● 「冬だわ。戦いましょう」 『恋色エストント』月鍵・世恋(nBNE000234)は悟りを開いたかのような顔をして微笑んでいた。 「えーてぃーえす」 ひらがなで書くと何とも滑稽な文字列だが、A(アーク)T(トレーニング)S(システム)という技術力の集合体である。 VTSをアーク用に改良したソレでクリスマスを過ごすとは一体どういうことなのか。 悟りを開いた月鍵さん(××歳)は「戦じゃ……」と戦国武将ばりに囁いた。 世の中はクリスマス。 そんな悲しい夜だけど、幸せそうなリア充を討ち払うなんて世恋にはできない。 だからこその、ATS。 だからこその、戦! 「というわけで、詳しくはあーちゃんが言うと思うので!」 待ってるわと笑った世恋の目はやはり、死んでいた。 ――私、何してるんだろう? 真顔である。 折角のクリスマスなのに、真顔である。 ● 「いちゃいちゃもいいけど、暴れるのだってまた一興。 クリスマス暇? あ、夜はいちゃいちゃすればいいし、昼間な!」 どうかな、とあーちゃんこと『槿花』桜庭 蒐 (nBNE000252) が柔らかく微笑んだ。 どうやら蒐はアークの会議室をパーティ風にアレンジしてる最中。クリスマスパーティのお誘いかと思いきや、どこか言い辛そうだ。 「手作りのクリスマスパーティしたいなあ、って思ったんだけどさ……せれんれんが」 暴れてるんだよな、と肩を竦める蒐。 クリスマス、リア充が羨ましいけど幸せを邪魔出来ないから鬱憤を晴らすわ! とATSでのクリスマスを提案するフォーチュナ。 戦えないじゃんと蒐が突っ込んでもふるふると首を振る彼女は「いたくないもん」と跳ねている。 「模擬戦的な気持ちでどうかな。一応データベースにインプットされてる奴らとは戦えるらしいし、俺は恐竜倒したい」 少年は何か別の夢を見ている様だった。 クリスマスの準備をしたから、ここは休憩室兼パーティ会場だと蒐はへらりと笑う。 作りかけだから良ければ手伝ってくれると嬉しいな、と調理器具など様々なモノを用意したと指差した。 勿論、ケーキを食べてのんびりするのもよし。ケーキを顔面に……やめておこう。 折角のクリスマスなのだから、のんびり過ごすのだって大いにありだ。 雪がちらつく12月の末。作り掛けの折り紙の輪を片手に蒐は小さく呟く。 「あー、でも、せれんれんの気持ちは解る。ア充達がきゃっきゃうふふするって思うと、男子高校生としては無性に悔しさが浮かんできて、つい、思ったんだ――戦じゃー!」 ――世は戦国時代!(嘘) |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:椿しいな | ||||
■難易度:VERY EASY | ■ イベントシナリオ | |||
■参加人数制限: なし | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2015年01月02日(金)22:05 |
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■メイン参加者 17人■ | |||||
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● ひらひらと舞う粉雪に荷物を持った俊介が瞬く。 瞼に落ちる雪ひとひら、白い息を吐きだせば、袋にクリスマス飾りを詰め込んだ杏樹がくるりと振り返る。 「あまり無理しなくていいよ。気持ちだけでも嬉しいし、半分持つから」 教会を飾りつける用意をと買い出しに出る彼女の荷物持ちに立候補した俊介は両腕の重力に大丈夫だとへらりと笑う。 「俺は男だからな、これくらい」 そうは行っても、我儘後衛系ボディ。震える腕に杏樹が困った様に大丈夫かと差し伸べる腕に俊介は懸命に首を振る。 「大丈夫! ほんと大丈夫だから気にすんな!」 杏樹には世話になって居るから、こういう時だけでもと必死に腕で支える俊介は話しを逸らす様に「にしても」と杏樹へと視線を向ける。 修道女の装いに、唇から覗く吸血鬼の牙は神の徒には掛け離れている様にも思える。面白い組み合わせだなぁと呟く言葉に自信が神聖術師である事を思い出し人の事を言えないかと白い息とともに吐き出した。 「ヴァンパイアなところは、ちょっと気にしてるんだが」 微笑ましいけれど、と頬を掻く杏樹の夕陽色の眸に乗せられた憂いに俊介が慌てた様に「杏樹!」と声を張る。 「気にしてた? す、すまん。でもギャップは嫌いじゃない、って――うぉっ!?」 「ッ――」 種は自分では変えられない。だからこそ、気にしているけれどと唇に乗せる言葉に、俊介の告げた言葉を重ねて杏樹は振り返る。そう言われると気持ちが軽いと笑みを浮かべて振り返った先には、俊介の抱えていた荷物の山。 「わりっ!!? 杏樹、怪我してへん!?」 「大丈夫、これ位舐めときゃ治る」 慌てて顔を上げる俊介に杏樹が掌をひらひらと振る。衝撃で指の先を切った程度、大丈夫だと笑う彼女の指先から溢れた血に俊介が小さく息を飲む。 (舐めたい――いや、まて、ヴァンプの血だ。待て待て、落ちつけ俺は神聖術師……!) 思考回路が凄まじい勢いで『落ちつけ!』に行く中で手当てと回復をと立ち上がる俊介は困った様に杏樹を見詰めた。 「俺、強い男になるよ、杏樹……」 「うん。頑張れ。俊介ならきっと、もっと強い男になる」 応援してると赤い髪を掻き乱す様に撫でた杏樹は日頃の感謝を込める様に小さく笑って見せた。 「雪か……寒いわけだ」 マフラーにコート。ふるりと肩を震わせるイシュフェーンにアガーテが小さく瞬く。 「イシュさま、雪、雪が降ってますわ。真っ白で綺麗」 ね、と柔らかく微笑んだアガーテが付ける足跡にイシュフェーンが続く。 大きさの違う二つの足跡が並んで、何となく振り仰いだアガーテにイシュフェーンは「寒いけど、アガーテ君くらい可愛い娘となら、雪の中の散歩も乙な物だ」と小さく笑みを浮かべる。 雪道を、じっと見つめたアガーテが「イシュ様」と小さく呟く。 「考えてた事がありますの」 リベリスタに恋をしたアザーバイドの話しを聞いてから、ずっと。想いの欠片は胸の中にあるばかりだから。 「『特別』とか『恋』とか。私にはまだ分からないままなのですが……。イシュ様のお傍に居たいと思うのです。この足跡の様に」 フュリエの少女は感情に疎い。その事を知って居ても、どうにも照れくさいと肩を竦めるイシュフェーンは困った様に視線を雪道へと落とす。 並んだ二つの足跡が、若々しい感情に踏み入れるようで。どうにかなる様な気もして、瞼を下ろす。 「傍に居たいなら居ても良いんだよ。君が望むなら、君の答えが出来るまで、一緒に歩いて行ってあげるよ」 並んだ足跡の様に。気紛れかもしれないけれど――望まれるなら傍に居たっていいだろう。 柔らかく微笑んで、イシュ様と手招くアガーテは「外がとっても賑やかですわ」と周囲を見回す。 鮮やかに彩られる街並みに、何かの記念日なのでしょうか、と首を傾げる彼女へとイシュフェーンは小さく頷いた。 「そういえば、クリスマスだったね。この世界のお祝い事だね。簡単にいえば――神の子の誕生日って所かな」 ケーキとチキンを買って祝う日と付け加えるイシュフェーンにアガーテは嬉しそうに頷いた。 お祝いをするならば、一緒にと足跡を並べて、次は何から買いに行こうか。 仕事のついで、とアークに赴いたは良い物の簡単に片付いてしまってはぽっかりと昼の予定が開いてしまう。 夕刻には呼び出しが一つあるからと家に帰ると言うのも無駄足だと頬を掻く。 「世恋?」 ふと、結唯が顔をあげればメモを見詰めながら首を傾げるフォーチュナの姿がある。 解り易い小さな翼に同じ色の跳ねた髪は紛れもなく世恋のものだろう。 「お前、何してるんだ? ATSの方で何かやると言う話しを聞いているが……」 「あら、こんにちは。お買い出しなの」 にこりと笑う世恋に結唯は首を傾げる。そう言えばと思い出すのは何時かの日、周囲に乗せられて包丁を握りしめていたフォーチュナの姿。 「買い物? ……暇だが」 「もしお暇ならご一緒しましょうか」 メモに書いてある物を買うだけなんだけどねと笑う世恋に余りセンスは期待するなよと結唯は眉根を寄せる。 時計に目をやって、早く早くと手招く彼女に結唯は困った様に付いて行った。 「リア充爆ぜればいいのに」 むす、としたロアンの言葉にリリは慌てた様に「兄様」と彼を呼ぶ。 「し、幸せの邪魔はいけませんよ……?」 そうは行っても自分だってそう思う事もある。私は悪い子ですね、と視線を揺れ動かすリリにロアンは頬杖を付いたまま息を吐く。 「自然な事さ、自分がツイてない時に人の幸せなんてそう喜べない。愛する事も喜びだけど、与えるだけじゃいつかは枯れる」 呟く様に告げるロアンの眸が暗い顔をしたリリへと向けられた。 神の徒たれと指を組み合わせ祈るだけだった『道具』であった妹が嫉妬を覚えたのは酷く感慨深い。 ロアンの言葉に悩ましげにリリは視線を落とし「でも、」と呟く。 「愛されるのと愛するのとが……良く分からないのです。私は、『愛した』と感じても、それが本当に愛なのか」 それは憧れや依存だったのではないか。神に願ったそれと別種のものなのか、自分には解らないとリリはスカートが皺になる程に握りしめる。 「……どうしたら、上手く愛せるのでしょう。分からないままでは、沢山傷つける」 人の事も、自分の事も。沢山傷つけ続けるから。ぽた、と落ちる雫にロアンは小さく首を振る。 「分からなくても、無理はないさ。――上手く愛するって、難しいよね」 自分だって失敗ばかりで。ましてや誰かを愛し始めたばかりでは酷く難しいだろうから。 「二人で世界中回って、色々見てみよう。この街よりも世界はずっと、広いんだよ。 僕なら幾らだって依存しても平気だし、愛してだってあげられる。僕らは兄妹なんだから」 だから、愛する事も愛される事も、全部全部練習していけばいい。空白だった兄妹の絆も取り戻せるように。 どうせ二人ともその手を血に汚したのだから、死んだって行きつく先は一緒だろう。 「……そうですね、行ってみたいです。兄様と」 貴方が兄で良かったと毀れおちた雫に。ロアンは小さく瞬いた。ずっと一緒に、楽しく学べるはずだと小さく呟いて。 ● 「さぁ、バトルだ! 天乃もここだったら存分に暴れられるよね」 愛用する鉈を手にしたフランシスカが地面を踏みしめる。巨大な相手を目にすると心をつい躍らせてしまう天乃が地面を踏みしめた。 実戦ではないのは不満だけど、安全なのは助かると天乃も小さく頷いた。 相手に取るのは蒐がインプットした恐竜。怪我がなく闘えるのはメリッサだって有り難い事だろう。 「星川さんもヘリックスさんも乗り気ですね。思う存分攻めに行きましょう!」 しかと地面を踏んだメリッサが恐竜目掛けて手にした刃を振るい上げる。 身体を逸らす彼女へと振り上げられた恐竜の足を昇る様に天乃が踏みしめた。鼻を揺らし、動きを察知するようにと気を配る天乃の眸に宿される闘志がフランシスカを刺激する。 「クリスマス? これがわたし達流の祝い方よ!」 黒風車の名を冠する刃が大きく振り上げられる。恐竜の方向に、びりびりと痺れる手首に力を込めて、身体を反転させたフランシスカとすれ違う様にメリッサが宙を舞う。 「クリスマスは親しい物と過ごす日――戦友とも呼べる二人と過ごすのだって楽しいものですね」 フランシスカの言葉に同調するメリッサの声に、答える様に天乃は果敢に攻め続ける。 ヒトではないからこそ、全部の感覚を研ぎ澄ませる。地面へと叩きつけられんとするその体を受けとめたメリッサが天乃と頷き恐竜の死角を狙う様に地面を踏みしめた。 「おうぁっ!? こんのーっ、やったなっ!?」 大きく振り上げられた尻尾に身体を反転させて唇を尖らせるフランシスカが宙を飛びあがる。 大きく振り翳す刃が恐竜の動きを鈍らせれば、天乃が張り巡らせる糸がその動きを食い止める。 「――動く、な」 怜悧な瞳に宿された色にメリッサは頷き、その身体に感じる反動など何もないと刃を振り翳す。 身体を倒す恐竜が咆哮をあげ、牙を向くその動きにさえも戦い甲斐があるとメリッサは笑みを浮かべた。 「天乃もメリッサもがんがんいっちゃおうぜっ! こんなのと闘えるのって滅多にないんだから!」 「ええ、突撃です!」 一太刀、浴びせるフランシスカの動きに合わせメリッサが恐竜の動きを食い止める。その眼前へと迫る天乃は「遅い」と小さく唇を揺れ動かし、恐竜の動きを一つ、止めて見せた。 一度くらいは恐竜に乗ってみたいけれど、そのリクエストはできるかな、と小さく呟く天乃の言葉に蒐が出来ると思うと頷くのはその後の話し。 メリッサの入れた紅茶は心を癒すようで。ほっと深い息を吐いた。 七面鳥はやばいとランディは鳥と対峙しながら呟く。何がヤバイなんて言葉にするものでもない。 クリスマスにはアークの七面鳥(※普通の鳥です)から聞いた話を実行すべきなのかもしれないと彼はふと、考える。 アークの七面鳥(※普通の鳥です)曰く、おかーさんを食べる日なのだそうだが……七面鳥を食べるのは日本ではあまり馴染みないだろうか。正直言えばおかーさんを食べる方が十分に馴染みない。 「七面鳥ってアメリカだけな訳? アメリカ人すげーな!」 ランディの言葉に、背後に控えていた世恋が頷く。七面鳥は怖いから頷ける。 「そして七面鳥やべーぞ、キジの仲間らしい。暫く前に会った尾に異変の時もこいつらと犬とサル大量に用意すればなんとかなったんじゃね?」 アーク敗北について考える蛮族であった。 しかし、岡山の鬼だって犬とサルまではよくとも七面鳥をキジの代わりに雇用するのはちょっと厳しい所だろう。 彼の言葉に困った様に七面鳥がくちばしをつんつく。 「あ、こいつらってきび団子食うのかな?」 「分かんないけど、頑張れば……?」 きび団子だし、と付け加える世恋に成程とランディは曖昧に頷く。意味はなさげな問いだった。 「あと、七面鳥は基本黒いぜ、黒いからやばいぜ。黒に染まれ、黒に抱かれろって感じで厨二メソッドも備えてるぜ」 七面鳥の観察大会みたいになっているがもう仕方ない気もする。目の前に居るのだから。 そうね(?)と頷くフォーチュナは相も変わらずランディの言葉に頷くだけだ。 「しかし、スゲーな七面鳥。闘って、寝るとするか」 彼の言葉にほっとする世恋――刹那。 「ぐあああああああああああああっ!」 叫び声が上がる。振り仰ぐランディと世恋の前で突然の死! 「くっ……新田!」 焦りを覚える拓真がしっかりと獲物を握りしめて七面鳥と対峙していた。 何故か呼び寄せられるフォーチュナ(非戦闘員)。白目をむく彼女に「いくぞ」と拓真は声をかけた。 地面を踏みしめ渾身の勢いで七面鳥へと刃を叩きつける拓真がその感触に小さく頷く。 「クリスマスだから遊びだと思ったのに……ATSの敵の強さ、ガチじゃん。設定間違ってるぞ」 しみじみと呟く快の視線は白目を向いた世恋へと。どれだけ非モテを拗らせたのかと彼女に向けて告げる言葉に涙目で「仕方ないじゃない、冬が悪い!」と拗ねた彼女が慌てだす。 「黙ってりゃ可愛いのに……いや、まさか……愛を捨て、伝説の包丁師の道を選んだと言うのか……!?」 酷い事件が起こって居た。 懸命に戦う拓真の背後で『相変わらずの防御力』を発揮しながらも酷い言葉を発するシュゴシンがいる。 「データ上の相手とはいえ、確かに強いな……。中々シュールな光景ではあるが」 剣を構えて苦笑する拓真は快の会得した技に期待を募らせる様に彼へと視線を向けるが―― 「黒い七面鳥か……無駄だ。今、世恋さんが相州伝魚切之太刀の柄に手をかけた」 快はすっと世恋を指差す。快は「相州伝魚切之太刀……?」と世恋を眺めた。 ATSでは闘えるのだろうと、かの機械のフォーチュナを思い出しながら興味深そうに拓真が世恋を見遣る。 その強さを見るのとてまた一興だと告げる拓真が闘い続ける中、快は声を荒げた。 以下、彼による『解説』である。 刮目せよ――! これが、あらゆる食材を瞬時に捌き、捌いて尚その鮮度を損なわぬ伝説の一閃。相州伝魚切之太刀。 瞬きする暇すら許さず、今、七面鳥がターキーになる……! 白目を剥いた世恋に、握りしめられた包丁が可哀想な雰囲気を醸し出す。 成程と頷く拓真に新たな謎知識が植え付けられた気がして「違う、違う」と口をぱくぱくとさせる無情さが目についた。 「ところで、ATSの中って食べられるのかね。恐竜の肉とか、七面鳥とか」 クリスマスには腹が空く。腹が空いては戦が出来ないと調理用具を取りだす快に世恋はそっと、「外でパーティしましょうね……」と囁いていた。 ――第二ラウンド! ● 「真澄! ケーキの作り方教えてくれッ!」 折角のクリスマス。一緒に一回くらいは作ってみても良い気がするとはしゃぐコヨーテに真澄は小さく頷く。 クリスマスなのだから、可愛いおねだり位聞いてやってもいいだろうと準備する調理用具。 「そォだ、参考に……真澄は何ケーキスキなんだ?」 「私かい? 少しビターなのが好きだよ。抹茶や苺のケーキもいいけどね、一番はチョコレートケーキかねぇ」 甘い物が苦手なコヨーテが悩ましげに小さく唸る。真澄が美味しいというものはきっと美味しいだろうと言う単純な決定を下し、作り出すのは彼女の好みのビターチョコレートのケーキ。 「できたーッ! ヘヘッ、やればできるモンだなッ!」 「ふむ、形はダイナミックだけど生地は膨らんだし、合格点さね!」 偉いと褒める真澄に大きく頷くコヨーテが嬉しそうにケーキを持ち上げる。目の前に差し出されたケーキに首を傾げた彼女へとコヨーテは小さく笑って「真澄!」と笑みを浮かべる。 「てなワケで…メリークリスマス! 真澄にプレゼントなッ! オレの三高平の母ちゃんに、日頃の感謝の気持ちを込めて……って思ったンだけど」 売ってるのみたいに作れなかったと恥ずかしげなコヨーテに瞬いた真澄は自分の為だったのかと小さく笑う。 「ふふ、売っているどのケーキより素敵さ。私はこれがいい。甘いのが苦手なのにありがとうねぇ、コヨーテ」 味は『最高の先生』のお墨付きだと胸を張るコヨーテに真澄はそれじゃ、と袖を捲くりあげた。 ディナーはプレゼントをくれた彼の為に最高のものを作ろう。 「後でスパイスの効いた、肉料理、腕によりをかけて作ったげるよ! 最高のクリスマスをありがとう」 「肉料理……イイなッ! へへッ、楽しみにしてンぜッ」 カップケーキを作るとやる気をみなぎらせる真独楽とユーヌはクリスマスパーティの準備中。 クリスマスのプレゼント交換用のカップケーキ作りに勤しむユーヌは薄めのチョコクリームでくるんと円を絵が気、苺を髪に見立てて盛る。ゼリーで目を付ければ『真独楽』の完成だ。 (ΦωΦ)の顔をした真独楽ケーキの隣に並んだのは(●_●)の顔になった砂糖菓子の雪だるま。 背中のチョコレートの翼が可愛らしく。草原に見立てたクリームの上に乗せれば『黒い瞳の小悪魔ちゃんin winter』の完成だ。 「へへっ、どうー? 次は大きなケーキだよね! まこ、お花のデコレーションするね!」 「真独楽が可愛らしいお花ならリンゴを切って動物を作るかな?」 難しいとホイップを絞る真独楽の隣でユーヌがさくさくと切り刻んで彫刻で作りだす動物たち。 凝り性のユーヌ作のうさぎの出来に真独楽が凄いと瞳を輝かせれば、傍らの砂糖菓子へと視線を落として「森……?」とユーヌが首を傾げた。 「あ、真ん中にね、ツリーの砂糖菓子を置いたら森のパーティぽくなるかなって思って!」 「ならもうちょっと動物が必要かな? 狼に豹に狐に隈も……ああ、ラズベリーの帽子を乗せてクリームの袋を持たせるか」 森のサンタの出来上がりと並べられる動物たちに真独楽が更に瞳を輝かせた。 手にしたカラースプレーを振りかけて輝くツリーを演出すれば、輝くツリーに誘われて動物たちが集まってきたようで。 「可愛くって美味しそう!」 「力作になったな。中々の出来だ」 頷くユーヌに幸せそうに真独楽が笑う。出来上がったカップケーキを交換してこれから二人でクリスマスのパーティを始めよう。 「ね、早くパーティしよぉ♪ 温かい紅茶で乾杯! メリークリスマス♪」 「メリークリスマス。乾杯」 白い湯気が立ち上る紅茶に口を付けて、美味しいと真独楽はユーヌへと笑いかけた。 折角の今日と言う日だから。思い出に残る様にと。 ケーキの上を飾る動物たちは嬉しそうに飾られたツリーを見上げていた。 ――Merry Christmas! |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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