●暗き海の底で 「強い力を持った革醒者の気配を感じるタコ!」 Eビースト『海坊主』……タコのエリューションである彼は、奇妙な能力を持っていた。妙に勘がよく、経験豊富な革醒者の気配を察することができるのだ。未来予知というよりは、感度の高い『直死嗅ぎ』と言ったところだろうか。その精度は高く、彼の記憶している限り外れたことはないという。 情報面において他エリューションより秀でている為、それをうまく使えばエリューションの一大組織を形成できたかもしれない。だがしかし、彼にはどうしようもない弱点があった。 「よし、逃げよう」 どうしようもなく臆病であることだ。石橋を叩く前に渡らない。まずは逃げ。三十六計逃げるが勝ちとばかりにとにかく戦いを回避していた。 彼と連れ添うエリューションは、その忠告を聞いて一緒に逃げていたり、あるいは彼の『予知』を信じて革醒者に戦いを挑んだりした。そういう意味では、この海洋のエリューションたちからは一目置かれている存在なのだ。 彼を叩いておく事は海洋エリューションの『目』を潰すといってもいい。そういう理由で、アークはこのエリューションを逃がすつもりは無かった。――理由があろうがなかろうが、世界の為にエリューションは滅するべきなのだが。 だがしかし、海坊主には前述の革醒者察知能力がある。そのため……。 ●アーク 「敵はEビースト一匹」 『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)はそういって説明を一旦結び、集まったリベリスタたちに向き直った。 「八本の足で様々な攻撃をしてくる。それぞれが独立しているかのように動いて、こちらの動きも封じてくる。そして頭部もスミを吐いてくる」 『万華鏡』から送られてくる蛸足と頭部の能力を見て、むぅと唸るリベリスタ。イヴの言葉だけを聞けばそれなりに強そうなのだが、実態を知れば色々と残念だった。 「頭を倒せば、足は動きを止める。だけど足を無視して攻撃を仕掛けようと思うと一苦労」 足の数を考えれば、多少は足を不具にしたほうが楽だろう。しかし足を倒すことばかりにかまけていたら、頭を潰す時に息切れしかねない。 「このエリューションはある程度の強さを持った革醒者が近づくのを察知して、逃げる習性がある。海の中で逃亡されると、捜索が面倒になるから確実に倒して欲しい」 現状は『万華鏡』の範囲内で活動しているから見つけることはできるが、範囲外に出られてしまえばもはや追うすべはなくなってしまう。 「問題は海の底にいるタコをどうやって攻撃するかだ。そんな性格のエリューションならなおのことだ」 「それは大丈夫。罠を仕掛ける」 罠? 首をひねるリベリスタに、イヴはモニターを操作して一枚の画像ファイルを提示する。それは大きさ四メートルほどの巨大な壷。 「……タコツボ?」 「効果は『万華鏡』で確認済み。これを使って捕らえ、船の上に揚げる。逃げられる前に相手を倒して」 モニターには壷一杯に入り込んだタコが船の上に揚げられている映像が映し出されていた。これ自体はCG加工だが、『万華鏡』が予知したのなら確かだろう。ここから倒せるかどうかは、リベリスタ次第だ。 「やっぱり逃げるのか」 「隙あらば」 リベリスタの問いにイヴは無表情で頷く。面倒な相手だ。 真夏の海洋を想像しながら、リベリスタたちはブリーフィングルームを出た。 ● 「おお、こんなところに壷発見タコ。ちょっと身を隠すタコ。 のおおおおおっ! 引っ張られてるタコー!」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:どくどく | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2014年09月12日(金)22:43 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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● 「ふわぁぁぁぁ! 海! 海ですよ皆さんっ! うわーっうわーっ! 早く頭から突っ込みたいです!」 船の上ではしゃぐのは『ネイチャーラヴァー』アイリーン・カシミィル(BNE004967)だ。暑い日差しと潮風。それを体一杯に受けて、テンションが上がっていた。海が初めてということもあるのだろう。船出の前からこんな調子だった。 さて、 「や、やあ。ぼくの名前は海坊主、今日もいい天気タコ」 タコツボに入って船に陸揚げされた海坊主。リベリスタ八人とご対面し、自分でもよくわかっていない挨拶をした。 「コイツ馬鹿だろ。言わなくても分かると思うけどコイツ馬鹿だろ」 そんな海坊主を見ながら『漂う紫煙』烟夢・クローフィ(BNE005025)がため息をつく様に紫煙を吐く。壷に入って陸揚げされるなど、馬鹿の一言に尽きる。もう言及するの馬鹿らしいので、とっとと倒そうと破界器を構える。 「海坊主というと海の妖怪の中でも相当な大物……と聞き及んでおりましたが」 まさかこんなタコだったとは、と『白銀の防壁』リリウム ヘリックス(BNE004137)はあきれ返る。勿論海坊主を名乗っているタコのエリューションの可能性もある。どうあれエリューションなら叩かなければならない。 「臆病な事は大事だが、それでも30%まで、だ」 カウボーイハットを海風に飛ばされないように押さえながら『ザ・レフトハンド』ウィリアム・ヘンリー・ボニー(BNE000556)が口を開く。生存に趣をおくことは重要だ。だが過ぎたるは及ばざるが如し。 「わー、たこさんっ。おっきいのですっ。これだけあるとおっきいたこ焼き出来るかな?」 海坊主の大きさを見ながら、シーヴ・ビルト(BNE004713)が頬に手を当てる。たこ焼きの歯ごたえと味を思い出しながら破界器を構えた。頭の中ではどうやって料理するかを思考中だ。その前に倒さなければならないのだが。 「たこ、僕好きだよ。Radishと合わせて食べる」 『アカシック・セクレタリー』サマエル・サーペンタリウス(BNE002537)は日本に来て海産物の美味しさを知った。大根と魚介類の組み合わせは堪らない。エリューションが食べられるかどうかは不明だが。 「海洋エリューションの目だっていうなら、叩いておくのは重要ね」 一定のリズムで呼吸を整えて体内の『気』を体中に行き渡らせる『百花乱舞』桜乃 彩音(BNE003884)。白いシスター服を翻し、ブーツのつま先をコンコンと叩き、相手との距離を伺う。 「水場の任務地で触手持ちの敵の討伐。変なフラグが立ってる気がするのですが」 如月・真人(BNE003358)はゆにを上げの当てて、考えるように呟く。色々えちくなりそうなな予感はするが、まぁ大丈夫かと結論付けた。タコツボの中で怯える海坊主にそういう行為をする意図は見られない。……あくまで意図は、だ。 「く、くるとぼこぼこにするタコ。逃がしてくれるなら嬉しいタコ!」 八本の足で構えながらリベリスタを挑発する海坊主。だが声が震えている。 だがこの臆病さが、厄介なのだ。程度はどうあれ、ここでこのエリューションを叩いておかねば厄介なことになる。地上に吊り上げた今がいい機会だ。それはリベリスタたちも分かっている。 破界器と触手が、今交錯する。 ● 「つぼ焼き、和え物、酢の物……どれがいいかな」 「食う気満々タコ!?」 初手に動いたのはサマエルだ。カン、と甲板を蹴って蛸足に近づく。たこ足が動きを撮る前に大きく甲板をけって宙に舞う。重力から解放されたサマエルは移動のベクトルを殺さぬように足を振るった。 黄昏色の脚甲が横なぎに払われる。相手の反応の裏をかくサマエルの蹴り。鍛えられた脚が高速で繰り出され、脚甲につけられた刃は蛸足を斬り刻む。蹴りを放った不安定な体勢だが、難なくサマエルは着地する。 「新鮮なうちがいいから、急ぐよ」 「腹壊すかも知れんぞ」 サマエルの言葉に忠告を飛ばすウィリアム。全てのタコが食えるとは限らないし、まして相手は神秘の存在だ。すぐに目線をエリューションに戻し、手の平の感覚を確認する。使い慣れた重みと手触り。扱いなれた三十八口径ダブルアクション。 戦場を俯瞰視し、五感を研ぎ澄ます。見ろ、聞け、匂え、感じろ。全ての感覚を総動員してセンサーとし、その上で思考し、引き金を引く。時間にすればまさに瞬き一つ。濃密な一瞬の判断の後に、ウィリアムは二丁の拳銃を撃ち放つ。 「おまえさんは運が尽きた。そういうことさ」 「貴様が海坊主? 笑わせないで。いえ、笑えない冗談です」 リリウムが強く槍を握り締めて前に出る。その声と愛美には確かに怒りを感じさせるものがあった。BSとかじゃなく、マジの。日本の伝承などを嗜んでいるのだろう。妖怪の類に造詣が深い彼女は、海坊主がこんな臆病なタコという事実に耐えられないでいた。 迫りくる蛸足を盾で弾く。回転するように身体をひねり、足の機動を横にそらす。その回転する力を殺さぬ用意一歩踏み出し、腰をひねり槍を突き出す。。攻防一体。盾と槍の生み出す古来より続く技法。それをリリウムは受け継ぎ、実践していた。 「ええ、怒っていませんよ? 決して怒っていませんからね?」 「幽霊の正体を見たらなんとやら、ね」 肺一杯に潮風を吸い込んで彩音が疾駆する。体内を循環する空気は細胞を活性化する力となる。彩音の靴が帯電し、電光が走る。足の軌跡を追う様に紫電が走る。それは蹴った傷口に纏わりつき、さらなる痛みを蛸足に与える。 迫る足を手で弾き、蹴り上げる。あるいは迫ってくる蛸足を蹴って弾く。そのたびに白いシスター服がひらひらと舞った。りりしく敵に立ち向かう姿は、まさに聖女を思わせる凛々しさ。……まぁ、コスプレなのですが。 「蛸足はあまり好みじゃないのよ。ぬるぬるも絡みつかれるのも好きだけど」 「……あまり、目のやり所に困るようなまねはやめて欲しいです」 真人は十六才の健全な男性。蛸足がふとももに絡んでごにょごにょなシーンは少し目に毒である。体内でマナを循環させながら、魔力を練り上げる、前で戦っている仲間を後ろから手助けするために。 『展開式高出力魔術機構・改』を展開し、味方を意識する。魔術と呼ばれる古来から受け継がれし神秘をデータ化し、機械で行使するための機構。だがそれはあくまでサポート機構。癒しの魔力と癒したいという優しい心は、真人自身の培ったもの。 「すぐに癒しますから、皆さんがんばってください」 「はい! ずんずん進んじゃいますよ!」 アイリーンがガッツポーズを取り、攻めに入る。手にした戦斧はアイリーンの意図を汲み取り変化し、戦いに最適化した姿をとる。狙うは蛸足。弾力のある足を切るために鋭くなる刃。ああ、おいしそう……。アイリーンが思うたびに刃はさらに鋭くなる。 馬の如き脚力で一気に突っ込み、全身の体重をぶつけるように突撃する。移動ベクトルをそのまま破壊力に変えて、斧の重さと切れ味に加味した。斬るというよりは押し潰すように蛸足を裂いた。刎ねた足を見ながら涎を飲み込むアイリーン、 「いい色艶……じゅるり」 「確かに冷酒が欲しくなるな」 蛸足を見ながら烟夢が頷く。こりっとした感触と口に広がる味わい。それを肴に冷酒。悪くない。よし、とっとと倒そう。懐に入れていた銃を構え、足に向けて撃ち放つ。高速の武技に虚を突かれ、反応が遅れる蛸足。 構え、狙い、撃つ。三アクションを一瞬で行う烟夢。懐から銃を取り出し撃つ、という幾度となく繰り返してきた動作。当たるも当たらぬも運次第。だが分の悪い賭けではなかった。蛸足の動きは遅く、弾丸は真芯を捉える。 「刺身か、カルパッチョもいいな」 「たべていいのかなっ? かなっ」 目を輝かせながらシーヴが確認を取る。巨大なたこ焼きおいしそうです。戦いの後の楽しみのために二丁拳銃を構えるシーヴ。他の仲間が攻撃していた足を見極め、狙いを定める。肩の力を抜き、銃を構えた。 二丁拳銃の両方に集まる二つ力。ひとつは鉛の弾丸を回転させて放つ拳銃の力。もうひとつは神秘的な不可視の力が集まり、弾丸に纏わり突いていく。拳銃に集まる二極の力。引き金を引くと同時にそれらが解放され、真っ直ぐに敵を討つ。 「どっかーんといくよっ! おーっ!」 「お、おまえ達正義の味方じゃないタコ! 殺して食らうとか、おまえ達の血は何色タコ!?」 慌てふためき必死で抵抗する海坊主。そりゃ自分が食われると分かれば必死で抵抗しようものだ。だが弱肉強食は自然の摂理。それが勝負の世界なのだ。 海坊主が食われずに助かるには、勝つしかない。彼は生まれて始めて、逃げることなく敵に真正面から挑んでいた。まぁ、逃げられないだけなのですが。 ● 「あー……そこのお二人さん、横から蛸足迫ってるぜ」 後衛から戦場を俯瞰しているウィリアムが、前衛に忠告を飛ばす。蛸足の攻撃を感じ取ったら仲間に警告しようと思っていたが、そもそも敵はこちらに攻撃する来満々だ。感じるまでもなく敵意高い。なので、不意を突こうとする足への忠告に切り替えた。 まぁ、忠告しても避けられるかどうかは別問題なわけで。 「んっ、この、程度……っ! 効きま、せんっ……!」 リリウムの純白の鎧の隙間に入り込む海の悪魔。乙女の領域に入り込む不埒な動き。鎧に守られているが故にそこをじかで触れられる経験は少なく、それゆえに衝撃は激しかった。 「あんまり変な攻め方されたら、変な声が出ちゃうわ」 シスター服に絡みつく足に彩音が妖艶な笑みを浮かべる。動きの一つ一つを敏感に感じ取り、刺激が脳に伝わる。次はどう動くのか。それを想像すれば、その間に脚が動く。おmを悪どおりに。あるいは思惑と外れて。 にゅるんと粘液を伴う足の攻撃がリリウムと彩音を攻める。プロテクターの隙間に張り込み、弱いところを攻め立てる。せくはらだー、という視線がたこ(と、どくどくST)に突き刺さった。 「違うタコ、これは純粋な戦略で!」 「ふふふ。こんなこともあろうかと用意はしてきました! 実はシャツの下は水着です! このままシャツを脱いでしまえばプロテクター無し! 滑り込めませんよ!」 どうです画期的でしょう、とドヤ顔してシャツを脱ぐアイリーン。うん、そうだね。リベリスタの視線は暖かかった。そんな彼女にもにゅるんと。 「あわわわわ。忘れます。すぐに忘れますから」 そんな痴態を前に真人が目をそらす。困ったことに依頼レポート(りぷれい)の真偽のために、この時のことを調査官に何度も聞かれてしまうのだ。彼らも仕事だから仕方がないのだが……はぁ。 「焼くべきだと思う。つぼ焼き食べたい」 サマエルが海坊主に攻撃を仕掛けながら、タコは焼いたほうがいいという主張をしていた。中まで火を通し、熱いうちに口にいれる。醤油をつけて焼いてもいいし、何見つけずに天然の味を楽しんでもいい。 「刺身だ。料理は鮮度が命。焼いている時間すらもったいない」 刺身を推すのは烟夢だ。採れたての素材に勝るものは何もない。時間が経つほど味は落ちていく。ならば取ったこの場で料理するのが最高の味になるのだ。いい酒といい肴。これに勝る幸せはない。 「潮風混じりのぉ、戦鬼烈風陣ーっ、とーっ」 シーヴが二丁拳銃を構えて、回転しながら周りの蛸足を撃つ。潮風をまとい、くるくると回転する。故郷のラ・ル・カーナにはない風の香りが心地よい。回転を止めて海坊主の頭ににぱっと微笑みかけた。 「優しい笑顔……もしかして許してくれる流れタコ?」 「ふふふ、お命頂戴っ♪」 「そんなことはなかったタコー!」 まぁ、エリューションだし。 「おまえたちこっち来るなー!」 海坊主がために溜めた墨を吐き、甲板を黒く染める。 「これは……ハイバランサーではどうともならんな」 烟夢はバランス感覚を強化してスミの滑りに対抗しようと思っていたが、それでは対抗できないことに気付き、諦める。他のリベリスタもまともにイカスミを受けて、足を滑らせていた。 とはいえ、戦いの趨勢はもはや決まったと行ってもいいだろう。安定した回復と息のあった仲間同士の連携。何よりも今まで戦いを避けていた海坊主とリベリスタの戦闘経験の差。 「あんまりバタバタすると、より美味しそうに見えるよ」 「いや、美味しくなくても食べる気タコね!」 サマエルがタコツボに入っている海坊主の頭に迫る。足の殆どは動かなくなっている。腰を低くかがめ、軸足に体重をかける。蹴り足が地面をけり、逆袈裟の軌跡で足を蹴り上げる。『陽乃羽刃切』の刃が、海坊主を切り裂く、 「【記載者】の名において。きみの署名を省く」 その言葉を海坊主が聞けたかどうかは定かではない。 高速で繰り出された蹴りの斬撃が、海坊主の命脈を絶った。 ● 「みっしょんこんぷりーとっ、いぇーいっ」 シーヴが仲間とハイタッチを決めていく。仲間の回復もあったが、大した怪我もなくエリューションを退治できたのだ。綿密に作戦を練り、個々ががんばった結果といえよう。 「臆病が過ぎて罠にはまるか。俺たちも轍をふまないようにしないとな」 ウィリアムは拳銃を収めながら、海坊主の死体を見下ろす。慎重であることは重要だが、度が過ぎれば臆病となる。さて自分達の未来はどうなるか。 「さて、食うか。流石に生は無理だな」 「これを切る用の包丁がいるね。破界器で斬る?」 「採れたての料理を食べる……これも自然ですね!」 烟夢とサマエルとアイリーンは海坊主をどう料理するか思考していた。ぬるぬるの体表をどうするかや、大きすぎる足をどう切るかで喧々囂々としている。そもそもエリューションだ。元の動物の調理方法が正しいかどうかも分からない。 とりあえず焼くのが一番か。いやいやハーブで包んで食べれば安定だ。保存のために塩漬けにするか。いや待て鮮度を保つなら今ここで。でもコイツ自分の足普通に食べてたから、そのままでいけるんじゃないか? 「んー……美味しい」 彩音がまだ痙攣している蛸足に牙を突き立てる。痙攣する足に舌を這わせて、反応を楽しんでから口に含む。そのまま顎に力を篭めて、一気に噛み千切った。ほわん、とハートマークが湧き上がり、天に昇る心地よさになる。 「……生でいけるのか?」 「騙されるな。桜乃じゃ『グルメ王&R・ストマック』もちだ」 どんなものを食べても消化する神秘持ち。自分の胃袋が耐えられるかどうかは別問題だ。 「見えない見てない。忘れろ忘れろ……」 真人は海坊主が乙女に攻撃した時に生じたいろいろを忘れようと、必死に精神を平常に保とうとしていた。まぁ、そういうことが目的だったわけではないので激しいことにはならなかったわけだが。 「……ええ、アレは海坊主を名乗る何か。本物の海坊主はきっとどこかに……」 リリウムは大海原を眺めながら、そんなことを思う。海の荒々しさを示す妖怪。海から現れる黒い巨人。それがあんな臆病なタコだなんて……。目の前に広がる大海原を見て、心が落ち着いてくる。この広大な海のどこかに、本物の海坊主がいるかもしれない。 それがエリューションとなって人を襲えば、退治に向かうのがリベリスタなのですが。 船は三高平港に向かう。 頬をなでる潮風の冷たさが、秋の到来を示していた。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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