●あー、なんだっけ……魔犬?(声:石塚運昇) 「おーよしよし。ごはんか? ごはんやろうか……? よーしよし……」 おじーちゃんがチワワをあやしていた。 尻に棒のささったチワワをあやしていた。 しかも棒部分を持っていた。 この時点でシュールなのだが……。 「おーこりゃかわいいわんこじゃのう」 「おーおーこれは……なんじゃっけ……ちく、ちくわ……?」 「あー!? あんだってー!?」 学ランとセーラー服を着たじーちゃんばーちゃんが一緒になってチワワをかわいがっていた。 そう、この状況こそ。 周囲の人間が(本人含めて)ボケ老人になってしまう上になんか剣をかわいがりたくなっちゃう魔剣こと――合体魔剣『お線香チワワ』の力なのだ! ●わしじゃよ……あの、あれ、わしじゃよ……(声:緒方賢一) 「ナビス子じゃよ……」 アイワ ナビ子(nBNE000228)がマイクに向けてなんか喋っていた。 シーマンに向かって喋っていた。 『は? 何言ってんのおまえ?』というリアクションをキャッキャいいながら楽しんでいた。 そんなナビ子がいうには、ヘンなアーティファクトを持ち出して遊んでるフィクサードがいるからイワしてきてほしいナってことらしい。ちなみにその文句に対してシーマンは『頭おかしいんじゃねえの?』と返していた。 「ナス子じゃよ……」 『茄子かー、そろそろウマい季節だよな』 こんな依頼を解決できるのはそう、あなたしかいない! 画面のまえのあなたしか! |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:八重紅友禅 | ||||
■難易度:EASY | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2014年09月28日(日)22:06 |
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■メイン参加者 5人■ | |||||
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●これが何の依頼だったか思い出すところから始まるセンチメンタルなグラフティ ここは大井町からちょっと行ったところにある健康ランド。 魔剣の効果によっておじーちゃんおばーちゃんに変えられてしまったリベリスタたちは今も食堂に集まりぼんやりとした時間を過ごしていたのでした。 「おー、魔剣じゃ。魔剣が歩いておる……」 髭真っ白になった『どっさいさん』翔 小雷(BNE004728)がほうじ茶すすりながら言った。 「いやですよおじーさん。あれは魔剣というより魔犬ですよ」 しわくちゃになった『局地戦支援用狐巫女型ドジっ娘』神谷 小夜(BNE001462)がコーラすすりながらむせた。 「魔犬というより魔チワワだけどねえ……」 『本気なんか出すもんじゃない』春津見・小梢(BNE000805)がカレーすすりながらカレー食っていた。 すっくと立ち上がる『もうだめ駄狐いつ』明覚 すず(BNE004811)。 「明覚すず、17歳と735ヶ月超です!」 「この子さっきからこれしかやらんのう」 「見た目が若くても中身がボケとるんじゃのう」 「そもそも、きょうは何をする日でしたかねえ」 あんま見た目変わってない『ゲーマー』ソニア・ライルズ(BNE005079)がぼうっとした調子で言った。 テーブルに両手を突いて叫ぶ紅いスーツの人。 「ちょ、ちょっとおばあちゃんたち! 今日はアレでしょ? 魔剣に魅入られた哀れな一般人を救出し、なおかつ魔剣を回収するべくやってきたんでしょう!?」 「え、なんじゃって? 駄犬……?」 「まーけーん! 魔剣お線香チワワです!」 「あーあー、はいはい、ちくわカレーねえ。ちくわは入れないですねえ」 「ちくわじゃなくてー! ちーわーわー!」 「ちーかまー?」 耳元でめっちゃ叫ぶ紅い人にテキトーな相づちをうつおばあちゃんたちである。 すずと小夜は何も喰ってないのにもぐもぐしつつ、エンドレスで流れる映像をぼうっと見ていた。柔道着姿のいかついおっさんがチャラチャラした若者を千切っては投げ千切っては投げしたあげく特定のゲーム機をやれと強要してくる男気あふれる映像だった。 「若い人は元気ですねえ」 「そうやねえ」 「わたしたちも、若い頃はああして野原を駆け回って、メガをドライブしたものですね」 「ゲームをギアしたもんですねえ」 「そうですねえ」 「もういい加減にしてくれよおばあちゃん! あのね、これ五人依頼なの。一人千文字以上は描写あるの。なのにプレイングの九割がコアなセガネタなの。使うに使えないの!」 「え!? ここあカレー? ここあは入れないねえ」 「コーアー! ディープなコアネタ!」 すがりつく紅い人にぼんやりした相づちをうつ小梢ばあちゃん。 そうしていると、口をぱくぱくさせた小雷じーちゃんが割り込んできた。 「そのー、あれだー、ディーヴァなプロジェクトとやらを入れたらいいんじゃないかー。それー」 「やったよもう! 一度開き直って全部のネタに答え続けて深夜のラジオみたいなリプレイ作ったよ! 一時間足らずで『アァン?』みたいな感じに怒られましたよ! だからね、おじーちゃん、使えないの! セガネタ使えないの!」 耳に手を当てるソニアおばーちゃん。 「せが……がが?」 「セガネタ!」 「べよ……ねった?」 「わざとやってんだろ? 偉い人怒らせるつもりなんだろ、なあ?」 紅い人が目を血走らせたところで、小雷じーちゃんがどがんと机を叩いた。 「そんなに言うなら書いてみたらいいだろうが! そのプレイス……プレイステ……マークⅢとやらを!」 「それは無理あるやろお。のう小夜さんや。言ってやんなさいよ」 「ええ? いいんですかあ?」 噛めもしないおせんべいをいつまでももぐもぐしていた小夜おばーちゃんがすっと立ち上がって、両目をめっちゃ見開いた。 「つまりこの駄犬Xを倒せばいいんですね? なんでしょうね、この線香。前作主人公が亡くなったんでしょうか? なんだか……和んじゃいますね……かわいがるといえば、やっぱり両手両足の拳銃でやっちゃえばいいんでしょうか。あ、メガネも必需品ですよね。なんかもうぐだぐだですね……スケジュールを立てておきながら進まない仕事ってゲーム開発以外のもあったんですね。遺産が70億って本当ですか? 相手が魔剣なら装甲Bはほしいですね。あ、地雷を体に貼って突撃しましょうか? 装甲が足りない?背中にセガサターン背負って、右手に万力、左手にドリル握ってれば頑丈になれますよ。というか魔剣と言いつつ頑張って能力解放しても某ゲーム雑誌コラボの剣に勝てないんですよね。老化……なんだか体が鈍ってきましたね……。体操しましょう。カレーですか? やっぱりこう、同じの4つ揃えると消えるんでしょうか。魔剣4本揃えたら消えるより単に強そうですけど。三高平華撃団、参上! って言ったらそれっぽいんでしょうか。いくら見た目がチワワでも、脳天直撃したら危ないですよね。学校で習わなかった? アークのリベリスタは無敵だ」 喋りきったあとでスッと座り、ほうじちゃをすする作業に戻った。 「今喋ったネタいくつわかりました?」 「ああ……べよ、ねった?」 「喋ったネタ!」 耳元で叫ぶ紅い人。まあおばあちゃん相手の会話は大体こうなる。やかましいとおもわんでほしい。 「ちなみに私は全部分かった上で商品名とそれに関する思い出を語りまくってみましたけど、ね」 「それは怒られますねえ」 「恥ずかしいところだけ正確に聞き取ってんじゃねえよ」 それを聞いていたすずが、なんか綺麗な顔をして微笑んだ。 「きっと慢心が招いたことや。反省するとええよ」 「ええ? しー……まん?」 「慢心!」 「ぷよ……まん……?」 「だからわざとだろ! わざと商品名に近づけに行ってるだろ!」 「それで?」 いつのまにかマッサージチェアに座ってうごごごごーっとやっていたソニアおばーちゃんが、皆のほうを向いて手招きした。 「ちょっとそこのローションとってくれませんかねえ。スベスベはりのあるお肌を保ちたいんですよ」 「すぺー……す、はりあ?」 「ばーさん黙れください」 「すぺありぶカレー? すぺありぶは、濃いねえ……」 「もうカレー食べてていいです小梢おばーちゃん」 「そんなことより、依頼……でしたねえ」 ソニアおばーちゃんがすっくと立ち上がり、なんだかおっくうそうに段ボール箱を引っ張り出してきた。 それを開いてみる。 「えーと……コンセントが三つに、CDドライブユニットに……32ビットタワーユニットに……」 「それ多分違いますね」 「あたしの持ってきたやつやねえ」 ほくほくした顔ですずが言った。この後コンセントの取り合いだの携帯機を巻き込んだ兄弟喧嘩だのという話をしたが全カットである。だから使えないんだってば。 「こっちやねえ」 すずおばーちゃんが持ってきた段ボール箱をはいはいそれですよと言って開くソニアおばーちゃん。 そして中から出てきたのは。 「むちと、ろうそくと……ギャグボール」 「え?」 「むちと、ろうそくと、ギャグボール」 「いやだから」 「きみの、ためなら、死――」 「待て」 強制的に閉じられる段ボール。 嫌な汗いっぱいにかいた顔で、紅い人がソニアおばーちゃんの顔を覗き込んだ。 「依頼の趣旨、わかってます?」 「かわいがる」 「それと?」 「いちだんと……あ、る?」 「ちがう。魔剣お線香チワワは周囲の人間を老化させ尚且つチワワをかわいがりたくてしょうが無くなる効果をもった恐ろしい魔剣なんですよ、今その効果が発動してる真っ最中でしょう。これを脱して魔剣を回収するのが役割なわけで」 「ああ、はいはい……」 ソニアおばーちゃんは優しげな笑みと共に鞭を手に持った。 「だからこれで、かわいがるんですよ」 「それ意味違うな」 「ごめんなさいねえ、あたし別の世界から来てるから」 「異世界キャラならあらゆる勘違いが許されると思うなよ?」 「ええ? ですとろい、おーる……ひゅー」 「かすりもしてねえだろ!」 紅い人がすずおばーちゃんをテーブルごとひっくり返した。 「いいですか? 魔剣なんですよ? 早く退治しないとデカい事件に発展するかもしれないんです」 「だいな、まいと……デカ、い?」 「うん今のは私が悪かったですけど」 紅い人は後ろをとことこ歩く魔剣チワワを指さして言った。 「ほら見てくださいよ、所有者もボケにボケちゃって魔剣手放してマッサージチェアの虜になってるじゃないですか! 今がチャンスですよ! あれを回収してアークに持ち帰るんですよ!」 「ぱいるを……買収? こん、ぱい……」 「それ以上喋らないで、やめて」 もう一度見てみると、小雷おじーちゃんがにこにこしながら魔犬を追いかけていた。 手にはなんかのTシャツが握られている。 「ほれー、あれだー、青いはりねずみのシャツだぞー。俺の背後にいるー、あのーあれだー、なんかの誕生日が一緒でなー?」 その進行方向上には小梢おばーちゃんがスタンバっていた。 「ほれ、カレーあげるよ」 床にカレーを置いてチワワをおびき寄せている。 そしてカレーを食ったチワワが泡を吹いてけいれんしはじめた。 「あれえ、おかしいねえ。たまねぎしか入ってないんだけどねえ」 とか言いながら、小梢おばーちゃんはカレー皿を取り出した。 「それじゃあ、ラストクル……ラストクルセイ……ドで、ぺちぺちするかねえ」 「あ、よかった。まんま来るかと思った」 「それならあたしも協力しますよお」 暫く関係ないことをやっていたソニアおばーちゃんが鞭とろうそく片手に立ち上がった。 「ならあたしたちも頑張ろうかねえ、神谷さんや」 「そうしますかねえ」 白くて四角いオモチャ家電やらコントローラーを手にすっくと立ち上がるすずおばーちゃんと小夜おばーちゃん。 チワワの視界に五人のおじーちゃんおばーちゃんが映り込む。 ゆっくりとした時間をはさみ、全員せーので持っているものを振り上げた。 そこへ。 「あいやまたれい」 今まで影も形も出てこなかった魔犬の所有者が割り込んできた。 お線香の刺さったチワワを抱え上げると、コーホー言いながら身構える。 「このチワワを持って行くなら、わしを倒してからにするんじゃな」 「望むところですよお……?」 「いくでえ……?」 手に手に武器(?)を持ったソニアおばーちゃんたちがキエーとかいいながら飛びかかる。 そう。お待ちかね、バトルシーンである。 チワワを両手でだっこしたじーさんが鋭いチワワ突きを繰り出した。 ひゃんと鳴いたチワワが風をかき、ソニアおばーちゃんへと襲いかかる。 対するソニアおばーちゃんは鞭を叩き付けてチワワを迎撃。つんのめったじーさんの額にぽたぽたとろうそくと垂らし始める。 あびゃーと言ってのたうち回るじーさん。だがばーさんたちの猛攻は止まらない。 「ハイハイハイハイ!」 「ハイハイハイハイ!」 両サイドから挟み込んだすずおばーちゃんと小夜おばーちゃんが交互にドリームとキャストを叩き込んでいった。 「ぼくの名前をしってるかい!」 「もっぷ! はしらどけい! こしょう!」 「それ違うやつや!」 チワワを盾にしてなんとかネバるじーさん。 そこへ、カレー皿を手にした小梢おばーちゃんが襲来した。 上からとろとろーっとカレーをこぼし始める。 具にのったちくわが一緒に滑り落ちていった。 あづあーと言ってまたのたうち回るじーさん。 じーさんやられっぱなしである。 「そ、それいじょう動くでないわ。このチワワちゃんがどうなってもええんか!」 と言うことでチワワを盾にする作戦に出た。 ぐっだぐだしてるけどこれでも魔剣。おばーちゃんたちはたじろいだ。 が、そこへ上着を取りに行っていた小雷おじーちゃんが到着。 「なんだーおまえー、そのー、寒そうな犬はー。これでも着ろー、ほらー」 持っていたシャツを無理矢理チワワにかぶせにいった。 「ああっ、チワワが見えなくなってしまう!」 「俺は日常をー……あれだー、守るー……あー、そのーアレだ。戦うんだな、とにかくな」 そしておきまりの土砕掌をじーさんの腹にめっちゃ入れまくったのだった。 ふぐうといってチワワを取り落とすじーさん。 小雷おじーちゃんはチワワを拾い上げると。 「それじゃあ……この後は……どうするんだったかな」 「カルドをセプトするんじゃなかったでしたっけねえ」 「そうでしたかねえ」 「そうやねえ」 「それじゃあいこうかあ」 「はいはい」 六人連れだって、健康ランドを満喫しにいった。 ――かくして! 魔剣お線香チワワの恐怖は一連の記憶と共に去り、町の平和は今日も守られた。 ただひとり、正座して怒られる紅い人を除き、今日も人々は平和を謳歌していく。 ありがとうリベリスタたちよ! ありがとうセガネタよ! もうやんないでね! |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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