●ルゴ・アムレスの黒塔 ボトム・チャンネル。 それは階層上になっている世界において、一番下であるという世界のこと。 故にボトムチャンネルは上位世界からの脅威に晒されてきた。時折Dホールを渡ってくるアザーバイドにより、大きな被害を受けることもある。それに対抗するためにリベリスタは徒党を組み、組織だって警戒に当たっているのだ。 さて、上位世界にもいろいろな世界がある。ボトムチャンネルよりも広大な世界も在れば、ただ樹木が一本生えているだけの世界も。時間が止まった世界もあれば、今まさに消え去ろうとする世界も在る。 そんな世界の一つ、ルゴ・アムレス。 半径五キロ程度の大地に、天を衝くほどの黒い塔が存在する世界。そこは多種多様の戦士達が集う修羅の世界。 その塔の上にこの世界のミラーミスがいるといわれ、今なお塔は天に向かって伸びていた。何を目指しているのか、誰にも分からない。狭い世界ゆえに、塔はどこからでも見ることができる。 そして塔の中は、階層ごとに異なっていた。町が丸ごと入っている階もあれば、迷路のような階もある。そしてこの階は……。 ●『最堅』アリティア 「やあ、君達がボトムチャンネルの者たちだね」 黒塔二十二階は歯車と蒸気の世界だった。移動機関は蒸気機関と飛行船。伝声管だらけの列車に乗せられて、蒸気都市の観光をするリベリスタ。 勿論遊んでいるわけではない。この階の守護者の情報を手に入れるために街を回っていたのだ。それを知ったのか、守護者の使いがリベリスタに接触してくる。 「我等の主、アリティアがお呼びです。こちらに」 そしてリベリスタたちは蒸気の町の工場地帯に案内される。おそらく技師なのだろう小柄な人型アザーバイドが、ものめずらしそうに異邦者を見る。 「挑戦で来られる方は少なくて。奇異な目で見られるのはお許しを。 さて、こちらがこの階の守護者『最堅』アリティアです」 ――紹介されたのは、純粋な意味で生物ではなかった。 鋼の体を持ち、蒸気で動く機械。人型のフォルムを持つ上半身と、それを支えるキャタピラの下半身。何と言われれば、戦車と答えるのが近いだろう。 「お呼びしてスマナイ。私が、この階の守護者アリティア、ダ」 流暢とはいえない言葉だが、それは確かに意志持つものが放つ言葉であり、礼節だった。 「ミラーミス『アム』は、貴方達の挑戦を待ってイル。様々な理由で戦いを求メ、最下層から登りつめる貴方達に一種のシンパシーを感じている」 この世界のミラーミス『アム』――聞けば戦えず最弱を自称するという。 「最下層の不遇に見舞われなガラ、だけど屈せず戦う貴方達……その姿を見て、彼女も強くあろうとしている。戦いに不向きな身ながら、それでも戦おうとしている。私はそれを見守りタイ。 同時に、無理をさせたくナイ。戦うという行為そのものガ、彼女の存在を不安定にさせる可能性がアル」 冷たき鋼は、我が子を語るようにミラーミスのことを説明する。自らの不遇に負けず克己し、しかしそれゆえに身を滅ぼしかねない存在。それの夢をかなえさせたくもあり、同時に守りたくもある。 「……失礼。意味のないことダッタ。私は守護者で、貴方達は上の階に行きタイ。ならやるべきことは、一ツ」 蒸気を放出して、アリティアが動き出す。気配こそないが確かにそれは彼なりの『構え』なのだろう。戦いの気配を察し、案内してきた人は離れていく。 ルゴ・アムレス『最堅』……鋼の体を持つアザーバイド。 その戦いが、今始まる。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:どくどく | ||||
■難易度:HARD | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2014年12月30日(火)22:32 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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● 「二十二階、大分高いトコまで登ってきたモノっすね」 『無銘』布都 仕上(BNE005091)は指折り数えながら呟く。塔の外壁から外をのぞくことはできないが、重ね続けてきた挑戦がその高さを教えてくれる。頂上まであと少し。そう思えば感慨深くもなる。 「強者は常に強者を求めていらっしゃるとか……」 胸に手を当てて『梟姫』二階堂 櫻子(BNE000438)が言葉を紡ぐ。切磋琢磨は良き事だ。だが強者の中には、力を振るい弱者を痛めつける者もいる。自分達の世界のありように心を痛めながら、異世界の強者を見た。大きさ四メートルの鋼の猛者。 「『最堅』とは豪勢じゃありませんか」 『夜翔け鳩』犬束・うさぎ(BNE000189)は目の前の相手が持つ称号に腕を組んで頷く。成程堅そうだ。蒸気で動くところも素敵だと思う。心持つ蒸気機関の戦士を前に、破界器を構えるうさぎ。殴り(かたり)合うべきことはたくさんある。 「私は両手両足のみですが、鋼の身体、という点には親近感を感じますね」 自分の両手を見ながら『蜜蜂卿』メリッサ・グランツェ(BNE004834)がアリティアを見た。常に熱を持つメリッサの両手両足と、蒸気で熱を持つアリティア。奇妙な偶然だが、それゆえの縁をメリッサは感じていた。 「この世界で最も堅い存在か」 『剛刃断魔』蜂須賀 臣(BNE005030)は右目の金の竜眼でアリティアを睨む。唯一撃を叩き込む。それだけのために自分を鍛えてきた臣にとって、その称号は自らを奮い立たせるものだった。自分の腕がどこまで通用するのか。それを試して見たくなる。 「まどろっこしいしがらみのねぇ戦いなら、純粋に楽しめるってもんだぜ」 緋色の翼を広げ緋塚・陽子(BNE003359)がにやりと笑みを浮かべる。ボトムチャンネルのしがらみとは関係ない純粋な戦い。それに興じるのも悪くない。戦うのも賭け事も好きな陽子にとって、この戦いは性に合っていた。 「純粋な戦闘ってのは気が楽だよね。仕事だから気を抜くわけにはいかないけど」 リューン・フィレール(BNE005101)は伸びをしてから水色の髪をかき上げる。元々温厚だったフュリエもボトムチャンネルの空気に触れて変化する。リューンもその一人。かなり攻撃的な性格になり、戦いを仕事と割り切るようになっていた。 「ミラーミス『アム』……当初想像していたのとは随分と違うな」 『Brave Hero』祭雅・疾風(BNE001656)はアリティアが語ったミラーミスの事情を反芻する。弱いが故に力を求める存在。強くなれない存在。この世界にはそぐわない『弱さ』を持つ存在。戸惑いと、そして興味があった。 「コノ身、鋼なれど心は戦士。与えられし称号は『最堅』。 二十二階の守護者アリティア、いざ参ル。ボトムチャンネルの戦士タチ、お覚悟ヲ」 蒸気を噴出し、アリティアが動き出す。けたたましい蒸気音が鬨の声。思っていたよりも素早い動きで動き出す。 その動きに答えるように、リベリスタたちも破界器を構えて動き出す。 ● 「ただ戦うだけならそれこそ意思の無い人形にだって出来る。でもそれだけじゃ無いでしょう?」 うさぎが地面を蹴ってアリティアに迫る。無限軌道の真正面に立ちその動きを止めながら、破界器を構える。鋭い車体の角度は建物突撃時に深いダメージを与える為だが、同時に正面の攻撃をそらすためでもある。 横なぎに払われるうさぎの破界器。それは無限軌道の表面を軽く薙いだに過ぎない。傷は僅か。だがその傷に神秘の爆弾を植えつける。爆破の衝撃も内側に向くようにセットし、心の中でスイッチを押す。無限機関が衝撃で揺れる。 「成程堅いです。ですが、何とかならないわけでもなさそうです」 「分かりました。私は皆様の補佐に」 一礼し櫻子が背筋を伸ばす。マナを体内が循環し、櫻子の魔力が体内に満ちてゆく。紅い蔦薔薇が刻まれた銃を手にし、弾丸を手にして魔力を込める。弾丸を銃にセットし、グリップを握り締める。 櫻子の銃から打ち出されるのは、回復の魔力を込めた弾丸。それは仲間達の中で爆ぜ、白の波動が衝撃と共に広がっていく。波動はリベリスタの体内に触れて、その傷を優しく包み込む。気がつけば傷の痛みも後も消え去っていた。 「皆様、回復はお任せください」 「ああ、行くぞ! 変身ッ!」 『強化外骨格肆式[天破]』を身に纏い、疾風が戦場に躍り出る。その先はアリティアの無限軌道。突撃を力に変えて突き進むのが疾風の技法。高重量のアリティアを動かすのは難しいが、それでも足を止めることはできる。 両端に刃がついている長柄の破界器。疾風はそれを回転させながら無限軌道に切りかかる。確かに堅い。だが一点に集中して攻撃を加えれば、突破できないこともない。如何なる相手にも絶望しない疾風は、相手の堅さを知ってなお攻めるのをやめない。 「勝機は見えると信じて立ち向かうまでだ。限界はあるはずだからな」 「分厚い装甲をぶち抜けるか運試しだ。オレの悪運はアーク内でも強力だぜ!」 陽子が鎌を振りかざし無限軌道に攻め入る。運がよければ装甲の隙間に鎌を突き刺すことが出来る。運が悪ければ装甲に弾かれる。のるかそるかの勝負こそ陽子が求める戦い。何かを賭けなければ気がすまない性分なのは、自分でも分かっている。 一度突き刺さり、二歩弾かれた。ならば次は当たるときだと。笑みを浮かべて陽子は鎌を振り上げる。鎌は吸い込まれるように仲間が傷をつけた場所に向かって振るわれ、傷を深くえぐるように釜が突き刺さる。 「ヒュッハー! 大当たりだぜ!」 「最堅……まあ、最堅なのか」 リューンはアリティアの持つ称号に疑問符を浮かべていた。確かに戦車は堅い。だけどそれが最も堅いかといわれると、少し違うようなそうでもないような。頑丈なのは確かなのだろうが。 リューンは黄色い結晶体のついた杖に魔力を込める。重ね重ねた魔力が矢となってアリティアに降り注ぐ。最も堅い装甲を貫く魔力の弾丸。それがアリティアの体中に突き刺さる。痛みで声を上げることはないが、効いているのは手ごたえで分かる。 「相手が頑丈だというなら、それを超える攻撃で叩きのめせばいい。非常にシンプルかつわかりやすい方法論だ」 「『剛刃断魔』、参る」 魔力の雨を縫うように移動しながら臣が迫る。無限軌道に体を傷つけられながら、自らの刀を構える。両手で刀を握り締め、全身に闘気を巡らせる。一撃必殺が己の闘い方。すべての力を振り絞り、刀を繰り出す。 擦り足で間合を詰め、刀の届く範囲まで近づいて一気に振り下ろす。堅い感覚が刀を通じて手の平に伝わってくる。それでも尚、押し切るとばかりに力を込めた。それは今まで積み上げてきた臣の生き方。剣と正義の意地にかけて。 「この剣。この正義にかけて! 押し切ってみせる!」 「人だろうが機械だろうが、中身ぶっ壊せば壊れるのは一緒っすよね?」 キシシ、と笑みを浮かべながら仕上が距離をつめる。蒸気で動くアリティアの熱気を感じながら拳を構えた。力で押し切るつもりはない。膨大な魔力を叩きつけるつもりもない。古くから伝わる技法で衝撃を伝えればいい。 拳を鋼に押し当てて、仕上は腰を下ろす。自分を通じて、大地とアリティアの体内を繋ぐ『道』を意識する。大地を強く踏み込み、その力を膝、腰、肩、肘、そして拳に伝達させた。力は拳を通じてアリティアの体内に伝わり、爆ぜる。 「にしても、蒸気で動くロボって何かカッコいいっすね。容赦はしないっすけど!」 「鋼の身体。それだけが最堅たる所以ではないでしょう」 剣を構えてメリッサが猛る。半身逸らした構えは攻撃を受ける面を可能な限り小さくする為。そして剣を最前面に出し、最速で相手を突くため。何世代に渡り受け継がれた細剣の技法。メリッサもまたその技法を受け継ぎ、そして新たな段階に昇華する。 単純な物質という意味では確かに堅いがそれだけだ。堅牢である為にはそれだけでは不十分。メリッサは胴部にあるアームの一部を見て、剣の向きを変えていた。その先には攻撃を受け流す盾を展開したアーム。そこに剣を突き出した。 「強靭な身体と、それを庇う盾が合わさってこその修羅世界最堅とみます。ならばその腕、自由にさせるわけにはいきません」 「見事な読みダ。ダガ易々と倒れはシナイ」 メリッサの剣に盾の動きを封じられながら、しかし変わることなく動き続けるアリティア。 戦意が渦巻き、鋼と破界器が交差する音が響き渡る。 ● メリッサの読みどおり、胴体から生えた腕が防御に回り無限軌道と頭部が攻撃を担当する。胴体が機敏に動けば防御と攻撃を同時に行う。それがアリティアの戦略だ。 「無限軌道の弱点は『前後移動と旋回しかできないこと』なので、こちらの攻撃への回避も前後移動が軸になる……と思ってましたが」 リューンは無限軌道の構造から回避の軸を読み取ろうとしていた。が、足止めをする手前真正面に人を割かないわけにはいかず、攻撃を行うのは無限軌道だけではない。すぐに考えを棄却した。 アリティアの物腰は優しいが、無限軌道による圧倒的な突破力に代表されるように攻撃は苛烈である。足止めしているものを轢きながら、そこに攻撃を集中させてくる。 「流石にきついねぇ!」 「この程度では倒れない!」 陽子と臣が無限軌道と弾丸を受けて運命を削る。それぞれの武器を杖に立ち上がった。 「大丈夫です。すぐに癒します」 崩れそうになる前線を癒すべく櫻子が癒しの神秘を放つ。優しき風がリベリスタを包み、傷を癒していく。攻撃の余裕があれば、と思っていたがどうもその余裕はなさそうだ。仲間を支えるべく、懸命に術を行使する。 「防御に回るのはあまり性に合わないけど」 前衛のダメージを見て、リューンも回復に回る。攻撃に使っていた魔力を回復に変換し、仲間を癒す。辛らつな彼女だが、根は仲間を思う心優しいフュリエ。圧倒的な魔力の癒しが、少しずつ前線を立て直していく。 「私達には『心』があるのです。 踏みしめ活力とするも一興。悩んで惑うも一興。勿論、篭めてぶつけるもまた一興。貴女の意思、魅せて下さいな」 戦闘前にアリティアが語った言葉を心の中で反芻しながら、うさぎがアリティアに語りかける。無表情に、だけど確かな『心』を持ってアリティアに挑む。心の交流を求めるのは、洗脳されて心無く悪事を行っていたフィクサード時代の反動か。 「貰ったァ!」 陽子が横なぎに鎌を払う。この勝負にフォールドはない。どちらかが倒れるまで続けるギャンブル。その積み重ねが功をなし、陽子の鎌は無限軌道の履板を切り裂く。沈黙する無限軌道はそのまま傾き、そして頭部が手の届く位置に留まる。 「よっしゃ。それじゃ頭を叩くっす!」 動かなくなった無限軌道部分を足場にして仕上が頭部に拳を叩き込む。どれだけ堅い物質であろうとも、衝撃を通し内部に直接打撃を叩き込めば問題ない。若干狙いは甘くなるが、それでも的確にダメージを積み重ねていく。 「永遠と一瞬の名を持つこの剣は、一瞬を引き伸ばす魔剣。修羅世界最堅の盾、封じさせて頂きます」 メリッサはアリティアの腕を押さえるべく剣を振るっていた。細剣の速度で相手を翻弄し、突き出される一撃は急所を刺すが如く。盾の腕を押さえ込むことでリベリスタは着実にダメージを積み重ねていった。 「仲間をやらせしない!」 倒れそうな臣を見て、疾風が庇いに入る。この身は悪を討つ剣にして仲間を護る城壁。正義の味方として、アークのリベリスタとして。気概を乗せた疾風の肉体は正に堅牢。柚木なき肉体と意志をもって仲間を護る。 「すまない」 疾風に謝辞をいれ、臣が刀を構える。誰かが攻め、誰かが護る。それが役割分担(ロールプレイ)。故に自分は攻める。両手をしっかり握り締めて刀を掴み、修羅世界最堅に真正面から挑む。 「成程、コレがボトムの戦士タチ。見事な攻めダ」 リベリスタの連携を認めながら、しかし攻撃を続けるアリティア。散弾で攻め、熱線を撃ち放つ。 「まだ負けませんよ。私は割合我侭なんです」 「まだ屈しはしない!」 うさぎと疾風が運命を削るほどのダメージを負うが、勝負の趨勢はすでに見えた。 「いつだって真っ直ぐに。愚直に。ただ一つのこの剣技を」 蜻蛉の構えで臣が迫る。才はない。だからこそ積み重ねてきた修練。その積み重ねが今の一撃を生む。そしてこの一撃も、明日威光の戦いの積み重ねの一つ。 「チェストォォォ!」 振り下ろした一撃が頭部に叩き込まれる。ルゴ・アムレスで最も堅いといわれる戦士の防御力を砕く一撃必殺の刀技。それがこの戦いの決着となった。 ● 「技師さーん!」 戦闘終了を確認し、うさぎが技師を呼びアリティアの『治療』を求める。待機していた技師たちは慣れた手つきで作業を開始した。 「気に病ム事はナイ。この程度でどうこうなるヨウな構造はしてイナイ」 頭部を完全に潰されたアリティアだが、変わらぬ口調でリベリスタに応じる。機械型アザーバイドだからだろうか。 「よし、勝ったー!」 ボロボロになりながら勝利を喜ぶ陽子。やはり戦いは気持ちいい。組織にしがらみのない戦いは、気が楽だ。傷が痛むが、それでも勝利の美酒は心地よい。 「強者と弱者の差はどう足掻いても埋まらないものなのかもしれませんね……」 皆に聞こえないようにため息と共に静かに呟く櫻子。力持つものと持たぬもの。その格差は確かに存在する。それを埋めることのなんと難しきことか。そんなことを考える。 「一つ聞いておきたい。僕達がミラーミスを倒した時、この世界はどうなる」 臣が倒れたアリティアに問いかける。世界そのものと呼ばれるミラーミス。それを倒せばどうなるか。それを聞いても自分のやるべきことは変わらないが、それでも問わなくてはいけなかった。 「この世界は変わル」 アリティアは静かに答えた。 「どう変わるかは分からナイ。『アム』が滅すれば世界は消え、変質すれば世界も変質スル。もしかしたラ、何も変わらないかも知れナイ」 「アムが一体何を持って最弱、戦えないって言うのか気になるトコっすけどね、うちは」 仕上が頭に腕を組みながら問いかける。ただ腕を振り上げるだけなら子供にでも出来る。この戦いの世界において何を持って『弱い』とするのかが分からない。 「彼女は『戦意』を抱くことが出来ナイ。……否、出来なかッタというべきか。 性格的な部分もアル。だが異世界にDホールを繋げることのできる能力。それを持つ代償デモアル。異世界を侵略しないという枷を負うことで、圧倒的な空間操作能力を、得タ。この枷を破れば、アムはその代価を支払うことにナル」 それを理解して、なおボトムチャンネルの戦士と戦いたい。それが『アム』の願い。 「ま、アムさんの事は良いですよ、本人に会って聞きますから。それより貴女の事を教えて下さいな」 話が一段落したところでうさぎがアリティアに語りかける。拳を交わした相手のことだ。もっとコミュニケーションをとりたいものである。 「そうっすね。蒸気で動くロボっとか興味津々っす」 「アザーバイドは何でもありだけど、戦車アザーバイドは珍しいかも」 「同じ鋼の体を持つものとして、色々話が聞ければ」 他のリベリスタもそのままアリティアとの話に興じる。技師の人たちも交えての歓談となった。 「先ずこの心臓部は三年前に開発されたFB型を使用して――」 「ドリルアームはなんと十三階の岩山を開発するのに使われたタイプを流用して――」 「私という人格の核ハ、心臓部にある小型の石なのダ。技術が進むたびニ、強くなってイクノダ」 「はー。もしかしたらボトムの文化を組み合わせるとトンデモロボットになりそうだ」 ――時間いっぱいまで、語り合うリベリスタ。先ほどまで戦いあっていたとは思えない光景である。 アリティアの『治療』は良好で、もうしばらくすれば元通りになるという。 Dホール解放時間の関係上それを見届けることはできないが、それを聞いて安堵するリベリスタたち。 黒塔頂上でボトムチャンネルを待つミラーミス。それを思いながらリベリスタはDホールを潜る。 次にこの世界に来る時は、邂逅できるのだろうか? |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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