オマエ、ボスにでも影響されたのかぁ?」 「そうかもしれない。土砕掌の先。それから業炎撃と土砕掌の融合。それは僕の目指すものに通ずる」 マリアベルのキツネ目が、薄く開く。 「いいぞ、特等席で無式見せてやるさ」 先の二戦と同様、炮烙の構えがとられた。 「来い!」 ●富永・喜平&設楽 悠里ペア2 1対1を行い、先に一人倒した側が勝つ。 手出し無用の戦いである。 悠里の傷は深く、重くなっていく。炮烙は防御をすり抜ける。氷結させる事で抑えているものの、優勢劣勢を評するならば、劣勢である。 その一方、喜平は火力が乏しいアイビスが相手であるから、こちらは優勢であった。 喜平が視線を悠里の側へ動かす。動かした途端、アイビスは自らに強化を付与する。 「まさか、ペルソナ……!?」 「ご名答。少なくとも1対1でやる事が確定しているから、安心して良い」 ここに、アニヒレートプランのその瞬間、喜平の策が発動する。 「負けうるポイントとしては、悠里が真っ先に倒されることさ。実力は信じているけどね」 混ぜた嘘は『マリアベルの状態異常が積み重なった時、圧倒的有利になる機会を奈落剣を刺す』。 アイビスは、これによって喜平のブロックを決した格好だった。 「しゃーないっすなぁ。奥の手の奥の手よ!」 アイビスが不敵に笑ったと思えば、たちまち喜平の全身に脱力感が襲ってきた。連続行動からの凍てつく視線である。 「アブソリュート・ゼロ?」 アークのリベリスタであるまいし、相手に合わせて組み替えるなど。 「私は『幻想纏い』持ってますのでね。この勝負の前に少々」 「ではここから。本格的なパーティーの時間という訳か」 喜平が不敵に笑う。 アイビスが携える魔楽器(タンバリン)の存在が、AFを持っている理由を雄弁に告げていた。 「これが完成した炮烙……」 「ってなわけだよぅ」 軽く平手から放たれた一撃は、しかし内臓をシェイクされるかの様に凄まじい威力を伴っている。胸に灼熱が起こる。 悠里が腕を薙ぐように振るうと魔氷の柱が立つ。刹那に、胸に鋭い痛みを覚えた。 「『不射之射』……ソードエアリアル?」 過去に見た際は、ナイトクリークの技での反撃であったが、マリアベルはソードミラージュの技で反撃してきたのである。 「ビビった。お前さん達アークのおかげだろうねぇ」 悠里の全身に麻痺が起こり膝を着く。 「……終われない」 必ず、掴むんだ。皆を守る力を。これまで長きに渡る戦い集大成を。 拳を握り固めて麻痺を振り払わんとする。 「ちと違えな」 膝をついた姿勢で、見上げる。絞りだそうとした声を、女拳士は遮った。 「負い目なのか、何か掴もうと力み過ぎなのか、前後を忘れた様な気魄が薄味な気がするな」 唐突に、マリアベルは雑技団の如き身のこなしで、場から逃げように動く。 「待て、マリアベル!」 「そこそこ楽しかったよゥ。また闘ろうさぁ、アークのリベリスタ諸君」 塀の向こうへと消えていく。 「……これは、どうなるんでしょうね?」 喜平が視線を動かし、首を傾げる。その隙をアイビスが「キシャー」と襲いかかる。 「ぐはーっ」 フルスイングと奈落の剣による連続攻撃で迎え撃った。 ●聖夜細雪 「さて――遺恨が晴れたなら万々歳だがね」 喜平が、こつんとアイビスのデコを叩いて決着となる。 「三連敗! んがー!」 アイビスが地面でゴロゴロ転がる。雪はチラチラチラと降っている中。集ったリベリスタ六人は、改めて思い思いの言葉をかけていく。 やがて転がるのが飽きたか、むくっと起き上がる。 「まあ、楽しかったですよ。ふぁっくゆー」 遺恨は消え失せたような、満更でもない顔ではあったのだから、この催しは成功ではあったのだろう。 |
■シナリオ結果■ | |||
|
|||
■あとがき■ | |||
|