●ロン家×白田剣山×バイロン 槍を持った十二人の若者が、たった一人に対して一斉に突きを繰り出した。 笠を被った着流しの老人相手にである。 だが槍の一本たりとも老人に刺さることは無く、どころか槍は十二分割され、どころか若者たちは三十五分割されていた。 老人はその場に立ったまま、むき出しの刀を脇にさした体勢のまま保持している。微動だにした様子すらないが、すべてこの老人が行なったことである。 かつて難攻不落の一人要塞と呼ばれ、かつて八本刀の一老剣と呼ばれ、かつて座敷要塞の不動剣山と呼ばれた『物体』。 それは全体が純白の石でできた像であり、目はおろか口もなく、あらゆるしがらみを無視して戦うことだけを実行できる人型自律戦闘アーティファクト完了形、『白田剣山』。 彼は今、上海貧民街に放たれていた。 目的は特定ポイントへの移動と、その間に遭遇したあらゆる障害の破壊である。 上海貧民街には白田剣山を含めいくつもの傭兵や掃除屋、殺し屋や賞金狩りが放たれ、今や鮮血流血掛け流しの殺人地獄と化していた。 貧民街を仕切っている地元マフィア白華会の多くは避難誘導や刺客の対応に追われ、街のあらゆる場所で殺しあいと壊しあいが頻発する状況である。 だが状況は、マフィア組織白華会と暗殺集団ロン家との間におこった組織間抗争の余波に過ぎない。 余波。ほんの、余波である。 発端は、白華会とロン家の共倒れを狙った梁山泊の『救援依頼』だった。売りに出される少女を救出せよだの、街への放火を止めろだの、遠回しにアークの正義感を利用してはこれらの組織への攻撃を誘発させ、関係の悪化を進めていた。 だがそこまではよかった。アークという無欲な第三勢力の介入により、両組織は順調に矛を削られ続けるだけで済んだからだ。ある程度無力化ができてから、梁山泊が全ての利益をさらっていく算段すら立っていたほどである。 が、アークを完全に利用することはやはりできなかった。 あるリベリスタの根回しにより、梁山泊のエージェントが暴走。アークに対して『ロン家の討伐を求む』という間接的な宣戦布告を行なってしまったのだ。 直後にエージェントは暗殺され、それから二ヶ月にわたって梁山泊職員の家族や恋人、ペットや貴重財産やなどが次々に暗殺、破壊される事件が頻発した。しかし時期の悪いことにアークはWP事件や魔神事件におわれ先延ばしとなり事件の解決は先延ばしになるばかり。 状況に対応しようにも暗殺組織であるロン家の所在や連絡ルートなど特定できる筈も無く、ただただ一方的に罪の無い民が殺され続けた。 職員たちの疲弊が進みきった所で、丁度中国に拠点を移しきった三尋木財団から協力申請が入り、ついにロン家第二位リャンガ・ロンの所在を特定。攻撃を開始した。ロン家はこれを決定的な戦争であると判断し、三尋木の仮拠点でもあった白華会、そして梁山泊への直接攻撃を開始した。 そんな戦いの……余波である。 ● 「あふぅ……やっぱり女の子はイイお。ボク満足、えへ、えへえへえ」 はち切れそうなズボンを引き上げ、ベルトも締めずに民家から出てきた男が居た。 恐ろしいほどの肥満で、立って歩いていることが不思議なくらいの造形をしているが、その容姿すら他者にとってはアクセントに過ぎない。 煙草に見せかけた麻薬を吸いながら、パンクファッションの女がつばを吐く。本当なら嘔吐したいくらいだ。 なぜなら、開いた扉の隙間から白目を剥いて死んでいる6歳程度の女児の姿が見えたからだ。どのようになっているかなど、説明もしたくない。何があったのかなど、考えたくもなかった。 彼らに与えられた役目は破壊だ。白華会のシマになっている街に火を放ち、住民を可能な限り殺して回ることである。 地元マフィアである白華会にとって、庇護下にある民間人やその店を潰されることが最大のダメージになる。逆に言えば、彼らさえ生きていればボスが死のうとアジトが燃えようといくらでも立て直しができてしまうのだ。 が、別にこの任務が与えられているのは彼女たちだけではない。他にも多数の組織が多額の金や命と引き替えに同様の任務をこなしている。そしてその全てで、白華会の抵抗を受けているのだ。 先程も抵抗してきた一般人構成員をねじ切ってやったところである。 死体は巨漢の兄弟がダストボックスに捨てた。 そろそろ火事場泥棒もし尽くしたし、次のエリアに移ろうかというところだった。 「次のトコロは天元のバイヤーがいたとこか。あそこにはクソな思い出があんだよなあ」 「天元!」 デブが裏返った奇声をあげた。 「幼木ちゃんがいるんだよねえ! 日本人のコ! えへええへ、今度こそヤりてえ! はやくヤりてえよお! えへえへええ!」 パンク女は露骨に顔をしかめた。彼女らのチームは他チームと比べて仕事の進みが遅い。火事場泥棒で小遣い稼ぎをするのはどこも一緒だが、このデブが幼い女児を見つけると気持ち悪い興奮をするからだ。そして手がつけられなくなる。 こんなクソデブを使わなければならないのは癪だが、余りあって有能なので我慢するしかない。 が、そんな気持ちがすぐに吹き飛んだ。 「ああああああああああっ! 何してくれてんのよー! あたしの天元ちゃん! 天元ちゃんが燃えてるううううあああああ! 傑作があああスズラックス二十号があああああ!」 「馬鹿野郎! 火の中に飛び込むやつがあるか!」 ぶかぶかの白衣を着た少女が、火事の建物を前に錯乱していた。 彼女を押さえていたつば広帽子の男がこちらに気づいて舌打ちする。 「クソッ、てめえらの仕業かよ。えげつねえことしやがるぜ!」 銃を抜き、こちらに向けてくる。 向けたときには連射していた。 そこへデブが突撃。 「また会ったね幼木ちゅわああああああああああん!」 贅肉で弾をはじき飛ばしながら、涎をまき散らして組み付こうとする。 パンク女もまた舌打ちして、ショットガンをリロードした。 ●アーク、介入。 アーク・ブリーフィングルーム。梁山泊からの救援依頼と添付された情報の読み上げがなされていた。 『運命オペレーター』天原和泉(nBNE000024)はこう述べる。 「ロン家に雇われた傭兵や破壊兵器は現在上海の町を破壊して回っています。地元組織の白華会と協力組織の三尋木財団がこの対応にあたり、住民の避難誘導や実行犯の確保を進めておりますが、一部アークの戦力でなくては対応しきれない部分があるということで、今回のような救援要請になりました。これから開示する情報は我々が過去の遭遇事件から推測した情報と、三尋木財団の調査報告書をあわせたものになります。海外案件のためカレイドシステムは利用できないので、ご注意ください」 今回の事件は大きく分けて二つ、『上海の民間人を守る任務』と『攻撃されている梁山泊を守る任務』だ。両件は合同作戦として行なわれ、同時に二つの任務につこうとした場合行動が大幅に制限されることに注意したい。 「今回皆さんに受けて頂くのは前者、上海の民間人を守る任務です。さしあたってこのチーム内で更に二つのチームに分かれ、行動して頂くことになります」 そう言って提示されたのは、『白田剣山』と『バイロン』に関する資料である。 「アーティファクト『白田剣山』は白華会周辺の貧民街を破壊しながら移動し、最終的にはアジトを破壊することを目的としています。ですが、アーティファクトの特性上強力な達人との戦闘には非常に敏感になり、優先して行なおうとします。進行中の『白田剣山』に接触、戦闘をしかけ、これを破壊してください」 『白田剣山』はソードミラージュの達人を素材とし、二年半の歳月をかけて完了したアーティファクトです。人間素材とはいえ完全に人格を破棄しており、満足のいく戦闘をするためだけの物体になっています。作成には本人の強い意志が必要とされ、ある意味達人の到達形態と言えるかも知れません。 E能力者的に見ても非常に俊敏かつ動きも高速で、通常の四倍の反射ダメージや自己修復機能を備え、高い防御・迎撃能力を持っています。 この作戦にあたるチームは高い練度と戦闘能力を必要になるでしょう。逆に言えば、戦闘以外の全てを忘れてもかまわないチームでもあります。 「『バイロン』は町のあちこちに火を放ち、あらゆる店や人を破壊・殺害して回ることを任務としています。他にも多くのE能力・非能力者が雇われて同様の任務をこなしていますが、特別彼らへの対応が難しいのはその戦闘力の高さにあります」 『バイロン』はデブ、パンク女、モヒカンの巨漢兄弟の四人で構成されたE能力者チームです。特にデブは高い防御性能と異常性癖によって手のつけられない人間として一部で有名でした。 デブはクロスイージス。パンク女はホーリーメイガス。巨漢兄弟は覇界闘士だと分かっています。 以前アークと戦闘した際に撤退しましたが、今回はイーシュ・ロンから高レベルの装備を支給されており非常に厄介な敵になりました。 現地では白華会の前衛サジことユェンが対応に当たっていますが、恐らくかなりの劣勢を強いられているでしょう。 この作戦にあたるチームは現場に残った民間人の救出や避難にくわえ、バイロンとの戦闘を強いられることになるでしょう。 「非常に厳しい任務になりますが、どうかよろしくお願いします」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:八重紅友禅 | ||||
■難易度:HARD | ■ ノーマルシナリオ EXタイプ | |||
■参加人数制限: 10人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2014年11月22日(土)22:07 |
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■メイン参加者 10人■ | |||||
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●魔剣完了形 戦いに理由は不要。 さあ描こうでは無いか。 前座前述粗筋無用……抜刀完了、大活劇! 光より早く、刃が彼に襲いかかった。 千分ノ瞬間、『桐鳳凰』ツァイン・ウォーレス(BNE001520)の時間が引き延ばされる。 伸ばされ、伸ばされ、過去へと裏返った。 生まれて初めて戦った日。生まれて初めて剣をもった日。生まれて初めて達人を見た日。生まれて初めて不動剣山を見た日。勝利、敗北、敗北、勝利。二十一年と半年にわたる長い長い走馬燈を超えて、彼は盾を握り込んだ。盾を握った腕が肩の部分から切断され、盾ごと飛んでいく。 「いつも――!」 せめて反撃にと握り込んだ剣は手首の部分から切断され、回転しながら飛んでいく。 「いつも、いつも――!」 意地で振り込んだ額が、『あれ』の額にぶつかった。むしろ痛いのはこちらである。相手は真っ白な石で、こちらは石頭とはいえ人のもの。額から血が噴き出した。 「いつもいつもいつもそうだ――!」 歯を食いしばる。 ずっと後ろで、『狐のお姉さん』月草・文佳(BNE005014)が略式の印を結び、ツァインを中心に神威を召喚。両腕が引き戻され、無理矢理継ぎ合わさる。 合わさったそばから再び切断されようかという時になって、『それ』は刀を斜めに翳した。途中の動作はない。腰にさした状態からこの状態まで、パラパラ漫画の途中を喪失したかのように動いた。 そこへ打ち合わせたかのように矢が飛来。鏃から羽根に至るまでが真っ二つに避けた。 「うそです、そんな……!」 弓を放った姿勢のまま、クラーシア・エクルース(BNE005104)は両目を見開いた。当然である。ラルカーナは勿論こちらの世界に来てからというもの、彼女の矢が直撃しなかった人間など数える程しか居なかったからだ。 せめてかすりはしたものが、擦り傷ひとつつけてはいない。 次の攻撃を警戒してツァインが構える。が、そんな彼を簡単に通り抜け、『これ』は文佳の眼前まで迫った。 移動の様子などない。足を踏み出す動作すら無く、瞬きよりも早い速度でそこにいた。 「ブロックを抜けた!?」 「文佳さん――ッ」 横からかっさらうように彼女を抱える、院南 佳陽(BNE005036)。 その速度たるや凄まじく、ツァインからすれば後ろ髪の先端すら触れることの叶わない速度である。先刻述べたクラーシアが直撃できない相手というのが、この佳陽なのだ。 そんな。 そんな彼女の足首が、ばっくりと裂けた。 「――!?」 怖気が走った。 佳陽の本能に、氷の槍が刺さったように。 「下がってください、そのまま」 文佳の回復を受けつつ佳陽は一息にバックジャンプ。十メートルの距離を高速で後退した。 彼女とすれ違うように突撃する『グラファイトの黒』山田・珍粘(BNE002078)。 「待っていました、この時を!」 『それ』に、彼女は至近距離まで急接近。 槍を握ろうとした手を切ろうとした腕を折ろうとした指を捻ろうとした手を切ろうとした刀を弾こうとした槍を掴もうとした手を握ろうとした手を握ろうとした手を握ろうとした那由他の手が――ばっさりと切断された。 「……そうでなくては」 くるくると飛んでいく槍を無視し、手刀を繰り出す。爪の先端が触れるか触れないかの位置まで『これ』は下がり、ギリギリのところで回避する。 「これが、あらゆる可能性の中で最も強くなった不動剣山の完了形……魔剣『白田剣山』」 ●人の命の価値を知れ 所変わって。 「また会ったね幼木ちゅわああああああああああん!」 醜いデブが涎をまき散らし、当たる銃弾を跳ね返しながら突進した。 「クソッ、何で出来てんだあの贅肉は」 ユェンは舌打ちし、幼木を抱えたまま駆けだした。戦闘しながら逃げ切れるとは思えない。 この周辺ではロン家の手勢が破壊活動に精を出し、それを白華会のメンバーたちが火消しにあたっているという状態である。うかつに逃げるとコトが悪化しかねない。 「どうりゃいいってんだ!」 「戦ったらいいんじゃないですか?」 「こちとら火消しのエキスパートだ。任せておけ」 必死に走るユェンを挟むように、二人の女が現われた。 鏡映しにしてはできすぎな、ブロンドとブループラチナの髪をした女である。 彼女たちはシンメトリーに腕を翳した。 金髪の『ラビリンス・ウォーカー』セレア・アレイン(BNE003170)。 蒼髪のリューン・フィレール(BNE005101)。 デブは目を剥いて叫んだ。 「そこぉどけババァアアアアア!」 「は、今なんて?」 「よし、殺すか」 セレアは指を鉄砲の形にし、リューンは五本のゼブラボールペンを握り込み――すべて一息にへし折った。 途端、天から大量の流星が現われ、デブの身体に降り注いだ。 顔を覆ってみっともなく転がるデブ。 「あっ、あああっ、あつい、あづいよおおおおおおおあ!」 「この手際、テメェらまさか」 ブレーキをかけ、ターンするユェン。 物陰から現われたリリウム・フェレンディア(BNE004970)が、AFを掲げて首を傾げた。 「アークだ。梁山泊の依頼で来た。任務はバイロンの討伐だが、どうする」 そう言いながら自分にエル・ユートピアをかけ、長く細く息を吐き出すリリウム。 「デブのブロックは任せておけ。その間に」 「分かってる」 「梁山泊の尻ぬぐいくらいはやってやるさ」 同じく物陰から『無軌道の戦姫(ゼログラヴィティ』星川・天乃(BNE000016)と『どっさいさん』翔 小雷(BNE004728)がそれぞれ出てくる。 「久しぶり、だね」 「ゲェ、飢虎(ジーフー)!」 「じふ?」 天乃は首を傾げ、小雷は首を振った。 「話は後だ。連中をやるぞ」 「チィ……後から手伝う。しのいでてくれ!」 「ゲンちゃん?」 ユェンは幼木を抱えたまま走り去っていく。 小雷は一度だけ肩をすくめたが、とがめるようなことは言わなかった。誰だって守りたいものや領分はある。 その一方で、転がるデブの影から二人の男が姿を荒らした。坊主の巨漢。バイロンの一員である。 彼らは手首に模様の突いた鎖を巻き、無言でファイティングポーズをとる。 「来るか、いいだろう」 「そっち、任せた」 天乃と小雷は同時にダッシュ。 巨漢たちも同時に走り出した。最初に衝突したのは小雷である。彼の掌底がうなり、巨漢の拳とぶつかる。 過去にアークとぶつかっている彼らである。装備もかなり上等なものに変わっているようで、思ったほどの手応えが見込めない。 だが負ける相手ではないな。小雷は頭の中でそう読んだ。 次の衝突は天乃のものである。彼女は空中に飛び上がると、急速に分裂。その全てが巨漢に向けて蹴りを繰り出した。 対する巨漢は両腕の鎖を展開。分裂した残像ごといっぺんに薙ぎ払う。 蹴りは巨漢の顔面へ、鎖は天乃の顔面へ炸裂。両者血を吹いて地面に落下した。 血の混じったつばを吐きゆらりと起き上がる。 「さあ、踊って、くれる?」 ●戦乱の世はいつ来たる 白田剣山。元人間とはいえ、そのスペックはフィクサードのそれを大幅に凌駕していた。 アーク最高水準の一人として比較に出すが、ツァインの倍以上の回避性能をもつ佳陽に刃が届き、ツァインの倍以上の命中精度をもつクラーシアの矢を完璧にかわしきる性能。『とりあえず』で攻撃し続ければ反射ダメージで確実に削り取られる。アーク内での模擬戦ではまず起こりえない、究極の戦闘状況がここにはあった。 「こんなのが相手じゃ、あたしが攻撃する暇はなさそうね。徹底的にチャージと回復をし続けるから、院南さんよろしく」 「それはいいんですが……」 佳陽に抱えられたまま、文佳は連続で神威召喚術式を組み立てていた。 いわゆるお姫様抱っこ状態である。佳陽の『庇って避ける』という特殊なバトルスタイルに有効な姿勢であるとはいえ、実際やってみるとなかなか奇妙なものがあった。 「まさかこのスタイルを、アークの実戦で試すことになるとは」 「言ってる暇ないわよ。ほら」 文佳が指をさすと、剣山がすぐそばに出現した。 佳陽は文佳を抱えたまま高速でジャンプ。 付近の建物の壁に足をつけた途端、壁に足を接着させた剣山が目の前にいた。 「――ッ!」 即座に壁を蹴って離脱。 空中で彼女と全く平行に移動する剣山が、眼前にあった。 動きを完全に読まれている。 正確すぎる計算によって未来を算出する現象さながらに、剣山は彼女の動きを完全にとらえていたのだ。 凄まじい速度で刀が繰り出される。佳陽は意識を極限まで集中させ、ハイヒールの踵でもって刃筋をずらし、ギリギリのところで回避。 文佳は守らねばならないからと、佳陽は肩から地面に落ちた。激痛に歯を食いしばる。 追撃の目をむけてくる剣山。 そこへ。 「つれないですね、白田剣山」 那由他が直接斬りかかった。 空中で刃と刃がぶつかり、弾きあう。 「目も口も無くして、暫く見ないうちに様変わりしたみたいですね。でもそんなことはどうでもいいんです、どうでも」 那由他の目がらんと光り、拳を強く握りしめる。 強く握りしめ、そして殴りつける。 アームガードが展開し、剣山の顔面に叩き付けられた――かのように見えたが、既に剣山は彼女の背後にあった。 「残像……!」 「そこです!」 クラーシアが狙い澄ましたように矢を射出。 まるで未来でも見えているかのように放たれた矢はその場に移動したばかりの剣山へ突き刺さった。 「初めてのお仕事、です。犠牲を出すわけには……!」 次の矢を素早くつがえるクラーシア。が、つがえようとした自らの手に、自らが放った筈の矢が刺さっていた。 常人の肉眼ではまずとらえられない出来事だったが。剣山は自らの足に刺さった矢を即座に抜き、ダーツの要領でクラーシアの手首へと投げ返したのだ。 人間の域でできることではない。 だが彼は今……。 少しだけ前の話をする。 中国へ向かう飛行機内でのことである。 剣山の資料を見ながら、クラーシアは顔を曇らせていた。 「どうした、何か考え事か?」 にこやかにツァインが話しかけてくる。まるで遠足前の子供のような顔だ。 写真に目をおとすクラーシア。 「いえ、白田剣山のことなんですが」 人間だった頃の彼に、ツァインたちは会ったことがあるという。 ただ強い人間と戦いたいがためだけに自らをねじ曲げたという彼。 その末。 「人であることをやめ、心まで捨ててまで、って……」 「そうだな。いつもの俺なら嘆いたと思う。そこまでしてまで斬り合いたいのかってさ」 両手で紙コップを包み、ツァインは目元を暗くした。 「でも最初からだったんだ。あの人は、最初から……ずっとそうであり続けたんだ。だからネジが呼応した。達人が自分を貫ききった姿が、きっとあれなんだ」 垂れた前髪に隠れたツァインの目がどんなだったか、クラーシアは覚えていない。。 ただ彼が『だったら俺は』とだけ呟いたことを、覚えている。 「それでも」 クラーシアは痛みを無視し、苦しみを投げ捨て、矢を再びつがえた。 全神経を集中。 「あなたを可哀想だと思いました。白田さん」 頭の中で未来を、あったかもしれない未来を描いた。 かの老人が静かな縁側に座り、小さな子供や若者たちが稽古に励む様子を眺めているさまを。 人々に慕われ、老いて死ぬさまを。 本来彼があるはずだったかもしれない未来を。 「あたれ」 クラーシアはこのとき、技術で矢を放っていなかった。 強いて言うなれば、願いで矢を放ったのだ。 矢はそして。 剣山の頭部を完全に貫通した。 彼の身体が落下し、地面をはねて転がる。 数メートル転がって、そのまま膝からスムーズに立ち上がった。 刀を構える。 そこへ、ツァインが立ち塞がった。 垂れた前髪で、彼の目はうかがえない。 「俺はいつもこうだ。後手に後手に、回ってばかりだ」 彼の周りには沢山の達人が居た。 敵も味方も、達人だらけだった。 守護神、絶対防壁、露人神兵にカレー女。佳陽やクラーシアのような強力な新戦力まで加わり、ツァインの周りは達人だらけになっていた。 だがどうだ。自分と来たら。 やぼったい鎧と、どっちつかずの剣と盾。 早くも硬くも巧くもない。 なんてどうしようもなく。 なんてどうしようもない。 「だが、それでも!」 涙が浮かんでいただろうか。 血が滲んでいただろうか。 ツァインは自らを包む無敵の鎧を脱ぎ捨て、たった一本剣だけ持って、剣山に向けて身構えた。 「あんたは不動であればいい。俺が行く。俺が届かせてやる」 「…………」 剣山がただの兵器であるならば。 このとき彼を無視し、なんならクラーシアや文佳たちを狙って切りつけていればよかったのだ。 だがこのとき。 白田剣山はその場で正座をした。 「『不動剣山』」 「『移動城塞』」 「「いざ――!」」 ツァインがしたことは突撃である。 他の何でも無い。 叫んで、剣を翳し、走り、切りつけた。 それ以外の何もしなかった。 彼の膝が切断される、腕が切れる、顔の半分をばっくりと切り裂かれ、血にまみれる。 美しさのかけらもない、一方的にやられるばかりの彼はしかし。 「ツァイン・ウォーレス!」 「ウォーレスさん!」 剣山の刀がツァインの首をはねた。 はねた瞬間、文佳は狙ったかのように回復術式を起動。 刀が彼の首を『斬らないまま』通過し、そしてツァインの剣が、剣山の首をはねた。 後手の後手の、更に後手。ツァインの意地が、再び剣山に届いた瞬間であった。 直後、ツァインはみっともなくその場に転がり、そして目を開けたまま気を失った。 「よき……かな……」 ゆっくりと立ち上がる剣山。 彼の首は既に無い。 それでも動くのだ。既に人ではない証明をするように。 「あなたは戦うことに無欲すぎた」 那由他は槍を構える。 既に幾重にも集中を重ねている。頭を流れる血管がはち切れそうになっていた。 まるでいつかのように。 初めて彼に出会った頃のようにだ。 「私みたいなものには、それが羨ましかった」 高速で接近。 槍を突き出――そうとした所で腕が切断される 「憎らしくも、ありました」 回転して飛ぶ腕。 膝蹴りを繰り出――そうとした所で足が切断される。 「まあ、それがなくても私を斬ったあなたのことを、私は」 剣山の刀が那由他の身体を上下に分割し――ようとした、ところで。 彼の身体は上下に二分割されていた。 「大嫌いでしたよ」 那由他のアームガードからは、鋭い小太刀が露出していた。 直後、那由他はバランスを崩し、その場にどさりと倒れたのだった。 佳陽の腕から下り、ツァインたちに駆け寄る文佳。 「大丈夫、まだ息はあるみたい」 応急処置を施し、そして文佳は顔を上げた。 彼女の前に立ち止まった、一人の男に気づいたからだ。 「……あなた、確か」 「お、知っててくれたか。美人に顔を覚えられるってのは嬉しいもんだぜ、なあ」 そうは言うものの、文佳は彼の顔など覚えていない。 真っ白いスーツと、そうとしかとらえられない存在感で、『彼か』と気づいただけである。そもそも会ったことも無いのに、なぜそうだと分かったのか。 しかし奇妙なことに、目視している今現在であってもなお、彼の顔をうまく記憶できないのだ。 彼はゆっくりとかがみ、ツァインの顔を見ながら言った。 「技を破ってくれてありがとよ、白田も本望だろうぜ。なゆちんちゃんの方は技を継承してっからいいとして……そうだな、お前にはこれだ」 男は地面に転がった剣山の上半身をいとも簡単に開くと中から一本の青銅剣を取り出し、ツァインの胸の上に置いた。 「『妖刀難泰・再封型』。武器として使えねえし使ったら最後だが、お前が持てよ。それがいい。でもって永久に誰にも渡さず、このままの状態にしといてくれ。外側の青銅カバーは絶対に壊すなよ。頼むぜ、お前になら任せられる気がするんだよ」 男は立ち上がり、その場を去ろうとした。 「あ……」 呼び止めるべきか、文佳は迷った。 だが彼は勝手に振り返り。 「あ、俺の名前? 『ホワイトマン』だよ。忘れんな」 ●醜い者よ、いざ死なん。 時間は遡り、所も変わり、バイロン戦。 巨漢兄弟は天乃と小雷を相手に互角の戦いを見せていた。 天乃が高速で繰り出すエネルギーワイヤーを、兄は特殊な鎖でもって打ち弾き、小雷とはお互いに掌底を弾きあう。 「これではラチがあかん……!」 小雷は歯噛みした。 そも、彼の行動原理は自分のため……もとい、昔の自分のためである。古き無念を晴らすため、力をつけてそれを振るうと言うことを繰り返していた。 「何か喋ってみたらどうだ、ハゲコンビ!」 きつく螺旋をきかせた掌底を叩き込む。 巨漢弟はそれを曲げた腕で挟み込むようにホールド。足払いで小雷を上下反転させ、地面へと叩き付けた。小雷を覆っていたエル・ユートピア膜が破壊され、粒子になって消えていく。 人格が堕ちきったデブや廃人化したモヒカン、文句ばかり言うパンク女に比べて妙に堅実な動きをすると思ったが、いざ真面目に相手をしてみるとなかなかにつらいものがあった。 なんといっても真面目なのだ。付け入りどころがない。 現に今も、小雷と天乃が範囲攻撃を狙っていそうなことを察して互いの距離を微妙に開けている。 そしてチラチラと後方のリリウムたちに視線を送っている。少しでも後退すれば彼女たちに手を出すことを明らかにしているのだ。 「俺の方はなんとかやれているが、このままだと」 先程から、リリウムの物理無効障壁をかけてはブレイクされかけてはブレイクされの繰り返しだ。あいにく回復担当がいないので、うっかり大ダメージでもくらおうものなら押し切られる。 一番の問題は相手が巨漢兄弟だけではないということだ。 「ババアアアアア! 幼木ちゃんに逃げられたじゃねえかよおおおお! ころすううころすうううううううううう!」 両腕を振り上げ、醜く肉をふるわせ、デブがセレアたちに突撃する。 「そう思い通りにさせると思うか」 剣を抜き、デブを押しとどめるリリウム。 デブの突撃を受け止める。踵がざりざりと地面を削った。 威力はそこそこ。だが物理障壁が防いでくれている、と思いきや。 「邪魔すんなよおおおおお! もおおおおおおお!」 デブは平手をリリウムに対して叩き付けてきた。 ただの平手ではない。腕輪に強い神気を宿らせてのものである。 「まずいっ」 リリウムを覆っていた障壁が破壊される。 「パワーはあるくせに技巧派か。悪いお約束だな」 「それでもマレウスぶっ放されてまで耐える程じゃ無いでしょ」 セレアが詠唱を極度に圧縮させ、マレウス・ステルラを発動。 魔力の塊が波となってデブたちを襲う……がしかし。 「ナメんなジャップがァ!」 反対側から魔力の波がぶつかり、エネルギーを相殺……いや『埋め合わせ』た。 巨漢兄弟たちの後ろでこそこそと何かしていたパンク女の仕業である。 彼女は身体の前に五芒星の盾を出現させ、ショットガンを杖のように掲げていた。 「うわあ、面倒くさ」 「相手が神秘火力寄りとみるや真っ先に自己防衛に走ったな、あいつ」 リューンの目が細くなった。軽蔑のまなざし、とは少し違う。 過去の資料を参照するに、パンク女は仕事の都合上仕方なくデブや巨漢兄弟と組んでいるだけで、彼らに仲間意識はあまりない様子だった。 「まあいい。死ね。むごたらしく悲鳴をあげて死ね」 リューンはスーツの両腰ポケットに手を入れると、全指の間に一本ずつ計八本のボールペンを引き抜いた。 そして、顔の位置まで掲げて握力だけでへし折る。 途端あふれ出したエネルギーの波動が発射され、デブたちへと襲いかかる。 セレアのマレウス一発分は耐えられても、同等のものを二発連続で浴びせられてはたまったものではない。 パンク女は(自分は無傷なのをいいことに)デブに罵声を浴びせた。 「このクソデブ! 女は後回しだ、そこのトラ野郎をヤりな!」 「でも……」 「デメェのクソみてぇなファッキン画像満載のファッキンスマホが火あぶりになってもいいってのかい」 「おまえ、ボクのスマホちゃんをスリとったなあああああああ!」 デブは涙と涎をまき散らしながらリリウムをスルー。今まさに巨漢弟と組み合っていた小雷に背後から掴みかかった。 「な……貴様!」 「し、しししし死ねよおおお! ボクのために死ねよおおおおもおおおおお!」 小雷の物理障壁はブレイクされたままである。今集中攻撃を食らったら……! 「豚野郎!」 小雷は拳に紫電を纏わせて振り回す。デブや巨漢弟にはそれなりにききはしたものの。 「かえせええええ! ボクのスマホ返せえよおおお!」 足を掴まれ地面や壁、標識などめちゃくちゃに叩き付けられる。 小雷の意識が急速に奪われ、闇へと落ちた。 「いいぞデブ! 次はお前の嫌いなバアアどもだ。歳いってる順に殺していいぞ!」 「……」 デブはギロリと周囲を見回した。天乃(22)、リリウム(46)、セレア(27)、リューン(55)。 四人を見比べた後で。 セレアへ襲いかかった。 「お前からだああああああ!」 「どうしてそうなった!」 セレア、怒りのマレウス乱射である。 デブの顔面に大量の魔力弾が叩き込まれるが、そのダメージを無視してデブはセレアを殴りつけた。 引きはがさねばと駆け出すリリウムだが、彼女の前には巨漢弟が逆ブロックで立ち塞がった。 「……」 「……ちっ!」 一方のセレアはさらなる怒りにまかせてデブの顔面にマレウスを乱射。 リューンもリューンで胸ポケットから抜いたボールペンをデブの耳に突き立て、へし折り、零距離でマレウスをぶっ放した。 「はぶ、おぶ……」 口から黒い煙を吐くデブ。 が、まだ死なない。 首をぐいぐいと締め付けられたセレアが、かくんと全身から力を抜いた。 「い、イイゾ、シネ、モットシネ!」 白目をむいたまま更に力を込めるデブ……だが、その首にするりと気糸が巻き付いた。 天乃の気糸である。 「こっち、終わったから」 ふと見ると、巨漢兄弟がそれぞれ真っ黒な焼死体になって転がっていた。 セレアたちのマレウス連射に耐えきれなかった、というだけではない。 「悪いな、ガキを置いてくるのに手間取っちまった」 燃える建物の上で、ユェンがつば広帽子を指で上げた。 「ま、俺が居なくても勝てそうだったけどな。なあジーフー」 「ん」 天乃は軽やかに指を繰ると、デブの胴体から首を取り外した。 うつ伏せに倒れ、動かなくなるデブ。 「クッソ、仕えねえ野郎どもだよ……覚えてな!」 パンク女はそうとだけいうときびすを返し、その場から一目散に逃走した。 この場での戦闘、つまるところセレアたちの任務が終了した。 ● 戦いが終わったからといって、この事件そのものが収束したわけではない。 佳陽と文佳は動けなくなったツァインや山田珍粘たちを抱え、苦労しながら安全地帯へと移動していた。 まだばくばくと言っている胸をおさえ、クラーシアは呟いた。 「まさか、あんな敵と戦うことになるなんて……」 「バロックナイツ級になると、あのレベルがごろごろいるんでしょうね」 重々しい口調で呟く佳陽。 そんな中、文佳はバイロン戦に向かった別働隊のことを考えていた。 「リカバリがきかないチームだったけど……大丈夫かしら、あっち」 文佳の気持ちをくんでセレアたちの様子をお送り……する前に。 「ハァッ、ハァ……ここまでくれば、安心だろ」 パンク女は大量の汗をしたたらせて立ち止まった。 地元の人間しか知らない裏道中の裏道である。 周囲があまりに入り組んでいるため、場所を知っていてもたどり着くことが難しい。こういう天然の安全地帯を、彼女はいくつも知っていた。それが裏の社会で生き抜くすべでもあるからだ。 「あのアマ、いつか殺してやる。今度はロン家の旦那にもっといい武器をもらって……それで」 「それでェ?」 背後で急に声がした。 した途端、パンク女の顔両サイドに四本ずつ。計八本の青竜刀が突きつけられる。 「あ、あんた……」 「まだ殺さないわよん。アナタを殺すのが今日のお仕事って人がいるの、アタシってばなーんて優しいのカシラ。ねえ……ジーフーちゃん」 「うん」 とん、とパンク女の前に着地する少女。 ツインテールの少女。 星川天乃である。 「来ちゃった」 次の瞬間、パンク女はサイコロステーキサイズに分断された。 すぐそばの扉が開く。中華料理屋の裏口ドアだ。 「ウゲェ、えげつねえことしやがるぜ。くわばわくわばら」 ぼとぼとと転がる血やら肉やらを見つけ、ユェンは口元を押さえた。 「これでいいんだろ。ついでに、ご注文のカニはこっちの店で食えるぜ。俺はメシ喰う気分にゃなれねえが……今から行くかい?」 「ううん」 天乃は両腕を大きく広げ、だらんと下げた五指から長い気糸を垂れさせた。 「いま、ここで。しよ」 「あら大胆」 「まあそういう奴だよ、アンタは」 青竜刀を構えるフェイ。 銃を引き抜くユェン。 そして彼女たちは、じゃれあった。 さて、こちらはリリウムたちバイロン戦チーム。 周囲の安全が確認できたことで、彼らはひとまず救助活動に移った。 さすがにバイロン戦に時間をとったぶん手遅れになった被災者も少なくなかったが、おおむね助けるぶんには助けたつもりである。 「フィー、露骨な肉体労働はこたえるわねー。この辺の復興とかどうすんのかしら」 被災者たちと一緒にベッドで寝かされた小雷とセレア。それを見下ろしながら、幼木は薬剤を調合していた。 タオルを絞りながら近づいてくるリリウム。 「なんだ、人に優しい薬も作れるのか。お前は」 「アタシをなんだと思ってんのよ。麻薬作るのに薬学知識は必須でしょー。そりゃ麻酔や痛み止めだって自力で作るわよ」 「そういうことには詳しくないが……規制の厳しい薬品を自作できればさぞ楽だろうな」 リューンが肩を自分でもみほぐしながら言った。規制という言葉は彼女にとってちょっとした敵である。表情もこころなしか険しかった。 「小さい頃はアタシも、お医者さんになりたかった頃があったんだけどねー。医学界ってわりかしクソだし……あ、そうだ。あんたら梁山泊に依頼されてたんでしょ。報告に行かなくていいの? ご褒美もらい損ねちゃうわよ」 「ご褒美だ? そんなものは知らんな」 リリウムは腕を組んで椅子に腰掛けた。 「正直、日本が未曾有の危機に陥っているというのに、中国まで来るべきなのか悩ましいくらいだ」 「ふーん。あんたらもいいように利用されちゃってんのね。どーせアレでしょ、『人助けしたいです』とか言ってタダ働きしちゃってるんでしょ。無力な個人がやってんならいいけど、世界的な組織にやれると正直メーワクよねー」 「……かもな」 彼女は正義にあかるくない。 だが『力は使う者次第』という概念は、どこでも通じる筈なのだ。 ぽたん、と点滴の落ちる音がした。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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