●革醒者テロリスト『SIN』 豪華客船『QUEEN ARISA』―― 船は今、フィクサード団体『SIN』により占拠されていた。 乗客には一般人だけではなく革醒者も乗っていたのだが、圧倒的な力の差により制圧されたという。 「……馬鹿なっ!? 能力がまるで使えないだと……!」 「くっくっく。驚くのも無理はない。この『歪んだ天秤座』の能力の前には如何なる革醒者も無力となるのだ」 フィクサードが取り出したのは、奇妙なアーティファクトだった。バランスの悪い天秤が揺ら揺らと揺れている。 「そのアーティファクトは……まさか!?」 「その通り。女性、および三十五歳未満の革醒者を一般人並に弱体化させるものだ。これさえあれば革醒者軍団を封じることなど容易い」 「……だが、われらの中にもその条件に当てはまらないものもいるぞ」 「そのようだな。だが物の数ではあるまい」 フィクサードは哂う。海に逃げることもできずに追い詰められるリベリスタ。その運命を思うと、思わず笑みが浮かぶ。 ●チーム『エクスペンダブルR-35』 船内から一報を受け、アークが動き出す。 情報は伝わったが船は『万華鏡』の範囲外。船の中に誰がいるかは分からない。敵フィクサードの数も、抵抗を続けているリベリスタの数も不明だ。 だが手をこまねいているわけにはいかない。先ず第一陣として三十五才以上の男性チームをぶつけ威力偵察を行い、戦力把握を行った後に第二陣を組む。そんな二段構えの作戦を取ることになった。 「ふん、俺たちで倒してしまってもいいんだろう?」 煙草を吸いながら『気焔万丈』ソウル・ゴッド・ローゼス(BNE000220)が豪快に笑う。作戦の趣旨は理解している。その上での発言だ。 「アーティファクトに守られる程度のヤツに、負けるつもりはネェぜ」 愛刀を手に『元・剣林』鬼蔭 虎鐵(BNE000034)は牙をむくように笑う。目指すは戦士の頂。こんなところで足踏みしている暇はない。 「悲しいな。有用に使えば平和をもたらすアーティファクトなのに」 テロ行為を哀しむように『地球・ビューティフル』キャプテン・ガガーリン(BNE002315)が嘆く。この美しい星で、何故戦いが続くのか。 「それも人間というものだ」 幾多の戦場を渡り歩いた『T-34』ウラジミール・ヴォロシロフ(BNE000680)はそういった力に溺れる人間をいくつも見てきたと、ため息をつく。 「悲しきは人のサガ、か」 それだけを口にして『緋猿』葉沼 雪継(BNE001744)は瞳と口を閉じる。余計なことを言ったとばかりに肩をすくめて。 「殺さずに済ましたいが……どうなるかね」 『ウワサの刑事』 柴崎 遥平(BNE005033)は煙草を灰皿で潰して、立ち上がる。愛銃の確認をして、歩を進めた。 「チーム『エクスペンダブルR-35』……出ます!」 オペレーターの声に送られて、ヘリが飛び立つ。 目指すは海上に浮かぶ豪華客船。革醒者テロリスト『SIN』を止める為に―― |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:どくどく | ||||
■難易度:NORMAL | ■ リクエストシナリオ | |||
■参加人数制限: 6人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2014年11月02日(日)22:47 |
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■メイン参加者 6人■ | |||||
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● エンジンルーム。 「くははははは! ようやく殺しあえるな、虎鐵!」 「げ……ヤなやつに会ったぜ」 『元・剣林』鬼蔭 虎鐵(BNE000034)は聞き覚えのある声に心底嫌そうな声を上げる。剣林に所属していた時に散々ケンカを吹っかけてきたアイツの姿を認めて。 ラウンジ。 「よう、相変わらずイカした頭だな」 「腐れ縁とはよく言ったものだ」 『気焔万丈』ソウル・ゴッド・ローゼス(BNE000220)は葉巻を吸う戦友の姿を見かけ、廃棄ダクトから姿を現す。時に味方であり、時に敵。今は、敵として。 操舵室。 「貴殿とここで出くわすとはな」 「これも任務だ」 『T-34』ウラジミール・ヴォロシロフ(BNE000680)は祖国の同志に出会い、黙礼する。互いに言葉少なく、しかし躊躇することなく背中を預ける。 船倉。 「四方やここで会えるとは。世の中、わからないものですな……樹殿」 「戦場に友とはこれも粋。酒を酌み交わしたい所だ」 『緋猿』葉沼 雪継(BNE001744)は兄弟子に出会い僅かに破顔する。だがそれも刹那。猿の仮面を付けて、符を構える。 甲板。 「生きていたことに喜ぼう。同じ地球(テラ)の同胞として」 「ああ、喜ぼう。生きて復讐する機会がやってきたことに!」 『地球・ビューティフル』キャプテン・ガガーリン(BNE002315)は犬頭の宇宙飛行士を見て、優しく語り掛ける。対照的に相手は怒りを返す。 客室。 「十五年ぶりにコンビ復活か」 「長いものだな。『捜査一課』ぶりか」 『ウワサの刑事』柴崎 遥平(BNE005033)は船の中でかつて警察署内で働いていた男に出会う。警察を辞めた男ではあるが、その心には正義の炎が宿っている。 ● 「龍陽……テメェ、俺と戦いたいが為にこんなテロ組織に入りやがったのかよ」 「ああ、『SIN』の狙いなどどうでもいい、血が滾るぜ!」 虎鐵は眼前の男と切り結ぶ。龍陽と呼ばれた男は日本刀を手に虎鐵に切りかかる。 虎鐵の刀技が一撃必殺なら、龍陽の刀技は神速。居合いによる一閃が得手だが、それに拘らない多彩な攻めを持っていた。 「こっちはテメェを相手してる余裕はねぇ……んだがな!」 会話の途中で繰り出される刃に虎鐵は肝を冷やす。記憶にある龍陽の刀の速度よりも、数段速い。激戦を潜ってきた猛者の動きだ。機を逃さず最良の手を繰り出す。その手数もかなりの数があるのだろう。 「ここでテメェとの縁を斬ってやるよ!」 抜き身の刀を大上段に振り上げる。重心を真っ直ぐに、足をしっかり踏みしめて、力が体中から刀を持つ手の平に伝わるように。滑るように足を踏みだし、一気に振り下ろす。ただ刀を振り下ろすだけを鍛えた虎鐵の努力の形。 「ああ、殺しあおうぜ!」 刀と刀が競り合い、刃金の音が響き渡る。 「これで八十七戦目か。四十三勝四十三敗だっけか、ニクラス」 「はっ。オーストリアの戦いは無効だろうが。俺のほうが勝ち越しだ」 ニクラスと呼ばれた男は鉄槌を構えてソウルに向かって言葉を返す。 ソウルがパイルバンカーを構え突撃すれば、ニクラスは鉄槌を振り上げ距離をつめる。真正面から殴りあう。それが互いのスタイル。駆け引きなど何もない。あるのは相手に負けたくないという意地と、 「どうでもいいさ、今回も俺が勝つ! それだけだ!」 「違いない!」 戦いを楽しもうという純粋な闘争心。それが長年続いているソウルと二クラスの関係だった。数多の戦場で渡り合い、時に背中を預け、時に戦う。理由は様々だ。金の為、女の為、ロマンの為、たった一杯の酒のため。本当に様々だ。 殴る、殴られる、殴る、殴られる、殴る、殴られる。互いに足を止めて、重量武器で殴りあう。鍛え上げられた筋肉が衝撃を吸収し、互いに倒れることなく殴りあう。 「おまえの葉巻の吸い方が気に入らなかったんだよ! Vカットとかスカしやがって!」 「フラットで妥協するヤツが葉巻を語ってるんじゃねぇ!」 もはや互いに使命のことなどどうでもよくなっていた。 「任務を開始する」 ウラジミールは短く呟き、その後に同志のイワノフが続く。祖国の革醒者で『閣下』の血縁に当たる者だ。祖国にいるはずの彼が何ゆえこの船にいるのか。その任務はなんなのか。それを問い詰めるつもりはウラジミールにはなかった。 ただ、瞳を見る。それだけで敵ではないことを理解し、共闘する。ウラジミールは二本のナイフを抜き、イワノフは耐久性に優れるといわれる突撃銃を構えて後に続く。 イワノフが射撃でかき乱し、ウラジミールが近づきナイフで制圧する。ウラジミールが囮になり、イワノフが遠距離から弾丸を放つ。サポートに適したものがサポートに回り、攻撃に適したものが攻める。状況によっては二人同時に突貫する。 互いに言葉少なく。しかしその心は強く繋がっている。どちらがどう動けば効率がいいか。それを戦場や敵に応じて瞬時に判断することも凄いが、特筆すべきは認識にずれがないことだ。 まるで長年の仲のように息を合わせて、二人は進む。 「前に会ったのはいつのころか。互いに年を取りましたな、雪の字」 「積もる話もありましょうが、今は目の前の敵を片付けるのは先決。さあ、共に参りましょうぞ」 雪継は兄弟子の樹佐門の変わらぬ姿に昔を思い出していた。同じ師の元で学んだインヤンマスター。ナイトメアダウンで一家を失った彼は、その無念を心に閉じ込めて同じ傷持つ雪継を導いてくれた。 樹佐門はフリーのリベリスタに。雪継はアークに。立場こそ違えど、その魂と心のあり方は同じだ。力により不幸になるものを、助けにいく。 「フィクサードが人質を取ってリベリスタを抑えこんでいる様子だな。ならば俺がこの状況に一石を投じるのが筋というものか」 二人は船倉の見張りに向けて符を投げる。雪継の符は鴉に。樹佐門の符は白い鳩に変わる。鴉は低空を飛び、鳩は上空から見張りに迫る。異変に気付き仲間を呼ぼうとした見張りの腕を鳩が襲って通信機器を弾き飛ばし、急上昇した鴉が見張りの顎を跳ね上げる。そのまま言葉なく気を失う見張り。 二人は頷きあい、歩を進める。 「かの実験には私も心を痛めていた」 「ああ実験だったな。『革醒者は宇宙に耐えれるか否か』という題目のな!」 ガガーリンは目の前の男の攻撃を受けながら、会話を続けていた。正確には、相手の怒りと理不尽を真正面から受け止めていた。某国の行った非人道的実験。帰る見込みのない宇宙探索先に乗った犬頭の革醒者――クドリャフカ。『スプートニク二号』と呼ばれる槍を扱い、宙を舞うように攻撃を続ける。 ガガーリンはその攻撃を『STA-099・チャレンジャー』で受け止める。ロケットの外壁で作られた盾は、しかし多角的に攻めてくるクドリャフカの攻撃を完全に塞ぐには至らない。 否、受け止められないのは彼の怒りだ。国家の思惑で宇宙空間に放逐され、助けもなくさまよった革醒者。それが恨みに染まるのは当然といえよう。 ガガーリンは槍の衝撃に耐えながら、クドリャフカの心を癒そうと必死に頭を悩ませていた。もはやその国家はなく、恨むべき人間も墓の下だ。復讐に意味はない……そんな言葉を言うことは簡単だ。 だがそれに何の意味がある? 彼は欲したのは助けでそれは得られなかった。過去は変えられないのだ。 「これがこの船の地図だ。そして見張りはここ。カメラはこの位置だ」 遥平は隠密を続けながら調べた地図を広げ、目の前の男に説明を開始する。 「中に人質が閉じ込められているのか」 男は思案するように眉を顰める。太刀弘樹。遥平と同じく静岡県の警察だった男だ。彼も遥平と同じくナイトメアダウンで誰も救えず絶望し、警察を辞した。風の噂で私立探偵になったと聞いていたが、まさかこの船で出会おうとは。 地図には大部屋の入り口に赤丸と、部屋の中に青文字で『人質』と書かれてある。船内の客を大部屋に集め、銃で武装したテロリストが見張っている。見張りに気付かれれば、人質に攻撃可能な布陣である。そして普通に進めば、カメラに見つからずに接近することは難しいだろう。人質を気にしなければ攻略難易度は容易いのだが―― 「最優先目的は人質の安全だ」 「言うまでもない。辞めたとはいえ、オレ達は警官だ」 二人の意見は見事に統一されていた。リベリスタに戻ったとはいえ長年警官として生きてきた遥平と、元警官の太刀。その精神は十五年前の『捜査一課』のままだった。変わらぬ相棒の精神に、思わず笑みが漏れる。 「作戦はアレだ」 「八島の時のだな」 二人は笑みを交し、走り出す。 ● 「そらそらぁ! どうした虎鐵、さっきからあたらねぇぞ!」 エンジンルームを縦横無尽に駆け巡る龍陽。その速度についていけないのか、虎鐵は刀を構えて微動だにしない。 「こいつ……なんだかんだで強いから性質悪ぃんだよ」 事実、速度で言えばかなりの部類だ。相手が攻撃する前に先手を打ち、そのまま速度で圧倒する。それが龍陽の勝ちパターンだ。一撃自体は大したことはないが、しかし幾度も受ければこちらの体力が尽きるだろう。 なら闇雲に剣を振りまわすか? 一撃が決まればこちらのペースに盛り返せる。ラッキーヒットでも当たれば勝ちなのだ。ならば確率は低くとも刀を振るに限る―― (……って焦ったら負けなんだよな) 頭に血が上りながら、心のどこかで虎鐵は冷静になっていた。闘争にまみれた頃ならそうしていただろう。帰るべき家、護るべき家族。それが虎鐵の怒りを覚まし、自分自身の戦う意味を思い出す。 「とっととテメェを倒して、家族の元に帰るんだ!」 世界が凍る。少なくとも虎鐵にはそう感じた。あれだけ高速で動いていた龍陽の動きがはっきりと見える。集中に集中を重ねた鋭い野生がその動きを捕らえた。 「とっとと死ねや!」 振り下ろされる刀。確かな手ごたえ。 動かなくなった龍陽を見下ろし、虎鐵は刀を幻想纏いに直した。 「そういえばトーマスはどうした? まさか死んじまったのか?」 「アイツならアメリカでカフェやってるよ。名前を聞いたら驚くぜ。『エンジェル・ホリデイ』さ」 ともすれば日常会話とも思える言葉の応酬だが、発するたびにニクラスとソウルは破界器を振るっていた。口を切ったのか血が流れ、互いに一歩も引いていない事を示すように二人の後ろはまるで汚れていない。二人の周りだけ、汗と血で汚れていた。 「ハハッ! 『天使の休日』か。そういえばあいつの淹れたコーヒーはうまかったからな。案外繁盛しているんじゃねぇか?」 ドカッ! ソウルのパイルバンカーが叩き込まれる 「かもな。コイツが終われば飲みにいくか?」 ドカッ! ニクラスの鉄槌が振るわれる。 「悪くねぇ。元四番突撃部隊の連中も誘おうじゃないか。ハリーとアランとモーレスだったか」 ドカッ! 「おいおい、アンドレのことを忘れてやるなよ」 バキッ! 「いたなぁ、あのマザコン野郎」 「もうろくしたな。そろそろ引退か?」 「ふざけるな! 俺はまだまだやれるぜ。おまえこそ、足がフラフラじゃないか」 「ああ、酒が回っただけだ。メキシコでいい酒が見つかってな」 「そうかい。俺にも飲ませな」 二人の会話は終わらない。どちらかが力尽きるまで。 ただ真正面から殴りあい、語り合う。 ウラジミールとイワノフは、操舵室に通じる一つ前の角で止まり、戦力を分析していた。 見張りは三人。ただし時間ごとに増えてくる。占拠に時間がかかれば援軍が来て死。占拠できてもやってくる援軍に耐え切れなければ死。 それでも二人の行動に躊躇はなかった。ウラジミールが先陣を切り、イワノフが援護射撃をする。二本のナイフを構えたウラジミールは、不意をつかれて出足が遅れたテロリストたちにナイフを突き出した。この距離なら銃よりもナイフが有利だ。 一人目。銃を盾にしてナイフを捌こうとする。腰のナイフを抜く暇を与えずに、ウラジミールは相手の足を払ってバランスを崩す。僅かに崩れればそれで十分。そのまま肩をぶつけて相手を転ばし、脳に衝撃を与える。 二人目。抜いたナイフを手にウラジミールに切りかかる。軍隊経験があるのだろう。多少荒いが急所を狙い、相手を制圧するナイフの動きだ。そのナイフをくの字に曲がったパリイナイフで引っ掛けて、もう片方のコンバットナイフを喉元に突き立てる。 「ナイフにはこういう使い方もあるのだよ」 三人目――を見れば足を撃たれて伏せていた。イワノフの射撃だろう。 降伏勧告を受け入れたテロリストを室内で縛り、無力化する。 だが戦いはまだ終わらない。操舵室にやってくる援軍の足音。 寡黙なロシヤーネ達はそれを迎撃する為、無言で動き出す。 「さすが樹殿、多彩な技をお持ちで」 雪継は樹佐門の符術に舌を巻いていた。攻撃、支援、回復……様々な状況に合わせて数多くの術を使い、状況を解決する。まだまだ自分は未熟か、と雪継は自分を責めていた。 「それは違うぞ、雪の字。多彩な術を使うことも符術のあり方の一つ。されどそれは皆が目指すべき道ではない。 御主には御主の目指すべき道がある。そのために切磋琢磨するのが御主の『道』だ」 「ふふ。相変わらずですな」 樹佐門の言葉に苦笑する雪継。けして道を示さず、だが助言を忘れず。無骨な雪継からすればその距離が心地よい。未熟は当然。人生是日々鍛練だ。戦いの術が少なくとも、自分にできることはある。 二人の活躍で船倉の人質を解放し、反逆者を捕らえる。『歪んだ天秤』の場所を聞けば、彼らは笑みを浮かべて箱を指差した。その中には。 「これはまた。木を隠すには森というが、ここまでの偽者を用意するとは」 箱の中を見た樹佐門はその中にある大量の天秤を見て呻きを上げる。まとめて潰すか? いや、下手に破壊すればどうなるか分からないのがアーティファクトだ。確実に本物を見つけ、適切な形で壊さなくてはいけない。 「どうやら俺の出番のようですな」 雪継は天秤が入った箱に手を当てて、意識を沈める。道具に語りかける雪継の術。道具の声を聞き、『歪んだ天秤』を探り当てようとする。 「古道具と触れ合ってきた経験は、こう言う場面で生きてくるものだな」 『歪んだ天秤』を見つけて破壊すれば、このテロ行為は収束に向かうだろう。そしてそのときは、そう遠くない―― 「く……!」 ガガーリンはクドリャフカの攻撃に耐えていた。防御に秀でるガガーリンだが、ガガーリンは攻めの手段が少ない。 「まともに相手をしてはワタシには勝ち目はない。だが勝ち目がないことが敗北を定められているとは限らない」 「……何!?」 否、勝機はある。その兆候が、今訪れた。果敢に攻めていたクドリャフカが、膝を突いたのだ。 「クドリャフカ。キミは多彩な空中殺法を持つがタフではない。宇宙空間で衰えた身体は長期の戦いには耐えれない」 自分のたたかい方の欠点を指摘され、うめき声を上げるクドリャフカ。槍を杖代わりにして自身を支えている。あ、データ的にはロストのあるスキルを持っているという扱いで。 「私にキミの復讐心を消すことはできない。だが、その復讐を遂げさせるわけにはいかない。何故なら、これから殺そうとするものもキミと同じ地球(テラ)の子だからだ!」 ガガーリンは巨大な二枚盾を合わせる。強固な盾は強固な鈍器にもなる。ましてやそれは大気圏突入の熱にも耐える分厚いものだ。 「ワタシは屈しはしない! 何故ならばこの背には仲間達の希望と信頼、そして地球(テラ)の全てを背負っているからだ! 受けるがいい! ボイジャーハンマーッ!」 ガガーリンの一撃がクドリャフカを撃つ。その重さは星の重さ。地球全てに復讐すると誓った男は、その重みに吹き飛ばされた。 怯えるように廊下を歩く遥平と太刀。カメラに映っていることは先刻承知だ。だがそれは逃げ損ねた客員が怯えながら進んでいるように見えるだろう。 客室の見張りがそれに気付いて迫ってくる。革醒者なら運命の有無は見れば分かる。怯える一般人か、そう演技している革醒者か。彼らが捕らえた遥平と太刀は、 「なんだ。モブか。とっとと捕まえて一服しようぜ」 運命の輝きを持たない一般人に見えた。向けられた銃に両手を挙げる二人。 このとき彼らがもう少し注意深ければ、運命の輝きを隠す術の存在に思い至っただろう。そして、遥平と太刀の瞳はけして怯えていなかったことに気付けただろう。 一瞬の隙をついて、太刀が動く。近づいた相手の懐に踏み込んで、背負い投げで投げ飛ばす。それを合図に遥平が銃を抜き、素早く撃ち放つ。まるで互いが何をするかを分かっていたかのような連携。 「行くぞ」 ここからは時間の勝負だ。増援に人質を押さえられる前に人質の守りにつくのだ。 「ところで柴崎、腕は鈍ってないだろうな?」 「まだ勘が戻ってなくてな。お前はどうなんだ?」 「似たようなものさ。まぁ、何とかなるだろう」 「なんだそれは」 太刀の言葉に肩をすくめる遥平。だが気持ちは太刀と同じだった。 こいつと一緒なら何とかなる。十五年越しの共闘に安堵している自分がいた。 ● リベリスタの活躍により、『歪んだ天秤座』は回収されテロリスト『SIN』の九割は捕縛された。 捕縛できなかったものは逃亡したか、あるいは自害したか。それは分からない。 戦い終えて、六人のリベリスタはアークに帰還する。 平和な日常の待つ、三高平へ。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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