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<クリスマス2014>ちょっといいこと。


「お、お、おおおおお!!!」
 さっきまで堕落を絵に描いたような表情でこたつに半分埋もれていた『深謀浅慮』梅子・エインズワース(nBNE000013)が突如として雄叫びを上げた。
 なんだなんだ、と覗きこんだ『まやかし占い』揚羽 菫(nBNE000243)に、梅子は菓子の箱を突きつける。
「金なのだわ!」
「……ああ、金なら1枚、銀なら5枚ってやつか。私が子供の頃からあるな、それ……って金!?」
 菫の脳裏に、菓子の箱を頑張って横から見続けた幼い日が思い起こされる。
 百円玉をひとつ握りしめ、箱をちょっと歪ませてセロハン越しにクチバシに何が書いてあるのかを覗きこむという、姑息な手段を駆使したあの日。最終的には明らかに「ない」やつをうっかり握りつぶしてしまって買わされたんだった――とかモノローグし始めた菫に、梅子が呆れた顔を見せた。
「あたしのだからね。いくら同情を誘……ってるのか呆れさせたいのかよくわかんないけど、そんな昔話しながら手を差し出されても、あげないのだわ」
「ちっ」
 もらえるとも思ってなかったくせに、菫は儀礼のように舌打ちした。
「まあいいさ。私にだって大人の矜持がある」
「……菓子の箱ひとつにプライドの話持ち出す大人って……」
「いいか、そういったことには大人も子供も関係ないんだ、ただ送ればプレゼントが送り返される夢のチケットがそこにある、それだけが事実なのであって」
 こんな大人になるのは嫌だなあ、と思いながら、梅子はホットワインを傾けた。
 腰から下は相変わらず、こたつにつっこんだままで。


 ――三高平市内にアザーバイドが現れたのを感知しました。
 菫の幻想纏に、通信がはいる。
「知ってるよ。害はなさげだな」
 その情報を見ながら、菫は呟く。――さっきこたつに潜り込んでいた梅子にも、それはくっついていた。自分の眼で見た情報を付け加えて、情報部に返送する。
 クリスマスシーズンに、その季節のイルミネーションにでもひかれるのか、この手のアザーバイドやエリューションが現れることがある。
 今回のも、その一種だ。
 敵意がなく、ただ居合わせただけの誰かを、ちょっとだけ幸せにする、そんな変わりもの。
 たんぽぽの綿毛のような、ケサラン・パサラン。
 明日になればまたどこかの世界へと消えるそれがふわふわ街を飛ぶのを、菫は見送った。


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:ももんが  
■難易度:VERY EASY ■ イベントシナリオ
■参加人数制限: なし ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2015年01月11日(日)22:47
めりーめりーめりー。 ももんがです。

●成功条件
ちょっとした「嬉しい」や「良いこと」を一人以上が見つけること。
※ケサラン・パサランがあらわれたため、非常に「ちょっと良いこと」が起こりやすくなっています。
宝くじの当たり300円くらいなら余裕、3万円はかなり難しい、3億円は何があっても無理。
だいたいそんな感じを目安にしてください。

●時間帯
昼~夜

●場所
三高平市内

●プレイングの書式について
【A】リア充
買い物したりデートしたりする、とかの方はこちら。
健全じゃないデートは多分描写しません。BNEは全年齢。
ただし、買い物してご飯食べていっしょに海を見てきれいな貝殻を探し冷たい波に素足を洗わせはしゃいだあと夕方には肩を抱き寄せてそっと(以下略)な類の、健全でも盛り沢山な内容はうっかりすると半分以上削られると思いますので、「何をする」かはひとつかふたつ程度にとしたほうが良いかと思います。

【B】爆発しろ
クリスマスなんてこの世からなくなればいいのに。そんな方はこちら。
徒党を組んで街で暴れる、未成年だけどやけ酒などの公序良俗に反する内容は描写されません。
リア充への暴力的な妨害などは許されませんが、心の中心で怨嗟を叫んだけものたちが海に向かって孤独を吠えたって誰もが許してくれるさ。

【C】ご飯だ、ご飯を食べよう
クリスマスって、どこもかしこも限定メニュー出してるよね! なあなたはこちら。
食べましょう。食は人類に許された最大の娯楽です。カップラーメンの食べ比べだっていいじゃないか。
ただし、ファミレスで全部食べつくすとかの他人に迷惑になる行為は描写されません。
あと、食べ歩きなどで複数の店舗を描写する、とかになるとうっかりすると削られる可能性がありますので、「何をする」かはひとつかふたつ程度にとしたほうが良いかと思います。

【その他】
 この状況で可能そうな、上記に当てはまらないものはこちら。
 (描写されない可能性が最も高い選択肢です)

以上4点からプレイング内容に近しいものを選択し、プレイングの一行目に【】部分をコピー&ペーストするようにして下さい。
また、どの場合でも公序良俗に反する内容は描写しません。
プレイングは下記の書式に従って記述をお願いします。

(書式)
一行目:行動選択
二行目:絡みたいキャラクターの指定、グループタグ(プレイング内に【】でくくってグループを作成した場合、同様のタグのついたキャラクター同士は個別の記述を行わなくてOKです――が、愛称等は相手が誰かわかるレベルにおさえていただけるとありがたいです)等
三行目以降:自由記入

 ※グループ指定などがなくても、他の参加者やNPCと一緒に描写することが多々あります。
  それが嫌な場合は「絡み×」と書いてください。

(記入例)
【A】
Bさん(BNEXXXXXX) ※NPCの場合はIDは不要です。
絡み×
クリスマスなのでデスマッチする。

●参加NPC
・梅子・エインズワース
・揚羽 菫
どちらも【B】【C】で接触することができます。
NPCは全て、誰も触れなければ描写がない場合もあります。

●イベントシナリオのルール
・参加料金は50LPです。
・予約期間と参加者制限数はありません。参加ボタンを押した時点で参加が確定します。
・イベントシナリオでは全員のキャラクター描写が行なわれない可能性があります。
・獲得リソースは難易度Very Easy相当(Normalの獲得ベース経験値・GPの25%)です。
参加NPC
梅子・エインズワース (nBNE000013)
 
参加NPC
揚羽 菫 (nBNE000243)


■メイン参加者 30人■
アークエンジェインヤンマスター
朱鷺島・雷音(BNE000003)
ハーフムーンホーリーメイガス
悠木 そあら(BNE000020)
ノワールオルールホーリーメイガス
霧島 俊介(BNE000082)
ハイジーニアスデュランダル
結城 ”Dragon” 竜一(BNE000210)
フライダークホーリーメイガス
アリステア・ショーゼット(BNE000313)
ハイジーニアスナイトクリーク
斬風 糾華(BNE000390)
サイバーアダムクロスイージス
新田・快(BNE000439)
ハイジーニアスソードミラージュ
須賀 義衛郎(BNE000465)
ハイジーニアススターサジタリー
リリ・シュヴァイヤー(BNE000742)
ギガントフレームダークナイト
富永・喜平(BNE000939)
メタルフレーム覇界闘士
レイ・マクガイア(BNE001078)
アークエンジェインヤンマスター
ユーヌ・結城・プロメース(BNE001086)
ハイジーニアスデュランダル
ランディ・益母(BNE001403)
フライダークマグメイガス
シュスタイナ・ショーゼット(BNE001683)
ジーニアスデュランダル
羽柴 壱也(BNE002639)
ハイジーニアスプロアデプト
プレインフェザー・オッフェンバッハ・ベルジュラック(BNE003341)
アークエンジェダークナイト
フランシスカ・バーナード・ヘリックス(BNE003537)
アウトサイドソードミラージュ
喜連川 秋火(BNE003597)
アウトサイドインヤンマスター
伊呂波 壱和(BNE003773)
ナイトバロンアークリベリオン
喜多川・旭(BNE004015)
ヴァンパイアソードミラージュ
黒朱鷺 仁(BNE004261)
ハイフュリエミステラン
リリス・フィーロ(BNE004323)
ハイフュリエミステラン
シンシア・ノルン(BNE004349)
ハイフュリエクリミナルスタア
ケイティー・アルバーディーナ(BNE004388)
ハイフュリエミステラン
アガーテ・イェルダール(BNE004397)
ハイフュリエミステラン
シィン・アーパーウィル(BNE004479)
ギガントフレーム覇界闘士
コヨーテ・バッドフェロー(BNE004561)
ハイフュリエデュランダル
シーヴ・ビルト(BNE004713)
ハーフムーン覇界闘士
翔 小雷(BNE004728)
アウトサイドアークリベリオン
水守 せおり(BNE004984)

●午前
 ジングル・ベルのメロディが街を満たし、きらきらと飾られたビルの間を泳ぐ。
 ――クリスマスには、不思議な魔力がある。
 雪がちらつくこともあるのに、寒さよりも暖かさ――温かさではなく――を感じると、毎年思うのだ。
 そんなことを考えながら、菫は街を眺めた。

「シュスカさん♪」
 伊呂波 壱和の声が楽しそうに弾み、呼ばれたシュスタイナ・ショーゼットは一緒に買物に出ていた相手へと振り向いた。その拍子に、ぽふ。と頭に何かがのせられたような感触がした。きょとんとした顔でシュスタイナは壱和を見て、笑顔の壱和の、その頭の上にもなにかのっていることに気がついた。
 ねこみみ。
 一度目を瞬いてから、シュスタイナは近くにあった鏡を覗きこんだ。
 ねこみみ。
 二人の頭の上には、色違い同型のネコ耳帽子がのっかっていた。
 覗きこんだ雑貨屋には、いろいろなものが置いてあって、入口辺りはサンタ人形や、天使を模したガラス細工などもあったが――店内の商品の多くは、クリスマス以外の時期にも置いているものだ。
 これもまた、そのひとつらしい。
「うん。やっぱり似合うのです。ボクも一緒に被って、お揃いですね♪」
 どうやら、みかけたネコ耳帽子をシュスタイナがかぶっているところを想像し、かぶせてみたくなり実行した、ということらしい壱和が、にこにこしながら同じ鏡を覗きこんだ。
(これは……だいぶその。恥ずかしいわね)
 シュスタイナの頬が染まる。それでも、似合うと、おそろい♪ とまで言われてしまうと。
「そうね。お揃いね。……どうする?これ、買って帰る?」
 不思議と、悪くないなと。
 シュスタイナは思うのだ。

 デート。それは『女子』という生態系にとって、『気のおけない相手との交流』である。あるったらある。
 だから女子デートとか、ふつうのコトなのだ。朱鷺島・雷音と悠木 そあらにとっても。
 手をつないで歩く町並みは、いつもどおりのものとは少し違う。
「クリスマスは街もお店も華やかに飾ってあってみているだけでも楽しいのです」
 心地よい違和感に、そあらは微笑む。
 ふたりの、繋いでいない方の手には――福袋があった。
 雑貨屋で見かけたのだ。『クリスマス福袋、中身全部違います』
「らいよんちゃんは何か良いものはいっていたですか?」
「そあら、この髪飾りは君に似合うから、君にあげるのだ」
「髪飾り素敵なのです。ありがとなのです。
 こっちのミトンはらいよんちゃんの方が似合いそうなので交換するです」
 ミワクの響きに、面白がったのは雷音だった。
 近くにあった喫茶店で注文を終えてから戦利品のチェックと交換を始めるのもまた、女子なのである。
「……今年もあっというまに終わってしまうな」
「クリスマスの後はお正月、冬は忙しいですねぇ」
 福袋、の正月めいた文字が踊る封シールを見て、雷音はぽつり呟いた。そあらも頷く。
「そあらは、この後はどうするのだ?」
「後半はもちろん愛しい人の近くで過ごさないとです。聖なる日ですもの」
 ふとした雷音の疑問に、そあらはそれを当然のこととして返す。
 得心した顔で、雷音も頷いた。
「僕も快のところに行くのだ。恋する乙女は忙しいな」

「さて、キミの見立てだとどんな服が合うと思うんだい? ボクはキミの望むとおりにしよう」
 横に立つマネキンと同じポーズをとって、喜連川 秋火はおどけてみせた。
 ティーン向けの服屋にて。彼女自身は、制服でも構わないと思っていたのだが。
(まあ、買ってくれるというし折角の好意を無碍にするのもね)
 そのポーズとマネキンを見比べ、黒朱鷺 仁は顎に軽く手をやる。
「ふむ。和装は前に着ていたと聞いたが、洋装も似合いそうだな」
 マネキンというのは店員おすすめのコーディネイトであることも多い。
 秋火の隣の人型が着ているのは、暖かそうなセーターと、パンツルックを合わせたもの。
 少し考えてから、仁はそのセーターと同じものと、長めの丈の、厚めの生地だが軽やかに広がるスカートを手にし、秋火の前で上下を重ねてみる。明るい配色が、よく似合いそうだ。
「――キミはボクの何処が気に入ったのかな?」
 些か唐突な感のあった、秋火の問いかけ。それは彼女にとっては、気にかかっていたこと。
「どこが、と言われれば、容姿や雰囲気がキッカケか。尾も綺麗だが、真っ直ぐなところも好ましい」
 仁はためらいなくそう返す。
「別にセーラー服がどうこうではないが。あとは、剣を振るう姿に目を奪われた」
「……ボクはその、キミの雰囲気がかつて共に暮らした人とよく似てるんだ。それがとても気になってね」
 言葉を切り秋火を見返す仁に、秋火も口を開く。師であり親であり――想い人でもあった相手。だけど、今ここに、目の前にいるのはその人ではなくて、仁だ。
 仁だから。秋火は更に言葉を続けた。
「ボクはキミと共に歩めたら。そう思ってる。キミはどうだい?」
「俺で良ければ、お前が離れるまで共に居よう」
 ――あるいは死がふたりを分かつまで。は格好を付け過ぎか。
 秋火の頭を撫で、その嬉しそうな顔を見ながら、仁はそう心のなかで付け加えた。

 実のところ、富永・喜平は甘いモノに目がない。
 ぐいぐいと引っ張られる手の感触。彼にはたまらない季節だろうかと、プレインフェザー・オッフェンバッハ・ベルジュラックは楽しそうな喜平の横顔を見上げる。
「次はあの店か……ふふふ、こいつは本日のイチオシですぞ」
「さすが稼ぎ時、どのお店も気合入ってる」
 若干キャラを見失いながら本能の求めるままに街を闊歩する(自己申告)喜平が示した店の、並ぶ商品に感嘆の声を上げるプレインフェザー。
「みんな可愛かったり綺麗だったりで、お菓子にしとくには勿体ないくらいだね。
 こんだけあると迷っちゃうな」
 その間に、喜平はちゃっかり予約済みのイチオシケーキを受け取る。どれにする、と声をかけようとしたプレインフェザーが、既に箱を手にしている喜平に目を丸くしてから、微笑んだ。
「……喜平の方がオトナなのに。あたしより楽しんでるだろー。
 でもあたしも 楽しそうな喜平を見るの楽しんじゃってるし、それでそれなりに幸せだし……ま いいか」
 ああ、その表情は、硝子の向こうのどれよりも。
(……美味いものを美味いと言い。年甲斐も無く気持ちに素直で居られるのは……そう)
 今もこうして、傍に居てくれる彼女の御蔭か。成る程、本当の甘露は彼女の事なのだろう――。
「これは改めて味わう必要があるな……あ、いやこっちの話」
 見上げたプレインフェザーに、喜平が唇の端を上げてみせる。
「うん? ――じゃあ、次の店だな。救出を待ってるクリスマスケーキはまだまだいるんだぜ?」
 プレインフェザーはそう言って喜平の手を握り返す。
 この幸せな時間が出来るだけ長く続くように――欲張り過ぎないように。

「ユーヌたんとらぶらぶいちゃいちゃちゅっちゅしにきました!」
 盛大にのろけてくれやがった結城 "Dragon" 竜一の首には、ロングマフラーが巻かれている。……否、この言い方は正確ではない。ロングマフラーは、竜一とユーヌ・プロメースの首をいっぺんに巻いていた。
「離れると寒いからね!」
「まぁ、私も竜一といることを悪いこととは言わないがな? おや、つけてくれたのか嬉しいな?
 別に巻いてる限り離れられないのだから、そこまでしなくても良いんだが」
 手を握ってくっついてぺたぺたさすさすな竜一の手に見覚えのある指輪を見つけたユーヌは、竜一の手を握り返して胸に抱く。ふたりの指に飾られた、互いに贈ったリング。
 入った喫茶店で、注文したのはクリスマス限定のショートケーキのセット。ストローは、ハート型。
「まったくこのストローで飲むと顔が近いな?」
「ユーヌたんユーヌたん! はい、あーん!」
 竜一の差し出すケーキを素直にあーん、と口にしたユーヌの頬を、竜一はつんつんとつついて笑う。頬に、少し生クリームがついてしまったのを見つけると、竜一はそのクリームに顔を近づけ、
「ん? 口の端にクリームが付いてたか」
 それをさっとナプキンで拭きとられ、何やらショックそうな表情の竜一に、しかしユーヌは動じない。
「おや、キスは頬より口にした方が良いだろう?」
 ちゅっ。
 顔を離してから、ユーヌは少し目を細めた。
「ほら、私ばかり食べても仕方ないだろう? あーん。 ……それとも口移しの方が良いのか?」

●午後
「俺のあざちゃんとは会うの、久しぶりだな」
「誰が俺のよ。私はもう売約済みよ……久しぶりなのは認めるけれど」
 売約済み。
 その言葉に動揺した霧島 俊介はもう少しで飲んでいた珈琲を吹いてしまうところだった。
 自分の状況をそう表現してみせた斬風 糾華は、平然と紅茶のカップを傾ける。
 テーブルの上には飲み物の他にミートスパゲッティとオムライスが置かれている。
 出かけた先で偶然会ったから――それは俊介が糾華に『奢る』と言い出すには十分な理由だった。スプーンとフォークでパスタをくるくると巻きながら、俊介は少し遠い目をする。
(いつみてもミステリアスな子だ。何年付き合っても奥底が見えん)
「まるで鳥籠の中の華だなぁ」
 聞こえた言葉に、糾華は小首を傾げ――オムライスを掬いながら、小さく頷いた。
「不思議な取り合わせね、でもイメージは分かるわ……籠の蝶とか高嶺の花とか色々言われてたわね」
「前よりかは陰りが無いていうか?」
 聞こえていたことに『やべっ』と表情を崩しながらも俊介が頷き返す。
「でも、接しやすくなったとか言われるのよ? その分面白くなったとか言われるけれど。
 ――陰りが無くなったのは皆のおかげ。面白くなったのは……皆のせいよ、うん」
 俊介は小さく肩をすくめてから、両手を広げた。
「俺はあざちゃんが元気そうならそれでよし。子供は子供らしく! 笑ってたほうがらしいんだぜ?
 笑えよ、糾華! メリークリスマス! 今日は世界中の誰もが幸せであるべき日なんだぜ!」
「こういう時だけ子供扱いして。
 言われなくても笑ってあげるわ、だって私は世界で誰よりも幸せな女の子なんだから!」

 アリステア・ショーゼットとフランシスカ・バーナード・ヘリックスがレストランで開いたメニューは、クリスマス限定メニューを中心にケーキも揃えたパーティー状態である。幾つか注文を終えると、急にフランシスカがそわそわしはじめた。
「あー、うん、なんつーたらいいか……」
「ん?」
 なにか言いたげなその様子に、アリステアが首を傾げて言葉を待つ。
「えー、まあ、改めて言う事でもないんだけどその、うん。
 友達付き合いしてくれてありがとう。色々助かってる」
「……!」
 アリステアが目を丸くして手を止め、顔がふにゃー、とばかりゆるみかける。
 あわててしっかりとした表情を浮かべて(それでもいくらか緩んでいたが)フランシスカに声をかけた。
「ふらんちゃん。私こそいつも遊んで貰って嬉しいし、一緒にいてくれてありがとうなのよ?
 勿論これからもまとわりつくつもりなので覚悟するといいのです」
 改めて言うことでもなかったかもしれない。照れもあって、何度もそう心中で繰り返すフランシスカ。
 だけど。
「これからも改めて宜しくして貰えばね。あ、料理来た。食べようぜ!」
 それでも、伝えたかったから。
「クリスマスに嬉しいプレゼント貰ったような感じがするよっ。
 さ、ご飯食べよう! 沢山頼んだし、あったかいうちに食べないと冷めちゃうし」
「ま、これからも大変だろうけどさ。また、こういう機会はもっていきたいやね。
 大変だからこそ心の潤いは大事だからさ」
 言葉という贈り物のやりとりに、心の底から嬉しそうにアリステアが笑う。
「心もお腹も、沢山満たそうね。これからも一緒にね」

 料理&スイーツのビュッフェ。
 その響きの、なんと豪華なことかッ!!
 ――は、ともかくとして。

「ふふ! わたしたちと言えばやっぱりこれ! 食べまくるぞ~~!!」
「ココなら二人ともすっげェ楽しめそォだなァ、へへッ、腹ァいっぱい食おうぜッ!」
 少し奮発したホテルビュッフェにて、腕を高く掲げるのは、羽柴 壱也とコヨーテ・バッドフェローである。
「いつも思うけど、ダイエットは明日から!」
 小柄で華奢な壱也が体重を気にした。そのにくがむねについたらいいのに。現実は非情である。
「オレん家はローストビーフとかブ厚いハムとか食ってたけど、こっちはチキンなんだよな?」
「そう、日本じゃ圧倒的にチキンだね~。
 なんでって聞かれるとわかんないけど、クリスマスはチキン食べてる!」
 いざ肉、とばかりに立ち上がったコヨーテが、しかし珍しく甘いモノの並ぶ様に目を向けていた。
「お菓子もすっげェキレーだし……へへッ、甘いモンも見る分にゃ悪くねェなァ」
「見た目もかわいいから食べるのもったいない……!」
 壱也も、それに同意してスイーツのコーナーを眺め見る。
 それは例えば、赤白二層にわかれたゼリーに乗せられた銀色のアラザンと雪の形のチョコレート。
 チョコクリームを木の皮に見立てて雪のようなパウダーシュガーのかかったブッシュ・ド・ノエル。
 ガラスケースの向こうに飾られた、ビスケットの壁にチョコレートの屋根、飴細工の窓の小さな家。
「――食うのはいちやに任せるッ! コレとか美味いンじゃねェかッ?」
 オレの分も食え! とばかり、コヨーテは壱也の更に次々とスイーツを載せ始める。
「って、いっぱいすぎだよ~! よおし、コヨーテくんも好き嫌いだめだぞぉ、はい、あーん!!」
「ん? あーん……!?」(←条件反射)
「おいしい?」
「ちょッ、美味いとか以前になんだこれ甘ェ!! 兵器!?」
 コヨーテ、涙目。
 同じビュッフェに、須賀 義衛郎と水守 せおりもいたりする。
 こちらは先の二人とは対照的に、静かなものだ。
 なんせ、そもそも。
(お兄ちゃん、か。なんか変な感じだなあ。確かに義理とは言え、妹って呼んでおかしくはないんだけど)
(お兄ちゃん、か。慣れないけど、ねー。5月までは知らない人、だったわけだし……)
 出来たばかりの絆は、どうしてもほんの少しだけ、ぎこちないのだ。
「野菜とかお豆とかのサラダを先にしっかり食べておいて、その後お肉を食べると太りにくいんだって!
 あとはサーモンも美容に良いって雑誌で見たなー」
「オレはオーソドックスにシーザーサラダにしておこう。
 女子は食事一つ取っても、色々気にしないといけないから大変だなあ」
 スイーツあたりのひとたちの騒ぎが耳に入っていない義衛郎はそんなことを呟く。
 だいえっとは、いつだっておとめのそばでささやいているのだ。ふとるぞ、と。
「色々あったし、素振りも模擬戦も増やしてるんだ! お兄ちゃんも年始の暇なとき手合わせしない?」
「手合わせするのは良いけど、手加減してね。せおりの方が強いんだから」
 そう応えてカレンダーに目を向け、ああ、今年はもう終わるのだな、と義衛郎はぼんやり考えていた。
 せおりも同じことを考えたのだろう。義衛郎へと向き直り、ぺこり、と軽く頭を下げる。
「今年もお疲れ様でした!! 来年もよろしくお願いしますねっ!」
「はい、お疲れ様でした。此方こそ来年もよろしくどうぞ」
「あ! お年玉もよろしく!」
「……何か考えときます」

●フュリエだまり
 所は三高平のとあるファミレス前、そこに6人のフュリエが集まっていた。
「誘われて来たのは良いけどぉ……ファミレスってなんだろう?」
「なんて意味なのでしょうか。レストランの仲間というのは知っているのですけれど」
 首を傾げるリリス・フィーロと、同じく不思議そうな顔のアガーテ・イェルダール。
「私、ファミレス行った事ないからドキドキするんだよね。行った事ある人いるのかな?」
「えへへ、みんなでご飯ーっ」
「いやぁ、こうやって同族と一緒に過ごすのってなかなかないですよねぇ」
 意味は知ってるらしいシンシア・ノルンが他の顔ぶれを見回し、シーヴ・ビルトが嬉しそうに手を広げ。シィン・アーパーウィルは、ファミレスが何なのかどうやら完璧にわかっているようだ。
 フュリエたちがこのボトムで身につける知識は、どうしても個人差が激しい。
「同郷同士でツルむのは、いつが最後だったか……あーだりぃっす忘れたっす。とりまゴチソウ食うっす」
 指を折って数えようとしてすぐにやめたケイティー・アルバーディーナが、ファミレスのドアを開けた。 

「私は何にしましょう」
「どれが目新しいかわかんねーっす。とりまオススメのやつから頼んで……」
「限定メニュー? 何があるのかな」
 アガーテの開いたメニューを、ケイティーとシンシアが覗き込む。
「限定メニューって普段と違ってなんだかわくわくそわそわする響きなのですっ」
 限定パフェを見つけたシーヴは、それを真っ先に注文する。
「なら、リリスはこのクリスマス限定鯖の味噌煮込み定食~……普段と何が違うんだろう?」
 本当にどこが違うのかよくわからないメニューを見つけたリリスがそれに続く。そうやって皆で適当に(
とりまニクニクヤサイニクニクデザート位の割合で←ケイティー談)選び終えたところで、一番早く届いたのはシーヴのパフェだった。
「わー、おっきいっ! そしてサンタさーんっ」
 そのパフェの上には、ケーキの上でよくお見かけする、サンタ形の砂糖菓子がちょこんと飾られている。シーヴはサンタをしばらく見ていたが、えい、とソフトクリームをつけて口の中にお招きした。
「んー、美味しくて幸せっ>< えへへ、お裾分けっ」
 そう言って、パフェをちょっとずつすくっては、他の姉妹に「あーん」するシーヴ。
 その間にも、どんどん注文した料理などが運ばれてくる。
「皆でちょっとずつ取り分けて、交換するのが楽しいんだよね。色々食べられるからね」
 シンシアが楽しそうに姉妹たちに取り皿を配る。
 ところで。
「料理……なかなか来ないねぇ~……リリスのはなかなか……ふわぁ~……Zzz」
 どういうわけか、リリスの鯖味噌煮込み定食だけは、まだ届かない。
「じゃあ、その間こっちも食うっす。寝る暇は与えないっすよ」
「……ね、寝て無いよぉ?」
「あっ、ドリンクバーっ」
 シーヴが見かけたドリンクバーの機会に、アガーテが、はい、と胸を張る。
「ドリンクバーという言葉は知ってましてよ?」
 そういってグラスを両手で捧げ持つ。どうやら既に注文していたらしい。
「色々混ぜると美味しくなるって聞いたけど本当なのかなぁ?」
「え、飲み物混ぜるの? ……え、じゃあ」
 シーヴの疑問に、素直に混ぜ始めたのはシンシア。
「混ぜて飲む……。そうですか。じゃあ私も何か作ってみる事にしましょう。
 色が濁るのは綺麗じゃないですわよね。紅茶系を混ぜるくらいで宜しいでしょうか……?」
「大体色が似てる奴混ぜたら大丈夫っすね。つかリベリスタなら飲めるんじゃないっすか」
 続いたアガーテ。そしてケイティーが、不穏なことに気がついてしまった瞬間だった。
 シィンが、いくつかのグラスを手にして立ち上がる。
「――誰かに飲ませるのには遠慮はいりませんよね」
 貴女の味覚に新感覚をクリスマスプレゼント! などと呟きつつ、様々なものを混ぜ始めた。
 ほほう、と素直な辺りの姉妹が真似を始め――。

「……ふにゃーーーっ>< あうあうあうあう><」
「あれ。シーヴさま? 大丈夫ですか? ちょっと私もひとくち………(ぱたり)」
 シーヴが苦悶し、アガーテが突っ伏して悶絶し始め、そして、姉妹たち全員が複雑な、微妙な、うわあ、という表情を浮かべた。
 エクスィスから離れたボトム・チャンネルであろうとも、この距離で、しかもずっと楽しい気持ちを共有していたために、『不味い、という感情、気分』――それらをなんとなく理解してしまったのだった。
「やっぱり飲み物は、単体で飲むのが一番美味しいよ?」
 ぽつり、と呟いたシンシアに、姉妹たちは一斉に頷いた。

●夜
「ふふふー」
「? えらく機嫌がいいな、旭」
 恋人として初めての、ふたりきりのクリスマスパーティーを過ごした後。まだ湯に濡れている髪をタオルで拭いていたランディ・益母は、布団の上で枕を抱えて転がる喜多川・旭を見つけた。
「わたしね、冬ってすきなんだ。どしてかわかる?」
 不思議そうな顔をしたランディに、旭はふふ、とまた笑って見せた。
「わかるかな。あなたのことなんだよ。……らんでぃさん、初めてわたしにすきっていってくれたでしょ?
 だからね、冬が来るとすごくしあわせな気持ちになるの」
「……ん、そうか。自分のお陰で冬が好きになってくれるとは冥利に尽きるな」
 転がる旭の隣に腰を下ろし、恋人の、湯上がりの湿気をわずかに含んだ髪を、頭を撫でる。
「本当言うと俺、冬は事件ばっか起きるからあんまり好きじゃなかったが、そうだな」
(この子と恋人になった季節と考えれば好きになれそうだ)
「あのときは恥ずかしさと驚きで混乱してたけど、いま思い返すと、すごくしあわせな出来事――」
 恋人の、自分を見下ろす目元が和むのが、旭にはわかる。
「もともとは夏がすきな季節だったもん。さむいのは……あんまりすきじゃないんだけど」
 だから。
(あっためて?)
 声に出さず、口の形だけで旭は、恋人にねだる。
「大好きだぞ旭」
 それに応えて、ランディは抱きついてきた恋人の体を抱き返し、くちづける。
 部屋の灯を消して。

 教会の、暖炉の火が照らす小さな礼拝部屋で、リリ・シュヴァイヤーと翔 小雷は語らっていた。持ち寄った御馳走、温かい飲み物、そして夜景。ささやかながら温かい聖夜の一幕。
「八宝菜や麻婆豆腐ならダイエット中でも問題ないだろう」
「ええ、でも、からあげは被っても問題無し、です」
 微笑むリリのリクエストに、小雷は油淋鶏の皿を置く。用意は周到だ。
「この前は肝を冷やしたが、見る限り元気そうで良かった」
 から揚げを使った中華料理に舌鼓を打つリリを眺め、小雷は頷く。
 先の、『黒い太陽』ウィルモフ・ペリーシュと彼の聖杯を巡る騒乱の中で負った傷――。
「あの時は、守って下さって有難うございました」
 食事の手を止め、礼を言うリリだがその表情は陰りがある。
 何故ならあの時、魔術師の城で深い傷を負ったのは小雷も同じなのだから。
「あの時、貴方の運命がそのまま燃え尽きてしまいそうで……とても不安でした。
 一旦独りでなくなると、取り残されるのが、もう一度独りになるのが、とても怖くなってしまって」
 本当に、ご無事で良かった。と、その言葉に、小雷も頷く以外の道は無い。
「戦いはこれからも続くが『死なない』と誓った手前、裏切るわけにはいかないな」
 それでなくとも、常に気を使ってくれるリリに対し、小雷の感謝は途切れる事が無い。
 気遣い合い、大切にし合う二人で共に過ごす優しい時間。
「今年はいい夜を迎えられそうだ」
「ええ、今日はのんびりお話しましょう」
 そうして微笑み合う二人の視界の端に、チラホラと舞う白い影。雪。
「これも聖夜の贈り物だろうか?」
「綺麗なのです」
 この幸せな時を続けて欲しいと、小雷は願う。
 互いの無事と、この景色を一緒に見られた事を、リリは感謝する。
「「メリークリスマス」」

「ホワイトクリスマスは嬉しいけど、雪はやっぱり冷えるよね」
 雪の降りだした夜空を眺めていた梅子を見つけたのは、直帰が許されず、一度三高平支店まで戻る羽目になった新田・快である。
「そうね、綺麗なのは好きだけど、寒いのは辛いのだわ」
 梅子はそう言うと大げさに震えてみせ、黒翼で自分を覆ってみせる。
「そういや梅 プラムさんは、三高平来る前はどこに住んでたの?
 イギリスだっけ。イングランドはあんまり雪降らないから、慣れるまで結構たいへんだったんじゃない?」
「どうだったかしら。もう、ずいぶん昔の事のような気がするのだわ。桃子と、パパと――今、梅って」
 快に聞かれた梅子は遠いところを見つめて――あ? と快を睨みつける。急に梅子の頬が赤くなったのは、きっと弱いところを見せた恥ずかしさじゃなくて、寒さのせいだ。
「あー……それはそれとして、こんな寒い日なら、温かいものが欲しくなるよね。
 今度グリューワインを作るから、よかったら一緒に飲もうよ」
 ワインをただ温めるんじゃなくて、と快は続ける。
「シナモン、クローブと砂糖、それから赤ワインだけで作った本物のグリューワインさ。煮こむ段階でアルコールが飛んでるから、度数も下がって飲みやすくなるよ」
 ふむ、と考えこんでから、梅子はくすりと小さく笑って。
「お店は通販中心で行くんでしょ?
 なら、あと3年は寝かせてからでいいのだわ。そしたら、3人で気兼ねなく飲める気がするから」
 ドヤ顔で指を3本立てる梅子を、気にし過ぎだと笑いとばしても、きっと許された。
「折角お酒が飲めるようになったんだから、色々覚えていこうぜ。それじゃ、梅子さん。メリークリスマス」
「今、やっぱりうm」

●深夜
「メリーロンリークリスマス。
 聖ユルシマス教団(※団員一人)の使者、レイです」
 レイ・マクガイアは一人、埠頭に立つ。
「昨年も一人、今年も一人。働いても働かなくても出会いなんて無いのです。
 イケメンは全て相手がおりますし。
 ああもうカップル許すまじ!
 今日ばかり(※普段からやってない)は慈悲に溢れるシスターは廃業!」
 そう叫んだレイは突然ロングコートを脱ぎ黒いサンタコスを露わにすると、拡声器を取り出した。
「リア充よ! 爆発しろ! この私がいる限り貴方達に安寧の6時間はやってこない!
 不埒で不純な異性交友に鉄槌を! レボリューションナウ! クリスマスイズデッド!」

 誰も居ない埠頭でレイは独り、海に吠え続けた。

<了>

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
ご参加有難うございました、楽しんでいただけたなら幸いです。

菫「独り身は……心が寒い、な……」