● 肌寒い夜に 夏の終わり。肌寒い夜。綺麗な星空を伺える高原に、直径50センチほどの黒い箱が点在している。箱の材質は、鉄とも樹脂ともとれない、見慣れないものであった。 金色の鋼で装飾が施された、豪奢な箱である。 誰が、なんの目的で、その箱をここに配置したのか。 それは分からないが、どうやらその箱、この世界のものではないらしい。 箱のうち1つの蓋が開き、中から真っ黒い腕が伸びてきた。 その腕は、細く、長く、そして薄い。腕に次いで出てきた頭や体も、まるで人間を押しつぶしたように、ぺらぺらだった。 目鼻にあたるパーツは見当たらない。口もないから、言葉を発することもできないだろう。内蔵が収まるスペースも、その薄っぺらい体にはないに違いない。 だがしかし、そいつは確かに生きて、動いている。 気付けば、いくつかの箱が開いていた。 それら全てから、紙のようにぺらぺらな黒い人影が這い出て来る。 人影だけではない。狼と蛇を掛け合わせたような黒い獣や、見上げるほどの1本足の巨人なども続々と箱から出て来るではないか。 そして、それら全てが紙のようにぺらぺらなのだ。 影絵絵本のワンシーンかと見まごう、黒い異形のカーニバル。 そして、それをじっと見つめる、1人の男がいた。 『…………』 箱の蓋が僅かに開き、中から1人の男の目が覗く。白目の部分が見当たらない、影を溶かしたような不気味な目だった。 男は、高原をうろつく異形の影たちを暫く眺めると、落胆したような溜め息を零した。 『ダメだ……。まだまだ理想にはほど遠い』 もう少しだけ、経過を見よう。 そう呟いて、男は再び箱の中へと姿を消した。 ● 箱の中には 「箱の正体は、アザーバイドの持ち込んだアーティファクト。(パンドラボックス)。中は簡易のDホールのようになっているみたいね」 その結果、次々と異世界からアザーバイドがこちらの世界に送り出されて来ている。送り出されているアザーバイドは、箱を持ち込み、今も箱の中に身を潜める何者かの作り出した怪物のようだ。 そう告げて、『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)は溜め息を零した。 アザーバイドが絡むと、必ずといっていいほど面倒ごとが起こる。今回も、例に漏れず面倒ごとの気配が濃厚だ。 「目的は不明だけど、放置しておけば際限なくパンドラボックスの中からアザーバイドが沸き出して来る。1体1体はさほど強くないけど、放置は出来ないし数が増えればそれだけ討伐の手間もかかるようになる」 現状、高原にいるアザーバイドの数は10体ほどだろうか? 箱の中から、次々に現れているので毎ターン1〜2体ずつ増えることになりそうだ。攻撃に(不運)の追加効果が付いているのも無視できない。 「箱の中はまるで異次元ね。簡易のDホールみたいになっていて、そこから続々アザーバイドが出てきている。本物のDホールも混ざっているのか、それとも既に消えているのか……」 おまけに、どの箱かはわからないが、怪しいアザーバイドが潜んでいる箱も存在している。そいつの目的も不明なのだが、放置しておくわけにはいかない。影のようなアザーバイドを減らしつつ、黒幕じみた謎のアザーバイドの居場所を探すことになるだろうか。 「箱の中身を千里眼などで見通すことはできないみたいね。箱の破壊も不可能。ただしブレイクゲートを使えば、一時的に箱の中のDホールもどきを消すことができる」 箱の存在そのものを消すには、箱に潜んだ何者かを討伐するか送還する必要があるだろう。 まるで宝探しだ。 箱を開けたら出て来るのは、希望が絶望か。 怪しい誰かが持ち込んだ怪しい箱を撤去する。 言ってしまえば、今回の任務はそういう内容である。 「箱の位置に注意してね。目に見えているものが全てとは、限らないから」 そう言ってイヴは、仲間達を送り出したのだった。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:病み月 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2014年09月18日(木)22:07 |
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■メイン参加者 4人■ | |||||
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●箱の中には じっと、箱の中から、草原を望む不気味な目が2つ。草原には、所せましと並んだ、無数の箱。その数、全部で100は近いか。時折、箱の蓋が開き、その中からのろりと、黒く、そして薄っぺらい影の怪物が姿を現す。 のろりのろりと、体を左右に揺らしながら怪物達は草原を右へ左へと彷徨い歩く。 だが……。 「ふええ、箱の中から絶望があふれ出しちゃうとか、そういうのは嫌ですよう、やーん」 翼を広げ草原に舞い降りた、1人の女性。『モ女メガネ』イスタルテ・セイジ(BNE002937)の姿を発見するや否や、今までのたりくらりと彷徨うだけだった影(シャドーマン)たちに、異変が生じる。 一瞬、シャドーマンの身体が二重にぶれた。 次の瞬間には、数体のシャドーマンが身を低くし、草原を疾駆。今までの鈍い動作が嘘だったかのような素早い動きで、イスタルテの元へと駆け寄って行く。 「ぇっ!?」 あっという間に周囲を囲まれ、そのうち1体の拳がイスタルテの胴を打った。 ダメージ自体は大したことはない。しかし、禍々しいオーラを直接身体の中に叩きこまれたようで、ゾゾゾ、と背筋が粟立った。 虱潰しに、草原に転がる箱を壊すつもりだったが、どうやら事は、そう簡単にはいかなさそうだ。 ●パンドラボックス。絶望の出る箱。 「目に見えない物もある……?」 シャドーマンに囲まれたイスタルテを尻目に『クオンタムデーモン』鳩目・ラプラース・あばた(BNE004018)は、襲いかかるシャドーマンから逃走しつつ近くに転がっていたパンドラボックスを蹴り開ける。 箱を蹴り開けると同時、左右の手に握った銃を箱の中へと向けた。箱の中には、真黒い闇が渦を巻いていた。見るからに不吉で、禍々しい疑似的なDホールだ。 あばたの頬を冷や汗が伝う。 「手分けして、片っ端から箱をあけていくしかないですね」 箱の中へ、銃弾を1発撃ちこんだ。闇が弾け、箱の中のDホールが消失する。ブレイクゲート。それを確認し、あばたは急ぎ、次の箱へと足を向けた。 風を斬る音。目にも止まらぬ速度で振り抜かれた『アーク刺客人”悪名狩り”』柳生・麗香(BNE004588)の剣が、周囲に群がるシャドーマン達を、数体纏めて切り裂いた。 「でっ斬るっかな、でっKILLかな、はてはてほほ~ぅ♪」 麗香の斬撃を堪えた、巨人のようなシャドーマンが、地面めがけて拳を叩きつける。 振動と共に吹き荒れた衝撃波が、麗香の身体を打った。 悪寒と共に、体中を激痛が走り抜ける。止まりそうになる手足を無理に動かし、麗香は再度剣を薙ぐ。 鋭い斬撃が、巨人の足を斬り飛ばし、その巨体を地面に横たわらせた。 しかし、次の瞬間には巨人の身体を乗り越え、新に数体のシャドーマンが麗香目がけて飛びかかる。 彼女が箱の破壊に取り掛かるのは、もう暫く後になりそうだ。 「やれやれだ。こうも虱潰しじゃ、宝探しなんてロマンがないな」 箱を蹴り倒し、中に渦巻くDホールを破壊していく『ウワサの刑事』柴崎 遥平(BNE005033)は、ポケットの中の煙草に手を伸ばし、しかしそれを取り上げるのを止めた。まずは、目の前の任務を完了させることが優先だ。 傍の箱から這い出してきて、虫のようなシャドーマンの頭部に銀弾を撃ちこみ消滅させ、次の箱へと視線を巡らせる。 箱の数は数十。その中で、敵の親玉が隠れている箱が1つだけあるはず。 それを探して 「ま、足で稼ぐのは捜査の基本だ。地道にいこうぜ」 銃に弾丸を詰め直し、は深く溜め息を零した。 そいつは、見ていた。 箱の中に身を潜ませ、息を殺して、突如草原に現れた4人の男女に視線を走らせる。それぞれ、見たことのない技を使う。彼の呼び出したシャドーマン程度では、足止め程度にしかならない。数を増やせば、致命傷、引いては戦闘不能にまで追いこめるだろうが、それだけの手ごまを揃えるのにどれくらいの時間がかかるだろうか。 幸い、今までに呼び出していたシャドーマンのおかげで幾らかのダメージを与えることはできている。 シャドーマンは、これからも増え続けるだろう。 箱はまだ、十分に残っている。 それならば……。 もう少しだけ、様子を見よう。 そう決めて、箱の中の男は、ゆっくりと草原に視線を巡らせる。 草原に並んだ無数の箱から、次々とシャドーマンが現れる。薄っぺらい影の怪物。巨人だったり、獣だったり、蜘蛛などの蟲染みた外観の者もいる。 囲まれた、と遥平は小さく舌打ちを漏らした。仲間とは20メートル以内の距離感を保ってはいるものの、間に立ちはだかる無数のシャドーマンに邪魔され、その仲間の姿は見えない。 特に、回復役のイスタルテと分断されてしまったことが痛手となっている。 目の前の敵を片づけないことには、受けたダメージの治療もままならない。 「作戦は一旦、掃討に切り替えだ」 拳銃を構え、銃口に意識を集中させる。引き金や銃底を通して、弾丸、銃身、銃口へと遥平の魔力が集中。銃口に、魔法陣が展開された。 バチバチと、青白い雷光を放つ魔法陣だ。シャドーマン達は、怯む事なく遥平の方へと歩いてくる。 好都合だ。近づけば近づくほど、命中させやすくなる。 シャドーマンが、鋭い爪を伸ばし遥平へと襲いかかる。 それと同時、遥平は銃の引き金を引いた。火薬の代わりに紫電が弾け、魔法陣から四方八方へと拡散されて撃ち出されるのは、台風のように荒れ狂う雷電であった。 地表を薙ぎ払うようにして、周囲を囲んでいたシャドーマンを雷が焼き払う。 シャドーマンの爪が、遥平の脇腹を引き裂いた。 飛び散る鮮血が、雷電に触れて蒸発。周囲に鉄分の臭いをばら撒いた。 「……ぐ」 傷を押さえる余裕はない。荒れ狂う雷電を制御するので精一杯だ。 真っ暗闇の草原の一角。遥平の周囲のみ、眩い閃光に覆い尽くされていた。 「パンドラの箱多過ぎぃ! これ全部こわすんかーい!」 襲い来るシャドーマンを、斬って、蹴って、その合間に箱を蹴り開け、そしてDホールを壊す。くるくると、踊るような一連の動作は、実に流麗で、見る者の目を引きつける。もっとも、人気のない高原で、麗香の舞踊に注視する者など、誰もいないのだが……。 強いて言うのなら、どこかに潜んだ箱の中の男くらいのものか。 「蛇が出るか希望が出るか知りませんがとにかく敵は倒しませんとね」 腰だめに剣を構え、大きく1歩足を踏み出す。大地が揺れるほどの踏み込みと共に、体重を乗せた斬撃が放たれる。身体を軸に、縦横無尽に剣を振り回し、近づいてきたシャドーマンを片端から寸断していく麗香。 淀みなく、流れるような斬撃の嵐。 触れれば斬れる。今の麗香は、まるで竜巻かなにかのようだ。 そんな彼女の様子を、箱の中の男は遠目にじっと観察していた。 背後から追ってくるシャドーマンの群れから逃げ続けながら、あばたは「ううん」と思案する。逃げながら、箱を開け、Dホールの破壊活動も忘れない。 「目的があるとすれば、そのまま「シャドーマンの増殖」かな。大量に準備して何かをする……かな」 だとすれば、箱の中の男は、草原の中でも見晴らしの良い場所、或いは見通しの良い場所に潜んでいるのではないか、とそう考えている。 「『私達の移動を意図的に妨害している方向』があるようなら……そちらを探してみませんか」 シャドーマンに追いかけられている間に、イスタルテの傍近くまで追いやられていたようだ。あばたが箱の中の男を探しているのを察して、イスタルテはそう提案する。 「妨害って言ったって……」 「まぁ、現れては近くにいる私達を追っている感じですね」 接近してきたシャドーマンを、あばたの弾丸が。少し離れた位置に固まっていた群れを、イスタルテの放った閃光が焼き払う。閃光に焼かれたシャドーマン達は、怯みこそしたものの、未だ健在だ。生まれた一瞬の隙を逃さず、イスタルテは、あばたを抱えて空へと飛び上がった。 翼を備えたシャドーマンが、2人を追って飛んでくる。あばたは、シャドーマンに銃口を向け、引き金を引いた。放たれた弾丸が、シャドーマンの胸を撃ち抜き消滅させた。空を飛べるシャドーマンは数が少ない。 千里眼のスキルを持つ2人は、追手の少なくなった空中から、草原全体を見渡した。 草原の中で、遥平と麗香のいる2カ所でのみ、激しい戦闘が巻き起こっているのが窺える。 時折、箱の中からシャドーマンが這い出してくる。 草原全体。半径、数10メートルほどのエリアに並ぶ無数の箱。 その中の1つ。草原の中央に位置する箱の蓋が、僅かに開いているのを、あばたは見た。 「あれは……」 意識をその箱に集中させる。 僅かに開いた箱の隙間。そこから覗く、不気味な瞳を、彼女は見た。 「見つけましたよぉぉ!!」 と、あばたは叫ぶ。 イスタルテは、あばたを抱えたまま発見した怪しい箱目がけて急降下する。冷たい風が、2人を頬を打つ。風圧に髪を乱れさせながら、あばたは両手の銃を箱へと向けた。 殺意だけを銃に込め、そっと、羽でも握るように引き金を引き絞った。 風を切る僅かな音。弾丸はまっすぐ、狙いは寸分も違わずに、箱に開いた僅かな隙間にあばたの弾丸は飛び込んだ。 「そこを退いてください!」 地面に着地する寸前、イスタルテは閃光を放つ。男の潜んだ箱の周囲に蔓延っていたシャドーマン達は、イスタルテの閃光に焼かれて、数歩後じ去る。怯んだ相手にフィンガーバレットの弾丸を浴びせ、消滅させた。 『う……ぐ。やはり、放置しておくべきではなかった……』 箱の中から響くくぐもった声。突然、自分の居場所を発見された箱の中の男は、あばたの弾丸を浴びて混乱しているようだ。 片方の目から、だくだくと血を流す黒衣の男が箱の中から這い出して来た。 ガスマスクのようなものを被った、奇妙な男だ。黒衣から露出している手や首元には、奇妙な模様が刻まれていた。僅かに、青白く発光するその模様に呼応するように、男の周囲にシャドーマンが集まり始める。 『やってくれたな、お前達。このディープの邪魔をしたからには、覚悟は出来ているんだろうな?』 自分の入っていた箱を蹴り飛ばし、男(ディープ)は、そう告げた。 ●絶望の導き手 ディープと名乗るその男は、痩せた体から不気味なオーラを立ち昇らせ、両腕を空へと突き上げた。体中に刻まれた模様が、強い光を発する。 その光に導かれるようにして、草原中に散らばっていたシャドーマン達が、地面を這いずるようにしてディープの元へと集まり始める。麗香や遥平と戦闘中だったシャドーマンも、まるで2人から興味を失ったかのように踵を返し、ディープの元へと移動を始めた。 ディープの元に集まったシャドーマン達は、彼の身体に纏わりつき、その身に潜り込んでいく。その度に、ディープの放つ禍々しい気配が強くなる。 「でたー! 呼ばれてないけどじゃじゃじゃじゃ~ん!!」 逃げるシャドーマンを追って、飛んできた麗香がノーモーションでディープへと斬りかかる。ディープが拳を振るうと、彼の眼前には黒い箱が召喚された。麗香の剣が、箱を粉々に打ち砕く。箱の中から溢れた、影のようなオーラが麗香を弾き飛ばす。 「コイツさえ片付けば、敵の増殖を止められる。後は地道に箱を潰して回るだけだ」 遥平が銃の引き金を引く。放たれた弾丸は、ディープの元へと集まるシャドーマンを撃ち抜き、消滅させる。どうやら、シャドーマンはディープの力の断片であるらしい。シャドーマンがディープの中に戻る度、ディープから感じる威圧感が増すのが分かる。 埒が開かない、と遥平は呟き、再度銃を構え直した。銃口に展開された魔方陣から、膨大な量の雷電が解き放たれる。放たれた雷電は、縦横無尽に吹き荒れ、集まってくるシャドーマンを次々と打ち消していった。 麗香の放つ斬撃のラッシュの合間を縫って、あばたの弾丸がディープの急所へ撃ちこまれる。 「掃除屋なので。散らかすより綺麗にする方が本職ですから」 片づけますよ。 と、呟いてあばたは殺意を込めた弾丸を放つ。あばたの弾丸は、着実にディープの命を削っている。 『絶望を……。この世界に、絶望を』 ディープが両腕を空へと掲げる。 それと同時、彼を中心にして四方に箱が飛び散った。箱から溢れた影が集まり、更に巨大な箱を形成。あばたと麗香の姿が、黒箱の中に飲み込まれた。 「や―ん!」 寸での所で箱の拘束を逃れたイスタルテが、短い悲鳴を上げる。巨大な黒箱は数秒で砕け、破片と共に飲み込まれた2人の身体が宙に投げ出された。 「仲間をやらせはしませんよぅ!」 イスタルテが翼を広げると、淡い燐光がぱっと周囲に飛び散った。2人の身体を燐光が包み、その傷を癒す。全快とまではいかないが、戦闘を続けられる程度には回復したはずだ。 再度、麗香は剣を構えて前に出る。 「厚みのあるボトムはお気に召しますか~」 地面を滑るように駆け抜け、ディープ目がけて剣を叩きつける。そんな麗香の脇腹を、いつの間にそこにいたのか、シャドーマンの爪が切り裂く。剣の1振りでシャドーマンを斬り捨てる麗香。 僅かに怯んだ麗香の眼前に、ディープの放った黒箱が迫る。 黒い箱が巨大化し、麗香の身体を飲み込んだ。箱は一瞬で砕けたが、その時には既に麗香の意識は途切れている。 しかし、戦闘不能の麗香の口元は笑っていた。 「箱はついでに一つ土産にもらっていきますよ。アザーバイド由来のインテリアなんてなかなかおもしろうございますし」 麗香の影に隠れ、そこまで接近していたのだろう。あばたの放った銃弾という殺意の塊が、音もなくディープの胸を撃ち抜いた。びくん、と大きくディープの身体は痙攣し、胸から大量の血を零す。何かをしゃべろうとしているのだろうが、彼の口からは既にひゅーひゅーという空気の漏れるような音しか聞こえない。 バタン、と倒れ、それきりディープは動かなくなった。 「終わりか……ようやく、一服できるな」 アークの作業員とあばたが、草原に散らばる箱を片づけているのを眺めながら遥平は大きく紫煙を吐きだす。 この世界に絶望を振りまきに来たディープという存在は、撃退した。 恐らく彼は、そういう存在だったのだろう。意味もなく、意義もなく、ただ絶望をばら撒く。そんな存在。 既にいない、不吉な男に思いを馳せて、遥平は再度、紫煙を吸い込む。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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