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<福利厚生2014>真夏の楽園へようこそ ~海は僕らの遊技場~


 日差しの強い夏のある日、守生はアークの本部にやって来た。
 冷たい空気が陽光に晒された身体に心地良い。元々、強い日光は得意ではないのだ。
 そして、ペットボトルのスポーツドリンクを口にした所で、1人の少女が話しかけてきた。
「モリゾーさん、お疲れ様です」
「ゼフィか。随分と久しぶりだな」
「そうですね、ここの所エリューション退治で国内各地に出ていましたから」
 話しかけてきたのは、フュリエの少女ゼフィだ。彼女の生まれたラ・ル・カーナは安定した気候の土地であり、日本の夏は彼女にとって優しいものとは言えない。しかし、内気な割に好奇心旺盛な彼女にとってみると、まだまだ新鮮な感覚を与えてくれるということなのだろう。
「そうそう、頂いたお給金で水着も買ったんですよ! 今年は海で遊びたいです!」
 珍しくテンション高めにはしゃぐゼフィ。故郷にいた頃から、水遊びは嫌いではなかったのだ。オマケに水着も買ったのだから、気分が高揚するのも当然のことだろう。
「あぁ、考えてみれば福利厚生があったな。あそこならお披露目の場としても悪くないんじゃないのか?」
 何気なく進めてみる守生。言葉を口にしながら自分でも思う。以前の自分はこんな所で口が動くタイプではなかったはずだ。それがこんなことを言い出す辺り、自分も変わって来たのかも知れない。
 しかし、その感慨も直後のゼフィのリアクションで吹き飛んでしまう。
「福利厚生……? また、あの島に行けるんですか?」
 目を輝かせながらゼフィは守生に迫る。
 普段の彼女からはとても考えられない勢いだ。
「お、おう。そういうことだな。ま、俺は海辺でのんびりとさせてもらう予定だが」
「だったら、わたしは海で泳ぎたいです! 浜辺で砂遊びもしてみたかったんです!」
 ゼフィのはしゃぎ方はまるで子供の様だ。いや、まさしく夏休みを迎えた子供そのものなのかも知れない。
 守生は海を夢想し盛り上がる森の妖精を前に、変化も善し悪しだな、と思った。


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:KSK  
■難易度:VERY EASY ■ イベントシナリオ
■参加人数制限: なし ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2014年09月16日(火)22:48
皆さん、こんばんは。
水着回、KSK(けー・えす・けー)です。
今年の夏は海に行っていないので、心だけでも行こうと思います。

●目的
 夏の海を楽しむ

●行動について
 今回はシーンを主に2つ設定しております。
 メインに描写して欲しいシーンの番号をプレイングの頭に入れて下さい。

1. 海辺で遊ぶ
 夏の海で遊びます。浮き輪やゴムボートなんかも貸し出しているので自由にご利用ください。
 泳いだり浮かんだりできます。
 砂遊びに興じても良いでしょう。
 ゼフィはこちらで泳いでいます。

2.砂浜でのんびり
 浜辺で日焼けしてみたり、暑い砂浜で焼きそばを食べたりします。
 騒ぎたい人よりものんびりしたい人向けです。
 守生はこちらでかき氷を食べています。

3.その他
 海辺で出来ることならある程度のことが出来ます。
 上以外の行動をしたい場合、こちらでどうぞ。

●イベントシナリオのルール

・参加料金は50LPです。
・予約期間と参加者制限数はありません。参加ボタンを押した時点で参加が確定します。
・イベントシナリオでは全員のキャラクター描写が行なわれない可能性があります。←重要!
・獲得リソースは難易度VeryEasy相当(Normalの獲得ベース経験値・GPの25%)です。
・特定の誰かと絡みたい場合は『時村沙織(nBNE000500)』といった風にIDと名前を全て表記するようにして下さい。又、グループでの参加の場合(絡みたい場合)は参加者全員【グループ名】というタグをプレイングに用意するようにして下さい。(このタグでくくっている場合は個別のフルネームをIDつきで書く必要はありません)
・NPCを構いたい場合も同じですが、IDとフルネームは必要ありません。名前でOKです。
・内容は絞った方が描写が良くなると思います。
・諸々の片づけは翌日行われます。

 守生は砂浜にビーチパラソル立てて、かき氷でも食べています。
 ゼフィはテンション高めに泳ぐ気満々です。
参加NPC
高城・守生 (nBNE000219)
 
参加NPC
ゼフィ・ティエラス (nBNE000260)


■メイン参加者 38人■
ナイトバロン覇界闘士
御厨・夏栖斗(BNE000004)
アウトサイドダークナイト
テテロ ミーノ(BNE000011)
アウトサイドデュランダル
鬼蔭 虎鐵(BNE000034)
ノワールオルールスターサジタリー
不動峰 杏樹(BNE000062)
ハイジーニアスデュランダル
結城 ”Dragon” 竜一(BNE000210)
ハーフムーンソードミラージュ
司馬 鷲祐(BNE000288)
サイバーアダムクロスイージス
新田・快(BNE000439)
ハイジーニアスデュランダル
新城・拓真(BNE000644)
ジーニアスプロアデプト
エレーナ・エドラー・シュシュニック(BNE000654)
ハイジーニアススターサジタリー
リリ・シュヴァイヤー(BNE000742)
ハイジーニアスクロスイージス
祭 義弘(BNE000763)
ハーフムーンナイトクリーク
五十嵐 真独楽(BNE000967)
サイバーアダムインヤンマスター
焦燥院 ”Buddha” フツ(BNE001054)
フライダークマグメイガス
綿雪・スピカ(BNE001104)
ナイトバロン覇界闘士
設楽 悠里(BNE001610)
ハイジーニアスアークリベリオン
祭雅・疾風(BNE001656)
フライダークマグメイガス
シュスタイナ・ショーゼット(BNE001683)
ジーニアス覇界闘士
宮部乃宮 火車(BNE001845)
アウトサイドナイトクリーク
黒部 幸成(BNE002032)
サイバーアダムプロアデプト
酒呑 ”L” 雷慈慟(BNE002371)
ジーニアスデュランダル
羽柴 壱也(BNE002639)
ジーニアススターサジタリー
堂前 弓弦(BNE002725)
ジーニアスインヤンマスター
九曜 計都(BNE003026)
ハイジーニアスプロアデプト
離宮院 三郎太(BNE003381)
ハイジーニアスダークナイト
熾喜多 葬識(BNE003492)
ナイトバロンプロアデプト
阿久津 甚内(BNE003567)
ジーニアスデュランダル
夏郷 睡蓮(BNE003628)
ジーニアスマグメイガス
リリィ・アルトリューゼ・シェフィールド(BNE003631)
メタルイヴダークナイト
黄桜 魅零(BNE003845)
ナイトバロンアークリベリオン
喜多川・旭(BNE004015)
ナイトバロンクリミナルスタア
熾竜 ”Seraph” 伊吹(BNE004197)
ハイフュリエミステラン
シンシア・ノルン(BNE004349)
ハイジーニアスミステラン
イシュフェーン・ハーウィン(BNE004392)
アークエンジェスターサジタリー
鴻上 聖(BNE004512)

城山 銀次(BNE004850)
ジーニアスソードミラージュ
御陵 柚架(BNE004857)
アウトサイドアークリベリオン
テテロ ミスト(BNE004973)
フライダークスターサジタリー
骨牌・亜婆羅(BNE004996)


 突き刺すような日差しが砂浜を焼いてくる。
 しかし、そこを越えれば美しく輝く海。
 そう、こここそが時村財閥の所有する南の島だ。
「今年もわたこに誘われたものの……予想通り暑いわね。こんな中で騒げるわたこって何かしら」
 欧州出身のエレーナにしてみると、夏の暑さは信じがたいものがある。
 そして、一緒に砂浜に来たスピカはと言うと……埋まっていた。
「見てみてエレーナ、こんなにも水面がキラキラしてる」
 波打ち際の特等席で海を楽しんでいる……ということも出来ようか。しかし、何をやっているのか理解出来ないのはエレーナだけではないだろう。
 状況は分からずとも助けた方が良いのだろうとエレーナが近づいた時、罠は牙を剥く。
「……で、何で隣にも穴掘ったの、私まで巻き込むの」
「この幸せと感動をエレーナにも感じて欲しいから……エレーナの分の落とし穴も予め掘っておいたの」
 うっとりとフライダークらしい無垢な笑顔のスピカ。
 もっとも、この後どうやって出るのかまで考えていなかったのもスピカらしさである。
 この後、有志のレスキューに助けられ、こってり絞られた。
 エレーナはスピカの頭をぐりぐりした。

 砂浜では【団地】レジャーの一団がビーチバレー大会を開いていた。
 真独楽の発案でチームは入れ替わり式でやっている。
 大人と子供、入り乱れての乱戦だが特に気にした風でも無い。むしろ、様々なチームで遊べることを楽しんでいるようだ。
「ここね……行きます!」
「えっつえんじょいなぼー! うみっ!」
 弓弦が狙い澄ましたサーブを放つと、明るい声と共にミーノはボールを受け止める。
「悠里、ハンデちょーだい! お兄さんでしょっ」
「ふふーん、駄目駄目。勝負なんだから手加減しないよ!」
 頬を膨らませる真独楽に対して、悠里はふふんと笑って答える。そもそも並みの人間よりも運動神経の優れたリベリスタ同士の戦いだ。手加減した上でも中々のものになる。
「もう一度やりましょう!」
 一試合終えて、メンバーがローテーションする。
 試合を終えたものに、疾風が謎のカメラ目線と共に飲み物を渡している。
「良い子は熱中症や脱水にも気を付けよう。ヒーローとの約束だ」
 入れ替わりで入って来た面子は打って変わっての大型だ。
「やったことはあんま無いが良いだろう。かかっているのは負けてたまるかと言うプライドただ1つぅ!」
 夏が似合う男、宮部乃宮は火車は目的を果たすためなら容赦はしない男だ。
 ビーチバレーでだって遠慮はしない。
「ふにゃ、火車、今の強すぎ!」
「ガハハ! 勝った奴が! 一等! 偉いんだよぉ!」
 そんなことを言いながらも、年下相手に力をセーブする辺り、やはり空気の読める男だ。
「遊びとは言え、ここも戦場! そもそも男相手に遠慮は無用! さぁ、いくよ!」
 対する悠里も不敵な笑みを浮かべて迎え撃つのだった。

 同じようにビーチバレーをしている面子はここにもいた。
「わたしこのよのすべてをてにいれたんじゃない? どこにおいてくればいーかなあっちの方かな!」
 ビーチボールを片手に持つ旭のテンションは高い。
 夏の太陽のせいか、それとも新調した黒い浴衣水着のせいか。
 そんな旭を魅零はのほほんと眺めている。新しい水着で一緒に海にいるという「フツーの女の子」っぽいのもたまには良い。
「旭が嬉しそうなら、黄桜も嬉しいかも」
 と、のんびり思う魅零に旭はいきなりビーチボールを投げてくる。
「ひぇぇえ!!?」
「そだ、みれーさんみれーさん。ビーチボール対決しよ? 本気で!」
 旭の声に魅零はニヤリと笑うとボールを投げ返す。
「あ、旭ぃぃ……い、いい、イイよそれ!! 面白い!
 感じさせてね、エクスタシィィイ☆」
 たちまちリベリスタの身体能力を駆使した「本気のビーチボール対決」が始まった。
 互いに相手にボールをぶつけようと必死だ。
 明らかにドッヂボールなわけだが……。
「んー、まぁいっか。たのしーしっ」
 旭は微笑みと共にアタックを放った。

 輝く海に向かって計都と三郎太は歩を進める。
「計都さんと一緒だとこの場所がもっと素敵な場所に思えますっ」
 2人はおそろいで花柄をあしらった水着を着ている。自然とテンションも上がってくるというものだ。
 その様は健全な学生カップルそのものだ。
「にひひ、なんかあたしたち、めっちゃラヴいカップルみたいッスね。『みたい』……じゃなくてもいいッスけど」
 つい計都が口にした台詞で2人は思わず黙ってしまう。
 その空気を誤魔化すように、三郎太はボート置き場に向かって走り出した。
「そういえばゴムボートも借りられるみたいですっ」

 日頃からも羽根を伸ばし気味なリベリスタ達であるが、夏の海と言うこともあってみな一層羽根を大きく広げていた。
 そんな中で、リリィは暗そうな顔をしている。
「こんな格好でさえなければ、ね」
 久しぶりの海なのだがどうにも楽しめない。理由は水着のせいだ。
 着ているのはスクール水着。2年前の水着コンでお世話になったものだ。
 似合っていない訳でもないのだが、リリィ自身はどうしても浮いているように思えてしまう。
 そして彼女が引き上げようとした時だった。
「待たれよ! 南の島で美少女殿(スク水)がお独りとはもったいのう御座る!」
「何よ、何か用?」
「せっかくの海を楽しんでもらうべく、自分で宜しければ是非ともとお供を!」
 声を掛けたのは先ほどまで陰から周りを見守っていた幸成だ。
 本来であれば警察でも呼ぶべき事案だが、彼の瞳には真摯な想いが秘められていた。目の前の少女に楽しんでもらいたいという想いが。
 リリィにもその想いは伝わった。
「まあ、一人でいるよりはいいけど。ふん、仕方ないから付き合ってあげるわよ。その代わり、退屈させたら絶対に許さないんだからね。良いわね?」


 騒々しい砂浜で、投げてもらったアイスキャンディを食べている守生の前に来たのはシンシアだった。
「初めまして、モリゾーさん」
「あぁ、どうも。シンシアさんだったな。あんたは泳がないのか?」
「えぇ、水着を忘れてしまって」
 守生の問いにしょんぼりと答えるシンシア。
 その視線の向こう側では、はしゃいで海に飛び込むゼフィの姿があった。
「それにしてもゼフィちゃん、凄い楽しそうですよね。あんな子だったかなあ……」
 同郷であるシンシアの目から見てもやはりテンションが上がっていたらしい。
「溺れなきゃいいんですけ、ど?」

 シンシアの視線の先には勇ましく遠くに乗り出す杏樹や快の姿があった。
「こういう機会でもないと、海なんてエリューションが出た時くらいしか来ないな。せっかくの福利厚生だから、存分に羽根は伸ばしてみよう」
「せっかくの水着も、泳がなきゃ損ってやつさ」
「ゼフィは泳ぐのは好きか?」
「はい! 地球の海は広くて楽しいです」
 杏樹とゼフィをサポートするのは快の仕事だ。守護神の名は伊達ではない。
 そして、杏樹はシュノーケルを着けて水の中に潜って行く。さすがは南の島、海中の景色も中々のものである。
「水中は、いろんな景色を見られて楽しいな。快も覗いてみたらどうだ?」
 海上に戻って来た杏樹が快を呼ぶ。しかし、快は軽く手を振って断った。
「水中は俺も覗いてみるけど、個人的には水面上の方がいいな。2人の最強の水着姿が見られるからね」
 言われてみれば大した役得である。

「あ、準備体操忘れちゃだめだよ!」
「あっ……」
 はしゃぐあまりに準備運動を忘れていたリリを夏栖斗が止める。
「お、覚えていましたよ! そんなに迂闊ではないですよ」
 慌ててリリは否定するが、その表情を見るに真実は怪しい所だ。もっとも、夏栖斗に言わせればそんな危うさも彼女の魅力なのだろうが。
 リリの方が年上に当たる訳だが、学園においては夏栖斗の方が年上に当たるというややこしい関係だ。そう考えるとどこか気恥ずかしいものもある。
 しかし、顔を見合わせていたのはつかの間だった。
 海が待っているのだ。

「誘ってくれてありがとうね、ミストくん」
 ゴムボートの上にいるローブ姿の亜婆羅が声を掛けると、海にいるミストはヘヘヘと笑う。
 親子ほども年の差がある2人だが、リベリスタとしての活動の中でしばしば出会うことがあった。そこで身近に感じたミストが思い切って誘いをかけたのである。
 亜婆羅にしても、元気が一杯詰まっているようなミストは見ていて楽しいものだ。そこでふと思いついた言葉を口にしてみる。
「うちの子になる? ……なんてね」
「うちの子……!? でも、頼りがいがあって優しくて、亜婆羅さんみたいなお母さん、すごく素敵だと思いますっ」
 思わぬ言葉に対して、顔を真っ赤にして答えるミスト。
 その返答は恐らく本心なのだろう。言った後で恥ずかしくなって、海に顔を向ける。
「じゃぁあの向こうに見えるポールのところまで行きますよっ」
「あたしを濡らさないように、しっかりボード引っ張ってね、ミストくん」

 ゴムボートの上でうたた寝する三郎太に向かって、計都はそっと顔を近づける。
 その時、三郎太が目を覚ました。
 ばしゃんと水しぶきを上げて計都は海に逆戻りした。
 そんな計都の姿を見ながら三郎太は、もっと楽しい思い出を作って行きたいと思った。

 海に乗り出したリリだが、泳ぎには慣れていない。
 夏栖斗に良い所を見せようとするのが裏目に出てしまった。
「ほ、ほら! 無理しちゃだめだって! 浮き輪に捕まって! ちがう! それ僕! 浮かないから!」
「――あれ? これってもしかして、御厨さm」
 気付いた時には顔が近い。
「し、失礼しまし」
 慌ててばしゃばしゃと離れる2人。
 リリは来年こそはとリベンジを心に誓うのだった。

 壱也は殺人鬼とチンピラに囲まれ、追い詰められていた。
 こう書くと何事かという話だが、殺人鬼(葬識)もチンピラ(甚内)も一応リベリスタなので性質が悪い。それでも、壱也はこの2人が関わって碌なことが起きないことを経験上知っているのだ。
「というわけで、羽柴ちゃん、あそこに、ブイ、見えるよね?あのブイまで、羽柴ちゃんが逃げ切れたら今回はひどいことしないよ!」
「ブイなんて見えないし何もないし! また騙そうとしてるでしょ?」
「そー見えないかもしれないけどーブイ、あるんだよねぇー。じゃーそーゆー事だから。がんばれ、がんばれ、羽柴ちゃーん★」
 葬識と甚内が指差すのはそれぞれ適当な方向。
 当然ブイなどはない。
 それでも壱也はわずかな希望を抱いて逃げるしかない。
 しかし、誰もついてこない。
 壱也はしばらく全力で泳いだ後で、それに気が付いた。葬識と甚内は楽しそうに談笑しながら、かき氷や焼きトウモロコシを食べている。
「あー!! 何!? なんでスタートしてないの!? しかものんびりなにか食べてるし! 騙したな!!」
 しかし、それは相手の思うつぼというものだった。めでたく「逃げなかった」壱也は捕まってしまう。
「よしきたアイドル羽柴ちゃーん! 寂しくさせちゃってごめんねごめんねー!」
「三人の船出にヨーソロー!」
 そして、罰ゲームと言う名で【チーム羽柴】の船旅が始まるのだった。
「嫌だやめてうわあああああ寂しくないから離してえええええ! あれいやあああああ!!!」

 多くのものが海を楽しむ中で、虎鐵はひたすらに泳いでいた。
 本人に言わせればダイエットを兼ねてと言うことだが、その姿は求道者のそれだ。
「さてさて……俺の体力がどこまでもつかだなっと」
 その時、自ら顔を上げた虎鐵の視界にアイスを売る者達の姿が映った。
「泳ぎつかれた後にはアイスでも食うかな。暑い日にアイス最高じゃねぇか」
 楽しげに笑うと、虎鐵はまた大きく泳ぎだすのだった。


 飛ぶが如く、飛ぶが如く。
 一陣の涼やかな清風が浜辺を駆け抜ける。
 その風の名はアイスキャンディ売り。
「拓真、いくぞ。このBlue Oceanの全てを、俺達二人のBurstUPで彩ってくれよう」
「勿論です、司馬さん。この夏、俺達の軌跡がこの砂浜をCoolに染め上げる」
 安っぽいクーラーBOXをカートに積み、拓真は浜辺を奔る。川から海へと流れ込む水の様に、その動きが止まることは無い。
 人々にアイスを配るのは妖艶な印象を与える鷲祐だ。どこに向かうかなど問う必要はない。砂を掴むこの四輪は誰よりもこの浜辺を識っている。
 そう、この砂浜は彼らのVictory Road。
 この果てにある景色こそ夏のmemory。
 2人の本物の絆がそこにある。

 ……

 ……

 事故りそうになったら、ドリフトと気合でどうにかするんだろう。
 きっと。


 義弘もまた焼きそばの簡易な屋台を用意していた。
 甚平姿が妙に似合っている。
「しかしまあ、平和に遊べるってのはいい事だ。世の中いろいろあるが、こういう時だからこそ英気を養わないとな」
 軽く汗を拭う義弘。
 暑さも真っ盛りなお陰で、タオルを巻いていてもまだまだ足りないようだ。

 屋台が用意された一角で柚架は苦痛に抗っていた。
「……あ、アタマが…」
 その手にあるのは大盛りのかき氷。要は急いで食べすぎたのである。
「そこ往くヒト、食べるのテツダって……ください……!」
「どうしたんだい、お嬢さん? ああ、かき氷ね。まあ、そう言うなら手伝うよ」
 受け取ったのは(野郎の姿を除く)海を楽しんでいたイシュフェーンだ。
 お陰で無事にかき氷も食べ終え、互いに簡単な自己紹介を済ませる。
 しかし、そんな中で彼の機嫌が悪そうなことに気が付く。柚架が聞いてみると、イシュフェーンは怒りも露わに叫んだ。
「今は夏で、ここは南の島で、さらに言えば砂浜だ。なぜ君はこんな絶好のロケーションで水着じゃないんだい? 何故、君は、水着じゃ、無いんだい?」
「……えーと。ほら、人の前でミズギになるのって恥ずかしいじゃないですかっ、ねっ? ……ねっ?」
 大事なことなので2回言ったイシュフェーン。
 柚架は勢いに押されながら答えるも、彼の主張はそう簡単に止まりそうになかった。

 ビーチパラソルの下で、睡蓮と銀次は静かに酒を呑んでいた。そこらには缶ビールが並んでいる。
 酒を呑んで徒然なるままに話していたという所だ。
(家族のことでも聞ければよかったんだけどな)
 睡蓮は自分がフィクサードになったところからしか記憶がない。家族というものがどんなものなのか気になったのである。聞いたところで自分が体験出来るものではないわけだが。
 気が付けば酒も切れている。
 話もお開きと言った所か。
「もしよければまた飲もう、今度は今までどのような激戦をしてきたかが聞きたいな」
 銀次が軽く手を上げて応える。
 睡蓮はおもむろに立ち上がり、片づけを始めるのだった。

 夏の海だからと言って、誰も彼もが素直に日光の下にいる訳でも無い。
「この時間の外は、当たり前だけど暑……焦げそう」
「とりあえず、日陰の休めるところに移動しましょう」
 シュスタイナと聖は日陰にやって来た。日陰に入るだけで大分マシになろうと言うものだ。
「ね。真夏でもその格好? 暑くない?」
 聖の格好はこの炎天下にも関わらずカソック姿だ。誰だってシュスタイナと同じ感想を抱くだろう。
 たしかに私服を用意しても良いのかも知れない。
「信仰心の現れですよ……それより、シュスカさんは海に入らないんですか?」
「海? 私、泳げないの。鴻上さんが教えて下さるって言うなら、練習しないでもないわ」
 悪戯っぽく笑うシュスタイナ。
「良いですよ。でしたら、服屋でのコーディネート権と引き換えということで」
「いいわよ。一日着せ替え人形にしてあげる」
 聖の言葉にシュスタイナは満足げに微笑んだ。

 次第に日も落ちてきた浜辺に肉が焼ける音と匂いが流れている。
 【団地】のみんながバーベキューを始めたのだ。
「どんどんどんぱふぱふぱふっばーびーーーーQーーーたいかいっ!!」
 ミーノは主に食べる担当だ。サーフィンから戻ってきた疾風もいつの間にやら混ざっている。
 一通り、騒ぎ終わり食べ終わり、のんびりした時間が流れる。あとは、火車が奢ってくれたアイスキャンディを食べるだけだ。
 そんな中で弓弦は、そっと眦に涙を浮かべていた。
(……本当に楽しいです)
 大きく辛い戦いを乗り越えたからこそ、この平和な日が得られたのだろう。
 戦いはリベリスタの宿命だ。
 それでも、弓弦はこの平和な日々が長く続くことを祈るのだった。

 その時、突然トラックが砂浜にやって来た。何事かとざわめくリベリスタ達の前で、トラックの荷台が開き、スモークの中から男達が姿を現すのだった。
「参る! 壱・弐・賛!」
「さあ……LIVEだ!!」
 運転席からベースギターを手に伊吹がステージに駆け付ける。
「さて、ショーの始まりだ。真夏の楽園にようこそ」
 そして、ライブの始まりを宣言した。


 南の島を舞台に始まった音楽の宴。
 そう、やって来たのは「BOZ」――”Buddha”、”Dragon”、”L”、”Seraph”の4人からなるインディーズバンド――だ。
 彼らの粗削りだが、魂を込めた歌が夕暮れのビーチに鳴り響く。
 まだ一流になり切れない彼らの内側には、解決していない問題がある。
 しかし、自分達の内側にある音楽を止めることが出来なかった。
「仏教には、マントラって言葉がある。真言って訳すんだが、簡単に言やあ、讃歌や、祈りを込めた言葉のことだ」
 ひとしきり歌い終わった後にフツが静かに語り始めた。
 これから歌うのは新曲だ。
「出会えた過去に感謝! 今、生きてて良かった! これからも一緒だ!
 そういう魂の叫びだ!
 皆で叫ぼうぜ!
 新曲、『マントラショウ』、行くぜ!」


どれだけシャンバラいい 壇家のためなの?
テカっているのに 覚悟(まなこ)は曇る
小手先ばかりが磨かれて その悪霊(れい)を見つけれないデナイ

幽霊いない どこもそこも そのせいで空を仰ぐでしょう
集霊をしたいのなら 灯火を消し 迎えてあげましょう
そして始めるマントラ唱(オン!)

除霊の限界 しくじったつもりかい?
軽いミスさえもしないまま終わりそう
一番危険な霊がホラー 今でもあなたを見てる 憑いてる

幽霊肩に あれもこれも 今こそ御札貼りましょう
粛清をしたいのなら 体中の霊 無にしてあげましょう 
両手合わせる南無阿弥陀(ブツ!)

「高僧の後光に憧れて 唱えて逝かせるNa mu」

幽霊信じない 誰も彼も 今こそ 無念を吐きましょう
粛々が恋しいのなら侘び寂びを知り 破ァ!と息巻け
煩悩だらけ誰も彼も そのまっぱだかを 正してやりましょう
処して肩叩くウルトラ僧(兵!)


 こうして、夏の夜は終わって行く。
 終わるから夏なのだ。
 たとえ明日、戦いの日々が始まるとしても。
 それでもこの瞬間を止めることは、何人たりとも出来はしないのだ。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
『<福利厚生2014>真夏の楽園へようこそ ~海は僕らの遊技場~』にご参加いただき、ありがとうございました。
夏の終わりの一幕、如何だったでしょうか?

それでは、今後もご縁がありましたら、よろしくお願いします。
お疲れ様でした!