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魔王襲来。或いは、勇者と魔王の最終決戦。

● 魔王襲来
 胸と額から血を流し、頭部から伸びた禍々しい2本の角は、片方がへし折れていた。高価な布で設えられたゴシック調の衣服は、血と泥に塗れ、ぼろぼろだ。赤い瞳に怒りの炎を宿し、彼はここまで逃げ延びた。
 Dホールを潜り、やって来たのはボトムの世界。ある田舎町の草原の片隅、今にも降ってきそうな満天の星空を見上げ、美しい、と呟いた。荒廃した彼の世界では、すでに星空の輝きは失われている。
 ここで死ぬのも悪くない。
 そう呟く彼は、所謂「魔王」と呼ばれる存在であった。
 最も、王であったのはほんの数時間前まで。納める国を失い、臣下や兵士を失って、敗走者と成り果てた彼はすでに「王」ではない。
 もとより、人間達にとって彼は、はじめから「王」ではなかった。圧倒的な力と、恐怖による支配。いつか討伐すべき大敵として数百年は君臨しただろうか。何人もの刺客を返り討ちにし、勇者と呼ばれる人間を退け続けた。
 血と、暴力に彩られた毎日を過ごしていた彼のもとに、通算13人目になる勇者が訪れたのはつい昨日のこと。
 城に配置していた部下を軒並み殲滅し、傷つきながらも魔王の元に辿り着き、そして彼を追いつめたのだ。潔く首を差し出すことも考えたが、命を賭して自分を逃がそうとした忠臣のことを思うと、それもできない。
 そうして彼は、無様と思いつつも、この世界へと逃げ延びた。

 ボトム、と呼ばれる下位の世界に訪れ、はじめに魔王が感じたことは、この世界の不安定さであった。力ない、彼からすれば塵芥に等しい人間が溢れかえる一方で、その中に、極々僅かではあるが、強い力を持った者がいるのを感じた。
 思案に費やした時間は僅か。
 最期の望みをかけ、彼は言う。どこかで自分の来訪を察知し、覗き見ているであろう誰かに、先手を打って話をもちかけたのだ。
『何者か知らぬが、我に力を貸してもらいたい。勇者どもを退け、我の帰還を手助けせよ。さすれば、この世界に危害は加えない』
 断るのならば、自身の命を糧にした最大魔術を使用するつもりでいた。じわじわと土地や人を蝕む猛毒をまき散らす術だ。
 それを使えば、この世界の5分の1程度の土地を毒世界に変えることができるはずだ。
『もっとも、お前達にとっては勇者に加担し我を討った方が都合がいいのかもしれないがな……。これは取引だ。我はこの世界を盾にとっている。どうするね? 勇者が来るまで、そう時間はないだろう。勇者との戦いで我が命尽きようとすれば、容赦なく術を発動させる』
 術の発動までに多少の時間はかかる。
 それまでに、魔王を討伐できるのであれば、勇者に加勢するのもいいだろう。
 魔王も、勇者も、ボトムの世界の住人からすれば等しく危険な異邦人である。

● 勇者と魔王と最期のクエスト
「アザーバイド(魔王)からの提案は、自分に強力してアザーバイド(勇者)及びその仲間から逃げる手伝いをしろ、というものよ」
 敗走し、傷ついているとはいえ相手は魔王だ。強力な魔術を行使できることは既に判明している。彼に暴れられては、殲滅するのも一筋縄ではいかないだろう、と『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)は語る。
「魔王も勇者も、善も悪も関係ないもの。この世界にとって、どちらも等しく災厄でしかないのだから。だから、やり方はあなた達に任せるわ」
 魔王について、勇者の一行と一戦交えるのも良し。
 勇者について、魔王討伐に加担するのも良し。
 どちらにも組せず、勇者も魔王も等しく外敵として追い返すのも良し。
 結果として、この世界からアザーバイドを排除できればいいのだ。
「魔王は強力な全体攻撃魔術を使う。勇者一行は、オールラウンダーの勇者を筆頭に、魔術を得意とするマギ、回復術を得意とするヒーラー、接近戦を得意とするグラディエーターの4人パーティ」
 全員がある程度負傷はしているものの、勇者一行にはヒーラーがいるので魔王よりはまだ体力に余裕がある、といった状態か。それでも、元々の体力が桁違いだった魔王と比べれば、万全の状態でも魔王から見れば微々たるものだったのだろうが。
「戦いが始まってしまえば、混戦は必至。どういう位置で、どう立ち回るのか、悩みどころね」
 ネックとなるのは、魔王が使用しようとしている広域毒化魔術の存在である。それを発動される危険がある限り、ぼんやりとことの成り行きを静観しているわけにはいかないのだ。
「勇者も魔王、等しくこの世界から追い返して。よろしくね」
 と、そう言って。
 イヴは仲間達を送り出した。


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:病み月  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2014年11月08日(土)22:57
おつかれさまです、病み月です。
最近、喉を痛めました。風邪気味です。皆さんは、大丈夫ですか?
今回は、異世界から来た魔王と勇者の決戦に介入するミッションです。
リベリスタ達は、どのような役割で、決戦に介入するのか。
それでは、以下詳細。

● 場所
田舎町にある、星の見える草原。真夜中で、車や人の通行もほとんどない。
草原は見晴らしがよく、姿を隠す場所はほとんどない。地面の隆起を利用するか、所々に植えられている木々を隠れ蓑にすることは可能かもしれないが、多人数は無理。
Dホールも開いているので、破壊も忘れずに。

●ターゲット
アザ―バイド(魔王)
ゴシック調の衣装に、赤い目、片方の折れた角。傷だらけの身体。満身創痍といった風情だが、まだ死にたくはないらしい。
この戦いを生きのびた後、どうするつもりなのかは不明。
このまま勇者に殺されるくらいなら、世界中に毒を撒き散らすつもりでいる。それが嫌なら逃げるのに協力しろ、とアークにもちかけた。
【業火】【氷結】【雷陣】【圧倒】【ブレイク】の効果を持つ範囲攻撃を得意とする。

アザ―バイド(勇者一行)
(勇者)、(マギ)、(ヒーラー)、(グラディエーター)の4人パーティー。
勇者は近距離魔法と剣伎を合わせた技を使用。
マギは遠距離広域魔法を使用。
ヒーラーは回復術と支援魔法を使用。
グラディエーターは大剣や格闘技など、肉弾戦を得意としてる。
それぞれ、正義の名の元に魔王の配下と戦い続け、精神的に疲労を感じている。しかし、魔王討伐という任務には忠実。
魔王が、ボトムの世界に毒を撒こうとしている、ということは知らない。


みなさんのご参加、お待ちしています。
参加NPC
 


■メイン参加者 5人■
ノワールオルールマグメイガス
セレア・アレイン(BNE003170)

離宮院 三郎太(BNE003381)
ノワールオルールインヤンマスター
赤禰 諭(BNE004571)
ハイフュリエミステラン
セレスティア・ナウシズ(BNE004651)
アウトサイドマグメイガス
月草・文佳(BNE005014)
   

●魔王と勇者
 満天の星が降り注ぐ草原。澄んだ、湿っぽい空気に混じる濃厚な血液の匂い。ゴシック調の衣装に身を包んだその男は血に塗れ、荒い呼吸を繰り返す。男の名を知るものは居ない。彼は、数百、数千年も昔から、ただ(魔王)と呼ばれ続けていた。
 彼もそれを良しとし、眷族を配下とし、その世界のある程度を支配し続けた。彼を倒しにやってくる人間を返り討ちにし続けている間に彼はすっかり人間社会の敵として認定された。
 それでも、大半の刺客は魔王にとって脅威にならない。そもそも彼の元に辿り着く人間は極少数。
 だが、先日彼を討ちに現れた(勇者)と名乗る男は違った。仲間と共に、彼の配下を殲滅し、城を蹂躙し、魔王に致命傷を与え、敗走へ追い込んだ。
 偶然に見つけたDホールを潜り抜け、辿り着いたボトムの世界。星の降る草原の真ん中で、彼はボトムの世界のリベリスタに共闘を持ちかけた。
 勇者を撃退するのに力を貸せ。もし力を貸さず、自分が勇者に倒されるようなことがあれば「世界を侵す毒」を撒き散らして死ぬ、とそう告げた。この世界を盾にとった。
『来たか……』
 そう呟いて、魔王はゆっくり顔をあげる。
『見つけたぞ。魔王』
 Dホールを潜り抜け、草原に現れたのはこちらも満身創痍な(勇者)とその仲間達だった。

●魔王撃滅作戦始動
 魔王の手から放たれたレーザー光線のような魔弾を(グラディエーター)の大斧が受け止める。グラディエーターの肩が抉れ、血が溢れる。(ヒーラー)が呪文を唱えると、グラディエーターの肩の傷はゆっくりとだが癒えていく。(マギ)の放った火炎の魔法を、魔王は片手で払いのけた。
 その隙を突いて、勇者が魔王に接近。大上段に掲げた勇者の剣を、魔王は片手で受け止めた。
 上空から、その戦いを見降ろす鴉が1羽いた。

「迷惑極まりないですね。勇者も魔王もゴミ屑のように纏めて揃って去りなさい」
 式神を通して戦場を確認し、『影人マイスター』赤禰 諭(BNE004571)は吐き捨てるようにそう言った。幸い、周囲に一般人の姿はなく、勇者と魔王の戦闘に誰かが巻きこまれる、ということはないだろうが、それでも、わざわざボトムにまでやって来てこうして激戦を繰り広げているのだ。
 まったくです、と頷いて『ラビリンス・ウォーカー』セレア・アレイン(BNE003170)は草原へと足を踏み入れた。
「えぇ。皆さん、よろしくお願いします」
 と、離宮院 三郎太(BNE003381)もその後に続く。
 続々と草原に足を踏み入れるリベリスタ達を確認し、勇者一行と魔王は戦闘の手を止めた。こちらの様子を、訝しげに観察しているのは、両者にとってリベリスタ達が敵か味方か判然としないからだ。
「いらっしゃいませ、異世界から来やがった面倒事の皆様!」
 セレアは片手を空へと向ける。彼女の唱える呪文に呼応するようにして、空には巨大な魔方陣が描かれる。魔方陣を見上げるアザ―バイド達。溢れる魔力の強大さから、その危険性がよく分かる。勇者一行は後退、魔王は自身の周囲に魔力の盾を展開し身を守った。直後、放たれる魔力の鉄槌。流星の如く降り注ぐ魔弾が、皆の視界を埋め尽くした。

「あたしは、面倒事が嫌いなんだ」
 草原を駆け抜け『ツンデレフェリエ』セレスティア・ナウシズ(BNE004651)は勇者一行に近づいていった。
「そこの勇者諸君に告げる-。こちらはこの世界の大魔王である。直ちに武器を捨てて投降しろとは言わないから、君達が連れてきた厄介者を叩き潰すのを手伝いなさーい」
 回復役を担うセレスティアの出番はまだ先だ。今はまだ手が空いている。その間に、少しでも勇者一行の出方や姿勢を窺おうと、こうしてコンタクトを取りに来たのだ。
 他の仲間は、魔王を相手取っている。
 セレスティアの言葉を聞き終え、勇者一行は顔を見合わせた。

 砂煙の間を突き抜けて、銀弾が魔王の眉間を狙う。生憎、魔王の展開した魔王の盾で弾かれ弾丸は魔王の元には届かないが、強襲には成功したようだ。怯んだ魔王の眼前に三郎太が滑り込んだ。振り抜いた拳が魔王の胸を打ち抜く。
「戦闘は火力、と誰かが言ってたわ。魔王が強大なら、何かされる前に火力で圧殺すればいいのよ…………………………たぶん?」
 魔弾の射手は『狐のお姉さん』月草・文佳(BNE005014)だ。まっすぐ片手を魔王に向け、文佳はふふん、と鼻を鳴らした。

『我の邪魔をするな……』
 魔王が叫ぶ。同時に魔王は大量の魔力を放出し、三郎太の身体を弾き飛ばした。地面が抉れ、土砂を撒き散らし、魔王はゆっくりと草原を見渡した。
『交渉は決裂か? ならば、人間ども、全員纏めて葬ってくれるわ』
 放出した魔力を、左右の拳に集中させ魔王はそれを三郎太へと向けた。彼が最も魔王の近くにまで接近していたからだ。それ以外の理由はない。パチン、と魔王が指を弾くと拳に集まっていた魔力は解き放たれ、業火と化して三郎太の身体を包み込んだ。
 火炎に包まれる三郎太を助けるべく、セレスティアが駆け出す。セレスティアの進路を開くために、文佳の弾丸が魔王を牽制。魔王の視界を塞ぐのは、セレアの降らせる魔力の流星だ。鬱陶しいとばかりに魔王は腕を振り払う。それだけで、弾丸は弾かれ、魔王に届かない。
『鬱陶し……なにっ!?』
 流星に紛れ、無数の影人が魔王に飛びかかる。魔王の手足にしがみ付き、その動きを封殺。至近距離から放たれた重火器の砲弾が、魔王を捉える。衝撃波と爆風が砂塵を巻き上げ、視界を埋め尽くす。その最中、セレスティアは三郎太を救出し、戦線離脱。
「さて、勇者も魔王も多勢に無勢が定番です。押しつぶされ、精々無様に足掻きなさい」
 赤禰の指揮で、影人たちはわらわらと魔王へと詰め寄っていく。単体かつ強力な敵には、弱くとも数の多い戦力で対抗する。多勢に無勢。力で劣るのなら、それ以外で補えばいい。結局のところ、戦は総戦力の多い方が勝つのだ。いくら魔王が単体で100の戦力を誇ろうとも、こちらは総合戦力で100を超える数値を叩きだせばいい。
「魔王を倒すという利害が一致してる上に、こっちに来る原因作ったんだから手伝って貰うわよ」
 銀弾を撃ち出し、文佳は勇者一行にそう告げた。勝手な事を! と、怒鳴るのはグラディエーターの男だ。文佳は眉間に皺を寄せ、溜め息を零して首を振る。
「どんな言い分があるにせよ、他所に迷惑持ち込むような世界の人達に、こっちから頭下げる理由もないのよ?」
 更に言い返そうとするグラディエーターを、マギとヒーラーが押し留める。今は喧嘩をしている場合ではない。
『お前達が何者かは知らないが、今は仲間と見ていいんだな?』
「あ、こっちは前衛足りないからそっちでよろしくっ!」
 前線近くでセレスティアが叫ぶ。魔王の業火に焼かれ、セレスティアと三郎太は全身に火傷を負っていた。無言で頷き、勇者はグラディエーターを伴い駆け出した。2人の進路を確保するべく、マギは呪文を唱え、閃光弾を放つ。
 その直後だ。
 魔王の放った氷の柱が、影人達を刺し貫いた。

 氷柱の槍に貫かれた影人が、式符に変じて地面に散らばる。それだけでなく、氷柱の範囲内に居た三郎太とセレスティアもまた、その身に冷気を浴び、体の一部を凍りつかせた。
 セレスティアの回復が追いつかない怒涛の連続広域魔法攻撃。数を揃えていたはずの影人も軒並み姿を消している。魔王の魔法に風穴を空けたのはグラディエーターだった。身体を張った突進が、吹雪の壁と突き破った。
 傷つき倒れるグラディエーターを、光の粒子が包み込んだ。グラディエーターの体力を回復させたのはヒーラーの回復魔法だ。連戦に次ぐ連戦に疲れ果て、ヒーラーの魔力は限界らしく、回復量は微々たるものだった。
「他所の世界の、しかもボロボロに負けてる魔王とかこっちの世界にはいらないので滅びてください!というか滅ぼします!」
 れっつ☆まれうす!
 なんて、叫びながらセレアは杖を振り回す。空中に描かれた大きな魔方陣から降り注ぐ魔力の鉄槌が、吹雪や業火を撃ち消しながら魔王を襲う。さすがの魔王も、無数に降り注ぐ魔力の流星を無視できないらしく、視線を上にあげ、そちらの対応に魔力の壁を展開した。
 空いた懐に滑り込んだのは勇者だ。その背後には三郎太も続く。
『ぬぅっ!?』
 防御も回避も間に合わない。勇者の剣が魔王の胸部を大きく切り裂いた。飛び散る鮮血。追い打ちをかけるべく三郎太が拳を振り上げ、飛びかかる。
 だが……。
『まずいっ!!』
 悲鳴をあげたのは勇者であった。直後魔王の放った雷が勇者と三郎太の全身を撃ち抜いた。空気が震えるほどの衝撃と、目を開けてられないほどの閃光。吹雪も業火も雷も消えた後に残っていたのは、黒焦げになって気を失った三郎太と、地面に膝をついて荒い呼吸を繰り返す勇者の姿であった。
 
「これ、やっばい……」
 土砂に埋もれたセレスティアがそう呟いた。体中泥だらけのまま、どうにか這い出し、回復術を唱える。魔王の攻撃に巻き込まれた仲間たちに回復術を使用する。満身創痍でありながら、未だこれほどの戦力を誇る魔王を賞賛すべきか、その魔王を敗走に追いやった勇者たちを讃えるべきか。
 どちらにせよ、魔王を放置しておけない。魔王に毒をばら撒かれる心配がある以上、即刻、できれば一撃で仕留める必要がある。
「インスタントチャージ……はまあ必要ないかな?」
 後衛に控えた文佳が、杖を構え銀弾を精製する。狙いをまっすぐ魔王に合わせ、弾丸を放つタイミングを計っているようだ。今の攻撃で、三郎太だけでなく、グラディエーターも戦闘不能状態に陥ったようだ。勇者パーティのヒーラーも、すでに戦力にはならないだろうほどに疲弊している。
「勇者パーティも、邪魔をするなら纏めて排除します。朱雀招来で纏めて灰にして差し上げましょう」
 一度は全滅させられた影人を、諭は再度召喚する。セレアがマレウスステラを連発し時間を稼いでいる間に、崩れた戦線を立て直す算段だ。これ以上戦闘を長引かせると、こちらの戦力も減って戦闘継続が難しくなる。
 セレアの魔流星と、魔王の業火が相殺し、一瞬の静寂が訪れた。駆け出す勇者と、援護するマギ。さらに、赤禰の放った火炎の鳥が勇者を追い越し、魔王へと襲い掛かる。業火が、魔王を覆い尽くし、熱風を辺りに撒き散らす。

 赤禰の放った業火の鳥に身体を焼かれながらも、魔王はまっすぐ勇者と、その背後の赤禰を見据えていた。雷陣を片手に集め、矢のような形状を形作る。浴びせかけられる影人の砲弾を無視し、視線はまっすぐ勇者へと向けた。自分を此処まで追い詰めた宿敵だ。せめて、一矢報いねば、家臣たちに合わせる顔はない。
 毒を撒くには、時間が足りない。自身の慢心と、リベリスタ達の猛攻による大幅な大量の減少が原因だった。炎に巻かれながら、勇者を睨みつける。勇者の剣が魔王の首筋から胴にかけてを切り裂いたその瞬間、魔王の拳は勇者の腹に触れた。
 雷の矢を放つ。勇者の剣が振り抜かれるのと、魔王の矢が勇者を貫くのは同時だった。
 遠のく意識の中、魔王は意識を失い倒れる勇者の姿をその目に焼き付ける。勇者の背後に位置していた諭も、雷の矢に射抜かれ倒れていくのが見えた。
『………無念だ』
 だが、まだ戦える。遠のく意識を繋ぎとめ、なんとか体勢を立て直す魔王。同じように、倒れかけの諭と視線が交差する。諭の指先が、まっすぐに魔王を指した。瞬間、魔王の身体を襲うエネルギーを奪われる不快な感覚。
 タン、と軽い音が響く。
 文佳の放った銀の弾丸が、魔王の眉間を撃ち抜いた。

●戦後処理
 意識不明の三郎太とグラディエーターが寝ている横で、勇者パーティとリベリスタは顔を突き合わせ、会話を交わしていた。
 リベリスタが勇者たちに伝えたことは、この世界の崩壊に関する話だ。勇者たちには早々にこの世界から撤退して欲しい、と文佳は彼女達にそう伝える。
「べ、別に人道とかそういうのじゃないけど!」
「騙して悪いが仕事なんでね……死んで貰おう! ……とは言わないけど」
 セレスティアの言葉を引き継ぎ、脅しをかけるのは文佳だ。
「勇者の人達、とっとと元の世界にお戻りくださいです。そうでなければ全力で滅ぼします。繰り返します、とっとと帰らないなら全力で滅ぼします」
殺意を込めセレアが告げる。脅しをかける3人の様子を、諭は苦笑いを浮かべて眺めていた。
 万が一、勇者パーティと戦闘になることを警戒し、重火器を手にした影人を配置している辺り、彼も勇者一行のことを信用しきってはいないらしい。
 冷や汗を垂らし、勇者は両手をあげて見せる
『帰る。帰るよ……。ぼくたちも、無意味に殺し合いなどしたくないからね』
 魔王討伐以外に興味はないんだ。
 そう言って、勇者一行は帰っていった。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■

お疲れ様でした、依頼は成功です。
勇者パーティと共闘し、魔王の討伐完了。勇者一行にも穏便に帰還を促すことに成功しました。
この度は、ご参加ありがとうございました。
勇者と魔王の決闘に参入し、決戦を終末させる今回のミッション、いかがでしたでしょうか?
お楽しみいただけたなら幸いです。
それでは、縁がありましたらまた別の依頼でお会いしましょう。