●リャンガ×イーシュ×ブラウンベス×妖刀・慢 サブマシンガンを装備したE能力者が10人。青竜刀を装備した者が5人。梁山泊上海支部の正門前にずらりと並んでいた。 一般人の職員は地下シェルターに退避しており、この場は既に厳戒態勢。一般人の感覚にそうなら、盾と銃を構えた軍隊がずらりと並んでいるのと同じである。 彼らがそこまでして警戒している者の人数は。 「カエルがいるな。たくさんいる」 ひとり、だけである。 彼は流麗な中国語でひとこと呟くと、腰にさげていた二本のエモノを手に取った。 先端がかぎ爪状になった特殊な棍武器で、双鈎という名でカテゴライズされている。 「撃ちまくれ!」 梁山泊の小隊長らしき男が言った。 十丁のサブマシンガンから大量の弾がはき出され、たった一人の男へと集中する。 男は空間にできた数ミリの隙間を常識を越えた動きですり抜け、1メートル先の銃弾が自分に接触する僅かな時間の間に数十発の弾をはじき飛ばし、風よりも光よりも早く銃口のすぐ横まで迫ると、相手の足にかぎ爪をかけて強制的に上下反転。高速で地面に打ち付けた彼の頭は、スイカのように砕けて散った。 悲鳴をあげて近接戦闘に切り替える男たちだが、既にそれが手遅れだということに気づいた。 なぜならその場の全員が、たった二本の武器だけで一瞬にしてひっくり返され、そしてぐちゃぐちゃに破壊されたのだ。 静かになった正門を潜り、男は流麗に呟く。 「サンア。お前が居なくなったせいで、私は強くなりすぎたようだ」 彼の名はリャンガ・ロン。 ロン家の暗殺者にして九頭竜の二位。 二年半前、アークと戦って破れ、研鑽に研鑽を重ね、今は上海を実質的に支配しかけている男である。 リャンガ・ロンが梁山泊への直接攻撃を決めたのは、ある騒動の結果としてである。 結果、結果である。 上海を恐怖によって実質的に支配していたリャンガに対し、貧民の集まりでしかなかった白華会が牙を剥いてきたことが始まりだった。日本三尋木連合の助力によって成長した彼らは賢く狡猾で、ロン家の支配下にあった様々なルートが瞬く間に奪われていった。 ついに直接的な抗争に発展した彼らだったが、その状況に便乗しようとした梁山泊によって事態は混乱しはじめる。梁山泊のよこしたアークという外注戦力(リャンガにとって実に忌々しい連中だ)によってロン家の貴重な戦力は削られ、白華会つぶしを命じたイーシュ・ロンすらも彼らの前に敗退した。 そこまでなら、まだよかった。出る杭を打っていればよかったし、アークも中国をシマにしてのさばろうというつもりはないらしい。梁山泊もロン家を恐れて直接的な攻撃はしてこなかった。 だが何を思ったか、梁山泊は突如としてロン家討伐に動き始めたのだ。 こちらのアジトが知られたのか。それともアークはそれほど高い探索能力を持っているのか。とにかくリャンガはこの鼻持ちならないカエルどもを潰して回ることにした。職員の家族や恋人を次々に狙い、精神的に疲弊させていく。クリスマスの日に家で待つ家族を暗殺し、クリスマスツリーに飾って見せたりもした。彼らは目に見えて弱り切り、緊張は限界に達した。 それが効果を成したのか、梁山泊は暫くの間沈黙を保ち、アジトに近づきさえしなかった。 出る杭を打ちきった。そう思ったのもつかの間、抗争状態にあった白華会が梁山泊に対して協力行動を開始。丁寧にリャンガの寝室に予告状を差し入れた上で、攻撃を始めたのだ。 もはや捨て置けぬ。 カエルどもを巣ごとつぶして焼け野原とし、未来永劫草すら生やさせぬ。 こうした結果として……リャンガの徹底攻撃が始まったのだった。 ● 一方こちらは梁山泊上海支部裏門。 「白華会、三尋木、それにアーク……! クソッ、どいつもこいつもこの俺の邪魔ばかり……! 今度こそ、今度こそは……!」 目に怒りをたたえ、一人の男が歩いている。 リャンガ・ロンによって梁山泊への攻撃命令を下されたイーシュ・ロンである。 彼の手には一本の刀が握られていた。 巧妙な金細工の鞘に収まっており、柄頭の装飾がカタカタと動いて勝手に喋るのだが、いかんせん癖のある日本語なのでよく分からない。イーシュはただ無視し、刀の性能のみを利用していた。 「妖刀・慢(おごり)。全ての一般人が所有者に味方するという王者の剣。日本の少女から奪ったものだが……使うべきは、まさに今か」 『おいその呼び方をやめろ、我が輩は魔剣ソードオブニ――』 「者どもよ、我が声に従え。従属し、命を投げ、そして散れ。我がために死ね」 『というかレイはどうした。そしてここはどこでお前は誰――』 装飾のたわごとは、群衆の声にかき消された。 年齢のばらばらな大人たちである。元々白華会の庇護下にあった一般人や梁山泊職員の家族や友人たちだが、イーシュはそれを妖刀の力で強制的に支配していた。 全ての一般人はイーシュの揃えた神秘性武器をそなえ、小さな子供や老人までもが彼のために死にますと言った。 「我が名はイーシュ。ロン家の暗殺者なり。我を止めたくば……友を、家族を、殺すがいいや!」 ●アーク、介入 アーク・ブリーフィングルーム。梁山泊からの救援依頼と添付された情報の読み上げがなされていた。 『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)はこう述べる。 「中国のリベリスタ組織『梁山泊』が、フィクサード組織『ロン家』に攻撃されてるの。その救援要請よ」 民間人の避難はある程度済んでいるが、事態は想定以上に厳しいことになっているらしい。 「それと、寄せられてる情報は三尋木財団からの調査報告がほとんどなの。海外だし、カレイドシステムは使い物にならないから、気をつけてね」 今回の任務は『攻撃されている梁山泊を守る任務』と『上海の民間人を守る任務』の二つを合同任務として遂行することになる。両件に同時参加した場合行動に大きな制限がかかるので注意したい。 「私たちの任務は前者、梁山泊を守ることなの。裏門側と正門側で性質が異なるから、注意してね」 正門側の任務はロン家真のナンバーツー、リャンガ・ロンを撃退することだ。 彼はたった一人で高い戦闘能力を有しており、アーク最高水準のリベリスタでもギリギリ対抗できるレベルの実力を持っている。 更に彼は『ブラウンベス』というイギリスの傭兵チームを雇っており、彼らもまた高い戦闘力と狡猾な戦術的判断ができる実力者たちだ。 リャンガは強力なソードミラージュ。ブランベスは三人組のクリミナルスタアチームだ。 彼らの目的は梁山泊上海支部の破壊と職員の皆殺しである。当然それには地下シェルターの一般人も含まれており、あらゆる手段をもってこの目的を遂行しようとするだろう。 特にリャンガはかつてアークから敗走した経験から非常に堅実かつ冷徹な精神をもち、高い戦闘能力による強行突破を得意としている。 そのサポートとして雇われたブラウンベス(アール、エックス、ダブルの三人からなる)は非常に狡猾で、この件にアークが関わってくることや、梁山泊の強かさ、ロン家の性質などを考慮したうえで様々な準備を整えていることだろう。彼らの強みは戦闘力よりもこの狡猾さにあるのだ。 裏門側はイーシュ・ロンが強制的に支配下においた一般人たちが、彼にけしかけられる形で梁山泊に攻め入ろうとしています。 「一応、『梁山泊職員の家族友人は生存させてほしい』って要望をうけてるの。白華会庇護下の一般人の生死は……問わないって」 一般人はイーシュが配った神秘性の武器を装備しており、攻撃は微弱ながらこちらに通るようになっている。また、妖刀の効果によって強結界や陣地作成、魔眼や魅了といった非戦スキルが妨害されるようになっている。 人数はおよそ50~80人。彼らをおさえ、梁山泊を防衛しなければならない。 イーシュ・ロンは高度なインヤンマスターで、影人にって戦闘に参加する。彼自身は無数の一般人に庇わせる形で自らを守っており、倫理的に手出しがしずらい状況だ。 こちらのチームにはある程度の戦闘力は勿論のこと、対一般人用の技術を必要とするだろう。 「厳しい任務になると思うけど……頑張って」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:八重紅友禅 | ||||
■難易度:HARD | ■ ノーマルシナリオ EXタイプ | |||
■参加人数制限: 10人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2014年11月22日(土)22:08 |
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■メイン参加者 10人■ | |||||
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●エージェントD-660の記録より 状況は最悪だ。チームは俺を残して全滅した。 本部とも連絡がつかない。今は隠れているが、連中がすぐそばまで来ている。死ぬのも時間の問題だ。 アークはよくやった。よくやったと思うよ。俺たちじゃ手を出せないロン家や白華会にダメージを与えてくれたし、そのおかげで他の組織も最近はナリを潜めている。上海は平和になったと思った。これからもアークに頼めば安泰だなんて俺の上司も言っていた。 だがなんなんだ。 この状況はなんなんだ。 なんで俺が死ななくちゃいけない。 なんで俺が、なんで俺が、くそ、あいつのせいだ! あいつのせいだ! 畜生! 死にたくない、死にたく――! ●かぎ爪の男 『こちら梁山泊。職員は地下シェルターへ撤退を始めました。今より現場の実行権限を委譲します。シェルター内からの通信はできませんので、今のうちに言っておきます。ご武運を、アーク』 電子加工した声が『祈りに応じるもの』アラストール・ロード・ナイトオブライエン(BNE000024)のイヤホンから出力された。 「了解。あとは我々に任せて貰いましょう」 そうとだけ言って、アラストールは鞘を発現。両手でもって鞘と柄をそれぞれ握った。 周囲は既に火薬と錆の臭いで充満していた。多くの建物はくずれ、黒い煙を噴いている。 目をこらせば、煙の間から一人の男が歩いてくるのが見えた。 両手にかぎ爪状の棍武器を備えたシルエットである。 「九頭竜の二、リャンガ・ロン……」 剣を引き抜くアラストール。 『閃刃斬魔』蜂須賀 朔(BNE004313)が鞘から刀を抜き取り、鞘を放り捨てる。 『ピジョンブラッド』ロアン・シュヴァイヤー(BNE003963)が手袋の裾をくわえて引き、ぬらりと白色のワイヤーを引き延ばした。 「奴らの読みも、捨てたものではないな」 流麗な中国語で呟いて、リャンガは煙の中から現われた。 戦いのゴングは無い。強いて言うなら、この世界が始まったときから彼らのゴングは鳴っていた。 「『閃刃斬魔』――」 眼前50センチの距離まで急速に接近する朔。 「推して参る」 顕現させたもう一本の刀を掴み、リャンガの首めがけてクロス・スライドする。 リャンガは無拍子で身を屈め、武器のかぎ爪部分を朔の足首へ密着。凄まじい速度で彼女を後方の煙の中へと放り投げた。 その動作を止めぬままに地面を高速でスライド。その真横、もとい左右、もとい前後左右の四箇所にロアンが詰め寄った。 ストラを靡かせ、全ての残像が全く別々の動きで手刀を繰り出す。 リャンガは跳躍。すべての攻撃をかわした所で、空中にて待機していたロアンの本体が五指からそれぞれワイヤーを展開。 「暗殺と書いてみなごろしとは、さすが中国。スケールが大きいや」 繰り出したワイヤーが腕の装甲に巻き付く。対するリャンガはロアンの首筋にかぎ爪をひっかけて高速回転。ロアンを地面へ射出した。 ローブを翻し、地面をバウンド、両足と片手でブレーキをかけるロアン。 首筋から大量の血が噴き出していたが、『ヴァルプルギスナハト』海依音・レヒニッツ・神裂(BNE004230)がそっと触れたことで傷口そのものがかき消えた。 「悪いね、福松君の愛じゃなくて。」 「いえいえ、ちゃんとお布施は貰いましたから」 着地したリャンガへ、アラストールが突撃。 翳した棍と剣がぶつかり、激しい火花が散った。 と同時に後方の煙から朔が飛び出し、背後に翳した棍とぶつかり火花を上げる。 肩越しに振り向き、リャンガは薄く笑った。 「その刀……さてはあの女子高生、死んだな? さぞむごたらしく死んだことだろう」 「死んだとも。死んで地獄に落ちたろう。あのサンアのようにな」 「――」 「サンアはよき友人だったか?」 「……貴様」 露骨に顔をしかめるリャンガ。 その眉間にぴったりと照準をあわせ、『ラック・アンラック』禍原 福松(BNE003517)『Killer Rabbit』クリス・キャンベル(BNE004747)は銃を撃とうとする……が。 「おい、様子がおかしい。ブラウンベスが見当たらない」 「確かに……」 海依音は素早く周囲の様子を探ってみたが、その辺に潜んでいるという様子はない。 「いない。まさか屋内に? 福松きゅん」 「分かってる、あときゅん付けは……」 振り向き、梁山泊上海支部の建物を目視。千里眼を発動させて壁の向こうをのぞき見る……と。 神秘能力にって屋内へ侵入するアールの姿が見えた。 別に見えているわけではあるまいに、こちらに向けてパチンとウィンクをした。 福松の頭にカッと血が上った。 「まずい、既に敷地内に侵入してやがる。アールが屋内、ダブルが南東の壁を抜けたところだ! エックスは……くそっ、どこだ! 見つからん! とにかく俺はアールの方に行く。クリス、お前はダブルに――」 「いえ、待ってくださいな」 走り出そうとする福松を、海依音は一言呼び止めた。 「分断するより、先に総力でリャンガを攻略しませんか。ブラウンベスは後に回して」 「ふむ……効率的では、あるか」 口元に手を当てるクリス。 が、福松はそれどころではなかった。 千里眼で透視している彼には、女性職員の頭がマスケット銃によって砕け散る様が見えているのだ。 つまり、避難中の職員が殺され始めているのだ。 「……見逃せるか。俺は行くぞ!」 「あっ、ふっきゅん!」 海依音の制止を振り切って走り出す福松。 その横を、バイクに乗ったクリスが高速で追い抜いていく。 「ダブルは私が引き受ける」 「お、おう……なんだあいつ、用意が良すぎるだろ」 福松は歯を食いしばり、梁山泊の建物内へと飛び込んだ。 ●帝王の剣 梁山泊上海支部裏門。裏門とはいえ、大きな道に面したそれなりに賑やかな場所である。上海における『裏社会の正義』を守っている梁山泊の近隣だけあって、彼らの身内やら友人やらが集まり、ちょっとした小都市の様相を呈していたが……。 「それが全て敵に回った気分はどうなんだろうなあ、梁山泊」 イーシュはきらびやかな装飾の施された刀を抜き、刃に彫り込まれた文字を指でなぞった。 文字とはいえ、どこの国のものでもない文字らしく、イーシュにはてんで理解できなかったが、どうやらこれが能力の利用方法であるらしい。 「さあ行け下僕ども。俺のために死に! 俺のために殺せ!」 「お心のままに、イーシュ様!」 無数の一般人たちが彼にかしづき、手に手に武器をとってかけだした。 その中には白華会のシキる裏外の情婦、リンユー。彼女も含まれていた。 一方。 「これはエージェントの暴走なんかじゃないさ。一人の男が正義を貫いた結果だ。なら俺も、アイツに応えなきゃな」 銃に弾を込め、『ウワサの刑事』柴崎 遥平(BNE005033)は遠くを見据えた。 刀や銃器を携えた一般人の群れが梁山泊の裏門めがけて突っ込んでくる。 当然『通せんぼ』程度で抑えきれる人数ではない。裏門前で処理しきれなければ、梁山泊の建物へ着実にダメージが入るだろう。ちょっとしたタワーディフェンスである。 「しかし、なにかと煩わしい連中ですね。とんと無様で、馬鹿なんじゃないでしょうか」 薄く笑って重火器を持ち上げる『影人マイスター』赤禰 諭(BNE004571)。 その横で、『アヴァルナ』遠野 結唯(BNE003604)が無言で銃を握り込んだ。 「妖刀……いや、ソードオブニート。私は全てを奪い取る、ダカラお前も私がモライウケル」 『歩く廃刀令』リュミエール・ノルティア・ユーティライネン(BNE000659)はナイフを抜き、トンファー型の武器を取り出す。内部の刃が展開し、短刀へと変形した。 口の中で何かを呟く。 「Aika kiihtyvyys Olen nopeampi kuin kukaan」 途端、リュミエールは地面と平行に射出された。否、高速かつ最短距離で敵陣へと飛び込んだのだ。 人間を明らかに超越した速度で突っ込んできたリュミエールに対し、細身の老人が刀を抜いた。 斜めに切り上げるフォームで繰り出される。対してリュミエールはうつ伏せに寝るような姿勢から身体を捻り、螺旋回転しながら刀を回避。 老人の足首を切断しながら集団内部へ入り込む。 正面からぶつかるようにショットガンの銃口が押し当てられる。むろん一丁ではない。大量の腕と大量の銃が彼女に押し当てられ、そして一斉にトリガーが引かれた。 ひとつなぎになった銃声と土煙。次の瞬間、集団の中央から無傷のリュミエールが飛び出した。 「遅いナ」 そこへ体当たりをしかける影人。リュミエールは腰にタックルをうけ、そのまま集団の中に落下した。 イーシュの影人である。これ一体だけでも十分な戦闘力を有している。いかなリュミエールとて避けきることはできないのだ。 彼女に馬乗りになる影人。 ナイフを繰り出そうとするリュミエールだが、そのナイフを小さな少年が手でぎゅっと握った。柄ではない。刃部分をである。更に自らの手を刃へ垂直に叩き付ける。手のひらをナイフが貫通し、そのまま強制的に固定された。 影人が刀を掲げ、リュミエールの胸に突き立てる。 口から血が漏れ出――した直後、影人を中心に大量の銃弾が叩き込まれた。 結唯である。銃を構えたまま無言で前進し、襲いかかってくる大量の一般人を何の躊躇も無く銃撃していった。 一応急所を外しているつもりだが、『動かれると面倒だ』という理由と『他人の命など知ったことでは無い』という理由からかなり適当に打ち込んでいた。何人かは死んだはずである。 「何をやってる」 「オマエ、私ごと撃ッタダロ」 「だからどうした」 「別ニ……」 リュミエールはひるんだ影人とほぼ死体と化した一般人をふりほどき、素早く影人の首をはねた。紙人形になっておちる影人。 が、影人は当然一体だけではない。イーシュは陰人を次々と生み出しては一般人を盾にしながらリュミエールたちへと襲いかかった。 「まったく不器用なことですねえ」 諭は人間が携行するには大きすぎる砲を斜めに構え、トリガーを握り込んだ。 打ち出された弾は空中で炸裂。朱雀の式神に変化した。 「馬鹿め、一般人ごと焼くつもりか!」 「ンなわけねぇだろ」 朱雀の炎が展開される直前、遥平が空中に向けて発砲。弾が神気を帯びた光となり、一般人の群れへと降り注いだ。 ばたばたと気を失って倒れていく一般人たち。その直後、諭の作成した朱雀が炎のうずを巻き起こす……がしかし、彼の炎は影人だけを的確に狙って焼却した。 「ばかな! この群衆の中でそんな芸当が……」 「いや、ばかはあなたですよ。ほら」 上空を指さす諭。 そこには大きな鳥が飛んでいて、群衆を俯瞰していた。 「鳥と意識をリンクして狙いを絞ったというのか……しかも、直前に一般人を不殺(ころさず)の光で焼き払って! いつもいつも、こざかしい!」 イーシュは再び影人を召喚。刀を抜いた影人が突撃した。 その左右を併走する女たち。露出の多い格好から、彼女たちが情婦だということが分かった。その片方があのリンユーだと知る者は、この中にいなかったのだが。 「何度やっても――」 遥平は銃のトリガーを引き、神気閃光を発射。 その時、影人を庇う一般人……を更に庇う一般人が現われた。 誰かの友人だろうか。男たちが閃光によって焼き払われ、その裏から飛び出した情婦たちが拳銃を乱射。 銃弾が遥平の身体にぶすぶすとめり込んだ。 「ぐゥ……!」 意識が一度遠のくが、運命をねじ曲げて体内の銃弾をすべて放出。ギリギリのところで生命維持をはかる。 「邪魔だ」 結唯は空を薙ぐように腕を振り、銃を乱射。情婦をまとめて銃殺した。 ため息をつく諭。 「まあ、せいぜい操られたことを悔やみなさい」 彼は再び朱雀を作成すると、イーシュの生み出した影人やイーシュを庇う一般人たちをまとめて焼き払った。 がら空きになったイーシュへ飛び込むリュミエール。 「イーコトオシエテヤルヨ、私のコレとお前ノソレは同類ダ」 「なんだ、貴様、何を言って――!」 妖刀を翳すイーシュ。 『うっわあぶね!』 が、妖刀はイーシュの意志に反してぐにゃりと曲がり、リュミエールの刀をかわした。 当然、刀はトップスピードでイーシュの首へと吸い込まれる。 そして首筋を切断。 ぐらりと傾くイーシュの身体。 そこへ結唯、遥平、そして諭の銃器が一斉に火を噴いた。 「そんな、俺が……俺が死ぬはずが……!」 人間だったことすらわからないほどの肉塊になりはて、イーシュ・ロンはこの世から消えた。 ●ブラン・ベス、ダブル。 梁山泊の壁に小さな爆弾を取り付け、少し離れて起爆。 人がギリギリ通れそうな穴をあけ、彼は無表情で頷いた。 傭兵チームブラウンベスの一員、ダブルである。 彼は頷いたまま、顔を曇らせた。 「おかしい。アークは確実に駆けつけているはずだ。こうも簡単に侵入を許す……」 身長に穴へ近づき、そして咄嗟にその場から飛び退いた。 先刻まで彼がいた場所を無人のバイクが高速で通過し、壁にこすれて転倒。 一方のダブルは即座にマスケット銃を引き抜き、バイクの走ってきた方向へと連射した。発射からリロードまでを超高速かつ連続で行なうという彼の十八番である。 弾の一発は閃光手榴弾に命中。空中で激しい音と光がはじけ、ダブルは目を瞑ってその場を転がった。 「この手際、やはり来たか――」 転がるダブルとすれ違うように、クリスが横っ飛びになって現われた。 二丁の銃を構え、乱射。 同じくダブルも乱射。 互いの弾が肩にめりこみ、二人は地面に倒れた。 が、すぐに起き上がる。 「ダブル、といったか。占いは信じるか?」 「何……?」 「今日は、オレのラッキーデイなんだ」 銃を再び構えるクリス。 ダブルは対抗してマスケット銃を構えようとするが、掴もうとした手から銃が転げ落ちた。 腕がまるで彼自身を拒むようにあばれ、銃を投げ落としたのだ。 「これは」 「特製の呪縛弾だ。高いんだぞ?」 「……手際が良すぎる。お前、傭兵に向いているぞ」 ダブルは額から大粒の汗を流し、顎からぽとりと落とした。 「占いだったな。俺は、占いは信じない」 そう言って。 「だが神は信じている」 ダブルはその場から跳躍し、クリスの頭上へと飛んだ。 そして、背中にホールドしていた『リボルバー方式のマスケット銃』を取り出す。 「借りるぞ、キュー!」 「――懐かしいな、それは!」 クリス、全力射撃。 ダブル、全力射撃。 二人は大量の弾丸を体内にめり込ませ、そのいくつかを貫通させ、二人同時にその場へ崩れ落ちた。 ……いや、ちがう。 「ほら、どうだ」 クリスはぼろぼろの身体でゆっくりと立ち上がり、震える左手で銃を構えた。 「ラッキーデイだったろう?」 ダブルは仰向けになったまま苦笑した。 「ばかめ、それは実力と言うんだ」 ●ブラウン・ベス、アール。 傭兵チームブラウンベスのリーダー、アール。彼女は梁山泊の施設内を駆け抜けていた。 時に物質透過で壁を通り抜け、目に付いた職員を片っ端から銃殺、もしくは撲殺していく。 あまりの手際に職員たちはろくな抵抗もできないまま次々と死んでいった。 「現在位置は……よし」 アールは最後の壁を抜け、あまり広くない部屋へと到達した。足下にはバルブ式の蓋がついており、えらく頑丈そうな作りをしている。 「ここがシェルターかい。丁寧に神秘防御なんてして……内側からもロック済み。アタシの接近に気づいて仲間を見捨てたね? でもこうなると……」 「チェックメイト、ということなんじゃないか?」 背後で声がして、アールは振り返った。 銃を構えた福松がそこにいた。 口にくわえたキャンディーは既に噛み砕かれ、スティック部分は拉げている。 よほど焦ってここまで来たのだろう。 肩をすくめ、銃の筒部分を持って肩にかつぐアール。 「遅いじゃないか。アークってのは先回りが特技なんじゃあなかったのかい」 「そいつは国内限定だ。しかし……リャンガを囮にして自分たちだけ回り込むとはな」 「そりゃ誤解だよ。元々あんたらを分断させるのが目的だったんだ。意外と気づかれなかったもんだから、プランBに移したがね」 「プランB? なんだそれは」 「ないよ、そんなもん!」 間合いを高速で詰め、ストック部分を繰り出してくるアール。 福松はそれを紙一重で回避。 アールの鼻先に銃口をつきつけ、引き金を引――く直前にアールがマスケット銃を回転。福松の狙いがそれ、アールの肩越しに弾が外れていく。 逆にマスケット銃の先端が福松の顎に押しつけられた。発砲。顎が無理矢理粉砕され、後頭部から弾が抜けていく。 運命をねじ曲げて顎ごと強制修復。福松は拳を繰り出すが、その拳もまたマスケット銃によってはねのけられる。側頭部に叩き込まれるストック。 が、その瞬間こそが福松の狙いだった。それた拳でアールの胸元を鷲づかみにし、銃を手から滑り落とす。代わりに……。 「あんた、なんてこと――!」 「これは読めなかったろう!」 魔法の剣を顕現。零距離でアールへと叩き付けた。 アールの身体を剣が貫通。 「がっ……!」 彼女は身体を弓なりにしならせ、びくびくとけいれんした後、ぐったりとその場に崩れ落ちた。 相手を掴んだまま、福松もまたその場に膝をつく。 そして。 「あ」 自分がアールの胸元、というか乳房を力強く握りしめていたことに気づいた。 「……」 ゆっくりと手を離し、瞑目した。 ●リャンガ・ロン 達人級のE能力者というものがいて、なじみ深い所ではジャック・ザ・リッパーなどがそれにあたる。かつてのアークリベリスタたちはその脅威を目の当たりにしながらも果敢に立ち向かい、そして打ち倒してきた過去がある。 こうして無数の困難を乗り越えるうち、いつしか彼らは達人の域へ達していた。 たとえばアラストール・ロード・ナイトオブライエン。実質アークの稼働時から在籍し、ゆうに百を超える事件を担当。その多くで好成績を残し続けた実力派である。 たとえばロアン・シュヴァイヤー。妹と共にいくつもの狂気事件を担当し、戦闘力は初期のジャック・ザ・リッパーを超えるとも言われている。 たとえば蜂須賀朔。妹冴亡き後にアークへ参入し、妹をはるかに凌駕する実力でいくつもの達人を斬ってきた生粋の人斬りである。 そんな、既に『達人以上』の人間兵器と化した彼らをしてなお……リャンガ・ロンという存在は強敵だった。 「どうした、アークの猟犬ども。もう終わりなのか?」 リャンガは双鈎を斜めに下げ、足を肩幅に開いた体勢で立っている。 対して、アラストールは自らの片膝を地に着け、剣を杖代わりにしてなんとか体勢を支えていた。 アラストールが膝を突く状況など、そうそうあるものではない。 「なぜそこまで抗おうとする。お前たちを出世の道具に利用した梁山泊が、そんなに大事か?」 「我らは貴公らの敵。それ以外に理由は要らん。そして我らを押し通ること、容易くはないぞ」 「……らしいな」 双鈎を振り込むリャンガ。それだけで空間が横一文字に裂け、アラストールの肉体を引き裂いていく。 が、倒れない。 膝をつき、今にも倒れそうだというのに、決して倒れないのだ。 知るものは少ないやもしれないが、『膝を突いてから』がアラストールが最も手強い時なのだ。 「我は楯、害意を退けるもの」 ゆっくりと立ち上がり、鞘を腰に納める。剣を両手で持ち、まっすぐに構えた。 「我は剣、災禍を切り開くもの」 両目をひらき、澄み切ったまなこでリャンガを見据えた。 「……いいだろう」 双鈎をクロスし、空間ごと引き裂きにかかるリャンガ。 が、避けた空間を更に切り裂くものがあった。 朔である。刀を無理矢理空間の裂け目に押し当て、無理矢理『避けた空間』を切り裂いた。そうとしか言いようのない、理屈を超越した斬撃である。 「奇異なものだなリャンガ。お前と私は、この刀でしか繋がっていない」 返す刀でリャンガへ斬りかかる。 繰り出された刀は双鈎によって弾かれるが、弾かれたそばから無理矢理軌道をねじ曲げ、朔は更に斬りかかる。対するリャンガもまた、強制的に帰ってきた斬撃を更に弾く。 二人の間にある空気という空気がかき乱され、小さな嵐が巻き起こった。 「妹と、もっと話しておけばよかったよ」 がきん、と刀と刀が噛み合った。たがいに剣は二本。その四本が複雑にかみあい、固定されたのだ。 「がらあきだよ、暗殺者クン」 すぐ脇にロアンが滑り込む。踊るように身を回しながら、リャンガの顔面へ手刀を繰り出す。 双鈎から一時的に手を離し、飛び退く。飛び退いた先に更にロアンが現われ、手刀を繰り出した。身を捻って回避。回避した先に更に現われるロアン。 「うるさいカエルども」 三方向から囲まれる形になったリャンガは両腕を交差し、勢いよく開いた。 途端、双鈎が彼を中心に高速で飛び交い、ロアンたちを一斉に切り裂いた。 そうしてかき消えた残像を切り開き、ロアンがリャンガへと飛び込んだ。 「甘いよ。ほら、嘲笑ってあげる」 大量のワイヤーがリャンガに巻き付き、彼をめちゃくちゃに引きちぎっていく。 腕や足が、胴体や頭が千切れに千切れ、裂けに裂ける。そして裂けたそばから――。 「甘いのは、お前もだ」 顎だけが動いてそう言った。 言って、リャンガは自らの運命をすり減らし肉体を強制的に縫合した。 「さあ、跪け!」 次の瞬間ロアンの両足が切断される。 グラスの奥にある目がわずかに開かれる。後頭部が掴まれ、ロアンは頭から地面に叩き付けられた。 頭がぐしゃりと潰される。 「ロアンくん!」 ロアンはギリギリのところでフェイトを使って生命を維持、持ちこたえたところに海依音の回復術式が発動した。 全身が急速に再構築され、ロアンは手袋越しにリャンガの足を掴み取った。 「ありがとう海依音さん、助かったよ」 「――!」 し損なった。リャンガは顔を歪ませ、そして僅かに笑った。 次の瞬間、アラストールの輝く剣が彼の胴体を縦に両断。 更に朔の刀が彼の首をはねた。 ごろりと転がるリャンガの首。 既に人間の域を超えすぎたのだろう。 彼は笑みを浮かべたまま、こう言った。 「地獄で待つぞ、カエルども」 次の瞬間、彼の頭はロアンによって踏みつぶされた。 「これで……あとは」 呟く海依音。そして福松たちのことを思い出した。 彼らはアールとダブルを発見し、現場へと急行したはずだ。 時間的に見ても梁山泊のシェルターへの避難は終わっているはず。 状況は終了したようなものだが……まて、ではブラウンベスの三人目、エックスは何をしている? 「もしかして」 海依音はある可能性をイメージし、突き動かされるようにシェルターへと走った。 ●上海は炎に沈みて 裏門には無数のワゴン車が停まり、重傷を負った一般人たちを運び入れている。 手が足りないからと、諭とその影人たちも作業を手伝っていた。 苦しげにうめく老人をワゴン車に乗せ、諭は振り返る。 「しかし、ずいぶんと錆臭い土地になりましたね」 一面は血に染まり、死体も相当数転がっている。 どれが誰だかは分からないが、梁山泊の縁者も多少は混じっているだろう。 結唯はそんな中でただ立ち、スマートフォンをいじっている。足下の物体などまるで気にならない様子だ。 そんな姿を一瞥し、遥平は顔をしかめた。 「よう、ウチ闇医者を手配した日本のデカってのはお前か。アークの……えっとなんだ、お前誰だ?」 「遥平だ。柴崎遥平。あんたは……ツェン・イーツァンだな?」 「おうよ。今はどこも病院がパニクッてるからな。闇医者使ったのはいい判断だぜ」 「どうも」 遥平もなぜ今更になって来たかとは言わない。 彼、というより白華会にとって梁山泊は消えて貰って構わない組織だ。そのうえ白華会の縁者を実質人質に取られたとあっては、動くに動けなかったのだろう。 イーシュの援軍が来なかったところから察するに、白華会のメンバーが周辺の火消しに回ってはいるようだった。 「ふーん。で、正義ごっこは終わったかい」 「ごっこじゃねえ。俺らは――」 「あーいい、興味ねえし何でもいい。お前らの独善のおかげで死んだ奴が山ほどいるんだよ。ハナシはそいつらを弔ってからだ」 ツェンはそう言って少女の死体を抱き上げた。リンユーという裏街の情婦である。 血と脳症にまみれた額にキスをして、遺体袋を持ってきた部下に引き渡した。 「善でも正義でも何でもいい。ただいたずらにこの町を引っかき回してくれんなよ。『ただ生きたいだけ』の奴までこうやって死ぬことになる。お前は手柄を上げられてさぞ嬉しいだろうがな」 「ンなことはねえ。俺はホァンに……!」 言いかけた遥平だが、ツェンは既にきびすを返していた。声も聞かずに部下たちのほうへと去って行く。 眉間に皺を寄せ、目をそらす遥平。 たまたま向けた視線の先では、リュミエールが落ちた刀を拾っていた。 「おい、ソードオブニート」 『あ、あ? なんだ、今度は誰が話しかけているのだ?』 「前の持ち主はどうした」 『先程の中国人なら死んだが』 「その前」 『レイか。レイはよく分からん。死んだところは見てないから、ひとまずは安心しているが』 「……」 リュミエールは少し黙って、再び語りかけた。 「オマエはドースル。私と共に行くカ?」 『刀に持ち主を選ぶ資格はない。が、アドバイスはできる。お主、我が輩を未来永劫所有し続けたいと思うか』 「思う」 戸惑い無しのノータイムだった。 これがリュミエールのリュミエールたるゆえんである。 『理解した。ならば手放せ。人類が滅ぶことになる』 「……」 『わからないという顔だな。我を持つということは人間を従えるということだ。はじめは周囲がお主に優しくなるだけだが、徐々にお主の所属する組織がお前のためのものになる。やがてや国が、やがては世界がおまえのためのものになる。その時お前に人類を惑星規模で管理する能力が無かった場合、人類は自ずと滅亡するであろう』 「……ソウカ」 リュミエールは刀を鞘に収め。 『分かってくれたか』 「人類を管理する能力ダナ。イズレ、手に入レル」 本気の目で、彼女は言った。 「それまで預ケル」 一方その頃、梁山泊地下シェルター上。 意識を取り戻したアールと、地面に座り込んだ福松がそこにいた。 福松の手にはレコーダーがあり、そこからは時村の声明が流れていた。停止ボタンを押す。 「以上だ。アークは……というかオレは、お前を雇ったほうがアークの役に立つと思った。リャンガもイーシュも死ぬと分かっていながらシェルター寸前までたどり着いたんだ。それほど契約への忠誠心が高いってことになる」 「逆に言えば、お金払ってる限りは絶対に裏切らないし、『やりたくないこと』もやれるだけの包容力があるということ、ですよ」 急に加わった声に顔を上げると、海依音が入り口に立っていた。 「ふっきゅん大丈夫? ちゅーしてあげましょっか」 「いらん」 海依音はぱちんと手を叩き、にっこりと笑った。 「お金で動く人は神様より信用できるのよ。それに、『ワタシたちが邪魔しても五割は成功する』っていうのは本当だったみたいですしね」 「……ん?」 言葉に違和感を感じ、福松は顔をしかめた。 「おい。確かお前の任務や梁山泊支部の破壊と皆殺しだよな。五割って……」 と、その時。 シェルターの扉が内側から開いた。 バルブが回り、フタが開き。 中からエックスが現われた。 「……!?」 梁山泊のエージェントになりすまし、シェルターへ入り込んでいたのだ。 幻想殺しとまではいかなくても、神秘的な探査や注意を少しでも行なっていれば回避できたかもしれないが……。 「上海支部のエージェントは全滅した。だが施設の破壊はできなかった。今夜の酒は、まずくなりそうだな」 周囲とアールの様子から状況を察したのか、どっしりと腰を下ろすエックス。人を殺していい気分にはなれない性格のようだ。それでも、こなしはしたが。 「梁山泊も人手不足ということはないらしい。いずれ上海支部にまた新しい人材が流れ込むだろうが……そこまでは俺たちの仕事に関わらない。アール、状況は」 「全員無事だ。珍しいね。あと、新しい仕事が入りそうだよ。人助けだそうだ」 「それはいい。酒が美味くなる」 談笑を交わすアールとエックス。 顔を青くして振り向く福松に海依音は。 「ワタシたちのお仕事は、キッチリ完了しましたよね?」 女神のような笑顔で、そう言った。 こうして、上海を舞台にした巨大な抗争劇は幕を閉じた。 中国大陸に残るロン家や梁山泊のその後など、残る問題はまだまだあるが……ひとまず。 ひとまずの、閉幕である。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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