●お腹がすくわかゆいわでもう……もう……! ご想像いただきたい。 缶詰から開けたコンビーフをそのままフライパンにおとす瞬間を。 鉄板の上でじゅわりとはねる油。そして肉の香り。 一緒におとしたバターが絡み、泡立ち、そして一つになっていく。 ほぐしたコンビーフはほんのりと焦げ目を残したままバターの風味と混じり合い、あなたのお皿に盛られるのだ。 そんな気分を……一同は味わっていた。 「ヒャーッハー! この合体魔剣じねんじょ・コンビーフは半径一キロメートル以内の人間をすこぶる空腹状態にした上、切りつけた相手の身体をそこはかとなくかゆくさせてしまうそれはそれは恐ろしいアーティファクトなのだぁー! 恐れおののけ一般人どもよぉー! ヒューゥ!」 コンビーフの缶詰をくるくる開けるやつとじねんじょをくっつけたようなアーティファクトを持ったフィクサードは、腰をリズミカルにグラインドしながら住宅街を闊歩するのだった。 ●ま た お ま え ら か ! 「はぁー、最近事件が無くてヒマですねー。え、なに、ニャル? 過去編? 知らないなあ……」 ガリガリ君のソーダ味をもぐもぐしながら扇風機に向かって顔を近づけるアイワ ナビ子(nBNE000228)がいた。 なんか久しぶりにブリーフィングルームで見たなあこいつ。 「なんかー、アレなんですよー」 ナビ子は服の胸元をぱたぱたやりながら説明を始めた。 「夏って食欲なくなるじゃないですか。だからそうめんとか冷や麦とか冷やし中華とか大量に買い込んだんですね。でもなんか一人じゃ食べきれなくって、調理するのも面倒になってきたから流しそうめんにして遊ぼうと思ったんですよ」 なんでもどっかのフィクサードがアーティファクトでわるいことしているらしい。 合体魔剣じねんじょ・コンビーフとかいうモンを使って、人々のお腹をすかせているんだそうだ。 もうこれ深夜とかにくらったらやばいよ。深夜にもかかわらずストックしておいたウィンナーとか食べちゃうもん。体重増えまくっちゃうもん。 「でー、アパートの人たち全員集めてやってみたんだけどこれがもうカオスでカオスで。だってそうめんと一緒にスパゲッティとラーメン流れてくるんだもん。まじうけるー。ガリガリ君うめー」 このようなフィクサードの暴挙を許して置くわけにはいかぬ。 みんな、どうかよろしくたのむ! |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:八重紅友禅 | ||||
■難易度:EASY | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2014年09月09日(火)22:01 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●今からカゲキでアツいバトルシナリオがはーじまるぜィ! 「牙なき人の眠りを、決して騒がせはしないッ! ――斬劇空間!」 「これが今、俺のやるべきことなんだ! ――ソニックキックァッ!」 『神速』司馬 鷲祐(BNE000288)の斬撃と『まごころ宅急便』安西 郷(BNE002360)の蹴撃が、フィクサードへと炸裂した! 大地は揺れ天空はわななき大海は暴れ宇宙がねじれた! この依頼におけるアクションシーンは――以上である! ●カオスカオスっと 川崎セメント通り。いわゆる大人の街。金が沸いては落ちる街。 鷲祐はそんな土地であえて、焼肉屋にいた。 「早くご飯こないかな。焼き肉と言ったら白い飯だろうが」 肉をもぐもぐとしながら、鷲祐は店員をちらりと見る。 だが肉はうまい。 それだけは確実だ。 「まるで俺の体は製鉄所 胃はその溶鉱炉のようだ」 肉の脂とタレの塩味が舌の上でとろけ、喉の奥へと滑り込んでいく。 その感覚に鷲祐は酔いしれていた。 「あービールビール。こういうときには唐揚げにビール、あとおでんよね。コンビニへ駆け込んだらまず目に入るし」 『重金属姫』雲野 杏(BNE000582)は豚印の瓶ビールをグラスに注ぐと、なぜか教会の名前と印が入った紙箱を開いた。唐揚げがひと箱に六個ほど入っている。買ってすぐなのか、まだ湯気がたっていた。 「おいおい、ここで開けるのか?」 「しょうがないでしょ。アンタが焼き肉行くって言うんだから。さましちゃうわけにいかないし、お店の人もお持ち込みいいって言ってるし」 「お持ち込み……そういうのもあるのか」 とはいえ杏もそれなりの常識人である。公園のベンチでビールと唐揚げを広げることはあっても、よその店内でまでそれはやらない。やらないと思う。 「はい今日の極めつけ、おでん」 タッパーを開く。 「まこにゃんから貰った、おでんよ」 杏はギラリと目を光らせた。 人間の七割だか八割だかは水分でできているという。ならば七割が水分のおでんは七割方人間と言っても過言では無い。しかもそこにまこにゃんが小指の先でも触れていようものなら、まこにゃんの延長上にある何かが今ここに開闢されているという見方もできなくもないきがしないでもない。 「お前それ……」 「貰ったその晩に食べ尽くしちゃったけどね、出汁を継ぎ足し継ぎ足し今日までもたせたおでんなのよ。だから、あげないわ。七割のまこにゃんを七割のあたしが継ぎ足して融合したおでん……つまりまこにゃんとアタシの子といって差し支えないおでんなの」 「今からそれを喰おうとしてる事実には触れて大丈夫か?」 杏はそれらを一口ずつ胃袋に納めた。 幸せそうに。 そして残りをAFに納めた。見せるためだけに出したらしい。 「それで、アッチは今どういう状況なのよ」 ●カオスにつぐカオス 『戦姫』戦場ヶ原・ブリュンヒルデ・舞姫(BNE000932)はポージングしていた。 どのようなシチュエーションでもまずとらないような、妙にねじくれたポーズである。俗にこれらをシャフト立ちという。 「欲をもって、欲を制す」 舞姫さんは片目をカッと開くと、ポーズチェンジしながら言った。 「原初の三大欲求がひとつ食欲。これに匹敵する欲とは……そう、性欲です!」 背後で巨大なスクリーンが機動し、赤背景に白文字で『性欲』と表示された。 「それにフィクサードあなたは大変なミスをおかしている。そのミスとは……自分の外見年齢をOPに書いていなかったこと!」 両手を振り込んで叫ぶ。 「つまりこのフィクサードは、ショタだったんですよ!」 「「な、なんだってー!」」 安西郷が、『ナイトオブファンタズマ』蓬莱 惟(BNE003468)が、『どっさいさん』翔 小雷(BNE004728)が同時に身を乗り出した。 背後スクリーンに『姉×ショタ』『ショタ×姉』という文字が幾重にもつらなって右へ左へ流れていく。 舞姫はかゆい身体を捻り、赤い唇から吐息を漏らし、流し目でフィクサードを……いやさショタサードを見た。 「美少年の鎖骨、白肌……ぞくぞくしちゃう」 「ふえぇ、こわいよぉ!」 舞姫の恐ろしき術式によってショタだったことにされたショタサード。彼は魔剣じねんじょコンビーフを振り回しながらじりじりと後じさりした。 キャットウォークで一歩ずつ近づいていく舞姫。 反対側では惟と小雷が両腕を広げて退路を塞いでいる。 「くっ、既に腹が減ってきた……こうなればコンビーフを開ける部分のやつをへし折ってじねんじょだけを食い尽くしてやる」 「まて、それは罠だ」 アーティファクト系の依頼で最初に道具を破壊しようとするという、一種禁じ手に出ようとしていた小雷を、惟は手を翳すことで止めた。武器破壊とアイテムロストのルールが無いからシステム判定上失敗するとかそういうことじゃなくてだ。 「そもそも単体だった魔剣コンビーフと魔剣じねんじょを合体させたことには意味があるはずだ」 「空腹で動けなくなった相手に斬撃をあてるためでは……」 「それなら普通の刃物でいい。本命はむしろ、空腹を意識させることでじねんじょを食べたいと思わせることにあると見た。じねんじょに触れたものは痒くなるという類感呪術……まんまと策にはまるところだったな」 「フッ、さすが魔剣マスター! 目の付け所がシャープだな!」 二人の後ろから、サムズアップした郷が現われた。 「不名誉な称号をつけるな。いや、フレーズはともかく内包する意味が不名誉すぎる」 「お互い、あの頃はキャラがハッキリしてなかったよな……」 「言うな」 同期の芸人とかけだし時代を語るかのようなテンションで接してくる郷である。 「とにかく、そういうことなら俺み任せてもらおうか。つまりアレを食品ではなく剣……いや剣性すら喪わせればいいわけだろう? 策、あるぜ!」 「さすが、女子が関わらない時は冴えている!」 「言うな!」 舞姫がショタサードの周囲を残像作りながらぐるぐる周り、血走った目をしながら(あらゆる意味で)手を出しまくっているなかへ、郷は勇敢にも踏み込んでいった。 両目を左右非対称に見開き、舌を出してショタサードへ指を突きつけた。 「ヘイヘイそこのショタサード! コンビーフ開けるあれって棒やん? じねんじょも棒やん? それでどうやって斬るのおおお!? 実は棒なんじゃねえのおおおおお!? 魔棒? 魔棒なのおおおおおお!?」 「ふえぇ、それいじょうゆーなー!」 「うぎゃあああああああああ!」 ショタサードは魔棒を郷に突っ込んだ。 ショタサードは魔棒を郷に突っ込んだ。 ショタサードは魔棒を郷に突っ込んだ。 ショタサードは魔棒を郷に突っ込んだ。 ショタサードは魔棒を郷に突っ込んだ。 「ほう……」 「それは……」 「なるほど……」 その場に座って観察する舞姫ご一行様。 あっ、忘れてた。 『※このシナリオには過度なおふざけ、下ネタ、パロディ、雑な対応などが含まれます』 いっぽう、そのころ。 「なんと!」 「これは!」 イーリス・イシュター(BNE002051)と『サムライガール』一番合戦 姫乃(BNE002163)は、並んで戦況を見守っていた。 姫乃は愛馬公風ちゃんに跨がって、イーリスはチャリに跨がってである。 カゴの部分に『はいぱーさゃりですごう』と微妙な誤字が書かれているところからして私物である。 「イーリスちゃん、はいぱー馬です号はどうしてでござるですか? あの『うまー』といななく奇っ怪な」 「それは!」 イーリスがお腹に手を触れると、イーリスのおなかが『うまー』と鳴った。 「なんと!?」 「これは!?」 「はい!」 「おお!」 「なのです!」 何この子ら、家族なの? 同じ種族の生き物なの? シンメトリーに構える2ピンが待たれているの? 勝手に納得した姫乃は、公風ちゃんのたてがみをやさしく撫でた。 「リベリスタが力を求めるなら、仕方の無いこと……わらわも力を求めるべきでござるですかね、はむかぜ?」 「!?」 公風(はむかぜ)が姫乃を二度見した。 「大丈夫でござるですよ。そなたをばさしになぞしないでござるです。焼き肉のほうが好きでござるですし」 「!?」 三度見する公風。 姫乃の口角からは、たらりと涎が落ちていた。 ●カオスオブカオス 東京湾アクアラインを挟んで反対側。千葉県長生郡白子町に鷲祐はいた。 白子といえば白子温泉である。 「さ、行こう。温泉へ」 「イヤよ。なんで惚れても掘られてもいない男と旅館にシケこまなきゃいけないのよ。ドン引きだわ」 「『惚れられても』だな? まあ確かに、一理あるか……」 鷲祐は車を降りると、虚空に向けて話しかけた。 「仕方ない。俺たち二人で行くぞ、ベニー」 「ちょっと、誰に話しかけてるの?」 「そうだよなベニー。俺とお前の仲だ、今更だろう」 「ねえ」 「フッ。望むところだ。当然、露天風呂は貸し切りだぞベニー!」 鷲祐は虚空と肩を組みながら、白子のとある温泉旅館へと入っていった。 「……」 杏は暫くそれを見送ってから、自分のお腹に手を当てた。 「ダイエットしよ」 ●カオスフルカオス 「あっぱああああああああああああああああっ、えろはーと!」 舞姫さんが謎のポーズをとった。 「出たー! 舞姫さんのアッパーユアハートやー! 求められてもいないのにプレイングで説得力を持たせるから判定側は成功させないわけにはいかなくなるという恐ろしい性能をもってるんやー!」 無理矢理なエセ関西弁で拳を握る郷。 「美少年の青い性欲に火をつけるわ。うっふーん」 「ふえぇ、こんなのダメだよお!」 すっかりショタにされたショタサードは舞姫に釘付けだ。 折角だから顔を赤くして前屈みになっているということにしておこう。 「その表情、イイ。実にイエスよ! おーっほっほっほ!」 安定して自分のキャラを壊していく舞姫さんである。 一方でじねんじょコンビーフを突き立てられた郷は、白目をむいてびくんびくんしながら叫んだ。 「今だ! 奴が舞姫さんに食いついている間に、トドメをさすんだ! たぶん今なら武器破壊プレイもできるはずだ! 戦闘不能扱いで判定できるから、たぶん!」 「おちつけ郷、思考がメタに呑まれている」 「だがチャンスであることには変わりない。俺の腹パンを見せてやる!」 武器を手に飛び出す惟と小雷。 そんな二人を撥ね飛ばす勢いで、イーリスが突っ込んできた。 「ショタサード、タベルノデス! ニンゲンナンテショセンハチノツマッタカワブクロナノデス! ウゴクユッケニスギナイノデス!」 イーリスは螺旋回転しながら飛びつくと、まずじねんじょを噛み千切り、ショタサードを押し倒し、抵抗しようと振り上げた腕を槍で地面に縫い付け、口でシャツの上着を引きちぎった。 「テイコウシナイデクダサイ、タベニクイデス!」 イーリスはべろりと舌なめずりをすると、あふれる唾液をショタサードのお腹へと垂らした。 肌のうえをとろりと流れ落ちていく。 「イタダキマス!」 「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!」 「うっ……!」 舞姫さんが口を押さえてうずくまった。 さらっと混じった杏が、イーリスたちの光景に目を見開く。 「ショタを……喰ってる……!?」 「はむかぜも食べてみるでござるのです」 たてがみをもぐもぐやる姫乃。 「ぺっぺ! 毛が口に入るでござるのです!」 「ほらそんなの食べたらイーリスみたいになるわよ。からあげあげるから」 「わーいでござるです!」 唐揚げを幸せそうに頬張る姫乃。 白い目をして気絶する郷。 体育座りして様子を見守る惟と小雷。 彼らの頬に、なんかの血しぶきが降りかかった。 ●ファイナルカオス 「昨日も今日も、そして明日も、俺たちが繋いでいくんだ。どんな未来も俺たちの見つめる先にある。そうだろう、ベニー?」 露天風呂で、全裸の鷲祐が虚空に問いかけた。 顔を上げると、星空が輝いている。 流れた星の軌跡に、血まみれイーリスの笑顔が浮かんだ。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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