● 「キヒッ」 妖しい笑みを浮かべた男は何処までも妖しい。 加古陽緋(かこ・ようひ)と名乗る男だが、三尋木所属の者らしい。 そんな彼が、アークのブリーフィングルームの机に両足を大胆にも上げながら、かつ偉そうに煙草を吹かしながら語るのだ。 「キシシシシ! だぁからよぉ、言ってるジャン? 俺等の首領、凛子サマはキミタチと協力したいって言ってるジャン? だもんで俺様が使いとして来てやった訳ジャン? クハハハハ!!」 悪人面で笑う彼から、『未来日記』牧野 杏理(nBNE000211)へとリベリスタ達の視線はスライドしていく。 「い、一応……確かに、三尋木の協力体制の申請は正規のルートで受けております。 其の為に、三尋木の方向についていけない三尋木の派閥は切り捨てているようなので。加古さんの言い方は兎も角、信用できる情報である事は確か……だとは思うのですが」 成程。 主流七派の形も変わりつつある。今は六派と言った方が良いのかもしれないが。 此の三尋木も『三尋木』というものを護る為に変わりつつあるという事だ。 「サァて、おめえらアーク様に取って置きのお仕事持ってきたぜぇ? 俺等の元、元ね? 元お仲間さんの三尋木派閥が京都の伏見稲荷で九尾を復活させちゃうじゃん? 困るじゃん? 力が無いからって力確保して攻められるのって面倒じゃん? ハイ、そこでリベリスタってわけじゃーん?」 「三尋木は情報網を世界中に広げております。其の情報も信頼してもいい……かとは思いますが」 「可愛いじゃぁんキミ、サーカスの餌だった子じゃぁん、俺様女の子ダイスキv」 陽緋、杏理のスカート捲り始める。 速攻で杏理の張り手が飛ぶ。 「流石アークだぜぇ、威勢のイイフォーチュナ飼ってやがるじゃん……気に入ったアーク! で、九尾召喚した奴等だけど、俺様のふるーーーーーーーーーくからの悪友ちゃんじゃん? 超イイコなんだけどどっかズレてらっしゃるあたりフィクサードってカンジウヒヒヒヒヒ!!!」 「なんで、そんな簡単に友人を売れるんですか……?」 「……ンー、内緒! 黙秘、黙秘! 俺様お抱えの情報網サマサマは、友人ちゃんをつけている間にぶっ殺されちゃったぜ、しくじったー!! 俺様の持ってる情報は、京都、伏見、千本鳥居、九尾、なぁんて日本らしい舞台なんざんしょ! あとは敵勢力くらい?」 そこでアクセスファンタズムにメールが来る。差出人は杏理の様だ。どうやら此の男の前では言えない情報であるのだろう。 『三尋木の全てを信用する事はありません。 勿論、此の男加古陽緋も信頼する事はありません。彼等は何かを企んでいるかもしれませんし。 ですが、京都での事件は、確かにカレイドでも発生を予知しておりますので。止めなくてはいけません……それは、やって頂きたいです』 三尋木の此の男、陽緋と共に三尋木と九尾の狐の退治へ―――。 「ギヒヒヒヒヒ♪ たぁのしぃ親善旅行になぁるといいじゃーん?? 俺様の扱いはマチガエナイ方がいいぜ~、今後のコトを考えるとなァ!」 ● 「なんで、リベリスタなんかと一緒にいんだよ……」 九尾を従え、蓮見守(はすみ・まもる)は言う。 あり得ない、今の状況。今まで信頼していた首領が、尻尾を丸めて逃げるというのか。 裏野部にも剣林にも黄泉なんて論外、他の派閥に馴染めなかったが此処、三尋木では武闘派として楽しくやってきたつもりだが、好いた日ノ本から去るだなんて。 「俺は、一緒には行けないだから……」 今どきフリーのフィクサードなんて死亡フラグ以外の何者でも無い。 なら、此処で。 でも、何故。 「どうして、陽緋。親友だったのに、一緒に来てくれなかったんだ――――」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:夕影 | ||||
■難易度:HARD | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 7人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2014年10月24日(金)22:28 |
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■メイン参加者 7人■ | |||||
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● 突然の三尋木の申し出に、突然戦地に駆り出されて。 「1つ出ている杭を打てば、また別の杭が出て来るのは何時もの事だと割り切るべきか……?」 「そうですねぇ……諦めても諦めなくてもボク等は何時も台風の中心なんです、そんな感じです」 『アウィスラパクス』天城・櫻霞(BNE000469)の問いかけに、離宮院 三郎太(BNE003381)が苦笑いで答えた。 それでも毎日明日が来る。今日もほら、天高く燃ゆる炎玉が高らかにリベリスタ達の動向を見守っていた。其の、温かみのある光も今日は少し、見えにくいのだが。 影はまるで檻の格子の様に続いていた。 千本鳥居の、其の中で。 出ようと思えば出られる一定の範囲で鳥居達は礼儀正しく列を成していた。其の中を、リベリスタ達は歩く。1人だけ、リベリスタでは無いものを後ろに置いて。 「クヒッ♪」 楽しそうにか、それとも何も考えていないのか。加古陽緋の嫌にも耳につく笑い声が後ろから被ってくる。 「まさか三尋木と共闘とは、なァ……?」 「俺様もそう思うジャン?」 陽緋より頭が一個分大きい『悪漢無頼』城山 銀次(BNE004850)が見下す形で彼の影に成った。 が、表情を一切崩す事の無い陽緋。ふいっと、また行くべき道の方向へと向き直った銀次が背中で彼に語るのは忠告であっただろう。 「ま、俺の邪魔しねェんだったらイイがよォ……」 「偉く前向きジャン! そうそう、俺様達ベツニ悪いものじゃナイヨ、ん? 此れは嘘だけど」 張りつめた空気とまでは行かないものの、緊張感も軽減されそうな嘘偽り見えそうな陽緋の言動が耳につく。三尋木は悪だが、今だけは悪じゃないとでも言いたかったのか。 だがそんなものは関係も無いと陽緋の肩をつんつんと叩いた『謳紡ぎのムルゲン』水守 せおり(BNE004984)が、やんわりとした笑顔で彼に言う。 「加古さんっていうの? 私はせおり!」 「そうじゃん、京都生まれだよ。フレンドリー女子キタコレ!」 「三尋木のクィーンのアンチエイジングはキライだけど、アークに協力してくれるんならあなたは仲間だね。よろしくねぇ」 光に当たり、鱗がキラリと輝いたせおりの手が陽緋の前に出された。一般的には握手の前兆、けれど陽緋は煙草に火を点けつつ、彼女の手が諦めて帰るのを待った。 「俺様もさ、アンタラと三尋木が敵なのか味方なのかイマイチわかんないじゃん? これから其れを決めるっつーとこだ、仲間にゃ早いけど、宜しくはしてやるじゃん」 「今は協力ができますわ。それだけでいいじゃないですの」 話にピリオドをつけたのは椎橋 瑠璃(BNE005050)であった。敵か味方か、今はそんなものより与えられた任務を全うするのが先だ、と。 其れが終わってからだ、彼等と仲良くするか、しないのかは―――。 「なるほど、分からん」 泳ぐ目線。 『無銘』布都 仕上(BNE005091)が、誰にも聞こえないような小さな声でそう呟いた。 三尋木とアークの政治をするのは別の人達がやることだろう、それよりも、それよりもだ。 「面白そうな化け物、用意してくれてありがとうっす!」 にこ、と笑った14歳の笑み。其れを向けた相手には、長い尾っぽを自在に操る生きすぎた狐が待っていた。 ● 仕上が挨拶して1秒も無かった、狐の巨体がリベリスタ前衛を分散させる形で飛び込んで来たのだ。口から涎を垂らし、薄紫の邪気を吐息と共に零して。 狐を挟んで、仲間の足が見える。 其れを確認しながらも仕上の手の平は狐の胴へとついていた。冷たい、冷たい感覚が手の平に。まるでマリオネットのようだ、鎖を駆使して動かされているのだとしたら―― 「――九尾の名も泣くんじゃ無いっすかね」 刹那、撃ちこんだ気が狐の内部から壊していく。 が、突然差し込む光が消え、影が揺らいだ。気配がある。 「おっと!」 息さえつかせぬ間に尻尾の1つが仕上と狐を分かつ。あと一歩でも反応が遅れれば、仕上の身体は地面に叩きつけれていた事であろうが。 「ンだぁ、別行動しやがってよォ」 胴体とは別に動く尻尾に弾かれた銀次。空中を回転しながら飛び、両の足で着くと同時に前へと。 「あと7本もあるっていうっすかー!!」 まだ抑えられる距離ではあるものの引いた仕上。彼女は回避に抜群にすぐれているからいいものを、瑠璃は尾を両手で抑える形で凌ぐ。 後方ではせおりや、『原罪の蛇』イスカリオテ・ディ・カリオストロ(BNE001224)、三郎太にも尾は襲う。 其の更に後ろより櫻霞が両手の銃を構えていた。 「仕上とやら、伏せるといい」 「これでも身長低い方なんすよ!!?」 膝を曲げ高さを失くした仕上の頭上、櫻霞が放つ白に白を重ねて眩しすぎる光が狐を飲み込んでいく。 「何処までできるか試してみるつもりだったが……」 再び櫻霞はハンマーを引く。これであと、トリガーさえ引けば良い。 「此れは期待してもいいのか」 彼の眼前に広がる、眩しすぎた光によって視界が確保できていない狐の存在。だが更に其の後ろへと目線を逸らせば、敵の三尋木。 「嫌だよ、リベリスタなんて。それも、アークなんか。ほら嗅ぎつけて来た、最悪のタイミングで」 蓮見守、が言った。 しっかりと彼の目線は友人を捕えていた。其の友人たる、加古陽緋は。 「せおりちゃん可愛いねぇ、ねえねえ今日のパンツって何色か聞いたら殴る? それとも、叩く?」 「今それどころじゃなくて、あうあう」 完全にせおりに絡んでいた。 「今それどころじゃなくていいじゃん、手が塞がってるなら逆に上等ジャーン。勝手に捲るから勝手に攻撃してて」 陽緋はあくまでサブキャラなので置いておき、話は変わってそれよりもだ。 敵ホーリーメイガスが詠唱を終えていた、九尾に与えた呪いも直ぐに治ってしまう。此れだからホーリーメイガスは、と櫻霞は少しの苛立ちを覚えつつ。 陽緋の顔面を撃ち抜いてせおりから引き剥がし、「別に其処の人魚の為じゃない」と言い張る守に対して言う。 「俺の仕事は貴様らの排除だけだ、細かい事情に興味は無い」 「いつもアークは。正義の味方を気取るくせに、何時も戦乱の中心にいる。殺す事は悪じゃないのかい、ええ?」 「今は善か悪か語る時でも無い」 潰すか、潰されるかのどっちかを語る時だ。ほら今も、動きたいと待ちきれない彼女が準備運動を終えてスタートダッシュの構えを取った。 「いくよー! 必殺焼き魚戦法! 陽緋さんちょっち下がってね!!」 「アイヨー、イってらっしゃい」 「いってきまーす!」 燃える闘士が目に見えるようだ。青色の、炎弾が字面を直線に抉りながら駆けていく。 狐が居たなんて関係無く、三尋木の前衛陣まで突っ込んだ彼女はそれだけで爆弾の役割を果たすのだ。 「よく見えるようになりましたね」 せおりが吹き飛ばした陣形、手に取る様に配置を頭に再度叩きこんで三郎太の開かれていた右手が拳として握られた。 掌握したと言うのだろう。三尋木のフィクサード、誰もが精神に圧力を感じる。其の攻撃、三郎太が行う攻撃は決して眼には見えにくい、見えにくいからこそ六感に純粋な恐怖を植え付けられるのだ。 「ボクからは、逃げられませんよ……!」 「餓鬼がァ!! 調子乗んなよ!!」 其れにキレたのは敵レイザータクト。読みあいでは負けぬと。リベリスタ前衛は狐が荒らしに荒らしている為に散り散りではあるものの、後衛は固まってひとつの団子。 其処に落されたのは、雷陣を含む痺れを伴う神の光。ホーリーメイガスの神気閃光とはまた違う、それよりも協力で凶悪なるレイザータクトの意地だ。イスカリオテや櫻霞も攻撃に含まれ、体調でも崩したかのように自分の身体が重いのだ。 敵のクロスイージスはホーリーメイガスと、守を護っている。後衛を壁で強固に固めて、攻撃手と狐でゴリ押ししてくるつもりだろう。 狐も今や元気だ。 大地を揺らし、切り裂く事の出来る獣の爪が瑠璃の真横を、衝撃と共に揺らす。 もう一方の前足は銀次を狙っていた。彼の身体、胸から腹部にかけて爪痕がきっちり残り、更に裂け目からは血が流れ出す、止まらない滝のように。 「だぁらなんだってンだ」 前方に見える銀次の光景、ホーリーメイガスを狙いたくともクロスイージスが邪魔だ。横眼に見える、陽緋こそいざ裏切りを果たして敵になるかも分からない。 「厄介な化け物を連れてきたようですわね……悪党と手を組むのは気が進みませんけれど、そうは言ってられない状況のようですわね……」 瑠璃は横眼に、陽緋を見た。 「悪党! 大正解、俺様、只のちんぴらよ。でもいいじゃん、協力したいって? オッケーオッケー、其の為に来たジャン?」 「ええ、敵と味方。数は一見、同数に見えても……狐が居る分、此方が不利ですわね」 「フーン」 「何か、策でも?」 「無いジャン。ただ、数が無いなら増やせばいいかなって思うワケジャーン」 それに女の子から言われたら仕方ないよね。 ● 「陽緋!! なんで裏切る!! 僕と君は――」 「裏切る? 裏切ったのはそっちジャーン、三尋木にいるなら三尋木に習えーなんちゃって」 「友達じゃないの!?」 「友達だよ。だからこうやって殺しに来てる。俺様、例え凛子サマでも女の子の方が好きだからぁ……優先順位は図で説明すると」 女>>>超えられない壁>>>親友。 「オワカリ? 親友に殺されるだけまだマシってそろそろ気づいて欲しいジャン?」 以上、フィクサードの事情。所謂、加古陽緋とは屑なだけである。 ● 「どうせジリ貧覚悟の消耗戦、出し惜しみはするだけ無駄だろう」 啖呵を切った櫻霞、何精神力なんて自転車のようなもんできっとなんとかなる。 両腕に力を込めれば筋が浮きだった。放つ無数の弾丸――だが其の先、同じスターサジタリーにして守も同じ攻撃を放ってきたのだ。 「ほう、根競べか?」 「すぐに終わるから根競べにもならないさ」 弾丸と弾丸。 計算したのか、それとも計算されたのか、櫻霞の弾丸と守の弾丸が衝突し弾が変型しなら千本鳥居の中で暴れ回る。1つ弾かれれば次の弾丸だ、櫻霞も守も手を止める事はしない。其の内、櫻霞の弾丸が弾かれると共に守の頬を掠めた。 「どうした、終わりか?」 「付き合ってられない……!!」 陽緋のEXスキルは召喚型のスキルだ。 影から影法師を呼び出し、ゆらりとゆらめくそれはインヤンマスターの影人よりかは強固に出来ているようだ。 後衛にそれで庇わせ、櫻霞と三郎太は護られる。だが毎ターン、デコイを作る作業に没頭されることも出来ない。動き出した陽緋に合わせて、仕上と瑠璃は息を合わせて動く。 見上げた瑠璃、見れば狐の牙が。気づいた時には遅かった、噛みつかれ振り回された挙句に鳥居に叩きつけられ、鳥居も半壊していった。 「こんなの慣れっこですわ!」 すぐに起き上れたのは、瑠璃が不滅の敢然なる者であったからであろう。だが、牙が刺さったままの腹部からは血が溢れ出ていく。 「無理しなくてもいっすよ」 「無理はしませんが無茶はしますわ!」 仕上が瑠璃の返答を聞いて、そっかと笑う。 瑠璃の両手には鉄扇が舞う、やり返しだ。100倍返しだとは言えないものの、上から降り注ぐ九尾の尾を、地面から足を離れさせてかわしながら。後方でイスカリオテが尾に弾かれて動かないのが心配なのだが―― 其の、鉄扇が光り輝き狐の片耳を切り取った。であれば、刹那、絶叫の様な金切り声の狐の苦しみが耳をつんざく。 血だまりを作って歩く瑠璃に攻撃せんと、デュランダルが前のめりに出るものの、陽緋が食い止めて此れは問題は無かったのではあるものの。 銀次が殴るのは、ホーリーメイガス。遂に届いた、せおりがクロスイージスを弾き飛ばしていたお蔭とも呼べるのだろう。 「歯ァ、食いしばれや!!」 「ひ!?」 持っていた杖を盾にしたものの、其の盾ごと殴り壊した銀次。だが敵の陣の中心に居るのは、なんとやら。奥で武器を構えた守の飛び道具は一直線に銀次の心臓を狙っていた。 「1回は1回って言えばいいのだろうか」 殴り飛ばされたホーリーメイガスが地面に倒れる頃、守と、レイザータクト、デュランダルの遠距離砲撃が彼を抑え込む。同じく被弾したせおりも息切れ切れだ、体力こそ多かったもの持ちこたえたもの。 「まだ、終わりじゃないんです!!」 己自身、三郎太自身が此のチームの要である事は判っていた。己が倒れれば、此のチームは崩れるのだと。一番理解していた。だからこそ、諦めぬと謳いながら体力、精神、両面の回復を廻した。むしろ、そればかりに付きっきりに成っていたかもしれない。元より、敵に回復が居て、此方にはいないという状況が成り立ってしまえば不利有利の軍配は目に見えて分ってしまうのだから。 三郎太の頬から汗が流れた、間に会え――そう心が焦る中。まだ、平気と漲るせおりの瞳は諦めを知らない。横眼で見ていた陽緋が。 「やるねぇ、でも下がった方が良いよ。猪突猛進もいいけど、とおりゃんせは怖くなあい? 君じゃあ、守の攻撃は避けられない」 だがそれでもせおりは立っていた。三郎太の回復と恩恵を頂き。それじゃあ最後まで頑張ろうねと、陽緋の召喚が彼女を守る。 「「キヒッ」」 2つの笑い声が重なった――。 仕上だ。陽緋の笑いに重なって。 折れ曲がった鳥居の群の奥からむくりと起き上った。 ひどく飛ばされたもんだ、次はもう当たる事は無いだろう、ちょっとぬかるんだ地面に滑った結果これだ。胴体とは別行動の尾っぽ2つが仲良く攻めて来た、避けられないつもりは無かったのだが。 マジモンの九尾が、呪いに鎖に。それでも、九尾の威力は確かに侮れない。肋骨が何本かイってる気がする。腹部を抑えた仕上。 でも何故だろうか、確かに強いのだが……滑稽だ。 仕上は、笑っていた。 「ハッ、ホント楽しくて楽しくて仕方ないっすよね……、ホントっ!」 走りだし、飛ばされた軌跡を戻る。後衛に巨体が乗り込む前に、跳躍し拳にした利き手を限界突破する程、爪が肉を抉る程握り締めて、狐の顔面を殴り倒したい―――が、しかし戦況は厳しい。 確かに1人では抑えられない九尾だ、そこに瑠璃が居たとしても、仕上か瑠璃、どちらか一方が弾かれてしまえば狐の前進は叶ってしまう出来事だ。それを想定していたせおりではあったものの、だがしかし目の前のレイザータクトが追随を許さなかった。邪魔だと、ヴォルケーノを叩きこんだとしても一手、たった一手、此方が時間が足りない。 駒の数だけを見れば大差は無いものの、質を見れば九尾は此の場に居る何よりも強い。後衛へと駆ける、止められない巨体に瑠璃と仕上が歯を食いしばった。 加えて、戦闘早々に抜けてしまったリベリスタの穴を埋める事はできなかった。あちらと、こちらの戦闘においての強さの比は、時間を追えば追うほど広がっていく。 陽緋の召喚に守らせる――、仕上と瑠璃には必要無さそうだが、せおりと三郎太は比較的壁が必要だ。せおりこそ、体力はあるものの、受ける一発の命中度が高すぎてしまえば、其の体力も急激に下降するのだ。 「終わりだよね、もう」 届かない、敵の後衛へと。其の最奥に居る、一番叩かなければいけなかったスターサジタリーの存在。彼の矛先が向く。 ――Groundzero(全員死んで0人) 三郎太の眼前、狂えるクルーデルと呼ばれた影法師が弾ければ―――己が倒れれば、駄目だと判っていたつもりであったのに――――!!! 容赦は無かった、当たり前だ。三郎太よりも何倍もある図体が彼の身体を喰い散らかすまであと、数秒。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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