●まどろみを邪魔するもの 目の前に立ちはだかるのは血に飢えた化け物達だった。 獰猛な牙を剥き出しにした野獣の群れ。人の匂いと気配を嗅ぎつけて大きな屋敷の中へと入りこもうとしていた。建物の塀を突き破って化け物が雄叫びを上げる。 敷地の中で昼寝をしていた者がいた。名前は、ハイディ・グ・ロゲ。女性とも男性とも付かない中性的な顔立ちにシルクハットを被った紳士だ。 何か尋常ではない予感に襲われて庭の裏手に回る。するとそこには、今にも塀を突き破って乗り越えようとしてくる異形の化け物達がいた。 紳士はすぐに武器を手にとった。この館にこれ以上、侵入させる訳にはいかない。 「この化け物! よくも昼寝を邪魔した怨みを果たしてやる」 怒りを露わにして突入した。すぐに激しい戦闘が繰り広げられる。 紳士は舌打ちした。敵の数が多くて一つ一つの個体の持久力が高い。おまけに奴らは回復手を豊富に持っており持久戦では勝負にならなかった。 次第に紳士は押され始めた。もう駄目だと思って、紳士は他に助けを呼ぶ。ちょうどその時、前の路に通りかかった二人のリベリスタがいた。 ボサボサ髪に無精髭で着流しを纒った男と長い銀髪をポニーテイルに結んだ女。 絢藤仙と志賀倉ちるかという名コンビのリベリスタだ。 ちょうど別件の依頼の帰り際に叫び声を聞いて通りかかったところだった。早速駆け付けると中で孤軍奮闘していた紳士が化け物に喰われそうになっている。 「どうするの? 敵の数は自分達よりも多いわ」 ちるかは相棒に話しかけた。対して仙は目をギラつかせて言った。 「俺達コンビの名を世に轟かす絶好のチャンスだ。いくぞ、ちるか!」 仙は言うが否や真っ直ぐに敵陣の中へ突っ込んでいく。目の前で殺されようとしている自分たちと同じ仲間をこのまま見殺しにはできない。 それにこの怪物を倒せば、世に名を広めることもできるだろう。 仙とちるかは互いに信頼しあっていた。絶対に負ける訳にはいかない。 これまで乗り越えてきたように、今回も無事に救ってみせる。 二人の息の合った足音が――邪悪な化け物目がけて突き進んでいく。 信頼と絆の果てに得られる勝利を信じて。 ●過去への干渉 「皆も知って入ると思うけど、『1999年』の世界へ行って当時のリベリスタ共に『R-type』の影響を受けてしまった『赤の子』達を破壊してきてほしい」 『Bell Liberty』伊藤 蘭子(nBNE000271)がブリーフィングルームに集まったリベリスタに向かって手短に用件を切り出した。 先日からアークは三高平市内に生じた次元の穴から『1999年の日本と見られる世界』に干渉を続けていた。当初、『1999年の日本』と『2014年の日本』とはどれ程の関連があるかどうか確信はなかった。しかし、リベリスタ の過去世界での活動により、この二つの世界が密接な連続性を持つ可能性が高いという結論に到った。 二つの世界が強い関係性を持つ以上、過去世界で起きるナイトメア・ダウンはそこに繋がる現代に強い影響を与える可能性が高いと思われる。 「もちろん、リスクは承知の上よ。けれど、もしかしたら貴方達の活躍で運命の約束した悲痛な歴史にパラドクスを起こせるかもしれないわ。それができるとすれば、今やアークにいるリベリスタの貴方達しかいない。それでは幸運を祈ってるわ」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:凸一 | ||||
■難易度:HARD | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2014年08月28日(木)22:46 |
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■メイン参加者 7人■ | |||||
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●轟きの雪白華撃団 「雪白華撃団の名を轟かせろっ!!」 腕を真上に突き出して胸を威勢よく張りながら『ツンデレフュリエ』セレスティア・ナウシズ(BNE004651)が叫んだ。応援団長の突然の掛け声に一瞬誰もが固まる。 「なんじゃ、それは……?」 思わず部外者の『狂乱姫』紅涙・真珠郎(BNE004921)が困惑気味に問い返す。 「ふふふふ、雪白の桐さんが作った私設ハーレムリベリスタ組織です――」 セレスティアが不気味な笑みで頼みもしない解説を始めた。あまりに長すぎて(奥が深すぎて)訊いた真珠郎は後悔し始めた。 後ろで何食わぬ顔で当の本人である『History of a New HAREM』雪白 桐(BNE000185)が無関係を装って口を閉ざしている。 表面上は涼しげだが、人知れず背中に冷や汗を掻いていた。いくら正体を隠すとはいえ、この名前を出すのはちょっと……と思わずにはいられない。 「ナイトメアダウンといえば15年前ですよね? 私、15歳ぐらい若返ったりしないでしょうか」 傍らで全く関係ないことを心配しているのは神谷 小鶴(BNE004625)だ。すでに雪白華撃団のメンバーはそれぞれ違うことばかり考えて足並みがそろっていない。だが、心配することはなかった。それがいつものことだからである。 「どんな経緯で『赤の子』になったかは知りませんが、たとえ過去であろうと、エリューションは討つのみ、です。私はそのために生きると、決めましたから」 水無瀬・佳恋(BNE003740)は拳を握り締めて固い決意を込めた。他のメンバーとは裏腹に真剣な表情で敵が群がる屋敷を見据えている。 「色々と面倒そうな相手ではありますが、フュリエとして、R-typeを放置はできませんし、ね。微力ながらお手伝いさせていただきます」 可愛らしいウェーブの長髪を掻きあげながらカトレア・ブルーリー(BNE004990)も佳恋の決意に答えて見せた。こちらでの経験は未熟だったが、それでも実力は申し分なかった。 「リベリスタ、セレン・フライエル。――行きます」 実践は今回が殆ど初となるセレン・フライエル(BNE005060)がやや緊張気味に宣言する。状況は厳しいがやってやれないことはないと信じていた。 すでに屋敷の周りにはピンクポイズン達が包囲していた。中で襲われている屋敷の住人と救助に入ったリベリスタ達がすでに激しい戦闘を繰り広げていた。 敵の方が多く、このままでは三人ともいつ倒れてもおかしくなかった。セレンは先に戦っているリベリスタ達を救助すべくいち早く門の前へと急いだ。 ●戦いの邪魔をする者 「貴様ら何者だ? 我らの戦いの邪魔をするとは容赦はせぬぞ」 女剣士の姿をしたセイバーが新たにやってきたリベリスタ達を見て怒鳴る。大きく鋭く尖った大剣を真っすぐに突き付けて厳しい視線で睨みつけてきた。 「まずは何ぞ素敵な破界器か技の一つもよこせ。話はそれからじゃ。とはいえ。まぁ、通りがったのも何かの縁じゃろ。死んでも恨むなよ。面倒じゃから」 威風堂々と現れた真珠郎が受けて立つと言わんばかりに返答する。咥えタバコを投げ捨てて一気に鞘から太刀を抜きとるとそのまま門に向って突進した。 「そう簡単にここを通れると思うなよ」 セイバーがそう言い放ったとたん、激しいマシンガンの弾丸が飛んできた。入口に展開した戦車がここを通すまいと真珠郎達に機関銃をぶっ放してくる。これでは迂闊に近づけないと一旦、真珠郎は後ろへと下がる。あまりの激しさに佳恋は前に出て後ろの仲間に銃弾がいかないようにカバーに入った。だが、その隙に敵のピンクの野獣も動く。 縦横無尽に動きながらピンクの野獣は鞭を放ってきた。 真珠郎が突っ込む隙を作るために桐がマンボウク君の刃を振り回す。重心を低くして高速で刀を回転させると圧倒的な剣圧で周りの邪魔なピンクの野獣を攻撃する。 「マグメイガスが後衛で守られる存在とは、限りませんからね」 セレンも戦車のマシンガンを食い止めるべく抑えにかかる。上手く大砲の射線上から離れて的を絞らせるように動き回る。あたりで激しい爆発が起こった。次第に砲弾を意地でも当てようと戦車は狙いをセレン一人に集中させ始めた。 桐はその隙に横から入口の中へと侵入した。 続いて真珠郎がセイバーの元へ太刀を抜いて突っ込む。 桐達が中にはいりやすいように小鶴達の援護弾が次々に放たれていく。 やられてはなるまいとピンクの野獣も逃げながら陣形を乱す。その瞬間を狙って、小鶴が前に躍り出ると敵に向かって両手を翳した。 「腐女子の先輩方程ではありませんが、私もそれなりに”これ”は使えるようになりましたから!!」 その瞬間、目映い光が両手から放出される。 辺りを飲み込むように小鶴のマレウスがピンクの野獣達を襲った。さらに畳み込むようにして、セレスティアが火炎弾を叩きつける。 ピンクの野獣たちは雄たけびを上げながら崩れ落ちた。辛うじて逃げ出した残りの敵がなりふり構わず横から小鶴とカトレアの方に襲いかかってくる。 大きな牙を向けながら二人に噛みつこうとした時だった。 「そうはさせません、二人のことは自分の身に代えてでも守り抜いてみせます!」 佳恋が両手を広げて小鶴とカトレアの前に立ちはだかっていた。噛みついてくる大きな牙を必死に食い止め続ける。あまりの強さに押されそうになるが、それでも佳恋は足の裏に力を込めてそれ以上は仲間へ敵を向かわせない。 「同志神谷、雪白さんたちの被害を減らすためにもここは全力で敵を圧倒するわよ。その方が雪白さんを弄る余裕が生まれるというもの!!」 セレスティアが仲間の危機に火力をさらに上げた。佳恋に襲いかかっているピンクの野獣を容赦なくその顔面に向けて火炎弾を叩きこんでいく。すると叫び声を上げながら敵は佳恋の体から離されて塀に激突した。 だが、依然として戦車のマシンガンは威力を轟かせていた。銃弾に撃たれて徐々に体力を消耗していくセレンやセレスティア達のためにすかさずカトレアが回復を施す。そのすぐ後に、セレンが何とか戦車を相手取ろうと真っすぐに突っ込んで魔曲を奏でた。 黒い血液の幾筋もの鎖の束が戦車の上から襲いかかってからめ取る。軋んで歪みを見せる戦車に追い打ちをかけるようにセレスティアと小鶴が協力して魔力を叩きつけた。 その瞬間、縦横無尽に動き回っていた戦車が大きな爆発を起こして炎上した。 ●まっすぐ、ぶった切る 「ハイディさん、ここは任せてカトレアさんの所まで下がって」 「かたじけない、あとは頼んだ」 桐は中で奮闘するリベリスタのロゲを見つけるとすぐに指示を出す。すでに体力を消耗していたロゲは素直にうなずいた。絢藤仙たちを守るために、いったん下がってカトレアの所まで回復を守りに行く。鎧で固めたランガードが標的を桐に変えて襲いかかる。 「まっすぐ行ってぶった切る、が私の形ですから、正面からやりあいましょうか」 桐は短いスカートをはためかせて跳躍するとランガードの鉄拳を避けた。空中で回転した桐は一気に敵の背後に回り込んで背中から思いっきりランガードを叩き斬る。 後ろを突かれたランガードは鎧を切られた。だが、そのまますぐに振り向きざまに剣を振るうとカウンターの一撃を桐の鳩尾に叩き込む。桐は呻きながら絶えた。 このまま押し戻されるわけにはいかないと歯を食いしばって耐えしのぐ。お返しとばかり敵の手が離れた所を見計らってマンボウ君で敵の体を押し返した。 刃をまともに受けたランガードは鎧がすでにぼろぼろになっていた。だが、ランガードはまだ致命傷を負っていない。至近距離に近づいた桐に向かってここぞとばかりにマシンガンの雨を降らせる。さすがに桐もこれにはなすすべがなく倒れこんでしまう。 不意にカトレアが桐の危機に再び回復の魔法を放った。巨大な魔力の籠を受けた桐はその力に後押しされるように敵の懐に飛び込んで刀を横になぎ払った。 「これで終わりにして見せます!」 桐はわざと敵の綻んだ鎧の隙間を狙った。弱い装甲部分を切られたランガードは真っ二つに裂かれてついに地面に突っ込んで果てた。 「どこを見ている? お前の相手はこの我だ」 セイバーが大声を上げながら大上段に剣を構えて振り下ろしてきた。すぐさま身を翻して太刀を抜いて真珠郎がセイバーの剣を受けて立つ。だが、あまりの力強さに一瞬、押し戻されて真珠郎は塀の壁に叩きつけられた。 煙と砂塵が巻き起こってセイバーはその隙に物陰に隠れてしまう。どこから襲ってくるかわからず起き上った真珠郎もうかつに動くことができない。その時、何とか敵の居場所をあぶり出すために佳恋がインパクトボールを叩きつけた。瞬く間に辺りの雑草がなぎ払われて隠れていたセイバーの居場所が手に取るようにわかった。 ピンクポイズンを倒したセレスティアと小鶴も加勢して敵のいる場所に思いっきり魔力の塊を叩きつける。ついにセイバーが隠れ家から背中を見せて立ちあがった。 「そこか! くらえ!」 真珠郎は大きく跳躍すると背中を向けたセイバーの後ろから激しく突き刺した。背中をやられたセイバーは激しくもがきながらそれでも必死の抵抗で急所を外す。 間一髪で命は取り留めたもののセイバーは大きな損傷を受けていた。だが、まだ戦えるだけの力は残っている。再び剣を握ると敵の心を読もうとしてきた。 その瞬間、後にいたカトレアがジャミングでセイバーを妨害した。得意の先読みを封じられたセイバーはもうなすすべがなくそのまま突っ込むしかない。 最後は力と力の勝負だった。真珠郎は臆することもなく大きく跳躍した。 空中で真珠郎とセイバーが互いに太刀と剣を振り被った。 互いの体めがけて一閃が放たれる。すさまじい集中力に研ぎ澄まされた刃の軌跡。 両者の足が地面に着地したのは同時だった。 その瞬間、セイバーの体から血が天に向かって噴き出した。 「ばかな、貴様……我よりも早く強く刀を振るうだと……」 振り向きざまにそう言い残すとセイバーはついにあおむけに倒れて果てた。 ●将来の名売りの機会 「ありがとうございます、この度が助かりました」 襲われた屋敷の主であるロゲが丁寧にリベリスタ達にお礼を述べた。先に救助しに来ていた仙とちるかかも一緒になって感謝の意を伝える。 「御無事でよかったです」 傷口の世話をしていたカトレアも皆が元気になってほっと一息ついた。そばでは初陣だったセレンもようやく緊張が解けて笑顔が戻る。 屋敷の塀や建物は激しい戦闘で崩れてしまっていた。だが、リベリスタがいち早く救助に訪れたおかげでロゲを含めて三人とも死なずに済んだ。 せっかく助かったが、ロゲたちはあまり顔色が良くなかった。それもそのはず、屋敷が壊れて無念だったのだ。彼は屋敷を守ろうとして結局守れなかった。 「死んだら、それまでじゃぞ。屋敷は生きてりゃ、また作れる。名なんぞ生きてりゃ売る機会はあるもんじゃ。残るちゅーなら止める理由もないがの」 見かねた真珠郎がロゲたちに向かって口を開いた。生きていればまたいつでも再開できる。だからくよくよするなとぶっきらぼうにはげました。 それを聞いてロゲもようやく頷いた。 必ずまた建て直して見せると――。その時はまたこの場所に是非とも寄ってくださいとロゲは吹っ切れたように最後にはようやく笑顔を見せた。 「もし、あなた達が来てくれなければ、あのまま傷を負って死ぬところでした」 仙も丁寧に頭を下げながら何度も握手を求めてきた。それに答えて桐もその華奢で色白の細い手を差し出す。心なしか仙の顔に赤味が増していた。 それもそのはず見た目は超絶美少女の桐と握手できて仙はうれしかったのだ。だが、桐の本当の性別を知ったら彼は一体どう思うのだろうとセレンは思わずにいられない。 「そういえば、あなた様の名前は確か――」 傍でそれまで話を聞いていたちるかが最後に名前を聞いて置こうと訪ねた。 「我ら、雪白華撃団です!! 走れ~、高速の~雪白華撃団をどうぞよろしく!!」 セレスティアと小鶴が同時に叫んだ。息の合ったぴったりのハモリが響き渡る。それを聞いた仙とちるかは絶対に覚えておくと言い残して立ち去って行った。 「なに、過去の世界でステマしてるんですか、セレスティアさん、小鶴さん?」 「や~んだって、桐ちゃんの可愛さは世界一だもんっ♪」 「そうそう、あたしたちだけで独占するのはもったいないよ。あわよくばこの時期から名を轟かせて有名にしちゃえば将来は団員が殺到して、巨大な桐さんハーレムが完成……ムフフッフフフフ……」 ため息交じりに呟いた桐の言葉を無視するかのように、小鶴とセレスティアはまだ雪白華撃団のテーマソングをいつまでも口ずさんでいた。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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