●ここはどこだ!? 夏――。 夏休みになり、セミが鳴き出す今日この頃。まだまだ暑い日は続く。 はぁ……。 銅田・兼一、高校1年生。彼は溜息を漏らす。高校生活とはもっと活気に溢れたものではなかったのか。 アニメや漫画で彩られた高校生活に憧れていた彼だったが、実際には高校に入った彼には色褪せた、面白くもない学校生活が待っていた。 ただ、春には、魔法少女との出会いもあった。撮影だということで、偽物だったのかもしれないが、それでも胸が熱くなるものを感じたものである。 しかしながら、それ以来、兼一は刺激的な出来事に出会えてはいない。どこかに、自分を待つ何かがないものか。彼はそぞろに学校の裏山へと足を運ぶ。 もしかしたら、また、ここで何かに出会えるのではないか。 そんな考えを抱く彼はふと、何か落下するような感覚を覚える。どこまでもどこまでも。あまりに長い感覚に、彼は意識を失ってしまう。 兼一が気づいたとき。そこは見慣れぬ場所だった。裏山に似ているようで、まるで見覚えのない場所。見下ろす町並みも全く違ったものに見える。 「ここは……?」 彼は立ち上がり、歩き始める。似たようでまるで違う場所。気のせいか、空気までも違う気がする。そぞろに歩いていた彼がふと空を見上げると。 「あ……」 そこにはピンク色の衣装を来た少女が浮いていた。彼女は兼一の姿を認めると、兼一にステッキを突き付けてこう言い放った。 「悪いけれど、貴方を……排除するよ」 問答無用とばかりに躍りかかる少女。兼一は現実的でない光景に唖然としながらも、胸が熱くなる感覚を覚えたのだった。 ●なんで、こんな予知ばっかり……(by黒猫) 「だから、俺にこういう依頼のアナウンスは……」 ぶつくさと文句を言う、『駆ける黒猫』将門 伸暁(nBNE000006)。それでも、定刻通りにリベリスタ達が集まってくるものだから、彼もまた説明せざるを得ない。 「……ブリーフィングを始めるぞ」 伸暁は不満を全面に出したような表情で話を始める。それを耳にするリベリスタ達の中にはフェスターレの姿もあり、彼女はなぜ黒猫が苦虫を噛み砕いたような表情をしているのかが分からず、きょとんとしている。 「とある少年が突然、ディメンジョンホールに飲み込まれてしまう」 少年の名は、銅田・兼一(どうだ・けんいち)、高校一年生。彼は以前、魔法少女のアザーバイドがこの世界に来襲してきた際の事件の被害者だが、今回もまた、事件に巻き込まれてしまう。 「兼一は上位チャンネルへ飛ばされてしまう。彼は自力でこちらの世界にバックできるようだが、アンラッキーにもノーフェイスになってしまうようだな」 その前に、急いで彼を助け出したいが、その前に障害となるのが……。 「他の世界からの来訪者を撃退すべく戦う、魔法少女の襲撃をやり過ごさねばならない」 あ、やっぱりですか。もしかしてと思っていたリベリスタ達。その展開は想像できていたようだ。 「兼一はそこで、ピンクの服の魔法少女と出会う。以前この世界にやってきた奴らだな。少年にとっちゃ、初めての出会いになる」 以前はリベリスタの活躍もあって、この魔法少女と兼一は出会っていない。しかしながら、今回は状況によっては両者の出会いは避けられないかもしれないと伸暁は言う。 さらに、少しするとブルーとイエローが現れ、攻撃を仕掛けてくるという。ピンクの魔法少女には、お付きのトカゲの精霊も一緒だ。 「魔法少女達は他の世界からの来訪者を敵とみなす。彼が魔法少女から攻撃を食らうことで、エリューション化が促されてしまうから、兼一をなるべく早く助け出す必要がある」 兼一をノーフェイスにさせることなく、この世界へと戻す必要があるということ。リベリスタ達はなるほどと頷く。 「その世界はさほど俺達の世界とは変わらない。ただ、『魔法少女が戦って世界を護る』というのがコモンセンスって場所だ」 つまり、この世界の住人は、『魔法少女がいるのが当たり前で、それが外敵から守ってくれているというのが普通だと捉えている』ということだ。 「幸い、兼一があちらに飛ばされた先も裏山だ。一般人に会う可能性は低いだろう」 とはいえ、外からの来訪者が来たとなると、魔法少女達は全力で兼一を叩きにくる。兼一は放っておけばノーフェイスとなる可能性も高い。魔法少女達が退治しようとするのも当然というわけだ。できるだけ早いタイミングで兼一を護ってやりたい。 「お前らならクールに対処してくれるって信じているぜ」 彼はそのまま、ブリーフィングルームを後にする。 「あの……伸暁様はなぜ、不満そうな顔をされていたのでしょうか?」 その後、ルームでは、リベリスタへとフェスターレがそんな疑問をぶつけていたのだった。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:なちゅい | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2014年09月03日(水)23:04 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●異世界への扉 開かれた『D・ホール』。リベリスタ達はそれを前にする。1人を除き、女性ばかりのメンバーだ。 「春に続いて、また魔法少女の世界と繋がるなんて……」 春に起こった事件にも参加していた、『NonStarter』メイ・リィ・ルゥ(BNE003539)はふと思う。 「魔法少女って色々と深い、というか、かなり一般的な概念なのね」 この先に通じる世界程ではないのだろうが、ボトムのであるこの世界も、それなりに魔法少女は浸透したものではないかと『』セレン・フライエル(BNE005060)は思う。マグメイガスである彼女もまた、「魔法使い」なのだろうが、20代の外見とはいえ、実年齢を考えるとさすがに自身を少女とは言い難い。 「何はともあれ人助けね」 そうですねと答えつつ、『』アリーサ・ヨハンナ・アハティサーリ(BNE005058)がD・ホールに視線を移す。 「リベリスタの仕事として他チャンネルに行くって、ちょっと珍しいですよね」 過去の三高平というリンクチャンネルへ出向く昨今だが。さもすると、アザーバイドになりかねない自分達にごめんなさい、迷惑かもしれませんけどと、アリーサは申し訳ない気分になってしまう。 「ノーフェイスとかじゃないらしいけど、実は兼一さんって、ボク達のまだ知らない新手の神秘の使い手とかなんじゃ?」 メイが口にした、その銅田・兼一少年をボトムへ戻すこそ、リベリスタ達の目的だ。 「庶民が異世界に飛ばされたですって? いいですわ、わたくしが無事連れ戻してみせましょう、それが貴族の務めですから!」 『』椎橋 瑠璃(BNE005050)は意気込むが、許された時間は10分。のんびりしてはいられない。 しかしながら、魔法少女と相対するのに、こだわりを持って準備するメンバーも多かった。 例えば、『物理では殴らない』セリカ・アレイン(BNE004962)は濃い緑色ベースの魔法少女っぽい、ふんわりした服を身に着ける。色が他の魔法少女と被らないのが重要なのだとか。 「『魔法少女の相手するなら格好からこだわらないと!』と、知り合いから魔法少女の服を押し付けられました」 『』雪白 桐(BNE000185)は折角の好意(?)を無駄にはすまいと、ひらひらとした服を纏って依頼へと臨む。そういう桐がさりげに唯一の男性だったりする。 「そうだフェスタさんもしませんか?」 「えっと、わたくしは……」 魔法少女をよく理解していない『ラ・ル・カーナより流れる風』フェスターレ・アルウォン(nBNE000258)は、桐の誘いを時間がないからと辞退するが、内心は恥ずかしかったのかもしれない。 ●魔法少女の活躍する地で さて、異界へと降り立ったリベリスタ達。 「まずは捜索から、ですね」 この地で第一声を上げたアリーサが、皆へと翼の加護を授ける。全員が上空からの捜索をする必要を感じてはいないが、森を歩く上での足場の悪さを感じてのことだった。低空飛行をして木々の間を飛び回りながら、アリーサは兼一を探し始める。 他のメンバーもまた、ある程度固まった上で兼一の姿の捜索へと当たった。 到着してすぐ、戦気を纏っていた桐は、集音装置を使って周囲の音を聞き分けようとする。この付近には、魔法少女達も訪れるはず。彼女はその接敵も警戒していたのだ。 セレンも周囲を見回して捜索を行っている。その最中、彼女は同じハイフュリエであるセリカとエクスィス・パートナーを使い、情報をやりとりする。 そのセリカは、翼の加護を受けながらも、地面を歩いて捜索を行っていた。隠れられる場所が多すぎて、上空からの捜索は不向きと考えたのである。 「銅田さーん、探しに来ましたよー」 相手に察知される危険を顧みず、セリカは大声で少年を呼ぶ。ただ、それと同時に彼女は足元に注意を払う。少年が歩いたのであれば、歩きやすいよう道ができているはず。彼女は歩きやすい場所を起点として探したのだ。 ローブを羽織い、アークエンジェである証でもある翼を隠す瑠璃もまた、足元に目をやって人間の足跡を探す。 それ以外にも瑠璃は感情探査と合わせ、捜索を行う。これなら、人間がいないか確認できると思ったのだろう。 (……は……ど……) 「あっ……!」 瑠璃は確かに少年の声を聴く。足跡の向こうに、右往左往している少年の声が聞こえる。 (ここは……どこ?) 「いたわ!」 依頼に臨んでからわずか2分ほど。瑠璃の叫びに皆が応える。『クオンタムデーモン』鳩目・ラプラース・あばた(BNE004018)が千里眼で彼女の指す方向を見据え、その姿を発見した。 メイと一緒に前回の依頼に参加していた、『大魔法少女マジカル☆ふたば』羽柴 双葉(BNE003837)。発見できない場合はフレアバーストでも空にぶっ放そうかと考えていたようだが、そのEPは無駄にならずに済みそうだ。 しかしながら、その彼に何かが近づく。 「……来ます」 あばたは上空から飛んでくるそれに気づく。遠目に桃色と分かるそれは、魔法少女に違いない。 彼女よりも先に、兼一へと接触せねばならないと、リベリスタ達は森の中を全力で駆け、あるいは飛ぶ。 わずかに先行できたリベリスタは、兼一を確保する。 「えっと、貴方達は……?」 「説明は後。早くこっちへ」 瑠璃が兼一へと呼びかけ、彼の手を引く。 一方、ピンクは攻撃こそ即座に仕掛けてくることはなかったが、地面を見下ろす彼女の瞳は敵意に満ちていた。 「やっぱり、敵だったんだね……!」 前にも見た顔を見つけ、ピンクが呟く。それにこくりと頷くのは、ピンクの肩に乗るトカゲの姿をした精霊。リベリスタ達はこの世界における災厄だとでも言いたげな様子だ。 その前にメイ、そして、双葉が立ち塞がる。メイはこちらを睨み付けるピンクに、考えを巡らす。 (今度はこっちから乗り込んだのだから、向こうにとっては正真正銘の正義でこっちが悪だよね) かと言って倒されるわけにも行かない。この世界で彼女達が正義であっても。 (……『正義も偶には負ける』と) 同じく、前回の依頼も参加していた双葉も思う。前回とは完全に立場が真逆の状況だと。 (でもま、少しでも話を聴いてくれるよう頑張るよ) なんとか対話ができないか。双葉はこの短い時間でそれを模索するのである。 ●臨めない友好関係 「木漏れ日浴びて育つ清らかな新緑――大魔法少女マジカル☆ふたば参上!」 名乗りを上げた双葉。お約束とも言える自己紹介に、ピンクは黙ってリベリスタ達を宙から見下ろし続ける。 「お久しぶり、かな。お邪魔しちゃってごめんね」 双葉がピンクへと呼びかける。その間も、ピンクの敵意の視線は向けられたままだ。 「どっかのアニメの魔法少女は言いました。『少し、頭冷やそうか』と」 「私達は迷い込んだ人の保護に来ただけですから、見逃して貰えればすぐ帰るのですがどうでしょうか? 無理というなら押し通させて頂きますが?」 セリカ、桐が続けて呼びかける。ピンクはただ、黙ってそれを聞いているだけ。 推移を見守るあばたが背後に目をやると、その間に兼一を確保した瑠璃が下がっていた。 「動かないで!」 そこで、ピンクはステッキからオーラを撃ち出す。前にいた双葉がそれを身を張って受け止めた。瑠璃は足を止め、皆が魔法少女の気を引くのを待つ。 双葉がオーラを受けて巻き起こる煙の中、両手を広げる。 「聞いて。私達もね、自分達の世界を護る存在なんだよ」 ピンクの表情がピクリと動くが、ぼそぼそと火トカゲが何かを告げると、ピンクは首を軽く振って再びこちらを睨み付けた。 「ボクらは彼を連れ戻さなきゃいけないから、倒されると困るんだよ……と言っても聞いてくれないだろから、行くよ……」 これ以上の言葉を、彼女は聞き入れてはくれないだろう。やはりかと思いながら、メイも双葉も戦闘態勢に入る。誰よりも早く、双葉が動いた。 「強くなった私を見せてあげるよ」 傷口から血を滴らせる双葉。血は突如として膨れ上がり、黒い鎖を象る。 「紅き血の織り成す黒鎖の響き。其が奏でし葬送曲。我が血よ、黒き流れとなり疾く走れ……いけっ、戒めの鎖!」 鎖はピンクを囲むように回り、瞬時に彼女の体を締め上げる。 苦痛に呻くピンクに、セレンが迫った。双葉よりもやや遅れたが、軽装のセレンも速い。 「話を聞いてくれとは言わない。私だって貴女の立場なら、情報がない異世界からの来訪者を、問答無用に追い返すだろうから」 セレンは内心、異世界のリベリスタ的な存在との手合わせを楽しみにしていた。さすがに、楽しむ状況でないことは彼女も理解はしていたのだが。 宙を飛んでピンクに張り付く彼女は、ナイフを振るって立て続けに魔術を組み上げる。四属性の魔術は光り輝き、ピンク目がけて飛んでいく。その威力に、刹那ピンクの羽ばたかせる翼の動きが止まった。 他のメンバー達も、単体のピンクへと攻撃を集中させる。 「お姉様から習った通り、一般人救出と仲間の安全のために全力で! 魔砲少女セリカ、いきます!」 セリカが名乗りを上げて詠唱に入ると、空を舞うメイが大きく羽ばたき、巻き起こる風の渦をピンクに浴びせかける。その間にセリカが魔術を完成させると、異界の星も彼女の詠唱に応えた。鉄槌の星は精霊含め、ピンクに容赦なく叩きつけられる。 (無差別に殺す趣味はないけど、本気で来る相手に手加減する柄でもないですし) 相手はこの世界の少女。とはいえ、魔法少女として力を持つ以上、手を抜くこともできない。 ピンクも反撃に打って出る。彼女も大きく翼を羽ばたかせると、周囲に嵐のような風が巻き起こす。リベリスタ達を巻き込む、体を引き裂かれる程の強風。その威力にアリーサは悲鳴を上げそうになってしまう。 (目的はあくまで『魔法少女』の撃退ではなくて、一般人の銅田さんを無事に帰すこと) アリーサは顔を引きつらせながらも、周囲の神秘の力を取り込む。異界にも、魔の力は存在するようで、アリーサの力がこの上なく高まっていく。 (銅田さんを連れて椎橋さんが撤退するまでは、全力で相手を押さえないといけなくなりそうな気はしますけど……) 彼女の読みは外れていない。桐やあばたもピンクへと近づき、その抑えを行う。とりわけ、桐は肉体から湯気をあげ、己の限界を超えた力をピンクへと叩き込む! それだけで倒れるピンクではないが、かなり疲れの色を見せていた。 皆がピンクを抑える間、瑠璃は隙を見計らい、訳が分からないとあたふたしたままの兼一と共に後退する。 そこにやってきたのは、黄色と青の魔法少女だ。 「イエロー、ブルー!」 「ののちゃん、助けに来たよ!」 「私達も援護に入りますの」 援軍としてやってきた彼女達は、ピンクのそばへと降り立ち、リベリスタ達を迎え撃つべく体勢を整えるのだった。 ●護る者同士の戦いの行く末 魔法少女はリベリスタ達を囲むように布陣しようとする。もちろん、兼一を連れた瑠璃とて例外ではない。 リベリスタ達は魔法少女の合流を確認すると、ピンクを取り囲む布陣から移動を始めた。イエローにはブレイクを警戒して着地した桐が張り付き、フリーになっていたブルーにはあばたがトラップネストを放って拘束を試みる。 双葉は仲間達がピンクを抑えているのを確認して後ろへと下がっていた。抑えにそのまま残っているのは、セレンだ。ハイフュリエで、かつマグメイガスである彼女。お世辞にも体力があるとは言えないセレンだが。彼女は「倒されないこと、後衛に攻撃をできるだけ通されないこと」に集中して戦いに身を置く。 (とはいえ私も打たれ強いわけじゃない、むしろ脆い部類だ) ピンクが放つフルパワーの一撃。当たれば確実に致命傷。最悪、すぐさまフェイトの使用を余儀なくされるだろう。 だからこそ、方法は1つとセレンは考える。 「全部、避ければいい」 回避に絶対の自身があるわけでもないが。それでも。右へと体を動かす彼女の僅か左を、魔力の奔流が通過していく。 「……マグメイガスとしては異端の戦い方かもしれないけど、庇って貰わなくとも戦えるようにありたい、私の鍛錬の結果だ」 渾身の一撃を外し、ピンクは肩で息をして苦い顔をする。 そのセレンの戦い方に半ば呆れていたのは、同じハイフュリエでマグメイガスのセリカだ。 (どうしてこうなったのかしら) 同じ種族、ジョブで、こうも戦い方は違うとは。 セレンが中型魔方陣を展開し、ピンクとイエローを魔力を撃ち抜いたのを見て、セリカは我に返る。 「ひたすら攻勢あるのみ! 攻撃するわよ!」 セリカは再び、長き詠唱を経て、鉄槌の星を魔法少女達へと振り落とす。もはや完全に息を切らしたピンク。双葉は再度血の鎖でその体を縛り上げんとした後、静かに詠唱を始めた。 「我願うは星辰の一欠片。その煌めきを以て戦鎚と成す。指し示す導きのままに敵を打ち、討ち、滅ぼせ!」 今度は双葉の詠唱に応え、鉄槌の星が周囲に降り注ぐ。その体へと落下してきた星を受け止めきれなかったピンクは、地面へと真っ逆さまに落下していく。リベリスタ達は注意を払うことはなかったが、肩にいたはずの精霊の姿が忽然と消えていた。 兼一を無事、D・ホールまで連れてきた瑠璃。魔法少女からの攻撃をほとんど受けることなく、ここまで来ていた。 ただ、これ以上はこの世界に留まらせるのは危ない。彼はエリューション化が予見されているのだ。 「ともかく、兼一さんはこれ以上ここにいたらダメですわ」 「えっ、えっ……!?」 そうして、未だ状況がよく分かっていない彼を元の世界へと送り届けた彼女は、すぐさま魔法少女の世界へと舞い戻り、仲間の援護に出向く。 戦場ではすでに、ピンクが落ちていた。残るイエローが障壁を張りつつ、ブルーの放つ荒波がリベリスタ達を襲う。荒波に飲まれたあばただが、運命の力を使ってなんとか飲み込まれずに踏みとどまる。 (これ以上、リスクを背負うわけには……) あばたは無理せず、戦おうと最前を尽くす。 さて、リベリスタ達達は現れた魔法少女を倒す気でいるようだ。 メイの放つ神聖なる裁きの光がイエローの障壁を引きはがす。光にくらくらしていた彼女だったが、すぐにこちらを怒りに満ちた目で見据える。 「ピンクの……ののちゃんの敵だよっ!」 イエローの手に光が集まる。その前兆に気づいた桐がサイドステップで避けようとするが、敵の方が一枚上手だったようだ。動きに合わせて撃ち出す方向を変えると、桐はまともに雷を浴び、体が動かなくなってしまう。 「癒やしの魔法、と言えば私も魔法少女っぽくなるのかしら」 回復に専念するアリーサ。彼女の顕現させた奇跡が桐の体力を回復させる。さらに、フェスターレが呼び起こした天使による息。桐は万全に近い状態にまで戻った。 一方の魔法少女達は、ピンクが倒れたことで攻めに徹していた。かなり疲労していたのは分かっていても、回復するだけではジリ損だと魔法少女達も分かっていたのだろう。 「暴力で解決は強い暴力に相対したら負けるしかないんですよ?」 桐は再度、己の体から煙を噴き上げて、限界を超えた力でイエローへと攻め入る。やや体力の劣る彼女はその一撃に卒倒し、気を失ってしまった。 ただ1人残るブルー。仲間の援護も受けられなくなり、苦しい戦いを強いられる。 もちろん、それはリベリスタにとっては圧倒的優勢である状況。そこへ、瑠璃も戻ってきたことで、勝利はゆるぎないものとなる。聖骸闘衣を纏った瑠璃は邪気を退ける神々しい光を放ち、仲間達の体を苛む災厄を消してしまう。 「この程度では、負けませんわよ……!」 周囲に水を集めて一度に撃ち出すブルー。前線に立つ桐やセレンがそれを受け止めるが、致命傷を与えるまでは至らない。 あばたが拳銃を撃ち抜き、ブルーの手首を穿つ。リベリスタ達が一斉に攻撃を仕掛けると、彼女はへたり込んでしまった。それでも、ブルーは敵意の視線を失わない。 (仲間殺されて死にものぐるいで報復されたらたまったものじゃないですしね!) 何が何でも、魔法少女を殺したいわけじゃない。そう考えるセリカは、倒れるピンク、イエローは狙いを外し、ブルーにのみ鉄槌の星を落とす。 「……無念……ですわ」 ブルーは星に押しつぶされ、口惜しそうに倒れていった。 倒れる魔法少女達。リベリスタ達は彼女達の息があることを確認するが、戦闘不能のものまで手にかけるべきでないと考え、一行はそのままこの場を、この世界を後にすることにした。 ボトムへと戻ったリベリスタ達。しかしながら、兼一はもうその場にはいなかった。まずはと、桐がD・ホールの破壊を行うと、フェスターレは安心したのかホッと胸を撫で下ろす。 「今回も撮影ってごまかせるかな……?」 「さすがに、そうもいかないと思いますわ」 メイがそんな疑問を抱くが、瑠璃が首を横に振る。さすがに今回はそういうわけにはいかなかっただろう。 刺激的な出来事を経験した兼一が何を思うのか。リベリスタ達は彼がどんなことを思い描くのかを慮りながらも、裏山を下りて行くのだった。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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