● 海色の瞳をカッと開けて『碧色の便り』海音寺 なぎさ (nBNE000244) はベッドから飛び起きた。 今見た夢が現実になるならばどんなに幸せなことだろう。 「ね、猫……」 アークの寮の一室を借りている身としては、どんなに可愛くてもこの部屋でペットを飼う事は出来ない。 或いは申請すれば許可が降りるかもしれないが、多忙なアークの人々をそんな風に手間を取らせてしまうのは忍びない。 いつぞやの白黒世界から降ってきたもふもふ達にも会いたかったけれど、彼等はアザーバイドであったからリベリスタ達にお願いしたのだ。 しかし、今回は普通の猫である。少しぐらい触っても良いだろうか。 予定が空いているか机の上にあるみかんの形をした手帳を見てみる。 そこに書かれたスケジュールは奇しくもたんぽぽ園の子供達と遊ぶ日であった。 「ねこ……、子供達……」 猫は可愛い。けれど、子供達と遊ぶ方が大切である。 此処はリベリスタに任せるため、なぎさは早速カレイドシステムがあるセンタービルへと向かうのだった。 ● 「猫がエリューション化してしまう缶詰が発見されました。このままでは猫が大量にエリューション化してしまう恐れがあります」 そう切り出したフォーチュナの顔は何故だか嬉しげであった。 ブリーフィングルームのモニターには可愛い子猫が映し出されている。 「猫!!! 可愛いよね!!!」 「はい!!!」 羽柴 壱也(BNE002639)の声になぎさが元気よく応えた。きっと彼女は猫が好きなのだろう。いや、そうに違いない。 「それで、どう対処すればいいのかしら?」 配られた猫の写真を良く見えるように並べながら斬風 糾華(BNE000390)は可愛らしく首を傾げる。 「まさか……殲滅とか?」 御厨・夏栖斗(BNE000004)の心に一瞬暗い影が這いよってきた。こんなに可愛い猫達を倒さなければならないのだろうか。 「いえ、そんな酷いことはしなくても大丈夫です」 「そうか。それは良かった」 なぎさが殲滅を否定すれば、新城・拓真(BNE000644)を含めたリベリスタの声が安堵に変わる。 「皆さんには猫達の気を引いて、その猫缶を食べに行くのを阻止して頂きたいんです」 「あれ? 遊ぶだけでいいのか?」 ブリーフィングルームの照明が焦燥院 ”Buddha” フツ(BNE001054)のさっぱりした頭を優しく照らしていた。 「猫缶はどうするんでしょーか?」 「それは私たちが責任を持って回収します!」 シーヴ・ビルト(BNE004713)の疑問にはブリーフィングルーム入り口に立っている黒服たちが応える。 「回収が完了したらお知らせ致します!」 黒服たちの回収が完了すればあとは自由時間。 もふもふし放題という訳だ。 この作戦に憂いなどない。 在るとすればそれは相手が猫であるが故の気まぐれな行動だろう。 むしろそこが愛おしいとさえ感じてしまう者であれば、この作戦は夢心地なのかもしれない。 「それでは、写真とかよろしくお願いします」 なぎさはイングリッシュフローライトの髪をぺこりと下げてデジカメを取り出した。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:もみじ | ||||
■難易度:EASY | ■ リクエストシナリオ | |||
■参加人数制限: 6人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2014年09月14日(日)22:03 |
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■メイン参加者 6人■ | |||||
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●妖精と猫 「それでは頑張りましょ―っ、えいえいおーっ!」 ふんわりとした口調でシーヴ・ビルト(BNE004713)は手を空へと突き上げた。 彼女の手の中に握れているのは銀色の塊。 「猫缶準備して行くのですっ、なんとプレミアムなのです、猫まっしぐらなっ!」 それは、糾華が持っていたのと同じものだ。黒蝶館の商品棚からまた一つ猫缶が消えたのだろう。 猫缶の蓋を開けて塀の上へと飛んだシーヴ。 そこに現れたのは硬派な猫だ。きっとツンデレだ。そういう設定にしておこう。そうすれば、無視されても心が折れない。 シーヴの姿を見つけた彼はプイと顔を逸らして屋根へと駆け上がる。 「猫さん待って―っ」 トテトテとシーヴが猫の後を追えば、彼も同じぐらいの距離で離れていく。 けれど、彼女が離れすぎるぐらいの位置まで移動すると、ぴたりと止まって待っていてくれるのだ。 猫缶の中身が溢れても気にしないでシーヴはその猫を追い続ける。 トトっと猫が地面へと降り立った先に広がっていたのは、住宅地の間にある寂れた公園だった。 猫が一つの遊具の前で止まる。中が空洞になっているタイプのものだ。 「うー?」 シーヴが猫と同じ様に覗きこめば、わらわらと小さな子猫と母猫が居た。 「ひゃーっ!」 そして、シーヴの猫缶へと一斉に飛びかかる。じたばたと暴れるシーヴの手の中にあった猫缶は食べつくされた。 「えへへ、掴んだら離さないのですー。ひゃう、暴れちゃ、めっ><」 沢山の子猫を抱え込んで胸に抱きしめるシーヴ。蹴られても引っかかれても幸せなのは間違いないだろう。 小さい猫の爪は肌に食い込んでちょっぴり痛かったけれど。 ●双剣と猫 普段斬った張ったをしている任務に比べれば、平和な物だが……。 猫を逃せばそれだけ斬らねばならぬ対象が増えるという事でもある。 見事構い倒して、猫を先に進ませない様にせねば―― 真剣な面持ちで心情を書き連ねるのは『誠の双剣』新城・拓真(BNE000644)だった。 しかし、彼の出で立ちは新歓のチラシを配る時に軽音楽部の女子高生が着る様なきぐるみである。 「これで間違いなく完璧だ……きっと猫にも受けるに違いない」 猫じゃらしを二刀流(クロス)した彼は斜め後ろに構えたカメラに向かってドヤ顔をキメる。 さりとて、猫というものは臆病なものである。 目の前にもっくりとしたモルぐるみが現れれば、警戒をするのが道理。 「ニャー!」 「あ、待て!」 逃げていく猫達を繋ぎとめようと、拓真は九吠狼翔閃(またたびバラ撒き)でアタックをかける。 ポトポトポト。 周りに居た複数の猫達は拓真のマタタビ攻撃によって靭やかな肢体をくねくねさせていた。 タタタタタッタ―― しかし、遠くから聞こえてきた足音にモルぐるみはハッと顔を上げる。 「ニギャァァァオオオオ!!!」 颯爽と現れるボス猫はまたたびを口に咥え、ギロリと拓真を一瞥した後、ドドンと頭部を足台にして屋根へと登って行った。 ●坊主と猫 「はあああああ! 猫ちゃん、ねこ」 柔らかな陽光が『てるてる坊主』焦燥院 ”Buddha” フツ(BNE001054)に降り注ぐ。 キラリと光る頭と笑顔。 「猫と遊べばいいんだな! 任せろ! めっちゃ遊んでめっちゃ足止めするわ!」 駈け出して行く様は普段の貫禄のある着物姿からはかけ離れた少年のもの。 「フェイト使用! 間違えた、毛糸使用!」 言いながらコロコロと転がした沢山の毛糸玉を猫達の前に広げるフツ。 「ホラー、猫達ー、毛糸玉だぜー、フワフワで転がるぜー」 「にゃ~ん」 「な~ご、な~ご」 彼の優しげな言葉にわらわらと猫達が寄ってきては毛糸玉と戯れ始めた。 ふと、顔を上げたフツの黒い瞳に映り込んだ遠くの風景。 小さな猫が淋しげな背中を此方に向けてトボトボと毛糸玉の集団から離れていく所だった。 「どこ行くんだ、お前。一人でこんなとこにいないで、一緒に遊ぼうぜ」 見上げた小さな猫の瞳は翡翠色。可愛い天使と同じ色。 そっと拾い上げて頬を付ければ、怯えた様な背中も震えを無くす。 陽光の当たる暖かな芝生に座り込んで、フツは小さな猫を膝の上に乗せた。 「煮干し食う?」 「……にゃ」 ころころと喉を撫でながらフツが懐の煮干しを差し出すと、パクリと加えて食んだ小さな猫。 日溜りの後光―― フツの周りには毛糸玉を転がす多数の猫と一匹の小さな猫が居た。 ●ヒーローと猫 「ねこ! 好きだよ、ねこ」 『覇界闘士<アンブレイカブル>』御厨・夏栖斗(BNE000004)は魅惑の動物に想いを馳せる。 猫というものは、気まぐれで可愛くてどこかの誰かに似ている。そう、華麗に舞う蝶のような。 「ね、あざっちゃん!」 十字の方向に猫の足音がすれば、彼の耳がそれを捉えた。 目標へと近づく夏栖斗の手には、ねこじゃらしとカリカリの餌が装備されている。 そこに居たのはふさふさの毛並みを持つボス猫だ。先程、拓真の所からマタタビだけを攫って行ったあのボスだ。 慎重に足音を余り立てずにそろりそろりと歩を進め、射程距離内に到達した。今だ―― 「お、おねこさま! 触ってもいいですか?!」 夏栖斗の前に現れた猫は、目をまんまるにした後、彼の手の中に揺れるねこじゃらしへと跳びかかった。 バリバリバリ! 猫じゃらしの疑似餌の部分に噛み付き、夏栖斗の指先には足蹴りが入る。 「ニギャ、ギャ!」 「いて、イテて!」 猫の脚力は半端無い。がっしりとした爪牙のホールドから、脚で蹴られる一連の動作は結構痛みを伴うものだ。 夏栖斗が怯んだ隙に、ボス猫は片方の手に握られていた餌をムシャムシャ喰って夏栖斗にぴんとした尻尾とアスタリスクを向けた。顔はいかついけれどお尻にあるそれは可愛らしいωである。 ●蝶と猫 「くしゅん……」 小さく可愛らしいくしゃみをした『舞蝶』斬風 糾華(BNE000390)。何処かのヒーローに名前を呼ばれたのかもしれない。 猫……それは、手を届かせるには余りにも遠く。 猫……それは、私にはとても輝かしい理想の姿。 「それが、猫……ねこ……ねこ!!!」 普段の糾華からは考えられないような情熱の迸りが感じられる。きっと彼女は猫が好きなのだろう。 彼女が用意したのは猫缶。猫缶Gold。猫缶Premium。糾華のコーポで売ってるやつだ。商品棚から持って来たのだろうか。 「え? 自社製品? 知らないわね」 それと猫用のおもちゃも忘れてはならない。 「もちろんエリューション化なんてさせないわよ。猫に対する愛情にあふれた至福のシリーズ……よ!」 訂正。彼女は猫が大好きだ。 「……でも、猫に嫌われちゃうのよねぇ……」 ふぅ、と溜息をついた糾華は悶々と猫を眺め続ける。 体質か、彼女の振る舞いなのか。猫は総じて構われすぎると嫌になって飛び出していくものだ。 「でも、近づくだけで逃げることはないじゃない……?」 そうだ! そうだ! 触らせてくれても良いじゃないか! 他の人には触らせるのに! けれど、今日の糾華はいつもの糾華ではない。 その手に輝くのは自社製品(ねこかん)!!! 手始めにノーマル缶、その次にPremium、そして最終奥義猫缶Goldである。 ふさふさのいかついボス猫を虜にする猫缶。 少し離れた位置から様子を伺っていた糾華は、ふふふと笑みを零した。 「ここで猫の進行方向に私が立てば斬風結界が猫を食い止めるわっ!」 タタタタタッタ―― ボス猫は逃げ出した! 「……くすん」 ●絶壁と猫 「猫おおおうおおおおおおおお!!!」 数匹の猫に囲まれているのは『腐敗の王』羽柴 壱也(BNE002639)その人だ。 猫は匂いというものに敏感である。彼女から発せられる腐った……もとい、良い香りに引き寄せられてしまったのだろうか。 「みんなおいでおいで! さあ今日も遊びましょうね~!」 彼女は猫にでれでれだった。 壱也が抱き上げたのはふさふさの毛並みをもったいかつい顔のボス猫だ。 「フシャーー!!!」 あれだけ他のリベリスタ達を手こずらせた猫が安々と捕まっている。 否、カメラを巻き戻そう。 壱也がボス猫にターゲットを定め手を伸ばした瞬間から抱き上げるまでの時間。 一秒にも満たないその時間に繰り広げられたボス猫と壱也の死闘は壮絶なものであった。 壱也の手が身体に触れる前に駆け出そうと地を蹴ったボス猫の後ろ足は、壱也の左手によって既に防がれバランスを崩した上体は思うような飛距離を得ないまま、彼女の右腕の中に抱き込まれたのだ。 けれど、それで諦めるようなボス猫ではなかった。上半身を捻り壱也の腕から逃れんとする。 彼女は大人の女性であるから抱きかかえられた状態のボス猫の足元には前に張り出す弾力のある足場があるはずであった。云うなればシーヴの様なぷるんとしたものだ。 しかしである。 壱也の前面にはそのようなものは無かった。絶壁だった。 悲しいかな、ボス猫の読みは外れ、壱也の腕の中に収められたのだ。 ●みんなとねこ 「無事に猫缶は回収しました。ご協力感謝致します!」 黒服達から入った連絡に散り散りなったリベリスタ達が一箇所に集まってきた。 「拓真、ねこを使った、精神統一の修行があるってしってる?」 猫を抱きかかえながら夏栖斗はモルぐるみ――拓真に話しかける。 「そうそ、御厨くん! よく知ってるね! 猫を使った修行。拓真は知らなかった?」 夏栖斗の問いかけに同調するように壱也がボス猫を連れてきた。 「ん? ああ。そんなものがあるのか」 拓真がモルぐるみを通してくぐもった声を出す。 猫を使った修行とは即ち、猫タワーのことである。いかにして猫を積んでいけるかという肉体的精神的にも、とても厳しい修行である。 「なんか新城が猫使って精神統一するんだって? 気楽に行こうぜ、気楽にー」 頭の上に猫を載せたまま歩いてきたフツの笑顔はいつも眩しい。むしろ神々しい。 猫を乗せて歩いてくるなんて神にしかできやしない。 「アレだ、真に無の心を身につけたら、小鳥がその人に留まったりするらしいぜ。それとおんなじ! 多分!」 立川に住んでいる休暇中の聖なるお兄さん達なら出来る気がする。 そう言いながら涅槃の如き態勢でフツは暖かな芝生へごろんと寝転がった。 軽やかな身のこなしで頭に乗った猫に不安感を与えない所作は素晴らしいの一言である。 「頭に乗るのはいいけど、落ちるんじゃあないぜ。それと、爪もあんまり立てないでくれよ。一応鍛えちゃいるが、痛いもんは痛いからな」 小さな猫はフツの頭に寄りかかりながら爪を立てないように器用に丸くなった。 気持ちよさそうに寝息を立て始めた猫とフツを見つめる壱也、夏栖斗、モルぐるみの3人。 「猫タワー……いや、まあ、バランス感覚を補う為の修行になる……のか?」 「なるなる~☆ まずそのままたっててな」 「きっとなるよう! じゃー乗せてくよ~じっとしててね!」 「なんか楽しそうっ、どんどん重ねるのですっ」 壱也と夏栖斗、そしてシーヴは抱えていた猫を拓真の肩に乗せた。 「やれるだけは試しても構わんが何処まで行けるかは解らんぞ。出来る限りの努力はするが……まあ、猫は怪我だけはせんように」 「大丈夫! 落ちそうな子は僕がキャッチするからさ!」 ダンディライアン・ゴールドの瞳をパチリとしながら悪戯な笑みを浮かべる夏栖斗。 「落とさないように精神統一して! ねこ修行は一日にしてならずだよ!」 「うむ。こ、こうか――ぐぅっ!」 おおっと、ここでボス猫の足蹴りが拓真の顔面に炸裂したぁ! 痛烈な蹴り上げはモルぐるみという重い鎧のバランスをいとも簡単にくずしてしまう。 しかし、拓真は屈しない。 これまで彼が培ってきた経験が彼に力を与えたのだ。それは正に己の道を自分の手で切り拓く名を与えられた彼にしか出来ない技だ。 2つの手を使って反り返り、ブリッジ状態になったモルぐるみ。 けれど、猫達は非情にもその腹部へと次々に飛び乗っていく。 「ふにゃ、重くないですかー?」 「まだまだぁ!!! ここで倒れる訳には行かない!!!」 拓真の気合の入った声がくぐもったモルぐるみの口から聞こえた。 「おおっ、拓真おにーさんしっかり支えてて凄いのです><」 シーヴのレモン・ゴールドの瞳がキラキラと輝いて拓真を見つめていた。 爽やかな秋の風がモルぐるみを撫でていく。 登りやすくなった拓真にしがみつく猫達。 「こーゆーぶら下げるおもちゃあったよね! それみたい!」 懐かしい。猿のやつだろうか。 「あ、それ猫まっ逆さまの猫缶!!!」 シーヴの取り出した猫缶に壱也が声を上げる。 真っ逆さま……何かが違うが。まぁ、きっと同じようなものだろう。 シーヴの手の平に置かれているのは糾華のコーポで売っている猫缶Premium。 「壱也さんも、いっしょにあげましょーっ」 ポンと壱也が猫缶を開ければ、わらわらと猫達が集まってくる。 「猫ちょーいっぱいよってきたあああ!!!」 ゴロゴロと喉を鳴らしながら壱也に擦り寄る猫を見つめて夏栖斗はその子たちに語りかけた。 「なー、ねこ。それ平だけど、爪とぎじゃないんだぜ? 平だけどな。 すごい平で研ぎやすいけどな、格差社会っ辛いことだな、いっちー! 平でも可愛いからな、いっちー!」 「ふにゃ??? 猫さん爪研ぎしちゃうの?」 「大丈夫だ、全てが胸だという訳ではあるまい……」 シーヴと壱也の胸を見比べて夏栖斗が笑顔を向ければ、拓真がフォロー(?)を入れる。 「誰が、板だって? 爪研ぎだって……? 御厨くんも拓真も面白いこと言うねっ!」 うふふと超絶笑顔で二人の肩を掴んだ壱也は、親指をくぃと上げた。 お二人さんご案内! どこに連れて行かれるかはご想像にお任せ致します! 素敵な所ですね。きっと。 三人をニコニコと見つめるシーヴは傍らの子猫を撫でながら話しかける。 「あっ、私は研ぐより猫パンチして欲しいのですっ、肉球ふにふにっ」 まだ生まれて間もない子猫の肉球はふにゃふにゃだ。これがコンクリートの上を駆けるようになれば固く逞しくなっていく。 「猫さんはふわふわもこもこで可愛らしいから好きなのですっ」 糾華は少し離れた場所にぽつんと座っていた。 彼女は既に威嚇されたり、逃げられたりをひと通りされていたのだ。 「……ううん、わかってたの。猫のいる風景は……私にはあまりにも遠い……」 哀愁の漂う少女の姿。 その背後にのそりと現れたのは無愛想で強面、そして不細工な猫である。 彼はその出で立ちから近所ではぶーにゃんと呼ばれているのだ。 そっと寄り添うように糾華の隣にやってきたぶーにゃん。 「……皆と遊ばなくていいの?」 「……ャ」 「……そっか、優しいのね」 彼には糾華の侘びしさ寂しさが分かったのだろうか。 意味もなく嫌われ拒絶されるのを平気だと言ってみてもそこに生まれるのは孤独の色。 同じ色彩を感じ取ったからこそ糾華はぶーにゃんの背中をそっと撫でた。 「あっ、あざかさんだーっ」 「糾華ちゃん、おやつもらってきたの! 一緒にあげよう~!」 きゃっきゃとした声に糾華が振り向くとシーヴと壱也がこちらを向いている。 「……ャ」 ぶーにゃんは自分の役目は終りだと、茂みの中に消えていった。 代わりに押しかけた赤と緑の女の子に囲まれて糾華は笑みを零す。 壱也に手渡されたおやつとシーヴが連れてきた猫達を見つめて困惑する糾華。 「一緒に遊んでくださいニャー♪ そのご飯をくださいニャー♪」 「猫シーヴさん、遊ぶのは良いけれど、本当に言ってるの? 本当?」 先程、威嚇された猫達の事を思い出して少女は眉尻を下げる。 「ふにゃ、猫語解るもん、あざかさん好き好きーとか言ってるもん><」 そっと近づいてきた白銀色の毛並みの猫に糾華は餌を差し出した。 「この猫、糾華ちゃんの髪の毛の色と似てて、すごくきれいだね」 「そうね、銀色っぽい白ね。おそろいね?」 「なんかこのねこふっくんに似てるよなー。悟り開いてるっていうか」 寝ているフツの頭におとなしくて遠い目をしている猫を置いてみる夏栖斗。 そして彼は気づく。――これつるってすべって爪がささったら大変なことになるな! いくら修行しているとはいえど、地肌の強度は猫のそれには敵わない。 「斬風も焦燥院もこうして猫に戯れて居るのを見ると、年相応に見えるな」 拓真もその歳から考えると老成しているのだが。 彼の口から紡がれる言葉は22歳とは思えないものばかりだ。 「うむ、皆が猫に戯れているのを眺めるのは中々良い。各々楽しめているようだし、良かったな」 こうやって達観したセリフを吐きつつも、その身体――モルぐるみには猫が無数にくっついていた。 「全員で記念撮影しようぜ!」 大空が茜色になる頃。猫達も自分の住処に帰ってしまう頃合いだ。 「猫がびっくりするといけないから、フラッシュは無しで! ほら、全員集まって!」 フツがデジカメのタイマーをセットしながら指示を飛ばす。 フレームに入りきらない猫はモルぐるみ拓真と夏栖斗に乗っけて。壱也の腕の中にも満載の猫。 糾華のリボンに引っかかった猫とシーヴの満面の笑み。 「よし撮るぜ!」 急げ急げ。シャッターが降ろされるまであと一秒。 ぶーにゃんにボス猫、白銀色の子、小さな子猫。 硬派なツンデレ君、遠い目をした子も全員集まって。 ――ハイ、チーズ! 「「「ねこ! 大好きーーーー!!!」」」 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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