●あるメカニックの見解 いっぺん新潟を走らせた例の自動戦車だが、かなり有用だってことが分かった。 アークの精鋭チームでも破壊に相応の時間がかかる。あれと同じタイプをアークのお膝元、つまり市街地に数台放り込めば大虐殺ができるだろう。 人間の苦痛をエネルギー源として、周囲に人間が居る限り永久に殺人し続けることができる最高の対人破壊兵器だ。 主砲は強力。機関銃に投弾装置、レーザータレットにフレキシブルアームと豊富な副兵装を自在に切り替え、走行性能は異常に高くそしてなにより頑丈! 問題なのは……ここがはるか上空だってことなんだなあ。 ● さて。 ペリーシュの脅威が本格化した現状をおおまかに語っておこう。 かの『聖杯』はいわゆる対革醒者兵器兼大量殺戮兵器である。 大量の命を奪って彼の魔力へと還元するという、実に彼らしいアイテムなのだ。 『聖杯』で街ひとつを崩壊させて得た魔力を使い、ペリーシュは巨大天空城を作成したことがわかった。 絶大な防御力と、大量に配備された防御陣営。いかな世界トップクラスのアークリベリスタといえど突破は難しいだろう。 おそらくペリーシュは余裕のあらわれとして、アーク本部を城の大砲で吹き飛ばすつもりのようなのだ。これに対しアークは『神威』の使用を決定。城壁を破壊し突破口を開くこととした。 これから話すのは、そんな作戦にあたって重要となる任務についてである。 「皆さん、急な招集ですが、よろしくお願いします」 『運命オペレーター』天原和泉(nBNE000024)はリベリスタたちに資料を配りながら作戦内容について話し始めた。 「WPの巨大天空城についてはもう聞いていると思います。今回はその突入作戦について説明します」 資料によれば、WPの城は常識的なイメージをはるかに超越したもののようで、いたるところにあらゆるエリアが存在する、複雑怪奇な建物なのだ。神秘要塞都市と呼んでしまってもいいかもしれない。 中央の塔へ攻め入るに当たって突破せねばならないエリアはいくつもあり、そのうちのひとつを突破するべく、本作戦は存在している。 「ではまず、こちらをご覧ください」 和泉がディスプレイに表示したのは、北陸自動車道を高速で走る戦車だった。 北陸地方を襲ったWPシリーズのひとつとしてアークが以前破壊した『おりこうな戦車』。 リベリスタ8人がかりで一台をやっと破壊できたこれが、なんと五台も設置されているというではないか。 「城の外側には日本の市街地を復元したようなエリアが存在しており、自動戦車五台はこのエリアに配備されています。我々はこれを破壊、沈黙させることが任務……なのですが」 口ごもる和泉。八人がかりで破壊したものを同じ八人で五台も破壊するとなれば、そうとうな戦力が必要になる。 「今回の作戦にあたって、いくつもの組織から協力を受けています。その一人として……」 「わしじゃよ」 ディスプレイの映像に割り込むかたちで白髪の男が現われた。 いつのまにかリベリスタに混ざっていたメタルフレーム少女が立ち上がる。 「あっ、あなたは松戸助六博士! かつて千葉炎上事件およびフルメタルフレーム事件に関わり最終的にアークと合流、協力組織として移行いくつもの作戦に技術提供を果たしてきた天才アーティファクト技術者松戸助六博士ではありませんか!」 「……何やってんだ七栄」 「説明です」 すちゃっと座り直すメタフレ女子。 松戸博士はディスプレイの向こうで話し始めた。 「今回は強力な戦車が相手と聞いたからな、わしなりにできることがあるかもしれんと、一昔前の兵器を投入してみることにした。これじゃ」 別の画面が起動し、映像が流れ始める。 リベリスタが二人で乗り込む兵器だが、シルエットは小型戦車。しかし内部に乗り込んだリベリスタの武装を幻想変換し、戦車の武装として発現。行使するというものである。 「これは」 一部のリベリスタたちが思わず立ち上がった。 「そう。わしの原点にして参考例。フルメタルフレームゼロ。その戦車タイプじゃ」 かつて『ホワイトマン』が趣味で作り、ニコラオスやアルティメット、靖邦先生に使用させた特殊兵器である。 「さすがに戦闘力が五倍というわけにはいかん。しかし四台がかりでトップクラスのリベリスタが乗り込み戦ったなら……負けは、せん!」 和泉から認証用のキーをそれぞれ配らせ、松戸博士は言った。 「世界の運命はお前さんらに託されたと見える。頼んだぞ、アーク・リベリスタ」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:八重紅友禅 | ||||
■難易度:HARD | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2014年12月22日(月)22:19 |
||
|
||||
|
■メイン参加者 8人■ | |||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
●鋼の騎馬 馬と槍の時代から現代に至るまで、戦車という兵器が常に利用され続けてきた理由は非常にシンプルだ。人間では太刀打ちできない防御と攻撃が足をつけて移動するからだ。 ある意味でその最小単位にあたるE能力者でさえ、その威力の前には敗れることもある。 「こちらウィリアム。敵の姿は見えねえ。つか……建物だらけで視界がまるで通らねえぞ」 『ザ・レフトハンド』ウィリアム・ヘンリー・ボニー(BNE000556)は砲手席に身をおさめて通信機をいじっていた。 ただでさえ鉄の壁に囲まれているのだ。視界は通りづらい。その上市街地を模したフィールドとなれば、家屋や塀が邪魔して視界も射線も危うかった。 「進むか?」 「ああ……」 『生還者』酒呑 ”L” 雷慈慟(BNE002371)の呼びかけに頷くウィリアム。 ウィリアムは顎を撫で、ふと考えた。 もし自分が戦車大の大きさだったら、どう動きだろうか。 人と戦車はまるで違うが、E能力者となればある程度似通ってくる。 「次の路地までだ。その先にいる気がする」 「分かった」 雷慈慟はレバーを操作し、慎重に戦車を路地まで進めていった。 「このゼロというモノ。あの頃とは随分趣がかわったな」 「なんだ、前に乗ったことあんのかい」 「15年前……いや、正確には数ヶ月前か。それだけたてば、進歩もしよう」 路地から顔を出す。こちらに向かってくる戦車を発見。三両編成だ。 「敵車両発見。三両だ」 雷慈慟は即座に戦車を後退。先のT字路を曲がって身を潜めた。 「ファミリアーはどうしたよ。あれがあれば分かりやすいんだが」 「自分もそう考えたが、ここは激戦区だ。出した瞬間撃墜されるおそれがある。持ち込める鳥も限られる……となると」 「壁はともかく空が開けたここじゃあぶねえと」 「そういうことだ」 雷慈慟は砲を曲がり角の先へいつでも打てるようにしながら、じっと待った。 レバーに手をかけるウィリアム。 敵戦車の車体が視界に入る。 「ここだ!」 レバーを握り込んだと同時に砲弾が発射され、敵戦車に命中。 「っしゃ、このまま畳みかけ――」 「いや、まずい」 車体の窓を覗くと、三方向に分かれた路地の全てから敵戦車が顔を覗かせていた。 前後から集中砲火を受ける。拉げる車体。 「ウィリアム、酒呑。離脱する!」 ハッチを開いて飛び出す二人。爆発する戦車を残し、二人は塀を超えた先へと逃げ込んだのだった。 「なんやて!?」 通信を聞いた『十三代目紅椿』依代 椿(BNE000728)は目を丸くした。 こちらの作戦は敵戦車を一気に抜けて自走砲を真っ先に撃破。しかる後順々に撃破する予定だったが、予定が大幅に狂った。 遮蔽物が多いせいで、自走砲までの斜線を確保するには相当な距離まで近づかなければならないこと。その途中で敵に遭遇する可能性が未知数だということ。千里眼や透視で敵の位置を把握できないわけではないが、途中に何枚壁があるのか、どの路地からなら射線が通るのか。そこまで計算しながら把握しようとすれば頭がごちゃごちゃになってしまう。戦場把握だけに集中するならまだしも、戦いながらでは無理だ。しかもその内容を口頭で、しかも正確に仲間へ伝えられる自信は正直言ってない。 「しもた……いつもの戦闘とおんなじのを想像しとった」 歩兵戦でいうなら、森のように立ち並ぶ自動販売機だらけの広大なフィールドで戦うようなものだ。回り込みや待ち伏せ、正面で向かい合った時の対処も何もかも考えていない。全部ぶっつけ、全部その場任せだ。 下手をするとこの戦い、手も足も出ずにボロ負けする可能性すら見えてきた。 「……どうした、長考カ?」 ロシアの民謡を口ずさんでいた『歩く廃刀令』リュミエール・ノルティア・ユーティライネン(BNE000659)が見上げてくる。 なんだか機嫌がいいようで、戦車じたいも結構なスピードを出していた。 「この先、広い道路に出るナ。敵は?」 「あ。ああ、今は――」 戦車が道路に出たその時、後ろから猛スピードで戦車が飛び出してきた。 「「――!?」」 慌てて振り向く椿。砲を180度回転。 「か、回避行動!」 「Ypaaa」 アクセルをいっぱいに踏み込むリュミエール。戦車が猛スピードで蛇行しはじめる。後ろの戦車も直線走行で追いついてくる。弾が車体をかすめ、椿は軽く頭を壁にぶつけた。 ふと、自分の腕を見る。あの時ついたアザは消えたが、記憶にはべっとりと残っていた。 「あんな戦車何台も作るやなんて。今あるだけでも、壊して殺して開放した――んみゃあ!?」 後頭部を強打。リュミエールのかわした弾が前方の民家をブロック塀ごと粉砕。 「またしても……こんのお!」 椿はレバーをめいっぱい押し込み、砲弾を発射。敵戦車の履帯に命中。大きくスリップしながら側面の家屋に突っ込んだ。 「今や、突撃!」 「Огонь」 相手の砲身が壁につっかえて止まっている隙をついて、リュミエールたちは方向転換。戦車のすぐ横を突っ切りながら砲弾を乱射。数発の弾を受けた敵戦車は爆発し、煙をふいて停止した。 「っしゃ! 敵軽戦車、一両撃破!」 車内で軽くばんざいするリュミエールと、ガッツポーズする椿であった。 「やってくれたようだな」 椿の通信を聞いて、『ラック・アンラック』禍原 福松(BNE003517)は満足げに頷いた。 「しかしフルメタルフレームゼロ……SHOGO、お前のじいさんもこれで」 しんみりと目を瞑る『SHOGO』靖邦・Z・翔護(BNE003820)。 「うん。加齢臭の染みついた遺産って感じだね」 「他の言いようはないのかよ」 「フッ、君の言いたいことわかるよ。ちゃんと一緒に死んでア・ゲ・ル」 「言いたいことを分かってくれたのはうれしいが、そのテンションで言って欲しくは無かったな」 福松は千里眼を利用して敵戦車の位置を探り、できるだけ遠回りなルートで自走砲のあたりまでやってきた。 ちなみに戦車は、やたらデカいドリルのついたやつだった。 「何億光年離れてもデッキの底から引っ張り出すメイト。これがフッ君とオレの双闘スタイル……ドリルゴリラ20000だ!」 「多いな、桁」 ちょっと乾いた目で笑う福松。もっとリボルバー拳銃を巨大化させたようなやつがよかったと、少し思っていた。 ちなみにこの戦車を見た松戸博士は全力のコレジャナイ顔をしていた。 「どうする? 俺たちだけで頭出して一気に仕留めちゃう?」 「それでもいいが……いや待て、止まれ!」 福松に頭を蹴っ飛ばされ、翔護はブレーキを踏み込んだ。 急に停止した戦車の前方に砲弾が落下。爆発した。 「既に自走砲の射程圏内だ。当たればヤバいぞ、俺らの射程内まで突っ走れ」 「あいあい!」 改めてアクセルを踏み、蛇行しながら自走砲のエリアまで走る翔護。 軽くドリフトしながら広場のような場所へ飛び出した。 「はいタイミングあわせて、キャッシュからのー、かーらーのー」 福松はレバーをいっぱいに握り込んだ。 「発射!」 「パニ――え!?」 翔護も運転のかたわらドリルの脇についた副砲を発射。 この近さになると逆に打ちづらいのが自走砲というもの。ここはまずいと踏んでか撤退を始めるが……。 「逃がすか! 撃ちまくれ!」 福松はリボルバー式に変形したドリルの先端から次々に弾を発射。自走砲は逃げ切ることができずに途中で爆発炎上、大破した。 「よし! 福松、敵自走砲撃破!」 と通信を入れた途端、戦車の側面に被弾。 丸みを帯びた彼らの戦車はあまりの勢いに横転。福松は開いたハッチから外に投げ出された。 転がりながら千里眼を発動。急いで自走砲のもとに戻ってきた敵戦車の集中砲火を浴びたのだ。 「やばい、逃げるぞSHOGO!」 「あーっ、オレのドリルが!」 「一回も回ってねえだろアレ! すまん皆、戦車をやられた!」 その場から逃げ出す福松。 だが彼らを敵戦車が狙っている。 ここで追撃されたらヤバい。 と、その時。 新たな戦車が横から飛び出してきた。 それは――! して、こちらは『桃源郷』シィン・アーパーウィル(BNE004479)。 「お互い二両撃破。でもこちらは歩兵としてまだ動ける……と。ふむ、ふむふむ……」 座席の上で足を組み、こくこくと頷いた。座席といっても玉座のような何かで、手すりにライオンの彫刻までしてあった。 運転レバーを握って上機嫌の『疾風怒濤フルメタルセイヴァー』鋼・剛毅(BNE003594)。 「フハハハハハハ! フルメタルセイヴァー出撃! ノーフェイシス帝国皇帝だった頃を思い出すなあ」 「イデア世界の話じゃないですか。あ、でもこの組み合わせって意外とアリでしたね」 「悪役だったからな! しかしいいぞこの戦車! 欲しいぞ! いくらだろう!」 「八十億からだそうで」 「……なんとか八千円にまからんか!」 「まからんでしょうねえ」 「フン、まあいい。今や俺は人機一体! オレ(セイバスター)にかかればこんなことも……!」 シンクロとマスタードライブを駆使した華麗なドライビングテクニックで、剛毅の戦車は広場へと飛び出した。 そう、福松たちが敵戦車から撤退するまで、盾になるためである。 敵の砲弾が飛来。 が、黒光りした彼の車体(剛毅のヘルメットが巨大化したようなやつ。別名フルメタマン号)には傷一つつかなかった。 「ハーッハッハッハ! 効かん、効かんぞお!」 「グリーン・ノアで物理装甲乗せてますからねえ」 アクセルを踏み込んで敵戦車へ突っ込む剛毅。 「けど相手も神秘弾使えるんで、気をつけてくださいよ、っと」 シィンはフィアキィを本来砲弾を入れる筒へ突っ込むと、レバーを握り込んだ。 「主砲発射よーい……ファイヤー!」 砲身から『フィアキィでも入ってんのかな』ってくらい綺麗に光る砲弾が発射される。 弾は途中で激しい炎を纏い、敵戦車へとくらいついた。 敵戦車の真正面に命中。爆発炎上。一緒にいた軽戦車はすぐさま後退して狭い路地へと逃げ込んでいった。 「むう、逃がすか!」 追いかけて路地に突っ込むセイバスター。ブロック塀など削り壊して進んでやるわと意気込んだその先には……。 まさかの重戦車が待ち構えていた。 「……おお」 正面から神秘弾が直撃。 「むおお!? 緊急脱出!」 セイバスターがひしゃげ、車体が爆発。二人は座席をサイドカー(セイバリアン)に変形させ、戦車の後方から離脱した。 「セイバスターがやられた、あとはリュミエールたちの軽戦車に頼るしかないのか?」 「いえいえ」 ちらりと振り向くシィン。 重戦車の左右にある家屋。その二階から、ウィリアムが身を乗り出していた。 「さっきはよくもやってくれたなぁ、おい」 銃を抜き、防御を無視して全力射撃。 いかな戦車の装甲といえど鍛え抜かれたウィリアムの銃撃を防げるものではない。 次々に弾が貫通していき、重戦車は苦痛を感じるかのようにがたがたと震えた。 「オレに銃を向けた奴は、戦車だろうが生かしちゃおかねえ……って、おい!」 対する重戦車も機関銃を実体化。 ウィリアムめがけて乱射してくる。 「それは一度受けている」 ウィリアムの前方へと躍り出る雷慈慟。 シールドを緊急展開。 力の限りで機関銃射撃を受けきった。 「昔取った杵柄というものか、全く」 シールドを一度解除。重戦車へと飛びつく。 気糸を大量に射出。車体にとりつけ次々に破裂させた。 振り落とそうとする重戦車だが、そのすぐ後ろに二人の男が張り付いた。 福松と翔護である。 二人は銃口をぴったり装甲にくっつけると、同時に安全装置を解除。 「はいキャッシュからのー」 「「パニッシュ!」」 二人同時に発砲。ただの拳銃でありながら、二人の銃は重戦車の装甲を突破。内部に充満した柄エネルギーを次々と破壊し、停止させたのだった。 一方こちらはサイドカー、セイバリアン。 剛毅はアクセルをひねり、スピードをめいっぱいに上げていた。 なぜならば。 「剛毅さん回避!」 「やっている!」 すぐ後ろを軽戦車が追いかけてくるからだ。 軽と名はついても戦車。サイドカーとではもはや比べものにならない。砲撃が浴びせられるたび、車体がひっくり返りそうになる。人を殺すための兵器というだけあって、備え付けの機関銃は先程からひっきりなしに銃撃をあびせてきた。こればっかりは避けきれず、シィンが只管回復して粘っている状況である。 メーターを見てハッとする剛毅。 「む、いかん!」 「今度はなんです?」 「エンジンタンクをやられた。走れん」 「ちょ――!」 顔をひきつらせるシィン。普段ひょうひょうとしている彼女でもこのときばかりは素の女性と同じ反応である。 その直後、猛スピードで走ってきた軽戦車が衝突。砲台の真下に入る形で強制的に押される形になった。 「く、これはまさか……!」 「今度の今度はなんです!」 「合体か!?」 「違いますって!」 このまま行けば前方の家屋に突っ込む。きっと酷い事故になるだろう。 が、そうはならなかった。 「おまたせぇ!」 「リュミエール機参上」 激しいブレーキと方向転換をかけながら、リュミエールの軽戦車が飛び出してきたのだ。 ……前方に。 「ああああああああああああああああああああああああああ!!」 「うわああああああああああああああああああああああああ!!」 叫ぶ剛毅。 叫ぶ椿。 かえって冷静になっているシィン。 そして。 「今ダナ」 緊急発射ボタンとかいうのをぽちっとやったリュミエールが、砲台から発射された。 「「――!?」」 白目になる椿。 真顔になるシィン。 ガッツポーズで乗り出す剛毅。 「六八、徹甲弾形態」 リュミエールは敵軽戦車に突っ込み、そして貫通した。 ばちばちとエネルギーがあふれ出す。剛毅はここぞとばかりに剣を抜き、戦車へと叩き付けた。 「これで最後だ! セイヴァーダイナミック!」 エネルギーが連鎖的に伝わり、軽戦車が爆発。 そして……。 剛毅とシィンは椿の戦車に突っ込んだ。 ● かくして。 「フハハハハ! また死ぬかと思ったが、死ななかったな!」 戦車から頭を引き抜き、剛毅はからからと笑った。 「ほんとに大丈夫やの? 中から剛毅さんの頭ちらっと見えとったけど」 「ヘルメットが無ければ即死だった」 「んなあほな」 頬をかく椿。 そこへ、意外と大丈夫だったのかプライドでひどいヴィジュアルを回避したのか、シィンがぶんわかぶんわか浮かんだ状態で下りてきた。 「けっこうやられましたけど、勝てましたねえ。きっと犠牲者もうかばれるでしょうたぶん」 「……」 心にもなさそうなことを言うやつだ。 が、もしかしたら本心なのかもしれない。わからないやつだ。 「六八……最近妙ニ私に馴染ンデンナー」 刀をぷらぷらさせながら歩いてくるリュミエール。 その刀の柄頭から色んなものをスライドして取り出している。具体的には爪切り。またはマイナスドライバー。または老眼鏡。 「十徳ナイフやんそれ!」 「中国カラ帰った辺りから急にナ。強く念じたらナンカ出る」 「なんか出るて……」 「おう、そっちもやったか!」 ポケットに手を入れ、福松がてらてらと歩いてくる。 その隣では翔護がセルフスローモーションで歩いてきた。煙の中から。 「アイルバッ――」 「言わせねえよ」 「しかし……真の敵はこの先だ。まだ油断はできないな」 同じ煙のなかから、こっちは普通に出てくる雷慈慟。 雷慈慟はWPの天空城を見上げ、小さく頷いた。 銃を構え、城へむけて構えるウィリアム。 「このエリアは制圧完了。いよいよ本番だぜ。いけるよな、当然?」 振り向くウィリアム。彼にかける言葉は決まっていた。 |
■シナリオ結果■ | |||
|
|||
■あとがき■ | |||
|