●ルゴ・アムレスの黒塔 ボトム・チャンネル。 それは階層上になっている世界において、一番下であるという世界のこと。 故にボトムチャンネルは上位世界からの脅威に晒されてきた。時折Dホールを渡ってくるアザーバイドにより、大きな被害を受けることもある。それに対抗するためにリベリスタは徒党を組み、組織だって警戒に当たっているのだ。 さて、上位世界にもいろいろな世界がある。ボトムチャンネルよりも広大な世界も在れば、ただ樹木が一本生えているだけの世界も。時間が止まった世界もあれば、今まさに消え去ろうとする世界も在る。 そんな世界の一つ、ルゴ・アムレス。 半径五キロ程度の大地に、天を衝くほどの黒い塔が存在する世界。そこは多種多様の戦士達が集う修羅の世界。 その塔の上にこの世界のミラーミスがいるといわれ、今なお塔は天に向かって伸びていた。何を目指しているのか、誰にも分からない。狭い世界ゆえに、塔はどこからでも見ることができる。 そして塔の中は、階層ごとに異なっていた。町が丸ごと入っている階もあれば、迷路のような階もある。そしてこの階は……。 ●猫召喚士トーカ 「皆様始めまして。私がこの階の守護者、トーカといいます」 ぺこりと一礼するアザーバイド。猫のような耳がついたフードを被り、底からのぞく幼い顔、小さな背もあいまって、とても強そうなイメージを受けない。見た目で言えば小学生ぐらいだ。見た目で判断すると痛い目を見ると分かってはいるが、戦意よりも保護欲が出る。 十八階は西洋風の街が並んでいた。映画で出てきそうな外国の街並だが、壁に梯子があったり、天井を歩く為の桟があったりと道が立体的になっている。立体的な町の構造は、落下することに対する安全性が欠落していた。 そしてそんな十八階に来て、すぐにこの町の守護者がリベリスタを尋ねてきた。それがトーカである。で、そのトーカはというと、 「こちらがアイネです。そっちで寝ているのがペータ。あそこでたむろしているのがリック、エリザベス、コモコモ……」 紹介するのは路地で寝ている生物。羽根が生えたり尻尾が多かったりと詳細なディテールは異なる者もいるが、ボトムチャンネルに照らし合わせると一番近いのは猫だろう。 「向こうの通りにはストリートのボス、ハルヒコがいます。凶暴ですので気をつけてくださいね」 はあ、と適当に相槌をうつリベリスタ。異世界に来て町の猫と戯れに来たわけではないのだが。 「あ、そうでした。戦いでしたね。準備しますので、少し待って貰えますか?」 トーカが短く旋律を奏でると、かすかに空気が震える。瞬き一つの間もなく、ケーネの背後に四匹の『猫』が出現していた。 召喚魔法。それがケーネの戦闘手段。 「左から順番にネコヒトのミコちゃん、魔女の使い魔マルト、二足歩行の猫銃士リィナ、この大きい子がゲンタです」 トーカが召喚した猫たちが、それぞれのポーズで一礼する。これに追加してトーカ自身も戦うのだ。召喚してそれを見ているだけの存在が黒塔の階層を任されるはずがない。 「ボトムチャンネルの戦士たちは強いと聞きました。とても楽しみです」 トーカは満面の笑みを浮かべる。これから起きることに対する期待の笑み。見た目は幼く見えても彼女もまた修羅世界の住人。そしてそれに答えるように猫たちも唸りをあげた。見た目は愛くるしい格好だが、油断すると痛い目にあうだろう。 リベリスタたちは破界器を構え、戦いに挑む。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:どくどく | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2014年11月26日(水)22:44 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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● トーカの術は対象を猫と化す技である。ネコ耳を生やし、語尾が変化する。抵抗しようとすればすぐに抵抗できるものだ。 「ふむ……わるく、ない、にゃ」 頭から黒いネコミミを生やした『無軌道の戦姫(ゼログラヴィティ』星川・天乃(BNE000016)が無感情に呟く。自分の意志で動かせるのは斬新だが、天乃としては五感が鋭くなるわけではないのが残念だった。 「本当に猫耳が生えてきた、にゃー」 頭に生えたネコミミを障りながら『ファントムアップリカート』須賀 義衛郎(BNE000465)は不思議な感覚に驚いていた。この異世界に来るのは初めてだが、こういう戦い方をするアザーバイドなら大歓迎である。 「なるほど。元々の耳とは入れ替わるわけですにゃ」 イヌミミがネコミミに変わった『番拳』伊呂波 壱和(BNE003773)。成程、ネコの因子を体内に召喚する形ですか、と未知の技法に得心していた。戻ろうと思えばすぐに戻れそうな弱い術。影の式を作りながら、頷いていた。 「まおは猫化大歓迎ですにゃー」 耳が大きくなりピンクのネコミミになる。それを鏡で見ながら『もっそもそそ』荒苦那・まお(BNE003202)が喜びの声をあげた。フサフサになった耳を撫でてその感触を愉しむまお。下半分を隠して表情が分かりにくいが、喜んでいるのはよくわかる。 「可愛く見えても彼らも戦士。油断していたら痛い目にあってしまうだろうにゃ」 大きさ三メートルの猫をもふもふしたい衝動を抑えながら、ベオウルフ・ハイウインド(BNE004938)は今回の相手を見やった。でもネコミミ化は受ける。髪の毛の色と同じ金色の耳が頭から生えていた。 「俺が勝ったら、存分にもふもふさせてもらうにゃー!」 『はみ出るぞ!』結城 ”Dragon” 竜一(BNE000210)は勝利を求める戦士。勝ったときの約束も忘れない。だが竜一の猫娘のミコやネコミミフードのトーカを見る目は、警察呼ぼうかと思わなくもない仲間達であった。ここ、異世界だけど。 「……うむ、これが猫属性ですかにゃー。恐ろしいですにゃー」 無表情で手を丸めた猫ポーズ。元は狸の『夜翔け鳩』犬束・うさぎ(BNE000189)が踊るように猫化を受けていた。あくまで表情は変わらないが、その動きと動作を見ればすぐに分かることがある。たのしそうだなぁ、うさぎ。 「ルゴ・アムレスの世界がアタシを呼んだ気がしたにゃああああん!」 大興奮の『三高平の悪戯姫』白雪 陽菜(BNE002652)。見渡す限りの猫だらけ。自分も猫。これが興奮せずにいられるか。許されるなら後衛職であること忘れて前に出たいぐらいである。我慢我慢。 「では皆さん、楽しく戦いましょう!」 「なー」「みゃー」「にゃおー」「ふみゃー」 まるで遊戯をするように明るく告げるトーカ。彼女に召喚された猫たちもそれぞれの鳴き声を上げて戦意を示す。それが一部ネコスキーリベリスタの心にクリティカルヒット。 かくして猫召喚士トーカと八人のネコミミリベリスタとの戦いはきって落とされたのであった。 ……誰もネコミミ化に抵抗しなかったという。 ● 「さあ、踊って、くれる……かにゃ?」 天乃が静かに呟いて前に出る。ストリートの壁などを駆使して、相手の視界を攪乱しながら相手との距離を詰めていく。黒のツインテイルを揺らして一気に距離をつめる。目指す相手は銃剣を持つリィナ。 猫の瞳が天乃を追う。その動きすら攪乱するように天乃は宙を舞う。加速、反転、フェイント。様々な足裁きの技法は五の残像を産むほどのもの。生まれた隙を縫うように天乃の拳がリィナに叩き込まれる。 「ミコさん、少しばかりお相手願えますかにゃ」 義衛郎は一礼してミコのほうに迫る。腰に差した『三徳極皇帝騎』を抜刀し、構えを取った。辻斬り、不意打ち、騙し討ち。任務優先の義衛郎だが、礼節を重んじる心がないわけではない。 ミコは格闘の間合。それを意識して刀を正眼に構える。相対したのは長く思えたが、刹那。前に飛び出すミコに対し、大上段から切りかかる義衛郎。確かな手ごたえが刀から伝わるが、その一撃で相手が倒れるほど甘くもない。 「サポートは任せてくだにゃいね」 符を手にして壱和が皆に告げる。影の式を前に向かわせ、壱和自身は戦場を見やり状況を確認する。戦況はどんな感じで、何が不足して、どんな支援が必要か。パズルのピースを埋めるように、勝利への道を補強していく。 壱和は相手の戦闘の要であるマルトに符を投げつける。魔女の魔術により様々な邪魔をしてくる存在。放置をすれば足並みを崩されると壱和は判断した。符はマルトの近くで五つに分裂し、呪縛の陣を形成してその動きを止める。 「ではまおも押さえにはいりますにゃ」 神秘で生み出したボールを投げて、衝撃で相手のバランス崩すまお。その後にリィナに迫るまお。相手の前で一礼して、戦いの構えを取る。黒く染めた細い糸。それを蜘蛛の因子で強化しながら、相手の隙をうかがう。 まおの糸がリィナに迫る。地を這う蛇のように低く飛び、相手の近くで跳ね上がる用に絡みつく。それを銃剣で払いのけようとしたリィナ。だが糸はその銃剣をつかむ手首に絡みつく。糸を引っ張り、動きを封じるまお。 「肉食獣にょダンスはちと過激ですがにぇ!」 結構自発的に猫語使ってるんじゃなかろうかと疑いのかかるうさぎ。結構ノリノリである。それは兎も角、破界器を手にしてゲンタに迫る。周りにいる猫たちとの距離と居場所を頭の中に入れ、刃の向きを変えた。 足をしっかり踏みしめて、破界器を横に薙ぐ。足の位置を変えてさらにもう一度。見方と敵の位置は把握している。刃は味方を避けて敵猫の皮膚を裂いて、戦場に血の雨を降らせた。それは一瞬の隙を逃さない暗殺者の一撃。 「でっかいにゃー! 後でモフモフするにゃ!」 竜一は眠そうな顔をするゲンタの前に立ち、二本の剣を手にする。日本刀と西洋剣。バランスも使用用途も異なる二つの武器を、しかし何の苦もなく振るう竜一。それは鍛練の結果。その二本を振るいながら気合を入れる。 弓の弦を引くように二本の剣を左右に振りかぶる。体中の筋肉を引き絞りながら、体内の魔力を剣先に集める。力を解放し、クロスを描くように剣を振るった。二剣の軌跡の交差点から衝撃波が生まれ、リィナに向かって飛ぶ。 「全てをいなす至上のモフモフ……落ち着け、今は戦闘中だにゃ」 ゲンタを見ていたベオウルフが我に帰る。仲間達の傷の具合を判断し、どう動くかを判断する。そのために戦場を注視しなければならないのだ。そのために戦場を注視し……目に入ってしまうゲンタの大きさに気が緩みそうになる。 体内のギアをいれ、反射速度を上げる。刀の柄に手をかけて、意識を集中した。風のない水面をイメージし、心を穏やかにする。抜刀、一閃、納刀。居合いの動作。それにより生まれた風が癒しの力となり、リベリスタの傷を塞いでいく。 「まさかこんな天国があるだなんて!? 夢みたいだにゃ!」 猫だらけの階層に陽菜が歓喜の声を上げる。詳細なフォルムは猫と異なるが、だからこそ可愛いというのが猫好きの意見でもある。見学している猫たちを巻き込まないように注意ながら、陽菜は破界器を構える。 剣の形をした破界器。その刀身が左右に分かれて弓となる。神秘の光を矢の形にして番え。戦場に向かって矢を飛ばす。光は弾幕となって戦場に降り注ぎ、アザーバイドたちを傷つけていく。 「皆さん凄いですね。こっちも負けていませんよ!」 トーカが喜びの声を上げて、手を振るう。召喚術により猫を呼び出し、リベリスタを追い詰めていく。 「猫、猫追いかけるにゃ!」 「モフモフが。モフモフが目に前に!」 主に精神的お預けの意味で。 ● 猫にもだえてはいるが、リベリスタの戦い方は基本にのっとったものである。厄介な相手を集中砲火で潰し、数を減らしていく。 「これで……終わり、だにゃ」 相手をその動きで幻惑し、隙を見出して打つ。天乃の舞うような闘技がリィナを吹き飛ばした。大の字になって倒れるリィナを見て、次のターゲットに目を向ける。頭の中でどの壁を蹴って移動しようかを思考する天乃。 「おおっと!? 危ないところだったにゃ」 ミコに投げられて義衛郎が距離を離してしまう。慌てて起き上がりミコの押さえに入りながら、マルトに向かい斬撃を加えた。一足で跳躍して斬りかかり、すぐに戻る。ミコを押さえるのが自分の仕事だ。 「あわわ。回復しますにゃ」 味方のダメージが増えてきたと判断し、壱和は符による回復を行う。ひらひらと舞う白い蝶となり、義衛郎の肩にとまった。わずかに発光し、体に染みるように符が消えていく。傷ついた体に活力が戻る。 「休む間もないにゃ」 ベオウルフは回復にひっきりなしである。可愛い外見だが敵の構成は責めづらく、そして火力も油断できない。回復を止めれば一気に押され始めるだろう。意外と厄介なのが、トーカだ。 「ねこしゃわー」 にゃー、と声を上げながらたくさんの猫が降って来る。時々かなりの数が。マルトが与える幸運により術の回転がよくなり、時々大量の猫が降ってくる。 「早く戦闘を終わらせるにゃ! 早くミコの猫耳尻尾ペロペロしながらマルトとリィナ抱っこして、ゲンタのお腹の上に寝そべりたいにゃーッ!?」 沢山の猫の攻撃を受けて、興奮収まらない陽菜が叫ぶ。何匹か猫を捕まえ、その抱き心地を堪能していた。だがそうもしてられない。自らの目的(ねこだき)のために、陽菜は修羅と化す。 「皆、俺を置いて先に行くにゃ!」 竜一がゲンタをブロックしながら皆を先に行かせる。具体的にはうさぎとまおと一緒にブロックし、他のリベリスタを後衛に送っていた。ゴロン、と転がるゲンタの圧し掛かりに、若干もふもふで幸せそうな顔をしていた。 「お邪魔も抑えも、まおのお仕事ですにゃ」 まおはゲンタを押さえながらマルトに攻撃を加えていた。ミコが移動しそうなら衝撃を放つボールを投げて吹き飛ばし、立ち回る。決定的な火力こそないが、相手の邪魔をするという意味で戦いに十分貢献していた。 「にゃっにゃかにゃんにゃんにゃー。にゃおーん」 とても楽しそうに。そう、本当に楽しそうにうさぎが猫ポーズを取っていた。その後に跳躍し、敵後衛に迫りマルトを傷つける。飛んだり跳ねたりしながらゲンタの前に戻ってくる。そしてさらに猫ポーズ。 壱和はベオウルフの回復もあり、リベリスタは順調に攻め続けていた。攻撃阻害とトーカに運の良さを与えていたマルトが倒れれば、あとはなし崩しだ。ダメージを蓄積して返すミコを一気に倒し、タフネスに優れるゲンタを眠らせる。 「感電してでも受け止めてみせるにゃ! うにゃー!?」 痛手らしい痛手は稲妻の猫を受け止めて、陽菜が運命を燃やしたぐらいだが……まぁなんというか、当人幸せそうである。 単独になったトーカもけして侮れる相手ではないが、流石にリベリスタ八人を相手するには役不足。 「ネコミミフード! くんかくんかしたいぐらい可愛いけど、今はトドメを刺させてもらうにゃ!」 竜一が二剣を構えてトーカに振りかぶる。子供を苛めるようで少しこことが痛むが、戦闘は当人も望んでいること。加減はできない。何よりもこの後のことを考えると、戦闘を長引かせるわけには行かない。 「勝ってもふもふだにゃ! いひゃほおおおおおおい!」 裂帛と共に繰り出される一撃。その一撃でトーカは力尽きた。 ● さて、召喚術にも色々タイプがある。 例えば持続時間。一瞬だけ召喚されるタイプもあれば、時間が来れば元の世界に戻るタイプもあり、永続的に呼べるものもある。 トーカのタイプはというと―― 「消えたにゃ!? 猫たちが皆消えちゃったにゃあ!?」 「モフモフが、モフモフが!?」 「そうか。召喚主が気を失ったから、召喚の効果が消えたんだ!」 「トーカを起こせええええ! 再召喚だにゃあああああ!」 「うにゃうにゃ。もうたべられませーん」 そんなすったもんだの末に―― ● 「もふもふー」 「ねこだいすきー」 「これが全てを受け流す至上の毛並みか……」 リベリスタたちは猫たちの毛並みを撫でながら、悦に浸っていた。 猫たちの整った毛並みは、触るたびに手にフサフサした触感を与える。なぞった毛がふわりと元に戻っていくのを見て、心が和む。撫でればなでるほど整っていく毛並み。その触感が手に残り、なんともいえぬ感動を与える。 押せば弾力を持って返してくれる肌。柔らかく、それでいて温かい肉。何度も優しく撫でれば猫のほうも信頼を寄せたのか、緊張を解いたように身を寄せてくる。 因みにネコミミはというと、 「折角猫属性ににゃったんですし、もうちょっと猫りましょうよ」 うさぎの言葉でトーカが新たに付け直す。ところで猫るってなんですか? 猫の動詞形です。そうですか。ともあれネコミミつけたリベリスタは猫を愛でていた。 「お手合わせ、ありがとうございました」 「いえいえこちらこそ。とても楽しかったです」 そんな仲間達を横目に義衛郎が一礼する。トーカも同じように一礼して返す。一度倒されて無理やり起こされて再召喚までしたのに、疲労の色が見えない。この世界のアザーバイドのタフネスの高さに義衛郎は舌を巻く。 「ところで召喚術というのはどういったものなんですか?」 「おそらく貴方の世界とは術の法則が違うのですが、概容をいうと――」 壱和はトーカの召喚術に興味を持ち、色々質問していた。陰陽術とは似て非なるもの。異世界の術ではあるが、交流して学べる部分もある。体の中に因子を召喚士、変化させる術も興味深い。 「せ、戦闘中は無理だったが今なら出来る。う、上への質問は誰かがするだろうからな!」 「ゲンタ様の上でごろんと寝たいです」 ベオウルフとまおはゲンタを一心不乱にもふっていた。大きさ三メートルの眠そうな猫は、嫌がることなく愛でられている。上で寝ても問題なさそうだ。 「リィナ! 二足歩行! かわいい! すりすり! マルト! 空飛ぶ猫! なでなで! ミコ! 猫娘! むぎゅむぎゅ! さわさわ!」 竜一は満遍なく猫を愛でていた。 「レオナ、アイネ、ペータ、リック、エリザベス、コモコモ、それにハルヒコー!」 陽菜は路地裏で寝ていた猫も愛でていた。 「んー……たまには、こういうのも、いいね……」 バトルマニアの天乃も、自分に寄り添ってくる猫を撫でながらこの時間を堪能していた。 「そういえば……最強の相手と、ミラーミス……知ってる?」 「はい。二十一階からの『四強』ですね。 ルゴ・アムレス『最大』のギエムファラソンさん。『最堅』のアリティアさん。『最速』のコールエスカさん。そして『最強』のリューザキさん」 たいした答えは返ってこないと思っていた天乃は、トーカの言葉に耳を傾ける。猫は愛でたままだが。 「そしてミラーミス『アム』は世界を構成している存在です。この塔を初め、このルゴ・アムレスそのものを生み出した存在です。 彼女自身には何の戦闘力はありませんが、様々な世界にDホールを繋げる能力に長けていて――」 「……待って」 天乃はミラーミスの説明をするトーカを遮った。気になる単語が含まれていたからだ。思わず他のリベリスタも動きを止める。 「……ミラーミスに、戦闘力が、ない……?」 それはラトニャやR-TYPEの脅威を知っているリベリスタからすれば、信じられない一言だった。ましてやここは戦いに明け暮れる修羅の集う世界。なのに。 「はい。彼女は『最弱』と自分を称しています。戦えぬ自身を指して」 トーカの言葉に澱みがない。嘘をいっているようには思えない。 どういうことだろう。首をひねるが答えはでそうになかった。 そして別れの時が来る。この世界に開くDホールが閉じる時は迫っていた。 「時間は非情で別れの時はやってくるもの……仕方ないよね。さよなら、皆!」 陽菜は猫たちを抱いてリベリスタに手を振っていた。ここで判れてもみんなのことは忘れない。私はここで猫とモフモフするの―― 「帰るぞー」 流石にそういうわけにもいかず、陽菜を拘束するリベリスタ。 「……やだっ! アタシここに残る! はーなーしーてー!」 陽菜は涙を流せない。だからその顔の下にどのような感情が渦巻いているのかは……まぁ、一目瞭然だった。 ルゴ・アムレスの空気を吸い込み、戦士たちはDホールを通り元の世界に帰る。 黒塔頂上まで、あと少し――だにゃ。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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