●ルゴ・アムレスの黒塔 ボトム・チャンネル。 それは階層上になっている世界において、一番下であるという世界のこと。 故にボトムチャンネルは上位世界からの脅威に晒されてきた。時折Dホールを渡ってくるアザーバイドにより、大きな被害を受けることもある。それに対抗するためにリベリスタは徒党を組み、組織だって警戒に当たっているのだ。 さて、上位世界にもいろいろな世界がある。ボトムチャンネルよりも広大な世界も在れば、ただ樹木が一本生えているだけの世界も。時間が止まった世界もあれば、今まさに消え去ろうとする世界も在る。 そんな世界の一つ、ルゴ・アムレス。 半径五キロ程度の大地に、天を衝くほどの黒い塔が存在する世界。そこは多種多様の戦士達が集う修羅の世界。 その塔の上にこの世界のミラーミスがいるといわれ、今なお塔は天に向かって伸びていた。何を目指しているのか、誰にも分からない。狭い世界ゆえに、塔はどこからでも見ることができる。 そして塔の中は、階層ごとに異なっていた。町が丸ごと入っている階もあれば、迷路のような階もある。そしてこの階は……。 ●知の番人 「ようこそ。確かボトムと名乗る階層からの挑戦者だね」 やってきたリベリスタを出迎えたのは、一羽のフクロウだった。フクロウをそのまま人間サイズまで大きくしたそんなアザーバイド。羽根を使って器用に盆を持ち、来客者用のお茶を出す。 「粗茶ですまないね。ゆっくりしていってくれ」 この階層は例えるなら巨大な図書館だった。天を衝くほど巨大な本棚が、塔のエリア内全てに広がっている。その本棚内に様々な本が存在している。異世界の文字なのでさすがに内容までは分からないが。 「この階層の守護者、セイジです。後この階層の管理も任されている。本に興味は?」 セイジと名乗ったアザーバイドは柔らかな声で語りかける。察するに司書のような仕事だろうか? 量が膨大なので仕事量までは把握できないが。 「私はレジュム……君達の言語に変換すると『魔術』に相応する技術の使い手だ。あまり戦いは得意ではないので、お手柔らかに頼むよ」 戦いが好きではない、ではなく得意ではない、の辺りが司書とはいえこの世界の住人の特色である。この世界の存在にとって戦いはタブー視されていない。一種のコミュニケーションとして受け入れられている。 エントランスのような広い空間に案内され、そこで対峙するリベリスタとアザーバイド。セイジの言葉と共に足元が光り、空気が変わる。 「空間を包ませてもらったよ。これでどれだけ派手に攻撃しても、本棚には攻撃が届かなくなった。私の仕事上のことゆえ、これは許して欲しい。 あと、直接殴りあうのは苦手なので防護策をとらせてもらうよ」 言葉と同時にセイジが本を開く。本のページが数枚敗れ、ひらりと地面に落ちたかと思うと折りたたまれて四足獣の形になる。それが巨大化し、獣のように動き出した。 「さぁ、始めよう。上の階に行きたければ私を倒し給え」 フクロウと紙の獣。穏やかな口調だが向けられた戦意は穏やかではない。彼もまた、修羅の世界の住人。 リベリスタは破界器を構え、その戦意に応える―― |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:どくどく | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2014年09月17日(水)22:38 |
||
|
||||
|
■メイン参加者 8人■ | |||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
● 「まあ静かに本を読むのはあたしも割と好きなんだけど」 セイジに差し出されたお茶を口にしながら『狐のお姉さん』月草・文佳(BNE005014)は口を開く。異世界の淹れ方なのか、若干味わいがボトムチャンネルのものと異なる。おやこれは、と文佳の舌を唸らせた。 「まるで異世界コロシアムみたいな世界だな」 嫌いじゃないがな、と告げるのは『破壊者』ランディ・益母(BNE001403)だ。例え知を得る図書館であっても、戦いの場所となる。欲するなら戦え。野蛮に見えてルールにのっとった戦い。これがこの世界の法なのだ。 「知的な人も戦闘が得手不得手はあれど好まないが無い訳だ」 四条・理央(BNE000319)はなるほど、と頷く。この異世界は戦闘がコミュニケーションとなる。ならば知的であれども拳を振るうことに躊躇はない。むしろ知を得るために戦うこともあるのだろう。 「魔術合戦かな? ちょっと心躍るよね」 色々あって魔法少女になった『大魔法少女マジカル☆ふたば』羽柴 双葉(BNE003837)は 戦いを前に高揚していた。杖を手にして深呼吸をする。図書館特有の少し乾燥した空気が肺を一杯に満たす。 「おーっほっほっほ! いいでしょう! わたくしをためす権利を差し上げましょう!」 腰に手を当てて高笑いをする椎橋 瑠璃(BNE005050)。高飛車な態度だが、それは貴族の誇り。その誇りゆえに弱きを守らなければならないという任務を、瑠璃は自らに課していた。……戦闘は正直、怖いのだが。 「因縁とか政治とか、あるいは周囲の一般人の犠牲とか。そういうのを考えずに戦える、っていうのは少し気が楽かな」 長髪をかきあげて穏やかな口調でセレン・フライエル(BNE005060)が告げる。ボトムチャンネルでの戦いとは違い、ルゴ・アムレスの住人は心を痛めるような卑劣さはない。彼らの目的は勝ち負けではなく勝負そのものなのだ。そこに邪念が入るはずもない。 「そうだね……ボクもそうおもう」 『和歌集・写本』を胸元で抱えながらセレンの言葉に同意する『NonStarter』メイ・リィ・ルゥ(BNE003539)。辛い現実を見てきたメイからすれば、人の醜さがないこの異世界は綺麗に見えるのだろう。 「ふくろう先生! ふくろう先生だ!」 無表情だけど興奮している『夜翔け鳩』犬束・うさぎ(BNE000189)。図書館。術士。ふくろう。その三つが重なって色々うさぎの脳内のスイッチが入ったようだ。見れば周りの人間もその名称で納得しているようだ。 「準備はいいみたいだね」 リベリスタの準備が整うのを待って、セイジが本を開く。紙の獣が顕現し、臨戦態勢をとった。リベリスタたちも破界器を構える。 誰も動かなければ静かな図書館の中。始まりの合図はそんな静謐に降りたかすかな音。それがなんなの音か誰も想像がつかなかったけど。 気がつけば、それを合図に戦いが始まっていた。 ● 「木漏れ日浴びて育つ清らかな新緑――大魔法少女マジカル☆ふたば参上!」 アイドルオーラ全開。指を目に当てて、ポーズを決めながら双葉が名乗りを上げる。終わった後に報告書を見て身もだえするのだが、やっている最中はノリノリである。きゅぴん、という効果音が聞こえてきそうな立ち様だ。 体内の魔力を練り上げ、真っ直ぐに手を突き出す。四色の魔力が手の平に集い、黒の光となる。血液の流れが、魔力が、双葉の意志が一体化し、黒の光が研ぎ澄まされた一本の矢となった。 「其が奏でし葬送曲……いけっ、戒めの鎖!」 「良き一打ですな。これは侮れない」 「『戦いを楽しめる』状況は、嫌いじゃないわ」 戦いにおぼれれば、バイデンのようになる。だが戦いによって得られるものもある。セレンはそれを学んでいた。セレンの脳内スイッチが戦闘のほうに切り替わり、冷静に戦局を確認しながら高速で魔力を練り上げる。 呪文を詠唱し体内の魔力を形成する。ラ・ル・カーナの技術とは違うボトムチャンネルの魔術。魔力放出の余波で、セレンの長髪がふわりと浮いた。手の平に生み出された黒の矢をセイジに向けて、飛べと心の中で念じて飛ばす。 「セイジ……さん、でいいのかな。学ばせて、もらいます」 「それはお互い様だよ。良き戦いを」 「単純な腕力暴力だけのバカの世界ではなさそうだ、気に入った」 ランディが二本の斧を鎖で繋げた破界器を手に唇を笑みに変える。紙の獣を押さえながら、その視線はセイジの方を向いていた。魔力と筋力を斧に篭めながら、アザーバイドに問いかける。 「この世界では知も力なりって言うんじゃないのか? 使う頭がなければ獣同然だからな」 「然り。力も知恵も持ち主の使い方次第です」 セイジの答えに応じるように、ランディは溜め込んでいた魔力を解放し、自らの筋力でそれを撃ち放つ。融合した二種類の力は真っ直ぐにセイジに向かった飛ぶ。白光となった一撃が、セイジの身体を穿つ。 「……ん。じゃあ行くね」 メイが魔道書を手に動く。白と黒のみの色で形成されたドレスを翻し、言葉なく魔力を練りあえる。防御を無視して動きを重視したドレス。危険ではあるが、メイはそれでもk舞わないとこのドレスを愛用していた。 メイの魔力が小さな雨となって敵陣に降り注ぐ。細か且つ的確な操作により、敵の急所を穿ち魔力強化された部分を破壊する。威力こそ小さいが、それでも相手の攻撃を削ぐ一撃は集団戦の中において重要な一手だ。 「ボクの役目は攻撃支援……もっと正確に言うなら、敵に対する嫌がらせだから」 「御見事ですよ。この精度を得るためにかなりの修練を要したでしょう」 「そのお陰でぼくは色々立ち回れるよ」 理央は盾を手にして戦局を見やる。あらゆる状況に立ちまわるために、現状を知る。そこから判断して、最も適した行動をとるのだ。一点に特化して明確な役割を持つことはないが、だからこそ如何様にでも立ち回れるのが理央の特徴。 指先で空間に印を切り、セイジを指差す。それは星のめぐりを知り、運気の波を乱す術。戦いにおいて必要な『幸運』を遠ざけることで、結果的に味方をサポートする。回復はまだ必要ない。今は攻撃に回るべきだ。 「さぁ、次はどう動きます?」 「ふむ、ではこちらも攻めさせてもらおうか」 「お手柔らかにお願いします、ふくろう先生」 本当に手加減して欲しいわけではないが、礼儀的にうさぎが告げる。紙の獣に近づき、手にした破界器を振るう。『11人の獣』と呼ばれる奇妙な形の破界器。それが一度振るわれるたびに、紙の獣に傷が増える。 獅子に似た紙製の獣。その爪を掻い潜り、破界器の間合にもぐりこむ、大きく開かれた口と、そこに生える牙。それを迎撃するかのようにうさぎは破界器を横なぎに払う。破界器についた十一の刃が獣の口を傷つける。 「ふむ、容易には切り裂けませんか……なら切り裂けるまでやりましょうか!」 「なかなかめげないものだね。潜ってき戦いの数かな」 「そ、そうですわ! この程度の獣に遅れを撮るつもりはありませんわ!」 腰に手を当てて笑う瑠璃。実際は獣の動きに怯えているのだが。それを表に出さないように努力するのは意地かそれとも元華族の矜持か。二対の扇を手にして獣の攻撃を避けながら、セイジのほうを見る。 自分自身の正中線と、相手の正中線。踊りの基本はその軸をずらさないこと。跳躍する獣に見える軸のズレ。それを見切って瑠璃は扇をかざす。獣の突撃を扇で誘導するように自らを回転させ、攻撃をいなしながらセイジに攻撃を加えた。 「おーっほっほっほ! 見ましたか、この華麗なる舞い!」 「足、震えてますよ。椎橋さん」 「続けていくよー」 護り刀を手に文佳がセイジを見る。鞘から抜かれた刀は白銀。曇りなき刀身は数多の血を吸った妖刀とは真逆の清らかな力を持つ。文佳の力と清楚な気が交じり合い、静かに魔力が増幅されていく。 詠唱と共に展開される魔方陣。複数の魔方陣が相互に干渉しあい、さらなる増幅効果を生み出す。そしてその力は文佳の指先一点に注がれる。人狼をも滅ぼす必殺の魔弾。魔力により作られた一撃が、セイジに放たれる。 「これは効いたでしょう」 「確かに。たいした威力だよ」 文佳の弾丸が与えた傷口を押さえながら、セイジが賞賛の声を返す。その声にはまだ余裕があった。 セイジの持つ本がひとりでに捲られていく。そのページ一枚が彼の魔力にして攻撃手段。それは結界内に満ちていく。 戦いはまだ始まったばかりだ。 ● リベリスタの戦略は『ペーパービーストを押さえながら、セイジへの集中攻撃』である。後衛に向かわせないように前衛がブロックしながら、セイジに攻撃のできるメンバーが一気に攻める。 対しセイジの術はリベリスタの火力を削りながらじわじわと追い詰めていくタイプだ。空から降り注ぐ羽根が力を削ぎ、沸きあがる影が速度を封じる。じわじわと全員の火力と速度を削りながら攻めるセイジ。 「まぁ、そうはさせないんだけどね」 その状況を打破しているのが理央だ。自身を護るように浮遊する盾から放たれる光。それがセイジの放った影を打ち消し、天罰の羽根の力を削ぐ。敵の情報も得たいのだが、やりたいことが多すぎて手が回らない。優先度が高い行動を行い、隙をうかがう。 「じゃあ、回復するね」 そしてメイがセイジの攻撃で傷ついたりベリスタを癒していく。声に魔力を乗せて、歌うようにリズムを刻む。音は結界内に響き渡り、リベリスタの耳に届く。淡い光と温もりが身体を包み込み、リベリスタの傷を癒していく。 「助かったぜ」 ランディは二人の回復に礼を言い、セイジに向かい衝撃波を放つ。自らの気と魔力を融合させ、打ち放つ技法。強い戦意を身に秘めながら冷静な心で魔力を練る。剣と魔の二面を美味く融合させ、敵を穿つ砲を放つ。 「こ、ここは通しませんわ!」 ツインテールを揺らしながら瑠璃が息絶え絶えに紙の獣を睨む。敵の攻撃を避けることは簡単ではないが、耐えることはできそうだ。瑠璃自身の火力では突破できそうにないが、心配はしていない。仲間がいるのだから。自分は自分の役割を果たそう。 「これで終りです。それではふくろう先生、行きますよ」 うさぎの刃がペーパービーストを切り裂く。獣は魔力を失い、ただの紙となって散り散りとなって消えた。うさぎは戦局を見やり、セイジのほうに向かう。仲間が危険だったらそちらに向かう予定だったが、重篤な状況ではなさそうだと判断して。 「流石に大技連発は辛いわね」 文佳は戦いが中盤に入ったころからエネルギー回復に魔力を向けていた。文佳自身の扱う技もそうだが、高レベルの技は総じてエネルギー消費も激しい。ここで味方のエネルギーを回復することで安全な攻めが出来るようになるのだ。 「大魔法少女の真骨頂、私の全力!」 その恩恵を一番受けているのは双葉だろう。手数の多さと一度に放つ魔法力の違い。四種類の魔力弾を放ちながら、降り注ぐ凶星が敵を穿つ。 「双星よ。指し示す導きのままに敵を打ち、討ち、滅ぼせ!」 だが、高レベルの魔法を連発することに意味はある。セイジとペーパービーストのダメージは確実に蓄積していた。回復のないアザーバイドは少しずつ追い詰められていく。 「動きは私も封じるわ!」 セレンがセイジの動きを封じようと、黒鎖の術を放つ。四種類の魔力を練り上げるマグメイガスの技法。技巧を凝らして標準を定め、飛び交うセイジの足元に絡みつくように術を放つ。絡みついた鎖が、セイジの詠唱の邪魔をする。 「ふむ、ここで封じておくべきは……貴方ですね」 「……っ!」 セイジの魔力が稲妻の鎖となってメイに絡みつく。回復役を厄介と思ったのか。体力があまり高くないメイは、運命を燃やして何とか耐える。 「まずいですわ!」 「大丈夫、私が庇います」 ペーパービーストを押さえている瑠璃が守りにいけないことを歯軋みし、セレンがメイを護るべくメイの近くに走る。ナイフを構え、防御の姿勢をとった。 「ボクも回復に回るよ」 符を指に挟み理央も回復の術を行使する。多人数を一気に癒せないが、それでも十分な回復だ。 「こいつで、どうだッ!」 ランディがペーパービーストの攻撃を捌きながら、セイジに衝撃波を放つ。獣に負けず劣らずの荒々しい表情でランディは斧を薙ぐ。 「近接されたときの対策も十分とは」 うさぎがセイジの召喚した刃の精霊と切り結ぶ。血を流しながらこちらも負けじと刃を振るう。 「我願うは星辰の一欠片。その煌めきを以て戦鎚と成す。カエルスの息吹をここに!」 ここが勝負の決め時と判断した双葉が、大魔法を連続で放つ。星の鉄槌がアザーバイドを襲い、ペーパービーストを吹き飛ばす。 「『図書館では静粛に』よ。ま、騒がしくなるのは仕方ないか」 魔力の奔流が納まる中、文佳が静かに指先をセイジに向けていた。己の魔力を極賞に絞り、一発の弾丸として解き放つ。弾丸は静かに真っ直ぐにセイジの胸部に向かって飛ぶ。それが放たれたと気付いたのは、着弾の音が爆ぜてから。ぐらりと揺れて倒れるセイジ。 「んー、なんとかなったかな」 黒の長髪を手櫛で梳きながら、文佳は微笑んだ。 ● 「御見事です。私もまだまだ勉学が足りませんな」 存外元気に立ち上がるセイジ。他の司書がリベリスタとセイジ傷を癒し、結界内部分の掃除を行う。 「……あ、先生。宜しければ私が持参したお土産のこのモノクルと博士帽と指し棒をですね……」 掃除を手伝いながらうさぎがセイジに片眼鏡と博士帽と指し棒を渡す。まぁなんというか、ふくろう先生である。他のリベリスタもセイジの格好を見てうんうんと頷いている。 「セイジさん、ありがとうございました」 セレンがセイジに向かって一礼する。この戦いで学ぶべきところはあった。この経験を活かすかどうかはセレン次第だ。命題は常について回る。 「おーっほっほっほ! この程度、どうということはありませんわ! ……あの、できればもう少し回復を頂けると……」 腰に手を当てて瑠璃が立ち上がる。堅牢な防御力もあって、傷こそ多いが大怪我には至っていない。どうとうことはない、はけしてハッタリではなかった。 「本当に沢山の本があるんですね」 三高平では図書館に籍を置いている理央が、膨大な本の数に圧倒されていた。まるで自分が小人になった気分だ。 「美味しい煮物の作り方の本とか無いかしら……と」 半ば冗談交じりで文佳が本を探す。流石に言語の壁もあってよくわからない本ばかりだ。翻訳するにしても時間がかかるだろう。 「使えそうな本とかもらっちゃ駄目かな? 私が使えなくたって持ち帰って解析出来れば皆の役に立つと思うんだ」 少しアークの周りが騒がしくなって来たことを憂い、双葉がセイジに懇願する。皆の力になればと思ったが、セイジはやんわりと拒否をする。 「君たちは個々の魔力で勝ったのではない。皆の連携で勝ったのだろう? ならば君達が為す事は団結力を強めることだ」 「……まぁ、そうだよね」 他人と一定以上接しようとしないメイが、セイジの言葉に同意する。それ自体は正論だが、絆を深めるデメリットもメイは理解していた。 「この世界のミラーミスについて聞きたいんだが」 ランディは若干声を堅くしてセイジに問いかける。ラトニャにR-TYPEとミラーミスには散々迷惑を蒙ってきた。事、ランディの人生はR-TYPE襲来により大きく変わったといえる。気になるのも無理はない。 「ふむ……どこから語ろうか」 机とお茶を用意し、セイジが語り始める。『多くを語れるわけではないが』と前置きをして言葉を続けた。 「ミラーミスの名前は『アム』。 そしてこの黒塔はアムの能力により生み出された、いわば彼女の武装なのだよ」 セイジの言葉にざわりと同様が走る。あるものは成程と頷き、あるものは不安に思う。奇妙な塔は思っていたが、まさかミラーミスの武器だとは。 「武装、といっても何かに危害を加えるわけではない。そもそも彼女はこの塔の頂上にいて戦えない。この塔を維持し、挑戦者を待つだけだ。 そう、君達のような」 セイジはこれ以上は言えぬ、と目線で語る。これ以上知りたければ、戦って得よ。それが修羅の世界『ルゴ・アムレス』のルールなのだから。 Dホール解放時間の限界の為、撤収の準備に入るリベリスタ。 遥か塔の上を見上げ、セイジの言葉を思い出す。 君達のような挑戦者を待っている。 塔は高く、今だ手は届かない。 だが確実に頂上に近づいている―― |
■シナリオ結果■ | |||
|
|||
■あとがき■ | |||
|