下記よりログインしてください。
ログインID(メールアドレス)

パスワード
















リンクについて
二次創作/画像・文章の
二次使用について
BNE利用規約
課金利用規約
お問い合わせ

ツイッターでも情報公開中です。
follow Chocolop_PBW at http://twitter.com






<聖杯の男>殺戮破壊衝動促進専用車両


「ウィルモフ・ペリーシュ様は破壊の限りを尽くしてよいと仰った! この地を新たな研究所とするとも!」
 富山県の大型業務用スーパーに一台のスポーツカーが突っ込んだ。
 それだけならただの事故で済むかも知れないが……。
「ゆえに、我らの糧となれ! 日本人!」
 搭乗者の男はアクセルを踏み込み、ハンドルを握り、そして強い破壊衝動を暴発させた。
 車は彼の衝動を受け取り、周囲の自動車を吸収しながら自らを特殊改造していく。
 やがて車は六本の足と大量のロボットアーム。そして火炎放射器などの武装に固められた異様な戦車へと姿を変えた。
「続け、我らが同胞たちよ。ウィルモフ・ペリーシュ様を信ずるものたちよ! 今こそ暴虐の時である!」
「ウィルモフ・ペリーシュ様にかけて!」
「ウィルモフ・ペリーシュ様にかけて!」
 続いて数台の自動車がスーパーへと突っ込み、同じように変化していく。
 逃げ惑う一般人を掴み上げ、壁に投げつけ、狂ったように笑った。
「今こそ暴虐の時である!」


 ラトニャ・ル・テップ事件をはじめ多くの事件でマジックアイテムを集めてきたペリーシュがついに自身の研究を完成させた。これまで彼のアイテムが起こしてきた事件を考えれば未曾有の災厄が起こることは必須。しかもその矛先が欧州ではなく日本、それもアークに対して向けられたのだった。理由は恐らくラトニャルテップ追放に成功したことだろう。それが可能なだけの組織を実験台にしているのかもしれない。
 彼らは現在日本北陸地方に上陸し、臨時の工房を建造しようとしているようだ。彼らの上陸によって起きたあらゆる事件への対応が、急がれている。

「皆さん、緊急の事件です。ウィルモフ・ペリーシュの奉仕者たちがWPシリーズのアーティファクトを用いて破壊活動を始めています。人の集まるところをわざと狙っており、放置すればとんでもないことになるでしょう」
 『運命オペレーター』天原和泉(nBNE000024)の具体的な説明はこうである。
 富山県某所の大型業務用スーパー。日頃から多くの人が訪れるこの場所に、三台の自動車が突っ込んだ。
 これはペリーシュによるアーティファクトで、搭乗者に強い破壊衝動を起こさせ、増大する衝動に応じて車体を独自に改造、変化させていくというものである。大抵これらは破壊と殺戮を楽しむための機械兵器となり、周囲にあるものを全て破壊し尽くすまで止まらないだろう。
「皆さんにはこれらの破壊、および近隣一般市民の避難をお願いします。犠牲が出てしまうこと自体は……残念ながら、止められないでしょう。しかしこれ以上の被害を出さないことは、出来るはずです」
 アーティファクトの資料一式をデスクに置き、和泉は頷いた。
「どうかお気をつけて。そして、ご武運を」


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:八重紅友禅  
■難易度:HARD ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2014年11月17日(月)23:02
 八重紅友禅でございます
 全体依頼でございます

●成功条件
 WPアーティファクトの破壊、およびフィクサード三名の撃破。生死不問。

●エネミーデータ
 アーティファクト:殺戮破壊衝動促進専用車両
 大量のロボットアームを有した多脚戦車です。
 人間を拘束するアームやグレネードランチャーや火炎放射器を備え、楽しんで破壊や殺人をすることを至上の目的としています。
 装甲は硬く、スペックも破壊に特化しているだけあって高い攻撃力をもちます。
 搭乗者のフィクサードたちはペリーシュの奉仕者を名乗っており、人格は完全に崩壊しています。というよりアーティファクトに呑まれており、人体の複数箇所が強制接続されています。引っ張り下ろすのは無理じゃないが、アーティファクト本体を破壊した方が早いということです。
 当然エンジンなんかで動いてないので、動力源攻撃も意味がありません。ガチの戦闘が必要になります。
 同タイプのものが合計3台あり、これらを破壊するのが今回の任務です。

 周囲には老若男女さまざまな一般人がおり、ほぼ恐慌状態に陥っています。
 わりと強制的な避難誘導が必要になるでしょう。陣地作成ができれば早いのですが、アーティファクトに拘束されている人間まで追い出すことが難しいので、そこは自力でどうにかするしかありません。

●重要な備考
<聖杯の男>を冠する関連シナリオの結果により、敵側の支配地域が変動する可能性があります。
支配地域の判定は北陸四県のエリア毎に行われますが、成否数のみによって決定される訳ではありません。
予め御了承の上、参加をお願いいたします。
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
ハイジーニアスアークリベリオン
祭雅・疾風(BNE001656)
ハイジーニアススターサジタリー
カルラ・シュトロゼック(BNE003655)
ギガントフレームプロアデプト
鳩目・ラプラース・あばた(BNE004018)
ハイフュリエミステラン
セレスティア・ナウシズ(BNE004651)
ハーフムーン覇界闘士
翔 小雷(BNE004728)
ハイフュリエマグメイガス
セリカ・アレイン(BNE004962)
ハイフュリエレイザータクト
ソニア・ライルズ(BNE005079)
ハイジーニアスホーリーメイガス
オーガスタ・アンカーソン(BNE005097)


 自動車のブレーキペダルを踏み込み、『Brave Hero』祭雅・疾風(BNE001656)は窓の外を見る。
「あれはっ」
 大型スーパーの外装を大型アーティファクトが破壊していた。
 小さな子供が人間捕獲アームに拘束され、強引に振り回されている。
「捕らわれている人まで……救出せねば!」
 疾風の目の奥に怒りの炎が燃え、彼は停車した車から飛び出した。
 スマートフォンのアプリケーションを起動。コードを入力しながらかけだした。
「――変身!」
 走る疾風の身体にコンマゼロ五秒の速度でバトルスーツが蒸着。全身をスーツに包んだ疾風は、スーツの各部パーツを奇跡の力で光らせた。
 大地を蹴り、駐車してある車を飛び越える。
「オーガスタさん、飛行支援を!」
「できてます。いつでもどうぞっ」
 車を飛び越えた時には飛行状態の『蒼の』オーガスタ・アンカーソン(BNE005097)が横を併走していた。
 彼女が頷くのを見て、疾風は強く親指を立てる。
 背部の追加パーツから奇跡のエネルギーを噴射し、疾風はスーパーめがけて突撃した。
「暴虐の限りをつくさんとする者よ、許しはしない!」

「すげえなアイツ、登場シーンで出番の大半使ったぞ」
 疾風がとめた車。その助手席から出てきた『赤き雷光』カルラ・シュトロゼック(BNE003655)は額に手を翳して飛び立つ疾風を見送った。
 いや見送っている場合ではない。
「おっと、俺も行かねえと。スクラップにしてやんぜ、人命救助のついでにな!」
 車を踏み台にして空に飛び立つカルラ。
 彼の眼下では別の車両から飛び出したらしい『どっさいさん』翔 小雷(BNE004728)が、上半身を固定した姿勢で疾走している。
 何かを考えているのか思い出しているのか、しばしかれは目を瞑っていた。その目を開く。
「淘汰されるのはいつも弱者だ。力で弱者をいたぶるものは許さない。お前もそうだろう」
「いや、俺は生産数減ったスポーツカーをディスった連中にイラっときたんだが」
「志は同じというわけか」
「おうそうしといてくれ」
「まずはとらわれている人々の救助。さらなる破壊を防ぐべく三人で各機をそれぞれ押さえ込む」
「オーケー、後でおちあおうや」
 カルラは敬礼のまねごとをしてカーブをきった。屋上駐車場で逃げ遅れた人々を襲っている多客戦車を見つけたからだ。


 乗用車が回転しながら宙を舞った。ワゴン車が爆発を起こし、黒いスクラップになって横転した。
 女に出来ることと言えば、身を低くして我が子を破片や爆風から庇うことくらいである。
「弱者よ、なにを小さくなっている」
 地響きがして、すぐそばに多客戦車が停止した。
 慌てて逃げようとする女をアームが捕獲。子供を引きはなす形で空へと振り上げた。
「暴虐を享受せよ。それがウィルモフ・ペリーシュ様の栄光となる」
 アームの圧力が徐々に強まり、女は苦しげに呻いた。
 子供の悲鳴と苦悶が混じり、暴虐な男が笑い始めたその時。
「あぁ? チョーシくれてんなよトリマキ野郎が!」
 一直線に突っ込んできたカルラが、多客戦車の背中へミサイルパンチを叩き込んだ。
 巨大な多客戦車がものの見事にひっくり返り、地面をごろごろと転がっていく。
 一方の女はアームから解放され、空中へと放り出された。
 コンクリートの地面に叩き付けられるかというその時、空中でブレーキをかけた『ツンデレフュリエ』セレスティア・ナウシズ(BNE004651)が両腕でもってキャッチした。
「あ、どーも。元気ですか?」
 目をぱちくりとさせる女をゆっくり地面に下ろし、駆け寄ってきた子供のほうへと押した。
「ここは今からアレだから、あっち行っててもらえる?」
 頭を下げてから外へと駆けていく親子を見送り、セレスティアはジーパンのポケットから出したフィアキィを空に放り投げた。
「それじゃ、あとはよろしく……っと」
 エネルギーだけ送り続けておけばグリーンをノアノアしてくれんだろうくらいの気持ちで、セレスティアは身体ごと振り返る。
 屋上駐車場の端まで転がっていった多客戦車が、地面をひっかく要領でブレーキをかけ、のっそりと立ち上がった。
「さーて、どんなビックリ機能があるもんでしょーか」

 一方その頃、野外駐車場も同じような有様になっていた。
 車が飛び、転がり、爆発している。違いといえば人の数で、スーパーから逃げ出してきた人の多くがここへ集まり、そのうえ自分の車を使って逃げようとするものだから大混乱になっていた。
「愚かなり、弱者たちよ。自ら破滅を招くのだな……ウィルモフ・ペリーシュ様の仰る通りだ」
 多客戦車が二つのアームから火炎を放射しながらゆっくりと迫った。
 スーパーのスタッフや客たちが入り乱れて逃げていくが、中には逃げるに逃げられない者も居る。
 多客戦車の背部アームに子供を拘束された家族などだ。
「それでいい。優しさのために死に、人情によって破滅せよ」
 炎の柱が家族へ迫る。
 と、その時。多客戦車の側面で閃光弾が炸裂した。
 思わず身をすくめ、飛んできた方へ向き直る。
 すると白いポニーテールヘアーがワゴン車の後ろへと駆け込んでいくのが見えた。
「おのれ……」
 周辺の車を押しのけながら相手を追いかける。
 ただ追いかけるだけでは芸がない。男は相手が隠れていたと思しきワゴン車をまるごと持ち上げてやった。しかし、そこには誰も居ない。
「む、どこだ!?」
 周囲を見回す男。そう、先程のポニーテールもとい『ゲーマー』ソニア・ライルズ(BNE005079)は、持ち上がった車の後ろにぴったりと張り付いていたのだ。
「戦車はともかく多客戦車は好みじゃないなぁ。せめて可愛げがないと」
 袖の間から手榴弾をころりと取り出し、歯でピンを抜く。
「ま、搭乗者が狂ってる時点でアウトか」
 手榴弾を背面投げし、ソニアはその場から離脱。
 運転席付近で閃光が炸裂したと同時に多脚戦車の背部に小雷が張り付いた。
 強引にアームを押し開き、拘束された子供を逃がす。
 それを確認してよしと頷いたところで、小雷が別のアームに掴まれた。
「ぐっ……!」
「貴様、アークの使徒だな? やはり来たか、やはり来た。我らの意義があるというもの……!」
 アームの中で首をひねると、運転席で狂喜する男と目が合った。
「まさか、奴らの狙いは俺たちか……!?」
 急速に圧力が強まるアームを、小雷は気合いで押し返す。
 するとそこへ、アームの付け根を狙った機関射撃が行なわれた。
 無数の弾丸がフレームをえぐり取り、捕獲アームが地面に落ちる。
 開放された小雷を、機関銃を抱えた『クオンタムデーモン』鳩目・ラプラース・あばた(BNE004018)がちらりと横目に見た。
「すまん、助かった」
「別段そういうわけでもなさそうですけど?」
 顎で多脚戦車の方をしめすあばた。
 案の定というべきか、多脚戦車はこちらをむいてグレネードランチャーを大量に露出させていた。
「武器を出して壊すだけだなんて、WPシリーズにしては雑ですね」
 大量に射出されるグレネード。
 一方のあばたは後退しながら機銃掃射。大量の爆発が空に咲き、大量の金属片が飛び散った。
「ま、丁寧なブツを叩き付けられても面倒ですけど」

 業務用大型スーパーは天井の高さもそれなりにあるもので、多客戦車がある程度かがんでいれば内部を走ることも可能だった。当然、周囲にあるあらゆるものを破壊しながら走ることにはなるが。
「み、店が……!」
 30年の激務の末に店を手に入れた店長の男は、レジカウンターの間で身を丸くしていた。
 どんな客にも屈しないことで社内でも有名な彼だったが、変形するスポーツカーなど相手にできようはずもない。
 多脚戦車が大量のカートを拉げさせ、ボール状にして引きずってくる。
「失敗は恐ろしいものだな。それが他者の暴虐によるものであれば、やりきれんだろう。だがそういうものだ」
 ボールを振り上げ、店長の頭上へと翳す。
 保持していたアームを外し、落下させた。
「諦観せよ、世界はそうできている」
 絶望。
 死。
 破壊、破滅。
 あらゆる不幸が一秒先にあった。
 いや、もうひとつだけある。
「――否!」
 背部ブースターで最大限に加速させた疾風が、店長を掴んでかっさらっていった。
 大量のナッツボックスが積み上がった棚をなぎ倒しながらブレーキをかけ、疾風は店長を床に下ろした。
「世界には私がいる。私たちがいる。そう変えてきた――破衝双刃剣!」
 腰から二本の剣を射出。両手に掴み取り、再び多脚戦車へと飛びかかった。
 X字に構えた剣を叩き付ける。防御のために翳したアームは運命力によって切り裂かれた。
「むぅ……!」
 そこへ、後から入ってきたオーガスタがやんわりと着地。店長を含め店内に残っている人々に避難するように呼びかけた。
「あまり離れすぎると他のテロリストに遭遇する可能性があります。ギリギリ安全な地帯へ逃げてください。セリカさん、救助は完了しました。そちらは」
「いけますよ。十秒だって待たせやしませんって」
 店内のソファに座っていた『物理では殴らない』セリカ・アレイン(BNE004962)が、片手を宙に翳した。
「お姉様直伝――!」
 パチンと指を鳴らした途端、周囲の空間が特殊に歪み、戦闘専用の空間が生成された。
 足を一度組み直してから、セリカは空のグラスを手に取った。
 くるくると回して微笑む。
「さ、後半戦といきましょうか」


 あたり一面で爆発を起こす大型駐車場を、小雷はジグザクに走り抜ける。
「この程度の爆風――ぐ!?」
 正面から膝立ち姿勢で突っ込んできた多脚戦車に激突。
 もろに吹き飛ばされ、キャンピングカーにぶつかった。車体をフレームごと歪ませつつもなんとか勢いをとめた小雷に、捕獲アームが襲いかかる。
 彼を掴み上げ、零距離から激しい炎を浴びせかけた。
「焼けて死ぬがいい。お前たちの『守る力』とやらを打ち破ったとき、我々の意義となる……!」
「くそ……!」
 本来なら既に二回ほど死んでいる所だが、小雷は気合いで踏みこらえた。
 彼のスタミナもそろそろつきかける頃合いである。ソニアは通信機ごしにそれを悟ると、多脚戦車の背後に立った。
「しょーがない、相手してあげますか。ほら、こっちこっち」
 運転手の男に強制リンクし、自らに意識を向けさせる。
 男は目の色を変えて車体ごと反転。ソニアへと掴みかかってくる。
 ろくすっぽ抵抗せずに掴まれ、激しく振り回された。
「んー……これを軽やかに回避できるあたしだったら、かっこよかったんだけどねー」
 そう言うと、ソニアは拘束された状態でありながら数珠つなぎの手榴弾を取り出した。具体的には胸の谷間からずるずると芋蔓式にである。袖ごと引き抜いた片手で連結ピンを引き抜くと、鞭でも放つように腕部分へと叩き付けた。
 大量のフラッシュグレネードが炸裂し多脚戦車をよろめかせる。これまでやっていた威嚇や挑発のための爆発ではない。比較がかなり難しいが、ソニア的に言うところの『ボム』である。
 多脚戦車の機能が連鎖的に麻痺し、その場に音をたてて横転した。
「ほら、チャンスチャンス」
「たすかる……!」
 アームから這い出た小雷は、運転席まで駆け上がり、渾身の掌底を叩き込んだ。
 運転席の内部でなにかが破裂し、窓ガラスの内側を赤黒く染めた。

 一方こちらは屋上駐車場。
 カルラは多脚戦車の周りをぴょんぴょんと飛び回っていた。
「セレスティア、スキャンはできたか!」
「あー割と見えてきた見えてきた」
「防御力は!」
「んー……チョーかたい」
「分かりづれえっ!」
 と言った途端、カルラの身体が多脚戦車のアームによって吹き飛ばされる。
 長い間空を泳ぎ、セレスティアのすぐそばにある車へと激突した。
 はじけ飛ぶガラス片。拉げる車。耳を押さえて身を屈めるセレスティア。
「ちょっと何してんの、こっち来たら危ないでしょ!? あたしが!」
「ンなこと言っても」
 乗用車のボンネットに身体をめり込ませ、素早く起き上がろうとする……が、気づけば腕が一本無い。
「あ」
「やべっ」
 動作が遅れたその一瞬、多脚戦車が火炎放射器アームを展開。彼らのそばに突きつけた。
 巨大な腕を見上げるカルラとセレスティア。
 その側面。屋上の高さに現われたものがあった。
 ブースターで飛行したあばたである。
「デリバリーですよ、と」
 両腕で保持した銃から弾丸を一発だけ発射。
 奇妙な軌道を描いて多脚戦車の運転席だけを通過。右から左へ弾が抜けたその直後、火炎放射器がごとりと地面に落ちた。
 あばたはヒュウと口笛をふき、リロード。更にもう一発発射。
 次は多脚戦車の足関節部分に命中。ぐらりと機体が傾いた。よしよしと呟いてあばたは更に乱射。
 セレスティアは目をきらりと光らせる。
「チャーンス」
 即座に上空のフィアキィがエネルギーを放射。カルラの腕が瞬時に復元され、地面を殴る要領で彼は跳ね上がった。
 運転席の高さまで飛び上がり、拳を突き出す構えで特殊弾を発射。
 ガラスを突き破って内部の男に命中。男の腕がもげるのを目視。カルラは更に上空へと飛び上がり、拳に全神経を集中させた。
「トランスモーファーもどきが、潰れて砕けてぶちまけやがれ!」
 弾の射出機能を利用して、カルラは多脚戦車の頭を思い切りぶん殴った。
 屋上駐車場の地面がひびわれ、砕け、そして彼らは階下へと落ちていった。

 時間を多少遡る。
「ぐ……ここまでか……っ」
 疾風は食料品売り場でひとり膝を突いていた。
 一部破壊されたアイシールドから、血まみれの顔がのぞいている。
 多客戦車に幾度となくぶつかり、オーガスタたちに浴びせられた火炎放射やグレネードまでもを自らの身体をつかって防ぎ続けていた結果として、ダメージである。
「祭雅さん、これ以上の戦闘継続は危険です」
「分かってる、だが」
 オーガスタも全力で彼の回復支援につとめたが、流石に数回で打ち止めだった。
「すみません、燃費の悪い女で」
「誤解を招く言い方を……むッ!!」
 立ち上がろうとした彼の前に、多脚戦車が現われた。
 狙いは疾風……ではない。彼を手当しようとしたオーガスタである。
「危ない!」
 咄嗟に彼女を突き飛ばす。そこへアームが飛んできた。ワイヤーで繋いだアームが彼を拘束したまま飛び、壁に彼を叩き付けたのだ。
 そのままがくりと脱力する疾風。彼を包んでいたスーツも粒子になって消えた。
「祭雅さん!」
 起き上がるオーガスタ。彼女へ向け、多脚戦車が振り返る。
 次は彼女が襲われる番か? いや違う。
 多脚戦車の背に大量の流星が直撃したのだ。
 そのまま振り向くと、別なソファに座ったセリカが、杖をこちらに向けていた。
「火力なら、割と自身あるんですよ。私だって」
「愚かなり……!」
 セリカめがけてグレネードを大量に発射。爆発をうけたセリカはその場から投げ出され、地面をごろごろと転がった。
 そこへとどめとばかりに突撃しはじめる多脚戦車。
 セリカはうつ伏せ姿勢のまま片目を開けるだがそこから動きはしなかった。その必要が無いと思ったからである。
 なぜそう思ったのか。
 天井が壊れ、スクラップになった他の多脚戦車が落ちてきたからだ。
 一緒にカルラとセレスティアが落ちてくる。
「あ、丁度良かった! フィアキィ、あれ、あれやってあれ!」
 再びグリーン・ノアを発動。オーガスタの身体に再びエネルギーが満ちてきた。
「助かります」
 オーガスタは素早く虚空に文様を描き、奇跡の力を発動させた。
 セリカたちの身体に力が漲ってくる。
 いける。セリカは目を輝かせ、魔法を詠唱した。
 三倍に圧縮された詠唱により、一気に大量の魔法弾が生成され、その全てが多脚戦車めがけて叩き込まれた。
 それだけではない。カルラやあばたの射撃も加わり、多脚戦車はみるみるひしゃげ、そしてついに爆発したのだった。
 車外に投げ出される男。
 体中からケーブルを生やしている。おそらく物理的に埋め込まれたのだろう。金属で覆われた頭を上げ、手を伸ばした。
「ウィルモフ・ペリーシュ様に……栄光を!」
 そして彼は内側から爆発し、跡形も無く消えた。

 現場は陣地作成が比較的早期に行なわれたこともあり、それほど致命的な被害は出ずに済んでいた。
 だが戦場はここだけではない。今も北陸各地で暴虐が行なわれている。
 リベリスタたちは次の現場へと走ったのだった。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
 お疲れ様でした人的被害なし、物理的な被害はまあまああったけどカバー範囲内に収まりました。
 人命救助を優先したおかげでとてもよい結果になりました。リベリスタの被害は相対的に上がりましたが、それも勲章の傷というやつでしょう。