● 「かぼ……ちゃ?」 「そ、カボチャ」 呆然とした顔で呟く『まやかし占い』揚羽 菫(nBNE000243)の前で、『深謀浅慮』梅子・エインズワース(nBNE000013)は動かす手を休めない。 「包丁、のこぎり、その他諸々。トンカチまであるのは一体何に使うんだ……?」 「こう使うのだわ。底の部分を……っと」 釘を手に呻く菫からその釘を取り返すとはずしたカボチャの底の皮に通し、突き出た釘に蝋燭を刺す。 蝋燭を刺した皮をカボチャにはめ直すと、中を覗き蝋燭にそっと火をつける。 そこまでされたら、日常全般に疎い菫とてそれが何かは理解できる。 ――ジャック・オ・ランタン。 この季節の定番モノ。梅子が作っているのはどうも、その辺のもの……っぽい、の、だが。 「梅之介。おまえ、そんなに不器用だったか?」 「う、うるさいのだわ! いいのよこれは、自分用のだから!」 シミがみっつあれば人の顔に見える、とはいうものの、そのカボチャにくりぬかれた穴の形を『人の顔』としょうするのは菫でなくとも抵抗があっただろう。どうも途中でムキになったか癇癪を起こしたか、穴は大きく、人というより一つ目小僧とかお茶碗で風呂に入る目玉のパパとか、そのあたりに見える。 「毎年恒例なわけだけど、みんな、ハロウィンには仮装してうろつきまわるでしょ? だったらこうやって、自作したのを持って回ったら楽しいんじゃないかって思ったのだわ。 くり抜くまではこっちでやっておけば、あとの顔を作るくらいならすぐできそうだし。 かぼちゃの中身はあったかいスープにすれば、一石二鳥! そんなあたしのおもいやり!」 「思いつき、の間違いだろ」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:ももんが | ||||
■難易度:VERY EASY | ■ イベントシナリオ | |||
■参加人数制限: なし | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2014年11月17日(月)22:45 |
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■メイン参加者 21人■ | |||||
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● 一番大きなカボチャに三日月形の、目や口の線を書いた紙を貼り付けて、不動峰 杏樹はふむ、と呟く。ちょっとゆがんでそうな気もするが、それも手作りの醍醐味だろう。 「ランタンを作るなら、笑っていたほうが見てる方も楽しそうだな。 笑い声が聞こえてきそうなそんなランタン。ハッピーハロウィン、なんて」 「たまにはこうして、のんびりとしたところで一緒に作業もいいものです」 シィン・アーパーウィルは杏樹の貼った紙の上下をひっくり返した。きょとん、と目を丸くした杏樹に、シィンはにぃと笑ってみせる。 「皆が笑っていられるよう、その分カボチャには泣き顔になってもらいましょう」 「ひねくれてるのだわ……」 「知ってますよ」 他の人のを興味津々で見て回っていた梅子があげた呻き声に、シィンがしれっと返す。 ――結局のところ、カボチャはウラとオモテでそれぞれ別の顔にするということになった。 「杏樹さんと今まで同じ場に立つ時は大体戦場だったのでねぇ」 「そうだったかな……こうやって一緒に作るのも楽しいな。 料理ならまだしも、こうやって物を作る機会は少ないし」 笑顔の側を杏樹が、泣き顔の側をシィンが。それぞれにとりかかり、カボチャを削っていく。 「うん……ちょっと穴を大きく開けすぎたかな」 杏樹が、開けた穴を覗き込みながら思案する。反対側にも穴が空き、そこからシィンが覗き込むのが見えた。同じ三日月が形作る、正反対の表情の穴。シィンの悪戯そうな笑みは――もしやタイミングを図っていたのだろうか。杏樹はにっこりと笑い返した。 「顔もくりぬいて作るんだよね? かわいいのできるといいな~!」 「ランタンかあ……俺でも出来るもんかね? 張り切っていくとするか!」 意気込み高く羽柴 壱也は己を鼓舞し、葛木 猛もそれに続いて気合を入れる。こんこんと、何度か軽く叩いたり角度を変えてみたりしてよさ気な場所を探し、納得する場所を見つけてひとつ頷くと、壱也はくり抜くところから始めようとして――少し首を傾げると、猛に声をかけた。 「猛くんここ持って、しっかり」 「はいはい、持っとかないとズレちまうからな」 「かぼちゃって、結構硬いんだよね~。……120%でたたいたら中身柔らかくなるかな~?」 「……流石に砕けるんじゃないか? あと、失敗したら俺も痛いからな……」 「だ、だめかー……地道にくりぬいていくぞー、がんばろっ」 とすっ、とナイフを底につきたて、切り取ろうとして、壱也は手にぐっと力をこめる。 「んぎぎー硬いっ! ……う、うそじゃないし! 女子だから硬いとか言わせて!」 「いっちー……あれだぜ。別にそこまで深読みしないから、硬いなら硬いって言っとけば良いんだぜ……」 どーいうわけかちょっぴり遠い目をした猛の目に、水滴が浮かんでいるような気がしないでもなかったが、壱也(フィジカル50)はそれを見なかったことにした。 ともかくも、猛もまた自分の分のカボチャをくり抜くと、顔を作り始める。なんだかんだで、くり抜くことさえ終わってしまえばあとはそう手間がない。マジックで下書きした線に沿って皮を切ると、結構きちんとしたジャック・オ・ランタンが完成した。 「なかなかお互いに良い感じに出来てるんじゃないか?」 「うん、いい顔! 初めてにしては中々いいできだよね! ――猛くん結構器用だね」 「俺も男だし、結構こういう工作とかは好きだったんだよね」 かといっていい物作れた記憶はないけどさ、と言葉の後半を口の中で続けて、猛は朗らかに笑った。 「カボチャランタン。要するに、飾り切りというやつだ。 あるいは、木彫りの熊さんと一緒と思えばいい。――だが、それだけじゃ、プロフェッサーと呼ばれた俺としては、納得いかない」 包帯を巻いた右手を顔の前に翳し、結城 "Dragon" 竜一は苦悩を形作る。竜一はそのままくるりとターンするようにユーヌ・プロメースに向き直ると、両手を広げて宣言した。 「さあ、ユーヌたん! 一緒にランタン世界の芸術を切り開こう! 共同作業!」 「竜一と共同作業か。さてはてどんなものが出来るかな――芸術とは程遠いものが出来そうだが」 一方のユーヌは竜一のテンションには慣れたものだ。 「少々悩むな、どうするか……仏教に曼荼羅というものがあるそうだが、あやかるか」 そう言って作り始めたユーヌのカボチャの、目と口をくりぬいた無表情な女性的な顔――までは普通に見えたが、ユーヌは更にその表面にカボチャの形を作り顔を掘り、更にそのカボチャの顔の表面に(略)。 「ふむ、お経もついでに彫り込んだ方が良かったか。 曼荼羅は宇宙を表すそうだが、差し詰め南瓜宇宙だな」 テクニック94が火を噴いた。 「そしてそれを!」 どーん! 叫ぶやいなや唐突に、竜一が曼荼羅カボチャを縦に真っ二つに分けた。 ちなみに竜一自身のカボチャはというと、目はつり上がり、口はギザギザ。その上から白塗りという、『ファンキーでロック』なシロモノだった。ユーヌとしてはロック好きな竜一らしさのよく現れたデザインだと感じたが――それもやっぱり縦に割られていた。 2つに割ったふたつのカボチャ。竜一はそれぞれを、別のカボチャの半分とくっつける。 「完成。――題して、男と女のシーソーゲーム」 「ふむ、2つ合わせると中々前衛的だな。2つ揃わないとまともに成り立たない」 あしゅら○爵のような風情があって面白い、と。ユーヌはどこか満足気に呟いた。 御厨・夏栖斗が新城・拓真に話を振ったのは本当に、ただの雑談のつもりだったのだ。 「かっこいいランタン作って一番目立つところに飾ろうぜ! 拓真こういうの得意?」 「割とな。元々刀剣類を扱うのは苦手ではないし、好きだぞ」 返答は淀みなく。だが、拓真は少しだけ間を開けてから言葉を続けた。 「そういえば、最近紫月と同棲しているという噂を聞いたんだが」 ブーーッ!? 物凄い勢いで噴いた夏栖斗の手元でナイフが滑る。 「ちっげーよ! そりゃ、結構遊びに行ってるけど! っていうかお前たまに突拍子もないな! びびるわ!」 「これまでの経験からして有り得んとは思っていたんだが」 許せ、と。拓真は手を止めぬままに返し、更に続ける。 「俺も夏栖斗も似た者だ。踏み込めん理由も解るし、兎や角いう気は無いさ。 もし……そういう事なら、素直に祝福をしたい、と思っただけだ。数少ない友人の一人なのだから」 「踏み込むとか、そういうのじゃないとか、まあ、うん」 ぐりぐりと。カボチャを削りながらいくらか苦い顔で夏栖斗は言葉を選ぶ。 彼女を、そういう対象として意識してないかといえば、嘘になる――だけど。 「……なんつうか、そう見えるのかな?」 あれから一年強の時間が過ぎた。『彼女』はもういないと吹っ切れている。 だけど。 今、その気持ちを形にするのは――不誠実に思えて、判らないのだ。 「傍目から見れば男女が一緒にいるだけで煙を立てたくなるものだ、人のそういった話は話の種になりやすい。 まあ……多少なりとも考え込むなら可能性はあると見ていいか」 それでも拓真はそう呟いた。可能性だけは、見据えておかないと――その時にはきっと、拓真自身もまったく無関係ではいられないのだから。 「フフフ……この私にランタン作り勝負を挑もうとは、無謀なお嬢さんたちだ。 私の美麗なる芸術的作品に酔いしれさせてみせよう!」 古典的な吸血紳士の格好で、サテンのマントをばさあっと翻す楠神 風斗。風斗ラキュラ言うところの挑戦者であるリリ・シュヴァイヤーが宣言する。 「誰が1番凄いランタンを作れるか、で決着を付けましょう……誰が1番大人なのか!」 「大人な勝負と聞いて参上っ。ふふふ、きりっとしたおねーさんなのです>< あ、でも楠神おにーさんは良いおにーさんで、シュスカさんもリリおねーさんもいい人なのです。 むむむ、でも負けないもんっ、えいえいおーっ!」 拳を振り上げ、( >∀<)o彡°な感じでシーヴ・ビルトが挑戦者その2。……お嬢さん? いや、いいんだ、フュリエだから。それでいいんだ。せかいへいわばんざい。 挑戦者その3、に数えられてしまっているシュスタイナ・ショーゼットは僅かにため息を吐いた。 「……はぁ。いい年した大人がこぞって「誰が大人かを決める」というこの矛盾。 気付いてる私がある意味一番精神的に成熟してると思わない?」 とか言いつつしっかり勝負は受けて立ってるあたり、それでも子供ということらしい。そういえば、そのシュスタイナの格好はシスター風のものである。それもいわゆるシスターでなく、『リリ・シュヴァイヤー風』。 「清楚でしょ?(清楚よね?←)」 「修道服、とてもお似合いです。今度教会にも来て下さい」 うん、せいそ()ですね。 「南瓜さんはどんな姿になりたいの? ふむふむ、んー、なんか強いの?」 おおっとー!? シーヴ・ビルト選手、万象疎通にてカボチャとの交流を始めたー! カボチャ生前(?)の、『もっと大きく育ちたかった』という思考に、眼を閉じて何か思い出すように考えこんでいるっ! 「あ、じゃあこんなのでどうかな? 此処をこうして、でろーんとした感じで、ちょっと不思議な色合いでっ――できたっ! ふふふ、完璧なのです><」 完成したランタンのモチーフは、どうやら世界樹エクスィス(暴走風)。 …………。 次イッテミヨー。 「工作ってほとんど経験ないけど、まあなんとかなるだろう! やる気と、気合!」 風斗、ひとを挑戦者呼びしといてこのオチ。カボチャに向き直り、黒マジックをきゅーっと走らせる。頭のなかに思い浮かべる完成目標、牙の生えたドラキュランタン! しかし、ぐにり。三次元なカボチャの肌は意外と手強い。 「くそ、ちょっとイメージと違う……こっちをこうして……あ、ずれた……ああもう、くそっ……」 ぐに。ぐにり。ぐに。ぐに。 どうした楠神風斗! 大口叩いてそんなことではまたナイスアシストとか言われるぞ! 「う……う…………うがあああああ!!!!」 ←キレた。 リリのカボチャは――なんということでしょう。 びっしりと施されたカボチャ一面のデコレーションは、ネイルアートにもよく使われる小さなラインストーン。色や大小も様々なそれらが、在る一定の法則に従って敷き詰められています。匠はその上から、さらに絵筆を手に取り魔法陣らしき何かをペイントし始め――最終的に呪術と恐怖神話とギャルを足して割りっぱなしのランタンは、どういうわけか蝋燭の上で黒い炎が揺れているのだが、リリは誇らしげに胸を張る。 「ええ、我ながら素晴らしい出来です」 「皆……なんでそんなにおどろおどろしいの? 何かあったの……?」 シンプルだけど綺麗にくりぬかれた目鼻口、飾り付けられた薔薇。シュスタイナのカボチャは小ぶりだが、一番見た目にちゃんとランタンしていた。 風斗のは割れた。 ● 富永・喜平は、メカ人間のコスプレと言い張っている――実質、地を出しただけにも見えるが。 「――まぁこういう時はこの身体も便利だよね」 革醒はただの一市民だった喜平の生を変えた。だけど、良いことだってきっとあったのだ。例えばそう、モーテルのフロントで居眠りしていた店番に出会ったこととか。 ほら、その店番が来た。時間は待ち合わせちょうどだ。 「トリックオ……おい、何だあれ?」 手を上げて、プレインフェザー・オッフェンバッハ・ベルジュラックに声をかけ――ぎょっとした顔で彼女の後方に目を向けた。 「えっ――うわあ!」 振り向いたプレインフェザーのうなじから覗きこむような角度で、服の中に制汗スプレーをぷしゅーっ。 「正に悪魔の所業、自分が怖いぜよ……」 「くっ……ッ、こほん」 ツッコミを入れる前に、今がまさに機会だと思い直して。プレインフェザーはぎゅうっと喜平にしがみついた。喜平の背中の生地をぎゅっと握りしめて、その胸元に頬をすり寄せるように見上げる笑顔は、可愛らしい女の子のソレ――有り体に言って、普段と正反対。 「あたしね、喜平のコト……だぁいすき。だから、もっときゅんきゅんさせて?」 言っておいて、すぐしがみついた手を離し――正気に返った顔を赤く染まったのを手で隠した。 「……ゴメン、忘れて。自分でやっといてすっげえ恥ずかしくなってきた……! 驚かせる為とはいえ なんでこんなアホな事したんだろ……って、えっと。喜平?」 今にも距離をとってしゃがみ込みそうな様子のプレインフェザーだが、喜平との距離が離れない。 しがみついた時のまま、喜平の手が彼女の腰を抱いているから。 「こんなに愛おしいお嬢様の悪戯を、如何して味わわずに居られるか。ハッピーハロウィン」 そう微笑まれて、プレインフェザーの鼓動が早くなる。もう一度胸に顔をうずめて、呟いた。 「……大好きなのは、本当だぜ?」 ● 「どうせ作るなら、しっかりじっくり本格的なものを作りたいよね」 どうして男に凝り性が多いのか。新田・快の言にはその答えが含まれているようにも思える。 十分すぎるほどあるカボチャを玉ねぎとともに炒める。 「これを、フォン・ド・ボライユでボイル。極々弱火がポイントかな」 洋風鶏がらスープ、のことらしい。横に置かれたは裏ごし器。 「流行りのレシピは裏ごし不要を売りにしていたりするけれど、裏ごしをするかしないかで、食感と舌触りが全然違うからね。その後は生クリームを加えて、極々弱火で加熱。塩味はここで調整。絶対に沸騰させないのが重要。最後にバターを馴染ませて完成だ」 じゅもんだ。これはきっとじゅもんかなにかだ。 何やらガチっぽい快とは別方向に、これはこれでじっと警戒した様子を見せる犬束・うさぎがいる。うさぎが見ている鍋からは煮物の匂いがする。 「多分ですけど、鍋になんかする人それなりにいると思うんですよ」 でも快の鍋には警戒しない。そんな『殺意の波動に目覚めた新田』とか生み出すような行動をしでかす輩がいるとは思いにくいからだ。ただ問題は。 「アイドルは常に一人――ワタシは明奈ではない。茄子の妖精……秋茄子だ!」 煮物鍋には、すでにやりやがった茄子(ヤツ)がいたことだ。 茄子のきぐるみこと白石 明奈である。 「あっ今引いたでしょ。分かるわーワタシだってそう思うわー。 でもね、思い付いたのがこれだけだったんだ……いずれやらなきゃいけないと思ったんや……。 ということで茄子の妖精としてトリックをしていきたいと!」 ちょっと時間を戻してみよう。 ==回想== 『旬の茄子を! ガンガンブチ込んで行きたい! 煮て良し! 焼いて良し! 揚げて良し! 茄子美味しいよ茄子! でもカボチャスープに茄子を入れるのは……和風の煮物ならアリかな…… ち、違う! 常識的な思考を求めてはいない! 今ワタシは茄子と一体化し茄子の意志を遂行するのだ!」 そして茄子を新田スープに投入せんとしたその瞬間、彼女の耳に囁くものがあった。 ああ、なんということだ、それは大宇宙の茄子の意志! (※空耳) 曰く。――美味しく食べてもらおうよ―― 「あ、そうっすね。はい。」 数分後。割烹着姿で、完璧手伝いに来ただけに見える鈍石 夕奈はしかし、悪戯を試みていたわけだ。 「鰹節を彫刻して無駄に細緻に作ったこのフェイク虫! これを鍋にこっそり入れるっす。 出て来たとたんビクッ! ってするやろけど、その頃には水吸ってヘタレとるやろし。丁度いい塩梅程度でニセモノやって気付くやろ……さー気づかれん様に今のうちに」 かぱり、と開けた鍋に大量に存在する紫色。茄子。 「……わ、わあ。和風やし鰹節と相性ええわあ……や、なくてや!」 はっとして見回せば、後ろで親指立ててる秋茄子。 「し、白石センパイ……全身タイツ仮装て……しかも名前弄り由来のウケ狙い……」 説明してやるなよ可哀想だろ!(追い打ち) 「あ、あかん……もう完全にアイドル末期通り越してもうて……あっ、いや何でもないっす。何でも無いっすよ!? ……なんでも……」 涙が光るのを気づかれないよう、そっと拭うのが夕奈の精一杯だった。 ==回想終了== 「あのアイドル()とか茄子入れるって宣言してたし」 うさぎが鍋のフタを開けると、大量の茄子がカボチャとともにいい感じに煮込まれていた。 「……(察し)。 故に味の調節をするのですよ。調味料のさしすせそ! 後なんかスパイス! その他諸々!! そして調整実験用の小皿です。鍋本体でぶっつけ調整出来るほどの腕前では無い」 小皿とお玉持って、ちょっと味見をするうさぎ。 「んー、塩足すかなあ。でも健康の為にはこのままでも……」 もう一口味を見ようとひとすくいして。 「……〇覇入れるか! いや駄目だ別物になる……」 もう一口味を見ようとひとすくいして―― 「……ナンデスカコレハ……!?」 ぷっかぁと浮かぶ、動物界節足動物門多足亜門的シルエットのかつお節。 細い部分(主に脚)だけ煮汁を吸ったそれは、大変きもかったという。 「マダオ夫妻と共にスープを作るとです。 普通に作ってもきっと美味しくなりますが、ここは一手間かけてかぼちゃのポタージュを作るです!」 ふんす! とエプロンの紐を結――ぼうとしてうまくできていないエリエリ・L・裁谷の紐を、くすくす笑いながら草臥 木蓮が結んでやる。 「2人にはハロウィン仕様のモル柄エプロンをプレゼントするな」 「そ、その様な柄のものなど着られるか……!」 はい、と。 エリエリのと同じ柄のエプロンを差し出された雑賀 龍治が尻尾を(比喩でなく)巻き掛けて後退る。 「逃げずに付けなきゃだめだってー! 龍治には南瓜の裏ごしをお願いし、」 「――大体、作り方など知らんぞ」 龍治@モルエプが些かムスッとしながら裏ごしってなんだ、と口にしたのを見て、木蓮とエリエリは二三度まばたきをしてから目を合わせた。 「え、えっと、じゃあそれは俺様がするから南瓜を切ってレンジでチンしてくれ。レンジの使い方はなー……」 木蓮とエリエリの頭のなかに浮かんだ事態を知りたかったら、『レンジ 失敗』で画像検索したらいいっておばあちゃんが言ってた。 「私はお鍋で味付けを担当するです! 塩コショウ! コンソメ! あと秘密の邪悪な香辛料(アドリブ)!」 「裁谷に火元を任せて大丈夫なのか……? おい、分量は計ったのだろうな」 エリエリの勢い良い投入に落ち着かない龍治、その様子を見て笑う木蓮。まるで親子の風景のようだ。 「なあ聞いたか、なっ!」 しまった なれーしょんがばれたー。 木蓮が尻尾をぴこぴこと振って他の二人に振る。 「喜ばしい事なのか?」 龍治はそれを不思議そうな顔で見てつぶやいたが、、エリエリは(´・ω・`)な顔になっていた。 「エリエリ、そんな小さく見えますか……そうですか……」 ※木蓮20歳、エリエリ14歳。 「エ、エリエリはちゃんとレディだぜ、うむ!」 「も、もうちょっと育つ予定なんですよ。もくもくれーんくらいに、にょきっとしてばいーんって」 「俺様くらいになるには……そうだな、まずは美味いスープを作ってたらふく食おうか!」 木蓮は、さあさあ、と出来上がったスープを皿に盛り付ける。 さっきから少し考え込んでいた様子の龍治は、木蓮の耳元に小声で問うた。 「……そうなりたいのか?」 「そ、そうなりたいに決まってるだろ」 木蓮の返事は、もごもごとしてはいたがはっきりとしたもので。 「……うん、悪くない味です。いえ、悪い味です。邪悪なスープです。」 ――エリエリのスープはちょっとしょっぱい気がしたが、木蓮と龍治のスープはだいぶ甘かったようだ。 <了> |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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