●ルゴ・アムレスの黒塔 ボトム・チャンネル。 それは階層上になっている世界において、一番下であるという世界のこと。 故にボトムチャンネルは上位世界からの脅威に晒されてきた。時折Dホールを渡ってくるアザーバイドにより、大きな被害を受けることもある。それに対抗するためにリベリスタは徒党を組み、組織だって警戒に当たっているのだ。 さて、上位世界にもいろいろな世界がある。ボトムチャンネルよりも広大な世界も在れば、ただ樹木が一本生えているだけの世界も。時間が止まった世界もあれば、今まさに消え去ろうとする世界も在る。 そんな世界の一つ、ルゴ・アムレス。 半径五キロ程度の大地に、天を衝くほどの黒い塔が存在する世界。そこは多種多様の戦士達が集う修羅の世界。 その塔の上にこの世界のミラーミスがいるといわれ、今なお塔は天に向かって伸びていた。何を目指しているのか、誰にも分からない。狭い世界ゆえに、塔はどこからでも見ることができる。 そして塔の中は、階層ごとに異なっていた。町が丸ごと入っている階もあれば、迷路のような階もある。そしてこの階は……。 ●大橋で待つ者 塔の中に河がある。この黒塔をよく知るものからすれば、この程度では驚かなくなっている。向こうまで見えない巨大な河。翼があれば飛んでいけるだろうが、そうでなければ橋を渡るしかない。その橋の中央に、腕を組んで待っているものがいた。 「お客さん、ボトムとか言う階層から来た挑戦者だね。アタイの名前はベンケイ。この階層の守護者さ」 語りかけてくるのは大柄な女性だった。褐色の肌に鍛え上げられた肉体。そして背中には大量の武器。さらにその背後には武器持ちと呼ばれるハリネズミのようなアザーバイドがいた。 「ああ、上に階に行きたければアタイを倒して行きな、ってヤツだ。単純明快だろ? 相当強いらしいけど、アタイも強いぜ。覚悟しな!」 言ってベンケイは大量の武器を手にする。並の革醒者なら片手で扱う剣を指と指の間に挟んで爪のようにして扱い、両手で扱う重量のある斧を片手で振るう。自らの強さを示すようにパフォーマンスし、その後でリベリスタに向き直った。 「ところでお客さんもいい武器持ってるよなー。もらっていい? だめかー。じゃあどんな武器か後で教えてくんない?」 豪快な演舞の後、気さくに語りかけてくる。人懐っこい笑みは、リベリスタを軽視していない証拠。ここまで登ってきた実力は嘘ではないだろう。相手を戦士と認めた上で語りかけているのだ。 「ま、やりますか。 千の武器持つベンケイ、ボトムのお客さんに挑ませてもらうよ!」 戦いを前に嬉しそうな笑みを浮かべるベンケイ。戦うことがたまらなく楽しいというそんな顔だ。 そんなベンケイの構えに合わせるように、リベリスタたちも破界器を構えた。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:どくどく | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2014年09月17日(水)22:37 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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● 「本当に色々な階層があるのですね、この塔は」 橋を渡りながら『柳燕』リセリア・フォルン(BNE002511)は感嘆の声を上げる。塔の中に自然があること事態が不思議なのだが、手の込んだ橋があることも驚きだ。ここが建築物の中だということを忘れそうになる。 そしてその橋の真ん中で待つ女性と、その背後に彼女の配下。腕を組み、リベリスタたちを待ち受けていたアザーバイド。その名をベンケイ。 「今度は弁慶、か……やはりこの世界、はボトム、と関連、が深そう……だね」 『無軌道の戦姫(ゼログラヴィティ』星川・天乃(BNE000016)はこの世界のアザーバイドたちとボトムチャンネルの関連性を感じ、瞑目する。何かあるのは疑いようはないだろうが、それが何を意味するかまではまだ分からない。 「ベンケイがいるなら牛若丸もいるのかね?」 きょろきょろと周りを見回しながら『Brave Hero』祭雅・疾風(BNE001656)が口を開く。だがそういったものは見られない。どうやら牛若丸の役目をするのは自分達のようだ。笛でももって来るべきだったか、と肩をすくめた。 「見た感じだと、この世界、天狗位なら歩いてそうだよねー」 炎の翼を広げ、『パラドクス・コンプレックス』織戸 離為(BNE005075)が頷く。天狗の教えを受けた牛若丸が五条河原で弁慶を倒す。そんなストーリーだったか。緑の瞳でベンケイを見ながら、そんなことを思う。 「この塔も、そろそろ道半ばでしょうか」 登ってきた階層を思いながら『蜜蜂卿』メリッサ・グランツェ(BNE004834)が感慨に耽る。塔の折り返し地点。ここから先もこの調子で登れるかはわからないが、それでも半分まで登ったという事実はある種の達成感があった。 「今度は多数の武器の使い手か。これはこれで楽しめそうだわ。さぁ、やりあいましょ!」 『六翼天使』フランシスカ・バーナード・ヘリックス(BNE003537)は数多の武器を持つ相手を前に気合を入れる。フランシスカが構えるのは一本の黒剣。千の武器に対して一の剣。だが彼女は負けるつもりはまるでない。 「収集癖があるのか。無駄に集めて楽しげだな?」 毒舌を回しながら『普通の少女』ユーヌ・プロメース(BNE001086)はベンケイの武器を確認する。間合や威力の違いを想像し、戦いに生かす為に。本当に無駄な収集癖なのか、玉石混交か、それとも全て名刀か。 「状況に応じて様々な武器を使うということはある」 『T-34』ウラジミール・ヴォロシロフ(BNE000680)はナイフを握りながら、情報を確認する。ベンケイが主立って使うのは近接用武器。何かの武術を学んでいるというわけではなく、鍛えられたパワーを軸としている。 「八様八種。いろんな武器があるみたいだね。色々楽しめそうだ!」 ベンケイはリベリスタたちのもつ破界器を見て、心躍らせる。武器を見れば間合がはかれ、間合が計れれば自然と戦法も決まる。 水音が響く。河にすむ水棲の生き物が跳ねたのか。 その音を合図にして。大橋上での戦いは幕を開けた。 ● 「はぁい、ベンケイさん。わたしフランシスカ。強い奴は大好きよ」 フランシスカが翼を広げて橋の欄干近くを飛ぶ。柱を足場にして跳ねるように宙を待った。巨大な黒剣を振るい、体内のオーラを少しずつ解放する。オーラは剣に乗り、相手を呪う力となる。 柱を蹴って弁慶に切りかかる。大上段に剣を構え、落下にあわせて刃を叩きつけるように振りおろす。激しい金属音が響き、フランシスカの黒い剣とベンケイの黒い金棒が交差した。互いの武器越しに相手の表情を見やる。戦いが好きでたまらない。そんな表情を。 「さぁ――」 「存分に――」 「「やりあいましょう(ますか)!」」 「へリックス女史の剣戟を真正面から止めるか。成程、強敵だ」 同じくベンケイの押さえに入りながら、ウラジミールが冷静に相手の強さを見やる。どのような相手でも突破するのみ。ナイフを手に防御の構えを取りながら距離をつめる。ナイフの間合に入れば、長柄の武器は扱いにくくなる―― ウラジミールのナイフを見て、ベンケイは躊躇なく武器を捨てて腰のナイフを抜く。くの字に歪曲した奇妙なナイフ。成程難敵だ。ウラジミールは相手のナイフと切り結びながら、そう判断を下す。だが、 「この手の武器の扱いは、不得手のようだな」 「驚いたよ。遅れを取るなんて。たいした戦士だ」 「ええ、驚きです。相手にとって不足なし!」 リセリアが『セインディール』を手に、疾駆する。姉から貰った雌雄一体の剣。もはや体の一部といってもいいほど使い込んだ柄を握り、駆け抜け様にベンケイを切り刻もうと。一旦左に飛んでから、右。軽いフェイントの後に刃を振るう。 軌跡を阻むように包丁のような刃物が繰り出される。リセリアは腰をかがめ、手首をひねって刃の動きを変えた。落ちて浮かぶは飛燕の如く。剣の軌跡を追う様に光が走り、振るわれた刃はベンケイの黒肌を裂いた。 「重いのと堅いのと速いのと。流石だね」 「そちらこそ。その名に恥じぬ強さです」 「さて遊ぼうか。 延々強化されても面倒だ」 リベリスタがベンケイと戦っている間に、ユーヌが武器もちの方に視線を向ける。年端も行かぬ子供のように見えるが、怯えて震えるネズミではない。ならば早々に手を撃つべきだろう。 符を手にし、印を切るユーヌ。淡い灯火が武器持ち達の視界を奪い、その意識を誘導する。ベンケイをサポートするのではなく、ユーヌを狙うように。武器持ちの視線の先がユーヌに固定される。 「殴りに来てもいいし、その針を向けてもいい。ただし当たるかは別問題だ」 「ちゅー!」 「誘導はうまく行ったようだね」 離為は武器持ちの攻撃がユーヌに集中したのを見て、炎の翼を広げる。触れるものを傷つけ、熱を奪う炎の翼。それは拒絶が根幹にある離為の心の現われか。経歴も不明の離為。当人も黙して語らない。 誰も私に触れるなとばかりに翼は大きく広がり、弾丸を放つ。紫煙特化の武器持ちはその弾丸を避けきれず、その肩に傷を受ける。傷口から熱を奪われ、血を流す武器持ち。そのたびに炎の翼は赤く燃え上がる。 「うん。当たるみたいだね」 「なかなかやるねぇ。ちっさいの」 「見た目で判断すると……痛い目を、見るよ」 ベンケイの言葉に答えながら、橋の欄干を伝って武器持ちに迫る天乃。一気に敵の後衛に迫り、武器持ちに迫る。神秘の糸を形成し、指先に集める。鞭を振るうように指先を動かし、不可視の糸を動かしていく。 足首に絡みついた糸を引っ張る天乃。バランスを崩した武器持ちに迫り、鉄甲で一撃を加えていく。無音で近づき、急所を穿つ最短動作の暗殺術。夜に風が吹いたかのごとく静かな一撃。 「ほら……痛い目を、見た」 「まだ負けてないでちゅー」 「ならこれならどうだ!」 幻想纏い『アークフォン3R』を操作し、強化外装骨格を身にまとう疾風。そのまま武器持ちに迫り、双刃剣を手にした。双方に刃のついた長柄の武器。それを回転させながら敵陣に踏み込んでいく。 武器持ちを刃の間合に入れて、袈裟懸けに刃を振るう。身体をひねって避ける武器持ちに、さらに踏み込んで体ごと回転させて双刃剣をさらに振るう。踏み込みの深さに驚く間もなく斬られ、地に伏す武器持ちの一人。 「先ずは一人!」 「たいしたもんだね。さすがここまで上ってきただけのことはあるよ」 「ええ。私たちも成長しています。腕を上げた実力、とくとご覧あれ」 細剣を構え、メリッサが武器持ちに迫る。背後から支援するのがメインの彼らだが、曲がり無しのも修羅の世界の住人。けして武器を投げるだけの少年ではないことは一合剣を合わせただけで理解してていた。 身体を半身傾け、レイピアを構える。腰をかがめ、相手の出方を伺うメリッサ。武器持ちの攻撃をレイピアでいなし、そのまま踏み込んで一撃を加える。構え、穿つ。単純なれどその意味は深く、その道を極めるにはまだ至らない。 「武器持ちとはいえ、塔の住人ならば相手に不足なし。全力でお相手願いましょう」 「ありがたいね。お礼にこちらも全力で相手するよ!」 ベンケイが吼える。様々な武器を構え、複数の武器を地面に突き刺す。抜く手間を省き、すぐに武器が使えるようにするために。 千の武器持つベンケイ。その意味をリベリスタは身をもって理解することになる。 だがリベリスタも負けてはいない。今まで戦ってきた経験は、けして千の武器には劣らない。 ● リベリスタの戦法は『先に武器持ちを倒し、支援をなくしてからベンケイに挑む』という戦法だ。ウラジミール、フランシスカ、の二人でベンケイを囲み、その間に武器持ちを封殺してからベンケイに火力を注ぐ。 それを看破すればベンケイは武器持ちを助けるべく囲いを突破しようとする。指と指の間に刀を挟み、爪のように周囲を切り裂いていく。 「まだまだこれからよ!」 攻撃よりで防御に難あるフランシスカが、繰り出される刀に耐え切れず運命を燃やす。言葉通り、まだ負けたつもりはない。ここからが本当の勝負なのだ。痛みを返すとばかりに黒の大剣をベンケイに叩きつける。 「たいしたものだ」 ウラジミールはベンケイの攻撃を受け流しながら、感嘆の声を上げる。例えるなら刃金の嵐。様々な武器が目まぐるしく乱舞し、それが的確にリベリスタに叩きつけられる。ウラジミールの防御力をもってなお、油断ならぬと判断してしまう。 時間をかければベンケイは二人の囲いを突破できただろう。 「これで……どう?」 天乃の糸が武器持ちに絡みつく。痛みと窒息で意識を失い倒れる武器持ち。荒い呼吸だが、まだ生きている。完全に気を失っていることを確認した後に、身を翻し別も目標に向かった。メインディッシュはまだ残っていそうだ。 「表れる結果が同じだから似てるかと思ったが……」 誰にも気付かれぬように小さく呟き、離為は自らに付与を施す。アンタッチャブル。不可侵を意味するその技を使い、この世界からの干渉を拒絶する。拒絶する事、壁を作る事、距離をとる事。それが離為という革醒者の根幹。 「これで仕舞いです」 武器持ちの懐に踏み込んで、メリッサが剣を構える。足先を相手に向け、レイピアを向ける。師から弟子へ、そしてその弟子からまた誰かに。脈々と受け継がれた技を着実に受け継ぎ、その粋がここにある。繰り出された一突きが最後の武器持ちの意識を奪う。 「絆創膏程度だが、無駄では無いだろう」 符術で仲間の傷を癒して回るユーヌ。回復可能な者が少ない構成のため、ユーヌが癒しに回っていた。符で相手の動きを封じたほうがいいか、とは思うが仲間のダメージを考えるとそうも行かない。 「リセリア・フォルン――参ります!」 剣を掲げ、リセリアが名乗りを上げる。義父のエーレンベルク姓を名乗らないのは己の未熟さ所以か。ベンケイの剛の武技を掻い潜り、速の刃がアザーバイドの肉を裂く。手ごたえと同時に後ろに跳んだ。さっきまで自分がいた場所に斧が叩きつけられている。 「武器というのは持ち主が使いこなせてこそだ。試させてもらうぞ!」 疾風がベンケイに突撃し、真正面から切り結ぶ。一本で二つの刃を持つ双刃剣と、二本の十字槍が交差する。攻撃速度を上げて二本の槍に対抗する疾風。激しい金属音が響き、一瞬の隙を縫って疾風の刃がベンケイの腕を傷つける。 「やるねぇ! じゃあ、こういうのはどうだい!」 地面にことがした巨大な槌を握るベンケイ。全身の筋肉を振り絞り、一気に持ち上げる。 「リスクの中に勝機を見つけるものだ!」 「ここで潰させてもらいます!」 「むりくりだけどうまく行けば」 ウラジミール、メリッサ、離為が槌を持ち構えた隙を逃さずに一撃を加える。コンバットナイフが振るわれ、レイピアが肩を貫く。離為は糸を放ち拘束を試みるが、すんでのところでうまくいかなかった。 「惜しいね……それじゃあ、届かないよ!」 叩きつけられる槌が大橋を揺るがし、衝撃がリベリスタを襲う。直接殴られてなくてもその轟音と衝撃だけで意識を失いそうだった。 「無駄な力を無駄に入れ無駄な物持て無駄に振るう。無駄の極地か?」 防御に徹していたユーヌが、咳をしながら毒舌を吐く。来ると分かっているのなら防御すればいい。防御の甲斐あって、何とか耐えることが出来た。 「耐え切ってみせたよ! じゃあ反撃だ!」 「大技の後には隙がある! 今が好機!」 「決めさせて……貰う、よ」 フランシスカ、疾風、天乃が三方向から同時に襲い掛かる。フランシスカの黒剣がベンケイの真上から、疾風の双刃が真正面から、天乃の手甲が背後から。刹那の間に叩き込まれる三連撃。それを受けて僅かによろけるベンケイ。 「良い一撃でした」 衝撃で運命を燃やしたリセリアが、『セインディール』を構えてベンケイに迫る。打ち合えば力負けする。ならば駆け抜け様に斬り裂くのみ。地面を蹴って、味方が生み出した隙を見出し剣を振るう。刃は確かに、ベンケイの身体を捕らえた。 「大した……もんだね」 にやり、とベンケイが微笑む。その笑顔のまま千の武器持つ戦士は、大きく手を広げて橋の上に倒れ伏した。 ● 「あー……死ぬかと思った」 とても死にそうな声とは思えないほどはっきりした口調でベンケイが口を開く。武器持ちのほうもぐったりはしているが、命に別状はなさそうだ。この世界の生き物は戦いなれている分、タフなのだろうか? 「千も武器を持つからだ。身に余るなら白紙の巻物でも持っていろ」 ユーヌがため息をつきながらベンケイに告げる。有名な歌舞伎の演目からの皮肉だ。このベンケイに白紙の巻物を読み上げる演技力があるかは兎も角。 「ベンケイ……その名前、由来は、あるの……?」 天乃がベンケイに問いかける。ルゴ・アムレスとボトムチャンネルは、何らかの関連性がある。もはや確信といってもいいことだ。 「んー。アタイらの部族で一番強くて武器を持てるものが名乗れる名前なんだけど」 頬をかきながらベンケイが答える。無表情のまま、天乃は頷いた。彼女はあまり知らないかな、と思っていた。 「ふーん。ボトムにも弁慶って人がいたのよ」 「五条大橋の牛若丸と武蔵坊弁慶。その話では弁慶は負けたのですが」 フランシスカとリセリアが自分達の世界にいた英傑の話をする。当のベンケイはあまり気にした様子はない。奇妙なこともあるもんだね、と大らかに受け入れている。 「しかしアンタたちやっぱり強いねぇ。負けた方が要求するのもなんだけど、どんな武器使ったか見せてくれない? アタイのも見せるからさ」 「ふむよかろう。……一応言っておくが、奪うなよ」 疾風がいって自分の武器を見せれば、他のリベリスタもそれに倣い自らの武器を見せ始める。 (もう少し相性のいい武器とかないかな) 離為は遠巻きに武器鑑賞会を見ていた。大鎌はいい武器だが、もう少ししっくり来る武器が欲しいと思っている。結局のところそれは自分で探すしかない。参考までにとベンケイの武器を見ていた。 「多くの武器を使える器用さは羨ましいです。私はこれのみですから」 「アタイのは『多くの武器を使う武術』さ。一つの剣術と違いはないさ」 メリッサがベンケイの戦い方を思い出しながら語り、ベンケイが笑みを浮かべて応える。学んだこと自体に差はない。強さに差があるとすれば、それは当人の努力と素養なのだ。 「武器のコレクターというのなら、これをやろう」 ウラジミールが一本のナイフをベンケイに渡す。ここでであったのも一つの縁だ。 「お、ありがとよ。じゃあお礼にこれを返すよ」 お返しに、とばかりにベンケイがナイフを渡す。逆手に握って防御に使用するパリィナイフ。これも一つの縁である。 「そういえば……この世界のミラーミス……他所の世界に出かけたり、するの?」 問いかけたのは天乃。かのR-TYPEやラトニャのように他の世界に手を出すのなら、ボトムチャンネルの世界に詳しくても頷ける。 「いや……あの子はそれができない。他チャンネルのDホールは開けれるけど、自身の移動はできないよ」 答えるベンケイの苦笑は複雑な感情を含んでいた。憐れみと、そして悔しさか。不幸な境遇に陥った者を哀しむと同時に助けることのできない苦悩。それを混ぜたような、そんな笑みだった。 「アム」 ベンケイは上を見ながら何かの名前を呟く。視線はこの階の天井のさらに先。遥か塔の頂上を見ているかのようだ。 「この世界のミラーミスの名前だよ。上に進むなら、覚えてやってくれ。 あの子は、あんたらが来るのを待っている」 それ以上は何もいえない。そうベンケイは告げる。ミラーミスについてベンケイからこれ以上の事は聞けなかった。 Dホール解放時間の限界の為、撤収の準備に入るリベリスタ。 遥か塔の上を見上げ、ベンケイの言葉を思い出す。 リベリスタを待つミラーミス。 塔は高く、今だ手は届かない。 だが確実に頂上に近づいている―― |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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