●安らぎの時に忍び寄るもの 「ぐあ……」 そう呻きながら、男は眠りから目を覚ました。身を捩って近くに置かれた時計を手に取る。時刻は午前3時過ぎ。時計を無造作に置き直すと、彼は枕に突っ伏した。 「またか……」 枕越しに、くぐもった声が漏れる。 「くそっ、何なんだ……何でこんなに重いんだ!」 吐き捨てるように言いながら、彼は自身に掛けられた羽毛布団の端を掴み乱暴に捲りあげた。ふわりとたなびきながら、羽毛布団が床に落ちる。男の険しい視線が、鈍い艶を持ったカバーに突き刺さった。 希少価値の高い品種の羽毛を使った、高級羽毛布団。かなり値の張るそれを彼が購入したのは、一年程前の事であった。将来の為にと独り身ながら新居を購入した際、折角だからと他の家具と共に新調したのだ。 隅から隅まで高級素材で仕立てられたその羽毛布団は、彼のベッドにやって来たその日からずっと、値段に見合う心地良さを彼に与え続けていた。彼もまた愛情を持って、手入れは常に丁寧に行っていた。 この布団がある限り、彼は極上の眠りを堪能し続けられる――はずであった。 布団に入った直後は柔らかく快適であるものの、時が経つ程にずしりと重みを増していく。そんな現象が、かれこれ半月程続いているのだ。 最初の内こそ程度は軽く、大して気に留める事も無かった。しかしここ数日に至っては、先程の様に重苦しさに目を覚ますまでになっていた。 手入れの仕方が拙かったのかと判断した彼は、説明書を端から端まで読み、ネットで検索し、手当たり次第に対処を施した。しかし、効果は見られない。原因に見当もつけられぬまま、彼は今日まで羽毛布団を使い続けていた。 床に落ちた布団を手繰り寄せ、くしゃくしゃと揉んでみる。その手触りは、購入したての頃と殆ど変わらない。手元を見つめていた彼は、やがて溜息と共にベッドに寝転がり、ばさりと羽毛布団を被った。 (仕方ない、最終手段のつもりだったが……昼にでもメーカーに連絡してみるか。費用が高くつかなきゃ良いが) そんな事を考えながら、彼は目を閉じた。途端に襲ってきた眠気の波が、彼の意識を暗転させる。いびき混じりの寝息を奏でながら、彼は深い眠りへと落ちていった。 ●ぶっ飛ばされる前にぶっ飛ばせ 「今のところ、被害は寝ている間に押さえつけられる事だけ。けれど、『それ』は確実に成長しているわ。何時男性に牙を剥いてもおかしくないし――そうなれば、必ず犠牲が出る。その前に、『それ』を葬り去って欲しいの。……お願い出来るかしら?」 『リンク・カレイド』真白イヴ(ID:nBNE000001)の問いに、答えは無かった。 その場に居合わせたリベリスタ達は、各々に視線を宙に投げている。妙な緊張感が広がるなか、ひとりのリベリスタが恐る恐る口を開いた。 「……つ、つまり、俺達は布団をふっと」 「言うな!」 「ブフっ」 一瞬、リベリスタ達の時が止まる。それを破る様に咳払いをすると、別のリベリスタがきょとんとした表情のイヴへと向き直った。 「……それで、その布団――エリューション・ゴーレムの情報は?」 問われて、イヴは再び口を開いた。 「フェーズは2。基本的に私の身長位の高さで漂ってる。気を付けるべきは、羽毛を全方位に散らす技。ダメージも小さくないし、混乱するかも知れないから。あと、時折ばら撒かれる干したての良い匂いにも注意ね。麻痺しちゃう可能性があるの」 絵面は兎も角として、強いわよ、結構。イヴの言葉に、リベリスタ達は湧き上がった笑みを噛み殺した。 「仕掛けるチャンスは、明日の日中。手入れの為に、庭に布団が干されている間ね。庭に侵入するのは難しくないし、こちらから接近すれば勝手に物干し竿から降りてくるから、その辺りの対策は考えなくて大丈夫。但し、住人の男性の動向には注意する必要があるわ」 家の住人であり羽毛布団の持ち主である男性は自宅にて仕事をしており、ほぼ一日中家に居るのだそうだ。 現場は閑静な土地で、人通りは殆ど無い。更に、布団が干されている庭と男性が仕事しているリビングは窓とカーテンで繋がっている。どれだけ声や物音を絞ったとしても、気付かれる可能性は高いと思った方が良いだろう。 「もし俺達に気付いたら庭に出てくるだろうな、きっと」 「大事な高級羽毛布団が危険に曝される事になる訳だからな」 状況によっては、男性が戦闘に巻き込まれる場合もあるのだ。リベリスタ達は小さく唸った。 「男性の処置は任せるわ。私からの依頼は、エリューション・ゴーレムの掃討。……出来るなら、私はよりベターな報告を聞きたいけれど」 そう言うと、イヴはリベリスタ達を見回した。 「改めて聞くわ。この仕事、お願い出来るかしら?」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:高峰ユズハ | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2011年04月21日(木)23:31 |
||
|
||||
|
■メイン参加者 8人■ | |||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
●青年は、夜なべをして 任務を請け負ったその日の夜。『捜翼の蜥蜴』司馬 鷲祐(BNE000288)は自宅でひとりパソコンに向かい、チラシを作っていた。 「…………」 真剣な眼差しを、デザインが表示されたモニターに向ける。その中央には、以下の一文が強調文字で配置されていた。 『あなたのお手入れは間違っていた!? プロが教える正しいお布団講座:医師の安眠相談会も同時開催! 開催時刻:本日11時より 場所:三高平南公民館 静岡羽毛布団協会』 文中にあるイベントは、実は存在しない。つまりこれは架空の宣伝チラシである。しかしその出来は、ぱっと見では架空であると気付かせない程のものであった。 ひとつ溜息を吐いて、そのデザインを印刷へと回す。プリンターから漏れる音を聞きながら、鷲祐は眉間を揉んだ。 (後は、例の男が引っかかってくれる事を祈るのみだな) 作戦がどういう結末を迎えるか、この時点で知る者はない。必要な枚数を揃えると、彼はパソコンの電源を落とした。 ●珍客万来? その日は、雲ひとつない晴天となった。布団を干すにはまさにうってつけの天気である。にも拘わらず、男性の表情は渋かった。 イベントの存在が確認出来ない怪しいチラシ、やたらハイテンションな女性の来訪、布団販売会社の担当を騙った電話。どれもが布団絡みという三つの出来事が、立て続けに彼を襲っていたからだ。 (何なんだ、一体) 幾つかの疑問が頭をよぎったが、彼はそれを脳内から消した。 問うたところで、得られる答えなど碌なものではないだろう。向こうから再び接触があるなら聞いてもいいが、今は忘れてしまうべきだ。 そう結論付けると、彼は仕事場へと戻った。 戦闘開始を前に、男性宅付近に集結していたリベリスタ達。晴れ渡った空の下に佇む彼等の間には、しかし重い空気が流れていた。 通話を終えると、『鷹の眼光』ウルザ・イース(BNE002218)は頭を振った。 「駄目だったよ」 溜息混じりの報告に、更に空気が重くなる。 「という事は――」 「こうなったら、力尽くしかありませんね」 「そうなるわよね……」 那由他・エカテリーナこと『残念な』山田・珍粘(BNE002078)の答えに、『大食淑女』ニニギア・ドオレ(BNE001291)は肩を落とした。 布団の持ち主である男性の身の安全を確保する為に、彼らが執った作戦は三つ。鷲祐が作成したチラシの投函、ニニギアの訪問、そしてウルザの電話である。 彼等はその全てを実行したのだが、結果はどれも失敗に終わっていたのだった。 チラシは朝ポストに投函された。しかし、併記された時間になっても男性の外出は確認出来なかった。 チラシ作戦が失敗したと判断して男性宅を訪れたニニギアは、適当な理由を付けて男性を玄関に呼び寄せると、顔を輝かせながら一気に捲し立てた。 『突然すみません。あのっ、この前生垣の隙間から、干してあるのがちらっと見えちゃったんですけど、あなたのお布団すっごく素敵で寝心地よさそうですよね!きっとお布団について見る目のある人だ!って思ったんです。それで、あのー、よかったら私のお布団ショッピングにつきあっていただけませんか? この後、駅で待ち合わせってことで! ね? ね?』 しかし返ってきたのは沈黙、怪訝に満ちた瞳、そして拒否の言葉だった。ニニギアは食い下がろうとしたが、男性は途中で会話を切り上げ家へと逃げ込んでしまった。 それを知ったウルザは、電話帳等で調べておいた男性宅の番号に電話をかけた。 布団購入の際に登録した個人情報に誤りがあった。再度情報を確認する為に近所まで来ている。落ちあえないか―― 布団販売の担当者を装った言葉に、男性は沈黙の後会社に確認するから待ってくれと返した。 折り返しの連絡先は上手く誤魔化せたものの、ウルザは男性の声色に失敗を確信した。 男性に不審を抱かせてしまった事。それが失敗の要因であった。もし違った切り口で攻めていたら、あるいは無茶な要求でも飲まざるを得ない状況を作り出せていたなら、成功した可能性はあったかも知れない。 ともかく、それらが失敗した以上リベリスタ達が執れる方法は少なかった。 『幻視』を発動させながら、珍粘が男性宅へと向かう。再び玄関先に呼び寄せられた男性は、彼女の当て身を喰らって気絶し、拘束された上で庭から離れた部屋に転がされる事となった。 ●布団をふっと(以下略) (布団を倒すって……一応真面目な依頼なんですけど、何だか締まらないですね。何度考えても) 男性の処置を終えて庭へと踏み入りながら、珍粘は僅かに込み上げた笑みを消した。 庭では、仲間達が作業を行っていた。各々持ち寄った道具で、離れた場所から布団に水を掛ける。それは、エリューション・ゴーレムである布団の力を少しでも削ぐ為の作戦であった。 「しかし――流石高級羽毛布団、って感じ、だね」 『結界』を張り終えた『蒼天桜花』エミリオ・ツォン・マーキュリー(BNE001231)が珍粘に声を掛ける。布団は水責めでしとどに濡れていたが、それでもその羽毛のボリュームを失っていなかった。 (ていうか、表面しか濡れてないんじゃないの? これ) 水風船を投げながら、『ぐーたらダメ教師』ソラ・ヴァイスハイト(BNE000329)が眉を寄せる。布団カバーには変色の跡が見られたが、しかし殆どの水は地面に落ちていた。 「埒が、明かない、ね」 『眠れるラプラー』蘭・羽音(BNE001477)が溜息を吐く。 その時、布団がぴくりと蠢いたのをリベリスタ達は見た。 「っと、お目覚めかな?」 『ガンスモーカー』日比谷 文月(BNE001074)の呟きに、彼等は作業を中断した。 「来るか……!」 舌打ちと共に、鷲祐がホースを投げ捨てる。 「もう少し浴びせてからにしたかったけど、仕方ないわね」 接続先の蛇口を捻って水を止めると、ニニギアはすっと布団に向けて指を差した。 「快眠出来ない高級布団なんて、煎餅布団にも劣るわ。それを叩き込んであげるから、覚悟なさいな」 通常よりも広く間合いを取って、布団を半円状に取り囲む。リベリスタ達が布陣を完成させたのとほぼ同時に、布団が動いた。 ぼふ、というやや気の抜けた音と共に大量の羽毛が飛び散る。それを身に受け、或いは回避しながら、リベリスタ達は微かに顔を強張らせた。 これが初撃である為、威力の差は測れない。しかし布団の挙動には、水を含んだ事によるほんの僅かな鈍さ程度しか見られなかったのだ。 (……これも効果は薄そうですね) 『ハイスピード』の発動により肉体の感覚が鋭敏になるのを感じながら、珍粘が鼻を蠢かす。彼女は、布団のスキルである『おひさまの良い香り』対策として予め鼻栓をしていたのだ。 道具は、上手く使用すれば状況を有利にさせる事が可能なものである。しかしその力はスキルに比べれば格段に弱く、限定的だ。それを目の当たりにして、リベリスタ達は思考を切り替えざるを得なかった。 彼等の包囲網の中央で、布団は宙でゆらゆらと漂っている。彼我の距離は5m程。『おひさまの良い香り』の射程から外れたその場所から順にヒット&アウェイを繰り返す。それがリベリスタ達の作戦であった。 (今の状態なら、感電、するかな) 更に離れた場所から布団の様子を見つめながら、エミリオは手を差し出した。 「――雷よ!」 そこに纏わりついた電流は瞬く間に大きくなり、一条の雷となって放たれた。空気を切り裂かんばかりに拡散しながら走る。それに鋭く穿たれた布団から、微かな焦げた臭いと水蒸気が立ち上る。先程掛けられた水分が蒸発したものらしいそれが薄れた先では、布団が『感電』により体を強張らせていた。 その隙を突いて、羽音が闘気のオーラを纏いながら接近する。そして『剛力』により見た目より強い腕力でグレートソードを振るい、連続して斬撃を刻み込んだ。 攻撃を終え後方へ下がろうとする彼女の頬に、布団の微かに開いた傷口から舞った羽毛が貼り付いた。 電撃の名残か、羽毛は微かに生温かかった。 「折角のふかふかの布団が、勿体ないわね」 羽音が間合いから離脱したのを確認して、ソラが踏み込む。 「まあ良いわ。私の美技に酔いなさい!」 そう言い切って、軽やかなステップと共に布団へと接近する。幻惑の力を纏った剣は幾筋もの軌跡を生み、それに惑わされた布団へと強烈な一撃を加えた。 そしてすぐに間合いから離脱する。布団はその場に留まるのみであった。 この様に、リベリスタ達は上手く間合いを操りながら戦闘を進めていった。しかし暫くの時が経っても、布団には疲弊の色はさほど濃くはならなかった。 ヒット&アウェイは攻撃後の退避も考慮に入れた行動であり、通常の行動よりも若干攻撃の精度が落ちる。その為か、『感電』による追加はあるものの、機会の割には与えたダメージ量は若干少なかったのだ。 その間にも、布団は羽毛を撒き散らす。陣形により近接攻撃の多くが封じられた状態への反動か、それは何度も発動された。 体力が削られていく中、自己回復の術を持つ者はそれを利用し、持たぬ者へはニニギアがもたらす福音の力が降り注いだ。しかし使用回数には限度がある。事態が膠着した中、リベリスタ達は次第に心に焦燥を滲ませ始めていた。 「このままじゃ、拙い、かも」 思いを口に出しながら、エミリオは再び雷を呼んだ。撃ち抜かれて大きく揺らめく布団へと、続いてウルザが狙いを付ける。 「布団にやられるなんて御免だね」 『コンセントレーション』により活性化しその能力を増大させた思考回路が、彼に布団の弱点を告げる。それに従って放たれた気の糸は、その場所を正確に貫いた。 度重なる攻撃に、布団はついに大きくシーツを割かれた。そこから羽毛を零しながら、それはウルザへと向いた。 (…………?) 見られている。そうウルザが感じた次の瞬間、突然布団が彼の方へと向かってきた。先程の一撃で、布団が『怒り』に染まっていたのだ。 「ちっ……!」 動きを見切った鷲祐がウルザの前に割り込む。それに気付いたのか、布団は彼へと対象を変えた。大きく広がり、彼の体を包み込む。ふわりとしたその感覚は、すぐに圧力へと変わった。まるで握り潰されているかの様な強力な締め付け。彼の口から呻きが漏れた。 「鷲祐!」 悲鳴の滲む声で呼ぶと、羽音はグレートソードを振り上げた。そこに全身全霊の力を込め、未だ鷲祐の身体を包む布団へと背後から近接し、一閃を放つ。背面にも傷を受けた布団が締め付けを緩めた隙に、鷲祐は何とか脱出を果たした。 そしてその場で体勢を整え、ナイフを振るう。幾筋もの軌跡の幻影を纏いながら、その切っ先は布団に更なる傷を付けた。 通常の威力を上回る一撃に身を捩りながら、布団は後退し―― そして、大量の羽毛を撒き散らした。 まるで暴風雨の様に、羽毛が吹き荒れる。視界を覆わんばかりの光景と体のあちこちに走る痛みに、ウルザは思わず目を閉じた。やがて羽毛の感覚が消えたのを感じて彼は眼を開いたが、その視界は覆い被さる布団で再び隠された。 「――――っ!」 その光景に息を呑んだニニギアが、歌で清らかなる存在へと救済を乞う。その願いは受け入れられたものの、福音の恩恵が降り注ぐよりも前に、ウルザは地へと伏せていた。 ウルザから離れ、宙を漂う布団。それを目で追いながら、恩恵を受けてその場に踏みとどまったソラは口元に滲む血を拭った。 「残りは五人か……やってくれるじゃない」 不敵な笑みの先にある布団は、シーツのあちこちが破れ羽毛の塊が見え隠れしていた。その傷口に狙いを定めて、ソラはスローイングダガーを手に構えた。 「とっとと帰っておうちのお布団で寝たいわ。そろそろ片付けるわよ」 幻惑の力を込めて、切っ先が振るわれる。それに続いて、エミリオが放った雷が布団を捉えた。 走る電流に布団が強張る。羽音は、その身体が徐々に浮遊力を失っている事に気付いた。終わりが近いのだろう。辛うじて布団の形を留めているそれに、彼女は残念そうな表情を浮かべた。 (出来れば、無事なうちに堪能したかった、けれど……) そして、全身に輝かしいオーラを纏う。回避しようとする布団の動きを見切って、彼女はグレートソードを叩き込んだ。 幾度となく切りつけられた布団に、追い打ちをかける様に珍粘が迫る。それに気付いて、布団はぎこちない動きでその身を広げ彼女を捉えようとした。 それを回避すると、珍粘は手にした二本のナイフを鋭く振るった。二つの軌跡が更に幻影を纏い、布団の動きを惑わせる。吸い込まれる様にして傷が刻み込まれた瞬間、ぼっ、という音と共に布団に穴が開いた。 一瞬強張った布団の体はすぐに弛緩し、そのまま後方へとゆっくりと落下した。まるで花弁の様に穴から羽毛を零しながら、ふわりと地に落ちる。 動かなくなった布団を見下ろしながら、珍粘は静かに呟いた。 「これが本当の布団がふっとんだ、ですね」 ●あったかい布団で、眠ろう 散乱した羽毛を掻き集めて、ゴミ袋に仕舞いこむ。仲間達と共に作業をしながら、ニニギアは布団の残骸へと歩み寄った。良い状態のまま保てていたなら、思う存分もふもふしてやる――そんな彼女の目論見は、見事に打ち砕かれた。 布団の隅っこを手にがっくりとする彼女をよそに、羽毛はリベリスタ達の手によって綺麗に片付けられた。 (高級な布団なのに、勿体無い……これを集めて再利用……は、無理かなぁ) そんな事を思いながら、羽音はゴミ袋の中を見つめた。 結局それはゴミとして捨てる事となり、口を縛られたゴミ袋はゴミ置き場へと運ばれていった。 その間に、珍粘は男性の元へと向かった。未だ眠ったままの彼の拘束を解き、ベッドへ寝かせてやる。目を覚ましたら、布団がなくなったと気付く事になるだろうが――その先彼がどうなるかは、リベリスタ達には関わりのない事だった。 内心で一言謝って、珍粘は仲間の元へと戻った。 怪我をした仲間達を支えながら、リベリスタ達は男性宅を後にした。 「ラーメンでも食べて帰りたい気分だけど……ちょっと辛いな」 苦笑いを浮かべるウルザに、彼を支えるニニギアがひとつ頷いた。 「怪我には、家に帰ってふわっふわの布団でゆっくり身体を休めるのが一番よ」 「そうそう! 早く帰ってお布団でゆっくり寝なきゃ」 布団に潜るのが待ちきれない、といった様子でソラが先を歩く。 それぞれに布団の感触を脳裏に浮かべながら、リベリスタ達は彼女の後を追った。 |
■シナリオ結果■ | |||
|
|||
■あとがき■ | |||
|