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ふわり揺蕩うメッセージ

●今、君に伝えたいことを
「わりと切実にモテたい」
 アーク本部でちょっとした用事を済ませていた時のこと。通りかかった『廃テンション↑↑Girl』ロイヤー・東谷山(nBNE000227)が突如口にした言葉に場が静まり返った。
 暫しの沈黙。次第に憐憫の眼差しを向ける者、目を逸らす者、鼻をすする者まで現れた。
「いや待って今の違う。ワタシ喪女じゃないから。……その目でこっちを見るのをやめろ!」
「すまない」
「やめろ優しくするな!」
 懐から何かを取り出し机へと強く置く。
 それはお菓子を入れるような透明なビンである。ただしビンの中では、ふわふわと白い毛玉のようなものがいくつも揺蕩っていた。どうも生きているらしい。
 これはなにかと疑問を浮かべると、これに言わされたんデスとふて腐れたままロイヤーが説明を始める。
「先日捕獲したアザーバイドですヨ。敵性ではないしこちらの世界に影響も与えないのデースけど、ちょっと困った性質があるので強制送還するところネ」
 ビンに隔離しても、懐に入れていたから特性を発揮されてしまったらしいとため息一つ。思想も何もないこの生き物は本来は風と共に自由に空を舞い、鳥が翼を休める止まり木のように人の背中や肩などに取り付くのだという。
「取り付くといってもしばらくしたらすぐに飛び立つし、身体にはなにも影響はないから問題はないのデスけど」
 内容とは裏腹に苦々しいと言いたげな顔でロイヤーが口を開いた。
「このアザーバイドが取り付いている間は、とっても素直になってしまうのデス!」
 なんだそれ。

 例えば日頃思っているのになかなか言えない言葉。感謝であったり、秘めた想いであったり、先輩のことわりと嫌いでしたであったり。
 誰かと共にあればその人へ伝えたい言葉が自然と零れてしまうかもしれない。秘密や性癖を思わず叫んでしまうかもしれない。ふんぎりがつかないことだって取り付かれた瞬間あっさりと。どこにいても、誰といても、とっても素直になってしまうのだ!
「おお! おお恐ろしい……っ!」
「……恐ろしいはいいんだけどさ」
 キャラ崩壊の危機だと身じろぐロイヤーに、思わず口にする。
「素直な気持ちを吐露するってことなら……最初の発言は……」
「……」
 神妙な顔つきになったロイヤーが机の上のビンを手に取り――力いっぱい叩き付けた。
「おま」
「ワタシだけ恥かいてたまるか! 全員道連れにしてやんヨ!」
 ぎゃーぎゃー賑やかになった本部の窓からそっと抜け出る白い毛玉。ふわりふわりと風に乗り――三高平の街へと降りていった。


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:BRN-D  
■難易度:VERY EASY ■ イベントシナリオ
■参加人数制限: なし ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2014年10月28日(火)22:07
 投げっぱなしジャーマン? そうだよ?


●何すればいいの?
 ある日の三高平です。思い思いの日常を過ごしているところに白い毛玉がやってくるでしょう。
 重さもなく目立たないこの白い毛玉がそっと身体に取り付くと、誰もがたちまち素直になってしまいます。
 それ以外の影響はなく、暫くすればまたどこかに飛んでいってしまう、そんな不思議なアザーバイドです。

 場所は三高平市内ならばどこでもOK。アザーバイドはどこにでも入り込みます。
 それは2人きりの自宅であったり、繁華街の人ごみの中であったり、何もかもを見下ろすビルの屋上であったり、1人きりの海であったり。
 日頃なかなか言えない想いや感謝や性癖を、素直な言葉や行動で表してみませんか?


●イベントシナリオのルール
・参加料金は50LPです。
・予約期間と参加者制限数はありません。参加ボタンを押した時点で参加が確定します。
・イベントシナリオでは全員のキャラクター描写が行なわれない可能性があります。
・誰かとご一緒の場合は『時村沙織(nBNE000500)』と言った風にIDと名前を表記してください。
【グループ名】タグで一括でも大丈夫です(タグ表記の場合はID、フルネーム表記は必要ありません)
・NPCと絡む場合はID、フルネームは必要ありません。名前をお呼びください。


●補足
 賑やかも良ししんみりも良しのフリーダム。ただしいき過ぎた言動・行動は「めっ」されることがございます。

 それでは皆様のご参加をお待ちしております。
参加NPC
 


■メイン参加者 20人■
ナイトバロン覇界闘士
御厨・夏栖斗(BNE000004)
ノワールオルールスターサジタリー
不動峰 杏樹(BNE000062)
ハイジーニアスデュランダル
結城 ”Dragon” 竜一(BNE000210)
フライダークホーリーメイガス
アリステア・ショーゼット(BNE000313)
サイバーアダムクロスイージス
新田・快(BNE000439)
ハイジーニアスソードミラージュ
須賀 義衛郎(BNE000465)
ハイジーニアススターサジタリー
リリ・シュヴァイヤー(BNE000742)
サイバーアダムインヤンマスター
焦燥院 ”Buddha” フツ(BNE001054)

神城・涼(BNE001343)
ハイジーニアスデュランダル
ランディ・益母(BNE001403)
フライダークマグメイガス
シュスタイナ・ショーゼット(BNE001683)
ハイジーニアスミステラン
風宮 紫月(BNE003411)
ハイジーニアスダークナイト
熾喜多 葬識(BNE003492)
ハイジーニアスレイザータクト
ミリィ・トムソン(BNE003772)
ジーニアス覇界闘士
雑賀 真澄(BNE003818)
メタルイヴダークナイト
黄桜 魅零(BNE003845)
ナイトバロンアークリベリオン
喜多川・旭(BNE004015)
アークエンジェスターサジタリー
鴻上 聖(BNE004512)
ギガントフレーム覇界闘士
コヨーテ・バッドフェロー(BNE004561)
ハイジーニアスソードミラージュ
桜庭 劫(BNE004636)

●ふわりふわりまいおりて
 賑やかになったアーク本部。その原因は勿論――
「俺の時代がきたああああ!」
 竜一である。
「おっぱいに飛び込んだりしてもそれは全部アザバのせい!」
 手をわきわきさせてダイビングタックルの構えを見せる竜一に、本気で刀を構えるロイヤー。
「俺が悪いんじゃない、おっぱ……もといアザバが悪いんだ!」
「絶対取り付かれてネーヨお前!」
 アザーバイドは一体何処に?
「あー、ロイヤーさんの胸の星条旗が何らかの事故で降りて半旗になったりしないかなー」
「おい取り付かれてる奴発見したゾ!」
 言われてきょとんとした快。
「言葉こそ選んでるけど、そんなに隠し事してないからなあ……ロイヤーさんお色気担当どうかな」
「選ぶはずの言葉が駄々漏れなんだヨ! 本音も守護神しろヨ!」

 本部をうろついていたメンバーを巻き込み騒動が広がっていく。いつもどおりと言えばいつもどおり。
「恋人の事はもちろん大好き。ちゅっちゅぺろぺろです!」
 ――けれど、それはそれ、これはこれ。竜一、会心の笑み。
「レッツゴー! 素敵なおねーさんや美少女とのふれあいの旅へ!」
「麻酔銃持って来い! 一番デカいやつナ!」
 アークは今日も賑やかだ。
「まあ、こういう骨休めが大事なんだよね、生き残るには」
 ふわりと抜け出ていく毛玉を、快は笑みを浮かべて背中越しに見送った。


「え?」
 空気の変化に義衛郎は顔を上げる。
 役所は半日で終わり、自分は青空の下カフェでランチを取っていた。周囲から視線を集める理由はない。
 居心地の悪い思いを抱え、テーブルに視線を戻すとフォークがない。おやと思う前に、横から店員が新しいそれを取り出した。
 床に落ちているのが自分が使っていたものだろう。あらためて記憶を辿る。
(彼女のことを思い出していたんだ)
 1人座るテーブルで、誰もいない向かいに目をやった。瞬間、奥底に沈めたはずの言葉が喉元に押し上げられた。
 ――寂しい。
 彼女が帰らぬ人となって約半年。隣にいて当たり前だった。そこにいないと知ることは、存外に辛い。
「サービスです」
 店員がシードルを置く音に我に返る。
 義衛郎は気付いていない。
 想いを口走っていたことも――頬を伝う一筋のそれも。


●ゆるりゆるりいろをみる
「今度それ着て遊びに行きましょうか」
 シュスタイナの言葉に、テーブルを挟んで聖が頷く。
「そうですね、この服装でしたら注目も集めませんから」
 カソック姿で過ごす聖の私服を選び、カフェで休息を取る。まったりした1日を享受して、飛んできた毛玉を指でつつきながらシュスタイナは考える。
「これからも、一緒の時間を過ごせたら素敵ね」
 聖が目を瞬かせていることに気付き、ついで自身の言葉を反芻する。
(今、思った事そのまま言っちゃった?)

 何故。こんな事素直に口に出来る性格ではないのに。思考は返された言葉で途切れた。
「えぇ、こうやってのんびりできる時間は大切ですよね」
 当たり障りのない返事……でも。
「鴻上さんご自身の言葉を聞かせて頂戴」
 また、だ。動揺に言葉が出ない。
 一方、驚きを飲み込んで聖は言葉を捜す。
 敢えてはぐらかした答え。けど、彼女がちゃんとした答えを求めるなら、それに応えねば。
「……シュスカさんと一緒に過ごす時間は素敵だと思っていますよ」
 少々気恥ずかしかったものですからと続ければ、「そう」と小さく言葉が返る。
 そっけない言葉。向かい合う聖は困ったように、けれど悪くないというように表情を和らげた。
 ――喜んでもらえたなら。
 彼女は気付いていない。
「よかった」と……その表情が語っていることに。


 繁華街で足を止めたミリィを訝しげに振り返り、「ああ」と得心がいったように頷く。
「ケーキバイキングか。色とりどりのケーキは食欲を刺激するな」
 杏樹の言葉にお店を凝視していたことに気付き、ミリィが頬を赤く染めた。
 食欲の秋と言うけれど。乙女にとって、ケーキバイキングが生み出すカルマは小さくない。逡巡するミリィの肩に、ふわり舞い降りた白い毛玉。
 ――いえ、これは日頃のご褒美なのです。
「何の問題もない。そうですよね杏樹さん!」
「そうだな。日頃頑張ってる分、ご褒美もらったって問題ない」
 勢いに押されつつ、瞳を輝かせたミリィを微笑ましく見守る。それに自分自身誘惑に勝てそうにない。
「よし行くか!」

 ――別に、全て制覇してしまっても構わないのでしょう?
 戦場に躍りこんだミリィのその覚悟。彼女の成長を知り、杏樹は大きく映るその背を見つめた。
「頼もしい限り。体重計なんて、隅っこに放り投げればいい」
「体重計? 知らない言葉ですね」
 猛々しい言葉を満足げに受け取り、その背を押した。たまには、思う存分羽目を外したっていい。
「いっぱい褒めてやる」
 そう言われてしまえば最早ミリィを止めるものは何もない。お皿に狭しと載せていく彼女の戦いを杏樹は見守った。
「大丈夫。ミリィは成長期だから」
 そう魔法の言葉を呟いて――


 大きな手に腕に引かれて。ベッドに腰掛けさせられると、肌を桜色に染めたリリが有難うございますと深く頭を下げた。
「放置する訳にもいかないだろう」
 酒を飲ませたのは俺だしなと苦笑する劫。その眼前にふいにリリの顔が迫ると、酔っているのかと身構えるが。
「貴方を独りにしておけないからというより、私が貴方と一緒に居たいから貴方を追いかけている……のかも知れません」
 零れたのはそんな言葉。劫が口を開く前に、すらすらと零れ落ちていく。
「貴方はとても面白い方ですから……そういう意味の好きかどうかは、分からないのですが……桜庭様の事、大好きですよ」

 俯いたリリの頭に大きな手が置かれた。
「深刻に思い悩む事も無いさ、アンタも立ち直って来たしな」
 言葉を咀嚼して、劫はゆっくりと言葉を返した。
「そう思えるのは悪い事じゃあない、今そう思えるのはアンタが正常だって証拠だよ」
 それに――
「悪い気分でもない」
 浮かべた笑みに、顔を上げたリリが恥ずかしげに身悶えした。
 本当に自分は何を言っているのか。何故こんなことを言い出したのか。お酒って本当に怖い。
「隣人を愛せ……だったか? スタートラインには立てたんだ、後はきっちりこれまで遅れてた分を取り戻せば良いさ」
 劫の言葉に身を揺らした拍子に、リリの背から毛玉が離れていった。


●しとりしとりいきをした
「質問? そだなー、スリーサイズとか?」
 いつもの笑顔。いつもの軽口。そんな夏栖斗を見つめ紫月は言葉を返す。
「幾つでしたっけ……知りたければ後で測りますけど」
「いや冗談! 聞きたいけど!」
 発端は紫月の言葉。
 ――お互い一つずつ質問してみましょう。

「それでは、私の質問」
 紫月は表情を変えずに言葉を紡ぐ。
 ――あなたは幸せになってはいけない。そう思っていますか?
 するりと。身体の奥底の、熱いところを締め付けた。
 笑顔を作る。軽口を浮かべる。いつものこと、それだけのこと。
「今更、自分が幸せになるなんて許されちゃ、ダメなんだ」
 なのに。誤魔化そうとすればするほど、声が振り絞られていく。
「ノーフェイスだからって理由で命を奪って、私怨だけで復讐して、一般人を殺した! そんな僕が!」
 ――幸せになっちゃダメなんだ。
 いつしか嗚咽が場を支配する。
 肩を払われ、舞い飛んだ毛玉をぼんやり見上げ……視界に困った様な笑顔が映った。
「あー……人が悪いっつか、策士っていうか」
「一字も違わず予想通り。もう私にはその誤魔化しは今後、通用しませんので気をつけて下さいね」
 苦笑交じりの紫月の言葉に、夏栖斗が長く息を吐く。
 ほんの少しの開放感と、思ったより大きな罪悪感。もう一度大きくため息をつく。
「ほんとダメだな、僕」


「触れて欲しいな、なんて」
 葬識が言葉の主に視線を向けた。
「それ、黄桜後輩ちゃんのトラウマってやつだよね。珍しいね」
 魅零が指で示すトラウマバーコード。目を瞑ってそれを待つ少女に、葬識はすいと指を伸ばし――

 恐る恐る目を開ける。
 指先は触れるか触れないかのところで止まっていた。その瞳はじっと魅零を見つめ。
「目を閉じて、見ないでいるのは自分の『本当』に対して誠実じゃないんじゃない?」
「――っ!」
 喉をこじ開けて言葉を振り絞る。
「私は、に、人間です!」
 言葉と共に手を重ね。触れ合った2人の手が温もりを分かち合う。
「冷たい手だね」
 そう笑う。
「冷たい手の人は心が暖かいって言うよね。いいなあ、人のココロを持っているんだ」
 にこりと笑った葬識の顔に少し俯いて言葉を返す。
「気づかせてくれたから、葬識さんが」
 ――出会えて良かった。
 この優しい手が好き。だから……だけど。
 少しずつ離れていく。精一杯の笑顔で。
「さようなら、初恋の人」
 ――私は何も変われない。
「どうして? 女心は複雑ってやつ?」
 俺様ちゃんは鬼だから、人のココロがわからないのに女心はもっとわからない。嘯く葬識から目を逸らす。
 ――変われないから逃げるの。
 背を向けて走り去る。その背に。
「――世界に要らない子なんていないと思うけどね」


「『スキ』って何か、オレなりに考えた」
 古びたガレージで男女が向き合う。彼女の想いに向き合う。
「オレは真澄がスキだぜ。強くて優しくて、一緒にいると安心する」
 女は静かに聞き入っていた。
「でも――オレが欲しいのは安らぎじゃねェ」
 戦いの興奮。高揚感。彼にとって何よりも深い感情。
 対して彼女に向ける『スキ』は深い尊敬……
 だから。
 それが彼の、コヨーテの出した結論。

 だから。
 深く息を吸って彼女、真澄は口を開く。
「ありがとう、コヨーテ」
 真剣に考えてくれたこと。答えを出してもらえたこと。自分の気持ちに向き合ってくれた感謝。
「ふふ、それでもこんなに寂しい気持ちになる……私はあんたに心底惚れてたんだねぇ」
 顔を伏せた真澄に何か言おうとして――手で制される。まだ、言うべきことを言っていない。
「私は、コヨーテが好きだよ。大好きさ、愛してる」
 そう告げて、自身の胸を軽く叩く。
「けどそれは今日、この場で心ん中に沈めよう。捨てるんじゃなくて大事にとっとくのさ」
 真澄が軽く抱き寄せるのをコヨーテは黙って受け入れた。そのまま額に口付けを――
「……本当にありがとう」
 身体が離れると、今度はコヨーテが真澄の手を取り、甲に口付ける。
 親愛。尊敬。それは互いの気持ちを示す、大切な儀式。
 ――ゴメンな。ありがとう。


●するりするりとけていく
「『素直になるアザーバイドが出る』……何だろこのお知らせ?」
 アリステアが通信に首をかしげ、隣を歩く恋人を見やる。
 のんびりデート中の2人、その派手な身長さに彼を見上げることになるが……ふいに眼前に迫った顔に思わず身を強張らせた。そして――
「……はい?」

 涼が何かを口にした。その言葉はアリステアの耳に確かに届いたのだけれど……思わず聞き返してしまう。当然涼はもう一度言葉を吐くわけで。その短いスカートを指で示しながら。
「いきなり何! これ以上短いのは無理だよっ。見えないか気になって動けないよ?」
 だが涼は主人公が喋らない系ゲームの特徴ともいうべき派手なジェスチャーと笑顔でサムズアップ!
「チラリズムとか求めちゃやー! 女子中学生なら誰でもいいの?」
 恥ずかしげに俯きながらのジト目入りましたー。
「涼の馬鹿ぁぁぁ! ご褒美言うなぁ!」
 顔を真っ赤にして身悶えするアリステア、その身体を引き寄せれば静かに言葉が囁かれて――
「好きだと言って貰えるのは嬉しい……けど……」
 2人の身体が近付いた時、ふわりと涼の身体から離れた白い毛玉。きょとんとしながらも思わず手の平にのせてみて。
「……もっちょい短いのは、涼の前だけなら……いいよ?」
 それが件のアザーバイドであることは、街に響いた絶叫の後で判明する。


「旭、ちょっといいかい?」
 ソファーに身を沈めていた旭が、部屋の主であるランディを見上げる。その巨体に圧し掛かられて、抜け出せなくなるほど更に深く沈みこむのだが。
「ふぁ!? どうしたのらんでぃさん」
「スカートに頭突っ込ませてください」
「なんで敬語なの!?」

(絶対領域堪能中――綺麗なランディの画像をセルフでお楽しみください)

「うう……なんだったの……」
 ぐったりする旭の身体が急に抱きしめられた。先ほどとは違う驚き。それは、向かい合うランディの表情がどこか不安げに揺れていたから。
「君の心はずっと昔に止まってしまって、失った大事なものが心の中を支配している」
 腕の中で旭の身体が震える。それすら、抱きとめて。
「俺は本当の君も含めて好きだ。もう一度止まった心が動くようになって欲しい」
 彼の不安を知って。緩んだ腕から抜け出た旭が、その腕でランディを抱きしめる。
「ごめんね、わたしは……ううん。『私』はちゃんと、私の心であなたを好きよ」
 この想いは変えられるものではない。
 けれど。貴方と紡ぐ大切な未来も。
 わずかに離れて見つめ合う。心向き合った今言うべきことを言う為に。
「旭、俺と結婚してくれるか?」
「喜んで。不束者ですけれど、どうか宜しくお願い申し上げます」
 決意の表情を、柔らかな笑顔で包み込んで。


 ふわりふわり揺蕩った。街中を騒がして誇らしく。ふわりふわり空をゆく。
 その毛玉をそっと手にとって。
「これが噂のアザーバイドか。お前がくっつくと、素直になれるんだってな」
 もっとも身構えることなくフツは実に楽しげに。
「じゃあオレは今素直ってことか。特に変わった気はしねえな」
 普段から自由に生きてるからなと笑いを響かせた。指でちょいと毛玉をつつき。
「素直ってのはサ、自由と似てるんだが、似て非なるものであるとも思う」
 素直な気持ち、と、自由な気持ち。同じじゃない。だが、どう違うんだろう。
 まるで生きることの意味を探すように難問ぶる。けれど同時に誰でも気軽に考えられる簡単なこと。気持ちってそんなもの。生きることを身構えたりはしないのだ。
「ム、もういくのか」
 フツの手を離れ、ふわり空に昇っていく。先は彼の世界か、新たなる地か。
「お前さんのおかげで、有意義な時間が過ごせたヨ。結論は出てねえけどな」
 朗らかに笑って手を振った。またいつでも来いよと声をかけ。
 少し不思議な一日は、今空へと溶けていく――

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
大変遅くなりましたこと、お詫び申し上げます。

難しいお題だったと思いますが、楽しんでいただけたなら何よりです。
一部ネタを増量してアウトに立ち向かっておりますが。

それではご参加ありがとうございました。