●1999年8月13日 静岡県東部で発生した大規模フォールダウン。 これによって現れたミラーミスを倒すべく、リベリスタ達は集う。夏の暑い1日、しかも気温が最も高い時間帯。リベリスタ達の額からは汗がとめどなく流れ出る。 「それでは、いきましょう」 駆けつけたのは、5人のリベリスタ。その先頭に立つのは40前後の女性。凛としながらもそれでいて、女性らしさは少しも失われていない。彼女の名前は天月・蓮華(あまつき・れんか)といった。親譲りの白く、そして長い髪が特徴的である。 蓮華はフォールダウンが起こるという話を聞き、小規模ながらに活動を行っていた『月軌の組』のメンバー達と共に、この地までやってきていた。 5人いるリベリスタの中には、飛鳥・一(あすか・はじめ)の姿がある。彼は蓮華の依頼でこのチームを加勢すべく、ついてきてくれたのだ。 「ふふ、及ばずどころではない。俺がいるのだ。大船に乗ったつもりでいろ」 「さすがは一さん。頼りにさせていただきます」 微笑ましいやりとりを行うメンバー達も、敵が出現すれば皆真剣な表情で構えをとる。どうやら、敵の本陣ではないようだが……。 その場に現れたのは、ゆらりと剥き出しにした筋肉を動かす『赤の子』。人型と獣型のものとが共に行動を行う。この世界において害を成すに違いないその存在を排除すべく、リベリスタ達は迎撃を行うのであった。 ●破滅の前にある希望 ナイトメア・ダウン。言わずと知れた大厄災。それが起こったのは、1999年の8月13日。『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)の口から最初に出たのは、その日付だった。 「皆にはその日に飛んでほしい」 過去へと繋がるリンク・チャンネル。アークはこの世界へと干渉を続けていた。リベリスタの過去世界での活動と斜堂・影継(ID:BNE000955)提案の調査の進行により、アークはこの二つの世界は極めて密接な連続性を持つ可能性が高いという結論を得るに到ったのだ。 この世界が我々の世界と密接な関係を持つ以上、過去世界で起こるであろうナイトメア・ダウンもまた、我々の世界に強い影響を及ぼすはずだというのが、アークの見解だ。 「多くのミラーミスと戦って勝利を勝ち取ってきた皆なら、『R-type』だって相手をできると、私は信じたい」 イヴだって、決して危険な地に見知ったリベリスタを送りたいわけではない。しかしながら、悲痛なる歴史にパラドクスを起こしうるこの絶好の機会を逃すわけにもいかない。 ナイトメア・ダウンで散ったリベリスタに敬意を払い、その再来を防ぐ為に設立されたアークは、『1999年のリベリスタ』と共に『R-type』を倒すという結論を出すに至る。 「アークとしても、多少のリスクは覚悟の上の作戦。命運がかかる可能性すらもある」 何年も前から三高平の地下で眠っていた『切り札』が今回投入されるというが、果たして……。 リベリスタの、そして、アークの運命を決定づけたナイトメア・ダウンへの参戦。これが、どういう結果を引き起こすことになるのか。 「無茶はしないで。……必ず、戻ってきて」 イヴは手にするうさぎを強く抱きしめる。皆が無事に帰って来られるようにと、切に願いながら。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:なちゅい | ||||
■難易度:HARD | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2014年08月26日(火)22:44 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●過去への介入 陽射しのきつい、暑い夏の一日。 「今日は長く暑い夏の一日になりそうだな」 スーツに、頭まですっぽりと大きな三角帽。『足らずの』晦 烏(BNE002858)はその中でじっとりと汗をかく。 「ここがNDが起きた時代の……お祖父様の最期の地か」 この地に、そして時間軸に興味を抱いていたのは、『谷間が本体』シルフィア・イアリティッケ・カレード(BNE001082)だ。まさか自身がND、ナイトメア・ダウンに立ち会うことができるとはと感慨に浸る。 「歴史への介入……神秘の探求者としては、コレほど興味を惹く事象は無いわね」 「過去が改変されたら、今の俺はどうなるのかね」 歴史に手を入れたなら。どうあっても過去は改変できないのか、それとも、運命とは、確約されたものなのか。『縞パンマイスター竜』結城”Dragon”竜一(BNE000210)はあれやこれやと考えを巡らす。 「過去の世界で私に出来る事って何かしら……」 『そらせん』ソラ・ヴァイスハイト(BNE000329)も、この時代において何ができるかと思案していたが、すぐに考えるのを止めた。 「深く考えずいつも通りやるのが一番よね、きっと」 そういう難しいことを考えるのはあまり得意ではないからと、ソラは思ったのだ。 (……アークの介入でNDを打倒し……もし、お祖父様達の被害が無ければ……いや、たられば等無意味か) シルフィアも思案を巡らすが、結局、それは意味がないことと割り切ってしまう。 一方で、竜一の頭では。 (俺の行動で過去を改変できたとしよう。ならそれは、『運命』よりも、俺の方が強いってことだろ!) そんな考えに至った彼は思いっきり飛びあがる。 「運命を打ち砕く男! いいね!」 皆の視線が集まるのを気にせず、竜一は叫ぶ。 「そうなら、未来の展望も、明るいってもんだ! 俺がより良い未来を作れるって事だもんな!」 ドヤ顔で叫ぶ竜一。仲間達はそんな彼を一瞥。そして、放置。 「……色々と気になる状況ではありますが」 『局地戦支援用狐巫女型ドジっ娘』神谷 小夜(BNE001462)がぼそりと口を開く。 「とりあえず、リベリスタが居るのであれば助けたいですし、エリューションは討たねばなりません、と……」 ここでミラーミスを倒し、リベリスタを助けることが、未来を作り出す為の行為となりうるのかどうか。烏は煙草の煙を燻らせる。 「ともあれ、良い結果を齎すべく最善を尽くしますかね」 烏は敵の不意打ちを警戒し、集音装置を使って周囲の物音を聞き逃すまいと集中する。 さて、リベリスタ達の目の前に広がる草むら。一行が到着したとき、すでにそこでは剣戟の音が響いていた。 「始まってるようね」 『いつか迎える夢の後先』骨牌・亜婆羅(BNE004996)は草むらの中で、筋肉を露出させたような化け物、赤の子の姿を垣間見た。 「ミラーミスの影響による変異体ねェ。間違いなく強い。いい相手だ、楽しくなってきやがった」 その強さを肌で感じた、『悪漢無頼』城山 銀次(BNE004850)からは思わず笑みが浮かぶ。 『フリーギダカエルム』明神 涼乃(BNE003347)も草むらへと目をやる。そこにあったのは、先の依頼でも会えた師の姿だ。 (私の住む世界のあの日、私は師匠と同じ戦場に立つことは出来なかった) ナイトメア・ダウンの日。涼乃はこの場にはいなかった。だから。 「今こうして共に戦えることは……僥倖なのだろうな、きっと」 誰ともなく呟いた彼女は、敵を倒すべく、師を救うべく、草むらの中へと突入していった。 ●業火の中落とされる火蓋 草むらに響く剣戟の音。 『月軌の組』のメンバー達は獣型を、長である天月・蓮華が女型を、そして、飛鳥・一が男型と交戦を行う。互いに攻撃を繰り出すが、高い草に視界を阻まれてかなりの攻撃が空を切っている。現状はやや膠着状態といったところ。 そんな中、真っ先に飛び出したのはソラだ。 「赤の子ね……見た目は最悪ね」 彼女は草むらへ飛び込み、己の背の高さと同じくらいの高さの草をかき分けて敵の姿を確認した。筋肉が剥き出しとなった赤々とした姿が草の向こうでもわかる。……が、いまいち敵の姿の判別が難しい。彼女はひとまずその場へと待機する。 「人の背丈程度の草、火種も残さず一瞬で燃やし尽くしてあげる」 その間に亜婆羅が火を灯した矢を番え、魔弓を引く。彼女を中心に放たれる数多くの矢は放物線を描き、草むらに引火した。燃え広がる火で一部のリベリスタと赤の子が炎に包まれ、ダメージを負ったようだ。 「神秘の炎を舐めないでよね」 火が燃え広がるのと同時に広がっていた草むらがなくなってしまい、互いの姿がこれで露わになる。 「横槍失礼、けれどこの戦いはあたし達全員のものよ」 男型の姿が確認できたソラはそいつを抑えるべく肉薄し、一へと声をかけた。 それに合わせて残るのメンバーも駆け出し、布陣していく。 シルフィアは少しだけ宙に浮いて敵を見下ろす。その醜悪な姿に、彼女は嫌悪感をむき出しにした。 「変異体……R-typeの手土産か……元は唯の……チッ!」 戦いに入り、高圧的な口調で呟くシルフィア。後衛に立つ彼女は自身の魔力を高め、活性化させる。 同じく後衛の小夜は、前衛と並ばないように立つ。 (特に感電が鬱陶しい獣型が危険ですからね) 迫る獣型を視界に捉え、彼女は翼の加護をこの時代のリベリスタを含めた味方全員へと与えていく。 烏は銃を構え、連続で撃ち抜いていた。手前側にいた獣型へとその銃弾は命中する。 「それじゃあ赤の子よ、俺の糧になって貰おうかい」 銀次が敵へと挑発を行うと、1体の獣がいきり立って銀次へと走ってきた。 一方、竜一は女型の前へと立つ。相手をしていた蓮華が驚きの声を上げる。 「あなた達……」 「可能な限り、こいつの事は俺が抑える。そっちの獣タイプのやつをとっとと倒してくれ。遠吠えで増援を呼ぶらしいからね」 変異体と化した女性は理性を持たないのか、もはや人の言葉を語らない。ただ、呻き声を上げ、竜一へと手を振り上げて平手打ちを行う。 味方を巻き込まぬよう配慮しつつ、彼は刀を振り回して烈風を生む。その風で女型を体を叩きつけていく。 新しく現れた人々に、この時代のリベリスタ達は困惑する。 「師匠」 「涼乃か。いいタイミングだ」 にいっと笑う一。圧倒的な力を敵から感じていた彼は、頼もしい援軍に笑みを浮かべずにはいられない。この2人が会話を始めたことで、『月軌の組』構成員達も味方かと感じたようだが、まだこちらに気を許していない様子だ。 「安心しろ。連中には俺が説明しよう」 「頼みます。問題ないようでしたら、獣型の抑えを」 一は男型をソラに任せ、自身の仲間へと話に出向くのである。 ●燃え尽きる草の上で メンバー達が火力を獣型へと集中する間、ソラは男型の抑えに入る。 「貴方の相手はこの私、凍てつく氷刃で切り刻んであげる」 燃えた草に燻る火の中、ソラはギロリと視線を向けた男型を狙う。彼女は限界まで加速し、斬撃を繰り出して氷刃の霧を作り出す。霧は男型を包み込み、その体を刻むことで血飛沫が飛ぶ。 男が吠えようと息を吸い込む間にも、加速するソラはさらに体を翻して、右手を突き出す。 「範囲攻撃行くわよ、ちゃんと避けてちょうだいね!」 仲間達へと呼びかけた彼女は手のひらに光を集中させた。そこから走りだす閃光が敵全体へと広がり、赤の子の体を焼く。 雷に焼き払われた女型の行動は素早い。彼女は伸びる髪の毛を竜一へと絡ませる。完全に縛り付けられるのだけは何とか避けられたようだ。 竜一が再度、烈風を巻き起こす。荒れ狂う風は女性の髪を確かに切り落とすが、強力な力をもつ赤の子達はすぐさま髪を伸ばしてきた。 伸びる髪を身の丈ほどの槍を振るって切り払う蓮華へ、一が声をかける。 「蓮華、ここは奴らに任せろ」 「……悪いけれど」 蓮華は戸惑いを見せながらも、巨大な槍を烈風と共に女型へと突き出す。 「私は皆を護るという信念まで、曲げたくないのよ」 あくまで彼女は竜一との共闘を望むようだ。一は説得を諦め、逸早く獣型の殲滅を図ることにした。 響き渡る男型の咆哮。獣型はそれに力を得て、勢いづく。亜婆羅が焼き払い、焼け焦げた草むらを駆けるオオカミ達へ、烏、銀次、『月軌の組』のメンバーが立ち塞がる。 「盾にしてるようで申し訳ないけど、頼らせてもらうわよ」 この時代のリベリスタの影になるように立つ亜婆羅。時折伸びてくる女型の髪の毛をそれでやり過ごす。 「射線が開けてないと当たらない複数射撃と、見えれば当たる全体射撃の差を教えてあげる」 矢を数本取り出して魔弓を引く彼女は、獣の姿を捉えた。 「骨禍珂珂禍!」 叫びと共に、草むらを焼いた火矢を獣達へと放つ。矢に貫かれて怯む獣型。そいつらへと『月軌の組』メンバーが攻撃を仕掛ける。 烏はメンバーのことを気にかけながらも、目の前の敵に集中すると、奇怪な声をあげる獣型に押し倒されてしまう。隙のできる烏だが、他の敵もまた仲間達へと抑えつけられていた。 (攻撃の距離は0。狙いも付ける必要も無いってもんだ) 撃鉄を瞬時に起こす彼は、銃口を獣型へと直接突きつける。 「倍返しに零距離射撃で、頭でも吹き飛ばしてやろうとしますかね」 次の瞬間に起こる轟音。獣型は高い声で悲鳴を上げた。それでも、この世界の生物でなくなったそいつはその程度では死ねず、烏へと食らいつく。 「先ずは余裕のある内に手のかかる技で削り倒しておくか……」 独り言ちるシルフィアはそのまま、長く続く詠唱を始め……言葉が力を呼び起こす。 「……La puissance de feu de la justice !(火力は正義!)」 彼女の叫びに応え、獣達へと降り注ぐ鉄槌の星。その威力は獣を潰してしまうほどだ。 それでも、獣型は起き上がり、潰れかけた体を動かして食らいつく。食らいつかれた銀次はにやりと口元を吊り上げる。 「やられりゃあやり返すさ、俺の牙は痛ェぞ? 急造のバケモノに耐えられるかい?」 前衛に群がる獣達へと銀次から黒いオーラが伸びる。オーラは八又に別れた蛇のように獣達へと迫り、その体躯を薙ぎ倒す。 起き上がる獣の前には、影人が悠然と立つ。涼乃が味方を護るべく、作り上げていたのだ。 (作れるだけ作ろう) 小夜を護るためにと、影人に指示を出す涼乃。彼女はさらに影人を作り上げようとする。 その小夜は、自身の魔力を高めた上で、敵陣へと目をやる。すでに前線のメンバーが傷つていることを確認した彼女は、『全ての救い』と呼ばれる魔術を顕現させた。 「崩界から守れればそれでいい、という人も居るでしょうけど」 それはそれで1つの価値観だ。神秘は常識の埒外だから、逆に常識側に踏み込むべきではないという考えに基づく。 小夜が呟く間にも、大魔術は全てを救わんと赤の子から受けた傷を癒す。一や蓮華と団員の傷をも回復させた。 「でも私は、自分自身や家族も含めて、皆を守るのがリベリスタだと思うので」 小夜の杖は、力は、全てを護る為に振るわれる。 ●燻る火が消える頃 焼け野原で繰り広げられる応酬。 激戦の中、先に地を這ったのは赤の子だった。烏が零距離射撃で撃ち抜いた獣が倒れたのである。 彼が周囲へと視線を走らせると、『月軌の組』メンバーが苦戦しているのが分かった。 「まだ本命が残っている。ここで無理する事はない」 とりわけ、マグメイガスの女性の傷は深刻だ。メンバー達は烏の言葉に従い、已む無く一度後退を行う。 その穴を埋めるように、小夜が前に出る。涼乃が呼び出した数体の影人も一緒だ。獣にのしかかられた影人がすぐにその姿を消してしまうが、壁としての役割を十分に果たしていた。 「俺を殺してみろ犬っころ。相手をしてやる、かかって来いやァ!」 さらに、銀次が敵へ向けて叫びかけると、獣は体を真っ赤に光らせて怒り狂い、銀次のいる方向へと駆け抜けていく。雷のように走り抜ける獣型の攻撃は、後方にいたシルフィアにまで及ぶ。 ただ、残る敵は挑発を意にも介さず空に向けて吠える。すると、草むらの向こうから新たな獣が2体走り寄る。もちろん、そいつには皮がなく筋肉が剥き出しとなった獣だ。 このまま放置すれば、獣達は仲間を呼び続ける。戦いを長引かせるとこちらが不利になると、亜婆羅は感じていた。 「この戦い、被害は出したくないのよ。その為にあたし達は『過去に進んだ』のだから」 炎の矢が戦場を飛ぶ。寸分違わずに獣2体の頭を射抜き、そいつ達は黒い絨毯と化した地面へと倒れていく。 さらに、走り抜けるシルフィアの雷が獣1体を焼き払い、一が業火で持って殴りつけた一撃が別の1体を屠る。 メンバー達は全力で獣を叩く。戦いはリベリスタ勢が押し始めていた。 息つく蓮華は、現れたリベリスタ達の腕に目を見張る。 (驚いたわ。これほどの腕を持つ者がいたなんて) 隣で戦う竜一とて、自身以上の腕を持つことを感じていた。 「だから言ったろ。引けと」 「……そうね」 一の言葉を、蓮華が今度は受け入れる。彼女はまず、獣の殲滅をと移動していく。 それまで共闘していた竜一は、ダメージが分散していたことで楽をできていたようだ。伸びる髪は面倒だが、彼女の歌が獣の精神を落ち着かせる間、竜一は渾身の一撃を敵へと食らわせる。荒ぶる烈風が、女型の動きを止めてしまった。 「悪いが大人しくしていてもらうぜ、お前の髪の毛は厄介に過ぎる」 ちらりと獣を見やる竜一。そちらは仲間の手で、ほぼ片が付きそうになっていた。 一方で苦戦を強いられていたのは、ソラだ。かなりのダメージを男型に与えてはいたが、抑えとして孤軍奮闘する彼女のダメージは大きい。小夜が『全ての救い』を約束する力でソラの体力を回復させるが。それだけでは足りない。 迫る男型の豪腕。仲間からの回復も間に合わず、ソラはついに地面へと伏してしまう……いや、倒れない。彼女は落ちかけた意識を運命の力で食い止めた。驚きを見せた男型へ、ソラは氷刃の霧で次々に斬りかかる。 「続けてもう一発、次はこの雷でぜーんぶ纏めて相手してあげる」 更なる一撃。彼女の雷が敵全員を焼け焦がすと、遠くで獣がさらに倒れる姿を目にしたのだった。 ●熱さの後に実感する暑さ 草の焼け跡の上には赤の子の遺体が転がる。すでに獣型全てが倒れていた。 残る男女の赤の子へ、リベリスタ達は肩で息をしながらも、己の最大の攻撃を叩き込んでいた。小夜は幾度目かの『全ての救い』で仲間を、リベリスタの体力を癒す。彼女の力があればこそ、膝をつかずに済んだメンバーも多い。 すでにEPの尽きかけた涼乃は、獣との応戦で傷つく師の元へと駆け寄る。 「……師匠、私にも貴方を支えさせてください」 「何だ、今更」 豪快に笑う一の姿に、涼乃は思う。 (師匠、私はまだ貴方には遠く及ばないと思っていた) 久々に目にする師の顔をまじまじと見つめる彼女から、一は思わず視線を逸らす。 (しかし、目指す先が違ったんですね。私は私のやり方で仲間を支えられるよう強くなる) 涼乃は戦いの中で、新たな決意を胸に秘めていた。 さて、女型は目の前の敵へと踵を振り落とす。しかし、それは涼乃の影人。その姿がはじけ飛んだだけだ。 着地した女型の胸を、亜婆羅の火矢が射抜く。後方から、『月軌の組』メンバーも攻撃を繰り出した。 それによって嗚咽を吐いたところに、烏の放つ弾丸がさらに女型の体を撃ち抜く。心の臓を2度も穿たれた女型は嬌声と共に倒れ去る。 伴侶の死に、さすがの男型も狼狽えた。ソラが全身全霊で抑えていた男型。その傷は決して浅くはない。 シルフィアは低空飛行しながら、改めて敵を見据える。人間だったはずのミラーミスの姿に、同情を覚えてしまうが。彼女は舌打ちして、手のひらから雷を走らせる。 しかし、男型の戦意は衰えていない。彼の目からは光が走り、シルフィアがそれに体を、羽を射抜かれて宙から落下してしまう。 落ちゆく中、彼女は運命にすがりつく。 「……冗談じゃない」 地面に付く間際、彼女は再び羽を動かすシルフィアは猛然と動く敵に狙いを定めた。 繰り返されるリベリスタ達の攻撃にも、男型は怯まない。さらに、力の限り地面を蹴った男型は、竜一の体を蹴りあげる。さらに、連撃とばかりにもう一発蹴りを食らわせた。地面をもんどりうつ彼だったが、その体に光が差す。 「危ない危ない。大丈夫、安心してちゃんと癒してあげるわ」 ソラが彼のピンチを察し、高位なる存在の息吹を与えたのだ。 その間に、銀次が全身から出した黒いオーラが男型の体を縛り上げる。ほぼ動くことのできない敵へ、竜一がゆっくりと歩み寄った。 「さて。俺も大人しくしているのもここまでにしよう。こっからは本気で行くぜ。竜の咢。お前に耐えられるかな?」 彼の体から噴き出す湯気。それが彼のリミッターが外れたことを物語っていた。猛然の繰り出される、自身の限界を超えた竜一の一撃。喉を大きく裂かれた男型からは叫び声すら上がらない。地面を紅に染め上げて、そいつは地面へと崩れ去ったのだった。 敵を倒したことを確認したリベリスタ達は立つことすら叶わず、草むらに腰を下ろし、あるいは横になる。 その体から、ぼとりと落ちる汗。戦闘での熱さから解放されたリベリスタ達は、再び夏の暑さを実感するのである――。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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