●岩戸隠れ 『オレサイコー! SU・SA・NO・O・サイコー! あ、馬落しちゃった』 『きゃー! ……ばた』 『ああ、天井を破って振ってきた馬に天女Aが!』 『あんな横暴な弟と一緒にいられるか! 私は岩戸に篭る!』 『アマテラス様ー! 貴方に隠れられるとマジ迷惑なんすけど!』 天岩戸。 スサノオの横暴に嫌気が差したアマテラスが岩戸に篭り、高天原を闇に落とした。そのため大量の禍が発生し、世は混乱に陥ったという。 何とかアマテラスを岩から出そうと八百万の神は相談し、最終的にはアマノウズメが踊り、それが気になって岩を少しあけた時に、アメノタヂカラオが岩を開けてアマテラスを引きずり出したという。 その後『やっぱりスサノオが悪い』『あいつはアカン』ということで、スサノオは髭を切られて高天原から追放されるわけである。 さて、この伝説自体は地上ではなく天の出来事ではあるが、こここそが天岩戸だという場所は日本にいくつもある。その中の一つ、宮崎県にある天岩戸神社。ここは天岩戸を御神体としていた。 それ自体はただの伝承だが、そこに神がいると信じれば力がたまる。誰もが知りうる伝承であるが故に、その力は膨大だ。 パワースポット。 アークは今、崩界回避のために日本各地のパワースポットを求めていた。 ●踊り子さんに手をふれ……まあいいや。 「つまり、そこで儀式を行えばいいのね!」 『突撃鉄球れでぃ』水無瀬 夕子(nBNE000279)はアークのブリーフィングルームで大声を上げた。つい最近まではフリーのリベリスタだったが、紆余曲折あってアークに参入したのだ。 リベリスタとは世界を護るもの。崩界を塞ぐ為の儀式となれば重圧を感じるが、それ以上に使命感が自らを燃え上がらせていた。 「聞けば神社所縁の怨霊が現れて、それと戦い封じることで崩界を遠ざける。どんな試練が待っていようとも、やり遂げて見せるわ!」 そうか、と頷くフォーチュナ。彼は一組の……水着なんだろうと思うものを持ってきた。何ゆえ水着と断定できないかというと、布面積が小さいのだ。BNE倫ギリギリラインで。まだタオルのほうが布が多い。 フォーチュナ曰く。 「天岩戸は力技で押し開けるものではない。宴を施し、神様自ら出てもらわなければならない」 「そうね。そういう伝承よね」 「故に! 誰かがこれを着て踊ってもらわなければならない。任務を拒否するものが多かったが、キミのようなやる気のある人がいてくれて助かったよ!」 「え? ……あの、もしかしてソレを着て踊るの!? そんなのできるはずが――!」 『どんな試練が待っていようとも、やり遂げて見せるわ!』……フォーチュナはレコーダーで録音していた夕子の声を再生する。ぱくぱくと口を開いて、夕子の言葉がとまった。 「伝承によれば『槽伏せて踏み轟こし、神懸かりして……』まぁ、桶の上で裸に近い格好で踊ればOKっぽいので。大丈夫、君ならできる。 あ、一応お祭りにしないといけないのでアークから何人か人を出すから」 「ただの晒し者じゃないの! うわーん!」 フォーチュナの一言に、諦めたように座り込む夕子。 夕子は前途多難のリベリスタ生活に、早くも心折れそうだった。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:どくどく | ||||
■難易度:VERY EASY | ■ イベントシナリオ | |||
■参加人数制限: なし | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2014年09月06日(土)22:58 |
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■メイン参加者 23人■ | |||||
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● 空は抜けるように青く、日は刺す様に暑い。。穏やかな時間が流れる境内は、どこか時が止まったかのようだった。 三郎太は境内を一人歩いていた。ウズメが神楽舞に使ったといわれる御神木の招霊(おがたま)に、古代銀杏と呼ばれる日本でも数箇所しかないといわれる銀杏。それらが風に吹かれて、さあぁと薙がれる。 「夏のうだるような暑さも、この空間では苦では無いですね」 神社という静謐な空間が、三郎太を清涼な心にしていた。 「そういえば九州に来たのは初めてですね。 宮崎といえば……地鶏、マンゴーと美味しい食べ物のイメージですねっ」 そういえばここにくるまでに色々お店がありましたね、と三郎太は思い出す。皆にお土産を買って帰らないと。宅急便のほうがいいかな? 遠くで騒いでいる声がする。祭りの喧騒が大きくなって来たのだ。皆と合流しよう。 ● 「騒ぐ、というよりはこのよき機会にワタシも声楽家として少し歌わせてもらいたいのだがいいかな?」 申し出てきたのはセッツァーだ。日本舞踊の音楽は色々聴いてきた。音感とリズム。そして音の意味。何よりも音楽に対する深い愛情。それにより和の音というべきリズムをセッツァーは奏でる。マイクに乗って響くバリトンの音域。それがベースとなって、踊りが始まる。 さて、天岩戸前の踊りである。 ウズメ役となった夕子は、赤ビキニを着て台替わりの桶の上に立っていた。そしたまぁ、否応なしに体型の出る水着を着ているため、色々と目立つ。具体的にはまっ平らな胸が。 「大丈夫です、ちょっとひんそーでも、それがいい! っていう人もきっといます」 「そんな特殊な趣味な人はノーサンキューよ!」 リンシードの意見に手桶を投げる夕子。回避型ソードミラージュのリンシードは、それをあっさり避ける。 「あー、堂々といけ水無瀬! 周りにおっきい人がいっぱいいるかも知れないけど胸張っていけ! あ、張る胸が無ぶげらッ!?」 「あるわよ!」 ツァインの意見に手桶を投げる夕子。防御型クロスイージスのツァインは、それを避けずに顔面で受け止めた。 「賑やかすっすよお!」 夕子に声をかけるのは夕奈。彼女は大音量用のラジカセや花吹雪を持ってきていた。片付けように掃除用具まで持ってくる念の入れようである。 「夕子さんの晴れ舞台でやんすし、盛り上げに盛り上げて最高の祭りにせえへんとね! ……フヒヒ」 「その笑いは、何?」 「気にしたら負けでやんすよ。それじゃ、ミュージックスタート!」 夕奈がラジカセのスイッチを入れると、やたら扇情的な音楽が流れてくる。夜の蝶などが出てきて服を脱ぎそうな音楽を。 「がんばるっすよー」 ステージをそろえ、動かしやすくする。これもレイザータクトの役割である。自分は踊らないで見てる、とも言うが。 「こ、これも崩界を防ぐ為よ!」 何かを振り切るように踊り始める夕子。照れもあるのか少しぎこちない。 「まだまだダメね! なってないわ! こんな踊りで誰が喜ぶというの!」 そこに糾華の檄が飛ぶ。腰に手を当て、びしっと指を挿す。昨日まで一気読みした演劇マンガを思い出しながら口を開く。 「貧相な体を晒して踊るのに素直にシンプルな水着で良いと考えるのは、浅はかというものよ!」 そして糾華はその隣で踊るリンシードを指差す。白のひらひらつきビキニ型水着である。 「持たざる者が踊りで勝つなら、動きを引き立てる為にも飾り立てることは必須! リンシードを見なさい! 腰に布を、パレオを意識するように巻くだけでも! 長布を腕に絡ませるだけでも! 鳴り物系のアクセサリを付けるだけでもだいぶ違うわ!」 「ねーさま……」 愛するねーさまに褒められて頬が上気するリンシード。糾華は夕子に近づいて肩を叩く。 「出来るはずよ……貴女達なら」 「ハイ、コーチ!」 二人の間に、なんだかよくわからない師弟関係が生まれた。 「またも夕子ちゃんが大変な目に遭っていると聞いて!」 「またもとか言うな!」 手を上げて、持参した桶の上に立つのは明奈。夕子と同じくビキニ姿である。 「夕子ちゃんにだけ辛い思いはさせないぜ! と、言う事でアイドル一番星、白石明奈!一肌脱がせて頂きまっす!」 「明奈……!」 思わぬ友情参戦に涙する夕子。 「とにかく元気いっぱい、情熱的かつ健康的に! 弾ける笑顔! これを心掛ければ、えっちぃなんて言われないのさ」 「分かったわ。照れたら負けなのね!」 明奈の言葉にしたがい踊りだす夕子。 (……まあ、セクシー路線目指してるはずなんだけどね、ワタシ) 踊りながら明奈は思う。イロモノ路線になりつつあるよなぁ。 「確かに恥ずかしがっちゃだめ。皆でやれば恥ずかしくないわ」 カメリアも水着を着て踊りに参加する。夕子の肩を叩き、一緒に踊るわと勇気付ける。 「こんなこともあろうかと『乱痴気騒ぎ』『踊り』で検索したの」 「……フュリエも検索するんだ」 「当然。そしてその結果がこれよ。 突然のポール!」 カメリアが幻想纏いを操作して、二本のポールを呼び出す。車とか入るんだからこれぐらい入るよね。 「まさか……ポールダンス……?」 最近はエクササイズとかにも使われるポールダンスだが、この状況で出たということはそういうことなのだろう。 「……フュリエも世俗にまみれるのねー」 官能的に踊るカメリアを前に、夕子が呟いていた。 「水無瀬さん、一緒に踊りましょう!」 手を上げて踊りに参加したのは輪だ。夕子と同じく赤いビキニを着ている。輪のロリっ子体型でこれをきると、逆に可愛くて似合う。思わず悔しくなってしまう夕子。 「……くっ、なんだかいい比較材料!」 「あれ、困ります? だったらゲンゴロウスーツにチェンジするのも吝かではありませんよ」 「ごめん。それはやめて」 そうですかー、と納得して踊り始める輪。虫大好きな輪は、踊りもやっぱり虫っぽかった。 「オシゴト、オドル」 ルーは皆が踊る様子をずっと見ていた。理由は簡単。 「ルー、オドリカタ、ワカンナイ。ダカラ、ミテオボエル」 そんなわけで、みなの踊りを見て踊り方を学んでいた。ジャンルはてんでバラバラだが、なんとなく分かったらしい。 「ルー、オボエタ」 「ほぶぁあ!?」 言うなりルーは桶の上で踊っている夕子を押しのける。主に胸の弾力差で押しのけられる夕子。 「アオオオオオン!」 一吼えし、踊りだすルー。音楽に合わせて戦うように身体を動かし、逆立ちなどのアクロバティックな動きを加えていく。その動き、まさに獣の如く。 「アタシの踊りが見たいって? HAHAHA! 子供には刺激が強すぎるかもしれないよっ!」 ねじり鉢巻にはっぴを着た富江が桶の上に立つ。音楽をかけて、踊りだす。 「アタシの魂のYOSAKOI! アーーーヨッコイショヨッコイショ、ドッセェェェイ」 よさこい――高知でうまれた祭りで、そこから派生して全国に様々なYOSAKOIがある。語源は『夜にいらっしゃい』が訛ったものだとか。 「ヨッ、ホイサッ! ヨイヤサッ、ソレソレソレッ! ハァァァァァ、ヨイショヨイショ!」 祭囃子にあわせてり図無欲手足を動かしていく富江。声はよく響き、それにあわせて踊りも際立っている。踊りなれているのだろう、動きに躊躇いがなかった。 「リルも負けてられないッス!」 踊り子に衣装に身をまとい、リルが桶の上に立つ。長い薄布のベールをまとい、ふわりと舞う。タンバリンを手に、しゃんしゃんと音を鳴らし舞う。 (この衣装の持ち主のように……。風に舞うように、軽やかに) イメージするのはかつての踊り子の舞い。回転とリズムと、そして手足の動き。一挙一動が人を魅了し、喝采の声がまた自らを沸き立たせる。踊りをささげるのは神々に。だけど、本当に見て欲しい人はただ一人。 神楽でない事に、意味はなかった。ただ美しく踊る。そこに文化の差などあろう物か。和には和の、洋には洋の美しさがある。舞が終わり、動きを止めて静かに息を吐く。その姿さえ美しい。 「お疲れ様でした」 凛子は踊り終えたリルにスポーツドリンクを渡す。それを口にして、リルは凛子に礼を言う。 「ありがとうッス! 見てましたか?」 「ええ、素晴らしかったですよ」 にこりと微笑む凛子。嘘ではない。心からの賞賛だった。 「汗を拭かないと風邪をひきますよ」 凛子はタオルを手にして、リルの体を拭いていく。されるがままに身体を拭かれるリル。 「あの……凛子さん、一緒に踊らないっすか?」 汗を拭き終わったリルから差し出された手。それを手にして凛子は立ち上がる。 「リルさんほど上手ではないですけどね」 リルの手をとりながら、凛子も踊り場に足を向ける。 踊りの盛況は、まだまだ終わりそうもなかった。 ● そんな踊りを見ながら酒を飲む者たちもいる。未成年もいるのでジュースもあるが、踊り側に負けず劣らず野大騒ぎだ。 「皆ー! 樽酒持ってきたぞー!」 新田が三高平商店街から持ってきた清酒を用意する。樽を木槌で叩き、皆に振舞っていく。 「あれ? リシェナは?」 「ああ、『あんたも踊りに参加しろ、このお祭り担当!』とかいいながら水無瀬さんとリンシードに追いかけまわされてた」 「拙者の出番これだけー!」 そんな騒ぎも祭りの一因でしかない。 「ミストですっ。テテロ家の唯一の男子ですっ。うちの姉妹たちがいつもお世話になってますっ!」 「あー、あの」 ミストの自己紹介に、おーと叫ぶリベリスタ。かの家系には色々お世話になった人もいる。 「さってと、食べるよっ! 依頼で食べ放題なんてすごいよねっ!」 その食欲も家系なのか。ミストは用意された食事を食べ始める。火を通した肉の類は勿論、夏の日差しに痛まないように氷を用意した魚介類など様々な種類のものがある。料理は鮮度が命。とにかくどんどん口にする。 「慌てて食うと喉に詰まるぞー」 「大丈夫ですっ。麦茶も要してあります!」 水筒を手ににかっと笑うミストであった。 「料理コンプリート目指すぜ。世界が滅ぶのを防ぐ為だもんな!」 守夜もいいながら料理をガンガン食べていた。空手をやっていることもあり、がっしりとした体格だ。どんどん胃袋に入っていく。 そして食べないものは飲みに回っていた。 (そういえば、こいつらとは何度か飲みに行ってるが酔ってるところ見た記憶がねぇな……。よし、今日は酔ってるところを拝ませて貰おうか) ビールを口にしながら吹雪が笑みを浮かべる。酒宴組を集め、勝負を仕掛けた。 「なぁ、ちょっと飲みくらべでもしてみねぇか? そうだな、せっかくだから罰ゲームもあった方が盛り上がるか、負けた奴はあそこに混ざって踊るってのでどうだ?」 「いいねぇ。やるか」 「なにでやる? ビール?」 「ふざけんな、折角宮崎に来てるんだ。焼酎もってこい!」 「え?」 突然のアルコール度数アップに焦りの声を上げる吹雪であった。やべぇ。 「お前も物好きだな……いいよ、その勝負乗った。つーかそうそう負ける気はしねぇし」 烟夢はビール片手に参戦する。トレードマークのタバコは、今は控えている。とりあえず酒が飲めると聞いてやってきたのだが、まさかこんな流れになろうとは。 「躊躇いなく焼酎にいったか……よし、罰ゲームはやりたくないから佐倉に押しつけよう」 一海が吹雪を生贄にささげる。となると問題はどうやって回避するか……。一海は烟夢を見る。二人は目配せし、吹雪の肩を抱く。 「佐倉、お前全然飲んでねーんじゃねぇの?」 「どんどんいけよ。ほらずずいーっと」 一海と烟夢が結託して吹雪に酒を勧めていく。度数25パーセントの液体が喉に熱い。 「おまえ等……ぐふぅ」 「罰ゲーム楽しみだなー。上半身脱いであの舞台で踊るんだったよな」 「酒のツマミにするからがんばれよ!」 一海と烟夢は倒れた吹雪を見ながら、これで自分達は安全だ……と思っていた。だがそうは問屋がおろさない。 「くっくっく。最下位が倒れちまったらしょうがないよな。次の生贄を決めなくちゃ」 「……何っ……!」 二人を囲む飲兵衛の群れ。酔いつぶれれば、罰ゲームを免除され、次の最下位を決める。つまり、皆がつぶれるまで続くのだ。 「おまえ等もビールばかりで飲んでないだろうが。追加だー!」 「く……!」 そして飲み比べは続く。 「……あっちはあっちで大変ですねー」 リサリサは皆にお酒を注ぎながら、騒ぎから少し離れたところで飲んでいた。神秘で二日酔いは癒せない。なのでリサリサは大量の清涼飲料水を用意し、酔っ払い対策をとった。 リサリサは誰かを守りたくて戦っている。彼女の母は子供たちを守り、力尽きた。その遺志を受け継ぎ、彼女も仲間を守るために戦い続ける。 「そんなことがあったんですね」 なので、リサリサは他人の武勇伝に興味があった。どのような戦いがあり、それを聞くことで自らの経験にしようと。何よりも共に戦う仲間と同じ思いを共有したいと。 「よぉよぉ徹。戦いと酒を楽しんでるか?」 「虎の字か。楽しく飲んでるぜ」 虎鐵は酒を手に徹の側にやってくる。どっこいせ、と隣に腰掛けた。 「偶にはゆっくりと酒をのまねぇと死んじまうからな」 「違いない。ここのところ色々あったからな」 狂気のミラーミスに時空を超えたナイトメアダウン介入。ひと段落着いた時ぐらい体を休めないと罰が当たる。 「今度は徹とも一回ガチで戦いてぇな。なんだかんだ言ってそんなに戦った事ねぇ気がするし……と、いけねぇ。今日は酒を楽しむんだった」 「虎の字からすりゃ、ケンカも酒も同じ楽しみってことだ。ま、今日は飲むとしようか。綺麗な踊り子もいることだし」 「踊り子を見ながらの酒もまた乙なものだな」 虎鐵と徹の杯がかつんとぶつかり、酒を嚥下する。 「やあ、俺にもその酒を分けてくれないか、九条」 拓真が自らの御猪口を手にやってくる。徹に酒を注がれ、口に含む。熱い熱が喉を焼いた。 「友人達に色々と聞いても良かったのだが……今日は九条と少し話をしてみたくてな」 ある程度酒が回ったところで、拓真が語り始める。なんでい、と先を促す徹。 「実は友人が近々誕生日でな……そこで良い酒を探しているんだが、心当たりは無いか。詳しそうだと思ってな」 「そりゃ、その『友達』が自分にとってどういう人間か、によるぜ。 友情を深めたいのなら、肩を組んで一緒に飲める酒を。愛を告げたい相手なら、洒落たワイン辺りか。墓に捧げたいなら高くていい酒だな」 「む、色々あるんだな。ありがとう」 参考になった、礼を言って酒を口にする拓真。 「アニさーん! さぁ呑みましょうぜぇー!」 「おう、どうした? 頭に手桶ぶつけられたような傷跡は?」 ツァインが額から傷を流して酒宴に参加する。 「気にしたら負けですよ。今日は騒ぎますよー!」 ツァイン、歌います。『箱舟の戦士達!』!」 突如BGMがかかり、マイクを持つツァイン。 「握り締めた破界器に、折れぬ心と正義を篭めてー♪」 詳細はあとがきで。 「おおい、水無瀬! こっち来て一緒に踊れー!」 「無茶振りにも程があるわ!」 「おぶぅ!?」 再び飛んできた桶がかこん、と当たった。 「ふぅ……」 水着に着替えた天乃が酒宴のほうに歩いてくる。黒のワンピース水着に身を包んだ天乃は、快の近くにやってきて腰を下ろした。 「天乃、水着持ってきたんだ。踊るのか? 立ち台は一杯だぜ」 「台なら……ここに、ある」 天乃は既に空になった酒樽をひっくり返す。即席の立ち台の出来上がりだ。天乃葉底の上に立ち、快に手を指し伸ばす。 「さあ、踊って……くれる?」 それは天乃のいつもの台詞。戦闘開始の言葉。だが此度の相手はエリューションでもアザーバイドでもない。快という一人の男。 「その樽の上で踊るのか? 俺には無理だぞ? そんなバランス感覚は無いし、酔ってるからな。 だから、お前をここから支える踊りなら、付き合うよ」 快と天乃は二人、樽の上に立つ。狭い足場に二人立てば、自然と身体は密着することになる。女は男の首に手を回し、男は女の腰を抱き。 音楽にあわせて身体を動かす踊りではなく、静かにだけど情熱的な表現を行うのもまた踊り。無音というBGMを受けて、二人は確かに踊っていた。女神は嫉妬するか、あるいは見惚れるか。 「たまには、こういうのも悪く、ない……ね」 「お前は戦いすぎだ。たまに、じゃなく適度に身体を休ませろ」 「それも悪くない――」 囁くように天乃は口を開き、回の唇に重ねる。触れるような、だけど互いの唇を確かに感じる口付け。 「――かも」 一瞬の出来事。そして女は樽から降りる。 「……酔いが醒めたぞ、おい」 一瞬の接触に翻弄され、快はそれを口にするのが精一杯だった。 樽から降りれば、二人はリベリスタに戻る。 だが、樽の上での出来事は、二人に刻まれた事実となる。 日が暮れて、宴が終わる。 東本宮での戦いはうまく行ったらしく、儀式は恙無く終了したという。儀式というよりは羽目を外しただけかもしれないが。 これも世界を守るため。現代の天岩戸神楽により、太陽神は岩から出ずる。明るく世界を照らすだろう。リベリスタがいる限り、世界は守られていく―― 「二次会行くぞー!」 「踊り子も二次会で踊れー!」 「真っ平ゴメンよ!」 ……りべりすたがいるかぎり、せかいはまもられていく、はずである。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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