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ファイヤーボール・トレイン

●なつのおもいで
 田園風景の広がる、とある村の中央。普段なら申し訳程度の遊具があるだけであるその公園は、紅白の提灯や色とりどりの屋台などにより、華やかに彩られていた。
 季節は、夏真っ盛りである。日本の各地がそうであるように、この村にもまた夏祭りの時がやってきたのだ。
 近所の公民館からは祭囃子の練習音が漏れ聞こえ、各民家ではお気に入りの浴衣が開封され、あちこちで誰と行くのかを語り合う声がする。公園の横をゆく子どもたちは目を輝かせ、設営の最後の仕上げを行う男たちはそれを横目に伝う汗を拭う。
 全ては、今宵からの宴のため。のどかな村は、俄かに活気に満ち始めていた。

●招かれざる客を食い止めろ!
「――この夏祭りに参加したかったのは、村人達だけじゃなかったの」
 そう告げると、『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)は映像の再生を停止させた。
「これは……火の玉のエリューション・エレメント、か?」
 息を呑んだリベリスタ達に、彼女は小さく頷いた。
「そう。火の玉が21個連なったエリューション・エレメント。これが、辺りが真っ暗になった頃に祭り会場に現れるの。そして祭りに参加している人々をグルーヴの渦に叩き込む」
「…………は?」
 マジエンジェルの口から零れた言葉に、リベリスタ達の目が点になる。表情ひとつ変えぬまま、イヴは言葉を続けた。
「主な能力は、自ら発するサウンドに合わせたダンス。魅了の力があって、強制的に相手を楽しい気分にさせて、踊らせるわ。それ自体にはダメージはなくて、その場にいた人が踊ってしまうだけなんだけれど……異変を聞きつけてやってきた人が、それを止めようとしてボコボコにされるわ。踊っている人達によってね」
 そこで話を切ると、イヴは呆れたように溜息をついた。
「どうやら、魅了状態の人々が止めようとした人間を敵と認識してしまったようね。人々は口々に『師匠のダンスを邪魔するな!』といったことを叫びながら、殴る蹴るの暴行を働くわ」
 聞いただけではシュールな光景だが、どちらの人々にとっても災難な話である。イヴいわく命に別条はないものの、いろんな意味で後々まで尾を引く事件になるだろうことは、リベリスタ達にも容易に想像できた。
「今回は人々の間で被害が起きただけだけれども、今後もそうとは限らないわ。踊り以外にも攻撃手段を持っていて、自らに危害を加えようとする者には容赦なく襲いかかるから。だから、ここで何とかして欲しいの」
 イヴがリベリスタ達を見回す。微妙な表情をしながらも、リベリスタ達はそれに頷いた。


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:高峰ユズハ  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2011年08月26日(金)23:37
ロクなネタになりませんでした。お久しぶりです。高峰です。
以下に詳細を記します。

■敵詳細
 火の玉型のエリューション・エレメント1体。計21個の火の玉が連なった形をしています。先頭の火の玉はビーチボールほどの大きさがあり、残りの20個は人の頭ほどの大きさです。
 宙に浮いています。通常時は地上からでも問題なく攻撃できますが、場合によっては空高く舞い上がって逃走を図ることもあります。

■敵の使用スキル
【ファイヤーボール・ストライク】後方の火の玉を、対象1人に向けて鋭く射出します。物理/遠距離単体/ダメージ。

【ファイヤーボール・スパーク】後方の火の玉を、まるで花火のように四方八方に散らします。わりと綺麗です。物理/遠距離全体/ダメージ。

【ファイヤーボール・ハグ】後方の火の玉を連結し、対象1人を締めつける感じで抱きしめ、燃え上がります。物理/近距離単体/ダメージ+火炎。

【ファイヤーボール・トレイン】何処からともなく聞こえてくるサウンドに合わせて、後方の火の玉を後方に縦1列に並べ、某大人数邦楽ダンスグループが如く時間差でぐるぐると回転します。神秘/遠距離全体/ダメージなし+魅了。
なお、魅了状態でこれを食らった場合、強制的に楽しい気分になり、強制的に火の玉達の後方に回って楽しげに踊るはめになります。

また、魅了状態の間はエリューション・エレメントのことを『師匠』と呼び、師匠のパフォーマンスを邪魔する者に対して敵意を抱きます。

■現場
田園の広がる自然豊かな村です。エリューション・エレメントは日が暮れるまで村を囲む森の中におり、辺りが暗くなったころに森から出て夜空を舞いながら夏祭りの会場へと向かいます。
大体森・田んぼとあぜ道・住宅地・夏祭り会場といった感じで構成されています。


なお、ファイヤーボール・トレインの副作用に関しては真面目系やクール系などの方々も手加減しませんので、予めご了承ください。
技名が入りきらない場合は、後半のみの記述でOKです。

それでは、宜しくお願いします。
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
プロアデプト
ラキ・レヴィナス(BNE000216)
クロスイージス
英 正宗(BNE000423)
デュランダル
斜堂・影継(BNE000955)
クロスイージス
セリオ・ヴァイスハイト(BNE002266)
ホーリーメイガス
フローレッテ・アリシュ(BNE002302)
デュランダル
ジース・ホワイト(BNE002417)
クリミナルスタア
坂本 瀬恋(BNE002749)
クリミナルスタア
祠堂 嚆矢(BNE002835)

●クールなサウンドにしてくれ
 まだ人々が起ききらぬ早朝。草木のそよぎや小鳥の声が空気に薄く響く中、リベリスタ達は現場の森付近のあぜ道を歩いていた。
 夏祭りの開始まで、まだ半日ほどある。にもかかわらずリベリスタ達が既に行動を開始しているのは、火の玉――今回の標的であるエリューション・エレメントを手早く片付ける為であった。
(祭りはイイよな、活気に満ち溢れていて。その中で踊るってのも、悪くはない)
 道中遠くに見えた夏祭りの会場が、『うめもも大好き』セリオ・ヴァイスハイト(BNE002266)の脳裏をよぎる。微かに笑んだ口元は、しかしすぐに引き締められた。
(ただ、エリューションの影響で、ってのは勘弁だ。――人目につく前に片付けないとな)
 紫の瞳が前を見据える。あぜ道と、森の境目。それぞれに頷きを交わすと、彼と仲間達は森へと踏み込んだ。

 日なたよりも僅かに冷えた空気が肌を撫で、土の芳しい香りが鼻孔をくすぐる。ラキ・レヴィナス(BNE000216)は思わず頬を緩ませ、大きく深呼吸をした。
「あ~……たまには朝の森を散策するのもいいもんだな」
「いや、散策じゃなく探索だからな?」
『獅士』英 正宗(BNE000423)のツッコミが、即座に煌めいた。
 それはさておき。
 本格的な探索に移る前に、リベリスタ達は持参したラジカセなどを取り出した。
 時間帯的にはラジオ体操にぴったりだが、無論そういう訳ではない。これらで音楽を流し、火の玉を誘き寄せるという作戦なのだ。
(さて……素直に出て来てくれればいいんだが)
 そう思いながら、『影の継承者』斜堂・影継(BNE000955)もまたノートPCにスピーカーを接続させた。
 森に至る前に、彼は村の中で情報収集を行っていた。
 早朝である。人の姿はほとんど無かったが、早くから畑仕事に繰り出していたお年寄りを中心に、彼は第3村人まで確保した。
 お年寄り達曰く――ここ2・3日の夜間に、森に火の玉らしきものを見たという話が幾つかある。だがいずれも遠くに見ただけであり、害も無かったので、『盆に近いし、誰かが帰ってきたのだろう』ということで落ち着いている――とのことだ。
(騒ぎになってなくて何よりだ。あとは、見つけ出すだけ――待ってろよ、師匠!)
 ノートPCを担ぎ、立ち上がる。火の玉を師匠と呼ぶ彼は、まだ魅了には掛かっていないはずであった。
 一方。『青い雪の龍』ジース・ホワイト(BNE002417)は、ラジカセを見下ろす青い瞳を興味深そうに瞬かせた。
「皆、どんな曲を持って来たんだ?」
「盆踊りのBGMを適当に用意した。……本当は例の夏祭りに使われるものを用意したかったんだがな」
 肩を竦める正宗の傍で、『ザミエルの弾丸』坂本 瀬恋(BNE002749)は音源をひらひらと振った。
「こっちはロック系が主だね。こういうのが好きそうだったからさ」
「……皆、見事にばらばらなのね」
『宵月の大吸血鬼』フローレッテ・アリシュ(BNE002302)が呟いた。彼女は彼女で、ヒップホップ系やダンスグループ系の音源を用意していたのだ。
「まあ、祭り好きというより皆で騒ぐのが好きな奴なのかも知れないしな。これだけ曲があれば、騒ぎたくなって出てくるだろ」
 ラキの言葉に頷くと、リベリスタ達はラジカセを手に探索を開始した。

 森に、音楽が響き渡る。
 それは盆踊りでお馴染みの調べであり、重低音の効いた音であり、また独特のリズムであり、そしてその全てを混ぜ合わせた曲であった。
「同時にこれだけの音楽が鳴るとカオスだな……」
 そう零すと、『黒い幽霊』祠堂 嚆矢(BNE002835)は双眼鏡を翳した。透視の力はレンズの先には及ばなかったものの、彼はこれにより探索効率を上昇させていた。
 しかし、それと発見出来るかどうかとは別問題である。
 注意深く探索していくものの、これといった手掛かりはなかなか手に入らない。時間と乾電池をすり減らしながら、リベリスタ達は根気よく探索を続けていった。

 ――火の玉は確かに森の中にいた。音楽も確かに届いていたが、それは火の玉にとって『ノれるサウンド』ではなかったようだ。
 イケてない音に警戒を抱いた火の玉は、リベリスタ達を避けるように動いた。
 かくして彼らは、夕暮れ時まで静かな追いかけっこを続けることとなった。

●主役(?)、登場
 辺りが夜闇に包まれた頃。既に盛り上がっている夏祭り会場に、フローレッテはいた。
 森での探索を諦めたリベリスタ達は、火の玉の出現に備え、複数に分かれ散開した。その一環として、彼女は会場に足を運んでいたのだ。
 万一の際は、村人達をこの会場から避難させなければならない。その布石として、彼女は『テンプテーション』で男性陣の好感を得、誘導しやすい状況を作ろうと考えたのだが――
(……奥手、なのかしらね)
 数人ほどが引っ掛かったらしく、彼女に視線を送っている。しかし全員が遠巻きであり、かつ視線が合うと皆目を逸らしてしまうのだ。
(大丈夫かしら)
 その時、アクセスファンタズムに通信が入った。
 火の玉、出現。その報に、彼女は男達に背を向け駆けだした。

 連なる赤が夜闇に燃える。
 揺れる火の玉の群れは、見ようによっては美しささえ覚える。
 だが、相手はエリューション・エレメントである。それには目もくれず、ラキは声を掛けた。
「よう、これからお出掛けか?」
 火の玉が、彼へと頭部を向ける。すぐに興味無さげに意識を逸らすと、脇を抜けて行こうとした。
 その瞬間気糸が飛び、火の玉の頭を鋭く貫いた。
「残念だがここから先には行かせねぇ。祭りが台無しにならねぇよう、ここで止めさせてもらうぜ!」
 火の玉が身体を翻し、頭をラキへと向けた。
(皆が来るまでもう少しだ――それまで耐えてみせる!)
 炎に、怒りの色が滲む。それに照らされながら、ラキは不敵に笑ってみせた。

 暗いあぜ道を、ただひたすらに駆ける。その先に火の玉らしき複数の光を見て、ジースは軽く眼を見開いた。
「っと、もうおっぱじめてやがるな!」
 光に微かに照らされる人影。それが先に辿りついた者であることは、容易に想像がついた。
「……しかし、本当にあのゲームの敵キャラにそっくりだな」
 正宗が呟く。その脳裏に、とあるレトロゲームの光景が浮かんだ。
「あのキャラは火の玉の数が少なかったし、踊ってくる訳ではなかったが。さて、強さはどうなんだろうな?」
「能力はふざけているが、油断出来る相手ではないだろうさ。――しかし、アークの仕事ってのは厄介なのが多いねぇ」
 瀬恋がくくと喉を鳴らすように笑う。それに、嚆矢は器用に肩を竦めてみせた。
「問題はない。任務であるならば、ただそれをこなすだけだ」
「もちろんだ。会場にいる人達のためにもな!」
 会場のある方角をちらりと見て、セリオが口元に笑みを滲ませる。
「――っしゃ!皆、行くぜ!」
 気合を入れながら、ジースは足を速めた。

 彼らの靴音が戦場に届くまで、そう時間は掛からなかった。
「――――来た!」
 フローレッテとラキの顔にぱっと笑みが差す。火の玉もまた、音の方向へと頭を高く掲げた。
 影継が、その眼前に迫った。
「余所見するなよ、お前の相手はここだ」
 そして全身に激しい闘気を漲らせる。
「試してみろ、お前の炎で俺の魂まで灰に出来るかどうか!」

●オンステージ!
 現れた5人の姿に、炎に警戒の色が滲む。それは、5人もまた自らの敵であることを認識した瞬間に溶けた。
 炎が怪しく揺らめく。それを前に、5人は攻勢に出た。
「――進むは地獄の戦場、得たは異能の力。望んだ結果でなくとも見せてやるよ。意地ってやつを!」
 堂々と見得を切ると、瀬恋はライフルを器用に操り、凄まじいまでの早撃ちを披露した。撃ち抜かれた頭部が大きく揺れ乱れ、纏う炎がばちりと大きく音を立てた。
「……でかい的だねぇ。射的のキャラメルを狙うほうがよっぽど難しいよ」
 口の端に皮肉を浮かべる彼女へと、火の玉が頭部をもたげる。そこに、軽やかなステップとともにジースが迫った。
「違いないな。刻み甲斐があるぜ!」
 至近の全てを切り刻む斬撃は、火の玉の頭部に大きな傷をつけた。その傷跡から細く炎が漏れ出る。それに気付いて、火の玉は身をくねらせた。
 その隙を、嚆矢は見逃さなかった。
「……こいつは挨拶代わりだ、受け取っておけ」
 背後からの声に反応した時には、既にトンファーが振るわれていた。全てを掻き切るような強烈な一撃。その傷口からも、炎が漏れだした。
 攻撃から逃れるように、火の玉が僅かに浮遊する。去る気かと追ったリベリスタ達の前で、それはひとつの塊となった。
 次の瞬間、それは大きく爆ぜた。
「――――っ!」
 火の玉が、まるで花火のように飛び散る。しかし、上がったのは歓声ではなく呻き声であった。
 ラキが身を揺らす。火の玉の発見からこれまで攻撃を受け続けた彼の身体には、既に幾つもの傷が走っていた。
 フローレッテは清らかなる存在に呼びかけ、癒しの微風を呼び込んだ。恩恵はラキの身を優しく吹き抜け、刻まれた傷口を閉ざした。
(流石に、楽には勝たせてもらえないようね。――けど)
 礼をいうラキに笑みを返すと、彼女は唇を結んだ。
(この『大吸血鬼』がいる限り、そちらに勝機はないわ……!)

 リベリスタ達の猛攻により、火の玉は時に炎を垂れ流し、時に怒りに染まった。しかしその身に滲む疲労の色は、なかなか濃くならなかった。
「まだまだ余裕ってか……流石だぜ、師匠!」
 苦笑しながら、影継がショットガンに全身から迸るエネルギーを込める。一撃は、しかし火の玉を捕らえることは出来なかった。
 火の玉を地上に縫い付けるべく放たれたそれは、あぜ道を僅かに抉った。
 間合いを取る影継との間に割り込むように、正宗が火の玉の前に立つ。そして牽制の為にとブロードソードを振るおうとして――
 彼は、火の玉がその身体を真直ぐに並べるのを見た。
「――来るぞ!」
 リベリスタ達が一斉に身構える。その瞬間、それは始まった。
 何処からともなく聞こえてくる、派手な音楽。リベリスタ達は一瞬唖然とした。
「どういう仕組みで流れてるんだ、これ。というか何でちょっと物悲しいメロディーなんだ」
 正宗に庇われる形となったセリオが、周囲に視線を巡らせる。メカニズムはともかくとして――そのメロディは短音階で構成されていた。短音階で、かつリズムはノリノリなのである。
(……微妙にノリきれないな、これ)
 そう思うセリオであったが、火の玉的には問題ないようであった。
 数回自らの身を左右にスイングさせたのち、時間差でぐるぐると回転し始めた。
 夜闇に、炎の輪が現れる。それを目にした数人が、得物を持つ手をだらりと下げた。
「こ、これは、凄い……!」
 呆然とした表情で、瀬恋が呟く。彼女の胸を、感じたこともないほどの感動が満たした。魅了予防として身につけていたイヤホンを取り払うと、彼女は火の玉のパフォーマンスに心を委ねた。
 ジースもまた、心の内から闘気が薄れていくのを感じた。代わりに込み上げてくるのは、眼前で見事なダンスを繰り広げるパフォーマーへのリスペクト。しかし、彼は必死の抵抗を試みた。
「あ、あんなものを師匠なんて呼べるか……だって俺の師匠は、し、し――」
 ぷるぷると身を震わせると、彼はぐっと拳を握った。
「師匠――――――!!」
「ジースも陥落したか……!」
 何とか魅了から逃れていたラキは、その惨状に頭を抱えそうになった。魅了に掛かった者は皆が皆、火の玉のダンスにスタンディングオベーション状態なのである。邪魔をしようものならどうなるか、想像しただけで悪寒が走った。
(でも、このままにしてたら拙い……!)
 意を決すると、ラキは火の玉をびしりと指差した。
「――はっ! それがトレインかよ。全然なっちゃねーな。てめぇは精々ネズミ花火の真似がお似合いだぜ! ぐるぐるぐるパーン! ってな!」
 その声は、間違いなく仲間達の下へと届いた。
「ラキ……貴方ねぇ……」
 足音にラキが振り返ると、笑いながら怒るフローレッテが赤い爪を構えるのが見えた。
「師匠の邪魔をするなんて1000億万年早いのよ――――っ!」
 魔法陣から放たれる魔法の矢。それを皮切りにして、魅了された者からの攻撃がラキへと一斉に降り注いだ。
 無駄な同士討ちを防ぐという目的は達せられた。しかし――
「皆、本気出しすぎだろ……」
 嵐が過ぎ去った後、ラキはよれよれになっていた。

 セリオと正宗が放つ邪気を退ける神々しい光が、ひとりひとりを包み込む。
 正気を取り戻したフローレッテは、顔を紅潮させながら清らかなる存在へと語りかけた。
(あれは夢、あれは夢……)
全ての仲間に福音がもたらされていく中、彼女は必死にそう繰り返した。
 だが、皆が皆彼女のようにこちら側の世界に戻れるわけではない。セリオと正宗は地道に治療を施していたが――
「……またか!」
 例の音楽とともに、火の玉が再び華麗なダンスを始めたのを、セリオは見た。
(これはっ……是非参加せねば!)
 胸が震えるままに、瀬恋は地を蹴っていた。
(今こそ、師匠と身も心もひとつに……)
 よく分からないテンションのまま、彼女は火の玉の後方についた。その後ろには、彼女同様に魅了に囚われたままのジースと影継。3人は完璧なタイミングでダンスを披露した。
(……本当に厄介な能力だな)
 満面の笑みで踊り続ける彼らを眺める嚆矢は、背に冷や汗が流れるのを感じた。
 1度目のダンスの際、魅了を回避すべくリズムに乗ってみた彼であったが、そんな彼にも魅了の力は及んだ。幸いすぐ脱出したものの、そうでなければダンスチームの一員となっていたのである。
 その幸運に感謝しながら、嚆矢はトンファーを構えた。
「茶番はそこまでだ」
 冷えた声で告げると、彼は一気に間合いを詰めた。そして未だダンスを続ける火の玉の頭部に、問答無用の一打を加えた。
 ダンスが止まるとともに、音楽が消える。動揺を見せた火の玉に向けて、続けて後方より電撃を纏った強烈な一撃が放たれた。
 それを放ったのは、魅了に掛かっていたはずの影継であった。
「師匠、トレイン最大の弱点は――敵が踊りから解放された瞬間、バックアタックを受ける事だぜ!」
 武器を引きながら不敵に笑う。その弱点を突くべく、彼は魅了された振りをしていたのだ。
「つまり、あの完璧なダンスは素で……」
「言ってやるな」
 強大なダメージと全身を走る電撃に、火の玉が身を硬直させる。その隙に、セリオと正宗は邪気を退ける神々しい光を放った。
 それにより魅了から脱したジースは、わなわなと口を震わせ、叫んだ。
「お、俺の、俺の師匠は…………新城さんだけだああああああああ!!」
 脳裏を駆けめぐる自らの言動に半ば涙目になりながら突進する。その様相に気圧された火の玉へと、彼は輝くオーラを纏いながら何度も斬りつけた。
 ともあれ、リベリスタ達はようやく全員が魅了から脱したのだった。

 ダンスの恐ろしさを身をもって知ったリベリスタ達は、再び猛攻を仕掛けた。
 途中再びダンスによりあちらの世界に行く者が現れたが、冷静な対応により傷が深くならないうちに戻ってくることが出来た。
 時が経つごとに、火の玉が纏う炎は弱々しくなっていった。それでも、火の玉は抵抗は止めなかった。
 ふと、その頭部が祭り会場へと向いたのを、フローレッテは見た。
「……寂しかったの?」
 問いかけに、火の玉が頭部を彼女に向けた。
 人語を解した訳ではないのだろう。それでも、彼女は心に躊躇いが滲むのを感じた。
 それを振り払い、魔法陣を展開する。放たれた矢に穿たれて、火の玉は薄くなった炎を更に散らした。
「そろそろ潮時かね」
 全てを心の奥底に仕舞いこんだ瀬恋が、ライフルを構える。最後の力を振り絞って飛行しようとする火の玉の動きを読み切ると、彼女は早撃ちでその急所を貫いた。
 身をがくがく震わせながらも、空へ向かおうとする火の玉。その炎は徐々に薄まり、やがて夜闇に溶けるようにして消えた。
「向こうで好きなだけ踊るといいさね。……アタシはもう勘弁だが」
 その言葉に、リベリスタ達は無言で頷いた。

●守られた宴
 会場の入り口に辿りついたリベリスタ達を待っていたのは、平和な夏祭りの光景であった。
 見知らぬ8人の姿に物珍しげな視線を送る者もいたが、それも僅かのこと。祭りの華やかな雰囲気は、リベリスタ達を暖かく包み込んだ。
 大人も子供も一緒になって、祭りを楽しんでいる。自らの手で守った光景に、瀬恋は笑みに安堵を滲ませた。
「こういう光景も悪くはないね」
 思わず零れた言葉に、彼女は小さく肩を竦めた。
「屋台を見て回りたいわ。リンゴ飴とかわたあめとか、美味しそうなものがいっぱいあるみたいよ」
 居並ぶ屋台を指差しながら、フローレッテが声をかける。先に駆けだした彼女を追って、リベリスタ達は会場の中へと消えていった。

 その後、しっかりと祭りを堪能したリベリスタ達は、幾つもの夏の思い出とちょっとした土産を手に村を後にしたのだった。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
まずは、皆様お疲れ様でした。そしてご参加頂き誠に有難うございました。

宣言通り、魅了関係ではノリノリになっていただきましたが、いかがだったでしょうか。
今回は、魅了時のフォローなどがしっかりなされていたため、
思ったよりも被害が軽く済みました。
戦闘不能などは出てしまいましたが……。

またご縁がありましたら、その際は宜しくお願いします。
高峰でした。