●『おりこうな戦車』 北陸自動車道を一台の戦車が走っていた。 それだけで一大事だが、これが無人で走っているということが、何よりも恐ろしい事態だった。 猛スピードで後ろから追いかける三台の黒塗りベンツ。 「道路の封鎖は済んでるんだろうな!」 「今完了したそうです!」 「クソッ! あんなもんどうやって作ったってんだ!」 車の後部座席から、黒スーツの男が身体を出した。 ドアを開けて……と言うより、ドアを切り裂いてである。 彼の長ドスは自動車のドアを軽々と貫通し、そして切り裂いたのだ。最後にドアを道路の隅まで蹴飛ばす。 彼の名は草刈腱剥。かつてアークに『良い意味で』借りを作った三尋木所属・篠田組フィクサードである。 「この先には二代目がいる。お前ら、間違っても逃すんじゃねえぞ!」 「「はい!」」 ベンツは左右と後の三方向から囲うように接近した。前方向から接近しなかったのは、戦車前面にドーザーブレードがついているためである。 左右の車からチンピラ風のフィクサードたちが腕を出し、銃撃を開始した。 が、それらの銃撃がまるで豆鉄砲かなにかのように弾かれる。 上部の壱二七粍重機関銃が回頭し、右側のベンツに対して射撃を開始。 「ぐわっ……!」 ベンツはたちまち爆発を起こしてスピン、道路端へと激突する。 「チッ! 一旦離れろ、遠距離から――」 残り二台のベンツが離れたその途端、戦車上部にあった機関銃が消失。すぐさま四○粍自動擲弾発射器へと変化した。狙いは左側のベンツである。 通常ではあり得ない頻度でグレネードが車内に放り込まれ、爆発炎上。二台目のベンツもまた道路脇にぶつかって動かなくなった。 「ぐっ……!」 歯噛みする草刈。 破片や部下が前から後ろへと飛び去っていく。 できれば部下を回収したいが、ここは鬼にならねばならぬ。 「前へ回せ」 「しかし」 「いいからつけろ。ギリギリでなくていい。でもってお前らは全力で逃げるんだ。いいな!」 「……はい!」 運転席の男がアクセルを限界まで踏み込み、戦車を徐々に追い抜いていく。 この時点で既に分かっていることだが、この戦車はレオパルト2のカタログスペックを大幅に超える速度で走っている。無人で走るのだからこのくらいやっても驚きはしないが。 「射撃、来ます!」 「分かってる!」 ベンツの上部に張り付くように乗り、草刈はドスを閃かせた。 飛来したグレネードが真っ二つに裂け、爆風までもが裂け、後方へ流れていく。 ベンツはそのまま戦車を追い抜き、前方へと回り込んだ。 「今だ!」 草刈はベンツから跳躍。と同時にベンツは全速力でその場から退こう――とした瞬間、戦車の主砲が火を噴いた。ベンツに直撃。フレームが爆発四散する。 草刈は色々な感情に耐えながら戦車に飛びつき、ドスを突き立てた。戦車の装甲を貫くドス。通常ではまずありえないような、包丁がまかり間違って鉄板を貫通してしまったような音がした。 「テメェがナニモンかは知らねえが、この場でスクラップに――」 途端、戦車は道路側面の壁に自身を叩き付けた。衝撃で吹き飛ばされそうになる草刈。その時、差し込んだ筈のドスが内側から拒絶されるかのように押し出されたことに気づいた。 「や――べえ!」 草刈はそのまま宙に放り出され、壁に激突し、地面を数メートル転がり……そして素早く立ち上がった。 「……くそ!」 拳で地面を叩く。 「アークに任せるっきゃねえか、こいつは……!」 ● 「ウィルモフ・ペリーシュの作成した自律型戦闘アーティファクト・ペリーシュナイトの活動を察知しました。 仮称『おりこうな戦車』は現在北陸自動車道を走行中。付近の交通封鎖は完了していますが、もしインターに到達してしまえば封鎖が突破され、民間人への被害が予想されます。ただちに現場へ向かい、対象を撃破してください」 と、このような依頼があなたによせられたのにはワケがある。 『<究極望まば>』等の多くの事件でマジックアイテムを集め、研究を重ねてきたウィルモフ・ペリーシュの毒牙が日本北陸地方へと向けられたからだ。 だが彼の狙いは間違いなくアーク。バロックナイツ連破の実績をもつアークを対象とすることで、自らの生み出したアーティファクトの実験としているのだ。 もちろんそれだけではない。彼は日本に自らの新工房を建造し、勢力図の書き換えまでもを狙っている。 今回依頼された『おりこうな戦車』もまた、そんな計画の一環として放たれた自律型戦闘アーティファクトなのだ。 「『おりこうな戦車』はレオパルト2PSOとよく似た外見をしていますが、装甲の堅さや威力、機動性などは本機と比べものになりません。そのうえ無人で動き、近隣の人間に対して能動的な攻撃行動を行ないます。また、アーティファクト自体に知能が確認されており、柔軟な対応も可能なようです。協力組織の部隊が鎮圧に当たりましたが、この対応能力によって敗北、撤退しています」 そのうえ現場は北陸自動車道。つまり自動車で走行しながらの戦闘になるのだ。 かなりの慎重さと速効性が求められている。 「ですが、皆さんの潜ってきた修羅場からすれば……。今回もきっと、やり遂げることができるでしょう。どうか、よろしくお願いします」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:八重紅友禅 | ||||
■難易度:HARD | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2014年11月17日(月)23:08 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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● ハンドルを握る『アヴァルナ』遠野 結唯(BNE003604)のサングラスが陽光を照り返し、前方の光景を反射した。 他に車のない高速道路をレオパルト2が走っている。 レオパルト2といえば西ドイツ製第三世代主力戦車だが、カラーリングやカスタマイズからしてレオパルト2PSO。国際平和活動における市街戦を想定したタイプだが、推定時速100キロ毎時を超えている。たしかカタログスペックは72キロ毎時だったはずなので、さすがにただの戦車ではないというわけか。 ……余談だが、ただの戦車が相手だったとしてもリベリスタが押し負けることがある。 後部座席で『レーテイア』彩歌・D・ヴェイル(BNE000877)が武装を展開した。 「WPシリーズって悪趣味な願望器ばかりかと思ってたけど……人工知能戦車ね。便利そうではあるけど」 「しかも名前が『おりこうな戦車』か」 銃の安全装置を解除する『アリアドネの銀弾』不動峰 杏樹(BNE000062)。 「人に迷惑をかけないお利口さんならいいんだが……」 「たぶんsmart(利口)って意味じゃない? お利口に停車して降参しなさいってわけにはいかないし……仮に賢いだけだっとしても、戦う相手にとってはこの上ない迷惑になるわけだしね」 後部座席で身を屈め、あえてベルトを外しておく『狐のお姉さん』月草・文佳(BNE005014)。 「たしかに、車両の移動に高速道路を使う辺りがいかにもだな。スクラップに変えてやる」 そう言って、杏樹は助手席側の窓から頭を出した。 一方こちらは『ウワサの刑事』柴崎 遥平(BNE005033)のセダン。 「カーチェイスか。ガラじゃないんだがな……」 くわえていた煙草を灰皿に押し込むと、遥平は一気にアクセルを踏んだ。この辺は流石に改造車だけあって最高時速がかなり早い。 戦車にぐいぐいと近づいていく。 その後部座席でグリーン・ノアを順次展開しつつ、『桃源郷』シィン・アーパーウィル(BNE004479)は小声でぼやいた。 「SFチックな産物ですねえ。どうせなら喋ってくれればいいのに。『ニャー』とかいって」 「如何なる物体も使用者に依存する」 『生還者』酒呑 ”L” 雷慈慟(BNE002371)は助手席でシールドを展開しながら、戦車をじっと見据えた。 「WP、こういった手合いはいつも決まって他人の都合を無視する。配慮も、思慮もない。世界に関わりさえしなくば無視もできたが……此処に至ればもはや」 「そうなぁ」 煙草に火をつける『十三代目紅椿』依代 椿(BNE000728)。後部座席のウィンドウをレバーで開くと、ぐいっと身を乗り出した。 「あ、そういえば。腱剥さんも二代目共々元気にやっとるんやね。今度お歳暮送っとこ」 窓淵に横座りした形で身体を固定し、椿は銃を戦車に向けた。 「っと、頼むよ遥平さん」 「おう」 戦闘圏内へ侵入。と同時に、戦車の上部に設置されていた機関銃が火を噴いた。 ● 初撃は戦車からだった。機関銃の射撃がものの見事に遥平のセダンへ命中し、フロントガラスを粉々にした。凄まじい暴風が車内に飛び込んでくる。通常なら運転手ごと消し飛んでいるところだが、飛来した弾はすべて遥平の目の前で停止していた。彼の展開した虹色の壁が弾を阻んだのだ。 「防弾ガラスも機関銃相手じゃあなあ」 歯を食いしばって更に加速。一方で助手席の雷慈慟は相変わらずの無表情でベルトを外していた。 「丁度いい」 「んあ?」 「他人の窓ガラスを割ることに、躊躇していた所だった」 雷慈慟は空いた前方から這い出ると、シールドをひときわ大きく展開。幾重にも結った気糸を懐から引っ張り出した。 さらなる機関銃射撃が加えられているが、雷慈慟のシールドには傷一つついていない。彼の防御力のなせる技……というより、シィンが彼に施したエル・ユートピアの効果である。 「神秘のものとはいえ、車両の定義を改めたくなるな、全く」 雷慈慟はまるで巨大な綱と化した気糸を投射。蛇のごとく戦車の機関銃部分へ巻き付くと、ぎしりと武装を締め付けた。どくんと脈打った綱が神妙な空間を作成。戦車を神秘的に呪縛した。 物理攻撃無効処理に加えて高精度の呪縛処置。相手が単体の物理兵器であるならば、これで完璧に封殺できるはずだが……。 「相手はWP」 「いやらしい手を使ってきて当然」 戦車は綱の効力を無視して無理矢理回頭。遥平の目が、主砲のずっと奥に光る弾頭が見えた。 もし遥平に高い魔術知識があったなら、弾頭に描かれた文字の内容がわかったところだが……まあ今はそれどころではない! どう見ても呪縛が効いていないクチだ! 「やべえ!」 「んに゛ぁ!?」 咄嗟にハンドルを切る。あおられる椿。轟音と共に発射される砲弾。 運転席への直撃こそ避けたものの、雷慈慟の方に砲弾が命中。 彼は車から投げ出されそうになり、咄嗟に車体フレームを掴んだ。――と同時に気づく。 「まずい、神秘弾頭だ!」 「そんなことだろうと思いましたよっ」 シィンは加護を中止、攻撃姿勢に移った。 きらり、と再び結唯のサングラスが光った。 「気づいたか」 「まあ」 杏樹は舌打ちした。 「あの弾頭、『人間だけを破壊する弾頭』だ。車両への被害より人体への被害を優先してる。まったく悪趣味な」 当然アーティファクト性車両ゆえの頑丈さなりなんなりはあるだろうが、あの戦車の砲撃を受けたら乗員の方が先に殺される。 「真後ろにつけろ。貫いてやる」 「……わかった」 ぴったりと戦車の後ろでぴったりと止める結唯。遥平機からの射撃をかわすためにぐらぐら動いているはずなのに、結唯はピンポイントの位置で車体を安定させていた。道路はゆるやかなカーブにさしかかっているにも関わらず、杏樹には横への軸ぶれが全く感じられない。なるほどたいした腕だ。 「どれだけ走行をかためようと関係ない。魔弾の射手からは逃げられないぞ」 助手席から身を乗り出し、エンジンがあるであろう箇所を狙って射撃。 弾は装甲を不条理に透過し、内部機関だけを的確に破壊した。 その様子を透視で確認する結唯。 「破壊確認。どうなる?」 本来の車両なら車内から煙を噴いて蛇行し、慣性の法則のみ呑まれることになるはずだが……。 車両上部にグレネードランチャーが出現。 「あ、ダメなやつねこれ」 ヴェイルはすぐに離脱の準備。 戦車は『一切の異常も見せずに』結唯機へグレネードを連続投擲してきた。 立て続けにおこる爆発に対し、文佳が急いで回復空間を展開。 「あたし、便利な女になってきちゃったかしら」 言いながら、自身が車外へ放り出されたことに気づいた。 それだけではない。車両が無残に破壊され、他の乗員たちも放り出されている。短く叫ぶ杏樹。 「出てこい、守護神!」 ロザリオを握った途端、彼女たちの居る場所に直接軽トラックが現われた。側面に『店酒田新』とペイントされている。 トラックの荷台で立ち上がるかたちで、ヴェイルは次なる攻撃に備えた。 ふと見ると、遥平の運転に煽られる十三代目の姿が。 「組長!」 「み゛ぁ!?」 「十字砲火、行くわよ」 腕のデバイスを操作。基盤の導線配列のように伸びた大量の気糸が戦車めがけて飛び出した。 椿も後部座席の窓からのけぞり状態で銃を乱射。戦車の側面にざくざく弾をめり込ませていく。 戦車は『軽く身を震わせた』あと、更に速度を上げる。 「振り切る気か!」 「逃がさん」 遥平も結唯も、同時にアクセルをぐっと踏み込んで加速。 彼らは海沿いの直線コースを高速で通り抜けていく。 富山のインターへ到達するのは、もうすぐだ。 ● 車両の窓から手を翳し、シィンは持てる限りのエネルギーを戦車へぶつけた。 エネルギーの爆弾が戦車へ命中し、側面をえぐり取るように破壊していく。 戦車はそのたびに車体をガタガタと揺らし、まるで大型動物が痛がっているかのようなしぐさをした。 スン、と鼻をきかせてみるシィン。すると肉や骨を焼いたような臭いがした。たしか戦車は無人のはず。と、そこでシィンは目を細くした。 「あーあ、そういうこと……」 「そろそろやべぇな。戦車の横にぶつけるから、準備しとけよ!」 「いよいよ接近戦やね!」 「準備完了、行けるぞ」 ハンドルを握って一度車体を逆方向に降る遥平。 雷慈慟と椿はそれぞれ車両のルーフ上に乗って身構える。 とその時、戦車の方から遥平機へ体当たりを仕掛けてきた。 勢いこそ弱いものの、相手は遥平のセダン(恐らくながらクラウンと思われる)の四倍以上の重量がある戦車である。モロに押し切られ、そのまま高速道路の側面に車体をこすりつけるはめになった。 ぐいぐいと押し込まれ、車のフレームが歪んでいく。 「くそ、こいつ……男の車になにしてくれやがる!」 「だがつける手間が省けた」 「あんたそればっかりやね!」 椿と雷慈慟は転がり込むように戦車に張り付き、突起部分をぐっと掴んだ。 雷慈慟はシールドを攻撃状態に変え、車体前方を直接殴りつける。 ぎしぎしと音を立てて歪んでいく装甲。 椿は車体後方へつき、拳でもって装甲をぶん殴った。 「うりゃ!」 殴ったそばから戦車の特殊装甲に穴が空き、椿の腕が内部にずっぽりと埋まった。 「……」 それを見ていたヴェイルの脳内で川出と俣勝が『やべぇグレさん戦車走行素手で貫いてる!』『ヤバイヨヤバイヨー!』と言っているのを想像した。忘れることにした。 が、当の椿はそれどころではない。 なぜなら戦車内部から『ぬめり』とした感触が帰ってきたからだ。 形容するなら、生コンクリートにうっかり手を突っ込んでしまったような、もしくは非常に粘度の高い泥にはまったような感触である。 慌てて引き抜くと、腕に大量の人面痕ができていた。 痣や火傷ににたそれは、口と思しき部分を動かしてなにやら音を発している。 当人の椿にだけそれが聞こえた。 『あつい』と『いたい』だ。 「こいつ……こいつは……!」 ようやく気づいた。 こいつは人工知能なんかではない。そもそも『知能がある』とは分かっているが『人工知能』とはどこにも書いていなかった。 「ああ、気づいちゃいましたか。私、草刈さんという方が戦車に『押し出された』時からアレっと思ってたんですけども……」 ふと見ると、飛行状態のシィンが椿の腕につかまっていた。 どうやら壁に押しつけすぎたせいで遥平の車がスクラップ化したようで、彼らは雷慈慟の車両に移っていた。 ちなみに馬匹運搬車である。見た目改造した大型バスである。それが時速100キロ以上で走っているさまを、どうかご想像頂きたい。ついでに運転席の遥平の目がやや充血しているところもご想像頂けるとよりリアルである。 さておき。 シィンはバーストブレイクを連続発射して戦車に叩き付けながら、涼しい顔で言った。 「この戦車、メタルフレーム系E能力者でできてますよ。内部はEフォースの塊で満たしてあって、ガソリンに変わる動力は『人間の苦痛』みたいですねェ。現代版の幽霊船みたいじゃないですか?」 「…………」 「抗議運動でもしてる群衆にけしかけたら、全員殺すまで動いてくれますよきっと」 「て、天あ……!」 喉から出かかった言葉を、椿は全力で飲み込んだ。 途端、先程の穴から粘液のような物体が放出され、穴を補修。と同時に車体にはりついていた椿たちも放り出された。 咄嗟に大型バイクをAF召喚。シィンを後ろに引っかける形で跨がった。 「あっ、サラマンダーより――」 「言わんといて!」 一方、新田酒店の軽トラに乗った結唯はサングラスの奥で目をぎらぎらと光らせていた。 「私の車を砕いた責任は、とって貰う」 念のため述べておくが、結唯の車は相当な高級車である。それを特殊改造しているので、ちょっとシャレじゃないお金がかかっていた。 「この車を粉にしてでもな」 「えっ」 助手席の杏樹が振り向く間もなく、結唯は防弾らしきフロントガラスを銃のグリップ底で粉砕。戦車めがけて力の限り乱射した。 相手の戦車も負けず劣らず、新田酒店トラックめがけて機関銃射撃をモロに浴びせてきた。 しかしそこは守護神の愛と怒りと悲しみとあと多額のローンが籠もった車両。弾を装甲部分でなんとか受け止めた。 そこへ更に、主砲が回ってきた。今度は物理弾頭である。草刈たちの車両を爆発四散させたシロモノだ。 「無駄だ」 結唯は思い切りスピードをあげて戦車に密着。主砲が側面にあたって狙いがつけられない。スピードを上げて引き離そうとする戦車と結唯の加速による勝負が始まった。 「この――!」 杏樹は砲の付け根めがけて連続で銃撃。 砲よりも履帯を狙うべく、いっそのこと軽トラの車体ごとぶち抜いて射撃をしかけた。なんとなくこの直後に爆発四散する未来が見えたからである。 一方で文佳は軽トラの上から頭を出し、シルバーバレットを連射。 無数の弾が戦車にめりこみ、動きを徐々に鈍くしていく。 が、ここは戦車の意地だろうか。突如急加速した戦車が軽トラにぴったりと主砲を突きつけた。具体的には結衣の眼前数センチに手法が押しつけられる形である。 そして主砲が発射……されない! 「甘かったわね」 軽トラの荷台で、ヴェイルが端末を操作していた。 彼女は射程圏内に入ってからたびたび特殊な精神波を発進し続け、戦車はこれによってエネルギーを直接削られていたのだ。 「エネルギーがどれだけ蓄積されてるかは分からないけど、主砲には結構なエネルギーを喰うんでしょ。計算が狂っちゃって、残念だったわね」 ならばとばかりに戦車から大量のグレネードが投擲される。 だが積みだ。 軽トラが爆発に巻き込まれる中、ヴェイル、文佳、杏樹、結唯は持てる全ての弾を戦車へと叩き込んだ。 勿論彼女たちだけではない。 雷慈慟の車にうつった遥平たちもまた、横につけてめいっぱいに乱射。 バイクに跨がった椿とシィンも運転を後回しにして銃撃と魔法爆撃を叩き込む。 いくつもの爆発がおこり、そして――。 最終カーブ。 戦車は側面の壁にめり込み、動きをとめた。 横にはベコベコになった新田酒店の軽トラと、その後ろにめり込んだ椿のバイク。 それらの手前ギリギリアウトな位置で止まった馬匹運搬車。 でもって。 それらを黙って見つめる遥平たちの姿があった。 「迎え、来て貰おか」 誰かが電話を取りだし、そう言った。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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