●それはひと夏の思い出。 涼しげなせせらぎ、木漏れ日と溢れんばかりのマイナスイオン。 真夏日のちょっとした休暇と『SW01・Eagle Eye』紳護・S・アテニャン(nBNE000246)が自然溢れる中でのキャンプをリベリスタ達へプレゼントしたのだ。 といっても、この場所を準備したのは、彼が属する偵察部隊の最年長、OwlEではあるが。 (「……相変わらず色々と手が回るな」) 当の本人は涼しげな格好でアウトドアチェアにゆったりと腰掛け、団扇を片手にビールを楽しんでいた。 流れがかなり緩やかな川辺と緑溢れる自然、参加したリベリスタ達もそれぞれ好きに遊びまわり、楽しんでいるのが見える。 そう、ここまではなんら変わりない普通のアウトドアであった。 ●本番 日が傾き始めた頃、リベリスタ達はキャンプエリアへと集まっていた。 そもそも夜のスケジュールだけ『特別イベント』としか書かれておらず、一切の謎に包まれている。 ふと思い出すものもいるかもしれないが、何故か食料は準備するから持ってこないでほしいという案内があったのだ。 道具類は必要なものがあれば持ってくるようにという、勘がいい者なら妙だと思ったかもしれない。 「全員集合したようだな、では早速今日のディナーについて説明したいと思う」 拡声器を通し、紳護の声が響く。 ざわついていたリベリスタの視線が自ずと紳護へと向けられる。 「俺がいる偵察部隊のちょっとしたレクリエーションとして行っていたらしい事をやろうと思う。サバイバルディナーと呼ばれているそうだ」 サバイバル、いきなり物騒に聞こえそうな単語に再び騒がしくなってきた。 紳護は何かの指示を出すと、仲間達がリベリスタに何かを配り始める。 中に入っているのは白米とカレールー、そして地図が1枚だ。 「では説明に移りたいと思う。簡単に言えば、各々材料を集め、好きに夕食を摂ってもらうだけだ。材料は川辺、森、洞窟の3つのエリアにある。川辺には魚が結構いる、好きに取ってくれて構わない。次に森、ここには野菜の名前が書かれたプラスチックタグが隠されている。自然に溶け込む様に隠してあるから注意深く探してくれ。最後に洞窟、岩の下や間といったところに肉類の名前が書かれたプラスチックタグが隠されている、結構重たいから気をつけてくれ。ちなみに果物は野菜と同じく森にプラスチックタグがある」 つまり魚は川で獲り、それ以外の食材は各エリアで対応したタグが必要ということだ。 更に説明は続く。 「ここのキャンプ場エリア以外でのタグや食材の入手方法は自由だ、地道に探すもよし、手に入れた誰かのを奪うのもよしだ。但し怪我をさせる気はない、戦闘スキルの使用は禁止、武器がいるならそこにおいてあるものを使ってくれ」 分かりやすいように彼の仲間が誘導棒の振る。赤い光に導かれ視線を向ければ、スポンジで出来た近接武器があった。 同じくスポンジの弾や矢じりを放つ遠距離武器など、種類は豊富にある。 「さて、タグだが……一応人数分足りそうなぐらいは準備した。但し、全部見つかればの話だ。つまり……誰かは米に溶かしたルーを掛けて食べてもらう事になる」 紳護は表情一つ変えずに言うが、実は嘘。 流石に休暇にそれは可愛そうなので、少し余裕を持って準備したが、緊張感がないと面白くはないので敢えて焦りを生む発言をしたのだ。 「誰かとチームを組むのもいいし、一人でやるのもいいが、どちらにも長所短所はある。ヒントを言うなら各タグから手に入る材料は一人分だ」 チームを組めば効率はいいが必要な材料は増える。一人なら非効率だが材料の数は抑えられる。 色々と考えるところが増えてきたが、まだあるらしい。 「それと、手に入れたタグは他の者と交換をしてもいい。但し譲渡は不可とする」 それなりの夕食を得るには楽はできない。 紳護は腕時計を確かめ、それから再びは顔を上げた。 「スタートは10分後とする、各自準備を頼む」 淡々と進む準備案内に、リベリスタ達から生まれるの焦りか興奮か。 どちらにしても10分後には、タグの争奪戦が始まるだろう。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:常陸岐路 | ||||
■難易度:VERY EASY | ■ イベントシナリオ | |||
■参加人数制限: なし | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2014年08月29日(金)22:09 |
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■メイン参加者 17人■ | |||||
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●洞窟 「さて……食材を手に入れねぇとだな」 開始の合図と共に『元・剣林』鬼蔭 虎鐵(BNE000034)がつぶやく。 まずは肉と野菜、それから魚へと取り掛かろうと頭の中で整理していき……。 「さて、何処から探したものか」 『誠の双剣』新城・拓真(BNE000644)がつぶやき、生涯のパートナーたる 『現の月』風宮 悠月(BNE001450)へ振り返る。 「時間制限からして、全部集めるのは難しいというところでしょうか……」 争奪戦となる可能性がある、そしてタグも多くとって交換に回すか、他のリベリスタのために控えるべきか。 「となると、洞窟を重点に置いてタグを探すか」 拓真の言葉に頷くと、二人は洞窟へと急ぐ。 時を同じくして、虎徹も洞窟へと向かっていた。 洞窟に到着すると、虎徹は獣の特性たる嗅覚と視覚を頼りにタグを探し始めた。 岩壁の隙間や、動かせそうな岩の下など、自然に交じる人の香りと痕跡を求めて彷徨う。 勿論、探しまわるのは彼だけではない。 例えば、カレーには何より肉が大切だという提案をした『デイアフタートゥモロー』新田・快(BNE000439)と、サバイバル訓練のよしみで手を組んだ『ネメシスの熾火』高原 恵梨香(BNE000234)の二人だ。 ライトと千里眼のレーダーでタグを探し回りながらも、互いの視覚を埋め合い、隙のない構えである。 その二人の後にこそっと続くように移動する、『黒渦』サタナチア・ベテルエル(BNE004325)の姿も見える。 二人の隙のない動きとを能力でトレースしようというところだ。 (「私としてはカレー作りに成功しても失敗しても天国ね!」) 「……どうせ家のカレーも具がほぼ無くて似たようなものだし」 思わず小声で呟く、世知辛さにほんのりと虚しさが通り過ぎた。 森の方が慣れているが、肉のほうが大切。フィアキィの手も借りながら探しまわる。 「ほら、シシラトカ。離れるんじゃないわよ」 その声に気付き、恵梨香が振り返れば、二人の動きは固まった。 恵梨香の手には既にタグが1つ、しかしそれをみて行動を取らないサタナチアへすっと岩肌に出来た亀裂を指さす。 「あそこにタグがあるから」 タグの在処を指し示す彼女にサタナチアが目をぱちくりとさせた。 「皆に食料が行き渡る様にってことでね、俺達は1つ手に入れてるからどうぞ」 快のタグを勧める笑みに、彼女も笑みで頷いた。 『鏡操り人形』リンシード・フラックス(BNE002684)は静かに闇の中を進む。 襲われた時のためにと非殺傷の武器があったが、それに手を伸ばさなかったのは。戦いをしないという意思表示だろう。 暗闇をも見通す瞳が高めの天井に貼り付けられたタグを見つければ、軽く辺りを見渡す。 足場になりそうな岩を確かめれば、小さく跳躍。 タンタンとリズミカルに飛び上がれば、張り付いたタグを天井から引剥がし、一つ目ゲットだ。 あと2つ、交換を考え多めの確保に動く。 「よし……次だ」 虎徹はここでのタグ集めを終えると、次の目的地へと向かった。 ●森 虎徹が森へと到着すると、先客の姿が見える。 「むむっ、なんか美味しそうな色がっ!」 元気の森の中を駆けまわるシーヴ・ビルト(BNE004713)が何かを見つけたようだ。 その先には木、そこにタグが隠されている――と、思われたのだが。 「ちょっと分けて貰って良いですか?」 万象と通ずる力を経て木へ話しかけると、許可をもらったのかピョンと跳ねて葉に隠れた果実をもぎ取る。 黄褐色のそれは、自然のままに育ったヤマナシだろう。 早速ひと齧りし、甘みに頬を緩ませると更にいくつか材料として回収していく。 「こっちのも熟れてるみたいっ!」 傍に集まった 『ホリゾン・ブルーの光』綿谷 光介(BNE003658)と、『蜜蜂卿』メリッサ・グランツェ(BNE004834)へ梨を押し付けるように渡すと、再び別の果実へと走っていった。 「では私はタグと何か香草になりそうなものも探索しますね」 光介の籠へ梨を収めると、太い枝の上へ飛び乗り、上から見下ろしつつ探索を始めていく。 「ふふ、後ろから見てるとなんだか対照的ですね」 果実を求めて無邪気に走るシーヴと、一つ一つ確かめるように飛び移りながらタグと香草を探すメリッサ。 メリッサがタグを見つけると、駆け寄ったシーヴは自分のことのようにはしゃいでいる。 仲睦まじい姿にほのぼのとしていたいが、頼ってばかりは良くないと光介もタグ探しに加わるのであった。 「いくぞ、いっちー!」 『縞パンマイスター竜』結城 ”Dragon” 竜一(BNE000210)がその腕に誰かを……言葉通り乗せていた。 「まっかせろー!」 元気いっぱいに返事を返すのは 『腐敗の王』羽柴 壱也(BNE002639)である。 ブンッ! と鈍くも鋭い風切音、オーバースローで投げ飛ばされた壱也は、木々の間をライナー弾道で突き抜け、瞬間に見つけるタグをもぎ取っていく。 (「川辺では失敗したが今度こそ!」) 煩悩満載の魚捕獲作戦は、本題は成功したが、副題は失敗に終わる。 川遊びをする彼女の透けて見えるだろう柔肌を堪能しようとしたのだが……。 しっかり水着を着こまれていた。 派手な着地音が聞こえれば、そちらへと駆け寄る竜一。 壱也はふくれっ面で彼を見上げる。 「木の枝の傷とか虫刺されとかいっぱいできたんですけど!」 細かな擦り傷と、虫に噛まれた跡が両腕や首筋と、赤い線と点を描く。 しかし、これだと竜一の瞳は怪しく輝いた。 「虫刺されはツバつけときゃ治るので」 「ってうわああああ舐めるなー!!」 遠慮なく舐めようとする彼の頭を鷲掴みし、ぐいぐい押しのける。 今度はそっちが木の上にいけと、命じる壱也だが、竜一はめげない。 「虫刺されはツバつけときゃ治るから」 「舐めるわけないでしょ!」 「順調だな」 獣の住処たる森は、虎徹にとっては庭のようなものだ。 周りの喧騒にブレる事無くタグを集め終えると、魚を求めて川辺へと向かう。 ●川辺 騒がしかった森と打って変わり、こちらは閑静に川のせせらぎが涼しさを感じさせた。 「さぁて……次の獲物は何処にいるやら」 水着姿の『蒼き炎』葛木 猛(BNE002455)が膝下まで川に入り、清流を覗きこむ。 釣り竿はなく、ともすれば素手で捕まえるか弾き飛ばして川辺に上げるかだ。 苦戦しながらも、岸辺に造られた、小さな溜池には2匹の魚が泳いでいる。 彼と一緒に 『柳燕』リセリア・フォルン(BNE002511)も素足で川へ入り、前かがみになって川魚捕獲に参じる。 川底に沈む丸くなった岩、その底と曲面の影の間に僅かに揺れる姿を確かめれば、リセリアの白い腕が静かに迫る。 水面を波立たせぬ様に、水の流れに違和感を感じさせぬようにと迫る掌が寸前まで迫った瞬間。 獲物が逃げるより早く、掌が魚を捕らえた。 「3匹目……あと1匹ぐらいにしましょうか?」 取り過ぎても食べきれないしと、リセリアがゆるやかに首を傾け、猛へ問いかける。 「ま、余っちまったら交換の材料にでもすりゃ良いし、損はないだろ」 カレーと魚のみも悪くないが、他に交換ができれば少し豪勢に出来る。 「ちょっと余裕めに捕って、他のタグと交換を試みてみますか」 頷くリセリアは再び、川へと向かい合う。どうなるだろうかなんて、不確定要素にほんのり胸を躍らせながら。 こちらも魚を素手で捕まえようと、『どっさいさん』翔 小雷(BNE004728)が鋭い直感で魚の位置を探り、岩から岩へと飛び移る。 「ここだな」 何かが動く気配がする。前方の岩下に魚の気配を感じ取ると、抱えていた大岩を振りかぶっていく。 全身を使って投げ込まれた岩が、けたたましく水面を破る。 それと共に衝撃に意識を失った魚が浮かび上がれば、流される前に素早く回収。 「さて、後は交換用だな」 最低限の確実性をとるなら、一点集中が安定する。 そして魚ならタグとは違い、数の縛りは受けないはず。 ここで交換用の魚も入手すれば、美味しい夕食が期待できそうだ。 「あとは……」 彼の視線の先には、のんびりと釣りに興じる二人の姿があった。 少しだけ時間が遡る。 『破壊者』ランディ・益母(BNE001403)と、『囀ることり』喜多川・旭(BNE004015)の二人が川辺にたどり着くと、まずは道具の準備に取り掛かった。 「あの、わたし虫さんとかね、だめだから ね……?」 落ち着きのない様子の原因に、ランディの記憶が蘇る。 「ええと、旭は虫が苦手だったな……」 ならば生餌は難しい。丁度、そこで川辺に小さな赤い姿を見つけた。 「最近は生餌じゃなくて――こういう作り物のルアーなんかもあるから旭にはこっちのがいいか」 それは金魚の様に赤いルアー。 つまみ上げたそれは、運良く針も金具も壊れていない。 「……ぁ、そなの? ルアーっていうので釣れるんだ!」 丸っこくて可愛らしいルアーに目を輝かせる旭。 可愛いと微笑む姿に、自然と彼の表情も緩んだ。 こうして、よくしなる枝とテグスと、ルアーで釣り竿一式を拵えて今に至る。 ランディの膝の上に座り、旭は鼻歌交じりに釣り糸を垂らす。 穏やかな雰囲気と、無邪気な旭の仕草を眺め、彼が口を開く。 「んー…今更ヘンなことを言う気がするが」 なぁに? と少しのけぞる様にして彼の顔をみやる旭と視線が重なった。 「俺は、旭とこうやってのんびり過ごす時間が好きだぞ……」 「うん。わたしもランディさんがぎゅってしてくれるのも、一緒にのんびりするのもだいすきだよ?」 確かめる言葉は、旭にとってはとても当たり前で、柔らかく微笑む。 「な、なんかスマン」 「あはっ、どしたの? へんなランディさん」 クスっと微笑む姿に、ランディに照れくささと暖かな気持ちが交じり合う。 川辺は暖かく静かな空気が流れていた。 ●色々と実食っ! 甘い空気を壊さぬように、少し離れた川辺で愛刀を使って魚を水面から弾きだして捕獲した虎徹が一番に調理場へとたどり着いた。 「あとは最高のカレーを作るだけだな」 元フィクサードで極道だった彼の見た目は、無愛想な雰囲気も重なり、失礼かもしれないが強面に見えるだろう。 その見た目に反して、料理は上手い。 川魚を手際よく裁き、鱗を剥がす姿は黒尽くめでなければ板前を思わせるだろう。 魚をさばき終える頃には、他のリベリスタ達も戦果を手に次々に戻ってきた。 (「収穫なしの人がいなくて良かったわ」) こうして炊事場に戻ってみれば、恵梨香の心配は杞憂に終わった。 洞窟で誰からも攻撃を受けなかったこともあり、もしかしたらと思っていたことは的中だったらしい。 誰も奪うことがない、ルール上許されても仲間と争うことは誰もが避けたのだ。 アーク全体の勝利の為にと案じたのは、彼女だけではない。 しかし、洞窟に頭部に岩を落とされたような血痕があったのは何だったのだろうか。 考えこむ恵梨香の前を頭部に包帯を巻かれた竜一が、壱也に引っ張られ通り過ぎて行く。 そんな中、仕上げにと、快は残りの豚肉をフライパンへと放り込のに気づく。 「一緒に煮こまないんですか?」 「あぁ。カレーの肉は、一緒に煮込む以外にもこういう方法もあるんだぜ?」 ささっと炒めた豚肉を、盛りつけの時にトッピングとしてくわえる。 旨味がカレーに吸い込まれない分、パサパサにならないのだ。 いい香りが立ち込める中、こちらからもいい香りが登る。 光介とメリッサが作るフルーツカレーからだ。 料理が苦手なメリッサに、光介が丁寧にその技術を伝えながら料理は進み、カレーを煮込む。 「それは?」 「クローブです、少量加えて、味をつないでみるとおいしいかなって」 香りは味覚に直結する大事な部分、メリッサはなるほどと記憶していく。 そんな中、一角で地獄の騒ぎが発生するとは知る由もなかった。 「……缶詰って、これはそれぞれの交換品とは別ですか」 「あぁ、ちょっとした遊び心らしい」 紳護から缶詰の説明を受ける悠月は、思案顔で缶詰の詰まった袋を覗きこむ。 ラベルはない、オリーブドラブに塗りつぶされた側面と、金属の蓋だけが見える。 「……嫌な予感のする缶詰も有る様だが」 拓真の言葉が指し示す通り、ハズレには激臭兵器、シュールストレミングがある。 数値で示すなら納豆の18倍もの異臭がする、何せ腐敗はしないが発酵はしているのだ。 (「開ける時は俺が開ければ良いか」) 「一つ貰おうか」 男、拓真。 彼女の期待に答え、勝負に出る。 手に入れた缶詰を早速開けば――。 「……っ!?」 ハズレ、薄ピンクの液体が吹き出し、気化した匂いが漂う。 匂いの殺人兵器といえようそれに、拓真が崩れ落ちそうになる。 「拓真さん……!?」 「ち、近づくなっ」 とても缶詰開封の様子とは思えない状態である。 その後、この缶詰を突っ込んだ張本人が呼び出され、ウォッカで匂いを洗い流すことで塩辛い魚へと変化するのであった。 (「割と普通なカレーになりました……」) 肉と野菜の両方を手に入れたリンシードのカレーは、普遍的な出来具合だ。 イベントが一段落し、椅子で休む紳護の姿をみるや、とてとてと彼の元へと向かう。 「どーですか、紳護さんも一口……」 「……いや、それはリンシードが頑張った成果だ。いただくわけには」 堅苦しい断り文句に、緩く首を左右に振る。 「いいんです、一人で食べても美味しくないので」 リンシードは、カレーを掬ったスプーンを口元へ差し出す。 では遠慮無くと、一口いただく紳護。 誰かが見ているとも知らずに。 何時もより豪華なカレーを作り上げ、紳護の元へ向かっていたサタナチアはその光景に遭遇する。 前に渡したチョコレートにも何も言わなかった事もあり、もやもやと感情を曇らせる。 ここまで来て尻込みできないと、意を決して接近すればカレーの皿を紳護へと勢い良く差し出す。 「さ、冷める前に食べなさいっ!」 心のなかではよかったらと付け加えているが。 「り、リンシード……少し、彼女と話がある」 何だかどもっているが、分かったとリンシードはその場を離れる。 相変わらず真顔みたいな表情だが、妙に震えている手でカレーの皿を受け取れば、一口いただく。 「……いい腕前だ、美味しい」 皿をことんとテーブルに置く。 もじもじている彼女へ向き直ると、ぐっと膝の上に置いた掌に力が込めて震えを抑えこむ。 超常世界に入ってから久しい、極度の緊張だった。 「チョコレートに込められたサタナチアの想い、確かに受け取った。……君は素敵な女性だと思うし、ノエルにも良くしてくれた――そういう、事だけではないのだと思う。上手く言えないのだが……ありがとう、君の想いに是非、応えたいと思う」 そして、好きだと小さくつぶやいた。 キャンプの結末は、それぞれの記憶の中に。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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