●守衛 ともすれば、可憐な挙措にも見えた。 池のほとりに立つ一人の少女。 憂いを帯びた瞳で、水底を見つめていたかと思うと、伸ばした人差し指をついと振ってみせる。 途端、ゆらゆらと静かに揺れていた水面が激しく隆起。 池全体に広がっていく波紋の中央に、非常識なスケールを伴って、半透明の巨人が顕現した。 全身が水で組成された怪物。 愚鈍に、しかし重厚に岸の方角へ一歩を踏み締めると、地響きと共に小高い波がいくつも生じた。 水の化身は四肢を存分に動かせることに欣喜したのか、恐ろしく重低音の唸り声を上げる。 少女はただ、その様子を。 満足そうに笑って眺めていた。 ●瞬きの刻 神にしか知り得ない物事がある。 人には不可侵の領域を覗く『カレイド・システム』はまさしく神の目であり、神秘の極致といえるだろう。 その万華鏡が此度捉えた映像は、実に緊迫した状況を伝えていた。 三ツ池公園――かつてジャック・ザ・リッパーとの死闘を演じた舞台。 万華鏡のイメージには、雲ひとつない、胸のすくような見事な星空が広がっていた。 美しい光景の陰で不穏な動きが見られている。 この頃の日本で神秘的影響を増大させる『特異点化』という現象が促進していることはアーク内部では既に周知の事実となっており、適宜対処に当たっていたが、最新の万華鏡の観測によれば、近々この特異点化が数年振りに最高潮を迎えるという事実が挙がってきている。 その裏には、ラトニャ・ル・テップの怪しい影が浮かび上がっていた。 伝え聞く神話になぞらえてこの時を『星辰の正しく揃う時』と称したラトニャは、自身の行使する神秘影響力が極限まで増大するこの絶好の機を利用して、彼女がホームとする世界とこのボトム・チャンネルとを完全に結合しようとしているようだ。 仮に彼女の計画が実現されようものなら、下位次元に過ぎないこの世界は溢れんばかりの強大なエネルギーに呑み込まれ、破滅を迎えることは容易に予見される。 看過できる事態だろうか? 無論、あってはならぬ。必ず阻止しなければならない。 先にジャックが起こした事件も前回の『特異点化』の発生によるものだったが、今回もまた三ツ池公園が騒乱の地となるであろうことは、単なる偶然か、それとも運命か――いずれにせよ、なんとも皮肉な話だ。 ●決起 万華鏡が得たイメージ映像はあくまでも断片的で、騒動の種がラトニャによるものだという確信にまで至れたのは、彼女が三ツ池公園に出現したという報告と合わせた類推によるものだ。 逆説的に言えば、感知映像の種類は多岐に渡っており、また同時に、それぞれが独立して剣呑な気配を漂わせていた。察するに、ラトニャが思い描く企みは、かなり複雑怪奇な様相を呈していると考えられる。 「そのうちのひとつから、上の池に『ゲイラ』と呼ばれる大型アザーバイドが現れることが判明しました」 日頃沈着冷静な『運命オペレーター』天原和泉(nBNE000024)にも、どこか焦りが見られた。 「人型で、大きさにして20m前後、体表全面が水でコーティングされている……というより、全身が水そのものですので、火の類を一切受け付けないことが予測されています」 資料映像では、顔のない入道めいた姿をしていた。典型的な巨人である。 「アザーバイドはラトニャから南門の守護を命じられており、侵入者を防ぎ止めることを自らの存在理念として与えられているようです。皆様には、こちらの迎撃に当たっていただきます」 南門の支配を許してしまえば、アークのリベリスタだけでなく、援軍に向かうオルクス・パラストの面々が園内に突入、はたまた外部に一時避難する際の妨げになる。 更には前線に支援を送る補給路も断たれかねない。なんとしても死守せねば。 とはいえ、懸念材料は消し去りきれない。 敗北は即ち崩界を意味する。 ミラーミスでもあるラトニャが持つ力を考慮すれば、今回の交戦は未曾有の困難を極めるであろう。 「ですが、決して不可能案件ではないはず……希望を捨てるわけにはいきません。この世界の行く末を皆様に委ねます。お願いです。どうか、ご無事で」 和泉は珍しく、直情的な眼差しで告げた。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:深鷹 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2014年07月15日(火)22:32 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●防人 ボトム・チャンネルをひとつの器とするならば。 内部を満たす水の中に、数多くの歓迎されざる異物が混ざってしまっている現状は、嵩増しに次ぐ嵩増しにより表面張力だけで溢れるのを抑えている状態だ。 臨界点は確実に存在していて、ギリギリのところでそれを食い止めている。 とても不安定で。 とても神経質な。 この上なく脆い世界でも、決して希望が消え失せたりなんかしていない。 「南門の守護者、か」 邪念渦巻く戦場を覆う上天には似つかわしくない、見事な星空だった。濃紺のベルベットに、贅沢を尽くして砂金を撒いたかのような、実に美しい光景であった。 この空を仰ぎ見ていると、自分が守りたいものがよく分かる。改めて意志を固めた『Brave Hero』祭雅・疾風(BNE001656)の、共に幾多の修羅場を乗り越えてきた愛器を握る手に、より一層の力が加わる。 「相手にとって不足なし。奴に補給路を絶たせてなるものか。ラトニャの計画通りにはいかないという事を思い知らせるぞ。上陸はさせない! 迎撃する、変身ッ!」 携帯端末を模した幻想纏いを起動。慣れ親しんだ装備をその身に纏う。この強化フレームに包まれている限り、戦う意志が燃焼し続ける限り、疾風はヒーローとして戦える。 倒すべき眼前の敵は一体。 たとえその相手が途轍もなく巨大なアザーバイドだろうと、迫力に臆したりはしない。 疾風には――いや、彼らには、目標がある。揺らぎなき信念がある。 抗う先に、希望を掴めると信じて 「いやあ、それにしてもでかい獲物だ。これだけの大物はそうそう御目に掛かれませんよ」 まだ数十メートルは離れているというのに、それでもなお『弓引く者』桐月院・七海(BNE001250)は池中央に佇む半透明の巨人を見上げてしまう。 ただ薄羽で弓を撫でる彼の表情には、得体の知れぬ化物への恐怖というよりは、純粋に、討伐するに当たっての思案からくる悩ましさが浮かんでいた。 恐れを知らないのは『ツルギノウタヒメ』水守 せおり(BNE004984)もまた同じであった。幼い時分から水に慣れ親しんでいる彼女にとってはそれも当然か。 黒々と溜まった水は死を連想させる。けれど他方では、生命の根源としての側面も持つ。 「かかっ。面白い。深き水は奈落。苛烈な命燃ゆる奈落じゃ。奈落生まれの後輩か。ならば、堕としてやらねばなるまいの。我と同じより暗い『底』まで」 嘲弄する声に合わせて、血にも似た緋色のドレスがたなびく。煉獄の火の色を秘めた瞳を爛々と燃え盛らせた紅涙・真珠郎(BNE004921)はただひたすらに、喰らい尽くすことだけを考えていた。 強敵は己が糧である。難敵は己が興である。 あのデカブツを喰い殺す凄絶極まりない瞬間が今から愉しみで仕方がない。 「それに、あの幼女の『子供』というなら教育してやらねばなるまいの。親に似てしまったら大変じゃしな」 宿縁を思い返しながら喉を鳴らす。 「そういえば私が人魚で、紅涙のおばあちゃまがスキュラ。二人とも海棲種がルーツだね。真水の化身と、海水の幻獣、一体どっちが強いかな?」 意味深に訊くせおりに、真珠郎は口角を上げ、暴虐な獣のように牙を見せて笑った。 「無論、我らよ」 力強い返答にせおりは満足して地を蹴った。『ファントムアップリカート』須賀 義衛郎(BNE000465)から授けられた神秘の翼には、標的を見据える双眼の輝きと同じ、蒼い闘気が纏われていた。 水の巨人『ゲイラ』はゆっくりと、厳かに前進を始め、中心から岸に向けて大きく円形の波紋が広がる。 南門へと運ばれる第一歩。 水面に映る星影がするりと散った。 ●奮戦 鈍重さの裏には恐るべき膂力が隠れている。 そんなありきたりな性質は、注意深く観察するまでもなく容易に想像がつく。 「もらえて数発……いや、片手の指で足りる程度だろうか」 自身の耐久力を誇りとする『Friedhof』シビリズ・ジークベルト(BNE003364)であっても、その点が拭いきれない不安要素となることは否めない。自軍の盾として動くにしても、中々に労苦を要しそうだ。 ただでさえ不慣れな水中戦。足が付く岸辺ならまだいいが、前に進み出ようと思ったら姿勢を維持したまま泳がねばならない。行動が大きく遅れることになる。 「……フッ。だからといって、私に敵前逃亡という選択肢はありえないのだがな」 英霊の加護を一身に受けて、静かな微笑を湛えたまま、シビリズは未だ冷たさの残る池へと踏み入った。 攻撃は滞りなく行われていた。 骨格のみの翼で自在に宙を舞う『いつか迎える夢の後先』骨牌・亜婆羅(BNE004996)が放つ光弾を封じた矢は、岸辺にて分厚い弾幕を張る七海と合わせて、的確に『ゲイラ』の体力を削っていた。 此度の任務は防衛戦、という分類になるのだろうが、最も必要なのは効率的なダメージの加算である。 南門への直進を主軸に置く、いずれ上陸してしまうであろうアザーバイドを相手取るということは、一種のタイムリミットが存在するのと同義。 「こういう分かりやすい仕事は好きよ。突破を許しちゃいけないって思うと気が引き締まるもの」 気丈に語ってみせるが、大量の水で満たされた巨人の肉体に亜婆羅が得意とするインドラの烈火が通じない以上、十全に戦えているとは言い難い。それでも防衛線の死守に尽力する彼女の働きからは、枯れ枝めいた痩躯をローブで隠した奇怪な外見の内側に備えている、本来の優しさが垣間見えた。 集中砲火を受ける巨人も当然無抵抗という訳ではない。至近距離で低空飛行する疾風とせおり目掛けて振り回された腕は、さながら樹齢を重ねた大木のごとき逞しさであり、一打一打が非常に重い。 怪力に任せて勢いよく両名を水面に叩きつける。 皮膚を裂かれる感覚も、肉を貫かれる感覚もないが、『全身の骨に響く』というのは、流血を伴う傷に劣らぬ痛みをもたらす。 「だからどうした。こんなことで戦意を失うほど、私は軟弱じゃないぞ!」 それでも疾風は攻勢を止めない。掲げた『破衝双刃剣』の刀身は彼の感情の昂りに応えて、眩いばかりの閃光の刃へと姿を変える。 「アークのリベリスタを、舐めるなあああァァ!」 切っ先をアザーバイド脚部に向けて、勇猛果敢に突進。 精度、入射角、破壊力。三拍子揃った渾身の剣撃は、物理攻撃への耐性を有する水の巨人でさえも若干ぐらつくほどの、確かな損害を与えた。 「ここで時間をかけてる暇はない。お前は元々水なんだろう? あるべき姿へ還れ!」 重ねて浴びせられる七海の矢。卓越した技量と魔力制御から放たれる彼の射撃は、それが効果の高い神秘属性であることも合わせて、火力自慢が揃う味方の中でも屈指の威力を誇っている。 前線に立つシビリズが展開したラグナロクの恩恵もあり、消耗を気にしないで済むのが有難い。 「そうだ、よしよし。大人しくしてろよ。その図体で岸にまで上がってこられちゃ堪ったもんじゃない」 少しずつではあるが近づいてきている『ゲイラ』の異形に息を呑む。 進行速度は極めて遅く、加えて攻撃動作のために頻繁に足を止めるのだが―― 「ほう! 豪快な仕草をやるもんじゃの」 巨人が重々しく上げた足を間際で避けてみせた真珠郎だったが、翼の加護による臨時的な空中戦を強いられているためか、普段の彼女よりは若干身のこなしに鈍さが見られる。 とはいえその餓えに餓えた狂犬めいた性格上、全く引き下がる様子はない。 「我が牙の一端じゃ」 桁外れの神速により生み出された幻影の中から、アザーバイドの膝裏目掛け急角度で『無銘の太刀』の鋭い剣閃を斬り込ませる。シンプルな攻撃ではあるが、武に長けた紅涙の練度をもってすれば、容易く振るわれた一太刀だろうと必殺の威力を秘めることになる。 「義衛郎、少しいいかしら」 負傷した疾風とせおりにまとめて治癒の法術を施していた『慈愛と背徳の女教師』ティアリア・フォン・シュッツヒェン(BNE003064)がその手を休め、やや標的から離れた位置で、優れた平衡感覚で水面近くを低空飛行する義衛郎を呼び止めた。 「なんでしょう、シュッツヒェン先生」 隙を見計らって一撃離脱の強襲を仕掛けつつ、後ろに控えるティアリアや亜婆羅といった面々の防護に努めていた多忙な彼ではあったが、同時に翼の加護を掛けるという役目をも担っていた。 「翼はわたくしも与えられるわ。思ったより回復には余裕があるみたいだし」 「助かります。なら、オレも戦闘に従事できますね」 「ええ、遮二無二働いていただくわ」 吸血鬼の微笑は品良く優美だったが、嗜虐的な意味を含んでいるように義衛郎には思えた。 「それにしても、本当に手間を掛けさせてくださること。これだから種族的に傲慢な部類の存在は嫌いだわ。ま、人間に手痛いしっぺ返しをくらって驚く顔が見れるかもしれないから、そこは楽しみね♪」 心底愉快そうに語るティアリア。 精鋭揃いのリベリスタが織り成す迎撃の数々を、一身に集める巨人に蓄積されたダメージ量を計算するだけで、思わず頬が綻んでしまうのだ。 ●崩すということ 倒れるのが先か、陸に上がるのが先か。 南門の制圧を目指す『ゲイラ』が上の池沿岸に到達するまで、視認による推測ではあるが、およそ十メートルを切り始めた。 「正念場、ってやつね。骨禍珂珂禍! いいじゃない、熱くなれるわ」 きりきりと弓を引く亜婆羅の指先に力が篭る。 「全部終わったらバカンスにいくのよ。子供達の楽しい夏休み、潰させるわけにもいかないからね」 想念を乗せて放たれた矢は、変わらず安定した威力を叩き出すが、まだ致命には届かない。 最前線で戦い続けたアークリベリオンの二人にもかなりの疲労の色が見られている。 「それでも――この先には、行かせない!」 胆力を振り絞って繰り出されたせおりの刀術は、生じた衝撃波の副次効果により僅かに巨体を押し返す。 手応えはある。だが。 ノックバックを付随する攻撃手段は『ゲイラ』もまた得手としている。 巨人の腹部から噴出された激流が、少女の華奢な身体を飲み込み―― 驚異的な水圧で吹き飛ばした。 「ッ!?」 濁流の中でせおりの視界が反転する。 しかしながら大事には至らなかった。後方に陣取っていた義衛郎の腕に受け止められ、岸辺の踏み固められた地面に叩きつけられる最悪の事態はなんとか防ぐことが出来たのである。 (ああ、やっぱり) 以前受けた依頼でも同じような出来事があったけれど、こうして義衛郎に体を預けていると、何故だか懐かしさに似た感情を覚えてしまう。 それも、前回よりも遥かに強くだ。この公園という場所が関係しているのだろうか。 もしくは、現在公園に出現していると聞く―― 「怪獣退治も大詰めの段階だってのに、しぶとい奴だ。そらっ!」 せおりの思惟を遮ったのは七海が羽矢を放つ朗々とした掛け声であった。文字通り矢継ぎ早に魔術を込めたそれは連射され、予後動作中にある水の巨人に反撃する。 「ここから先は関係者以外立ち入り禁止だ。失せろ」 星の瞬く夜空に映える、眩いばかりの幻惑の剣技。 知らぬ間に、義衛郎はせおりの元を離れて戦線に復帰していた。せおり自身も、ティアリアの治療を受けて刀を握り締める力が戻ってきている。急ぎ、巨人の足止めに向かう。 前線では疾風が依然凛とした覚悟で奮闘していた。 確かに巨人が陸地に迫ってきてはいるが、足の付く浅瀬で戦えるというのはリベリスタからしても悪くない状況である。水底を踏み締めた足で池を一気に駆け抜け、大仰なアクションで大立ち回りを演じる。 足元に狙いを定めた光の剣はアザーバイドの体表を裂き、微妙にではあるがバランスを奪う。 その些細な隙を見逃さず亜婆羅が弓を番えるが、巨人はよろめいた足を無理やりに疾風へと向ける。 体重を乗せた蹴撃を代わりに受け止めたのは、確固たる足場を得て万全となったシビリズである。 骨が軋み、顔が歪む。 痛覚が神経路を駆け巡る。 だというのに。 ブロンドの兵士は高揚し、闘志を滾らせていた。 「ク、ハハハハハ! いいぞ巨人よ! 潰してみせろ。流してみせろ。壊してみせろ!!」 窮地。劣勢。不利。瀕死。逆境。それら全て、劇的な激闘を愛するシビリズの大好物。 「私はその全てを跳ね除けてみせようぞ――さぁ勝負だッ!」 重厚なる『Helle Nacht』を高々と掲げ、十倍以上もの身の丈差を感じさせないほど、堂々たる態度で巨人へと吼えるシビリズ。 あらゆる困難を跳ね除けるスキルを活性化させた現在の彼は、まさしく完全無欠。 砕けない。壊れない。撓まない。折れない。削げない。潰えない。 崩れない。決して。 「無理しますわ。でも、嫌いじゃないわよ」 掌を上に向けて呆れた仕草を取ってみせるティアリアだったが、手負いの獣性同士が激突し合う光景には、内心ぞくぞく来るものがあった。 「危なくなったら癒してあげるから、存分におやりなさいな」 巨人はのそりと動く。 邪魔なシビリズを踏みつけるべく降ろされた足も、研ぎ澄まされた動体視力の前では意味をなさない。 攻撃は空を切り、再び隙が生まれる。 「我が後輩よ、よくぞ戦った。そして最後に知るが良い。猛る魂は、更に強き魂に喰われるということをの」 飛行を止め、水辺へと着地する真珠郎。 地に足を付けた今ならば、気兼ねなく存分に躍動可能。 真紅のドレスを濡らして疾駆し。 荒々しく得物を抜いた。 無限の太刀筋から舞い散る水飛沫は、星明りを受けて硝子細工のように煌く。 剣鬼は目を細め、大きく唇を歪めて嗤った。 「ひれ伏せ、小僧。我が紅涙の姫である」 巨人『ゲイラ』は、ついに倒れた。 鼓膜を揺らす地響きと、巻き起こった大波と共に。 全ての命は水へと帰る。 彼の者もまた溶けるように。 常識を超えた巨体を構成する多量の水は、池の水面を撫でつつ流れ出ていった。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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