下記よりログインしてください。
ログインID(メールアドレス)

パスワード
















リンクについて
二次創作/画像・文章の
二次使用について
BNE利用規約
課金利用規約
お問い合わせ

ツイッターでも情報公開中です。
follow Chocolop_PBW at http://twitter.com






Fly!Fly!Fry!

●多分こんなやり取りの思念が元
「おい、いたか?」
「あっちに飛んでった!」
 虫取り網と虫カゴを手に、公園を駆ける小学校中学年と思しき少年達。彼らの狙いは――ただ1つ。
「よっしゃー! トンボ捕まえた!」
 そう。トンボである。
 夏の暑さにも負けず、少年達はトンボを追って駆け回る。
「なあ、なあ。トンボを英語で何て言うか、知ってるか?」
 やがて、一人一匹は捕まえた頃、少年の一人がそんな事を言い出した。
「ドラゴンフライって言うんだぜ!」
 答えがわからず首を傾げる仲間達に、得意げに言い放つ。
「えー、何だそれ」
「なんでトンボなのにドラゴンなんだよー」
「フライって飛ぶってことだろ? それ、空飛ぶドラゴンの事じゃねーのか?」
「何でかは知らねーけど、とにかくトンボはドラゴンフライなんだって!」
 言い出した少年以外は半信半疑と言った様子だが、違うときっぱり否定するわけでもない。
 その時、黙って聞いていた一人がこう言い出した。
「ドラゴンフライかー。美味そうだな」
「美味そう?」
「うん。エビフライみたいじゃんか」

●Rの巻き舌は難しいと思う
「今回のエネミーは、ドラゴンフライとドラゴンフライとドラゴンフライだぜ」
 ブリーフィングルームにてリベリスタ達を待っていた『駆ける黒猫』将門伸暁(nBNE000006)は、いきなりそんな意味の判らない事を言い出した。
「英語を使わずに頼む」
 とは言え、この男に関しては割りといつもの事。リベリスタ達も特に動じず、日本語での説明を促す。
「今回はビッグなトンボと飛竜――そして、唐揚げがエネミーだ」
 ますますわけが判らなかった。
「こいつだ。E・フォース、ドラゴンフライ」
 モニターに映し出される、トンボと翼の生えたドラゴン。但しどっちも大きさは殆ど同じ。
「一見別々の個体だが、大元の思念はオンリーワン。この3種を総称して、ドラゴンフライだ」
 ドラゴンフライ。
 英語でトンボの事だが、それを知らずに直訳そのまま、ドラゴン=竜、フライ=飛行じゃないの、なんて疑念の混ざった思念が神秘と結びついて発生した模様。
 故に、トンボ型とドラゴン型の2つが――うん?
「3種って言わなかったか?」
 数が足りないぞ?
「ああ、そうだ。このままだとスモールだな。ズームした方が判り易いか」
 首を捻ったリベリスタ達の反応に、NOBUはモニターの画面を操作。トンボ達の上空をズームした。
 良く見れば、無数の何かがそこに映っている。拡大されたそれは――。
「3つ目のドラゴンフライ。唐揚げだ。」
「いやいやいやいや、待てよ!? おかしいだろ!? flyとfryでスペル違うだろ!?」
「LとRのたった1文字。そのくらいの違いなんて、些細なものだぜ」
 些細じゃねえよ。発音全然違うじゃねえかよ。
 まあ、そんなツッコミが通じるNOBUと神秘ではない。
「トンボ、ドラゴン、唐揚げがワンセットだ。唐揚げは、トンボとドラゴンを倒さない限り、この空間に降り続けるぜ」
 唐揚げって降るもんじゃないよね。
「ちなみに、トンボもドラゴンも当然飛んでる。ま、奴らの攻撃にも射程はある。地上から攻撃が届かない事にはならないだろう。ビーストでもないから、この空間から離れる事もない」
 地上から攻撃が届くなら、何も敵の得意とするフィールドで戦う必要は――。
 と思ったリベリスタ達の考えを、次のNOBUの一言があっさりと打ち破った。
「但し、降ってくる『唐揚げ』を放っておいて溜め込むと、ボンバーだぜ」
「何でだよっ!?」
 思わずツッコんだリベリスタ達に構わず、NOBUは説明を続ける。
「『唐揚げ』と言ってもE・フォースの一部だからな。しかも迂闊に攻撃するとな、やっぱりボンバーするぜ」
 いやもう、それ唐揚げじゃないよね?
 唐揚げに見える爆弾だよね?
「『唐揚げ』をセーフティに戦場からロストさせる手段は、だた1つ――お前達のストマックに収める事だ」
 でも食えるのか。
「食えると言っても、舐めてられないぜ。降ってくる量は革醒者1人に付き『1唐揚げ/秒』から、だからな」
 なんだその単位。
「唐揚げ専門の単位だ。考案、俺」
 なんだか満足げなNOBUはさておき、説明の続きを聞いてみよう。
「最初は1人に付き『1唐揚げ/秒』だが、トンボかドラゴンのどちらかを倒すと『2唐揚げ/秒』になるぜ。
 更に『唐揚げ』は10秒毎に一定確率でボンバー。その分はロストするが、ボンバーしなければ、当然、溜まり続ける。そして、ドラゴンフライを全て倒してから約10秒後――残りの全唐揚げがボンバーだ。
 そこで、この人数にコールしたわけだ。部隊を2チームに分ける。バトル部隊と、ランチ部隊だ」
 1人当たりで降る唐揚げの個数が決まるのなら、人数を増やせば当然、降ってくる唐揚げも増える。
「だが、『唐揚げ』だけなら兎も角、上にもドラゴンフライ達がいる状況じゃ落ち着いてランチとは行かないだろ?」
 ランチと呼べるかはさておき、これはNOBUの言う通りだろう。
 片手間に食べながらでは食べられる数はたかが知れるし、戦いに集中出来ない。
 そこで2チームだ。
 それぞれに求められるのは、タイムアタックと(胃袋的な)持久戦。
 ファイト部隊は上空のドラゴンフライ2体をランチ部隊の胃袋が限界を迎える前に撃破する事が求められる。
 一方、ランチ部隊はせめてバトル部隊が敵を倒すまで食べ続ける事が求められる。
「バトル部隊が食っても良いし、ランチ部隊が戦闘したって構わないが『唐揚げ』の放置だけはBADだぜ。
 カレイドによれば、誰も『唐揚げ』を食べずに最後の爆発をした場合、威力は相当ヘビーになる。速攻で決めてもクレーターが出来かねないって事だからな」
 だからどんな唐揚げだよ。


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:諏月  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 4人 ■シナリオ終了日時
 2014年08月17日(日)23:11
 諏月(すうげつ)です。
 またとてもとてもお久しぶりです。毎日暑いので、唐揚げ降らせます。
 対飛行生物とフードバトルの混合です。

●成功条件
 E・フォース『ドラゴンフライ』の討伐。及び、最後の爆発を誰か一人でも耐え切る事。

●E・フォース『ドラゴンフライ』
 トンボ型、ドラゴン型、唐揚げ群型、の3種混合で1体のE・フォース。フェーズ2。
 それぞれ独立したHP、ステータスを持ちますが、大元の思念は同じなので纏めて1体とされています。

*トンボ型
 見た目はまんまトンボ。3mほどのオニヤンマっぽいの。
 ステータスは命中、回避、速度が高めで他はそこそこ。
 戦闘能力は以下の通り。

・高速飛行生物
 (P:飛行中、飛行によるペナルティを受けず速度+100。但し飛行不可能になった場合、全ステータス半減)
・超複眼(P:視界360度)
・ドラゴンフライテイル(A:物遠単:[ノックB])
・ウィングブレード(A:物遠単:[流血])

*ドラゴン型
 所謂、飛竜。蝙蝠系の翼を持っているドラゴン。
 ステータスは神秘攻撃と体力が高めで他はそこそこ。
 戦闘能力は以下の通り。

・飛行生物(P:飛行中、飛行によるペナルティを受けない)
・ドラゴンブレスF(A:神遠単:[業炎])
・ドラゴンブレスI(A:神遠単:[氷結])
・ドラゴンブレスS(A:神遠単:[ショック])

*唐揚げ群型
 毎ターン開始時、とにかく唐揚げが降り続きます。1ターンに降る個数は人数×10個。(最大120個)
 トンボ型かドラゴン型のどちらかを倒したそのターンから、人数×20個に増えます。(最大240個)
 両方倒したら、そのターンの出現が最後になります。
 ぶっちゃけ1つ1つは通常攻撃ワンパンで倒せる程度ですが、数が多い上に以下の能力を持っています。

・反射式連鎖爆発(P:自動発動)
 攻撃を受けた個体の周囲(半径10m以内)に他の個体がいた場合、1個体辺りに付き[反射]と同等の防無視50ダメージ。
 例)
 攻撃した個体の周囲に他の唐揚げ型が4個あった場合。
 5個の唐揚げが消滅するが、攻撃者は50×5=250のダメージを受ける(連鎖は一回まで)
 なお、反応するのは、唐揚げ型を対象にした攻撃のみ(他の攻撃の流れ弾等では発生しない)

・時限爆発(P:確率発動)
 各ターンの終了時、50%の確率で、1d100%個の唐揚げが爆発する。
 爆発した唐揚げ型は消滅するが、個数と同等の防無視のダメージを戦場全域の地上に与える。
 5m以上の飛行でダメージ回避可能。
 例)
 300個の唐揚げ型が戦場に残っている場合。
 1d100が80なら300の80%で240のダメージ。(小数点以下は切り捨て)

・最後の爆発
 唐揚げ型以外の全てのドラゴンフライを倒した次のターンの最後に発動。
 残る全ての唐揚げ型の個数と同等の防無視のダメージを戦場全域に与える。
 この時、1000個以上残っていた場合、爆発の威力は上空にまで及びます。=安全圏ないよ。

●状況
 どっか田舎の空き地。人払いとかは気にしなくても平気です。
 部隊分けは、
 メイン参加者→バトル部隊。上空のドラゴンフライ2体担当。こいつら倒さないと終わらないし。
 サポートさん→ランチ部隊。唐揚げ食べる担当。胃袋空けといてね。
 とNOBUは勧めてます。(プレイング字数的にそれが良いんじゃないでしょうかと思います)

●食
 ランチ部隊が食べる事に専念するなら1d100個が基本です。援護すると半減します。
 バトル部隊が食べる場合、戦いの片手間になるので1d10個が基本になります。飛行してたら無理です。
 なお、食べ続けて満腹が近づいてくれば、次第に食べるペースは落ちます。
 その辺、プレイング勝負ですが、リベリスタの胃袋でもいつか限界は来るでしょう。多分。

●その他
 調味料飲み物etc、持込自由。
 降ってくるのは唐揚げだけですから。水分は水の一滴も降ってきませんから。
 でも、ビール片手に唐揚げうめえ! なんて余裕かましてると、多分爆発します。
 あと未成年は飲んじゃダメ。


 以上です。
 ではでは、よろしければご参加下さい。
参加NPC
 


■メイン参加者 5人■
ハイジーニアススターサジタリー
リリ・シュヴァイヤー(BNE000742)
フライダークナイトクリーク
月杜・とら(BNE002285)
ハイジーニアスプロアデプト
離宮院 三郎太(BNE003381)
ジーニアス覇界闘士
ミリー・ゴールド(BNE003737)
ビーストハーフダークナイト
守堂 樹沙(BNE003755)
   

●どらごんふらーい
 ブゥゥゥゥゥンッ。
 バサバサッバッサバサッ。
 長閑な田園風景に訪れたリベリスタ達を出迎えたのは、巨大なトンボと翼持つドラゴン、2つのドラゴンフライの羽ばたく音。
 そして、香ばしい揚げ物の香り。
「なんというか……神秘というのは実に不思議なものですね……。なぜ、からあげが、空から降ってくるのでしょうか……」
 神秘のもたらす非現実的な光景に、『銀の腕』守堂 樹沙(BNE003755)が思わず呟く。
 それに関しては、そう言うものだから、としか言い様が無い。
「ともあれ、やるしかありませんね」
「では、唐揚げ担当は全員でローテーションしていく、と言う事で良いですね?」
 気合いを入れる樹沙の横で、離宮院 三郎太(BNE003381)が方針を確認する。
「そうね。お腹いっぱいになったら次の人と交代してサイクル回す感じで」
 答えるのは、方針発案者である『フレアドライブ』ミリー・ゴールド(BNE003737)。
「ゆっくりやってもジリ貧だし。スピーディに食べる量減らしましょってね」
 やっぱりミリーってばかしこい! と自画自賛が混ざるが、特に異論は上がらない。
 だって皆、唐揚げ食べたかった。
「じゃ、先ずはリリちゃんからだねっ」
 促す月杜・とら(BNE002285)に頷いて、『Matka Boska』リリ・シュヴァイヤー(BNE000742)はロザリオを掌に置いて、両手を祈りの形に組む。
「さぁ、お食z――お祈りを始めましょう」

●食べる人:リリの場合
「――この恵みに感謝を。頂きます」
 食べる前のお祈りも済ませたリリは、早速唐揚げに手を伸ばし始めた。
 降って来るのは、10秒毎に50個。
 50個を、次の10秒までにどれだけ減らせるか――それが唐揚げとの戦いだ。
「空から降ってくるからあげは初めてです。どのような味がするのでしょうか?」
 さっぱり系の和風おろしポン酢につけて、ぱくり。
「あら」
 衣は油っぽさがなく、さくっとした歯ごたえ。
 肉も程よく脂が乗っていて、噛むと溢れる旨み――実に美味しい。
 自作レシピに活かしたい所だが、如何せん、勝手に完成して出てくる為に手がかりは味しかない。
 舌で覚えようと、次々に手を伸ばす。
 決してがっついているような素振りなど無いのに、リリによって唐揚げが見る見る内に減っていく。
 次の50個が降ってきた時には、残っているのは5個しかなかった。
 此処でリリは、おろしポン酢をケチャップに変える。
 他にも、ゆず塩、チーズ、ミートソース、マヨネーズetc。飲み物は色の濃い烏龍茶。長期戦(お食事)に望む気満々であった。

 一方、トンボ&ドラゴンと戦う4人。
「高い所にいれば届かないと思ってるのかしら! むしろ離れてくれてる方が撃ちやすいってもんよ!」
 ミリーの喚んだ地獄の炎が上空に赤い華の如く燃え広がる。
 フィィィィィィンッ!
 空に響く甲高い羽音。
 炎の中から飛び出した大きな影が急降下。ミリーの横を通り過ぎた次の瞬間、その肩から鮮血が上がった。
 上空へと戻るトンボの翅を狙って2人が動いた。
「動物愛護的にどうかと思うけど、崩界を防ぐには致し方なし。心を強く持とう!」
 とらが空色の翼を羽ばたかせ、風の渦を起こす。
 が、背後からの攻撃に気付いたトンボは急上昇し、翅への直撃を回避する。
 漆黒を纏う樹沙が、時間差をつけて瘴気を放つが、それもトンボを捉え切れない。
「くっ。速いですね」
 トンボの動きを何とか目で追いながら、樹沙が臍を噛む。そう簡単に翅を奪う事は出来そうになかった。
 ――ギャォォォォッ!
 そこに響く咆哮。トンボの反対側を飛ぶドラゴンの口から、赤い光が生まれる。
「皆さんは出来るだけボクの少し後ろへっ」
 それを見た三郎太がドラゴンへと走り、逆に3人はドラゴンから距離を取る。
 射程に残った三郎太に、ドラゴンが炎のブレスを吐きかけた。
 が、絶対者たる三郎太には、その炎も一時的な熱のダメージを与えるに過ぎない。
 すぐに福音が響き渡り、仲間の傷が癒される。
 その直後、ボムッと小さな爆発音が響いた。
「すみません、2、3個ほど爆発してしまったようです」
 そう謝ったリリは、新たに増えた唐揚げにチョコレートをかけて食べている。
 横には、かき氷に良く使う練乳のチューブも置いてあった。
「これが案外美味しいのです」
 とは言え、いくら味を変えても、流石にリリの食べるペースは次第に落ちてきていた。

●食べる人:とらの場合
「調味料、置いておきますね。良かったら皆さんも、どうぞ」
「ってかさ、何の肉だった? 鳥?魚? まさかトンボじゃないよね!?」
 交代を告げられたとらは、口の火傷回避に水を飲みながら訊ねる。
 トンボだったら、水で流し込むしかないじゃないか。
「食べれば判りますよ」
 微笑みを浮かべたリリの言葉の意味を、とらは一口食べて理解した。
 そうとしか、言い様が無かったのだ。
 強いて言えば鶏肉に似ているが、鶏ではない。魚でもない。大穴でトンボ――というわけでもなさそうだ。普通に、肉だ。せめて魚類以上の肉だ。これは絶対に、虫ではない。
 要するに、全然食べられる。
「わざわざ食える状態で降って来るくらいだから、美味しく食べて欲しいのだろう。だから地面には落ちるなよ!?」
 とらのその言葉が唐揚げに聞こえた訳ではなかろうが。
 空気を読んだのか、近くに落ちてくる唐揚げ。
 とらは次々とキャッチしては、レモンぢるをかけて口に放り込んで飲み込む。
「とらちゃん小食だけど、アークに来て3年以上“簡単な仕事”してる常連だし~?」
 覚醒食材を24時間延々と食べ続けるとかな!

 一方、トンボ&ドラゴンとの戦い。
 トンボの速さ――回避力に攻めあぐねていた状況が、変化する。
「世界の敵、神様の敵は一切合財総て倒します――食べられないフライならば、倒すしか」
 Amen、と呟いて、リリは右手の『祈り』と左手の『裁き』をトンボに向ける。
 月の女神の加護を得て輝く2つの銃口から放たれた死神の魔弾は、トンボの翅に風穴を開けた。
 ガクンと傾いたトンボだが、さすがにそう簡単に墜ちはしない。
 すぐに体勢を立て直すと、猛スピードで急降下。尾の先端を叩きつけられ、樹沙の身体が宙に浮く。
 福音を響かせる詠唱を始めようとした三郎太は、ドラゴンの口に蒼白い光が生まれているのに気付いた。
「させませんっ!」
 回復を一時中断すると、ミリーの前に飛び出し、氷のブレスを代わりに受ける。
「色んなブレス吐けててかっこいいわね。ミリーは火の方が好きだけど」
 そう言いながら、ミリーは三郎太の背中越しに地獄の炎をトンボに放つ。
 一方、樹沙は狙う相手を、ドラゴンに変えていた。
 トンボの翅を奪い、墜としてからドラゴンを狙う予定だったが、今の彼女の技量では意識を集中した所で飛んでいるトンボの部位に当てるのは難しい。
 それでなくとも、樹沙の技は生命力を削る。無駄撃ちするくらいなら、当てられるドラゴンに。
 黒い瘴気がドラゴンを捉えた直後、ボムンッと音を立てて23個ほどの唐揚げが爆発した。
「うっ……ま、まだ大丈夫。訓練されたリベリスタの実力を見せてやんよっ♪」
 少々(お腹が)苦しそうにしながら、とらは降ってきた唐揚げにハニーマスタードをつける。
「皆、タイタニックに乗った気分で見ているがいいお」
 10秒後、今度はさっきの倍近くの唐揚げが爆発した。

●食べる人:三郎太の場合
 とは言え、確率5割の割りに、意外と爆発しない唐揚げ。
「無理をしないで下さい。次はボクが」
 とらのペースが明らかに落ちて、そろそろ残りが3桁に届きそうになった所で、三郎太と交代。
「やはり、ジューシーな脂がどんどん胃に重くのしかかるようですね……」
 先の2人の食べっぷりから、冷静に状況を分析する三郎太。
 相手は唐揚げ。となれば、必需品のレモン汁の出番。
「レモンパワーでさっぱりと! 更に飲み物は烏龍茶。これならいくらでも食べられますっ!」
 かなりの量を食べる覚悟で望んだ三郎太だったが、彼が食べる番になって、ローテーションの問題が発生した。
 回復を一手に担っていた彼が食べる事に専念してしまうと、回復が途絶えるのだ。
 本人はその事にすぐに気付いたが、詠唱の合間に食べる程度ではあまり多くの唐揚げを食べられず、増加した後に28個ほどの爆発を許してしまう。

 響いた銃声は、4発。リリが放った魔弾がトンボの翅を撃ち砕く。
 2対4枚の翅の内、右側の2枚の機能を失ったトンボは為す術なく落下した。
「再起不能になるまで燃やすわよ!」
 ミリーは腕に業火を纏い、残る2枚の翅を纏めて炎で薙ぎ払う。
「次はそっち!」
 一方、とらはドラゴンに狙いを変えて、翼を動かし魔力を帯びた風の渦を放つ。
「纏めて狙えないのがもどかしいですね」
 一部が凍ったドラゴンへ、樹沙はやはり瘴気を放つ。今日だけで、もう何度目だろうか。
 ドラゴンの口に、再び生まれる蒼白い光。
 それを見た三郎太は、食べる手を止めて樹沙の前に飛び出した。
「ミリーさん、交代しましょうっ」
 胃袋はまだまだ余裕だったが早めの交代を申し出る。
「この場の情況を素早く把握し、可能な限り効率的な作戦を瞬時に判断しコントロールする……。それがボクの……プロアデプトとしての戦い方ですっ」
 このままでは唐揚げを減らしきれず、庇う事も出来ない。
 それよりはローテーションを早めた方が良い。それが三郎太の出した判断だった。

●食べる人:ミリーの場合
 これまでそれぞれに調味料を用意していたリベリスタ達だが、ミリーの準備は観点が違った。
 味覚を変えるより、効率よく一気に唐揚げを確保しよう――そう考えた結果、用意したのは虫取り網(新品)。
「よっと!」
 ぐるんと振り回し、降ってくる唐揚げを纏めてキャッチ。それを次々に口に運んでいく。
 口の中が脂っこくなったら、冷たい麦茶で流し込み、喉を潤す。
「ていうかこれ、誰が作ってるの?」
 ミリーの素朴な疑問には、多分誰も答えられない。

 一方の戦闘は、三郎太が戻った事で、体力面の不安はほぼなくなっていた。
 全ての翅を失ったトンボの攻撃は、大した脅威ではない。
 リリはドラゴンの翼も奪おうと、狙いを定めて引鉄をひく。既にその翼には、幾つかの弾痕の穴が。
 続いてとらが動いたその時、喚んでいた運命を司るルーレットが幸運を呼び込み、ドラゴンには樹沙の瘴気が不運を齎した。
 プスンッと乾いた音を立てて不発したブレス。
 そこに、とらの翼の生み出した風の渦が、瞬間的に竜巻と言っても良い程の風速を発揮する。
 ドラゴンが風に翻弄された所で、ズドンッ! 溜まった唐揚げが60個ほど、爆発。
「けっふ……これで唐揚げ倍加したらきついわね」
 戦況と、自身の胃袋の余力を考え、ミリーも交代を申し出た。

●食べる人:樹沙の場合
 やっと食べる番の回って来た樹沙。
 銀毛のサルの腕で持つのは、マヨネーズのボトル。
「自分が食いしん坊なのは自覚してますが、こうした準備は必要だと思ったんです」
 マヨネーズ味に飽きたら、塩コショウや七味唐辛子もある。マヨネーズに混ぜたっていい。
「さあ、気合入れて食べ尽くしましょうか!」
 青い瞳を輝かせ、樹沙も唐揚げ攻略に掛かった。

 ――ギャァァォォォンッ!
 ドラゴンの上げた咆哮は、断末魔。
 なんかもー翼は穴だらけだし身体は焦げて凍って毒で変色して、まさにフルボッコな目にあって落下したドラゴンが、徐々に消えて行く。
 それはつまり、降ってくる唐揚げの増加を意味していた。
 10秒毎に100個だ。
 そんな大量の唐揚げが降る中、樹沙は適度に烏龍茶を飲みつつ、飽きたらマヨネーズに七味を加えたりして味を変えて。
「美味しいですね」
 可能な限り数を稼ぎながらも、焦らず、落ち着いて、唐揚げを味わって食べていた。
「……あの」
 弱ったトンボ。そして、周りに溜まっていく唐揚げ。
 それを見たリリは静かに挙手。
「このままでは、最後に大量のからあげが爆発しそうです。もう一度、からあげ食べに戻っても良いでしょうか」
 確かに、樹沙一人では、溜まるのは避けられないだろう。
「いいんじゃないでしょうか。あとはトンボだけですし、3人でも充分かと」
 三郎太の言葉に、とらとミリーも頷いて。
「では……爆発なんて、からあげを粗末にする真似は、天に誓ってさせません。極限まで頂きます」
 銃をしまったリリは、再びおろしポン酢を手に、再び唐揚げに向かう。
 運命の加護を燃やす勢いで(唐揚げじゃ燃えないけど)食べるリリに、樹沙も刺激されたか。
 2人はこれまで以上のペースで唐揚げを次々と平らげていく。
「おお、すごいね! 2人が頑張ってる内に、こっちも早いとこ片付けちゃおう!」
 とらの放った風の渦がトンボを飲み込み、ひっくり返した。
「こうなれば速攻が最大効率ですっ」
 三郎太の全身から伸びた幾つもの気糸が、ジタバタするトンボの腹部を撃ち抜く。
「食べた分は運動して減らしましょ!」
 摂った脂分も燃やす勢いで、ミリーは最大火力の炎を放った。
 何とか体勢を戻して逃げるトンボを、暴れ狂う龍の炎が飲み込み、焼き尽くす。
 トンボがドラゴンの後を追って消滅するまで、時間はかからず。
 ――それから10数秒後。
 ポンッと小さな花火のような音が、戦場の広場に響いた。
「しばらくからあげは見たくないのだわ」
「ご馳走様でした――からあげ、大好きです」
 うんざりとした様子のミリーの呟きに3人が頷く中、1人満足気なリリであった。

■シナリオ結果■
大成功
■あとがき■
リベリスタの、食欲凄かった。
もうちょっと唐揚げの爆発が脅威になる予定だったのですが、殆どかすり傷ですよ。
NOBUの想定より少ない人数でも、皆が頑張って戦って、唐揚げ食べた結果ですね。
ローテーション案も、この人数ならそれがベストだったでしょう。
その努力は結果に反映しました。

あとね、飛んでる敵じゃなくて、唐揚げを食べる方にフェイト燃やそうとした、貴女。
その、からあげ大好きっぷりは、からあげな称号があっても良いと思います。

ご参加、ありがとうございました。

================================================
称号付与!
『からあげシスター』リリ・シュヴァイヤー(BNE000742)