●20世紀の怪盗伝説 怪盗パンツマスクを知っているか。 彼は悪徳金持ちからお宝を盗み、バブル崩壊で会社をリストラされたおっさんや暴力夫から逃げてきた主婦、果ては絵画詐欺につかまった新卒社会人たちに分配する義賊である。 その正体は、21世紀の今でもまだ……明らかになっていない。 ●神田輝夫。通称、夜のパンツマスク。 スズメちゅんちゅんする朝。 ビジネススーツを着たナイスミドルなおじさんが玄関の扉を開けた。 「グッモーニン、マイサン! それじゃあパパ、今日も仕事に行ってくるぞ!」 「いってらっしゃーい、アナタ!」 「今日は帰りが遅くなるかも知れないけど、夕飯は残して置いてくれよマイワイフ」 「もちろんよ。パインサラダ作って待ってる!」 「いってきまーす!」 手を振って家を出て行くパパン。 パパンはついでに任されたゴミ袋をゴミステーションに捨て、近所で延々道路掃除をしてるじいさんに挨拶し、角を曲がってもひとつ曲がって更に曲がって途中にいたネコちゃんに手ぇだして噛まれて泣きながらまた角まがっていきなりある電話ボックスに入って出てきた時にはパンツマスク。 覆面。 マント。 ビキニパンツ。 腰の後ろには手斧がクロスして備わっていた。 変態だった。 どう見ても変態だった。 だがバラクラバ式覆面から覗いた目には、強い闘志と魂の輝きが宿っていた。 とてもではないが、変態の目では無い。 彼は深呼吸をし、平和な町の空気を吸い込むと、うむと頷いた。 そのままのっしのっしと歩き、たばこ屋さんの前でおもむろに両腕を振り上げたポーズで固まる。 たばこ屋さんの中から声がした。 『旦那、頼まれてたお屋敷の地図、手に入りやしたぜ』 パンツマスクは両腕を掲げたまま目も合わせずに小声で返した。 「さすがは情報屋。もちろん、それだけじゃないんだろう?」 『当然でさぁ。しかしこう……』 「わかっている」 千円札を出してセブンスターを買う振りをして、一万円札を何枚も相手に渡す。 すると相手はセブンスターの箱を渡してきた。 それを受け取り、パンツマスクはのっしのっしと店を離れた。 ――たばこ屋がセブンスターと称して渡してきた中には、色々な情報が書かれていた。 名前、悪田汲・ゲス蔵(わるだくみ・げすぞう)。 高利貸し、裏株取引、結婚詐欺、万引き、自販機のおつり取り出し口にガム詰める、まろろまてぃっくと南国アイスホッケー部のカバーを入れ替える、人んちのポストにあつあつのたこ焼きを詰め込むなどの悪逆非道な行ないを続けるゲス野郎である。 そんな彼の持つ一番のお宝が、今回のターゲットだ。 『ゆうしゃのたましい』。 それはダイヤモンドやブルーダイヤや金銀パールを気持ち悪いくらい詰め込んだ特注のネックレスで、たとえバラけたとしても一生遊べるくらいの価値がある宝飾品である。 こいつが保管されているのは『悪田汲ハウス』という防犯意識高い系の豪邸で、しかもその最深部だ。 だが見取り図は手に入っている。 パンツマスクはうむとうなずき、そのままの体勢で夜を待った。 カラスかーかーする夜。 豪邸の屋根にパンツマスクは立っていた。 彼は腰から斧を取り外すと、『フンヌラァ!』といいながら屋根をべっこべこに叩きまくり、ついには頑丈な屋根に穴をぶち開け、そこから自由落下。二本足で体操選手ばりの着地をしたあと、うっさいくらい鳴り響く警報ブザーを無視し、赤外線センサーを全部素通りし、防犯用に仕掛けられていた自動ビーム発射機を軽く無視し、途中でぶはーって吹き出してきた炎を素通りし、触れた瞬間流れる高圧電流も無視し、ガラスケースを手袋のついた手で外すと、目的のお宝を手に取った。 「うむ……」 代わりに自分の姿を模したフィギュアと『お宝は頂戴した。パンツマスクより』というメッセージを箱に戻し、満足げに頷いたのだった。 「うむ、うむ」 と、その時である。 「「そこまでだ変態野郎!」」 大量の警備員が彼をがばっと取り囲んだ。 お宝を手に周囲を見回すパンツマスク。 「ぐっ、なぜばれた……!?」 「なぜばれないと思った!?」 すげえ今更言うが、パンツマスクはリベリスタである。 それもすっごくつよいリベリスタである。 警備員がフィクサードだとしても、蹴散らして素通りできちゃう強さである。 が、しかし。 『おおっと、彼らに手を出してはいけませんよ怪盗パンツマスク。なにせ彼らは一般人でゲスからねえ』 備え付けテレビに前歯の長い男が映った。 「お前は、悪田汲!」 『パンツマスクは一般人を傷付けることが出来ない。ならこうして一般人で囲んでしまえばいいのでゲス。アタクシなーんて頭がいいんでゲショ!』 「一般人の皆さんを盾にするというのか! おのれぇ……許ざん!」 『もう警察に通報しています。アタクシとずぶずぶに癒着した悪徳警官がどっと押し寄せるでゲスよぉー!』 これは、1999年7月。 彼が刑務所から脱獄しナイトメアダウンの戦いへと加わり、そして命を落とす……その一ヶ月前の出来事である。 ●15年前の7月へ なんか穴あいててそれが15年前の7月につながっててこっちに影響あるか知らんけどND対策出来るかもしれんし当時の人たちと仲良くなって発言力得てーの激戦区に戦力集めーのNDと戦いーのとつぎーのしようよっていう話はもう何件も聞いてきただろうから省くね! 「で、当時の真雁光5歳が知ってるっていうおじさんがこの人ね」 アイワ ナビ子(nBNE000228)は劇画調のスケッチ画を提示した。 パンツマスクの変態だった。 「神田・輝男(かんだ・たらんてぃーの)さんだよ」 「読み方おかしいだろ!」 「いや、えと、あってます」 「えっ?」 「あってます……」 真雁 光(ID:BNE002532)がそんな風に言うもんだから、皆スッと黙った。 「まあこの人の持ってる盗賊ネットワークに介入して発言力を得ればNDへの対策にも近づけるんじゃねっていうもくろみで、当時盗賊業界で大事件として扱われてたパンツマスク逮捕事件を解決してみようじゃねーのってはなしじゃねーの」 説明によると、我々はパンツマスクが包囲されている場所にそのまますとんと現われる形で事件に介入できるらしい。 なんでそうなってんのか知らんし、知りたくもないが、重要なのはこの依頼が『豪邸からの脱出』にあるということである。 「豪邸には山ほど一般人がいて、それらみんなを傷付けずに豪邸を脱出しなきゃいけないのね。そのためにはいくつか条件があって……」 ナビ子がクーピーで書いた図によると。 第一関門:開かない防火シャッター。 シャッターが全然開きません。物理衝撃にも強いし追っ手も来てるのですぐに開かないと積んじゃいます。小さい隙間を通るか電子ロックを解除するか壁の向こう側にある開閉ボタンを押すかしないといけません。 第二関門:100人の警備員 一般人の警備員が気持ち悪いくらい沢山いるのですが、そのド真ん中に脱出に必要なスイッチがあります。しかも中には10人くらいフィクサードの警備員がステルスで混じっているので普通の幻影スキルじゃ見抜かれちゃいます。 彼らに見つかること無くぽちっとできないといかんのです。 第三関門:SP四天王 唯一の脱出経路である塔を登っていくには階段を使うしか無いんですが、その途中にはSP四天王が待ち構えています。 彼らに足止めされてはアウトです。一人ずつ『ここは任せて先へ行け作戦』を敢行しましょう。 第四関門:塔のてっぺんには悪田汲さんが特殊に改造したアーティファクトアーマーで襲いかかってきます。 こいつを残る戦力で倒し、脱出をはかるのです。 最後はパンツマスクの用意した改造グライダーですいーっと逃げ出せます。 『ここは任せて先に行け』してた人たちも割と自力で逃げ切れるのでご安心ください。 「そゆワケだから、ぐっどらーっく、とぅーゆー!」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:八重紅友禅 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 7人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2014年08月16日(土)22:01 |
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■メイン参加者 5人■ | |||||
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●怪盗パンツマスク危機一髪の巻 前傾姿勢を保ち、熟練のスプリンターのように壁際を走る男がいた。 靡くマントを追いかけて、サーチライトが彼を照らす。 壁に映り込むシルエットがゆらめき、男へ向けて無数のサブマシンガンが発射された。 大きくジャンプし、物陰へと転がり込む。 ドラム缶の裏で身を屈めた。 どう考えても三十発くらい普通に当たっていた筈だが、男は『フゥ、マスクが無ければ即死だった』とか言って額をぬぐっていた。即死どころかかすり傷ひとつしていない。 覆面とビキニパンツ、そしてマントという圧倒的かつ変態的なフォルムでありながらなんとなく憎めない男。それが怪盗パンツマスクである。 「しかしどうしたものどうか。相手が殺しても死なないフェイト所持者ならたたき伏せることもできたかもしれないが、一般人では死んでしまう。きっとご両親とかが悲しむし、そういうことはしたくないなあ」 腕組みをして、ついでに頭上にネコを乗せてうなるパンツマスク。 「ではここは一つ、俺が飛び出して注意を引くというのはどうだろうか」 隣で身を屈めていたパンツマスクがビッと指を立てた。 「何っ、それでは俺が危険にさらされてしまう。銃弾というのは痛いんだぞ。中にはエリューション能力者も混ざっているかも知れない。そうなればとても痛いぞ」 「なあにかえって免疫がつく。もしエリューション能力者がいれば目印にパンツでもかぶせておくさ」 「ほ、ほんとうにいいのか俺?」 「任せておけ、俺!」 「分かった……気をつけろよ俺!」 「ああ、俺!」 パンツマスクはパンツマスクへとサムズアップし、パンツマスクは頷いてきびすを返した。ドラム缶の裏から飛び出すパンツマスク。銃撃に晒されながら走るパンツマスクの背中を見て、パンツマスクはうむと頷いた。 そして。 「……そういえば、なぜ俺が二人もいるんだろう」 突如現われてスムーズに協力した偽パンツマスクとは誰だったのか。 ぶっちゃけちゃうと『三高平固有種』猿佐 貞公(BNE003086)である。 なんかパンツという響きだけで『是非あっしにも協力させてください! パンツの名の下に!』とかいって協力しにきた変態である。 「だが助かった。これで脱出できる」 のっしのっしと歩いて行くパンツマスク。 すると、突如として無数のシャッターが下がった。 前も後ろもがしゃがしゃ閉まっていくではないか。 「む!? これは……出られないぞ! 壁を壊すにも時間がかかる。一体どうしたら……!」 ぐぬぬーと言って、ついでに肩にイタチを乗せて頭を抱えるパンツマスク。 とそこへ、普通のドアをガチャッと開けて『勇者を目指す少女』真雁 光(BNE002532)が現われた。 「そこはボクに任せてください!」 「む……!?」 つるぎによろいにてぶくろにマフラーというありきたりな姿に、パンツマスクはくわっと目を見開いた。 「勇者か!」 「なんでわかったんですか!?」 「俺のブラザーにそういうコスチュームにロマンを感じている者が居るんだ。子供が生まれたら絶対勇者に育て上げたいと常々……む? そういえばお前はなんとなく雰囲気が……」 「あっあああそれより! 扉が開かないんですよね!?」 まさか十五年後から来たその子ですよとは言えないので、光は両手をばたばたやって強引に話題をシフトさせた。腕組みして『しかしあの子は身体が弱いからなあ。強く育ってほしいなあ』と感慨に浸っていたパンツマスクはハッとして現実に戻ってきた。 「そうなんだ。沢山の扉を通りたいんだが、斧で壊し続けると時間がかかってしまう」 「ならいい方法がありますよ。ボクはですね、旅をしている時に通れない扉や宝箱に困ることが多いんです。でもこの『アバカム』があれば一発解錠なんです!」 「おお、さすがは勇者だな! 早速やってくれ!」 「任されました!」 テロレロリンという妙なSEと共に次々に開いていく扉。 パンツマスクと光は再び閉まっちゃう前にとさっさか通路を抜けていった……のだが。 「むむっ、これはまずい! 隠れるんだ!」 「ひゃ!」 言われるままに物陰に隠れる光。 おそるおそる顔を出すと、なんかのコスプレ会場みたいに警備員がぎっしり詰まったフロアが見えた。どう考えてもこんなに必要ないが、全員麻雀やったり煙草吸ったりバーチャルボーイやったりしていたので、どうもここが休憩するためのエリアっぽかった。 「ここを避けていくんですか?」 「そうしたいが、改造グライダーで逃げるためには塔の最上階へ行く必要がある。そこへの入り口はあのスイッチで開くんだ。だが警備員がこうも沢山いては……むむむ、困ったぞう!」 またも頭を抱えるパンツマスク。ついでに頭上にオウム。 っていうか今までどうやって怪盗やってたんだろうと思ったがそれは置いといて。 「お困りですねパンツマスクさん!」 パンツを被った『名状しがたい忍者のような乙女』三藤 雪枝(BNE004083)が天井あたりからシュタっと下りてきた。 「……年頃の女性がそんなものを被ってはいけない」 「あっはい」 よく考えたらなんでこんな格好をしたんだろうと自分を戒める雪枝さんである。 たしか、パンツマスクの仲間になるには変態的な服装をせねばと思ったのがきっかけだった気がする。 「ところで、見たところクノイチのようだが……何か策があるのかな?」 「あ、そこは普通にあたしを信用してくれるんですね」 いきなり天井から知らない女性がシュシュッと参上したら普通は警戒するものだが、そこは懐の広さ東京ドーム百個分のパンツマスクさんである。 「実は俺の親戚のバンド仲間の兄弟がよくいく喫茶店の常連客にそういう格好にロマンを感じる者がいてな」 「グレート他人なんですが」 「ロマンで服装を選ぶ人間に悪人はいないんだ」 そうかなあ。違うと思うなあ。 が、信用してくれるに越したことは無い。話を進めることにした。 「あそこのボタンを押したいんですよね? 私が今からチャチャっと言って、押してきましょうか」 「いやしかし危ないぞ?」 「大丈夫です。見ていてください!」 雪枝はビッとサムズアップすると、その場からシュっと移動した。 そしてトイレに立った警備員を後ろからガッでやって服をワーッと脱がせてガーッてガムテで拘束してサッと掃除用具入れにインして奪った服を着込んでサササッと顔を変えてキュキュっと体型も変えてその警備員になりすまし、LOVEマスィーン(1999年ヒットソング)を口ずさみながら警備員の群れへと混ざり込み、通り過ぎる瞬間さりげなーくボタンを押し、くるっとターンしてイッツオートマチック的な振り付け(1999年ヒットソング)をしながらさりげなく戻ってきた。 「フッ、どうです?」 「素晴らしい。なんという変相技術なんだ。さすがは忍者!」 サムズアップするパンツマスクと光。 その横で。 「ですから……皆さんのご指摘を真摯に受け止めて、リベリスタという大きな、ク、カテゴリーに比べたらア、経費、リィッベッリスッタ活動費の、報告ノォォー、ウェエ、折り合いをつけるっていうー、ことで、もう一生懸命ほんとに、能力者事件、リベェェエエリッハアアアァアーー!! リベリスタはー! 我が国のみウワッハッハーーン!! 我が国のッハアーーーー! 我が国ノミナラズ! 世界みんなの、世界中の問題じゃないですか!! そういう問題ッヒョオッホーーー!! 解決ジダイガダメニ! 俺ハネェ! ブフッフンハアァア!! 誰がね゛え! 誰が誰に投票ジデモ゛オンナジヤ、オンナジヤ思っでえ! ズエッエッアッハッハッハーハァ!!!!!!!! この日本ンンあっひゃひゃひゃああああ↑ ああああああああぁぁぁあ スー あああああああああっああああああああ、この日本っ!あっひょひょこの事件をズー経穴したいっ!!!!!!! リベリスタはスハッハッわが国のにんわっひゃはっはっーああああああああああ ズボッ わが国のみ あひゃあ わが国のみならず、世界の問題じゃないですかぁー! 命がけでええ↑えええええええ↑ひゃああああっ!!! ヒッ あなたには分からんでしょうねぇ!!」 『モ女メガネ』イスタルテ・セイジ(BNE002937)がいた。あと天井からモモンガがぶら下がっていた。 「すまん。彼女はなぜ泣いているんだろうか……」 「なんででしょうねえ……」 それが2014年のトレンドコラ素材なんですよって説明するわけにもいかないので、雪枝さんはイイ顔で流した。 「もしィ! 雪枝さんがしっしし失敗したらウェッハッハハアアアアアアン! たいやきうぐぅしてぇ! スイッチを押しに言ったんですよお!」 「そ、そうですか。それはそれは……」 失敗したときの次の手として控えてくれていたということで、ここは流しておくことにした。 「だがこれで塔に行くことが出来る。さ、みんな行くぞ!」 「「おー!」」 パンツマスク、光、雪枝、メガネ、パンツマスク、モモンガの六人(誤植じゃないよ)は、ついにワルダクミタワーへと駆け込んだのだった。 ●『氷の仮面』青島 沙希(BNE004419)がまだ出てないって? 君は何をみているんだね! 「ここの最上階から改造グライダーで壁を飛び越えていくという作戦だ。情報によればここは手薄らしいからな!」 「おおっとそうは行かないでヤンス!」 塔へと突入したパンツマスクたち。 だが彼らを待ち受けていたのは鼠みたいな前歯をしたコックだった。 彼は二本の包丁をシャカシャカ鳴らしながら言った。 「あっしはここの料理長をしているコック一郎! 魚をおろさせたら右に出る者はいないでヤンス!」 別に素通りしようと思えばできたが、なんか一郎のキャラが強すぎて無視するにできない状態であった。 うぐぐと脂汗を流すパンツマスクたちに、雪枝はすっと腕を伸ばした。 「皆さん。ここはあたしが引き受けます。さあ先へ」 「……分かった。身体に気をつけるんだぞ」 「はい」 「あと寝るときはお腹を出さないようにして、食事にはインスタント食品に頼らず肉と野菜、そしてなにより米をしっかりとるようにしてだな」 「早く行ってください!」 うむと言って走って行くパンツマスクたちを見送る。 すると、一郎がキシャーと言いながら飛びかかってきた。 クナイと小太刀を交差させ、防御の姿勢をとる雪枝。 「誰かが言っていました……忍法・我慢の術、って」 階段を駆け上り、二階へとやってきたパンツマスクたち。 だがそこには……。 「お前さんたちの狼藉もここまででゴワス!」 鼠みたいな前歯をしたデブがラーメンをすすりながら待ち構えていた。 「おいどんはラーメン二郎。ラーメンを無限に食うことができる胃袋を持っているでゴワス」 「ふふ、ここは私が……お先へどうぞ」 謎のポーズで自己主張するイスタルテ。 「しかし……」 「は゛や゛く゛い゛け゛って゛い゛って゛る゛じ゛ゃ゛な゛い゛で゛す゛か゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!」 「わ、わかった! 眼鏡は眼精疲労の原因にもなるからこまめに洗って、できるだけ軽くてじょうぶなものを」 「は゛や゛く゛!!」 急いで二郎の横を抜けていくパンツマスクたち。 「行きましたか。さあ、始めますよ」 イスタルテはどっから出したのか分からない長机を設置すると、二郎への記者会見を始めるのだった。 二度あることは三度ある。 三階へと到着した彼らを待っていたのは、ワイングラスをくるくるさせる蝶ネクタイと鼠前歯の男だった。 「ンッンー、少数精鋭でこの屋敷から脱出しようなどありえないwwwww」 「大丈夫です。ここはボクに任せてください!」 剣を抜く光。 『しかしっ!』とテンプレみたいなことをいうパンツマスクとパンツマスク(二人居る)にゆっくり首をふると、光はじりじりと三郎への距離を詰めた。 「大丈夫。必ず合流しましょう!」 「わかった。身体に気をつけて、お年玉は絶対親に預けるなよ。しかし自分のために使うのは七割くらいにして、残った分で親に何か買ってやると三倍くらいになって帰ってくるから」 「早く!」 うむと言って上への階段を駆け上るパンツマスクたち。 「……待たせましたね」 「ンッンー」 一人残った光に、三郎は不敵に笑った。 「一人で十人と言われるセッシャを一人で相手しようとは笑止千万ですぞwwww!」 次々と分裂しはじめる三郎に、光は勇敢に斬りかかっていった。 そしてやってっきた四階。やっぱりというかなんというか、瓶底眼鏡でチェックのシャツを着た鼠前歯の男が待ち構えていた。 「ドゥフフ! あの三人を抜けてきたことにはセッシャ、素直に関心ですが、ドゥフ! これ以上先へは行けないと思いますけどヌカコポォ!」 「フ、ということは……ついに俺の出番のようだな」 パンツマスクがビッと親指を立てた。 「いいのか、俺!?」 「さあ早く」 「分かった。納豆は付属のタレをかける前にある程度混ぜると食感も栄養効率もよくなるから」 「さあ!」 先を促され、方にセキセイインコを乗せて階段を駆け上がっていくパンツマスク。 残されたパンツマスクに、五郎は眼鏡くいっくいしながら振り返った。 「オタクを無視するとは、あっこれはセッシャ自分のことをオタクと。別にセッシャオタクではなくてですね――」 「ニート五郎! アタクシでゲス!」 振り向いた先にいたのななんと! 「これは悪田汲様!」 「ゲースゲスゲス! アタクシ、パンツマスクと仲直りしたでゲス。だから四天王には特別手当と有給を出したでゲスよ」 「ほ、本当でござるかあ? なんか言わされてる感じがあるでござるなあドゥフフフ!」 「信じるでゲス!」 そう、皆さんはもうお気づきだろう。 彼は悪田汲などではない。彼に変身した貞公なのだ! 「ではクイズ、悪田汲様の勝負下着の色と柄は!」 「金のヒョウ柄でゲス!」 「むむ、やるな……!」 ●格好以外は紳士。それが怪盗パンツマスク。 塔の最上階へとたどり着いたパンツマスク。方にリス乗っけつつさあグライダーを出して脱出だと思ったその時。 「そこまででゲスー!」 外から強制的に一台のアーティファクトアーマーが突っ込んできた。 全長2メートル強。明らかに色々延長されているメカスーツに身を包んだ悪田汲であった。 「こいつはある技師に大金払って作らせたアーティファクトアーマー、名付けて『ゲスの極』!」「むむ……!」 ゲス極が腕をドリルにしてパンチを繰り出してくる。 パンツマスクは交差させた斧でなんとかガード。 だがこのままでは警備員たちが駆けつけてしまう。 「一体どうすれば……!」 フリーハンドで頭を抱えた。 その時。 「待たせましたね!」 飛び出してきた光が、豪快な斬撃を繰り出した。 スパーンと切れて飛んでいくドリルアーム。 「ああっ! 五億円したゲスドリルが!」 「あなたもパンツの魅力に気づくべきですよぉ!」 わたわたしていた所へ貞公がサッと出てきた背中をつつーっと撫でた。 それだけで訳も分からず自分をなぐり始めるゲス極。 「あなたもいつか運命のパンツと巡り会えます」 「ややややめるでゲス! この装甲には三億円もかけたでゲス!」 「ウーハッフッハーン!」 「お待たせしました!」 そこへイスタルテと雪枝も飛び出し、ゲス極の装甲をベッコベコにしてしまった。 「む、今だ!」 渾身のアックスアタックを繰り出し、ゲス極を破壊。塔からあーれーと言って落ちていく悪田汲。 「よし、それでは皆。グライダーにつかまってくれ。一緒に――」 「待っていたわ、このタイミングを!」 ゲス極を放り出した穴から脱出しようとしたその瞬間、肩にとまっていたリスがお宝を持って飛び出してしまった。 いや、リスではない。 黒いキャットスーツを着た沙希である。 「沙希さんいつのまに!」 「このお宝は貰っていくわ。じゃあね」 「させるかあ!」 モモンガになってお宝と一緒に滑空していく沙希。 パンツマスクはグライダーにのって追いかけた。 夜空。月をバックに飛ぶ影。 そして……。 「「かんぱーい!」」 悪田汲屋敷から徒歩15分のとこにある居酒屋黒木屋にて、彼らはビールをジョッキで乾杯していた。 沙希も普通に混じっていた。あとお宝はパンツマスクに返した。 あと貞公は予備に持っていたパンツマスクフィギュアとオリジナルパンツを交換した。 あとお宝についていたルビーの宝石は光にプレゼントされた。 あとイスタルテはずっと号泣していた。 あと雪枝は終始忍者装束で幻視しわすれていたけど周りが回りだからスルーされていた。 その後彼らは一晩飲み明かし、カラオケして、ボーリングして、夜明けのタクシーでバイバイした。 ……以上である! |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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