●星の瞬く夜に 澄み切った夜空に金平糖をまぶしたような星が瞬き始めた。 何億光年も離れた惑星から放たれてようやく辿り着いた小さな光。 まだ地球で起きている小さな異変には気づいていない。 三ツ池公園は不穏な空気に包まれていた。怖しい何かが現れる気配が辺りを徐々に取り巻いていき、近くにいた小動物は身の危険を感じてどこかに去っていった。 誰もが身の回りのことに精一杯で今宵の星空を見上げている者はいなかった。星達はまるで今夜行われる不気味な宴を祝福するかのように一層輝きを増していく。 グウウウウウウウウ―― その時だった。不意に地響きがして辺りに振動が走った。 獣の鳴く轟と地面を踏みしめる大きな足音。 一瞬にして砂埃が舞って視界が悪くなる。 怪物だった。白い目が体中に何百何千とくっついている。身体には大きな翼を広げて、顔には鰐のような大きな口を持っていた。 小動物たちがいなくって大砂場周辺に異形のもの達がついに姿を現す。砂浜からは大きな百足のような化け物が現れて自慢の大顎で辺りのもの構わず噛みついた。 ――三ツ池公園に激震が走る。 今宵の星の瞬く宴の催しはまだ始まったばかりだった。 ●三ツ池公園の化け物 「三ツ池公園にラトニャの配下の異形な化け物達が姿を現したわ」 『Bell Liberty』伊藤 蘭子(nBNE000271)がブリーフィングルームに集まったリベリスタたちを前にして厳しい表情を向けた。すぐに資料を元に状況を述べていく。 『フェイトを持つミラーミス』――フィクサード『ラトニャ・ル・テップ』による恐怖事件はいよいよ今夜に最高潮を迎えようとしていた。 目的不明と見られていた彼女の真の目的に繋がる情報を、アークの万華鏡が察知した。万華鏡の演算によれば、この所加速的に進行しつつあった日本の『特異点化』は近い夜に最高潮に達するらしい。ラトニャは今宵大きな騒ぎを引き起こすことを計画していた。 ラトニャは、自身の神秘影響力が最大限に増大するこの時を利用して、己の世界とこのボトムを完全に接続しようとしているようだ。彼女の上位世界がこの世界と結合してしまえば、今の世界は崩壊を免れない。 「貴方達には砂の大広場に現れた異形の怪物たちを退治してきて欲しい。アークがこれまで戦って守ってきた地でこれ以上彼らを暴れさすわけにはいかない。幸いにもこちらにはこれまでに培ってきた力がある。それを今宵充分に発揮して奴らを叩きのめしてきて。無事に成功して帰ってこれるように星に願いを込めて待っているわ」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:凸一 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2014年07月14日(月)23:22 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●敵の前に立つ背中 金平糖を撒いたような小さな星達が澄み渡る夜空に瞬いた。 何億光年も離れた所から旅をしてきた小さな鈍色の光が憂いを帯びている。 まるでこれから起こる惨劇を悲しんでいるように――。 冷たい夜風が地面の砂を巻き上げて視界が悪くなる。砂埃が舞って夜空に輝く星達がい瞬にして見えなくなってしまう。 異形の姿をした魔物たちが上ノ池の畔に姿を現した。 「――ひっ」 澄んだ緑色の瞳を大きく開けて『百の獣』朱鷺島・雷音(BNE000003)が、喉の奥から小さな声にならない叫びを漏らす。可憐な乙女の目に薄っすらと潤うものが浮かぶ。 カンテラの灯りに照らし出されたのは悍しいクトゥルフの魔物たち。 体中に百個以上の眼を貼り付けた大男が乙女を睨みつけている。その後ろではまるでハリセンボンのような姿をした翼獣が舌を出して威嚇していた。 怖くない、怖いと思ったら、勝てなくなる―― 深呼吸して高まる鼓動を抑えようとした。やっぱり怖いものは怖い。思わず雷音は逃げ出したくなったが、周りを固めている仲間を見て、大丈夫、と言い聞かせる。 「奴らがおぞましくて見ていられないなら、俺の背中を見ろ。 俺は必ず、敵の前に立っているから」 その時だった。雷音や『陽だまりの小さな花』アガーテ・イェルダール(BNE004397)の前に両手を広げて『デイアフタートゥモロー』新田・快(BNE000439)が立ちはだかる。チームの最前列に立った快の背中が他の後ろにいる仲間にとって大きくて頼もしいものに映った。絶対に守るという気魄が背中から伝わってくる。 「この公園、で化け物退治、か……懐かしい、といった所。Gの大群、とやりあうのも、久しい、ね。さあ、また血沸き肉踊る、闘いを……始めよう」 『無軌道の戦姫(ゼログラヴィティ』星川・天乃(BNE000016)も、頼もしい快や雷音の姿を見て自然と天乃も薄っすらと笑みを浮かべた。公園に、大量のGと久しぶりに存分に暴れることが出来そうで闘志が漲る。 「そっちが百鬼なら、こっちは一騎当千! それが八人、当八千! 妖怪退治といこうか、深緋!」 相棒の深緋に話しかけながら『てるてる坊主』焦燥院 ”Buddha” フツ(BNE001054)も威勢を上げる。快達に遅れを取らぬよう自分も、袈裟を振り乱しながら、上空の敵を撃墜するために素早く飛行する。藤代 レイカ(BNE004942)も長い髪を纏めて整えるとすぐに大業物を鞘から抜いてフツに続いて突撃した。 「それで怯むと、目を逸らすと思うのならば。愚昧に過ぎますよ」 厳しい眼をした蘭堂・かるた(BNE001675)も勇ましい言葉を発した。恐怖に打ち勝つにはまずは眼を逸らしてはいけない。敵を真っ直ぐに見る大切さを勇敢な態度で示す。 「仕事で、いわゆる「不快害虫」と2連続で当たるのは―― どうにもこうにも……運が悪かったと思うしかないの、かな」 想像以上にグロテスクで巨大なGの怪物を目の当たりにして『龍の巫女』フィティ・フローリー(BNE004826)が眉を顰めた。醜悪な姿に怒りが思わずこみ上げてきて、絶対に容赦はしないと手にした剣を力一杯握り締めて立ち向かっていく。 ●自身の脆さ 「シンプルに行くぞ、回復役から叩く!」 大きな声で仲間達に合図すると自分が先頭を斬って敵陣に突っ込んだ。四方八方から無数の針を浴びせかけられるが、表情一つ変えず真っ直ぐに突っ込んでいく。 集中砲火を一身に浴びながら敵の攻撃を惹きつけた。あまりに苛烈な攻撃によって快の姿がよく見えなくなる程だ。それでも快は絶対に一歩も引かない。 ふわっと金髪を軽く掻きあげたアガーテは静かに眼を閉じて大きく見開いた。 百眼の男がアガーテに向かって口から氷弾を撃ってきた。敵はすぐに後ろいるアガーテが回復役だと見当をつけて集中的に攻撃を仕掛けた。 相棒の槍を強く握り締めてフツが前に立ち塞がる。深緋を大きく前に翳して正面から攻撃を受けて弾き飛ばす。跳ね返った氷弾を受けて百眼の男が苦しむ。さらにフツは呪符を握り締めて、紅い火の鳥を召喚すると、空を飛び交う翼獣に襲いかかった。巨大な火力に巻かれて翌獣たちがうめき声をあげる。 口元を固く結んでアガーテも表情に凛々しさが灯った。快を狙っている翼獣に対して、大きく腕を振りかぶると渾身の火炎弾を放つ。快もろとも強烈な火炎が翌獣を襲って、大きく後方へと弾き飛ばした。すぐにその空いた道筋から天乃が突っ込んで、練り上げた生糸を飛ばして翼獣を絡めとる。 「動くな……爆ぜろ」 真っ直ぐに迫った天乃が動きを止めた翌獣を切り裂いた。 その瞬間に、爆発が起きて翼獣が地面に激突する。すかさず後ろから飛び込んだ、かるたが刀を抜いて翼獣の胴体を切り裂いた。 百眼の男は翼獣を失って戦闘方針を変えざるをえなくなった。すぐに後ろにいる三又百足と黒光りするGを前線へと繰りだすように仕向ける。代わる代わる前衛と後衛を入れ替えながら巧みに攻撃を繰り返して、それぞれの敵を抑えているフィティやレイカにダメージを与える。百眼の男は「自分が怖いか、そうだろう? 怖いだろう」とかるたや雷音に対して心の中に問いかけてきた。かるたは耳を傾けずにそれでも必死に食い下がる。 雷音も惑わされずに眼を凝らして観察した。百眼の男は巧みに自分が攻撃を受けないように、後衛に位置を取りながらGを敵の撹乱につかい、一瞬の隙をついて、百足に奇襲攻撃をさせているようだった。 自分も戦闘指揮をもつ身として同じ指揮能力をもつ、百眼の男の動きが何となく読めた。すぐに雷音は見上げると快やフツと目があった。 フツは雷音に対してただ無言で頷いた。 オレの読みが当っていたら、オレの動きを見て、新田も朱鷺島も星川もそれを読み取ってくれるはずだ。 そうだろ、皆! 彼はアイコンタクトした。彼もまた百眼の男の戦闘の癖をつぶさに観察して見抜いていた。お互いに目で頷き合って敵の癖を見抜いたということは伝わった。 あとはそれをどう崩すか―― フツは百眼の男を前にして深緋を持って突進した。猛烈な火炎弾で敵が襲い掛かってくるが、顔色を変えずにそのまま突っ込んで大きな眼を突き刺す。 百眼の男を惹きつけている間に、快や雷音達がフツの意図を悟って動いた。 呪符を取り出すと雷音は大きな白い翼をはためかせて近づいて撃ち放つ。さらに快もすぐさま雷音に続いて強く祈った。 「どうした! 出てこいよ、臆病者!」 手から放たれた光の十字が雨のように降り注ぐ。百眼の男の体中の眼に激しく突き刺さった。百眼の男が心を乱して狂った所を天乃とかるたが素早く飛び込む。 「自身の脆さは十分に自覚しています。しかしそれは、踏み込みを躊躇う理由ではなく、一歩進み切り開く、その境界線を見極める標――」 かるたは意を決すると刀の柄を強く握って大きく振りかぶった。 地面にすれすれに懐に飛び込んだかるたが下から振り上げるように刀で斬る。 続いて天乃が後ろから同時に背中を狙った。 「血を流し、命を削り、運命を投げ捨ててまで、生きてきた証、をその程度でどうこうされるわけには、いかない」 風を斬るような前後からの斬撃で百眼の男の首がついに吹き飛んだ。 ●借りた背中 指揮系統が瞬く間に崩れて百足とGは一瞬、動きが止まる。 鈍色に光る大業物を抜いたレイカが、目の前にいる三又を自由にさせないと頭を狙って斬りつけた。緑色の液体を撒き散らして百足は後退する。 大百足はレイカに斬られて大きくダメージを負った。ブリザードを巻き起こしてリベリスタたちの眼を潰そうと猛攻を仕掛けてくる。雷音はすぐに、砂の動き始める位置に気がついてブリザードが来ると仲間たちに叫んだ。 一瞬遅れてブリザードが襲いかかってきたが、辛うじて快は交すことに成功した。 「雷神の十字に沈め!」 再びイナズマの光を帯びた十字の鉄槌の雨が百足を襲う。ブリザードを起こして逃亡を企もうとしていたが、快の攻撃によって拒まれた。 「必殺の深緋アタ――ックッ!!」 フツは弱った百足の頭に向かって容赦無く槍を突き立ててトドメを刺した。 百足がやられて残るは強力でタフなGを残すのみとなる。 剣を握りしめたフィティは、大きく膨れ上がったGの怪物から眼を背けたくなりそうだったが必死に堪える。 「悪いけど、この昆虫は絶対に好きになれそうにない、からね? ……嫌いじゃなかったらエリューションに手加減をする、というわけでもないけど」 これ以上、前に進めさせるわけにはいかないと、Gに目がけて振りぬいた。その瞬間に、巨大なGは腹を大きく痛めて中から孵化した大量の幼虫をまき散らした。その間に大きなGはトゲトゲのついたあの自慢の脚力を生かして素早く逃げる。 羽ばたかせながら大量に迫ってくる小型のGに囲まれて身動きが取れなくなる。思わず発狂しそうになってしまう。剣を振り回して追い払おうとするが、あまりの量の多さに為す術がなくGの群れの中に膝を着いてしまう。緑色の液体を撒き散らしながら猛攻を仕掛けるGの執念深さにやられしまいそうになったとき、うしろから素早くうごいてアガーテが服の汚れるのも構わずに前に進むと癒しの神秘を放った。 痛みも怖さも知らなかった。この世界を知るまでは――。 アガーテは献身的に傷ついた仲間を癒す。 知ってしまった……変わってしまった事は辛いことかもしれないけれど。 痛い思いを皆にさせないと強くなったのは決して悪いことではない。 アガーテに助けられたフィティが再び、力を取り戻して剣を振り回すと周りにいた小型のG達が凍りづけにされて身動きが取れなくなった。すかさずそこを切り裂いてその場を何とか脱出することに成功する。もはや執念だった。 絶対にGにだけは倒されてはなるまい――とフィティは髪を振り乱しながら鬼神に迫る勢いで髪を振り乱しながら小型のGを粉砕していく。 巨大なGは羽を飛ばして空に舞い上がった。天乃が何とかして追いかけようとするが、足場がなくて敵まで迫ることができない。 「翔べ!」 その時、快が腰を低くして叫んだ。 意図を悟った天乃は快の腰を踏み台にして飛び乗って跳躍しようとした。 快は思わず上をジャンプする天乃を見上げた。 短い天乃のスカートが広がってその下にあるものが―― 「……背中借りる、よ。見上げるの、禁止」 ぐぁあっ――!! その瞬間、快は天乃の足で鼻を思いっきり潰された。 天乃は、二段階の跳躍を経て一気に空高く舞い上がった。勢いをつけて空を優雅に飛んで逃げようとしていたGの背中に飛びかかる。 不意を突かれたGは今度こそどこにも逃げ場がなかった。 「とっておき……といく、よ」 鋭利な爪をGの背中に突き立てて思いっきり引き裂いた。天乃の渾身の斬撃が炸裂してGはついに粉々に空中で粉砕されて大砂場に散った。 ●乗り越える夜、明日へ 大砂場にいた魔物たちは砂に埋もれたまま静かに息を止めている。激しい戦場は再びまた夜の静けさを取り戻していた。レイカは纏めていた髪を解いて、一息ついた。とりあえずあのラトニャの思惑通りにいかせるわけにはいかなかった。長期戦にならずに、短期で決着させることを目標にしたが何とか達成されてよかったと思う。 「新田、鼻血が出ているぞ」 戦闘が終わってフツがすぐに澄ました神妙な顔で指摘した。慌てて快が鼻を抑えるとまだズキズキと痛みが残っていた。赤い大量の血が掌に付いている。 天乃の足の裏で顔を踏みつけられた感触がまだ生々しく残っていた。もちろん、天乃に思いっきり顔を踏まれてちょっと嬉しかったとかそういうことは断じてない。 「ところで快は――見たのか?」 純粋で可憐な乙女の雷音がまるで汚いものを見るかのような眼で快を見る。 快は否定するために言葉を発しようとしたが、それよりも先に後ろにいたアガーテに言われてしまった。 「新田さま……不潔です」 潔癖症のアガーテが顔を真赤にしてどこかに走り去ってしまった。 鼻血を大量に出していた快は言い訳もできぬまま困った顔で立ち尽くす。何とか誤解を解いて貰おうと、天乃の方を見やるが、彼女もまた眼をとろんとさせて快に言った。 「……変態」 快が何とか誤解を解こうとして騒いでいる間に、雷音はこっそり隅の方へいって愛する父の元にメールを送信していた。 「この夜を乗り越えて、明日、貴方に『おはよう』と言えるように――」 まだ全てが終わったわけではない。これから先ももっとも苦しいことが待ち受けている。だからこそこうやって皆で生きている事が何よりも大切だった。 夜空にはきらめく星が綺麗に広がっていた。戦闘中は決して見上げることがなかったが、その間にも星が変わらずに光り輝いていたのだった。 雷音は目を閉じて胸に手を当てると愛する人の顔を思い浮かべる。 明日もこの綺麗な星空を大好きな人達と見られるように祈りを込めた。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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