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<太陽を墜とす者達>太陽は希望を喰らう


 世界最悪と呼ばれるバロックナイツの中でも第一位の名を誇るウィルモフ・ペリーシュは出色の存在であった。
 古今東西、全ての魔術を限界まで究めたともされるその男は、己が人生の集大成として『聖杯』なるアーティファクトを生み出し、悲願である神への挑戦に歩を進めようとしていた。
 しかし、彼の計画は偶然に頓挫する事になる。彼が標的に見定めていた神(ニャルラトテップ)は、油断と慢心の結果、極東の地・日本で人間如き――即ちアークに出し抜かれてしまったのだ。
 『究極研究』の標的を失ったペリーシュは、日本の全滅、アークの壊滅を以ってこの意趣返しを考えた。
 上陸したペリーシュの『聖杯』が新潟に猛威を撒き散らした。
 未曾有の大被害に頭を抱えるアーク。しかし、深春・クェーサーはペリーシュの動きに『聖杯』の隙を見出した。
 新潟を拠点に『塔』を建造したペリーシュの一方で、彼を聖戦対象に指定した『ヴァチカン』をはじめとする世界ビッグ4、『オルクス・パラスト』、『ガンダーラ』、『梁山泊』が日本に援軍を集結させる。協力を申し出た有力組織には過去、アークが救援を果たした『スコットランド・ヤード』の姿もあった。
 彼等の存在もあり、真白智親の暗殺を狙うラスプーチン一派との二面作戦を辛くも完成させたアークは、いよいよ動き出さんとした『黒い太陽』を迎撃する。
 勝機があるとするならば、一撃必殺。
 かつて駿府を治めた今川義元が不覚を取った桶狭間を再現してやる他は無いだろう。


 次第に冬らしさを増しつつある12月のある日。リベリスタ達はアークのブリーフィングルームに集められる。場にははっきりとした緊張が漂っている。ブリーフィングルームの中には『風に乗って』ゼフィ・ティエラス (nBNE000260)の姿もあった。
 そして、リベリスタ達に対して、『運命嫌いのフォーチュナ』高城・守生(nBNE000219)は今回の件への説明を始めた。
「これで全員だな。それじゃ、説明を始めるぜ。今回の依頼は三高平の防衛だ。あぁ、現状この街にやって来る奴の心当たりなんてそう多くは無いよな。『黒い太陽』ウィルモフ・ペリーシュだ」
 フォーチュナの言葉は過去に発された中でも最悪の予言だった。
 しかし、それに臆するようなリベリスタはここにいない。むしろ彼らは、闘志を滾らせた。
 そんなリベリスタ達の様子を見て、守生は頼もしげに笑うと機器を操作して説明を始める。そこに映ったのは天空に浮かぶ巨城だ。あまりにも分かりやすいその姿に、ゼフィは目を丸くして驚いている。
「ま、そういうこった。これが、三高平に、攻め込んでくる。ちょっと長くなるが、説明をさせてくれ」
 状況を強調した上で、守生は説明を始めた。
 推測も多く含むが、本部の結論から言えばペリーシュの『聖杯』は対革醒者武装であると同時に、大量殺戮兵器でもある。人間を殺すだけならばミサイルでもあれば同じ効率を叩き出せるが、アーティファクトでフィクサードが同じ事を出来ると考えれば最悪というレベルを遥かに超えている。
 同時に『聖杯』は願望機であるとされる。つまり、それは殺戮兵器であると同時に、ペリーシュの望みを叶える為の機構を備えていると考えられる。新潟の事件で彼は『聖杯』を使用した後、現れた液体を飲み干したという。過去に存在したアーティファクト『不当な聖杯(プロトタイプ)』が非効率に願いを叶えるアイテムだった事から考えても、ペリーシュは恐らく『願いを叶える効率を良くする事よりも、大規模に条件(いのち)を集める』方を選んだものと思われる。
 尊大な彼が願いを託すものはと言えば己が力であろうから、聖杯の真価は『他者の命を根こそぎ奪って、自身の魔力に変換する』点にあると推測が立った。
「そんなわけで、魔力が十分に溜まったのか、調整が終わったのか。ペリーシュは神への挑戦に動き出したってことだ」
 万華鏡の探査により、この城が周囲に防護壁を有しており、通常兵器を受け付けない事は確定している。巨城の防御能力は絶大で、アークで戦い抜いてきた一線級の革醒者であろうとも侵入すら出来ないだろう。
 それを良いことに、ペリーシュは一方的にアーク本部を巨城の主砲で吹き飛ばそうとしているようだ。もちろん、たっぷりの恐怖を与えてから。ペリーシュの性格と実力を考えれば、その未来が現実に変わるのはほぼ間違いないように思われた。
「ただ、そこにこそ俺達の勝機は存在する」
 力強く守生は「勝ち目がある」と告げた。
 アークにはこうした『規格外の化け物』を迎撃するための決戦兵器が存在する。8月の使用のした影響で万全が望めるかと言えば難しいが、一発なら保証出来る。あの『R-type』を押し返した『神威』なら少なくとも巨城の防壁を一時ぶち抜いて、その機能に障害を与える事位は出来る筈だ。
 知らずにやってきた辺り、ペリーシュはアークのことを十分に調べていないのは間違いない。
 その油断が致命傷になることを知らしめてやるのが、リベリスタの役割だ。
「さて、これが現在の状況だ。それじゃあ、改めてあんた達への依頼だ」
 そう言って、守生は再度機器の操作を行う。
 すると、表示されたのは三高平の地図だ。
「一応、本部上空を目指す天空城を支援する……っていうことになっているけどな、実際の所は示威的な行動だろ。要はアークを徹底的に潰したいのさ」
 その一環として、ペリーシュは居住地区にアメーバ状のエリューション・ビーストをばら撒いた。『グラ』と名付けられたそれは、その名の通りに周囲にあるものを食い尽くす。その度に巨大に成長していくのだ。
 物理攻撃に対しても神秘攻撃に対しても、極めて高い防御性能を持つエリューションだ。放っておけば、大惨事になりかねない。
「幸い『ヤード』のメンバーも協力してくれているからな。狩り出すことは不可能じゃない。ただ、ある程度巨大な個体が3体確認されている。こいつを早い所補足しないと厄介なことになるはずだ」
 他の『グラ』の存在がノイズとなって、精密予知と言えども巨大な個体の位置を把握することが困難なのだ。ならば、戦闘力と捜索能力に長けたリベリスタが直接探す方が速いのは道理である。
 つまり、基本的には捜索を行い、巨大なものを戦闘にて撃破するということだ。言うだけなら簡単な話だが、確実に勝利するには十分な準備や工夫が必要になるだろう。
 守生もその辺のオーダーが容易でないことを分かっているためか、表情は決して油断していない。
 ふと横を見ると、ゼフィも険しい表情をしていた。彼女も状況の困難と、そして敗北の可能性を理解しているのだ。
 説明が終わった所でゼフィは立ち上がると、決意を秘めた表情で、リベリスタ達を促した。
「行きましょう、わたしも微力を尽くします」


「クソ、デカブツはこんな所にいやがったか!」
「気を付けろ、相手を並みのエリューションと思うなよ」
 毒づくリベリスタの前で、巨大な不定形生物達は大きく蠢く。
 その生物に存在するのは、食欲と言う極めて原始的な本能だけだ。しかし、単純極まりない存在は、神秘対策をしているはずの街を、いともたやすく蹂躙していく。
 相手を怯ませようと、物理神秘それぞれのリベリスタが攻撃を仕掛ける。しかし、エリューションはその威力を吸収でもしてしまったかのように平然としている。
「攻撃が通らない……!?」
「なら、これでどうだ!」
 一般的に鈍重な相手に対して、行動阻害は極めて有効な策である。しかし、それすらも意に介さずエリューションは辺りのものを吸収し、自らの中に取り込んでいく。
 その食欲の前に、区別は無い。
 住人が使い慣れた店も、住人がいつも使う通りだろうが。
 そして、不利を悟って逃げようとしたリベリスタ達であろうが。
「畜生……せめて場所だけでも……」
 アクセス・ファンタズムを起動させて、本部に連絡を取ろうとするリベリスタ達。
 しかし、彼らの最後の言葉が届くよりも速く、エリューションは彼らの命を喰らってしまうのだった。


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:KSK  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2014年12月21日(日)22:04
皆さん、こんばんは。
怪しげな超能力者、KSK(けー・えす・けー)です。
今回はペリーシュとの決戦・地上編です。

●目的
 ・エリューション『グラ』の撃破

●戦場
 三高平市内の居住区です。
 守生の指示を受けて、エリューション『グラ』が投入された一角へ向かいます。
 足場や灯りに不自由はありません。

●エリューション・ビースト
・『グラ』(大)
 アメーバ状のエリューション・ビースト。生物・無機物構わず食うことが出来、その度に巨大に育って行く性質を持つ。
 5m前後の大きさをした『グラ』が3体程残り、皆さんと対峙することになります。その時の彼らのデータは捜索の進展に応じて、強化弱体が為されます。どうやらある程度まとまって動いているようです。
  1.呑み込み 物近範 崩壊
  2.エネルギー吸収 神近範 致命、HP回復
  3.再生 自P リジェネレート
  ※ターン開始時に必ず、行動消費せず自身に「物防+、神防+、絶対者」のエンチャントを与えます。

・『グラ』(小)
 アメーバ状のエリューション・ビースト。生物・無機物構わず食うことが出来、その度に巨大に育って行く性質を持つ。
 小さなものは30cm~1m程の大きさです。沢山います。
 ただし、『グラ』(小)は他のリベリスタが倒してくれたり、そもそも皆さんなら消耗せずに倒せるレベルなので、こちらに対する戦闘プレイングはそれ程考慮しなくても大丈夫です。

●ゼフィ
 フュリエのミステラン。
何も指示がなくてもそれなりに動きますが、妥当である限り、皆さんの指示があれば従います。ステータスシートにある通り、ミステランスキルを使用可能です。データは神秘寄り。
 相談で【ゼフィ指示確定】とつけて発言された『最初の』発言を参照しますので、何かあればお願いします。文字数は少なくても結構です。

●特殊ルール
 本シナリオは『グラ』の捜索と『グラ』との戦闘、2つのパートに分かれます。
 『グラ』(大)達を見つけることが出来れば、そこそこに広いロケーションで戦闘を行うことになります。
 その際に、捜索パートにおけるプレイングに応じて捜索に要した時間が決まります。捜索が長引くほど、『グラ』の戦闘力は向上します。

●重要な備考
<太陽を墜とす者達>のシナリオ成否状況により、『ウィルモフ・ペリーシュ』の戦闘力が変化する可能性があります。基本的には成功する程、精神的に乱れた彼は隙が大きくなります。予めご了承の上、御参加下さい。
参加NPC
ゼフィ・ティエラス (nBNE000260)
 


■メイン参加者 8人■
ハーフムーンデュランダル
梶・リュクターン・五月(BNE000267)
ハイジーニアスアークリベリオン
祭雅・疾風(BNE001656)
サイバーアダムプロアデプト
酒呑 ”L” 雷慈慟(BNE002371)
ハイジーニアスソードミラージュ
フラウ・リード(BNE003909)
ハイフュリエミステラン
シェラザード・ミストール(BNE004427)
ジーニアスプロアデプト
ヴィグリーノ・デ・ルースト(BNE004906)
アウトサイドスターサジタリー
スティーナ・レフトコスキ(BNE005039)
アークエンジェクロスイージス
★MVP
椎橋 瑠璃(BNE005050)

 ●
 広く知られた通り、三高平はアークの本拠地。リベリスタ達の住む街である。
 規模も相俟って、生半なフィクサードやエリューションがやって来るような場所ではない。それでも、過去に大規模な襲撃の例は、幾度か見られる。
 その数少ない記録の中でも、今回の襲撃は異常な景色を作り上げていた。
「空飛ぶ城……ねぇ」
 天を仰ぐ『Brave Hero』祭雅・疾風(BNE001656)は、昔テレビで似たようなもの見たことを思い出す。
 古くより人々は空を憧れの対象としていた。それは、ウィルモフ・ペリーシュと言えど例外では無かったということだ。もっとも、その憧れを実現できるものなどそうそういようはずもないが。
 そして、今問題なのは実際高い戦略効果を持ち、三高平が危機に陥っているということだ。
「ラスプーチンの次はペリーシュが街への襲撃っすか。ホントこの街も賑やかになって来たっすね」
 もっともこんな喧騒はごめんだ、と『LowGear』フラウ・リード(BNE003909)はため息を零す。フィクサードの襲撃など、百害あって一利なしだ。だからと言って、みすみす放っておくことも出来ない。放っておけば自分達は住み慣れた場所を放り出されることになる。この寒い季節にそれだけはごめんだ。
「んじゃ、食い荒らされない様にお仕事するっすよ、メイ」
「うん。無銭飲食は赦しません、だぞ」
 フラウの言葉に『刃の猫』梶・リュクターン・五月(BNE000267)はニッと笑って答える。とても大事な相手にだけ見せる笑顔だ。
 しかし、すぐに五月の表情は不機嫌なものに変わる。すぐ近くに蠢く不気味な物体を見かけたからだ。それは子犬程度の大きさのゲル状の物質、この一帯にばら撒かれたエリューションである。
「美味しくないのだ。食べちゃやだぞ」
 子供っぽい口調で五月が刃を一閃すると、それはあっさりちぎれ飛び、蒸発してしまった。
「オレをもぐもぐする事よりフラウをもぐもぐすることが許せないのだ」
 今度はフラウが苦笑する番だった。
 でも、その言葉が素直に嬉しい。
 だからやっぱり、この街を破壊させてやるわけにはいかない。
「さて、時間も無いし始めましょうか」
 その時、『コニファー・スノウライト』ヴィグリーノ・デ・ルースト(BNE004906)は手元の鎖を弄びながらアクセス・ファンタズムを起動させる。『錆の処女』とも呼ばれ、科学を信奉する彼女にとって大事なことは結果を出すことだ。
 もっとも、彼女も何処かでこの状況を楽しんでいるのかも知れない。未知への探究心は並みの人より強い性質なのだ。
「それが黒(ニーガ)であるならば」
 ヴィグリーノが呟くと、彼女の力が呼び出した小さな羽が、リベリスタ達に翼を与える。
 翼を手に入れたリベリスタ達は魔術師の奸計を打ち砕くために空へと飛び立つ。
 かつて翼を手に入れた人は太陽に近づき過ぎた。結果、翼を失い地へと墜ちたのだという。それでも人々は天を目指す。太陽をその手に掴むために。


 飛び立ったリベリスタ達は高空より地上の状況を確認する。上から見て異常な個所を探せば、闇雲に歩き回るより早い。
「全く、このようなグロテスクな落とし子をわたくしたちの街に送り込むなど許せませんわね!」
 椎橋・瑠璃(BNE005050)は早速エリューションの姿を確認すると、不機嫌そうな何かを見下すような表情を浮かべる。その手の趣味の人間にはたまらない表情、と言うことも出来る。
 そして怒る心の命じるまま低空に降下すると、扇を広げて思い切り叩きつけた。
 今回の状況は高い機動力と防御力を有する彼女にとって得意とするものなのである。
「下手をすると虱潰しになりそうですが……そう言う訳にはいきませんよね」
 現れた1匹が消滅したのを確認したシェラザード・ミストール(BNE004427)はそっと目を閉じる。エリューションの暴れ方を考えれば、間違いなく痕跡は残るはずだ。
 音が。
 匂いが。
 風に乗ってエリューションの手掛かりを運んできてくれる。
 シェラザードの周りを飛び回るフィアキィの1人が、服の裾を引っ張ってくれた。敵はあっちだと告げるかのように。
「西の方向、多数です」
 リベリスタ達はシェラザードの言葉に頷くと、エリューションの巣食う一帯に向かう。
 ペリーシュがこの場に使用したエリューションは、実際に隙が多い。それはアークのことを甘く見ているというのもあろうし、もう1つにはチャンスを与えた上で蹴り落とし、嘲笑うという意図もあるのだろう。
 しかし、地獄に一筋でも光明が差したのなら、全力で掴みに行くのがリベリスタと言うものだ。
 フラウの目がほんのわずかな隙も見逃さずエリューションの影を捉えれば、五月の刃がそれを切り伏せる。ヴィグリーノが的確な位置取りを指示し、疾風もそれに合わせて敵を破壊した。
 そして、地面に降りた先であってもそれは同じこと。
「不意打ちする程度の知恵は回ったみたいだけど、お生憎様」
 物陰から現れたエリューションを撃ち抜いて、スティーナ・レフトコスキ(BNE005039)は軽くポーズを決めてみる。
 基本的にうぞうぞとものを口にするしか出来ない連中だが、その動きが結果として不意打ちの形を取ることもある。それにさえ警戒しておけば、スティーナ程のリベリスタにとって恐れる程の相手でも無い。
 翼の加護の効果時間も近づいてきたので、敵を倒すと仲間と合流するために再び空へと舞い戻る。
 その先で『生還者』酒呑・”L”・雷慈慟(BNE002371)は、ファミリアとした鷹の連絡を受け取っていた。
「どうやら、そう遠くない場所のようではあるな」
 今や雷慈慟の目となったファミリアは確かに捉えた。
 周囲を喰らい潰すようにしながら巨大化を進めるエリューションの姿を。
 雷慈慟は素早く『ヤード』へと連絡を取ると、現在自分達がいるエリアの掃討を依頼する。
「崩界を食い止める事が第一。その為に必要な一手、事柄が市街にある敵性因子の排除、それは願ってもない事だ」
 雷慈慟の中で機械の如く精密に戦闘論理が組み上げられていく。そう、プロアデプトは何よりも緻密に狩りを行う狩猟者なのだ。獲物の居場所を突き止めたのなら、その時点で狩りは終わっている。
「平和な日常があってこその平時。その為にも障害は撃滅、粉砕する」
 決断的な意志を以って、リベリスタ達は移動を開始した。


 巨大な不定形生物はうねうねとその身をうねらせながら、三高平を侵食していく。そして、エリューションの足元には装備の残骸が転がっていた。
 直前にアクセス・ファンタズムから連絡が入っていたから分かっている。友軍のリベリスタが全て無事な訳ではない。
 だから一刻も早く、こいつを止めなくてはいけない。
「住んでいる街が蹂躙されるというのは気分の良いものじゃないな。蹴散らすぞ、変身ッ!」
 本格的に戦闘態勢を取ると、疾風はエリューションとの距離を一気に詰めていく。
 その時、装甲の肩から光り輝くマフラーが姿を見せた。疾風の闘気の昂ぶりであると同時に、彼の抱く理想の具現した姿でもある。
 対するエリューションは現れたリベリスタ達に狙いを定めて行動を開始した。見れば、周囲に蠢くエリューションは3体。大物がすべてそろっていたことを察したスティーナは肩を竦める。
「1体ずつ相手にしたい所、だったかな」
 嘆息と共にスティーナはライフルを構えた。いや、神秘に造詣の深いものがそれを見ればこれがライフルでないことは簡単に分かるだろう。魔弓を利用して作られたそれは、彼女の技術に合わせて必ず敵を貫き穿つ。
 スティーナの瞳が冷酷な狩人のそれに変わる。
 彼女は「当てる」ことに特化したリベリスタだ。その技量は運命が皮肉な事故を起こすことすら許さない。
「確実に剥がしておかないと、って話で」
 放たれた一撃がエリューションの身を貫くと、不定形の身体に大きな波紋が広がる。強固な防御を打ち破った印に間違いない。
 難敵であろうと臆さないリベリスタ達の姿に、シェラザードはくすりと笑う。
「何でも飲み込む存在ですか。解り易い脅威ではありますが、アークの方々と共に居るとその程度と言う感じすらありますね」
 かつての、戦いを知る前のシェラザードであれば恐怖が勝っていたのかも知れない。しかし今は、頼もしい仲間がいる。彼らと共に苦境を越えてきたという実績がある。
 それらを思えば、たとえここが憤怒と渇きの荒野であったとしても恐れるには足りない。
「付け入る隙は無くもない。まだ諦める時でも無いからな」
「ケチョンケチョンにしちゃいましょう」
 疾風の言葉にシェラザードは弓を構えると、エリューションの逃げ道を塞ぐかのように精密な援護射撃を放つ。エリューションの巨体がざわめく。
 その隙を見逃す事無く疾風は風の精霊力を帯びた刃でエリューションを斬り付ける。それは運命すら両断する力を秘めたヒーローの力だ。意志も持たず食欲の身に支配されたエリューション如きに防げる道理は無い。
 そこへ畳み掛けるように急降下を行う瑠璃。英霊の加護を身に纏う彼女の姿は、あたかも天からの御使いの様だ。
 もっとも、その心中は穏やかではない。先ほどから索敵のためとは言え、感情探査の力をオープンにしていたのである。お陰でエリューションの食欲を検知る羽目になりげんなりだ。
 その怒りもあってか、瑠璃の祈りが込められた十字の光は、エリューションを徹底的に叩きのめす。それでもエリューションは依然生命力旺盛だ。逆襲と言う訳でも無かろうが、瑠璃を狙って動き出す。
「高貴なわたくしが身命にかけても市民たちは守ってみせますわ」
 もっとも、瑠璃の瞳に恐れは無い。
 エリューションが自分を狙ってくれるならそれはしめたもの。弱者を守ることこそ、貴族として生まれた自分の誇りなのだから。


 エリューションの耐久力は極めて高いものだ。真っ当に戦えば長期戦になるのは目に見えている。しかし、リベリスタ達の士気だって高い。巧みに攻撃を集中させて、確実にエリューションの体力を奪っていった。
 轟っと戦場を衝撃波が戦場を揺るがす。
 雷慈慟が思考の本流を物理世界に解き放ったのだ。闘争の音を聞きつけてやって来た小さなエリューションが空中へと弾け飛ぶ。
「そうやすやすと合流はさせん」
 エリューションの性質を考えれば、アレらも成長を促す役目を負っていたのだろう。もっとも、吹き飛ばしてしまえば同じこと。ペリーシュの陰謀を完璧に挫くため、ひいては崩れいく世界を護るため、雷慈慟は戦っているのだ。
 相応に育ったエリューションの耐久力は、リベリスタの予想以上のものだった。分かりやすく動物的な外見をしていないために、「ひょっとしたら攻撃が効いていないのではないか?」という疑念がリベリスタ達の心を曇らす。
 それでもなお、リベリスタ達は戦う。もし、シェラザードや雷慈慟が気力を回復する準備を整えていなかったら、途中で連携も断たれていたことだろう。ゼフィもまた、必死に仲間の気力を支える。
 果てない戦いの中、瑠璃の策に誘導されたエリューションが互いに喰らい合っているのを見て、ヴィグリーノは思う、こんな全てを一緒くたにしてしまうようなエリューションに何の価値があるのか、と。
(誰かや何かと1つになるなんて耐えられないわ。私は私のまま、唯一無二の1人であることに意味がある……)
 何を混ぜても同じ色にしか見えないそれが、『黒』ではなくて何だと言うのか。
「是非ご教授願いたいものだわ、私はそれを全力で否定するもの」
 ヴィグリーノの強い意志を受けた気糸がエリューションを薙ぎ払う。
 その時リベリスタ達は、いつの間にやら巨大に育っていたエリューションがすっかり弱っていたことを悟る。
「そう簡単には倒れなくってよ!」
 瑠璃の放つ運命の炎を燃やしながらの一打がエリューションを破壊する。
 俄然勢いづいたリベリスタのさらなる猛攻が始まる。数があればこそ、エリューションは優位に立てていた。それが無くなれば、天秤はいともたやすく傾く。
 そして、幾度目の光であったろうか。
 スティーナの放つ一撃が、大きくエリューションを貫いた。
 それにタイミングを合わせるようにフラウは剣を構える。
「お前等が希望を喰らおうとするなら容赦はしない。其れがどんな巨大な存在でも、絶対に」
 斬撃が時を刻み、現れた氷刃の霧がエリューション達を呑み込んでいく。
 氷ついたエリューション達に刃を向けるのは五月。透き通るアメジストの光がエリューションに向けられる。破壊のためでは無く、ただ守り抜くために。
「希望を喰らうなんて納得いかないな。オレの望む未来はフラウと二人で幸せになる事、それを壊すのは誰だって許さない」
 五月が裂帛の気合と共に放った一撃が振り抜かれると、凍り付いていたエリューションは内側から派手に爆発を遂げる。
 当事者である少女はそんなこと関係無いとばかり、傍にいる運命の人に対して紫色の瞳と笑顔を向ける。
「オレが君を護るから。指きりで約束したからには護らなくては針千本だ。君が笑顔で居てくれるならオレはどんな奴だって倒して見せる」
 そこまで言って、五月は再びエリューションへと向き直る。まだ全てのエリューションを滅ぼした訳ではない。ましてや、天空には『黒の太陽』が存在するのだ。
「この暴食のお莫迦さんだってきちんと倒し終わって、君との平和な日常を手に入れて見せる」
「あぁ、あの日交わした約束を守る為に。君と二人で笑い過ごすその為に。此処で負けてなんていられない」
 リベリスタ達の前で最後に残ったエリューションが大きく蠢く。周りにはちらほらと、小型のエリューションの姿も見えた。
 だけど、フラウは五月に軽く微笑み返した。エリューションを恐れてなんかいられない。この場で全てを失う方が、よっぽど恐ろしいのだから。
「2人と皆の明日を掴み取る其の為に。死ね、今日よ」
 リベリスタ達は各々の武器を手に、エリューションへと最後の攻撃を開始した。
 太陽が希望と喰らうのだとしても、大人しく喰われてやる義理は無い。翼を手に入れたリベリスタ達は、自分達が大地に落ちることなど恐れないのだ。
 そしてもし、彼らの手が太陽に届いたのなら、その時は太陽を大地に墜とすのだろう。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
『<太陽を墜とす者達>太陽は希望を喰らう』にご参加いただき、ありがとうございました。
太陽に挑むリベリスタ達の戦い、如何だったでしょうか?

この後、皆様の活躍もありエリューション『グラ』は掃討されました。

MVPは椎橋・瑠璃様に。
策が嵌り、大きな戦果を挙げることが出来ました。

それでは、今後もご縁がありましたら、よろしくお願いします。
お疲れ様でした!