●ウンヌンカンヌン 「――で、あるからしてェ……!」 拡声器の割れ掠れた大声が、暗い夜の廃校に響く。 「この国はッ! 社会はッ!! 世界はッ……!!! 腐りきっているのであります、堕ちきっているのであります!!」 雑草の生えた校庭、錆びついた朝礼台の上。拡声器を携えたスーツの男が、使命感に燃える声を張り上げる。 「私はァ! この世界を救いたい!!」 声を張る度に、汗が、唾が、月明かりにキラリと光る。 「その為に我々はどうすれば良いか!? ――それはすなわァち!!」 男が拡声器とは逆の手を拳にして、雄々しく天に掲げた。 「――破壊! 破壊を! 破壊であるッ!! 徹底して破壊であるッ!!!」 あるッ、あるッ……と夜空に演説が木霊する。男が校庭を見渡せば、幾つもの視線が返ってきた。それは熱心で、そして――凶暴な光にぎらついていた。 スーツ男は満足気に頷くと、大きく息を吸い込んだ。 「さぁ! 今こそ! 立ち上がりましょう!!」 ●口止め申請 「創造と破壊は表裏一体……って言うけれど」 モニターに映った演説からリベリスタ達に視線を移し、『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)は溜息の様に言葉を紡いだ。 その続きをわざわざ催促する必要もないだろう。彼女は真剣な眼差をしたリベリスタ達を一度見渡すと、モニターの中でスーツ男が掲げる拡声器を指で示した。 「『破壊せよ』という意思を持つアーティファクト『プロパガンダ』……この拡声器による声は、強い力を得る。その声は聞いた人の心に強く響いて、そして……洗脳してしまう」 これがその結果――イヴの指が今度はスーツ男の周りに集う聴衆に移った。 「一般人が四人と、ノーフェイスが二体。どれも『プロパガンダ』による『破壊せよ』って命令でかなり凶暴化してる。……話は出来なさそうね。 一般人の方は完全に『プロパガンダ』に洗脳されて、理性も自我も失ってる。だから私達のことは記憶に残らないだろうから、安心して。 ノーフェイスの方は……強力な攻撃手段を持つ者はいない。どれも支援タイプの能力を持ってるみたい。一般人達と同様に理性も自我も失ってるわ。 それからこのスーツ男だけど、彼はただの一般人。『プロパガンダ』の意思にすっかり支配されてるだけね。一般人だから特別な能力を持ってはいないけれど……『プロパガンダ』による攻撃は侮れない、ヘタしたらこっちが洗脳されるかもしれないから、気を付けて。 彼らの洗脳は、このスーツ男が『プロパガンダ』を手放すか、『プロパガンダ』を破壊する事で解ける筈。一般人は洗脳が解けたショックで気絶すると思うから、ちゃんとアフターフォローしてあげてね」 説明が終わると、イヴはモニターから手を退けて二色の瞳で真っ直ぐにリベリスタ達を見詰めた。 「まとめると、今回の目標は“アーティファクト『プロパガンダ』の回収か破壊”と“ノーフェイスの討伐”、”一般人の救出”。 それじゃ――くれぐれも、気を付けて」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:ガンマ | ||||
■難易度:EASY | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2011年08月13日(土)23:26 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●作戦開始であります。 「――見よ、この世界を! 見よ、この悲しみと悪意に満ち満ちた不浄なる世の有様を!良いのでしょうか、我々はただただ屈服するのみで良いのでしょうか!? ――いいや違う! 今こそ我らは心を一つに立ちあがり、この世界を破壊せねばなりません!!」 月が煌と輝く深夜。廃校の荒れた校庭に破壊思想が響いていた。 「……好かないな」 演説者の立つ朝礼台から距離が開いた場所、青々と茂った草むら。 目立たぬよう地味な色合いの衣服を身に着け、夜闇に紛れて草陰に身を潜めている『緋猿』葉沼 雪継(BNE001744)が鳴り響く声に対し小さく呟いた。 言葉、思想、言論は、ひとつの道具である。それは正しく使えば誰もがその恩恵を享受できるが、使い方を誤るととんでもない不幸を他者に与えることになる。つまり言の葉とは武器であり、防具であり、日常的に使う雑貨であり……それを過ぎたる凶器にしてしまったのが、あの拡声器型アーティファクト『プロパガンダ』。 (何としても暴挙を食い止めねばならんな) 決意を胸に、雪継が『プロパガンダを奪取する』という同じ作戦を課せられたチームメイト二人へちらと視線を遣った。彼らは『プロパガンダ』の洗脳能力対策として耳栓などをしている為に一々呼びかける意味はない。 「初任務……まさか普通の人たちが相手だなんて……。でも、やらなきゃ」 雪継の視線の先にて同じく身を潜めた『熱血クールビューティー』佐々木・悠子(BNE002677)が緩く拳を握り締める。いよいよやってきた初仕事の日、と長い睫毛に縁取られた赤い瞳には緊張の色が宿るも、正義感に満ちたその目は朗々と言葉を放つ演説者を真っ直ぐ捉えていた。 困っている人の為に、しっかりやらねばならない。 (マジあづいぃぃぃぃっ!!) 雪継と悠子が静かに決意する一方、『ラブ ウォリアー』一堂 愛華(BNE002290)は汗びっしょりで密かに愚痴っていた。雪継と同じく草むらに潜む為に濃緑の服を着ているのだが、それが長袖長ズボンなのである。理由はズバリ『蚊とかに刺されたくないから』。とは言えこの季節にこの格好は流石にしんどい。 (うぅぅ……でも、虫とか触ったらやだしぃ、我慢我慢) ちゃんと虫よけスプレーをかけまくってきたのだが、もしなんかキモイ虫が出てきたらどうしよう――なんて考えをわたわた顔を振って脳内から取っ払った。 そんな愛華を見て、『緊張しているのはみんな同じなんだ』とちょっぴり勘違いをした悠子が緊張を緩和できたところで雪継が時計を確認する。 そろそろ『作戦開始』だ――そう思った彼が視線を戻したその刹那。 鋭い声が演説を打ち破った! 「話は聞かせて貰ったわ!! 平和を乱す悪い人達、覚悟なさい!」 草陰に身を潜める『奪取組』の後方、現れ横列に布陣するのは『囮組』――一般人を担当するチームの三人。 『現役受験生』幸村・真歩路(BNE002821)が腰に手を当て懐中電灯を演説者へとビシッと突き付ける傍ら、同じく片手に携えた懐中電灯で演説者を照らした『七教授の弟子』ツヴァイフロント・V・シュリーフェン(BNE000883)も声を張り上げる。 「大衆を扇動し破滅へ導こうとは許せん! ……別に羨ましくないぞ?」 ツヴァイフロントが最後にポツンと呟いた言葉は、幸いにして『プロパガンダ』の対策として耳栓やらミュージックプレイヤーやらで耳を守る仲間達に聞こえる事はなかった。――ただ一人を除いて。 (強気な女性も悪くないでござるな……) 彼女らと同じく布陣する李 腕鍛(BNE002775)は耳栓などをしていなかった。女好きな性格のままにへらっと表情を緩めたが、口説くのはまた後にしよう。さてと見遣る演説者は、いきなり集中して浴びせられた光にすっかり狼狽えている。聴衆らは驚いた様にただただ演説者を見上げていた。 「うぐっ……まっ眩しい、眩しいではありませんか! なんて事をするのです!」 などと片手で目を覆う演説者であったが、彼はもう片手で『プロパガンダ』をしっかり構えていた。 「貴方達、さては我々の邪魔をする気ですね! そうはさせない! ――諸君! 彼らを破壊するのです!!」 眩しさに目を閉じながらも、演説者は毅然と手を振り下ろす。すると破壊思想に取り憑かれた聴衆達が暴力的にぎらつかせた目をして振り返った。布陣したリベリスタ達と目が合う。 直後に聴衆らは猛然と走り出した! ●大決戦であります。 「だからって何で壊すの! 話し合って、内側から変えていけばいいじゃない!」 一生懸命引き付けるのが囮の仕事、という訳で『破壊されるべき社会の尖兵』たるべく真歩路が声を張り上げる。 「何を言うか! 最早この世界は話し合いなど不可能なほど病ん――ゲェーッ!?」 すかさず反論を試みた演説者であったが、それはツヴァイフロントが投擲した大音量を流すラジカセによって阻まれる。それは演説者に当たらなかったものの、彼の足元でけたたましい音を立てた。彼は壊れたラジカセを蹴っ飛ばして何をするかと言い返すべく視線を戻すが、再びドイツのファシスト少女によって阻まれる。 「……親愛なる兄弟達。今日こそ破壊の日。今こそ破壊の始まる時! 諸君、我らの破壊は小さな破壊ではない。違うか。 我らは人類全体の破壊である。違うか! だが、我らは何の破壊なのか。正しい我らとは何か。 然り。兄弟よ、この服の破壊に他ならぬ。世界の為した事がない破壊。 然り! 服を破り捨てる事、尊厳の破壊、人類の破壊、永遠の破壊! 我らは知る、違うか! ――ジーク・ハダカ」 高らかに、麗しく。 拡声器によるツヴァイフロントの声が響く。 「………………」 ポッカ~ン、と演説者も一般人もノーフェイスも呆気にとられて動きを止める。 『錆色の赤烏』岩境 小烏(BNE002782)はその一瞬の隙を突いた。 「気に入らねぇモンはぶっ壊しゃいいつって許されんのは人間幾つまでかね……いや、」 草陰に身を潜め集中していた小烏の式符・鴉がノーフェイスの男を射抜いた。 「幾つんなっても駄目か、到底やりきれるモンじゃなし面倒だし……」 とか思うのは、自分が年食ったからかね。なんて付け加えつつ立ち上がる小烏の視線の先でノーフェイスの男が上体をぐらつかせる。それに我に返った敵勢はすぐさま体勢を整えた。一般人達は前衛位置へ、ノーフェイス達は後衛位置へ。リベリスタ達も作戦通り動き出す。 「鬼さんこちら、だ。……行くぞ、紅葉の嬢ちゃん!」 「はいっ!」 それぞれ耳栓などで耳を保護しているが、雰囲気と口の動きで言葉を理解した。小烏と共に『夕暮れ色の歌』宮代・紅葉(BNE002726)が一般人から離れる様に低空飛行してゆく。式符・鴉によって小烏を目の敵にしている男のノーフェイスが小烏らを追う。女のノーフェイスも彼の傷を癒さんとそちらへ向かってゆく。 「怖いけど、頑張ります……!」 ノーフェイス達を見据えた紅葉が魔力を操る。刹那、召還された魔炎が校庭に赤々と炸裂した! 一方のツヴァイフロント、真歩路、腕鍛の三人は後退していた。一般人とノーフェイス達を分断させるためである。 十分に一般人らがノーフェイス達と離れた所で――行動開始!しかし能力や武器は用いない。ツヴァイフロントはサングラスを老人へ駆け視界を奪い無力化し、腕鍛は流れる様な動作で一般人達の武器を払い奪ってゆく。 「ヤンキーは体が武器?アッハ、あたしも同じよ! こっち来たら女子中学生が組み敷いてあげるぅ!」 真歩路がヤンキーを挑発すれば、応える様に彼が彼女の顔面へ拳を叩き付ける。しかしそれを敢えて受けた真歩路は怯む事なく、口内から滲み出る血交じりの唾を吐き捨てつつヤンキーの腕を掴んで拘束した。そこへすかさず腕鍛が当て身を行いヤンキーを無力化する。 「大丈夫でござるか、真歩路殿?」 「ヘッチャラよ」 「左様でござるかうんうん」 真歩路が円らな瞳でウインクをした。腕鍛がキュンとしたのは言うまでも無い。 「ぐ……ぐぬぬ……!」 戦況を見ていた演説者が歯噛みする。このままではいけない、そう思い『プロパガンダ』を構える――が、異変に気付いて素早く草陰を見遣った。 「――!」 草陰に潜み呪印封縛の詠唱中であった雪継と演説者との視線がかち合う――しまった、と雪継が思ったその瞬間。『プロパガンダ』が真っ直ぐに彼へと向けられていた。 「破壊破壊破壊破ァアアア壊あるのみィイイイイイイ!!!」 大音声と共に『プロパガンダ』から発せられた衝撃波が彼に直撃する! 「うぐぁッ……!」 全身を襲う押し潰す様な圧に雪継の意識が一瞬遠のく。 「自らの罪をォ、悔みなさァアい!!」 『プロパガンダ』は雪継へ容赦なく追撃を行おうとしたが、藪から飛び出した愛華の一声がそれを許さなかった。 「まったくおっきな声で夜に騒ぐなんて超迷惑ですよぉ!! しかも一般の方まで巻き込むなんて……許すまじ!!」 「そっちだって大声ではないかァアアーーーッ!! 破ッ壊ッしまッすよォオッ!!?」 愛華の方を向いた『プロパガンダ』が彼女目掛けて衝撃波を放った。愛華は腕を構えて防御する。 「葉沼さん……!」 その間に悠子が雪継へ心配げな目線を向ける。しかし彼は既に体勢を立て直して演説者を見据え、膝立ちの姿勢で詠唱をしていた。 「問題無い、……行ってくれ!」 雪継の言葉と共に呪印が幾重にも展開された。同時に悠子も飛び出して行く。 「ゲッ……なな何だこれは!!?」 雪継の呪印封縛に束縛された演説者の狼狽える声が『プロパガンダ』に乗って大きく響く。 「このくそ暑い中うるさいとかマジありえないんですけどぉぉっ!」 一々鼓膜が痛くて仕方がない、と柳眉を吊り上げた愛華が演説者との間合いを一気に詰め、全身から気糸を放った。それは更に演説者を締め付け、一切の行動を封じてしまう。 「そんな危ないものは、さっさと手放しちゃってください!」 次の瞬間、演説者に接近した悠子の鋭い蹴りが炸裂する。それは的確に演説者の手を捉え、見事に『プロパガンダ』だけを彼方の草むらへ吹っ飛ばした。 「やった……!」 『プロパガンダ』を失った事で洗脳が解けてその場に崩れ落ちた演説者を半ば呆然と見遣ってから、悠子がそろりと自らの掌に目を落とし呟いた。 「……私にも、できるんだ……私なんかでも……」 「当ったり前じゃないのぉ、悠子ちゃん!」 そんな彼女の肩を叩き、愛華が笑いかける。「私達は正義の味方なんだからぁ」と続けられた言葉に悠子も微笑み頷いた。 やや離れた位置の雪継は少女達の微笑ましい光景に僅か表情を綻ばせたが、それをすぐに引き締めると彼女らへ呼び掛けた。 「戦いはまだ、終わっていないぞ」 ツヴァイフロントの言葉に真歩路、腕鍛が頷く。時を同じく、一般人が完全に沈黙した事で演説者が『プロパガンダ』を手放した事を知った彼らもまたノーフェイス達の方を向いた。 「っく!」 ノーフェイスの毒弾を肩に被弾した紅葉が痛みに表情を歪ませた。 「ふんばれよ、あと少しだ!」 すぐに紅葉へ近寄った小烏が傷癒術でその傷を癒す。しかしその隙にノーフェイスの女によって男も回復してしまう。 「……負けません!」 紅葉は強い意志を宿した双眸でノーフェイス達を見据えると、凛とした声と共にメイジスタッフを振るった。炸裂する激しい魔炎がノーフェイス達を包み込む! 倒したか――いや、まだだ。燻ぶる煙の彼方から二つの相貌がこちらを睨みつけている だが、その背後に迫る影二つ! 「手伝いますよぉ♪」 「李 腕鍛、参る!」 声と共に躍り出た愛華がダンスの様なステップと共にノーフェイスを切り裂いてゆき、腕鍛の業炎拳が男を捉える。 「反撃の時間は与えん!」 更に高速で跳躍したツヴァイフロントが女へ多角的な強襲攻撃を展開し、真歩路はノーフェイスへバウンティショットを放ちつつ横目で小烏と紅葉を見遣って微笑んだ。 「お待たせ!」 「待ちくたびれたよ」 「こ、小烏さっ……」 「今のは冗談だって、紅葉の嬢ちゃん」 そんなこと言っていいの、と困った様な普段の顔を更に困らせた紅葉の頭にぽんと手を乗せ、小烏は正面を見遣った。それと同時、ふらつくノーフェイスらを悠子のギャロッププレイと雪継の呪印封縛が拘束する。 「今の内です!」 「やれ!」 それぞれ振り返った悠子と雪継の言葉に小烏と紅葉が頷く。拘束を解かんと呻くノーフェイスらを見据えて、二人は詠唱を始めた。 「終わりだ!!」 「行きますっ!」 果たして全く同時に放たれた式符・鴉とマジックミサイル。 それはノーフェイス達を射抜き、そして、完全に粉砕した。 ●平和輝く明日の為にであります。 静寂が一帯を包んでいた。 『プロパガンダ』による洗脳が解けた事で気を失った一般人達を廃墟の敷地外へ運び出したリベリスタ達は、一先ず小休止を取っていた。 「やれやれ厄介な事件だったな。だが、ノーフェイスをこの段階で抑えることができたのは僥倖か」 電柱に凭れた雪継が呟く。その近くでは、公衆電話を使ってツヴァイフロントが一般人らの為に病院へ連絡をしている。怪しまれないよう「熱中症で」という話にしているようだ。 「ん、一般人らに特に外傷は無いみたいだな」 通りに並んで横たわらせた一般人達の具合を見ていた小烏が立ち上がる。それを見てどこかしら不服げなのは腕鍛だ。女性を全力で介抱するつもりだったのだが……残念無念。むぅと口を尖らせれば小烏に「どうかしたのか」と訊かれ、すぐさま何でもないと誤魔化した。 「……皆様、ただいま戻りました!」 最中、紅葉と愛華が廃校の方向から駆けて来る。紅葉の手には『プロパガンダ』があった。フェイトのお陰か、持つだけで拡声器に意識を乗っ取られる事はないらしい。彼女らは校庭の草むらに埋もれてしまった『プロパガンダ』を回収してきたのである。 「うん、御苦労さん。……どうした、愛華?」 二人を労い微笑む雪継であったが、ふにゃりとはにかむ紅葉とは対照的に愛華の元気が無いので具合を訊ねてみる。愛華は蒼い顔をしたまま顔を振った。 「うぅん……何でも……」 『プロパガンダ』の捜索中にデッカいバッタがぴょこんと目の前に現れた所為なのだが……愛華はふぅ、と重たい溜息を吐いた。 (蹴るんじゃなくって、普通に手で取ればよかった……) その様子を眺めていた悠子が心の中で反省する。自分も探しに行けばよかった。 「……国とか社会とか世界とか、正直スケールが大きくて理解の範囲外よ」 紅葉の持つ『プロパガンダ』に視線を落とた真歩路が『演説』を思い出し、呟く。 「大切な人が居て、笑いあえる友達が居て、仲間が居て……受験勉強大変でも、明日も頑張ろうって思えたら、あたしはそれで幸せだなぁ」 それは誰にも否定させない彼女の思い。そうね、と悠子が頷いた。 日常に散りばめられたちっぽけな出来事、変わらないモノ。 そこにこそ本当の幸せがあるのではないだろうか。 「より良い世界ね……。とりあえず勉強頑張ろ」 夜空を見上げて呟いた真歩路をはじめ、リベリスタ達の体を優しい夜風が撫でて行った。 『了』 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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