●西部の街に起こる対立 アメリカ合衆国、メキシコにほど近い国境の街。 マカロニ・ウエスタンの舞台になりそうな場所だ。人が行き交う中継地点となるこの街には、車以上に馬を駆るカウボーイの姿が見受けられる。 昼間というのに、酒場ではテキーラを煽る男達の姿がある。その胸に輝いているのは保安官の紋章だ。彼らは職務そっちのけで酒を煽っており、酒場の客も、道行く人々もその光景に呆れ果てている。 「邪魔するぜ」 そこに入ってきたのは、1人のカウボーイだ。彼は数人のカウボーイを連れていた。カウボーイハットの先を掴んだ先頭の男がニヒルな笑みを浮かべる。 「ヘイ、レイリー。よくもオレの恋人に手を出してくれたな!?」 プレイボーイで名の通っているカウボーイ、フランク。彼は30歳を過ぎてなお、独身である。今も至る所で女性に手を出しており、流した浮き名は知れない。 「はあ、何を言って……?」 元々、幼馴染だという2人。しかしながら、その日は様子が違った。フランクは憤りを隠すことなく、友人であるレイリーへと詰め酔って服を強引につかみ取る。 「保安官にあるまじき下衆野郎め、俺がその性根を叩き直してやる!」 「下衆野郎だと……?」 保安官レイリーは、酒を飲んで赤くはなっているものの、その表情は険しい。テーブルを力任せに叩きつけると、テキーラの入ったコップが少しだけ宙を舞う。 「マイワイフが書置きしていったぜ。ナンパ男にかどわかされましたってな!」 なるほど、レイリーは妻に出ていかれてしまい、ヤケ酒を煽っているわけだ。 「何を言っているのか分からねぇな。……だから、メリーを誘ってってのか、お笑いだ!」 「うるせぇ、かどわかしたのは、そっちだろうが、ナンパ野郎が!」 「なんだと、畜生め!」 取っ組み合いの喧嘩になりそうなところを、バーテンが冷ややかな目で見やる。彼らは表に出て、その続きを行うようだ。 そのやりとりを、隅の席で黙って眺める人影が1つ。 「まあ、暇つぶしにはなるか。キースが見ていないうちに楽しんでおかないとな」 そいつはゆっくりと起き上がり、決闘の行方を見守るべく外へと出ていったのだった。 ●新たな魔人の動き 「新たな魔神の動きを予見した」 ブリーディングルームにリベリスタが集まったことを確認した、『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)は、その言葉で今回の依頼の説明を始めた。 バロックナイツ第五位『魔神王』キース・ソロモンの脅威は知っていると思う。 悪名高い使徒であり、バロックナイツでも有数の武闘派ではある彼は、アークと交戦した『九月十日』以降大きな動きを見せてはいないが、彼が使役する魔神達の動きは別に確認されている。 「ソロモンの魔神は高位のアザーバイドであり、それぞれが独立した権力と力を持っている」 キースは魔道書『ゲーティア』を介在する事で彼等を使役する事が出来るが、その自由を完全に奪える訳ではないという事だ。 魔神達の目的は不明、ないしは様々だが、アークに依頼が来るという事は捨て置ける状態ではない。 「近い将来の強敵に成り得るキースやその魔神の弱点や攻略法を探る意味でも、何とか任務を成功させてほしい」 少しでも魔神の情報を。イヴはリベリスタ達へと懇願する。 さて、今回、魔神が現れるのはアメリカとメキシコの国境周辺の街。そこに現れるのは、見た目は人間の成人男性。ただ、その実、4人の男を引き連れた魔神、ガープなのだという。 「この魔神は、感情操作に長けている。対象者の愛を意のままに操るという」 ガープは、フランク、レイリーの双方の人間関係に介入し、その不仲を生んで争わせているのだ。配下である4人の男も争いに介入させ、より一層戦いを煽っているのだそうだ。 「まずは、4人の男を倒さないと。ガープを抑えられたらいいけれど、できたらでいい」 どのみち、このガープは本体ではなく、ボトムへと顕現した端末に過ぎない。倒したとしても仕留めることはできぬため、この争いを止め、配下の討伐に全力を注ぎたい。 カウボーイ達、保安官達は銃を持って応戦を行う。もちろん、彼らは一般人であるが、銃は殺傷能力を十分に持つ。撃たれた一般人は当然、死傷する可能性がある。 ただ、4人の男は別だ。アザーバイドである彼らは、銃で穿たれたところで傷こそ負うものの、致死に至ることは極めて少ない。また、彼らも銃を持つが、時折神秘攻撃を交えて攻撃を仕掛けるようだ。 ガープ自体は動きを見せない。もし、戦うとなれば、漆黒のオーラで応戦を仕掛けてくるが、こいつは本体ではない。配下を倒して様子を探るのが賢明といえるだろう。 「皆の健闘を期待している」 イヴから告げられたのは、抑揚のない言葉。それでも、この少女の最大限の激励の一言であることを感じたリベリスタ達は、一路、アメリカ合衆国を目指す……。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:なちゅい | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2014年07月25日(金)23:30 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●決闘前に立ち回るリベリスタ達 そこは、アメリカ西部の街。 酒場のウエスタンドアを開いたのは、マントを羽織った少女だ。外から吹き込む風でマントをはためかせながら歩く、『緋月の幻影』瀬伊庭 玲(BNE000094)は一際客の目を引く。 玲は視線を気にしながらも、カウンターに腰かけた。 「のぅ……マスター、ミルクを一杯もらおうか」 ここは、日本語など全く通じぬ場所。とはいえ、ミルクはかろうじて通じたようで、コップ一杯のミルクが玲に差し出される。 「Here you go.」 英語で話しかけられた彼女はマスターに首を傾げて。 「……フッ、話しかけられても、アメリカ語は、わ、わからんよ」 コップを持つ玲の手と言葉は、同様の為か震えてしまっていた。 さて、酒場の外では、程なく始まる戦いに備えるリベリスタ達の姿があった。 「33位ガープ。夏の暑い時にのみ現れる地獄の長官。魔界の西方を統治する君主。特技は感情操作――特に愛を司る、か。この南部の日差し、情熱的で何ともロマンティックなものです」 記憶を頼りに話すのは、『quaroBe』マリス・S・キュアローブ(BNE003129)だ。陽射しが照り付けるこの地域の緯度は、日本で言えば鹿児島から沖縄に位置している。なるほど、暑いのも頷ける話だ。 「――ただボンクラぞろぞろ引きつれて、イーストウッドのヤラれ役気取りですかね」 この地で倒される悪役は、さながら西部劇のヤラれ役のようでもある。そんなことを考えながら、マリスは限られた時間で大型バイクを何時でも動かせるようにと隠していた。 『ラビリンス・ウォーカー』セレア・アレイン(BNE003170)というと、決戦が始まる短時間で起こりうる不測の事態に備えていた。 (不測の事態って言うぐらいだから『こういう対処』って方針は立て辛いけど) 周囲に魔人以外の敵対勢力がいないかと警戒を続けるセレアは、この戦いの舞台に思うことがあるようだ。 「個人的には西部劇とかだとボニー&クライドとか好きなんだけど、カウボーイと保安官の決闘、だけだとちょっとパンチが弱いわね」 日本からはるばる、アメリカのウエスタンタウンまで来て解決に当たる事件だ。銃撃バトルならば、強盗事件などの凶悪犯罪でもとセレアは思ったのである。 「魔神達、日本で活動厳禁を喰らったからって海外で活動しなくてもいいのに ホント、どうしてボトムに何度も足を運ぶかな」 『』四条・理央(BNE000319)は物陰に隠れつつ、式符・影人を使う。さすがに場所が足りないのか、陣地作成の上で影人の量産を進めていた。 影人を13体を作成した後、休憩しながら理央は思う。魔神の目的は一体何なのか。EPを消費した彼女を、セレアがインスタントチャージでフォローする。 「えーと……ガープは60の軍団と4人の王を引き連れる、と」 腥が事前調査メモを読み上げる。今回現れる魔神のデータのようだ。 「しかも太陽が蟹座を通る時しか、全力を出せない……ん? 応えないだっけ?」 同じく、『』緒形 腥(BNE004852)も幻視を使った上で隠れ潜む。メモ書きにない内容を頭に過ぎらせる彼だが、いまいち思い出せない。理央もどうだったかと唸りこむ。 (あ、ガープって他人の使い魔を奪えるんだよな……一応、警戒しとくか) 腥は理央へと呼びかけると、今は大丈夫と返事して見せた。 「……まあ、いいや、何であれ血が流れれば結構、中身が有るなら上等だ」 リベリスタ達はじっと、決闘の開幕の時を待つ。 「魔神、ですか……」 『ODD EYE LOVERS』二階堂 櫻子(BNE000438)はありきたりな事件かと考えていたが、どうやら一筋縄ではいかないようだ。 「魔神というのは各々、随分と嗜好が異なる存在なのですね」 特技は感情操作――特に愛を司る。『ホリゾン・ブルーの光』綿谷 光介(BNE003658)は先ほど、マリスが言っていた言葉を思い出す。キースと魔神に興味を持つ反面、その厄介さを再確認していた。 「何処まで通用するかはわかりませんが……、私の力でやれる事を、やれる限り致しましょう……」 事件解決に尽力しようと誓う櫻子。それに同意する光介は、千里眼の力で酒場を覗き見る。中では、保安官とカウボーイのいざこざが始まっていた。 (人の愛を弄ぶような野郎がいるって聞いたら放っておくわけにはいかねぇよな) 『(自称)愛と自由の探求者』佐倉 吹雪(BNE003319)は卓につき、黙ってその騒動を眺める。リベリスタ達には、誰が魔神の部下なのかは丸見えだ。保安官の中に2体、そして、カウボーイの中に2体、人ならざる者達が混じっている。 「人との違い……異界の気配を捉えてみましょう」 それは、外にいる光介の知るところにもなる。彼は位置関係を確認し、エネミースキャンを試みていた。 「うるせぇ、かどわかしたのは、そっちだろうが、ナンパ野郎が!」 「なんだと、畜生め!」 ヒートアップする言い争い。マスターの視線を受けた両者が外へと出ていく。それに合わせて席を立った男。それがガープだろう。吹雪もそっと男の後をつけて外へと出ていく。 玲は片っ端からカウボーイ達へと魔眼の力を使う。催眠状態に陥らせた人々に対し、『いつも通りのケンカだからそのうち収まる』とかけていく。 「あとはみんながーんーばってー」 外ではまさに、魔神に煽られた西部の者達の決闘が始まろうとしていた。 ●そして始まる、別の決闘 左右に分かれて距離をとるカウボーイと保安官。セレアが密かに陣地を作成する。陣地によって、近場に集まっていた野次馬は戦場から排除された。 そして、双方の怒号と共に幕を開ける銃撃戦。メンバー達はしばし、待つ。理央の影人がカウボーイと保安官を抑えつけるまで。 「ホ、ワット!?」 「シット、なんだ、こいつらは!」 的確に一般人を見つけ出して抑えつけ、銃を奪い取る影人。レイリーやフランクも抵抗を続けるが、その拘束から逃れることはできない。リベリスタである理央と同様の力を持つそれらは、一般人にとってはさぞ怪力に思えたことだろう。 (全力移動後に攻撃が私だけみたいですからね。臨機応変に動きましょう) 影人に先駆けて、マリスだけは動いていた。カウボーイの多い東側。人の多さを瞬時に判断し、ルーンブレイドを配下へと叩きつける。 「チッ」 配下どもは、主の遊びの邪魔をされて少々ご立腹気味だ。うまく敵の注意を引いたマリスは光介の援護を受けられる範囲へと敵を引き込んだ。 逆側には吹雪が駆け、配下目がけて連続攻撃を叩き込む。吹雪はさらに影人に抑えつけられる保安官達を守るよう位置取った。 それを見守る1人の男がテレパスで指示を飛ばそうとするも、ジャミングが入る。 「ひそひそ話と怪電波は止めてねー?」 「ほぉ……」 腥の言葉に、ガープは驚いて見せた。この状況においても、彼は余裕を崩さず、傍観を貫くようだ。 腥は周囲を見回す。紛れていた配下達はもはや一目瞭然。それに、この戦いの傍観者たろうとしたガープも。すでに敵は周知の通りだ。石ころを蹴って敵を確認する必要はあるまい。 腥は銃で応戦する敵へと近づき、力一杯殴りつける。 そこでセレアが詠唱を始めた。それが完了すると、鉄槌の星が配下目がけて降り注ぐ。 (一般人はできうる限り排除したわね。なら……) とはいえ、配下はその手から光弾を放ち、影人をも狙う。このままでは抑えつけている一般人達が、拘束から逃れてしまうかもしれない。 その前に配下の排除を。セレアは攻撃の手を止めることなく、さらなる詠唱を始める。 配下達は、もはや自分達の存在を隠そうとしない。本来ならば、一般人をけしかけて決闘を盛り上げ、主を楽しませることが今回の目的、ジャミングで指示も聞けぬ今は、敵を排除するのみ。彼らは前衛にいるマリスの体を焼いた。 光介はできる限り仲間と配下の情報を共有しながらも、仲間達の回復へと当たる。敵は魔神直々の配下。その技の威力は確かに脅威だ。 「術式、迷える羊の博愛!」 光介は仲間の疲弊状況を逐一確認し、その怪我を癒す。大いなる存在より力を分け与えてもらった仲間を見やりながら、彼は配下を、邪気を振り払おうと神の光を放つ。 その傍に立つ櫻子も。魔の力を取り込んで自らの力を最大限に高めて、言い放つ。 「さぁ、参りましょうか」 櫻子は強烈な光をその身から放つ。光は配下だけを捉えその身を包み込んだ。 「……攻撃は最大の防御、よく言ったものですね」 苦笑する櫻子。しかしながら、その効果は覿面だったようだ。 吠える配下から轟音が起こる。立ち塞がる理央に放たれる銃砲。それを、いつの間にか酒場を飛び出していた玲が受け止めて見せた。 「おい貴様! 妾の華麗なる一撃を食らうがよいわ!」 玲から淀みなく繰り出される銃弾。それが配下の体力を削った。配下はダメージを受けながらも、銃口をこちらへと差し向けてくる。 そこを、理央は逃さない。中型魔方陣を展開し、強烈な魔力の放射を体勢を崩した配下に浴びせかけたのだった。 ●仕組まれた決闘に終止符を 敵は時に神秘での攻撃も仕掛けるが、銃撃メインで応戦を続ける。銃砲はリベリスタはもちろんのこと、時に一般人を抑えつける影人の体をも穿つ。 マリスは影人に抑えつけられた一般人を気に掛ける。今のところは、じたばたしながらも、影人のカバーもあって傷を負ってはいないようだ。 一方、影人は配下から銃弾を撃ち込まれて倒れた個体もいたが、何せ理央が作った影人の数は20を超える。対して、陣地内の一般人はフランク、レイリー込みで6人。1、2体潰されたところで、抑えつけることは十分に可能だ。 配下は休みなく銃弾を撃ち放つ。ウエスタンタウンに鳴り響く銃声は、さながら西部劇の舞台のようにも思えた。 「撃ち合いこそ西部劇の華」 マリスは配下の撃ち放った弾丸をさらりとかわして見せる。敵はすでに、彼女の攻撃で不吉なる影に覆われていたのだ。 「ま、銃弾の雨を走り抜けてぶん殴るのも好きですが」 マリスはそのまま、力の限りルーンブレイドを叩きつける。配下は叫び声を上げて崩れ落ちた。 その様子をにやけて観戦していたのは、魔神ガープだ。彼は配下が倒れようとも、眉一つ動かす様子がない。そんな悠々としている魔神に、吹雪は睨みを効かせる。 (今はガープの相手よりこっちをどうにかする方が先だ) 銃弾を飛ばす敵へ、吹雪はナイフを幾度も配下へと突き立てる。傷口から血を滴らせて弱ってきていた配下ではあったが、若干弱い。 そいつは反撃とばかりに銃を構え、放ったのは光の弾。吹雪は高熱に焼かれて、体をよろめかす。 対して、ぽとり、ぽとりと敵の体から血が滴る。腥はそれを目にして興奮していた。 「わくわく中身拝見のお時間ですよー」 血塗れの敵へと左手で掴みかかる腥のフルフェイスの下の表情は、外からは伺い知れないが、彼が笑っていることは分かる。 「盛大に血と腑をブチまけて逝くがいい、きっと楽しいぞう?」 腥の手にする『黄衣の王』が黒く、禍々しく光った。彼が笑い声を上げ、配下へと渾身の一撃で殴りつけると、血反吐を吐いて配下は倒れる。 まだ、まだ足りない。己の欲を満たす為、腥は両手で銃を携える敵を狙う。 さて、逆側の2体はまだ体力を残している。放たれる一陣の光は、リベリスタの体力を容赦なく削ぎ落とす。 ただ、リベリスタは、魔神達の力に抗う術を持っている。 「こちらとしても、未知の存在に圧倒されるばかりではないのですよ……!」 光介は『全ての救い』を顕現して見せる。魔神配下の銃弾で傷つく仲間全員を救う。 「痛みを癒し……その枷を外しましょう……」 それでも、光で焼かれた傷は塞ぎ切らない。櫻子がさらに、癒しの息吹を仲間達へと吹き付けた。 活力を取り戻したリベリスタ達は全力で配下へと当たる。8対2。もはや、戦力的に劣りはしない。 「やれやれ……」 口角を上げたままで首を振るガープを指差し、玲が言葉を投げかける。 「ガープよ、そこで震えて祈っておるが良い」 その間に長い詠唱を経て、セレアは最大魔術を解き放つ。鉄槌の星が配下に降り注ぎ、耐えられなくなった配下が体を潰してしまう。 もう1体の配下は、ちらりとガープを振り返る。笑みを一瞬たりとも変化させないのが、返って不気味だ。 配下は叫びかけながら、銃口から光を放射する。玲が理央を庇って焼かれたが、倒れるほどのダメージはない。 「何、これが今の妾の仕事じゃ」 理央は玲の影になりながら、魔法陣を組み上げる。そして、放たれた強力な魔力が配下の体を穿つ。 忌々しげに睨み付け、銃口を差し向ける配下。だが、玲の方が少し速い。 「銃の扱いなら妾も負けぬぞ? ドレッドノートの弾丸から逃げられると思うな!」 まず、彼女の銃弾が配下の銃を弾き飛ばす。さらに、銃弾は配下の腕を、胸を、足を、頭を撃ち抜く。 ゆらりと配下の体が揺らぐ。そいつは何も呟くことなく、崩れ去っていった。 ●魔神の去りし後に パチパチパチパチ。 配下を倒したリベリスタに近づく影。ガープは笑みを崩すことなく拍手をしながら歩み寄ってきた。 「いや、なかなかいいもの見せてもらった。想像以上だったな。お前らのおかげでよ」 この戦いを楽しんでいた様子のガープ。リベリスタの介入すらも楽しみ程度にしか思っていなかったようである。 「人間の愛をこじらせるのが楽しいのですか? 異界のあなたが?」 光介は問いかけながらスキットボトルを放り投げる。ガープはにたりと口を釣り上げて答えた。 「ああ、楽しいな」 高笑いをするガープへと、光介はエネミースキャンを試みるが、残念ながら失敗してしまう。 「ボトムの連中による愛憎劇。それはこの上なく俺の感性を刺激する」 そいつはボトルの口を開き、煽るように中身を飲みほしてボトルを投げ捨てた。 「なかなか楽しかったぜ。次は気が向いたら相手にしてやるかもな」 ガープは不敵な笑みを浮かべたまま、リベリスタに背を向けて去っていく。 「また出てくるような事があったら、その時はきっちり懲らしめてやるから覚えておけよ」 「そのうちお主を妾のドレッドノートが撃ち抜いてみせてやろう」 捨て台詞のように、吹雪と玲は去りゆくガープの背中へと言葉を投げかけた。 ガープの去った後、櫻子はホッと胸を撫で下ろす。 「無事に終わって何よりですわ、慣れない海外での戦いはやはり疲れます……」 苦笑する櫻子を見る仲間達も、それには同意していたようだ。 戦いを無事終え、紅潮していた腥も、冷静さを取り戻す。マリスはというと、出番のなかったバイクを取り出してきていたようである。 さて、足止めを食っていたカウボーイと保安官。彼らは酒場へと戻り、レイリーとフランクは拍子抜けしたように互いを見やる。 そんな2人へと、吹雪が経緯を説明していた。魔神の力が働かなくなった状況であれば、誤解は解けると彼は思っていたのだ。パッと見がカウボーイ風の吹雪。同士とでも思われたのか、2人は彼の言葉を信用していたようである。 「ホワット、こいつじゃないって!?」 「マイワイフもあいつらにそそのかされたってのか?」 改めて話し合いの場を持った両者。決闘を邪魔されたことで頭が冷え、このすっとんきょうな話もすんなりと耳に入れてくれたようだ。 「もうドンパチやりだしかねねぇしな」 体力をかなりすり減らした戦いの後だ。リベリスタ達に連戦する気力など残ってはいない。 「…………」 「…………」 複雑な表情で互いの顔を見やる2人の間を、沈黙が支配する。 後は2人の問題だ。リベリスタ一行は2人が和解することを信じて、酒場を後にしていった。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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