●その日、雲に隠れた月の下で ぶっ殺す。 という言葉を、少年は一日に何回聞いたことだろう。 「……本当に、いつもそればっかりだったよね」 思い返すと、小さな笑いが込み上げてくる。 「君達はいつもいつも、何かあれば、ぶっ殺す、ぶっ殺すぞって、そればっかり」 少年の呟きが止まらない。 そして、それを止める者もここにはいない。 風が吹いて、辺りの木々がざわめいた。その音を聞いているのは、おそらくは少年だけだろう。この場は、彼が通う学校でも最も人が来ない場所である。 まぁ、そもそも、すでに午前一時を回っているこの時間に、誰かが来るはずもないが。 少年は、風を頬に感じた後に、また作業に戻った。 さっきまであった濡れた感触も、今の風で乾いて、少し張り付くような感じになっている。 「ああ、本当に、耳にこびりついているよ、ぶっ殺す、ぶっ殺す、ってさ」 呟き、繰り返して、少年は掲げた拳を、またソレに振り下ろした。 グジュリ、と、濡れた音がした。顔に飛んできた赤いものを、少年は意にも介さない。 「前に、漫画で読んだよ。何の漫画だったかな、忘れたけど……」 そしてまた、少年が拳を振り下ろす。 額に飛んだ赤いものが、雫となってその頬を滑り落ちた。かすかに香る、鉄の匂い。 「ぶっ殺すって言葉は、相手が生きてるときに使っちゃいけないんだって。ぶっ殺すって言葉は、ぶっ殺した後になら、使っていいんだって」 少年の言葉は、そこまで。後にはもう、彼がソレを殴りつける音だけが響いていた。 殴られ続けるソレは、かつては少年を虐め、クラスで幅を利かせていた不良生徒達の成れの果て。 凄まじい力で殴られ、壊れた人形のように変形して地面に伏した三つの骸を、少年は瞬きすることなく、ただひたすらに殴り続けていた。 金属の塊と化した、その拳で。 「ぶっ殺す、ぶっ殺す、ぶっ殺す、ぶっ殺す、ぶっ殺す、ぶっ殺す、ぶっ殺す、ぶっ殺す――」 ●殺させないし、殺されない 「……逆襲のいじめられっ子」 「いや、分からん」 『リンク・カレイド』真白イヴ(ID:nBNE000001)の、ほぼ全ての説明要素を省いた説明に、集められたリベリスタの一人が律儀にツッコんだ。 「いじめられっ子が、エリューション化した。明日の夜にいじめっ子達の溜まり場に行って逆襲を開始するから、それを止めて欲しいの」 「人型のエリューション……、ノーフェイスか」 イヴがコクリと頷く。 「敵は一人。でも、フェーズは2。それなりに強敵。気を付けて」 「ああ、分かった。で、そいつはどんな能力を使ってくるんだ?」 「単純明快。身体を金属に変える。殴られると痛いし、普通に硬い」 イヴの言葉通り、それは実に単純にして強力な能力であった。 「溜まり場は学校の裏手。そこは、そのまま広い空き地に続いてるから、戦場として使えるはず」 「OK、分かったぜ、イヴ」 頷くリベリスタ達に、イヴも頷き返し、 「いじめられっ子は、力を手にして凶暴になってる。本来の人格は消えてると思っていい。何を言っても聞いてくれないと思う。救うことは出来ないけど、止めることは出来る」 その未来を直に見たイヴの言葉は、確かなのだろう。 ノーフェイスとなった少年は、その行動を聞いた限りでも相手に対する殺意以外の感情を持ち合わせていないように、リベリスタ達には感じられた。 いじめなんて、日常の中にある一幕かもしれないが、しかし、いじめられていた側からすれば、それこそ死活問題だったのだろう。 「敵は強い。気を付けて」 「ああ、分かっているさ」 己の愛用の武器を握り、リベリスタは言った。 「俺達は誰も殺させないし、俺達だって殺されない、さ」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:楽市 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2011年04月18日(月)23:43 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●その日、月が雲に隠れる前に 少年は、そこに一人の男が立っているのを見つけた。 「誰、君?」 空き地の真ん中に、腕を組んで立っているのは『不退転火薬庫』宮部乃宮 火車(BNE001845)。 実に厳しい顔つきで、何も言わずに少年を睨め付けている。 「俺達は、君を止めに来た」 陰の一角から『練達の射手』藤堂・烈火(BNE000385)が姿を現した。 「僕のことを知っているの?」 声に滲む警戒の色。それを明確に感じ取りながら、『終極粉砕/レイジングギア』富永・喜平(BNE000939)が己の姿を闇より浮かび上がらせた。 「君がやろうとしていることは当然の行いだよ。ただ、黙って見過ごせることでもない」 「……君達は、誰?」 次に姿を見せた『悪夢の忘れ物』ランディ・益母(BNE001403)が、すでに展開した己の戦斧を肩に担ぎ、 「そうだな、いじめっ子参上! ってトコだ」 「僕を、いじめるの? なら――殺さなきゃ」 少年が纏っていた警戒の空気が一気に弾け、それは強い殺気となって辺りに放たれた。 肉体の金属化していく。それが、彼が革醒と共に得た異能である。 「そんな力がないと何も抵抗出来ないなんてつまらないヤツだねー」 嘆息と共に言った結城・ハマリエル・虎美(BNE002216)に、少年はその顔を怒りに歪ませた。 「悪いのは、あいつらだ。いつも。いつもいつも……!」 「……弱者がさらなる弱者を虐げる。まるで、昔聞いた鶏の話だな」 益母の小さな呟きを耳にしていた『百獣百魔の王』降魔 刃紅郎(BNE002093)は、怒りに猛る少年に向かって口を開く。 「力を手にしたことでしか牙を剥けぬならば、それは貴様を虐げてきた者の行いと何も変わらぬであろう」 「……変わらない? 僕が? 全然違うよ?」 少年は心底分からないという様子で首を傾げた。 「大体、どうして僕を止めようとするの? 君達は僕とはなんの関係もないだろ?」 「人を殺そうとしている。止める理由なんて、それで充分っすよ」 『悪人』風原 玲(BNE002211)の静かな声に、『ルーンジェイド』言乃葉・遠子(BNE001069)も頷いて、 「あなたがどれほどの気持ちで耐えてきたのか、想像するしかありません。けど……」 「ああああああ、もう!」 遠子の言葉を少年はいきなりの叫声でかき消した。 「邪魔するんでしょ? なら殺す。邪魔するなら殺す。みんなみんな、ぶっ殺す!」 大きく瞳を見開いて、少年はその身を低く構えた。獲物を狙う獣のように、そこに纏う殺気は濃く、遠子は己の言葉が届かぬことを実感した。 「おい、もういいだろう」 火車が、腕組みを解いた。 「……わかりました」 遠子は最後に一度だけ少年を見て目を細めると、 「戦闘内容を確認します。敵エリューション『ノーフェイス』の打倒――」 その口調から感情の色が抜け、戦闘論理者プロアデプトとしての彼女が表に出てくる。 「私達は、貴方を止めます」 「ぶっ潰してやる……!」 火車が、一気呵成に駆け出した。 ●心を冒す力 「爆ぜろやぁ!」 火車の放った掌打が、少年の硬質な身体に重い衝撃を伝えた。 「無駄だよ、僕には力があるんだ」 声から感じ取れる余裕。金属化し、黒ずんだ肌が月の光をかすかに返している。 少年が拳を握った。そこへ、左に回り込んだ烈火がライフルを撃ち放ち、続いて右から虎美がオートマチックを発砲する。 しかし二発の弾丸は、金属の肌に一瞬の火花を散らしただけに留まった。 「ウソ、あたしの射撃が通じない!」 少年は自分を睨み続ける火車に笑いかけ、握り締めた拳を叩き込もうとした。 そこに割り込む一陣の颶風。 「こっちにだって、それを止める力がある!」 玲の蹴撃によって生まれた真空の刃は、少年の身体に衝突して甲高い音を鳴らす。 衝撃に身を仰け反らせた少年は、己の行動を悉く邪魔されて忌々しげに舌を打った。 「また、邪魔したな! だったらそっちからぶっ殺す!」 「ぶっ殺すって言うときは……、ぶっ殺される覚悟を持っときな、クソガキィ!」 駆け出す少年に、玲の脇から益母が戦斧を振り上げカウンターを狙った。 球状の気が闇夜に弾け、轟音、そして少年の身体が数mも吹き飛ばされた。 「どうした、こんなモンじゃねぇだろう? 立てよ!」 火車が怒鳴った。拳に込められた力を、彼はまだまだ吐き出し切れていなかった。 少年は軽く立ち上がり、そして朗らかに笑った。 「アハハハ、それが君達の力? 僕はまだ、こんなにピンピンしてるよ?」 「調子に乗ってんじゃねぇ!」 握る力を炎に変えて、火車の拳が少年の頬を打つ。 壁を殴るよりなお硬い感触。そして拳に伝わる、少年が笑う頬の歪み。 「効かなぁい!」 逆に、少年の拳が火車の頬を叩いた。握られたそれは金属の塊で、ガツンという鈍い音に火車の頭部が揺れた。血が、地面に散る。 「っとぉ。……さすがに、やるな」 仰け反る火車を益母が抱きとめ、少年を見て苦笑した。 「僕は強いんだ。群れなきゃいけないやつらとは違うんだぁ!」 両手を大きく広げ、少年は天を仰ぐ。それは歓喜。手にした力に酔い、心冒された哀れな少年の、余りにも愚かな自己陶酔であった。 「その言葉、確かめさせてもらおうか」 喜平の足下から伸びる影が、質量を得て立ち上がる。 遠子が言った。 「対象の行動分析完了。作戦行動に移行します。喜平さん、虎美さん、ご協力を」 「了解だよ!」 喜平と虎美が、同時に動き出す。そして戦場の空気が、また激しく乱れ始めた。 「無駄だって、言ってるだろう!」 吼える少年を見据え、虎美が狙う一点はその軸足。 「こういうのは、どうかな!」 1$コインをも打ち抜く精密な射撃が、狙った一点に火花を散らした。弾丸に貫かれないとはいえ、衝撃は確かに伝わる。少年は軽くバランスを崩し、虎美に目を剥いた。 「そこっ!」 反対側から、喜平が影の従者を伴ってショットガンのトリガーを弾く。 広い範囲にばら撒かれた散弾をまた軸足に受け、少年の中で苛立ちが膨れ上がる。 「おまえらぁ!」 つい、言葉を荒げる少年だが、しかし彼は最も近くにある脅威から意識を外していた。 「どっち見てやがるんだ、テメェ!」 口から流れる血も拭わず、火車が突っ込んできた。 「う――!」 気付くのが遅れ、余裕が吹き飛んだ。そして顔に怯えの色が走る。 「あああああ!」 振るった拳は火車の顔を弾けさせたが、及び腰過ぎて彼を止めるには到らなかった。 「そんなもんかぁ、オラァ!」 切れた額から血を零しながらも、構うことなく火車は業炎の拳を少年にぶち込んだ。 「こ、の! 僕は強いんだ! あいつらもおまえらも、軽くぶっ殺せるんだぞ!」 怯えた自分を振り切って、怒り狂う少年。 「よかろう」 刃紅郎が動いた。 「どれほど歪であろうとも、貴様の怒りは本物のようだ。……そろそろ我も、貴様の癇癪に付き合ってやろう」 グレートソードを握って歩み出す刃紅郎に、少年はさらに怒りを迸らせる。 「みんな、ぶっ殺してやる!」 ●最期に見つけたもの 結界により隔絶されたこの場所で、戦いの音色は間断なく奏でられ続けていた。 「烈火さん、後方へ。虎美さんは右から、喜平さん、虎美さんの三秒後にお願いします」 「分かった!」 遠子の指示に従って、リベリスタ達が動く。 「OK! 最後の1$シュート、お釣りはいらないわ!」 散る火花と金属音。少年の歪む顔が、彼の足に蓄積したダメージを語っていた。 「おっと、まだ終わらせはしないぞ!」 遠子の指示通り、三秒きっかり数えた喜平が飛び込んだ。 少年が殴りつけようとした喜平の姿は掻き消え、それが幻影だと分かった瞬間に、本物の喜平の一撃が少年の足に決まっていた。 「うあああああ! いい加減にしろぉ!」 「無様なものよ」 大雑把な足取りで歩み寄った刃紅郎が、大上段から刃を振り下ろした。 少年は腕で一撃を受け止めるも、かかる重圧と勢いは殺せずに後退する。 「まだ倒れるんじゃねぇぞ、オラァ!」 そこへ、火車の炎の拳がさらに追い打ちをかけた。 「倒れる、か……、こんな……!」 殴られた箇所を赤熱させながらも、少年はまだ耐える。戦い方など知らぬ素人でありながら、その粘りは驚異的とも言えた。 「その頑張りは、認めたいんだけどな!」 玲が本心を告げながら、しかし放った業炎の拳は、少年を容赦なく地面に転がした。 「どう、して……」 地面に生えていた草が、金属の肌に残った熱で焼けて焦げた。焦げ臭い。しかし地面は冷たく、少年の身体と心と休息に冷やしていく。 「どうして、通してくれないんだよ。ただ、仕返しがしたいだけなのに……」 力無く立ち上がる少年は、泣きそうな顔をしていた。 「……そんな力なんかに頼らなくても、小さな抵抗くらいは出来たんじゃないの?」 諭すような虎美の言葉が、沈んでいた少年の顔に再び怒りの火を灯させた。 「力のあるやつが、知った風なこと言うなよォ!」 血を吐くような叫びだった。 だからこそ、玲は言わずにはいられなかった。 「俺だって、いじめられてた。今だって強いワケじゃない」 「嘘だ! 強いじゃないか。そ、その強い力で、僕を、殺すんだろう!」 少年は声を上ずらせ、玲を指差した。 「ああ。どうあってもおまえを虐げた奴を殺すというのなら、俺がおまえを殺す!」 「そうさ。気に入らねぇ。いじめる奴も、いじめられる奴も! 何より、手にした力で逆襲するなんて考える奴が、一番気に入らねぇ!」 玲が言葉に決意を宿し、火車もまた額の血を拭って少年を睨む。 「あ……、うぁ……」 少年が一歩後ずさった。彼は震え出し、その顔を青ざめさせる。 力を手にして得た自信は、所詮安い自信でしかなかった。自分と対等以上の力と出逢って、こうも容易く崩れ去ってしまったのだから。 だが、リベリスタ達は少年の心情までは考慮しない。これは、戦いなのだ。 「今はチャンスだと、そう思わせてもらう!」 益母の戦斧が重い唸りを上げる。幾度となく繰り出されたメガクラッシュの中でも、それは最後にして最高と呼べる一撃となった。 「ぐぅっ!」 なんとか受け止めようとする少年だが、その一撃たるや、堅固を誇るはずの彼の身を以てすら心細く思えるほどの威力があった。 「そう、これは戦だ。弱者は敗れる以外に道はない」 吹き飛ばされた先、少年の背中が当たったのは刃紅郎の胸だった。彼は獅子のまなこで少年を見下ろし、掲げたグレートソードを躊躇いなく振り抜く。 ガギンッ、と、これまでにない鈍い破砕音が鳴り響き、少年の右腕が飛んだ。 「あ……!」 そして轟く、少年の絶叫。 ――ダメだ、やっぱり、僕は弱いんだ、僕は、僕は……! 体内まで金属化しているため、血が噴き出すことはなかったが、痛みまでは消えず、死ぬほどの激痛の中で、少年の心は今まさに折れようとしていた。 「どうした……、気張れよ!」 少年に向かって叫んだのは、喜平だった。 「もうおまえはただの負け犬じゃないだろう。言ってみれば、力も目的も得た、『ヤル側』の人間だ。何も不可能じゃないだろう? ……見せ付けてくれよ! 俺達や世界に、おまえっていう存在を!」 何を言うのか、と思う者は、誰一人いなかった。 喜平の叫びも夜の空気に溶けて、静まり返る空き地。皆の視線が少年へと注がれる。 「…………う」 少年が、ゆっくり立ち上がった。 「うう……」 ユラリと、その身体を揺らめかせ、彼は呟く。 「ああ、もしかして……」 思い至る可能性。今まで、考えも及ばなかった馬鹿なこと。 「頑張ってるのかな、今の僕」 そして彼は、吼えた。 「うおおおおあああああああああああああ!」 なりふり構わぬ突撃を仕掛けてくる少年に、虎美は苦しげな顔をして言った。 「どうして、もっと早くから頑張れなかったの……!」 遠子が揺るがぬ瞳で状況を分析、少年に対する行動を弾き出す。 「目標を拘束します。射撃による牽制から波状攻撃をお願いします」 「オーライ!」 虎美と喜平が少年の足を狙う。もはや精密射撃はできないが、それももう、必要ない。 ありったけの弾丸が、少年の足下に降り注いだ。 火花が散り、そこに少年の決死の形相が照らし出される。 「殺す、殺す、ぶっ殺す!」 「テメーがそう言うから、だから俺はテメーをぶっ殺す!」 少年の身体と、益母の戦斧が真正面からぶつかり合った。衝撃、余波で風が起こる。 優ったのは、少年。益母が堪えきれずに数歩後退した。 しかし少年も勢いを殺され、その身体が浮き上がる。 「トラップネスト――発動」 遠子が張り巡らせた気糸の罠が、少年の手足に巻き付いてその動きを完全に封じた。 そこへ、玲と火車とが突っ込んでいく。 「こいつが俺達の――」 「ありったけだぁ!」 がら空きになった少年の胸に、二つの業炎が叩き込まれて、 「……あぁ」 空を見上げた少年の口から呟きが漏れる。 その肌からは硬い質感が失せて、少年の身体が人のものに戻ると共に、彼は血を吐いた。 「僕は、やっと……」 そこで言葉は途切れる。 瞳から光が消え、彼は戒めから解かれて地に伏した。 その身体は、もう二度と動くことはない。少年の命は尽きたのだ。 「敵エリューションの撃破を確認。……ミッションコンプリート」 一切の揺らぎ無く戦い抜いた遠子の表情に、感情の色が戻った。 と、同時に、その目から溢れる涙。 「こんな形でしか助けることが出来なくて、ごめんなさい……」 すすり泣く彼女の肩を、虎美がポンと叩いた。 こうして、戦いは終わった。 ●アフターケア 午前一時過ぎ、不良共に降りかかった運命は、平穏なものではなかった。 「な、なんだよテメェら!」 いきなり現れた益母と刃紅郎にボコされて、不良は泣きそうになっていた。 「なーに、二次災害防止のためのアフターケアだ。お仕事なんでな。たっぷり教育してやるぜ」 「フン、『弱い者いじめ』か。どんなものかと試してみれば、別段面白くもなんともない」 迫る暴力。怯える不良。 「ひ、ひぃ……、ひぃやぁぁ!」 学校の外で、聞こえてくる悲鳴に火車が吐き捨てた。 「ザマァねぇな」 彼はさっさと歩き出す。もう、こんな所に用はない。 「あの人のご遺体は、どうなるのでしょうか……?」 「アークに処理を頼んでおいたから、もうどこかに運ばれたんじゃないかな」 遠子の問いに虎美が答える。それを聞いて、玲がはたと気付いた。 「じゃあ、墓の場所は分からない、か……。いや、墓参り、ね。やっぱつくづく偽善者だなー、俺」 いつか、少年の墓参りに行こうかなと考えていた玲は、そう自分で完結して歩き出した。烈火もそれに続き、リベリスタ達はそれぞれ帰路に就く。 その道中、喜平は考えた。 戦いの中で、あの少年は最後まで駆け抜けられたのだろうか。 駆け抜けられたのだと、喜平は思いたかった。 だから、そう思うことにした。そこに何の意味もないとしても。 そう思うことにした。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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