● 七夕になぜ願い事をするようになったのか、そういえば知らないわね、と。 飾られた、背の高い笹を見上げながら、『深謀浅慮』梅子・エインズワース(nBNE000013)は首を傾げる。 願い事を書く短冊は、それなりに用意したけれど、さて。 「ねえ、願い事書いていかない? 高いところに飾りたかったら、あたしが手伝ってあげてもいいのだわ」 昼間には流しそうめん、夜には手持ち花火も用意してるってさ。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:ももんが | ||||
■難易度:VERY EASY | ■ イベントシナリオ | |||
■参加人数制限: なし | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2014年07月22日(火)23:04 |
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■メイン参加者 18人■ | |||||
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● 笹の葉を一枚ちぎると両端を折り込んで、その端を三つに裂いて噛み合わせる。笹舟だ。誰に教わったかも覚えていないが、この舟が川面を流れる様が好きだったのは、覚えている。近くに川があるわけでもなく、ただ思いつきで作ってみたその舟を笹の下に置いて、梅子はさて、と顔を上げた。 「こういう季節の手伝いは恒例だからな。戦闘で役立たない分、働かせて貰うさ」 小ぶりの工具箱を手にしたジェイド・I・キタムラが、笹を見上げる梅子に声をかける。 「おっさんはこういうイベントに誘う相手がいねえのさ。 いやまあ、声を掛け損ねたって所が本当なんだがね?」 「誘う相手がいたの~? ……って、それ、どうするのよ」 にまりとした言い方で返しながら、梅子はその工具に首を傾げる。電気まわりの工具に見えるが、七夕に、派手なイルミネーションはいらないのではないだろうか。ま、そりゃそうだな。と頷いたジェイドが取り出したのは、小型の提灯だった。中を覗きこめば、それは電飾で――LEDのようだ。 「火事にもならなくて安全だろ? プラムは、高い所の飾り付けを手伝ってくれないか」 「わかったのだわ。その間に、ほら、短冊でも書いておいたら? ほら、三郎太も!」 有無を言わさず押し付けられた短冊に、ジェイドは顎をなでた。 「願い事、ね――【人類全員がとは言わないが、俺の知り合いが幸せになるように】」 同じように梅子に短冊を押し付けられた離宮院 三郎太だったが、彼は短冊に迷いなくペンを走らせる。 「ボクの願いは唯一つです」 そして書かれたものは――【計都さんとこれからもずっと仲良く過ごせますように】 【もっともっと仲良くなれますように】、【計都さんを守れるような強い男になれますように】 「…………ぜんぜん一つじゃなかったですね……」 書き終えてから読み直し、あれ、と少し肩を落とす三郎太。どんまい! しかし、三郎太はきりと強い眼差しで向き直る。 (でも、全部叶えたいです――だってあの人は身寄りのないボクを必要としてくれたから) かけがえのない人。 その姿を浮かべるだけで、心に勇気が生まれる。 だから三郎太の決意は、揺らがない。――全てを叶えるための最適解を、きっと見つけてみせる。 「七夕? 願い事を書いた短冊を、竹にかければいいんだよね」 フュリエであるシンシア・ノルンにとって、日本の風習である七夕はまだ、二回目。慣れないことではあるし、笹と竹の区別がつかない人も少なくないので、シンシアの勘違いは致し方ないものかもしれない。 ふむ、とペンを取った彼女だったが、近くで聞こえた大騒ぎする声に、ふとそちらを見た。 「あれ? あれは確か……」 「おまえ、merryってなんでもつけたらいいってもんじゃないぞ!」 「あたしのっ、かーえーせー!」 地上2m付近をばたばた慌ただしく飛び回る梅子は、声に出して読み上げようとしている御厨・夏栖斗から、自分の短冊を取り返そうとしているようだった。 「もういっこは……【世界はあたしのもの!】ってお前世界征服でもするのかよ!!!」 「梅子さん、だっけ。初めましてです……世界征服でも?」 「夢は大きく、果てしなく! 目指すは常に頂点のみなのだわ! そしたらそこに行き着くでしょ!? そしてそっちは、シンシアよね。あたしのことはプラムと呼ぶと良いのだわ!」 謎理論を振りかざしつつもソウルネーム(笑)を主張し、梅子が喚く。 「頑張ってくださいね、ショ×カーさん」 「違うし! そういうシンシアは何を書いたのよ」 「私の願い事? ……知らない方がいいと思いますけど」 「まあ、そういうのは言いたくない人もいて当然よね」 仕方ないかと頷いた梅子は当然知らない。少し高めのところに短冊を結わえ付けたシンシアがよもや【梅子さんの胸が大きくなりますように】とか書いていたことなど。 「で。夏栖斗は何を書いたのよ? ……【世界が平和になりますように】?」 ネコと和解せよ! とか言い出しそうな梅子に、夏栖斗は先制で釘を打つ。 「これ割と真剣に書いたんだぞ!! 世界平和美しいじゃん。 あー、でもさなんだかんだ言って、梅子と僕の願い事って同じようなもんだな」 「は?」 「梅子に支配された世界が、不幸でも、争いの絶えない世界なわけないじゃん」 「何を言ってるのよ、間違いなく血で血を洗う世界なのだわ。 あたしにスイーツを献上しない者と、姉を大事にしない者には特に理由のない暴力が!」 ● 「わー、竹にお水が流れてるっ」 流しそうめんのために用意されたのは、節を繰り抜いた竹を並べたもの。水が流れていくのを、シーヴ・ビルトがテンション高く見守っている。だいたい><な感じで。最上流でそうめん流しをスタンバイしているのは、今日は裏方を通す予定の新田・快である。なお、今回の快はこれで出番終了だ。 「ししおどしとか有るのかなぁ? カコーンって音がするのっ」 何かを間違えているシーヴである。 「日本に来てからそれなりに経ちましたが、そうめんを見るのは初めてですね。シーヴは――」 「そーめん初めてっ、どんな味なんだろう><」 「――なるほど」 シーヴの様子を見ようとしたメリッサ・グランツェが、聞くより早く得た答えにひとつ頷く。しかしこの、箸というのは――手にはしてみたメリッサだが。 (お箸の使い方が慣れないですが、それ以上に思ったよりうまくすくえませんね) 困惑を顔には出さないまでも、メリッサの悪戦苦闘は誰の目にも明らかだ。隣の、シーヴはどうだろう。わくわくを全身で表現しているシーヴは、腕まくりするかのような仕草で箸を構える。 「ふふふ、カチカチ音出して遊んでたら上手くなった箸捌きを見せるときっ! ――とうっ」 すかっ。 「あれ?」 すかっ。 ――似たり寄ったりなようである。だが、そのシーヴを見ていたことで余計な力が抜けたのかもしれない。メリッサの箸が、幾筋かのそうめんを捕まえることに成功する。思わず、メリッサの表情が綻んだ。 「むむむ、あっ、とれたっ、わーい! ――あっ、メリッサおねーさんもちゃんととれてすごーいっ! 笑顔もプライスレスっ><」 「はいはい。次のそうめんが来ますよ」 幾度目かの挑戦の末にそうめんをとらえたシーヴはメリッサの笑顔に気が付くと、自分のことのようにはしゃいだが、「あ、でも恥ずかしそうだからお口にチャックーっ」と言いながら口の端を抑えた。 メリッサが、その表情をすぐに隠してしまったから。 だがそれが彼女の照れ隠しのようなものだと、シーヴは知っている。 「ふにゃ、なんでもないのです。別にメリッサおねーさんの笑顔が可愛かったとかじゃないのです」 「う……。」 次のそうめんに目を向けながら、メリッサは(まぁ、悪くない気分です)と心中で呟いた。 どうしても照れてしまうけれど。 羽柴 壱也は袖をまくる。胸を張る。そのサイズからはちょっと目を逸らしておくものとして。 「ふっふっふ!この流しそうめんマイスターと言われたわたしに挑もうとは! 言われたことないけど!」 ないんかい(お約束)。 カルラ・シュトロゼックは壱也の言動に動じることなく、長い髪を括りあげた。 「流しそうめん……実際にやるのははじめてだ。羽柴は慣れてんのか?」 「初めてなの? 慣れてるってほどでもないけど、日本人ならやったことあるとは思うよ。大丈夫、簡単だし楽しいよ!」 壱也がそう言ってる矢先に、カルラの端から逃げるように流れていくそうめん。 あれだ、このそうめん、生きてる(関西的表現)。 「あれだな、涼しげだが量は食えないものなんだな」 「お箸に慣れてないと難しいかな?」 カルラは、こう、しゅって! と実演する壱也の手元と自分の手元を見比べる。 「箸? あっ そうか、俺箸の使い方下手なのか……人生の半分も外国だと、できなくなるもんだなぁ」 生まれは日本人なんだぜ俺、と続けて呟いて、カルラは箸を握る指をしみじみと見つめ――ふと、己の荷物のことを思い出した。 「そうだ、足りなければと思って持ち込んでみたんだが。 から揚げと玉子焼き、ちくわの磯辺揚げに温野菜サラダ……嫌いなものでなければ、一緒にどうよ」 「おわー! から揚げだー! 食べるっ! ちょーたべるよ! サラダも卵焼きも……完璧じゃん! こ、これがじょ、女子力……たかーい!! 他にも作れるの!? すごいねー! 料理得意なの?」 カルラの作った料理から放出される、圧倒的女子力オーラ。きっと530000。 「料理は得意ってか、慣れ? 女子力ってよくわからんけど、一緒に遊んで楽しい羽柴もばっちりだろ。 食べたいものとかあれば、言ってくれれば次の機会に……次も誘ってよければ、だけど」 カルラが、輝き(女子力)に押される壱也にそう応える。その答えの時点で既に女子力最高ランク。 「お誘い受けるのはうれしいし誘うのは自由だと思うよっ、楽しいことは多い方がいいのだっ!」 壱也に高いのは、間違いなく友情力。 「流しそうめんか……ここ数年はやっていなかったかな」 久々に味わうのも悪くはないだろうと、新城・拓真は流れの後方で箸を持った。 「ん? ……と、月下美人か。なんだ、ひとりそうめんか?」 「今日は連れ合いも居なくてな、たまには一緒にと思ったんだがどうだ?」 「御相伴にあずかろう。一世代上では何を話せば良いかもわからんかもだが」 「はは、面白い話など何も出来んが、付き合って貰えるなら嬉しいな」 己と同種のぼっち系が来たかと顔を出した菫が、薬味の入った瓶を差し出した。 「使うか? ――ああ、自作じゃないから安心してくれ。コンビニで見つけた」 刻んだ乾燥ネギと、白ゴマ。そして生姜やわさびの風味。 「……うむ、美味い。それに趣もある……今回の事、提案してくれて感謝しているよ」 「梅之助に言ってやってくれ、きっと喜ぶ。 ――素知らぬ顔はしているが、あれでも疲弊した皆の顔を見るのが辛いらしい」 二人の目線が、笹のあたりで大騒ぎしていた黒い羽に向けられる。それに気がついたのか、大きく手を振ってから、梅子が駆け寄ってきた。 「何? 何? あ! ちょっと拓真、そうめん流し始めてたならあたしも呼んでくれればよかったのだわ!」 むう、と頬をふくらませてから今度は、めんつゆどこー! と騒ぎ始めた梅子に苦笑する。 「今年も……良い思い出が出来た」 麺をすすれば、よく冷えた出汁の匂いが拓真の鼻孔をくすぐった。 ● 陽が沈んだと見えても、夏の日の空はまだ明るさを残している。 それでも感じる温度は少しずつ下がり、昼の熱がまだ残る肌には心地よい。 割烹着を脱いで、鈍石 夕奈は伸びをした。 「偶にゃノンビリ花火でもするっすよ。……なんかな、良く考えると最近、ずっと何かしら動いとるなと」 肩や首をぐりぐりと回し、軽いストレッチ。 休もうとするとどうにも家でだらだらとすることになりがちで、「ゆったりとした時間」を過ごすという形での休息はあまりとれていないように思ったのだ。 「線香花火でも眺めて、ちょっと物思いにでも更け……む、あそこ水入りバケツが足りとらんな。 それじゃあ線香花火を――いかん、あっこはゴミ箱が無いわ。 じゃあ今度こs――あかんあの人らそろそろ花火切れるわ。配りに行かんと」 細い目を更に細くして、結局こまごまと動き回る夕奈なのである。 「ここからは小さな花火大会だ。――始める前に言っておく。あまりはしゃぎすぎないように! 火を扱うんだから、火傷や延焼に気をつけるんだぞ!」 水をくんだバケツとゴミ袋を足元に置いて、楠神 風斗が声を張り上げる。はーい、と返事が三々五々上がった。張り切り気味の意気込みが鼻息とともにふんす、と漏れる。 「そういう楠神さんこそ、気を付けて下さいね。 ……いつもながら危なっかしいのです。火は危険なので、年上として皆様含めしっかり注意しなくては」 お姉さん顔で、リリ・シュヴァイヤーが風斗にやんわりと釘をさした。 「注意しておかないとハメを外す連中が多いからな。きちんと見張ってやらねば」 成人としての責任からか、当然といった素振りで頷く風斗。※フラグ。 「小さな花火大会とか風斗さんらしからぬ小洒落た物言いだ事です。 ま、私も好きですけどね、こう言うのは。……よし、と。後はまあ、風情を大切に楽しみましょう」 風斗の足元から風が吹く度転がっていきそうなゴミ袋を捕まえると空のバケツにはめ込んで、犬束・うさぎが満足そうな無表情をする。 「イヤッホウ花火だ花火だ。友達とやる手持ち花火は実に夏っぽい感じするよね!」 タンクトップ姿で虫除けスプレーをかけていた白石 明奈が、フード付きのジャケットを羽織る。 火傷防止も兼ねているらしいのは、さすが(笑)がついていてもアイドル(笑)。 あとは暗くなるのを待つばかり――その時間に、何人かは笹に短冊を結びつけたりもしていた。 力強く、勢いのある筆致が形作るのは【こんな日常をいつでも楽しめるように】の文字。 楽しそうに、踊るような明るさを感じさせる文字は【楽しく遊べる世界でありますように】と並んでいる。 そして、丁寧に心をこめて書かれたのだろう、【皆様の心の平和が、守られますように】との文字も。 ――ところで、線香花火もまだなのに既にたそがれているのがひとりいた。臼間井 美月だ。 「……花火は良いねえ……はじけて消えて……」 『おい高校4年生、追い詰められすぎです』 「そう思うなら止め刺すような事言わないでよ!?」 幼い美月の外見をした式神が、美月のこころを容赦なくえぐる。 「……でも、キツいのは否定できないんだよね……周り皆年下の後輩だし……。 普通在り得ない事だから悪目立ちしてて……気まずさに負けて遅刻とか早退が寧ろ増えてるし……」 『5年生行きそうですね』 心が折れてることを打ち明けた相手をさらにえぐりにかかる式神。悪魔か。悪魔なのか。 「だから気晴らし! よ、よし、楽しむよ!」 涙目で立ち上がる美月の、明日はどっちだ。 すっかり日が暮れ、騒がしい辺りからは少し離れた場所で、ランディ・益母はそれをしげしげと見つめた。 「線香花火か、風情があるな」 「えへ、どっちが長持ちするか競争だよ」 ランディにそれを差し出した喜多川・旭は、自分の分を指で摘んで持つとその先にそっと火をつける。 ちりちり、ぱちぱちと移り変わり形を変える火の粉の花。 その火花を見るふりをしながら、旭はこっそりとランディの仄かな光に照らされる横顔を見、 (る、といつも目があうのなんで) 頬が熱くなる。ランディにしてもそうだ。たまに旭と目が合っては、心の中に温かいものが過ぎる。 (ううん、花火に集中出来んな……) 幾度か、同じことを繰り返しているうちに、旭の花火が揺れて、柄から離れた。 「あ、落ちた……わたしの負けー。新しいのとってくるね」 ひらりと、舞うようにその場を離れた旭の背を見送ってから、ランディは手近な自販機に近づいた。まだ未成年の旭も飲めるように、冷たいジュースを選んでボタンを押す。取り出し口に手をのばそうと屈んだランディの頬に、急に柔らかいものが触れた。 その正体は、そっと後ろから忍び寄ってきた旭の、悪戯心という名のキス。 「た、ただいま。もうひと勝負、する?」 何もなかったかのように誤魔化す旭の真っ赤な頬に、ランディはそっと缶ジュースを触れさせる。 「ひゃ、つめた……!」 「これで少しは冷えたか? ――もう一度か、いいぜ、俺が勝ったらどうすっか」 「んと。じゃあ勝ったら、何でも1個お願いきくよ――……!」 賞品を考えて気が逸れた旭を、ランディは不意打ちで抱きしめると、悪戯っぽく笑った。 「友達と花火するといえばもらい火だよね! ほーらほら火を付けちゃうぞーうりうり」 「あっ、火。有難うございます……わ、わ! 逆噴射してきました!?」 明奈の花火からリリの手にしていた花火に火を点けた、はずが何やらひどい目にあっている。 ※花火は蝋燭等から一本ずつ火を付けましょう。 「フゥハハハーハァー!」 「ひっ!? ひゃあ!?」 「風情を……ふぜ……あの……ちょっと? ま、まあ。こういうハメのはずし方も花火の醍醐味な気もしますか……はー、全くもう……」 手持ちの花火を指の間に一本ずつ挟んだウ●ヴァリン楠神が、ぐるぐると回転して火の粉を飛ばす。逃げようとして逆に近づいてしまった美月がわあわあと叫んでいる。突っ込みを諦めたうさぎは狸手で頭を掻くと、ほんの僅かに笑った。 ※人や物のある場所には、火を向けないようにしましょう。 「アスファルト焼くのやめてやれよ! ていうか楠神、お前が一番はしゃいでるわ!」 「た、たた楽しいね花火……!」 落書きを始めた風斗に注意を入れつつ、明奈はパニックに陥っている美月を宥める。 「あ、締めは線香花火な。やはり日本の花火はこれだよな」 火の消えた花火を水入りのバケツにいれた風斗が、最後の袋に手を伸ばした。 「……ソ、ソレハ遠慮シトコウカナ……」 『一秒も持ちませんからね』 片言で遠慮する美月と諦観混じりの式神を優しい目で見つめてから、各々線香花火にとりかかった。 「これが一番好きです。細く長く、静かだけど長続きするような……」 リリはふと周囲の、近い世代の顔ぶれを見回す。 (楠神さんを通して広がった輪と世界の中、皆様とご一緒出来る喜び――) 笑みを浮かべて、周囲に声をかける。 「どこまで持たせられるか、勝負なのです」 勝負。その一言に、幾人かの眼の色が変わった。 「線香花火は集中力。……でも、一番綺麗だよね。本当に、花が咲くみたいだ」 明奈は、睨むようにじっと花火の先を見ていることで持たせるタイプのようだ。 「楽しくはしゃぐのも悪い訳ではありませんが、事線香花火に置いては静かに動かない事こそが極意!」 そう言ってのけたうさぎは、表情も含めてもう置物のように微動だにしない。 牡丹、松葉、柳、散り菊。 勝敗の行方は、ちりちりと焼ける火球次第――。 なお翌日、楠神 風斗が焼けたアスファルトの清掃を命じられた件は、追記しておく。 <了> |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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