● 氷上に舞う魔弾の射手 閉鎖された遊園地の中央、小さなドーム状の建物があった。看板はすでに風化し、外観からではどういったアトラクションを内容した施設だったのか、判断は付かない。 けれど、一歩中に足を踏み入れてみれば、そこがかつてはスケートリンクであったことが一目瞭然となる。氷は愚か、水すら張られていない渇いた擂鉢状のコートがある。かつては、そこに氷を張ってスケートリンクとしていたのだろう。今は、汚泥と埃が溜まっている。 既に利用者がいなくなって久しいのだろう。施設の荒廃具合からもそれが見て取れる。そうでなくとも、こんなボロボロのスケートリンクを使用しようと考えるものなど、どこにもいない。 いるとすればそれは、彼女のように、偶然この世界に迷い込んだ異界からの来訪者程度のものだろう。 気付いたら彼女は、この世界に流れ着いていた。昔のことは不思議と何も覚えていない。頭が痛い。体に染み付いた血の臭いは濃く、とれそうにない。自分の感情が鈍くなっているのが分かる。 4本ある腕には、それぞれ種類の違う銃が握られていた。覚えていないが、自分はこれを扱える。この武器で、他者の命を奪えるのだと理解した。 顔の正面にある2つの眼の他に、後頭部や首の後ろ、肩や背にも目があるようだ。その目でもって、彼女はほぼ360度の視界を見渡せる。 長い銀髪には、鉄錆の臭いが染み着いていた。誰かの返り血か、或いは自分の流した血だろう。 ボロ切れ同然の衣服には、油や土がこびり付いている。まるで、戦場から帰ってきたみたいな格好だ。だが、それにしては妙に凪いだ気分だと、彼女は自分の感情を判断する。 ふと、彼女は視線をあげた。天井の一部が割れて、曇り空が見える。 それを見て、彼女は思い出した。空から降りしきる雪と呼ばれる冷たい粉と、氷と呼ばれる冷たい個体。氷の張ったリングの上を、自由自在に滑って遊んだ、遠い日のこと。 もう一度、遊びたいと、そう思う。 いつの間にか、彼女は氷のリングの上に立っていた。降りしきる氷の結晶がリングに積もって、スケートリングとなったのだ。止むことのない氷の結晶を降らせているのは彼女だ。彼女はそれを自覚していないが、氷の結晶を降らせるのが彼女の持つ、能力である。 するりするり、と彼女は滑る。氷の上を、踊るように。 だけど何か、大切なことを忘れている。 何か大切なものを失ってしまった。そんな気分だった。 ● トラウマは氷の奥底へ 「廃墟と化した遊園地の、スケートリングに彼女はいるわ。アザーバイド(スノウリー)というのが彼女の名前。リングに氷を張って、更に氷結晶を降らせ続けている」 スノウリーの体には、無数の目玉と、4本の腕が生えている。それ以外、普通の女性と相違ない程度の体格をしていた。感情の色が浮かばない瞳が、異質といえば異質だろうか。モニターに映った彼女を見ながら『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)はそう思う。 スノウリー記憶を失っているらしく、ひどく無口だった。体が覚えた殺人の術と、何かに襲われる恐怖だけは覚えているらしく、臆病な性格をしている。 「彼女の降らせる氷結晶が厄介。こちらの移動や攻撃を、スリップさせるわ」 足元は滑りやすく、また飛行状態でも降ってくる結晶に触れれば幾分進路がずれる、ということだ。攻撃に関してもそれは適用されるらしく、特に遠距離攻撃など何度も結晶に触れるうちに、どこか明後日の方向へ攻撃が飛んでいくだろう。その攻撃が、仲間に当たらないとも限らない。 「スノウリーの動きや、スリップの角度など、じっと観察していれば法則性が見いだせるかもしれないね。それだけの余裕があれば、だけど」 さほど広くないスケートリングでの戦いの最中、じっくりと相手の動きを観察する暇など確保できるだろうか。 「また、スノウリーの4本の腕にはそれぞれ違う銃が握られている。それぞれ[業火][氷結][雷陣][石化]の追加効果を持つ弾丸が込められているわ」 ほぼ360度ある視界と、4つの腕、感情は鈍くまるで機械のようである。 どうやら彼女は、スケートリングを自分のナワバリと決めたようだ。そのままどこかに移動するというつもりもないようだが、世界の崩壊に関わってくるので放置はできない。 彼女の存在が、誰からも気付かれていないうちに、送還するなり処分するなりしてしまうこと。それが今回の任務の内容だ。 「それじゃあ、行ってらっしゃい。せっかくの遊園地だけど、遊んでいる余裕はなさそうね。Dホールも開きっぱなしみたいだし」 スノウリー以外にも、異世界からの来訪者がやってこないとも限らない。迅速な対応が必要となるだろう。 頑張って、と。 そういってイヴは、仲間達を廃墟の遊園地へと送り出した。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:病み月 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2014年11月17日(月)22:48 |
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■メイン参加者 6人■ | |||||
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●氷降りしきる世界 廃墟と化した遊園地の中心、屋根の壊れたスケートリンクに降り注ぐ雪。氷上を、滑るように舞い踊る少女が1人。ボロボロの、血に塗れた服に傷だらけの4本の腕。その腕それぞれに銃を持ち、触れるもの全ての位置をズらす氷の欠片を降らせている。 虚ろな眼差し。体の各所に眼球が付いている。ぎょろぎょろとあちこちを見回す不気味な眼球が、一斉にスケートリンクの入口を向いた。 リンクの入口には、6つの人影。アーク所属のリベリスタ達だ。 一瞬、少女(スノウリー)は怯えるようにその身をすくませた。よく見れば、腕や脚がぶるぶると、僅かだが震えているのが分かる。 しかしすぐに、4本の腕に持った銃をリベリスタ達へと向け、そのまま即座にノーモーションで引き金を引いた。火薬の爆ぜる音。飛び散る火花。空気を震わせ、宙を疾駆する弾丸。 降りしきる氷の破片に触れる度、弾丸はカクカクと進路をズらし、その度に速度を上げていく。 弾丸の軌道を、目で追うことが難しくなったその直後。 「う……っぁ!?」 進路をズらし続けた結果、真上から地面目がけ降り注いだ4発の弾丸が雪白 桐(BNE000185)の腹や肩を撃ち抜いた。 ●スノウリーの弾丸 「襲われ逃げた旅の先、遊んではしゃいで楽しげだな」 スノウリーの弾丸と、擦れ違うようにして『普通の少女』ユーヌ・プロメース(BNE001086)が飛び出した。懐から取り出した式符を放ち、影人を召喚する。呼び出された影人とユーヌは、降りしきる氷の破片に手を触れながら進んで行く。 破片に触れる度に進路がズレて、まっすぐ進んでいる筈なのに、スノウリーからは逸れて行く。 二度ほど触れれば、破片は砕けて散っていく。もっとも、後から後から氷は降ってくるのでいくら破壊してもキリがない。 「それにしても、この季節に氷の結晶は……。ただでさえ寒くなってきているのに、風邪を引いちゃいそうですよう、やーん」 後衛から、様子を窺う『モ女メガネ』イスタルテ・セイジ(BNE002937)が寒さに身を震わせながらそう言った。降ってくる氷の結晶の位置を覚えようと試みるが、数が多すぎる。遠距離からの攻撃を仕掛けようと両腕を伸ばす。しかしその直後、スノウリーの放った弾丸が、真横からイスタルテを襲う。 弾丸がイスタルテに命中する直前『侠気の盾』祭 義弘(BNE000763)のメイスが突き出され、スノウリーの弾丸を弾き飛ばした。 「……こういう戦い方をするからには、本来ならば俺が仲間の盾となり戦わなければならないはずだ」 その為には、先ずはスノウリーまでのルートを確保せねばならない。 その為に、ユーヌを先頭とし『K2』小雪・綺沙羅(BNE003284)も前へ。影人を召喚し、自身は氷の結晶を回避するように氷上を滑っていく。 「大人しく帰ってくれるなら追わないし、攻撃もしないけど……」 綺沙羅の放った式符が、空中で一羽の鴉に変わる。まっすぐ鴉は、スノウリーへと襲い掛かるが間にある無数の結晶にぶつかり、結局は明後日の方向へと飛んで行くことに。何度も軌道をずらされた鴉は、前を進んでいた『アーク刺客人”悪名狩り”』柳生・麗香(BNE004588)の頭上へと襲い掛かる。鴉を剣で弾き退けた麗香は、僅かに崩れたバランスを整え、溜め息を零した。 「スケートはやったことない人には立つのも難儀ですね。彼女はこんなつるつるしたフィールドでも平気なんでしょうか」 氷の上で、くるくると踊るように回転しながら4本の腕で銃を扱うスノウリー。その狙いは、正確だった。触れたものの射線をズらす氷の結晶を自在に扱い、視覚外からリベリスタ達を攻撃する。 前線に飛び出したユーヌと綺沙羅の呼び出した影人は、次々と弾丸に射抜かれ姿を消していく。その後に続く麗香も、視覚の外から襲い来る弾丸を弾くのに精一杯で、中々前に進めない。 仲間が切り開いた進路を突き抜け、スノウリーを押さえる手筈になっている義弘ではあるが、肝心の進路が開かないのではこうして後衛で待機しておくことしかできず、待機するにしたって時折飛んでくる弾丸や、結晶にズらされた仲間の攻撃を弾くのに忙しい。 このままでは、いつかスノウリーに押し負けるのではないか。 イスタルテがそう考え始めた頃、僅かにだが状況が動く。 スノウリーと、スケートリンク入口の中間地点辺りを進んでいた桐の胴を、背後からスノウリーの弾丸が撃ち抜いたのだ。一瞬で桐の身体を火炎が包む。特殊効果を備えたスノウリーの弾丸を受け、桐はその場に膝をつく。 「治療しますっ」 翼を広げ、イスタルテが宙に舞う。しかし、そんなイスタルテを2発の弾丸が襲った。 1発は、結晶に反射し頭上から。 もう1発は、リンクに跳ねて真下から。 同時に二方向。上下からの挟み打ち。表情を凍りつかせるイスタルテの背を、義弘の広い掌が押した。 ドン、と衝撃が突き抜ける。 氷上に、顔面から突っ込んだイスタルテに代わって義弘がその身に弾丸を浴びた。飛び散る鮮血が、降り注ぐ氷結晶を赤く濡らす。 「まずは結晶を破壊しなければいけない。……俺はその面ではあまり役にたたなそうだからな」 口の端から血を流し、義弘はそう言って笑って見せた。 くるりくるりと回転しながら、全身の眼球でリベリスタ達と、結晶の位置を捉えるスノウリー。一定の間隔を開けて放たれる弾丸が、次々とリベリスタ達を襲う。上下左右、視覚の外からの攻撃に防戦を強いられる。スノウリーは、氷結晶のズれを自在に使いこなすようだが、リベリスタ側はそうもいかない。 そんな中、弾丸をその身に浴びながらもドームの天井ギリギリまで舞い上がる影が1つ。 金色の髪を風に踊らせるイスタルテであった。 「メガネビーム……じゃないのですよう」 魔力を含んだ突風が吹き荒れる。氷の結晶や弾丸を巻き込み、イスタルテの放った魔風はほんの一瞬だけ、スノウリーの攻撃の手を止めることに成功した。 ただの一瞬。 風に視界を遮られ、スノウリーは銃の引き金を引くのをためらったのだ。万が一誤射してしまえば、自分の弾丸を自分で受ける結果になりかねない。その危険を回避するためだろう。 その一瞬。 その一瞬の隙を逃さず、数体の影人とリベリスタは一気にスノウリーとの距離を詰めた。 氷結晶を打ち砕き、2体の影人がスノウリーに迫る。 全身に付いた無数の目が、ギョロリと影人を捉えた。4本の腕を影人に向け、銃の引き金を引く。火薬の爆ぜる音。数発の弾丸が、影人を撃ち抜く。 影人の姿は掻き消え、破れた式符が宙を舞った。 だが、その背後。 「アトラクションとしては面白い。子供がはしゃいで喜びそうだ。生憎と、今日は定員オーバーで遊べるほどにも無いようだが」 片手に無数の式符を束ね、ユーヌは笑う。式符は次第に、無数の鴉へと姿を変えて行くが、それよりも速く、スノウリーの弾丸がユーヌの手首を撃ち抜いた。 式符を取り落とし、ユーヌは苦痛に顔をしかめる。 ユーヌの術が発動するよりも速くに、スノウリーはその場から離脱すべく氷を蹴って滑るように後退。その場に倒れ込んだユーヌの頭上を飛び超え、綺沙羅が弾丸の如き速度でスノウリーを追う。 「大人しく帰ってくれるなら追わないし、攻撃もしないけど?」 式符を鴉に替え、解き放つ。まっすぐにスノウリーへと襲い掛かる鴉だが、降って来た氷結晶に触れ、進路が逸れた。氷床に深い傷を付け、鴉は元の式符に戻った。 パン、と弾ける火薬の音。 放たれた弾丸が、綺沙羅の肩を撃ち抜いた。飛び散る鮮血が、氷の床を赤く濡らす。 「氷上での滑りを披露しあうような平和的な解決とはいかないようですね。ボトムに不法滞在は強制退去です」 姿勢を低く、スノウリーの懐に滑り込んだのは麗香であった。真下から真上へ、剣を一閃。降り注ぐ氷結晶を剣圧で吹き飛ばしながら、渾身の一撃を叩きこんだ。 床に罅が入るほどの衝撃。胸から胴にかけてを袈裟がけに切り裂かれ、血飛沫を上げながらスノウリーの身体は、遥か後方へと弾き飛んだ。 スノウリーが姿勢を立て直すよりも速く。 「う、おぉぉぉぉぉ!!」 雄叫びをあげる義弘が、その身を地面に押し倒した。 鳴り響く銃声。義弘の身体が大きく震える。鮮血が飛び散り、赤い雨を降らせた。 見れば、義弘の身体は雷に打たれたように痙攣している。恐らく、雷の特性を帯びた特殊弾丸による射撃攻撃を受けたのだろう。 這うようにして、義弘の身体の下からスノウリーは抜け出した。すぐさま立ち上がり、氷上を滑って義弘から距離を取る。くるりくるりと、氷結晶に触れる度に身体を回転させながら移動する。左右にブレながら滑るので、拳銃での狙いが付けにくく、ユーヌは小さく舌打ちを零した。 おまけに、スノウリーはくるくると回転しながら威嚇射撃を繰り返すので厄介なこと極まりない。1人で、複数の相手と戦うことを想定したスノウリーの能力は、集団戦法を得意とするリベリスタ達の天敵とも言えた。 迂闊に攻撃をしては、仲間を巻き込むかもしれないのだ。引き金を引くにも躊躇いが生じる。 「ぐっ……。逃がした」 治療に駆け寄るイスタルテを置いて、義弘は再度駆け出した。血の滴が滴って、彼の足元を赤く濡らす。義弘に呼応するように、桐が駆けだす。 「キラキラと綺麗な目だな? 鴉が興味津々に、つついて穿り抉り出す」 二人を追い越し、まるで黒い雲の如き鴉の群れが氷の結晶を砕きながらスノウリーへと襲い掛かる。氷にズらされ、スノウリーの弾丸に撃ち落とされ、鴉は彼女の元に辿り着けないが間にあった結晶は軒並み打ち砕かれ、キラキラと光る粒子へと変じる。 鴉の群れが消えた瞬間、義弘と桐は同時にスノウリーへと飛びかかった。 ●氷上の戦姫 スノウリーの弾丸が、桐の腹部を撃ち抜いた。血を吐き、その場に倒れる桐を飛び超え、義弘はメイスを振り下ろす。4本ある腕のうち、1本を捉えたメイスの一撃は、そのままスノウリーの身体を氷の上に叩きつける。 スノウリーの弾丸が、義弘の腹部を続けざまに射抜いた。 銃口が、腹部に押しつけられる。感情の色を感じない瞳。容赦なく引かれる銃の引き金。発砲音が鳴る度に、義弘の身体は大きく震える。 血を吐き、仰け反る義弘の上体。意識を失うその直前、フェイトを使って義弘は無理矢理体勢を立て直した。地面に転がったメイスを拾う暇もなく、義弘はスノウリーの腕を掴みあげ、そのままスケートリンクを疾走。 「……盾となり、壁となり、立ち続けよう」 獣のような笑みさえ浮かべ、義弘はスケートリンクの端まで移動し、スノウリーの身体をドームの壁面に叩きつけた。体力の限界か、その場に膝を付く義弘の身体を、淡い燐光が包み込む。 イスタルテの回復術だ。先ほど、ユーヌの切り開いた進路を麗香を抱えたまま低空飛行でこちらへ迫る。イスタルテと麗香に先行して、綺沙羅が前へ。 「戦場にいたかのような凄惨な恰好に記憶だけでなく大切な何かを失った女ね……。ちょっとだけなら遊ばせてやりたい気もするけど、そのまま居つかれるのは困るよね」 懐から抜きだした式符を素早く放つ綺沙羅。式符は鴉へ姿を変えて、スノウリーの構えた拳銃へと直撃。衝撃で、拳銃はバラバラに分解される。もともと酷使しすぎて耐久力の限界がきていたのだ。 スノウリーの無数の瞳が、ぎょろぎょろとせわしなく蠢く。降り注ぐ氷の結晶の量が増した。 スノウリーへの進路を結晶が閉ざす、その直前。 「メガネフェザーとかそんな変な技名じゃないですよう」 バン、と大きく翼を打ってイスタルテは魔風を巻き起こした。 イスタルテの放った魔風が、降り注ぐ結晶を僅かに空へと押し返す。 その隙に、イスタルテは抱えていた麗香の身体をボーリングの球でも放るみたいにして氷の上に解き放った。弾丸の如き速度で、身を低くした姿勢で氷上を滑る麗香。 一気に、壁に押しつけられた状態のスノウリーに迫る。 「戦いにあけくれた日々を送ってきたのであろうが……・ボトムは安息できる世界ではなく。残念ながらここにあなたのいる場所はない」 スノウリーに肉薄に、剣を一閃。二閃、三閃。そこから先は目では追えない。触れるを幸いに、結晶に剣筋をずらされることも構わず、気迫の籠った連撃を放つ。スノウリーの全身に、無数の切傷が刻まれ、血を流す。銃は壊れ、目は潰れ、しかしスノウリーはそれでも目の前の麗香を見つめ、攻撃しようと手を伸ばした。 「っ!!」 最後の一閃が、スノウリーの胸元を深く切り裂く。それと同時、伸ばしていた腕から力が抜け、スノウリーの身体は、地面に倒れる。スノウリーが力尽きると同時に、降り注いでいた氷の結晶が消える。 血の跡を残しながら、スノウリーはずるずると這ってDホールへと逃げて行く。これ以上戦闘を継続することは不可能だと判断し、退却を試みているのだ。 スノウリーの手が、Dホールに届いたその直後、スノウリーの全身から力が抜けて動かなくなる。 幾多の死線を潜り抜けてきたであろう異形の少女は、ボトムの世界で息絶えた。 ゆっくりとスノウリーに歩み寄ったイスタルテは、彼女の身体を抱き上げ、Dホールの中へと押し込んだ。スノウリーの姿が見えなくなるまで、彼女はじっとその場に佇み、目を閉じていた。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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