● 暑い日の夕刻だった。午後六時を回った頃だろうか。 一台のセダンを挟む様に。ミニバンが数台連なっている。 山梨県から朝霧高原を通り、かつて富士宮と呼ばれていた都市へと抜けるのは国道139号線だ。 「観測地点はこの辺りでいいのかね?」 「だ。と。思いますがねえ」 白衣姿の男達がおとなしいシルバーを基調とした車に乗り込んでいる様は、異様そうな光景ではある。だが平日昼の車通りはまばらで、いかにも研究者然とした姿が安全そうに見えるのか、稀に引いた人目とて、すぐにはずされる結果となっていた。 最も彼等の正体がエリューション能力とフェイトを有する悪行集団――つまりはフィクサードである事からなんらかの能力を用いているのかもしれない訳だが。 フィクサード達の目的は2014年の現在においても、完全に解き明かされた訳ではなかった。 彼等は国内フィクサード組織の主流七派に属する『六道』と呼ばれる集団である。いくつもの派閥に分かれる中の『地獄』を呼称する一派であり、中でも『黒縄地獄』を名乗る謎の多い集団だ。 総体としては恐らく生命や命、死の有り様へ通じる何らかの目的を持っているのだろう。個々の最終目的は違っている可能性もあれば、同じである可能性もある。今回の短期的な目的そのものは違う可能性とて存在する。ただその求道は手段を選ばず、現代でのアークは多大な迷惑を被っているという訳だ。 先頭から三台目のミニバンに陣取り、同僚に見える男としきりに議論をかわす壮年の男は、等喚受苦処(とうかんしゅくじょ)と呼ばれている。生物工学を得手とし、六道の研究施設の中でキマイラを研究していた男だが、一連のキマイラ事件の折、去る2013年の1月にアークとの交戦で死亡していた。 何もこの時勢に突如として蘇った訳ではない。カーラジオから流れるダイオキシン関連のニュースは、彼等に流れる時が1999年の夏であることを告げている。 「旃荼処(せんだじょ)君だって忙しかったろうに。黒縄(こくじょう)君は特異予測地点だの何だのと言っていたがね」 やれやれと首を振る等喚受苦処に、旃荼処と呼ばれた男が皮肉気に笑う。 「あの様子ですからねえ」 現場主義の等喚受苦処は、臨床を好む旃荼処とは馬が合う。 「わしゃ知らんよ。神秘的特異点だの、机上の量子力学だのなんぞは」 「まあまあ」 『神はサイコロを振らん、と』 ――それは本当かの? 反面、斯様に述べ机上の演算に生涯を捧げる黒縄当人や、ハンバーガーとコーラをを片手に日夜パソコンに向かう畏鷲処(いじゅうしょ)とはどことなく相性が悪かった。 何より気に入らないのは、黒縄が自分達を山梨だか静岡くんだりまで引っ張り出しておきながら、もくもくと研究を続ける姿勢である。根暗の畏鷲処とて後方の車でパソコンに向かったまま没頭を続けているらしい。全く気に入らない。有体に言えば嫉妬に近いのだが、早く研究施設(げんば)に帰りたいのだ。 二人は後方のセダン後部座席に鎮座していると思われるボス(黒縄)の様子を思い浮かべる。 いつだってすぐに脳裏に描く事が出来る。十になったばかりに見える少女の姿が表情一つ変えぬまま、上の空の様にただただ計算を続ける姿は怖気すら誘うのだ。その異常な髪の長さを知れば少女が見た目通りの存在でない事は見て取れるとは言え、ただ一つの生活観も漂わせず、目的に執着し続ける姿勢は求道を旨とする六道の中でさえ浮いている。 第一に正直な所として、彼等は同僚の研究になどまるで関心はなく、ただ己の道を探求しているに過ぎない。しかし研究が深く特化し細密になるほど、他の分野は表層を舐める他なく、知見者に頼らざるを得ない面があるのも事実だ。故にそれぞれにとってそれぞれの研究分野が必要になる。そうである以上は、己自身もこうして頼まれればのこのこと着いてくる他ない。 ギブアンドテイク。互いが求道者であればこそ性分も分かり合えるという訳だ。居心地が悪いと言えば嘘になる。だから悪態は付けど、かのボス殿(黒縄)にはよほど火急の用事であったのだろうという納得も出来たのだ。 「ずいぶんと大所帯になったもんだな。こんなに派手な」 「まあまあ、うちの若いのが出来る奴でしてね。今以上のものだって必ず手配出来ますよ」 旃荼処の助け舟には、あえて乗ってやらなかった。 「それまでは金も掛かる……」 ため息と共に横目を走らせると、ドレス姿の少女がふわりと微笑んだ。 「必ずやご期待にお答えしますわ」 流暢な日本語だが、目鼻立ちと肌の白さから恐らく外国人であろう。 かつて六道と連携していたと思われる傭兵と思われる集団だ。 「いやはや。そちらは心配しておりません。花園乙女(シェオールメイデン)の力は頼りにさせて頂きますよ」 等喚受苦処とて気を使った風の返答は返せど、言葉には雇った以上は働いて貰うのが当然だと言う毒を孕んでいるのだろう。 勘付いた少女は僅かに目を細めたが、あくまで微笑みは崩さぬまま視線を外した。 手持ち無沙汰な悪人同士。仕様もない舌戦モドキである。 己が及ばぬ分野に対して率直な敬意を払うのは、悪人揃いの黒縄一派と言えど珍しい良識と言えるのかもしれない。それは戦いに関しても同じで、比較的戦力に余裕がない彼等は、その力を他組織に頼る事で解決するという判断に異はなかった。 金であるにせよ、なんらかの供与があるにせよ。支払い雇われるという関係の中で相手の機嫌を損ねるのは不毛というものである。彼等は建設的であることをこそ好むのだ。 むしろ己が自身は平和を好むと信じきっているからこそ、そんな場面がこない事を望んでいると言う部分もあった。 ――だが。 先頭を走る車が突如急ブレーキを踏んだ。 息をつく間もないままに、車体が左右真一文字に切り裂かれる。 「どうした!」 等喚受苦処の身体をシートベルトがきつく締め付ける。 アスファルトを焼くゴムの臭いが鼻を突く。 両断された先頭車両が爆発炎上する前に、三台目に当たるこの車も急ブレーキを踏んだらしい。 だが目の前を小さくなって往く二台目の車はあえてアクセルを踏み込む決断をしたようだ。 赤い影が舞い、二台目の車を炎が包み込む。 襲撃か。頭がそう判断する前に、白衣の男達は車を飛び降りる。 「六道。だな」 燃え盛る車両の上に立つ男は、険しい表情を崩さぬまま大業物を車両に突き通す。 悲鳴にも似た怒号が断末魔へと変わった。 「リベリスタ――ッ!」 散開するフィクサード達は傭兵も含め三十名を越える。 その中で円陣を組むのは十名程の剣士達であった。明らかな寡兵である。 「飛焔一刀流。灯堂紅刃(とうどうくれは)――参る」 すらりと見えるのは長身故か。実際には二メートル近い隆々たる体躯である。 見た目は四十路程だろうか。穏やかな老いを抱いた丹精な顔立ちより、纏う険しさばかりが目立つのは禁欲的な性格からなのだろう。 彼こそが、ナイトメアダウンの英雄と謳われる『炎の剣匠』灯堂紅刃その人なのであった。 突然の襲撃ではあったが、フィクサード達の対応も早い。 「奴は狂犬だ、鞭で躾けろ」 等喚受苦処が顎を撫でる。 「ふうん、足はひっぱらないでね」 「言うねえ」 「やだ。そこのムーンシャドウ(みそっかす)の事よ」 軽口を叩きながらも包囲網を狭めるフィクサード達の後背。 「ほう――『炎の剣匠』とは」 車からゆっくりと降り立つ少女がそっと面を上げる。 「さしものわらわも知っておる」 言葉の頭にだけ感嘆を付与した少女は、空虚に透き通った表情のまま静かに言葉を続けた。 こうして。激突が始まる。 ● 「そんな当時の日本、ね」 ブリーフィングルームで、古い資料に目を通すリベリスタは、昨今見なくなりつつある紙媒体を手のひらで押さえつける少女を見やる。 きょうび、空調の風がページをめくってしまうのだから戸惑いもするだろう。 「はい。おそらく」 資料を配布した『翠玉公主』エスターテ・ダ・レオンフォルテ(nBNE000218)が答える。 「エスターテは平成生まれだっけ?」 「同じ二十世紀です」 おどけたリベリスタへの回答は間髪居れず。何か思う所があるのだろうか。 正確な誕生日が曖昧な拾い子のエスターテにしてみれば、おそらく己自身が生まれるか、そうでないかの微妙な時代の事。実感など沸こう筈もない。 アークが問題の現象を確認したのは、七月の終わりの事である。 これまでの戦い、崩界度が影響を及ぼしたかどうかは定かでは無いが、三高平市『内部』に突然発生したリンクチャネルの性質は通常とはずいぶん異なるものだった。 ここボトムチャンネルの住人は、これまで数多くの上位世界から一方的な侵略を受けてきた。ここは文字通りのボトム。多重世界のどん詰まりであり最下層と思われている。だがそれがこのチャンネルに限っては違うらしい。 現時点での客観的観測結果から言えるのは、ボトムの住人は移動経路として利用出来るが、接続された先の世界の住人にはそれが出来ないという事である。寡聞な話だ。 だがそこがどんな世界なのかという点について、アークには、そしてリベリスタ達には確信めいた答えがあった。 そこは『多分』日本だ―― 穴の先には日本がある。1999年の夏。7月末の日本。 そこがそうであるという論理的な解はない。けれど誰しも確信出来る。 アークは勿論発足していない。三高平市は存在しない。 そこは近くて遠い世界線―― 世間ではダイオキシン問題が騒がれ、携帯電話が普及を始めて間もなく。 インターネットはもっと遠いもので。ノストラダムスの予言を鼻でせせら笑い。 けれど今の様に、いつ終焉するとも思えぬ不況に喘ぐ日本。 あの日。そんないつもの様な日常は、今日の様にとても暑くて。 それはかの悲劇『ナイトメアダウン』が発生する二週間程前の事で―― もしかして誰かが挑むのだろうか。 きっと過去の世界で。おそらく遠くない未来。 あのR-TYPEに―― 「さて。どうしたもんかね。当時のリベリスタ連中と連携すればいいんだろ?」 アークが決めた方針は単純明快なものだった。 当時のリベリスタと知己を結び、やがて訪れる危機的状況を伝えるというものだ。 とはいえ、よく知らない人間に突然世界の危機を説かれても信憑性は薄い。 「はい。でも未来から来たという様な情報は、与えないで下さい」 今度こそ日本に訪れる黄昏を回避しなければならない訳だが、ただでさえ歴史の改変に相当するかもしれない事態である。乱暴な方法であるとは言え、不安な要素は少ないほうが良いだろう。 ならば。 「力を見せてやればいいんだな」 おそらく手伝われる事そのものは、やぶさかではないだろう。リベリスタ同士、利害も一致する以上は元々分かり合える筈でもある。 ならば現代においてバロックナイツや七派を打ち破るアークの力を眼前に示せば、発言に信憑性も生まれるというものである。 では機会はいつか。具体的にどうするべきか。 「この日、恐らく灯堂紅刃というリベリスタが、六道の部隊と交戦する様です」 時系列としては『した』と述べたほうが良いのだろうか。これから遭遇するのは、なにぶん過去の話だ。 資料によれば、この灯堂という男は四十歳程に見えるが、神秘界隈では古くから存在が確認されているらしい。大正一の一刀流だとか。どこかの戦争で装甲車を斬り捨てた、とか、刀一本で戦艦を沈めたであるとか。今となっては本当か、話についた尾ひれかも分からない逸話が残っている。 「すげえじーさんなんだな」 後はどうだろうか。当時の古い資料だ。敵の強さも何もかも、詳しくは分からない。 ともかくここで交戦したリベリスタがナイトメアダウンに生きている事は確実だ。当たり前の事だが死ぬという事はなかったのだろう。 危険を買って出る以上、余計な手出し等と思われたくはない訳だが。 続く資料によれば、敵の六道フィクサードは戦力を削られたのだから勝利と言えるのかもしれないが、この戦闘には問題もいくつかある。 まず、ナイトメアダウンの英雄剣士様の弟子が、この戦いでほぼ全滅しているという点。 そして灯堂紅刃はナイトメアダウン当時において、どうやら重症のまま参戦したという点。 資料の時系列から、この戦闘で対R-TYPEの戦力減衰が生じていると推測出来たらしい。 どうにか出来るのであれば、どうにかしたい事態である。 一方の六道等フィクサード連中はどうだろう。 「この資料のさ。神秘的特異点の観測どうのって、いやな感じだな」 「はい」 敵の狙いは分からないが、万が一にもこれから起こるであろう未来の予測や、現象の解析。それにこちらの目的を悟られれば面倒な事態になりかねない。気をつけたい事態である。 「こちらの発言の信憑性に、連中が一役買ってくれる可能性だってあるけどな」 それもそうなのだ。 敵はともかくこちらとしても、そこが現在と時間軸の繋がった世界なのか、そうではないのか等、気になる点は多数ある。 そもそも過去への移動とは何なのか。いくらかのフィクションを例にとり、例えば時間軸が繋がっていたとして、介入は何を起こすのか。繋がっていないとすればどうなるのか。 仮に繋がっているとすれば矛盾によるパラドクスは起き得るのか。そうでないのか。仮に影響があるとすればどの程度のものになるのか。影響を知覚出来るのか。それとも無自覚なままに実際的な影響は既に起きているのか。そこまで言えば『胡蝶の夢』だの『世界が五秒前に出来た』等という話になってしまうのでさておき、まさか影響が無知覚のバタフライ・エフェクトでは既に目も当てられない訳だが、現時点での感触も踏まえさすがにないと思いたい。 他には何が考えられるだろう。仮に世界線そのものが全く違うパラレルなものだったとしても。そもそもR-TYPE自体が異世界の神(ミラーミス)であり、当時どの様な撃退をしたかも考慮すれば悪寒さえしてくる。たとえばだ。この過去世界でR-TYPEが異世界へと押し返されたとして、それはどこへ行くのだろうか。あらゆる懸念は尽きないが、うまくやるしかないだろう。 どちらへ手を伸ばすかどうするのか。今何を取り何を成すかは無限の可能性を内包しているとは言え、腕の長さには限りだってある。 この状況で。今、出来る事は何か―― 「それにしても。こんな時代にもねえ」 六道とて突然沸いて出た訳はないのだから、そりゃあ居はするのだろうけれど。 ろくな資料が残されていない事だけが気がかりだが、黒縄と呼ばれる少女が、恐らく非常に強力であることは推測出来る。何せリーダー格なのだ。 幹部である等喚受苦処は過去アークが交戦した際よりもやや若く見える。交戦時の強さは現在のアークトップリベリスタと同程度か、過去である事からそれ以下であろうと推測出来る。強い相手ではあるがこちらは現代で一度破った相手であるから、うんざりする以外の問題はない。 一方で旃荼処と呼ばれる人間は、現代とは風貌が違っている様だ。名前というよりは称号の様なものなのであろうか。そもそもどう考えても本名とは思えない訳だがそれはどうでもいいだろう。 「パソコンねえ」 畏鷲処の持っていたノートパソコンというのは、一体何に使っているものなのか。単位のギガであるとか、回線のブロードバンドであるとか。そんな言葉とは無縁の時代だった。第一さして興味も沸くものでもないのだが。 どのみちそんな畏鷲処も含めて三人の幹部は同程度の強さだろう。地獄一派はその称号に相応しい能力と性格傾向だと言われているが、観測出来ていないものは分からない。 それから花園乙女と呼ばれる集団。恐らく現代における以前、六道と組んでいた謎の傭兵集団であると思われる。こちらの目的も知れたものではないが、こんな時代から活動していたという事なのだろう。こちらも現代でちらほら見えた組織としての影は兎も角、見ない顔ぶれ故に能力は警戒しておく必要があるのだろう。 それはそれとして、寡兵とは言え炎の剣匠を謳われる存在を重症にまで追い込んだ集団である以上は、只者である筈がない。 第一に、当時のこの戦闘で実際にリベリスタ側が勝利したという分析も、曖昧なものだ。 「これって例えばさ」 どんな事情があったかは知れないが。 「すんげえ強え剣術馬鹿の英雄サマが一匹居て」 「はい」 「命も顧みずに大事な研究員を斬って斬って斬りまくれば――」 そんな事態になればまずは熾烈に交戦するのであろうが、研究員と言えども命ある資産だ。敵は逃げるなり、何か取引が生じるなりして、やがて事件は収束するのかもしれない。 R-TYPEに真っ向から挑みかかった命知らずの英雄殿はともかくとして、普通に考えれば誰しも自分が可愛いのだから、そんな事態も想定出来る。ならばそれは勝ったという状態なのか。それとも。 そうは思えど結局の所、分からないことだらけには違いないのだけれど。 「つうか。めんどうくせえ相手だなあ」 敵の数が多く、頭を張れそうな奴もそこそこ居る。 殺してしまえば歴史が変わるかもしれないとか、そんな事も言っていられそうにない。 「いっそフィクサードは全員ぶっ潰したっていいんだろ?」 強気なリベリスタにエスターテは微笑み、頷いた。どうせそうなるに決まっている。 「ま、なるようになるだろ」 「お願いします」 桃色の髪の少女は、静謐を湛えるエメラルドの瞳でリベリスタに信頼の意思を投げかけた。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:pipi | ||||
■難易度:HARD | ■ ノーマルシナリオ EXタイプ | |||
■参加人数制限: 10人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2014年08月10日(日)22:46 |
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■メイン参加者 10人■ | |||||
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● 揺らめく陽炎。 山の稜線にくっきりと陰影を描く力強い雲は、黒煙に翳んでしまった。 景色をいっそ昏くすら思わせる眩い陽光が、漸く陰りの時を迎えようとする前。乾いたアスファルトに吹き抜ける夏の風は、焼けたガソリンの臭いを運んで来る。 アークのリベリスタ達が現場へと到達したのは、今まさにとあるリベリスタの一団がフィクサードへ突然の襲撃を決行している最中だった。 敵と味方が次々と入り混じる只中で、一点の曇りもない白銀の篭手から放たれる氷撃が、ドレス姿の少女達を瞬く間の内に氷の彫像へと変える。 「私はルア。貴女は?」 目の前の可愛らしいドレスの少女達に、『雪風と共に舞う花』ルア・ホワイト(BNE001372)は微笑みかけた。彼女もふわふわのドレスや花が好きだから。 「私達は」「私達は」「「まだ、野草なの」」 少女達の返答はどこかぎこちなく、不思議な感触を覚える。 なぜこんな少女達が戦っているのだろうか。一体何を考えているのだろうか。 「そうね、あそびましょ」「そうしましょ」 もしも魅せて記憶に残れば、そしてもし向こうでもう一度出会えたら覚えててくれるのだろうか。 だが戦いの手を抜くわけにはいかない。 その隣では誰よりも速く駆け出していたルアが、既に三名の少女を氷像に変えている。 相手の少女達の表情は不思議と虚ろで、ルアは心の奥底で不安にも似た気色の悪さを感じていた。 戦いに対する躊躇や、傷つく事への恐怖。そういったものがまるで感じられない。 それだけならば戦いが好きな性格であればあり得るのかもしれないが、それともまた違うような。 「六道にはいろいろ迷惑をかけられててね――」 悲鳴ひとつ上げる事のできない敵を眼前に、軽い口調へ万感の想いをこめて。 かつて。六道羅刹の拳に傷つき、境界線の制服を血に染め、それでも己が道を貫き通したあの日は―― 「助太刀するよ」 今は口が割けても伝える事が出来ない。故に『ガントレット』設楽 悠里(BNE001610)はただ其れだけを述べた。 前方に見える男の背。その名を『炎の剣匠』灯堂紅刃(とうどうくれは)と言う事を悠里は知っていた。 『以前、楽団との決戦で彼の残滓とは見えた事はあったが……』 脳裏に過ぎった言葉は、『誠の双剣』新城・拓真(BNE000644)も同じである。仮に口にしていればその見解は一致していたに違いない。 『まさか紅刃さんと一緒に戦う事になるとは思ってもなかった』 おおよそ一年半程前に、悠里は男の影と出会っている。 「この後の事を思うと素直に喜びにくいけど――」 それはバロックナイツが一人『福音の指揮者』ケイオス・”コンダクター”・カントーリオが率いる楽団を相手に戦った日の出来事だ。 死者を操る楽団員は、何の因果か三高平市に眠る『英霊』灯堂紅刃の魂を穢し、彼の戦闘本能だけを武器としてアークと激戦を繰り広げたのである。 そう。彼は死んでいる。悠里はそれを知っている。 『――それでもなんだか少し嬉しくなるな』 一緒に戦おう、先輩。と。その想いの発露、発端は何か。 「灯堂紅刃――関連性2%、相関係数0.1、因果性0%」 そんな中、敵陣後方で不気味に呟かれるのはフィクサード達のリーダー黒縄の声。 一体何を計算しているというのか。 「ハローリベリスタ! 突然ですが、助太刀のリベリスタだよー!」 「オレはリベリスタのフツ! 加勢させてもらうぜ!」 声を張り上げる『骸』黄桜 魅零(BNE003845)と、『てるてる坊主』焦燥院 ”Buddha” フツ(BNE001054)へ向け、紅刃は僅かに眉を顰めた。胡乱な加勢者達へのひと睨みは、残念ながら歓迎ムードとは程遠い。 「リベリスタ同士、共闘といこうじゃねえか」 いかにも快活なフツの言葉に続けて魅零も言葉を紡ぐ。 「いらない? まあまあそんな素っ気ない事言わないでよ!」 紅刃の弟子と思われる剣士達が僅かにどよめく。 「目的は同じ、利害も同じ! そこに他意なんて無いんだから!」 戦場が静寂に満ちたのは、恐らく刹那の時ではあろう。 だがその沈黙は誰にとっても妙に長く感じられたに違いない。その因子は何であるのか。 彼女の言葉に嘘はない。 同じく、眼前の世界にも嘘はない。 リベリスタ達の知る紅刃は英霊である。かつての英雄と讃えられる死者である。だのにここに居る。今は生きている。 そんな紅刃等はアークという存在を知らない。日本における神秘界隈の雄たる主流七派を次々に蹴散らし、世界最強のフィクサード集団たるバロックナイツを立て続けに打ち破り、異界の神であるミラーミスさえ撃破するアークのリベリスタ達という存在を知らない。 其れもそのはず、当然の事である。 ここは、今日この日は1999年の夏。アークが誕生する一昔前の世界であり、アークのリベリスタ達が生きる『現代』ではない。 戦場へ到達するなり、次々に声をかけるアークのリベリスタ達を、この時代のリベリスタ達はそもそも知る由がないのだ。 あくまで答えるのは沈黙。ただ車両に突き刺さる剣だけが甲高い音を立て引き抜かれた。 この場に来て明確に分かるのは、フィクサードへの喧嘩は灯堂が売った事。そしてそこへ介入を、好しとしない空気だ。 とはいえ、こう述べる他ないのも正直な所である。それにだがここで退いては、こんな所までやってきた意味がない。 「第三勢力――関連性5%、相関係数0.2、因果性1%」 再び、黒縄の呟き。アークを知らぬのはフィクサードとて同じ事。 さて。はて。 「どーも、ご機嫌うるわ……っていつもの通り文句はいらないか」 こうなれば仕方ない。『覇界闘士<アンブレイカブル>』御厨・夏栖斗(BNE000004)はとにかく手短に、敵のスキルや構成等、伝える事の出来る情報を伝える。 「僕らも、そこの六道とは因縁があってさ、共闘してくれたら助かるけど!」 剣匠(センパイ)の技にその身を晒したのはいつの事だったろう。あれから夏栖斗は更に強くなっている。かつて大きかった筈の力量の差は今はどうなっているのだろうか。 「君たちにここで、倒れてもらっちゃ困るってのもあってさ」 それはこの戦いにおける最も重要な目的の一つだ。 その言葉に僅かに視線を合わせた紅刃だったが、夏栖斗の自信は感じ取れたろうか。後はその力量を見せつけ、言葉を信じてもらう他ない。 こうしてアークのリベリスタ達がこの世界へやってきた理由は、簡単な様でいて少々こみいった事情を孕んでいる。 状況を踏まえ『桐鳳凰』ツァイン・ウォーレス(BNE001520)は自問自答する。 『過去の改変など好かん、影響が無いなら介入する意味も無い』 最もな見解なのだろう。 そもそもここはツァイン等の住む2014年の三高平市へ、突如出現したリンクチャネルの先に繋がっていた世界だ。 アーク本部の解析とリベリスタ達の直感によれば、ここは1999年の日本だという事になっている。 ここは過去なのかもしれない。ただの良く似た異世界なのかもしれない。 過去を変えるとは、とどのつまりどういう事だろう。 これまでに同じ現象が観測されていない以上、今はまだフィクションや学術的想定しか出来はしないと思われる。 そこへ干渉するというのは、どの様な懸念を孕むのだろうか。 たとえばこの世界が本当に『過去そのもの』だった場合はどうだろう。 アークのリベリスタ達が、この地へ降り立った時点で現代まで脈々と流れる時間へ干渉してしまう事になる。 恐るべきは、改変を行った途端に世界が全て書き換えられてしまうという想定だ。この場合、正に例の『親殺しのパラドックス』に遭遇した場合、どうなってしまうのだろう。 するとどうだろう。歴史が変わるのか。けれどそれならばそれで良い事もある。R-typeとの戦闘における犠牲も減らせるかもしれない。 そこでは一つの街が滅んだのだ。多くの命が無残に失われたのだ。 アークとはそもそもR-type出現によるナイトメアダウンの再来を防ぐ為に設立された組織であるのだから、きっとこれに干渉しない手はないのだろう。 だがカオス力学系によれば、事象が与える影響はたとえ小さなものであっても、それは無視されるものではなく結果に多大な影響を及ぼす可能性を秘めているらしい。これは蝶の羽ばたきが嵐を呼び起こすという例えと共に、バタフライ・エフェクトと呼ばれている。こうなればつまるところ、結果は実際上予測不可能という事になる。そんな恐ろしい事を手がける事は、果たして正しい事なのか。やるべき事なのか。 干渉により移ろってしまった世界は、移ろったという事が己自身に認識出来るのだろうか。ひとまず出来ないと仮定すれば、そこに打つ手はない。 カオス力学と組み合わせるのであれば、全てがすでに取り返しが付かず、それを認識することさえ出来ないというのだ。 今。そこまでの感触はあるのだろうか。 『この結果によって、果たして未来は変わるのか?』 『怪人Q』百舌鳥 九十九(BNE001407)は仮面の下で北叟笑む。 ここでひとまず時間軸への干渉という事象について。これを極論すれば、必ずある種のパラドックスへとたどり着く。例えば過去への旅行者が、己自身の親を殺害した場合、どの様な事になるのだろうか。いわゆる『親殺しのパラドックス』である。 『それとも、この展開も含めて予定通りなんですかな』 これに対してはいくつかの考察がある。一つ。時間の流れというのは常に首尾一貫しており、時間旅行者の介入は全て織り込み済みという考え方だ。これを『決定論』と呼ぶ。こんなものは、まるで運命の手のひらで踊らされている様だ。仮にそうだったとすればひどく気分が悪いが、為したい様に為す他ないという事でもある。ならばこれは捨て置く他ない。 他には何があるだろう。この世界の時間軸の外側には、その集合体と呼ぶべき概念が存在する場合も想定される。そこには無数の世界が存在しており、それぞれを合わせてあり得る全ての可能性を内包しているという様な論。これではそもそもこの世界は完全に別の世界であり、干渉する意味すらないとも言える。 『興味は尽きませんのう。クックック』 そもそも、事は学術や空想では想定しえぬ状況を常に内包している。それこそが神秘の神秘たる所以だ。 とは言えごく単純にこの戦場において、アークのリベリスタは過去のリベリスタとフィクサードの双方から歓迎はされていまい。 それでも。多くのリベリスタの胸をちりちりと苛む焦燥は、この二度と帰ってこない過去を垣間見た感傷だけではないのではないか。 『けどもだ……』 ツァインは焼け抉れたアスファルトを踏みしめる。 この現象はひどく話が早く、余りに唐突で―― 多くのリベリスタが悩み、それでもどうにかそれぞれの答えを描きつつある。 出しようのない答えに戸惑う疑念や懸念を振り払う様に、ツァインは騎士剣を高らかに抜き放つ。 悩むのは後でいい。だから。 「加勢するぜ!」 魅零も声を張り上げる。 「紅刃たんには負けないよ! どっちが先に敵を潰せるか勝負」 「好きにしろ」 「勝てたら私達のお話、是非とも聞いて欲しいな!」 すげない紅刃の言葉は、しかしリベリスタ達を受け入れるというものだった。 今はただ、疑心暗鬼に揺らぐ細糸の様な直感を頼りに出来る事をやる他ないのだ。 「『地獄一派』には私達としても色々と含むものがありましてね。――勝手ながら、加勢させていただきます」 そう述べる『柳燕』リセリア・フォルン(BNE002511)は力に劣る弟子である宮部茜と、他の弟子達を横目に捉え並び立つ。 僅かに反りのある彼女の片手半剣(セインディール)は、洋剣日本刀の差こそあれど刀身の長さと重さ、その扱い方が奇しくも紅刃等の流派で用いる大業物と良く似ている。戦いにおいても技量だけでなく身体能力も高める修練の傾向すら良く似ていた。剣や技だけではなく彼女等の因果は不思議なもので、現代においても彼女は何度宮部茜と戦った事だろう。初めはその剣技を捌く事だけで精一杯だった。やがてリセリアは茜と並び、完全に凌駕し、その魂すら救済した。最早この過去においては技量など比べるまでもない。横に立ち、その構えを感じるだけで分かる。この時代の茜であればリセリアとそう違う年齢でもないが、歴然たる力量差は己が生来の才と戦闘経験の濃密さを物語っているのかも知れなかった。 それに。彼女の師にして想い人たる灯堂紅刃―― 募る思い出は、今だけは兎も角。 『状況の変化に敵が布陣を変える前こそ、一気に突き崩すチャンス』 現代と過去と。入り混じるリベリスタの連合となれば、いかに数に勝るフィクサードとはいえ完全な包囲網形成を妨げるには十分な数になっている。 仕掛けるのは今だ。全身の反応速度を一気に高める。その技は紅刃の弟子達とて開放出来る基礎中の基礎ではあるが、使い手そのものには大きな差があるのだ。 激突が始まった。リベリスタ達の前に躍り出たのは花園乙女(シェオールメイデン)のサンダーソニアでソードミラージュの技を持つ。彼女は剣を抜き放つや否や、雷光を身にまとい、一手の内に前衛のリベリスタ達にルアと同様の氷撃、グラスフォッグを放つ。 拓真と悠里は身動きがとれず、軽やかな身のこなしでどうにか捌いたルアも刃を身に浴び体中に血が滲んでいる。 早くも乱戦の様相だが、敵には癒し手と思われる旃荼処に、クロスイージスのカトレア、前衛を固める花園乙女達が居る以上、切り崩すのは困難だ。 「綺麗な子たちといちゃつけるのは光栄だね!」 「あはっ!」 次々と迫る少女達の白刃の嵐を受け、薙ぎ、かわし。夏栖斗は軽口を叩く。 夏栖斗の挑発で敵の一団は彼に集中攻撃を仕掛け始めた。それはあたかも統制がとれている様でいて、その実ただの闇雲な連携なってしまっている。 と。同時に。 「第三勢力――関連性74%、相関係数0.6、因果性54%」 それまでの無表情とは一転して喜悦に満ちた黒縄の瞳。 『地獄一派が特異点を調べるってほんときな臭いな』 そんな夏栖斗の危惧は、かなり真相に近づいているのだろう。 彼女は、一体何を見つけている? ● 戦闘は初手からリベリスタ達の完全な優勢に運んでいる。 夏栖斗の挑発によって多数の敵に加え、カトレアの注意を引き付ける事が出来た。 「さて、見知った顔もちらほらと居るようですが何とも不思議な気分ですのう」 もう二度と会う事も無いと思っていたが。 その直後には九十九によって、アルストロメリア、ムーンシャドウが怒りに囚われる。 「相手は強敵だ、皆、無理しないようにしようぜ! 生き延びるのも立派な目的、だよな。オレ達も無理しないぜ!」 フツの提案に紅刃の弟子達は一様に頷く。確かな力量に裏打ちされた言葉に加え、フツ個人の持つ人徳の様なものを感じたのだろう。彼の言葉には戦いに明け暮れる先達への自然な配慮が感じられた。 宙に浮かぶ悉曇は大呪顕現の証。それは鞭となり、網となり、フィクサード達の身体に絡みつく。 ツァインのラグナロクによって支えられたリベリスタ達は、悠里とルアの氷撃、フツの大呪封縛鞭によって押さえつけられたフィクサードへと猛攻を仕掛けた。対する主な反撃は夏栖斗と九十九によってほぼ完全にルートを押さえ込まれ、それ以外は影響を逃れたフィクサードの散発的な攻撃に留まっている。傷とて六道と花園乙女のリーダー格から受けたものだけだ。強力な癒し手を保持しないリベリスタにとって、フィクサードにはホーリーメイガスの旃荼処が居る以上、蓄積すれば恐ろしいが少なくとも当面はツァインのラグナロクによってどうにかなる筈である。 スキルそのものはカトレアが保有していてもおかしくはないが、怒りによってその行動は攻撃方向に傾いているのだから、ここが片付けばとりあえず一定の目処は立つ。 「興味が沸く奴等だ――」 魅零の暗黒、拓真の弾丸と共に、告別の矢雨によって敵陣前方を完全に引き裂いた『弓引く者』桐月院・七海(BNE001250)は呟く。 六道の黒縄は、おそらく何らかの事態に気づいているのだろう。それにこの世界が本当に『過去』であるのかも今はまだ分からない。 彼女等を倒すべきか、見逃すべきかの判断は難しい所である。 とはいえ見ない顔の六道連中に、その傭兵である花園乙女達は別だ。見逃す理由もないなら、仕留めてしまおう。ここは、あえてそうするべきだ。 仮にこの世界が本当に過去だとして、アークが望む以上の影響、つまり近く巻き起こるであろう対R-type戦の戦力増強以上の事をするのはリスクもある。しかしアークと交戦記録のない相手を殺害するということは、ある種の『実験』にもなるかもしれない。戦闘で敵陣に犠牲が生まれてしまうのは、互いに命を賭けて戦う以上排除しようがない事象だ。アーク本部と合意している作戦上でも致し方ないと判断されている。重要なのはあくまでR-typeの出現日時、出現場所への影響を最小にとどめる事だ。だから問題はない。そう信じる他ない。 ともあれ道は切り開かれた。 「その着物を着た髪が長い少女はプロアデプトだ、間違いなくこの中で一番強い! だからここにいるリベリスタで一番強そうなアンタに任せたい!」 フツの叫びに紅刃は力強く答え、敵陣の奥深くへ飛び込む。今やそれを邪魔立て出来る者は居ない。 『剣の扱い方は違えど、祖父と比肩した剣の担い手――その戦い、存分に見させて貰う』 剣の高みを目指す拓真とて、彼の技量には興味が尽きない。 楽団を打ち破ったあの夜、拓真は夏栖斗、悠里、フツ、リセリアと共に戦った。 拓真は作戦上、死者の群れを押し返す事に注力し、紅刃の英霊を押さえていたのは夏栖斗である。 拓真にせよ、リセリアにせよ。剣を交える事に興味がなかったと言えば嘘になるが、こうして肩を並べ、生きた剣技を間近で見るのも望む所だ。 黒縄の懐に飛び込んだ紅刃は刀を大きく振りかぶり、一気に切り裂く。近くの研究員は消し炭に変わる。身を挺して庇わねば黒縄とてどうなっていたか分からない。 あの技――『炎の剣匠』の紅蓮の太刀。 リセリアは遠く数年前の記憶を呼び覚ます。弟子である茜が放つ天雷は彼の技に良く似ている。おそらく彼当人も操る事が出来るに違いない。 『七之太刀・天雷は祖之太刀・紅蓮の派生という事ですか』 今ならはっきりと理解出来る。その機会が巡るかは知れぬが、今一度目の当たりにすれば、おそらくリセリアはその技を―― 紅刃は強い。アークに伝わる『史実』では、紅刃はこの六道の部隊をほぼ一人で押し返した事になっている。 仮にこの戦闘がその時の通りに遂行出来るのであれば、アークのリベリスタが加勢する事で圧倒的有利な展開となる筈である。 だが実際にはどうか。 それだけで済む様な相手でも無さそうだが―― なぜだか拓真にはそんな予感がしていたのだ。 『油断はせんよ、足元を掬われるのは御免被る』 恐らくカトレアと切り結ぶリセリアも、紅刃の戦闘能力に対して拓真と同じ感想を抱いた事だろう。 紅刃の実力は確かに今の彼女等よりも更に上だ。おそらくソードミラージュとしては一つの頂点を極めているのだろう。まごう事なく一流の力量を感じる。しかし今のアークのリベリスタと比較して、最早遠く離れてはいない。それは確かな実感を伴い、確かに伝わってくる。 例えばリセリアと比較するならば、彼の圧倒的な膂力、そこから来る破壊力こそ紅刃に譲るには違いない。しかし剣技の精緻さ、足捌き、反応速度ではほぼ同等とも思える。少なくともリセリアが大きく引き離されるなどという事はあり得ない。 「いつの間に、でしょうね――」 その感覚には微かな寂寥さえ伴う。紅刃は過去の英雄である。過去その名を讃えられ、ナイトメアダウンに散ったのだと言う。だが現代世界におけるアークのリベリスタとて、今や世界にその名を轟かせる程に成長しているのだ。 対する六道の部隊も弱くはない。早くも後方に退き始めた研究者や傭兵の花園乙女達有象無象は兎も角。幹部と思しき六道の小地獄達や、花園乙女のリーダー達はアークのリベリスタ達とほぼ互角か、やや劣る程度だ。力量の比較であればアークの誰しもがそうだとまでは言い切れないが、少なくともこのパーティであれば勝てるだろう戦いである。むしろ単純な命の奪い合いであれば、勝って当然の戦いとも言える。リーダーたる黒縄の立ち回りを見れば紅刃とおおよそ互角に見える。あるいは黒縄が劣るのかもしれない。一抹の不安は黒縄の底力が見えない、つまりは他の八大地獄と同じく特異な技を持っているであろう点。未だそれが見えない事なのだが―― それでも今のリベリスタ達にやってやれない事はない筈である。難しいのはあくまで作戦としての成功条件を満たす事なのだ。 そこで一つの小さな素朴な疑問が生まれる。 紅刃は、その戦力で一体どうやって六道の部隊に勝ったというのか。 正直な所、いかに紅刃が強かろうと黒縄本人に加え幹部の小地獄等と花園乙女のリーダー格達を同時に相手取ってまで勝利出来るとは思えない。 幸か不幸か、その理由はすぐに判明する事となった。 「黒縄君、ここは退くべきじゃあないかね?」 額に汗を浮かべた等喚受苦処の言葉はいつもの様に上からの高圧的なものだが、声音には僅かな懇願が含まれている。 一説には六道地獄一派は、死と死後の世界を探求し、死を厭うて遠ざかる為の研究を重ねているのだと言う。ならばいたずらに命を失う事はその信条に反する筈なのだ。恐らくいくらかの戦闘を重ねた後、被害を嫌って撤退したのではないか。 「許さぬ」 だが黒縄はその提案を即座に一蹴した。 「特異点がこの第三勢力である可能性は――71%じゃ」 その言葉に、アークのリベリスタ達の背を冷たいものが駆け抜ける。 まさか。戦いがすぐに終わらないという状況が起こるとすれば―― それは自分達のせいなのか。 ● 矢張りこの戦いに紅刃の一団だけが挑んだ場合、六道が観測する神秘的特異点とやらの関連性がない為に、六道は大きな犠牲が出る前に戦いを止めたというのが『史実』なのだろう。だがそこに正体不明の第三勢力、つまりアークのリベリスタ達が現れた。そして特異点との関連性疑われたとすれば、それはこの場におけるアークのリベリスタそのものが彼等の目的意識と合致してしまうことになる。 そんなものは皮肉すぎる運命と言わざるを得ないのではないか。 黒縄はどこまで理解しているのだろうか。未だ疑っているだけなのだろうか。アークには知られては困る情報もあるのだ。 だがそれでも。アークの目的はあくまでこの世界の調査と、対R-type戦における戦力の増強である。 積極的に関わらなければこの戦いで紅刃は重症を負い、茜を残した弟子達が全滅してしまう以上、ここまでは避けえぬ事態であったのだろう。これでも史実よりマシな回答が見込める以上は、どうにかする他ない。 第一に。只では済まない事は初めから予想済み、こんなものは想定の範囲内。この戦いにおける本番は、ようやくここからなのだ。 それから数手が過ぎ去った後にも、戦況はリベリスタ達の優勢であった。 総じて圧倒的な優勢とは言え、瑣末な苦戦がない訳ではない。 「私より前に出ないでね。危ないの」 純白の煌きが一人、また一人とフィクサード達を打ち倒して往く。 弟子達もルアと同じソードミラージュだ。走りたい気持ちは分かる。だが彼等の弱さ、その脆さを自覚しなければ、強い者が犠牲になるのだ。 「大切だと思うなら尚更、まず自分を守って!」 ルアの言葉通り、力量に劣る紅刃の弟子達にとって、六道幹部達の火力に晒される状態は死活問題だ。これだけの力量差があるならば史実の全滅も頷ける。そんな事を許す訳にはいかない。 「花の子、こっちだよこっち」 「あはっ!」 しかめ面の畏鷲処は、傭兵を侍らせる様に盾として、後方へと下がっている。 高位のマグメイガスを放置するのは危険だが、花園の乙女達は己が命を顧みる事もなく畏鷲処の身を守っている。 物理攻撃を遮断しているとは言え、回避にも体力にも劣る様に見える畏鷲処など、七海の攻撃が届けばどうという事はない筈だ。 血花を咲かせ、次々と倒れる花園の乙女達だが、部下達は個々の自我が妙に薄いのか機械的に命令を遵守する様だ。 「お前ら二人組になって援護し合え! 手柄立てるよりまずこの場を切り抜ける事を考えろ! それが敵の選択肢を狭めて、こっちの選択肢を増やす事にもなる!」 黒縄と紅刃は狙い通り戦場の片隅に隔離されている。双方に傷は増えてきたがツァインによるラグナロクの恩恵もあり、まだ心配する程ではないのだろう。アークのリベリスタ達の戦闘そのものも堅調だ。いかに六道幹部が相手とは言え、最早アークのリベリスタ達がそうそう遅れをとる筈もない。 問題は進撃のネックとなるであろう畏鷲処の火力に、紅刃の脆弱な弟子達だ。 ツァインの言葉通り、まばらに戦闘していた弟子達は仲間と背中合わせに敵の攻撃をしのぎ始めた。 いかに個人的技量の優れた先達に率いられた一団であろうと、集団戦で譲るツァインではない。 「弟子に余計な口出してすまねぇな、でもアンタ、そういうの苦手そうだからさっ」 後方に飛び退る紅刃は僅かに笑ったろうか。既に数名の弟子が倒れているのだ。もしかすると命を失っているのかもしれない。史実の全滅というのもただ事ではなく、一体どんな方針で育成しているのかは分からないが、恐ろしくスパルタなものなのだろう。 だがこの時、紅刃の態度に少なくとも否定の意思は見られなかった。信頼を得たのだろうか。 「少女に囲まれるとか、一般的には嬉しいシチュエーションなんですが、こう命に危険が有る状態では、余り楽しい気持ちにはならないかもしれませんな?」 飄々と呟く の眼前を白刃が横切る。 「おっと」 フィクサード達の怒りを誘い、攻撃を受けきる事に専念している九十九だが、力量に劣る相手に多少囲まれた程度では、その類まれな立ち回りの妙は自身に大きな傷を与える事を許さない。 「まあ、私個人としては……おっと、これは言わぬが花ですかな」 なぜか都度、機会さえあれば少女を撃ちたがる九十九である。 決死の突撃を敢行するムーンシャドウの一撃をあしらい、九十九は首をかしげる。 「おや、どこかでお会いした事がありましたかな?」 眼前のムーンシャドウに十重の苦痛を刻みながら、九十九ははたと思案した。 遠い記憶の片隅でなにかがチリチリと燻っている。はて、一体どこだろうか。 「ワラワラと狙いたい放題だ。どこまで耐えられるかな」 伺い知れぬ瞳の奥で表情一つ変えぬまま。七海は既に何名の敵を打ち倒した事だろう。無数に放たれる矢は、直線ならぬ怪奇な軌道を描いてフィクサード達に次々と突き刺さる。幾度目かの弾幕世界。その弓鳴りから逃れよう筈もなく、まずはカトレアが倒れた。 戦闘能力の高いリベリスタ集団の中でも、七海は大量の敵に強大な打撃を加える事に特に秀でている。 防御能力に不安がない訳ではないが、敵を引き付け続ける夏栖斗と九十九に加え、悠里、ルア、フツの足止めにより戦場は驚くほど安定していた。 「一気呵成、押し切りましょう」 「させると思う?」 返答は剣で。リベリスタ達は旃荼処を狙いたい所だが、回避能力に優れるサンダーソニアはたびたび足止めを掻い潜る。リセリアの往く手を阻むサンダーソニアへ向けて、彼女は煌く無数の刺突を見舞った。無数の血しぶきが舞い踊る。 一騎打ちであれば破れる相手であろう。だがこんな戦場では邪魔な事この上ない。 六道等の戦略目標が史実と異なっていたとしても。そして大地獄は無理としても、小地獄を二人程度落せれば十分撤退に追い込む目はある筈なのだが。 事はそう簡単に推移する筈もなく―― 「黒縄、いくよ」 畏鷲処の声は甲高く耳障りだ。太った身体を揺らしながら、長い詠唱を終える。 二十メートルにも及ぶ巨大な魔方陣が戦場に描かれ――それは星墜の大魔術。 天空から巻き起こる幾重もの小爆発が、リベリスタ達の身を引き裂き、視界を遮る。 リベリスタ達の身を守るラグナロクは長期戦にこそ絶大な効力を発揮するが、こうした極端な打撃は苦手だ。 「下がって!」 悠里が叫ぶ。 「無為に命を散らす事は強さじゃないよ」 今の一撃で弟子達の数名が散った。これ以上やらせる訳にはいかない。 この世界の境界線は僕達じゃないと、そんな事は分かっているのだ。 だが。だけれど。 「それでも、今だけは……。僕達だって、この世界の境界線だ!」 銀腕が閃き、アルストロメリアの腹部に突き刺さる。直後、一気に開放された闘気は少女の身体の内部で爆発的に膨れ上がる。 「このっ!」 クリシュナの戦気を纏い、怒りに燃える少女は大剣を振りかぶる。全力中の全力。全身全霊を越えた一撃で悠里の身を一気に切裂く。 骨が砕け血が爆ぜ―― 「無駄だよ……ッ!」 されど悠里を打ち倒す事など出来はしない。 「行くよ!」 爆発的な速力を纏ったルアは、リセリアと共にサンダーソニアとその部下を切り捨てる。 倒れられない。負けられない。ここが正念場だ。 「強いなあ、楽しいなあ! ねえツァインさん!」 六道の研究員達は倒れながらも退き、花園乙女達は次々にその命を散らせている。 「行くしかねぇ所だよな!」 フツの千兇に七海の矢は、後方の旃荼処を捉える事に成功しているが、道は漸く切り開かれたばかり。 「そろそろ、終わらせるかえ」 不気味に響く黒縄の声をいち早く察知した七海が仲間達に警告する。 恐らく、それは縄状の物で拘束する技だ。 「あの髪か――」 ツァインが叫ぶや否や、一気に伸びた黒縄の髪が燃え盛る大地の上に網目を形成する――黒縄地獄。 うねる蛇の様に踊る髪は縄を形成し、圧倒的熱量と共にリベリスタを締め上げる。 「――見切った!」 だがその中でツァインは一瞬だけ速く、奇跡的なタイミングで足元の髪を切り裂き難を避けた。 黒縄の目が驚愕に見開かれる。この技を見せた覚えはない筈だ。 立て続けの集中火力に仲間達の数名が倒れ、過半数が身動き取れぬ中で、剣を掲げるツァインは神気を解き放ちリベリスタ達の呪縛を打ち破る。 「過去の人々であろうとも強いお方ばかりで嬉しいな!」 熱と力に身を裂かれ、血を滴らせながら魅零は笑う。こんなに楽しい事はない。 「もっと感じさせてね、エクスタシー!」 人の身など、所詮は肉と骨。誰も彼もが血の詰まったズタ袋に過ぎないと少女は笑う。 自由でさえあればいい。そうであれば傷つけられる事さえ幸福だ。己が身などどうだっていい。 「負けないよ」 私達相容れないリベリスタとフィクサード同士だもの。 何を狙っているのかなど知った事ではないが、戦いなど所詮は正義と正義、信念のぶつかり合いに過ぎない。 「これは、くっ」 この瞬間に限って。間近に迫る魅零の姿が、旃荼処には妙に遅く感じられた。なのになぜ身体が言う事を聞かないのか。 額に汗が滲む。 絶大な技量に裏打ちされた奈落の剣が振り下ろされ、迸る血と共に旃荼処の命は永遠に消えうせた。 「やりおるわ」 「で、黒縄ちゃんは、こんな田舎くんだりにまで、なにを調べにきたわけ?」 「きっとそなたらを」 夏栖斗の問いに答える黒縄の答えはふざけている様だが、案外正直な所なのかもしれない。アークが誇る神の目の精度は絶大で、逆にそれ以外の組織が得る情報など常に不安定で限定的なのはいつもの事だ。 「そりゃ恐悦至極だけどさ」 等喚受苦処が放つ奥技を凌ぎ切り、鮮血の仇花を返礼に変えて夏栖斗はおどける。 ここまでくればもう負ける気なんてしない。 おそらく黒縄が感知したのはナイトメアダウンの予兆なのだろう。フォーチュナでもあるまいに、いかな方法でそれを知ったのかは定かではないが、六道にだってフォーチュナ程度は居るだろうから不思議な事はない。 だがそこへ現れた謎の勢力であるアークのリベリスタは、大いに不思議な連中であるには違いない。 見たことのない技を放ち、深化の果てにたどり着く力を得て。圧倒的な実力を持ちながら、その正体は誰も知らないのだ。怪しい事この上ない。ならば不幸な計算違いとて起ころうというものである。 敵の数はずいぶんと少なくなってきた。 後は、出来れば畏鷲処が抱えるノートパソコンを奪取、あるいは破壊しておきたい所だ。 「さて」 「い、いひっ!?」 黒衣をはためかせ、流れる水の如く。拓真が振るう双剣は九条の剣閃となって畏鷲処を襲う。 畏鷲処には身に纏っていた魔力の防壁を張りなおす猶予は与えられていなかった。 盛大に尻餅をつき、己が腹部の血に悲鳴をあげる畏鷲処だが、醜態を晒しながらもさすがに立ち上がる。こんな風体であっても実力そのものは高い筈なのだ。 「待てや!」 畏鷲処はツァインの叫びに全身を総毛立たせ、迫り来る剣に思わずパソコンを突き出した。盾か。 「生憎と――」 盾はとっさに身を守るだけの代物ではない。 「剣盾術は相手の盾の裏側を斬る技が豊富なんでねっ!」 あえてそれをたたきつけたツァインは、裏刃で背を斬る。 「六道の。どうする、これ以上続けるならお前達の好きな研究とやらも続けるのは難しくなるのではないか」 「僕らそんな弱い方じゃないけど、まだやりあう? 削り合いするためにここに調査に来たわけじゃないでしょ?」 拓真と夏栖斗が言い放ち、これで戦いの趨勢は決まった。 六道の部隊は撤退して往く。即座の追撃を試みようとした紅刃をリベリスタは制した。 閑話休題。戦闘の傷跡は深く、国道は完全に破断されている。 「アンタが大丈夫でも弟子が無理なんだよ!」 「ここまでにしておきましょう」 倒れた仲間達を介抱しながらおずおずと茜が賛同する。勝利の余韻に酔う暇もない。 手負いの相手を無駄に追い込む事はない。 「少々残念ですがな」 九十九としては因縁の等喚受苦処にアイスでも投げつけてやりたかったのだが、生憎いたずらの機会は巡ってこなかった。 それにしてもあの黒ドレスの少女は一体。 「それと、それ以上傷を負われちゃ俺が困る……分かるだろ?」 真剣な表情。紅刃はツァインの申し出を即座に理解した。 残された時間がそれほどある訳ではないが、死んでしまった英雄と戦う機会等そうそう逃す手はないのだ。 ―― ―――― 「手合わせ感謝!」 程ほどでやめておくのが互いの為でもある。 「名は名乗れんのか」 「すまねぇな、俺にも色々事情があってよ」 英雄の声音には僅かな寂寥が含まれていた。再び合間見える日は来るのだろうか。 何かを察したのか、紅刃はそれ以上を問うてはこなかった。 「そういえば。今年の――8月、静岡近辺で災厄が起きるという未来視の噂、御存知ですか?」 リセリアが口火を切る。伝えなければならない。 「ちょっと優れたフォーチュナとかがいてね! このさきの未来が不穏なんだ、是非ともそのお話聞いて欲しいの」 「同じ事を言う奴も居る」 意外にも肯定が返った。幾ばくかの噂にはなりはじめている様だが、当時も同じだったのかもしれない。 それは曖昧で万華鏡程の精度はなくとも、異変の察知は出来るのだろう。六道の一派もそうだった。 「死ぬかもしれない強大な敵だよ!」 「お前等が言うなら、そうなのかもしれんな」 「貴方はこれから始まる運命に従う? それとも従わせる?」 さあ、どっちなのかなくれはたん! 魅零に苦笑を返しながら、紅刃は何かを考え込んでいる様子である。質問に対する答え自体は決まっているのだろうけれど。 「そうだ」 何かを思い出した様に悠里はとある提案をした。 「その時に、戦闘に参加しないで千里眼か何かで戦闘を記録する人が欲しい」 「茜に任せよう」 きょとんとした表情で、茜が提案を賜る。 「それを何らかの形で残して、15年後、ここに送るように伝えて欲しい」 こうすればR-typeの戦闘方法、追い返した方法がわかれば大きなプラスになるかもしれない。 そして現代に届いたらここが本当に過去なのかもわかる。 後はどうしたものだろう。 七海はあの因縁の公園か、あるいはどこか見つからず変わりない様な場所へとタイムカプセルを埋めようと考えていた。 適当な内容と携帯の電話番号、それに髪でもいれておこうか。 後は新聞の読み比べだろうか。 そんな中で一人。ルアは沈み往く夕日を見つめていた。 この世界はもしかしたら私達の時代に繋がっているかもしれない。 私達が行動する事で何かの悪影響を与えてしまうかもしれない。 でも、ナイトメアダウンの時に万全じゃなかった人達を助けたらミラーミスが倒せるかもしれない。 だって――15年前ってミラーミスを異世界に押し返しただけなんでしょ? そう聞いていた。 もし、そうなら―― この世界に現れるR-typeと、現代に伝わるR-typeは同じ固体なのかもしれない。 もしこの世界で再び史実通りに押し返されれば、それは一体どこへ向かうのだろう。 可能性はいくらでもあり、どんなに考えても未だ回答は出ないのだけれども。 全力を賭した以上、どの可能性に行き着いても選べる選択は増えていて欲しい きっと。その結果は。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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