● 「ルール? そんなものどこかに捨ててきたらいいのだわ!」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:ももんが | ||||
■難易度:VERY EASY | ■ イベントシナリオ | |||
■参加人数制限: なし | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2014年09月17日(水)22:30 |
||
|
||||
|
||||
|
● 「小雷ー」 「梅子のー」 「「激闘ぉー! 砂遊びぃー!」」 唐突なコール、そしてハイタッチ。 「イェーイ!!!」 水着姿の梅子はともかく翔 小雷のテンションも高く――当然だ。 白い砂浜と、青い海と、居合わせたすべての人の肌をじりじりと焦げ付かせる太陽。 これでテンションが上がらない者がいるだろうか! 夏なのだ。夏が来たのだ、今年も! この島の優雅なサマーリゾートに、血と硝煙の臭いは似合わないのだ。 さあ、今日は平和な一日を過ごすのだわ! ――と言う梅子の胸算用は、 「梅子ー! 決闘しようぜ、決闘! 勝負方法は相撲な!」 「はぁ!?」 結城 "Dragon" 竜一の一言で、皮算用と化した上に足が生えて逃げ去ってしまった。 「ビーチで水着少女と相撲とか素敵じゃないか! ……20歳って少女って枠組みでいいんだっけ?」 「……本当に、竜一はいっぺん後ろから刺されておくべきだと思うのだわ。あと、相撲はイヤ」 直接的なコメントはしないあたり、梅子にも思うところはあるのだろう。 「嫌? なんで!!!! ――じゃあ、仕方ないなあ……棒倒し……は、地味なのでビーチフラッグだな!」 言い募りかけた竜一が、梅子が周囲にマナを集め始めたのを見てアプローチを変える。梅子とて競争熱の上がったところで相撲でもない申し出を断る理由はなく、あっさりと了承した。 「よーいどん! 負けたほうが罰ゲームな! ヒャッハーーーー!」 「何それ後出し!!」 喚く梅子を尻目に、竜一は砂を蹴りあげるように走る――砂? しまった。 (あいつは腐ってもフライエンジェ! 砂浜ダッシュじゃ分が悪い……!) 「だが! 波打ち際の海水を含んだ砂場を走る事で!」 竜一の急がばまわれ作戦(別名:ただの遠回り)の失策により、余裕で梅子勝利。 「見たか! このあたしの鮮やかな勝利っ!」 「遊びも戦いも、常に全力勝負ですぅ! 両方の実力が物を言う今回の戦い……わたし、絶対負ける気がしないのですぅ。 さあ梅子様! 勝負するのです!」 次なるエントリーは、ロッテ・バックハウスだ! ロッテが提示したのは、スイカ割り。 (ルールは捨てろ……そう仰ってましたね……フフフ、違う方向に誘導してやるのですぅ……!) 何たる非道! 梅子が目隠しをした途端、ロッテは砂に穴を掘り始めたのだ。 「それにしても皆元気だな……おーおーやってるなー調子はどうだ?」 「あら? その声は……虎鐵?」 梅子は声のした方に顔を向け手を振った。手を振り返そうとして、鬼蔭 虎鐵は梅子の目隠しに気づく。 「さあ! スイカは――しまった! どっちにあるのだかさっぱりわからないのだわ!?」 急にオロオロし始めた梅子に、ロッテが声をかける。 「ああ~そっちじゃないですぅ~もっと右ですぅ! そのまま真っすぐ!」 「おーおーそこは右だ。もっと右右右」 ロッテの掛け声と虎鐵へのジェスチャー、そして砂の穴。虎鐵も大体の状況を把握し、適当な声掛けをすることにした。『あたふたしてるのを見るのって傍からだとすっげぇ楽しいし』とは、虎鐵の言い分。 数秒後には、ずぼ! という音とともに砂まみれの梅子が完成した。 スイカ割りを始めたのはロッテたちだけではない。 「水着着てこないの? いや、目のやりどころには困らなくていいっていえばいいんだけど淋しいっつーかいやなんでもないよ」 「え、そもそも他のヒト達水着着てるしそれでいーじゃないですか!」 安全(笑)御厨・夏栖斗と、御陵 柚架のふたりもスイカ割りで対決をしていた。 「一発でスイカ割れたほうが勝ちな! 負けた方は勝った方の言うことを一つ聞く! どうよ」 「ショーブはショーブ! 万一にでも負けたら水着でもなんでもいうコト聞いてあげますよっ!」 というやりとりから始まった勝負だったが、ハイバランサーとか超直感とか知らないぜとばかりに誰かが振ったダイス(メタ)の結果、難なく夏栖斗が勝利した。 「何をお願いしようかな、せっかくだし、水着に着替えてもらうとか――要求してもバチはあたらないよね」 ふぅむ、と呟く夏栖斗の横で、 「負けたからには言うコト聞きます……ココで着替ろって言うんですね」 えいやとばかり、柚架は上着を脱ぎ捨てる。 「ってこの場で脱ぐとか、ちょっと待って! そんな酷いこと言わないしって――」 「ちゃんと下に着てましたからダイジョーブですけどねっ!」 「デスヨネー!!!」 ですよねー。 ちなみに柚架さん。もし勝利したらどうされるつもりでしたか? 「その時は……そこに埋まってもらって、首だけの刑に処しますっ!」 「お前ちゃんとそれ後で掘り返してくれるんだよね?」 「うみちゃんとスイカ割りで勝負!」 そう中山 真咲が腕を振り上げれば、害獣谷 羽海も同じように腕を振り上げ、ぴょんと跳び跳ねた。 「うみも全力でいっくよー!」 「終わったら砂落としに行っていい……?」 審判:通りすがりの梅子(砂まみれ)。 まずは真咲から。スイカよし、棒よし、目隠しよし。ぐるぐるぐるって回って、準備OK! 目隠しの下で、真咲は意識を集中する。 「見えなくても、風が撫でる音が、目隠しを通して感じる光が、そしておいしそうな匂いが。 ――ボクにスイカの居場所をおしえてくれる!」 ぱかん! と良い音を立てて割れたスイカの感触に、真咲はガッツポーズ。 ロマン主義者の全力を、ずるい、なんて思う必要は今に限って微塵もない。 何せ、羽海は同い年の、革醒者のお友達なのだから。 ――他のお友達みたいに、手加減しなくても良い、隠さなくても良い、ただひとりの子。 真咲でなくとも、せっかくの機会だから、思いっきり、と思うのは当然かも知れなかった。 続いて羽海も、目隠ししてぐるぐるしたあとそう言いながら、棒を握る。 「うみ、ニートだから食べるのと寝るのは得意なんだよ。 ――むむっ、こっちのほうから強烈な『気』を感じるんだよっ、甘くて大きな、水気たっぷり真夏の果実を」 羽海は棒を大きく振りかぶると、 「四六時ty――」 「待ったあああああ!?」 なにやら言い出そうとしたあたりで、梅子に何故か全力で妨害された。 どうしてこうなったか、それは僕もよく覚えてない――覚えているのはあの時の二日酔いだけ。 黄桜の尻尾すごいんだからあんなに馬鹿にされて黙ってる私じゃないわっむっきいいいいいい!!! ……って、二日酔いの勢いでそんな事を言ったような気がする。 当事者である設楽 悠里も黄桜 魅零もそんな感じで、何がどうしてそうなったのかよく思い出せないままにその勝負は始まった。魅零の尻尾を悠里が掴み、時間まで声を上げなければ魅零の勝ち、というその勝負。しかも負けた方が勝った方の言うこと何でも聞くなんて約束まで付随。傍から見た図は、悠里が魅零の尻尾を掴んで突っ立っているだけ、になるはずだった、のだが。 メタルフレーム系の変質部分は、生体的なものである。痛覚があるか等は人によるのだが、魅零の場合はしっかりと存在していたらしい。 「……っ!! し、しすてむ、ジャノサイドオオオオ!!」 「って痛!!!」 びくんと背中が跳ねて口もとを抑える魅零、それと同時に突然走った痛みに悠里は思わず手を離す。少し強く握りすぎたのか、バリアシステムが作動したらしかった。 「と、とりあえず一応、デリケートなゾーンだから優しく扱ってよね。傷つけたりしたら、怒るんだからね!」 もう一度、と尻尾を差し出す魅零。 ダメージが発生するほど強く握らなければ反射も起こらないことに悠里が気づくのは、60秒後のことである。それまでの間、悠里の手は皮が破け肉が焼け、滴る血が尻尾を濡らし――。 (本当に何してるんだ僕は……) いや、本当に。 所変わって、こちらでは(ちゃんとした)ビーチフラッグが行われようとしていた。 「うふふ~、折角ですし何か賭けませんか? 勝った方が負けた方のお願いをひとつ聞く、っていうシンプルなんはどうでしょ?」 お願いは勝てたら教えますね! と言いながら尻尾をぶんぶん振って、柊暮・日響が提案する。 「賭けるものあらば真剣勝負にも面白みが出るというもの、喜んで受けて立つと致そう。 自分が勝ったら……そうさな、風呂で背中でも流してもらおうか!」 それを賭けた瞬間に敗北フラグ音がどこかで鳴ったとも知らず、黒部 幸成は受けて立った。 砂に伏せる日響の、白いスク水。白スク水。3回言っておこう。白スク水。アルバム参照。 「これ凄い機能美なんですよ! 動きやすいですし、よう伸びますし、軽いですし。 くのいちにピッタリです、さすがお師匠さまチョイスですねぇ♪」 「うむうむ、機能美と造形美とを両立したよき装備で御座ろう? スク水の良さがわかるようになるとは……ふっ、弟子も着々と成長して御座るな……」 どう考えても何かおかしいことをほざきながら後進の育成に喜びを見出しつつ、幸成もまた砂に伏せる。 そして、タイマーがスタートを告げた。 一気に駆け出す二人の忍――砂に足を取られ、躓いたのは日響。目の前には幸成の背中。 「きゃあ!」 「おごっ!」 ごつん、と鈍い音がした。 「……って、お師匠さまを下敷きにしてまいました!? す、すみませんっ……!」 「多少の身体的接触も勝負のうち……! ノーファール……!」 敗北フラグは折れなかった、とだけ述べておく。 太陽に背を向けて、九曜 計都は眼鏡の位置を指で整える。 「三郎太くん……、いや、三郎太ッ! とうとう、決着を付ける日が来たッスね……愛ゆえに、二人は争い戦わねばならぬ。愛ゆえにっ!」 「やるからにはボクだって負けませんよっ!」 小芝居に対してシリアスに返す離宮院 三郎太の、陽を浴びた金の髪。 睨み合う二人の間にはだかるは、ビーチボールとネット――ビーチバレー!! 「ふーははー! 大人の力をみせてやるッス!! 手加減無しの真剣勝負ッスよ!」 高く打ち上げられたボールを、大人げなく全力で跳んだ計都が叩きつける。三郎太は刹那、その脳髄に思考を巡らせた。 (この勝負――少しボクの方が有利な事が多そうですね……) ボールをすんでのところで、『計算通りに』取り落とし、三郎太は照れたように笑い、計都が勝ち誇った顔で嬉しそうに笑う。――負けすぎてしまっては、三郎太の作戦に気づかれてしまう。 楽しい時間を長引かせるための、作戦。 (だってボクはやっぱり笑顔の計都さんが見たいから……!) そうしてしばらく経過したところで、生まれたての子馬のように、足をぷるぷるさせた計都が声を上げた。 「……ちょ、ちょっち、タイム……日頃の運動不足のせいか、息が切れるッス……ぜはー、ぜはー……」 タイム、とは言ったもののこのまま続けるのも酷だろう。年長者の威厳が、とか呟いている計都に、三郎太はにっこりと笑ってゲームの終了を告げた。 「引き分けですね……続きはまた来年ですねっ!」 「来年も!? ええと、次は、山崩しかなんかで……、ね?」 その山崩し。やっていたのは一組だけだったりする。 「わたしも一度コヨーテくんと本気でやってみたかったんだよね! ……砂遊びでっ!」 「いちや強ェからなァ、本気で闘ッてみたかったンだッ! ……砂遊びだけど」 羽柴 壱也とコヨーテ・バッドフェローが、砂山を挟んで火花を散らす。砂遊びで良かったです。(本音) 現時点でも既に大きな砂山を更に大きくして、壱也はその頂上に棒を突き刺す。 「まあでもいつも遊びには本気だけどねっ。覚悟してよコヨーテくん! その棒ごとやっつけちゃるっ」 「勝負は勝負ッ。覚悟しろォ、オレは死んでも負けねェからなッ! いちやも殺す気でかかってこいよッ」 砂遊びで良かったです! 壱也はルールの説明も兼ねて、先に自分から砂を取って見せる。 「ナルホド、そォいうルールなんだなァ……でもコレ、結構神経使うのなッ……」 「う……わたしもコヨーテくんも大雑把な方だから……」 地味に見えて白熱した精神戦は、しかし、 「あっ」 ある意味予想通り、コヨーテが棒を倒したことで決着が着いた、ように見えた。 「見た? わたしの本気!」 「……えーと。今のは覚悟の練習です。本番はビーチフラッグ対決でしたーッ!」 あっずるい。 「な、なんだって! ビーチフラッグ!! いいよ、どっちでも勝つしー! 何でも何度でも、受けてたつよ!」 それでも負けない気概の壱也。コヨーテは心中で計画通り風味のドヤ顔をする。 (万一負けたとしても……へへッ、大丈夫ッ。オレには秘策があるンだ。 ソレは……オレが勝つまでやり直すッ!) 「ッてなワケでいちや、もォ一回なーッ!」 「さあもう一戦だー!」 ……楽しそうだから、いいか。 ● ビーチバレーを言い出した二人組が2組あるのなら、チームで競わざるを得ない。 梅子と菫も誘われはしたのだが、人数的に微妙なので見学兼応援。 赤コーナー。引き締まった体にトランクスタイプの水着が映える葛木 猛と、色白肌に、動きやすさ重視でみどるてぃーん時代の白スク(本人談)が淡色パステル系、喜多川・旭のチィムー。(リングアナ風に) 「あ、ちゃんと連れて行くからって許可は本人は得てるから」 「猛さん、誰にはなしかけてるのー?」 突然カメラ目線()で説明を始める猛。争奪戦は起こらない。確認大事。 青コーナー。脱ぐと凄いぞな水着姿で天真爛漫系フュリエ、シーヴ・ビルトと、引き結んだ唇に漂う品格は15歳ながら既に淑女の域、炎天下でこそ上着を羽織る! メリッサ・グランツェのチィムー。 「えへへ、それじゃあがんばりましょうっ」 そう言ったシーヴに笑いながら手を握られても、メリッサの表情はいつものこととばかり変わらない――が、耳の端がほんのり赤かったりする。 「ルールは簡単にしておきましょうか。楽しむのが一番です」 「ふにゃ? ルールちゃんと知ってるもん、ぽーんって打ってごーってやるって」 メリッサがそう提言し、シーヴが主張する。砂の上にわずかに落ちる沈黙。 ……>< よくわかってないのが明確な人がいる以上、猛と旭もルール簡易化に異論は出しにくい。簡単に打ち合わせると、それぞれのコートにわかれた。 「さて、やるからには全力で勝ちに行くぜ!」 「よぉっし、それじゃはじめよっか! ふふふー勿論全力っ」 ぱぁん、と拳と掌を合わせて気合十分の猛と、フィジカル活かしてガンガンいこうぜモードな旭。 「砂浜程度、大した障害ではないですね。シーヴは……やり方は見て覚える方が速いでしょう」 「あうあう、メリッサおねーさんのお手本良く見てまねっこするのですっ。砂浜も踏破で楽々すいすいっ」 負けじとばかり強気なメリッサと、不安要素を笑顔でカバーなシーヴ。 サーブからレシーブ、パスとリレー。そうして幾度目かのアタックが放たれ、シーヴがルールを把握してきたころ、猛と旭がアイコンタクトをとった。猛がアタックすると見せかけて、すい、と旭と入れ替わる。 「!?」 目を丸くしたシーヴの真横を、旭のアタックを受けたビーチボールがすり抜けた。 「やったぁ!」 「ナイスアタック、依頼の時もそうだが相変わらず惚れ惚れする威力だぜ」 「えへへ、猛さんも流石の立ち回りなの。即席だけど、けっこー名コンビかも?」 綺麗に決まった喜びに、ハイタッチするふたり。 意味がわかったシーヴが、さっきの猛と旭の動きを真似て、アタックの様で飛び上がる。 「大きく振りかぶってぺちーんってっ――うにゃ? なんか胸に視線が?」 シーヴの肩の下からへその上あたりに視線を向けていたのは、メリッサだった。上着を脱ぎながら、コート外で見ていた梅子に声をかける。 「プラムさん。もし、手が滑って不埒な男性にボールが飛んでも、不運な事故だと思いませんか?」 「それは……事故ね」 力強く頷く梅子にメリッサも頷き返しながら、上着をシーヴに渡した。 「えへへ、めりっさおねーさんの上着っ」 嬉しそうに着てぴょんぴょん飛び跳ねるシーヴが、渡された意味をわかってないのは明白っぽかった。 ● 十数人が、その場には集まっていた。 音頭を取っているのは、楠神 風斗のようである。 「せっかくのみんなで楽しむ機会だ。大勢でパーッとやろう!」 勝負の内容は『カキ氷早食い対決』! おー、と呼応の声がする中、街野・イドが一心不乱に氷を砕いている。 「Y、趣旨を理解しました。 皆さんの円滑なリベリスタとしての行動の為、I、私は……かき氷を、作ります」 しゃかしゃかしゃかしゃか。機械的なまでに一定のリズムを奏でる右手。さっさっと盛り付ける器を入れ替え氷を注ぎ足す左手。おつかれさまです、そしてありがとうございます。 ・制限時間内にどれだけ多くおかわりできたかを競う。 ・中学生以下と女性は、ハンデとして器を小さめにする。 ・優勝者は、最下位に(可能な範囲での)命令権を得る。最下位者は可能な限り言うことをきくこと。 ルールは以上! 「イドにカキ氷をどんどん生産してもらい、俺たちはただひたすらに食う、食う、食う! もちろん主催者として、俺は一位を目指す!」 風斗が説明している間にも、どんどん他の参加者たちは食べ進めている。 小雷も、甘いものはまかせろー(バリバリ←何の音かはわからない)とばかりに器を手に取る。 「甘味なら俺にも分があるな。さぁ来い! 俺が勝ったら、バツゲームは二キロ先までうさぎ跳びな」 小雷が取ったのは、味に飽きたらシロップを変える作戦。同じ作戦を取ったのは、 「なんと! かき氷バトルなのです!」 「カキ氷大食い競争……ふ、バラドルの腕が鳴るぜ!(←認めた)」 イーリス・イシュターと、白石 明奈だ。 しかもイーリスに至っては、事前に具合悪くならない程度に日光浴をして喉からから作戦併用である。 「いちご、ブルーハワイ、レモン、抹茶みたいに味を変え、抹茶に甘さはいれない作戦! 正面からの正攻法! 受けてみるです!!」 太陽に顔とお腹を向けて、最大の敵である腹の冷え――イーリスいわく、つまり自分――をも温存する作戦である。最初から飛ばすことはせず、限界を感じたら気合でスパートをかける予定だ。 「シロップはたっぷりと! かつ味を変えてローテして飽きないように! 程良く溶けた所で味合わず……飲み込む! いいか、キーンとするのも頭痛も口内周りの神経が原因だ。 喉元すぎればなんとやら、なるべく短時間に処理する! 水がオッケーなら水も飲む!」 明奈のペースはイーリスとは逆に、最初からクライマックス法だ。 そんなガチって、バラドルなのか。いや正しくバラドルだ。 「これで勝利確定! ふははは、ワタシこそこのビーチの女王様だー! うっ……おなかたっぷたぷしてきた……ヤバい、この鍛えあげられた腹筋が悲鳴を。 やめろ! ワタシのお腹が出っ張るなんてあってはいけないんだー! ちくしょー!」 弱点:限界がすごく近くなる。 「ついこないだ命懸けで戦闘したばっかだってーのに、元気っつーか血の気が多いっつーか……」 野蛮だな? と、思いついた言葉。かき氷大会不参加の宮部乃宮 火車はそれをビールで流し込む。 「よぉー梅。酒飲めんだべ? 何ぞ奢っちゃるから、飲みながら眺めてようぜ」 「うっ、なんでそれを今言うの!? 先に言っててくれたら参加しなかったのだわ……!」 負けると罰ゲームだから、と悔しがりながら、高みの見物を断る梅子。どんな別ゲームになるかわからない以上、手を抜けない――のは、仕方あるまい。ビールを飲み干して新しいジョッキをもらうと、火車は改めて周囲を見回す。 「何にせよこんなんで競い合えるってのは、平和で何より結構なこっちゃなー。 しかし……マジ……あいつ等……良い大人が……大人げなさ過ぎんだろ……」 もっとも、一番大人げなくがっついていきなり頭痛にのたうち回っているのは菫だったりする。 「良い大人なんだから……大人らしくさぁ……」 「おごぉ……あががが」 三十路の菫、顔色は、ビリジアンに近い。 「たまには馬鹿騒ぎしてもいいわよね、うん。 私が勝ったらあんな事やこんな事をして貰いましょうか。楽しみね――負ける気なんてさらさらないわよ」 そう言ってかき氷(イチゴ味シロップ)を食べていたシュスタイナ・ショーゼットは、小さく呻き顔を顰めた。 「……残念なのは、ゆっくり堪能できない事かしらねー。それに、急いで食べると頭がキーンってするわ」 周囲のペースに併せて食べる、というマラソン型の食べ方をしていたシュスタイナだが、そもそもかき氷をこんな大量に食べるという機会がそうそうない。最低限、最下位にはならないペースを保って食べ続け……後日、シュスタイナはかき氷について聞かれた際、こう呟いたという。 『……当分かき氷はいいかも。1年分は食べた気がする……』 あるある。 イチゴはイチゴでも、かき氷と言えば練乳いちごです! と来た真雁 光は、最初から最後まで全力疾走という力技に出た。もちろん、光の頭に強烈な頭痛が襲いかかる。 「気合で、なんとか――自分を信じるのです、この程度の痛みには屈しないのです!」 まだだ、まだ光の目は死んでいない! 「勇者ならこのくらい出来るのです。 雪山や氷のダンジョン、吹雪や雪崩――そんなのに比べたらかき氷くらい!」 が、がんばれ。 食べやすさとか重さとかを考慮し、ミルクや小豆等を避ける作戦を選んだ宮ノ森・早苗は、安定したペースでかき氷を口に運ぶ。 「かぎ氷ですか、暑いときにはいいですよね。 ……冷静に考えると、溶けたら薄いシロップ水なんですけどね」 そこに気づいたか、だが食べ続けてもらう。 真剣勝負なら真面目にやりませんとね、と。イチゴやメロン、ブルーハワイ等のシロップ系を選ぶ早苗。 痛みが走っているのはわかるが、早苗にとってそれは問題にならない。 具合を悪くしているひとがいるかを確認して――露骨に一人、フォーチュナが苦しんでいる――あとで手当すれば大丈夫だろうと判断して、早苗は次の器を手にした。 新城・拓真は周囲を見回すと、口の端に笑みを浮かべた。 戦いに明け暮れていては、心に余裕がなくなってしまう――余裕の無さは、そのまま弱さにつながる。 拓真という剣は、まだ折れるわけにいかないのだ。 「こういった催し物にもたまには参加しないとな。罰ゲームがある、というのも面白い。 俺は砂糖水をかけた単純な物で挑むか……しかし、腹が壊れん様に祈るしか無いな」 しかし、眺めたかき氷に苦笑が浮かぶのを抑えることまではできなかった。 スプーンをざくりと氷の山に差しいれてひとすくい。さあ、覚悟を決めろ。 飽く迄もフェアに戦いそして勝つ、それに意味がある。 「後は己の限界に挑戦するのみ……! これもまた修練の一環だ!」 かき氷は修行違うからね!? ――という声は拓真には届かず。 すべてが終わった後、そこには戦い抜いた末、燃え尽きて真っ白(比喩)になった拓真の姿があった。 「かき氷の早食いなら、我に策あり、だ」 この男がそれを言葉にした瞬間に、だいたいのリベリスタはその策を理解できていた。新田・快――その手に持つは、コーヒーリキュール。 「ソフトクリームにリキュールを掛けて食べるやり方があるという。 なら、そのやり方を俺なりに真似させてもらおう――コイツをかき氷にぶっかけて!」 そしてそれを一気に口の中に掻きこむ快。知覚過敏の人にはとてもお見せできない光景だ! 「酒呑み比べなら負けないんだ。なら、自分の得意な土俵に持ち込むまで……!」 頭にキーンと来る何かも、アルコールで緩和するのが狙いだ。後でしこたま酔っ払うかもしれないが――それがどうした。この勝負に勝つためなら、快はそれを躊躇わない! 「大人気ないってのはなあ、大人だからやれるんだよォ!!」 イイコトっぽく言うんじゃありません! あと二ヶ月くらい未成年の焦燥院 "Buddha" フツは、大人じゃないからスキルの使用も躊躇しない。 「全ての早食い競争のポイントは、ペース配分! だが、理想のペースを素人がつかむことは難しい。 だからオレは、一番早くおかわりをしている人の動きを『真似る』! 相手はオレが全く同じペースで食べていることで、焦りを覚えるはずだ。 そして終盤になり、ここぞというタイミングでオレはペースを上げ――これで1位はオレのものだ!」 着実に器を重ねるフツの脳内で組み立てられていく、勝利者の図。 「オレが勝ったら女性陣に喫茶店の店員の格好してもらう! そして心をぴょんぴょんするん……ッ!」 突如引きつる、フツの顔。 「アッ、グッ、ば、ばかな、ここで、アイスクリーム頭痛、だと……!?」 仏様が見てる。 「参加者は皆、名の知れたリベリスタばかり……でもカキ氷の早食い大会ならそんなの関係ないもんねっ!」 そう気合を入れなおして、テテロ ミストが真剣な顔をした。 「こういうのって若い子たちにだけ許されるノリって気もするけど。まぁバカンスの恥は掻き捨てってね。 ――シロップ? 白ければなんでもいいわ。骨なら尚更良しよ」 ミストに誘われた骨牌・亜婆羅は骨禍珂珂禍! と笑いながら器を手にする。練乳かみぞれはあっても骨はないです。ない。 「カキ氷早食いの一番の敵は冷たいものを食べたことによる、頭がキーーーンってなる事! どうやったらキーンてなりにくくなるのかな……」 「あのキーンとするやつ……アイスクリーム頭痛をいかに抑えれるかだけれど。あれは身体を温めておくとなりにくいらしいわ」 考えこむミストの前で、ローブを揺らして亜婆羅は思索する。 (あたし、この身体を隠すのに炎天下の中ローブ姿なのよね。偶然ながら有利よ) ただし暑さで意識が遠くなるという諸刃の剣――って、亜婆羅さん無理しすぎじゃないでしょうか!? 「それでもなっちゃったら、あとは根性しかないよねっ! 亜婆羅さん、出るからには上位入賞目指して頑張ろうねっ!!」 (頑張っていいところ、見せるっ!) ↓数分後 「うぅ……頭がキーンって……」 「フフ、すごい顔してるわよミストくん」 痛みを我慢する男の子って可愛いわねぇ、なんて亜婆羅は呟いた。 ● 見上げてみれば、皆の闘争本能を刺激した強い日差しは、未だ空の高くにある。 それでも、この日は平和な一日だった――と回想できる日であることを、疑う者は誰もいなかった。 <了> |
■シナリオ結果■ | |||
|
|||
■あとがき■ | |||
|