● 数年前、ぽっかりと空いた異界へ通ずる穴により急激に崩界度を上昇させる事となった極東の国は、様々な災厄が襲い掛かる。 歪夜の使徒による侵略は、特異点たるこの国で崩界度を急激に上昇させていっている。 幾度も激しい戦いを乗り越えたアークであっても、世界に残る傷跡は消す事が出来ない。 残る傷跡が深い溝となる前に、世界が崩れ去る前に何らかの手段を講じねば―― 「補修工事ね」 端的に纏めた『恋色エストント』月鍵・世恋(nBNE000234)はよろしくお願いするわねと頭を下げた。 世界の歪みたる崩界度は大陸プレートが跳ね上がるが如し亀裂を孕んでいる。不安を感じるのは視認出来る数値が徐々に上昇していくからだろう。 「全国津々浦々……パワースポットで崩界度を具現化させ、倒す事で微量でも崩界度を軽減していく。 それが皆にお願いしたいことなの。簡単に言うなら小規模な爆発を起こしてガス抜きをしましょう、ということね。世界の負担軽減というのは、リベリスタとして重要なお仕事よ」 結界を設置したその中で具現化した崩界度を倒せない場合は、さらに大きな災厄を呼び出す可能性も否めない。 しかし、誰かがやらねばならないのならば、率先してやるのが『正義の味方(リベリスタ)』なのではないかと世恋は告げる。危険は承知のうえでの願い出なのだと申し訳なさそうに告げた彼女は「結界とかは此方の職員でやるから」とサポートを申し出た。 「京都、晴明神社……というと、陰陽師よね。その近くにある一条戻橋が皆に向かって欲しい場所よ」 伝承をなぞり、崩界度を具現化させるのだと世恋は悩ましげに「鬼」と告げる。かの巨鬼とはまた別物の『崩界度の鬼』が一条戻橋で具現化し、サポートに回った職員の前で暴れまわっているのだそうだ。 「美しい女の姿をしているけれど、鬼よ。攻撃を仕掛ければたちまち本性を現すでしょうけれど……」 からからと下駄を鳴らした女の美しさに目を奪われてはならない。彼女は魅了や石化といったバッドステータスを使用する事に長けており、面倒な存在なのだと世恋は告げた。 「彼女と、彼女が連れる鬼火を倒す事が今回のお願い事よ。 彼女を倒せなかった場合は――考えない事にしましょう。倒せたら、冬の京都を観光できるものね」 頑張ってきてね、と柔らかく微笑んだ世恋は微妙に土産を請うていた。 ● ころころと闇色の実が転がって行く。実の行く末を眺めていた女が瞬いて、小さく微笑んだ。 冬空だというのに、その女は薄い着物で橋に立っていた。 ふるりと身体を震わせた彼女は「あのう、あのう」と立ち寄る男へと声をかける。 「私を送って下さいませんか」 怪しげな彼女の言葉に首を傾げるのは仕方がない。成程、顔を見れば美しい女ではないか。彼女は頬を赤く染め「おねがいします」と小さく囁く。 長い黒髪が頬に張り付いている。彼女を遠巻きに眺めながらリベリスタは「彼女です」と小さく囁いた。 一条戻橋の上、肌寒ささえも感じるその場所で鬼火を纏って優雅に微笑むのは伝承の中の女。 愛宕山の女鬼――只の、崩界因子。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:椿しいな | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 6人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2015年01月01日(木)22:19 |
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■メイン参加者 6人■ | |||||
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● 頬を濡らすのは白雪。『謳紡ぎのムルゲン』水守 せおり(BNE004984)の長い睫毛を飾った雪に彼女は小さく瞬いて、己の名の元となった太刀を手に一条戻橋を眺める。 「橋姫伝説の鬼女――そう言えば、風流にも聞こえますが。緑の眸の怪物はげに恐ろしいものですから」 トレードマークの白衣を靡かせて青い瞳を細めた『境界の戦女医』氷河・凛子(BNE003330)が手術用手袋に包まれた指先を眺める。 寒さに悴む其れさえも忘れる程に、殺気立った橋の上には一人の女が泣き濡れている背中が見てとれる。 伝承では嫉妬の怪物とも呼ばれる橋姫は女性を狙う性質があるとブリーフィングルームで説明されていた。 「嫉妬というものは恐ろしいものですが……人間誰しもが持っている一面でもあります。 妬み辛み――そんな気持ちを受けとめ、己の物と認めることだって大事でしょう……」 「そう言う概念であって、そういう怨念であると最初から定義されているならば道理を解いても致し方ない。 妬み愛氏憎むことが存在理由で生きる本能で、それを捨てされない生き物。人類だって変わりないですけど」 小さな体躯に機械を押し込んで、その表情を映さない眼球に『クオンタムデーモン』鳩目・ラプラース・あばた(BNE004018)は薄らと苛立ちを浮かべた様にも見える。神秘廃絶を心に誓ったあばたが目の前の存在を厭うのは道理に叶っているが―― 「それにしたって、わたしがモテるように見えるか! クリスマスにデートしてるように見えるか!」 言いたい事は別ベクトルに向いていたようだ。 彼女の言い分に頷きながらも緒形 腥(BNE004852)は淡い茶の眸を細めて笑う。切り揃えた灰色の髪が同郷の出身である少女によく似ている。 「だぁれ……?」 首を傾げるせおりに「それは酷いんじゃないかね、おっさんだよ」と冗句めかして告げた腥の狙いは只一つ。 鬼女の狙いを彼と『ファントムアップリカート』須賀 義衛郎(BNE000465)に分散させる事だ。 当の義衛郎はといえば、夕暮れ色の剣へと視線を零しながら「冬の京都か……」と寒さに白い息を吐く。 絵巻物や伝奇小説の登場人物を思わせるとなれば、風情を感じる気がして、目の前のエリューションを特段嫌うそぶりは見せては居ない。 小型護身用拳銃を手に、器用に橋の縁を蹴った『普通の少女』ユーヌ・プロメース(BNE001086)が肩を竦め、感情の色を余りに映さない黒い瞳を細める。小さな肢体はふわり、と舞いアーク職員が張り巡らせた結界の内へとその身体を投じた。 「やれやれ下げる端から上がればモグラ叩き程に遣り甲斐のない……。 お前が崩界度と言うなら一気に下げ切って貰いたい物だがな。地道にやるのは骨が折れる」 本音とも取れるその毒舌にゆっくりと振り返る女鬼が唇を震わせる。その美貌を醜いと称するのはやはり、ユーヌの言葉に見え隠れする強気な姿勢からくるものか。 くん、と鼻を鳴らして彼女は肩を竦め、掌をとんとんと叩いて見せる。唇に浮かんだ淡い笑みは目の前の鬼へと向けられていた。 「鬼さん此方、手の鳴る方へ――」 ● 浮かびあがる青白い焔に視線を向けて、義衛郎は唇を吊り上げる。前髪を止めた三本のヘアピンが随分と己に馴染んだ気がして、青年は瞬いた。 「こんな美しい御婦人に頼まれたら、送るしかありませんね」 あのう、あのうと声をかけた美しい女に対し、描ける言葉にしては余りにも冷淡。 送る先が彼岸しかないのだと彼は知っているからか。手にした刃をそのままに、唇に浮かべた笑みに女が己から手招く様子を眺めている。 周囲の焔へと鞭の様に撓らせて、締めつけながらユーヌが唇に笑みを乗せる。彼女に続く様に前線へと踊りだし、両の手に装着した深淵の呼び声の感触を確かめる様に掌を眺めた腥が唇に人の悪い笑みを乗せる。 「あー、其処の鬼女――茨木童子とでも呼ぼうかな。多少触れ合う袖も無いが死んでくれんかね?」 腥の撃ちだす弾丸が女鬼を狙い打つ。弾丸に低く唸り声をあげた彼女が振るい上げた腕を義衛郎が受けとめれば、より回避を容易にするためにと凛子が両の手を打ち鳴らす。 「全力で参ります――翼を与え賜え」 怜悧な眸に乗せられたのは、女鬼が抱く気持ちを容認しながらも行いを是にしないという強い想い。 凛子の与えた小さな翼を背に宙を舞い踊る様に地面を踏みしめたせおりが理想を具現化させる。奇跡の力を生み出す様に、蒼き闘気を纏った彼女は唇を震わせる。 「育ててくれたお父さんの暮れた名前、せおり――瀬織津姫って知ってる?」 彼女の言葉に顕現したエリューションは何も答えずに彼女の強い意志の形を眺めている。首から下げた人魚の鱗を彼女はぎゅ、と握りしめ海色の眸を細めた。 「荒ぶる水の女神様にあやかって、強く清く育つ様にって……だから、名に誓って災いは打ち倒す!」 はっきりと告げる意志を打ち出す様に、シュレーディンガーが弾丸を打ち出していく。器用に掌でぐるりと回したマクスウェルはあばたが得意とする射撃をより強化する様で。 砲台として弾丸を撃ちだすと確固たる意志を持つ彼女は幼さを感じさせる表情に薄らと嫌悪を浮かべた様にも見えた。神秘存在を撃退するという意志と、クリスマスだからと嫉妬深い声を上げる女への複雑な想いを彼女がどう感じたのかは言うまでもないだろう。 「絶賛独り身だ! 死ね!」 包む言葉も何もない。只、苛立ちをぶつけるかのように弾丸が飛んでいく。弾丸に薄ぼらけの焔達が反撃する様に飛び交えば、女鬼は蹴撃を放ち義衛郎の身体を貫いてく。 三徳極皇帝騎で攻撃を受けとめて、義衛郎が接敵する。睨みつけるかのような鬼の面に張り付けた笑みは市役所の相談窓口で培った笑顔だろうか。 「彼女達の事は気にせず、貴女はオレだけを見てくれたら良いんですよ」 ウインク一つ、女鬼の視線を奪う様に告げたのはあまり慣れない口説き文句。彼の言葉に重ねたのは腥の「あの鬼女こわぁい」という茶化す言葉。 死にたくないもんと掌をひらひらと冗句めかして告げた彼の眼前に女鬼が迫りくる。 動きを止める様にユーヌが放つ鞭が周囲の焔を消し飛ばし、彼女の掌に握りしめられていた玉をも飛ばす。 「貴様――ッ」 「伝承に違わず破壊力の高い顔面だな? 世が世ならお笑い得義人として茶の間を湧かせただろうに……」 毒舌は、留まる所を知らない。小さな彼女をすり抜けて焔を纏い「行くよ!」と声をかけたせおりが刃を振るい上げる。 荒ぶる魂を宿した化身たる刃が女の身体を燃やしながら焔の色により濃い青を乗せて行く。 「禍つ炎には浄めの炎でどうだっ!」 焔を避ける様に身体を撓らせた義衛郎が腥に視線を送り頷きあう。前線の彼らへと癒しを与える様に浮かびあがった凛子が「私が傷つけ、私が癒す」と囁けば、彼らは勇気づけられたように女鬼へと立ち向かう。 「私は目立ち過ぎるといけませんからね」 「我々が護り、氷河様が癒す。解り易い役割分担ですね」 唇に乗せた笑みに頷いて、凛子は再度その手を翳した。掌を包む手袋の感触は手術をする時よりも尚、力を感じる様で。 「――光りあれ!」 ● 周囲を焼き払う破邪の光は彼女の身に刻まれた聖痕の存在からも良く分かる。 流れる黒髪を気にせずに、生み出された焔を厭う様に闇色の身を狙い打つユーヌは凛子を庇う様に影人を召喚し、女鬼の動きに目を凝らす。 「紙切れにすら嫉妬しぶつけるとは――存在価値が薄紙以下か?」 影人に庇われた凛子が瞬けば、ユーヌが毒づく様に女鬼を見据える。女鬼が手にした闇色の実を撃ち抜くあばたは凛子の回復力を信頼した様に只、前だけを見据えている。 「生存本能自体を否定した所で意味は無いでしょうからね」 重ねて行く言葉はその本能を否定しないが、存在自体を認めないと言うようで。 女鬼の持った実に気付き、顔を上げる腥が唇に笑みを乗せる。彼の名は『セイ』。その字はなまぐさとも読める。その名の通り、相手の血肉を見ずにはいられない――残酷さを思わせる笑みは普段ならば虚ろなフルフェイスに隠される。 「おっさんは畜生以上人間以外、外道超過化け物未満……ってとこ。鬼女は化け物だからおじさんとはちょっと違うな」 からからと笑う腥の草臥れたスーツが揺れる。すれ違う様に前線に飛び込んで、女鬼へと刃を叩きつけた義衛郎の眸が翳りを帯びて行く。 刃を使うのは、その掌に感覚を残す為。己が正義ではないと、そう実感する為に。 「絵巻物の陰陽術は使えないけど」 崩界因子は抹殺すべき、そう思いながらも、殺す事が正義非ずと義衛郎はその掌で感じとっていた。 殺す事はできると、只、それだけを実感するようにあばたは引き金を引いた。『掃除屋』家業を全うする様に、引き金を引き続けるあばたは人から編げした両腕を振るい上げる。視神経を最適化した機械の回路が直結する。 「誰も倒れない動きが肝要ですからね、時間制限が無いならばコッチのもの」 撃ち込んだ弾丸に、女鬼の掌から闇色の実が落ちていく。唸り声を上げながら伸ばした手を弾く様に身体を捻りせおりが女を刃で殴りつけた。 幼き頃に感じた恐怖感を拭う様に、鱗を煌めかせた彼女の唇から鮫の牙が覗く。 後衛で、眼鏡の奥で瞳を細めた凛子は戦線を保つ様に癒しを送り、その手で一つでも多くの命を救うために、橋の上に立っていた。 医術が延命に他ならない事を彼女は誰よりも知っている。命ある物が消え去る運命ならばリベリスタもエリューションも皆同じだ。 「嫉妬、その物だけでこの命を終わらすわけにはいけませんから――」 真摯に受け止めるその言葉にユーヌは小さな拳銃から弾丸を放つ。符を弾丸に換えて、彼女は肩を竦めた。 無感情に無表情。彼女が普通の少女というならば、常識は彼女の基準に置き換わる。美的センスも生存しても良いと考えられる種別だって、彼女の中で『常識』付けられて行く。 「常識は大事だ。自重しろ、非常識どもめ」 毒づく小さな少女の指先で、ダイヤモンドとエメラルドに彩られた豪奢なエンゲージリングが揺れている。愛を誓ったその印を少女は己を勇気づける様に視線を落として瞬いた。 「多少は見れる顔にしてやろう。非常識なほどまでの顔芸は見飽きてしまったのでな」 「女は顔が命なのじゃ――おのれ、許さぬぞ」 牙を向く女鬼へとへらりと笑い、ユーヌは女鬼の眼前へと呪いを穿つ。前線の腥の動きを阻害するそれを、彼女は癒す様に『常識』へと元へと戻す。 「怖い怖い。死にたくはないけどね、死んでくれんかね、早い所。此処はやけに冷えるから」 「帰さぬぞ、貴様らが帰る場所等ありゃせん」 低く囁く女鬼に肩を竦めた腥は手足のブレを感じながらも攻撃を続けていく。 女鬼が掴んだ左手の感触が、リアリティを感じさせ腥が僅かに瞬いた。機械化した冷たい身体に、唯一人に触れる事が出来るのならば、その左手だけだと彼は位置づけていた。 僅かに触れたその感触が、人間と何ら違いない事に彼が唇を歪めれば、隙を見つけたと義衛郎が踏み込む。 行動を阻害される事が幾度あれどバックアップが完璧であったこの布陣ではそうそう長くも持ちはしない。 あばたが打ち出す弾丸に乗せられた彼女の呪詛(リアジュウバクハツ)に女鬼が唸り声をあげ「赦しはせん」と囁けば、無感情系女子は首を傾げて「そうですか」と淡々と返すだけだ。 死んでください、と掃除屋が告げればその声にユーヌが同意した様にその攻撃の矛先を向け続ける。 弾け跳んだ実で消え去る鬼火に女鬼が焦りを映したようにその嫉妬と怒りを露わにしていく。 崩界因子は只、只、優雅に微笑む事さえ忘れ、目の前のリベリスタへと牙を向き続けた。 「愉快だな? そんなに激しく嫉妬しては猪武者よりわかりやすい」 その挙動と言葉に、反応した様に顔をあげた女鬼が後衛のユーヌ目掛けて走り出す。 動きを止める様に、靱やかに飛び込んで義衛郎が刃を抜けば女鬼が小さく呻く。 迫りくる女鬼に瞬いて、周囲を薙ぎ払う光りを放ちながら凛子がこのままでは終わらないのだと唇を震わせた。 飛び交う弾丸に、神秘の廃絶を望むあばたは唇を吊り上げて。彼女は至って真面目な侭に声を発する。 「それでは、敵には消えて頂きましょうか」 あばたの言葉に嘘は無い。倒す事だけを目的としたならば、それは真っ当できた、とも言えるのだろう。 あばたの言葉に頷いて、守手として後衛を庇う様に動いていたせおりが声を張り上げる。これで決めると運命にさえも干渉する力を帯びた刀身が彼女の想いを受け取る様に蒼く煌めき水泡を思わせる。 海の中を踊る様に、靱やかに――「名前にかけて、打ち倒すのよ! 川に流れて、海へと消えろっ!」 ● 「さて、京都観光に行きましょうか」 関西の出身であると言う凛子が案内役を買って出た事により、京都の風情溢れる観光に行こうとリベリスタ達は意気込んだ。 出来れば全員揃って、と周辺の確認を行い、回復を施した後、凛子は何処へ行きましょうかと仲間を振り仰ぐ。 「凛子先生と冬の京都観光!」 楽しみと幻視を纏ったせおりがぴょんぴょんと跳ねる。マントを止めたアクアマリンの飾りは姉から受け継がれた残滓であり、彼女の一欠。 はしゃぐせおりの背後で周囲を見回したユーヌとあばたは女鬼が消え去り結界の必要がなくなった一条戻橋の様子を確認していた。 「では、氷河さん、ご迷惑おかけしますが、案内お願いします」 訪れた居場所はと聞かれては、特に思い浮かばないと義衛郎は肩を竦める。インターネットジャンキーのあばたの視線はスマートフォンに落とされているようで。 一人で回っても味気ないと同行を申し出たユーヌが視線を移したのは土産屋。清水に行ってみたいと付け加えながら、彼は頬を掻く 「何処行くって決めてないんだよな、案内してくれるなら付いて行こう」 日本観光の為に女鬼を倒したと言っても過言でもないのだろう。楽しみだと肩を揺らすせおりが厚めのレッグウォーマーでヒレを隠し身体をふるりと震わせる。 「寒い!!」 肩を竦める彼女に小さく笑みを零した凛子が暖かなお茶を差し出せば、彼女はおずおずと口を付ける。 抹茶関係の菓子に視線を映しながらユーヌが「買っていくか……」と小さく呟けば、せおりは笑顔で「おみやげは柘植の櫛を2つ!」と宣言一つ。 ひとつは自分の物を。もう一つは姉の物を。髪を気にするそぶりを見せる彼女が手にとった椿油は、ぱさつく髪のケアに使うのだろう。迷った様に唇を尖らせる彼女が「お試し小瓶あるよ」と凛子やあばた、ユーヌを呼んだ。 「折角だから女性陣みんなと、世恋ちゃんにも!」 にっこりと笑うせおりは人魚は絵画では綺麗な髪を海辺で梳いてるし姉の様に髪を伸ばそうかなと悩ましげに唇を尖らせていた。 「それじゃあ、寒いし、何か身体が温まる物でも食べたいね」 「一見さんお断りの店も気になるな」 甘味処に行こうと提案するユーヌに義衛郎が頷けば、隙を見た様にせおりが仲間達の姿を撮影していく。 落とすシャッターは今日の思い出を保存する為に、何度も何度も切られて行く。 はらりと舞う白雪に、この平和を形作れた事が何よりも幸福だった。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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